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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20241202BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B66B1/14 M
B66B3/00 K
B66B3/00 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023206833
(22)【出願日】2023-12-07
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 梨花
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137539(JP,A)
【文献】特開2015-224133(JP,A)
【文献】特開2017-007828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
B66B 3/00 - 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子対応かごを含む複数の乗りかごを備えたエレベータシステムであって、
任意の階の乗場に設置された一般呼びボタンと、
前記乗場に前記一般呼びボタンとは別に設置された車椅子呼びボタンと、
前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者を撮影するカメラと、
前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者の正面に向けて設置され、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンが押下される前に、当該利用者の速度を検出する速度センサと、
前記一般呼びボタンの操作によって登録される一般呼び、前記車椅子呼びボタンの操作によって登録される車椅子呼びを前記乗場の階床情報と共に記憶する呼び管理手段と、
前記一般呼びボタンと前記車椅子呼びボタンとが連続的に操作された場合に、前記カメラの画像と前記速度センサの検出速度とに基づいて、前記各ボタンを操作した利用者が前記車椅子対応かごを必要としない一般利用者であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記呼び管理手段に記憶された前記一般呼び及び前記車椅子呼びの一方をキャンセルし、残りの呼びに基づいて前記各乗りかごのいずれかの乗りかごを前記乗場に応答させる割当制御手段と
を具備するエレベータシステム。
【請求項2】
前記割当制御手段は、
前記判定手段によって前記利用者が前記一般利用者であると判定された場合に、前記車椅子呼びをキャンセルし、前記一般呼びに基づいて前記車椅子対応かご以外の乗りかごを前記乗場に応答させる
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記割当制御手段は、
前記判定手段によって前記利用者が前記一般利用者でないと判定された場合に、前記一般呼びをキャンセルし、前記車椅子呼びに基づいて前記車椅子対応かごを前記乗場に応答させる
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記判定手段は、
前記カメラの画像に基づいて、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者が前記一般利用者であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記速度センサの検出速度に基づいて、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者が前記一般利用者であるか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段と前記第2判定手段との判定結果が異なっていた場合に、前記各ボタンを操作した利用者が前記一般利用者でないと判定する第3判定手段とを含む
請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記第1判定手段は、
前記カメラの画像上で歩行補助器を使用せずに歩行している利用者が検出された場合に、前記利用者は前記一般利用者であると判定する
請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記第2判定手段は、
前記速度センサによって一定値以上の速度で移動している利用者が検出された場合、前記利用者は前記一般利用者であると判定する
請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記第1判定手段は、
前記一般呼びボタンと前記車椅子呼びボタンとが連続的に操作された場合、連続的に操作される直前の画像を用いて前記利用者が前記一般利用者であるか否かを判定する
請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記一般呼びボタンと前記車椅子呼びボタンとが連続的に操作された場合とは、前記一般呼びボタンと前記車椅子呼びボタンとが一定時間内に操作されたことを含む
請求項4記載のエレベータシステム。
【請求項9】
前記割当制御手段は、
前記乗場に複数の利用者が存在する場合には、前記呼び管理手段に記憶された前記一般呼び及び前記車椅子呼びをキャンセルせずに、前記各乗りかごの中から前記車椅子対応かごを含む2台の乗りかごを応答させる
請求項1記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の乗りかごを有するエレベータシステムでは、車椅子対応の乗りかご(以下、車椅子対応かごと称す)が備えられていることがある。車椅子対応かごは、通常の乗りかごよりも戸開時間が長く設定されている。また、かご室内には車椅子利用者用の呼びボタンやバックミラー等が設置されている。
【0003】
なお、「車椅子利用者」とは、車椅子だけでなく、例えば松葉杖等の歩行補助器を使用している利用者や、高齢者等も含まれる。つまり、一般利用者に比べて歩行が困難な利用者のことを「車椅子利用者」と呼ぶ。
【0004】
このような車椅子対応かごを備えたエレベータシステムでは、各階の乗場に一般利用者用の乗場呼びボタン(以下、一般呼びボタンと称す)とは別に、車椅子利用者用の乗場呼びボタン(以下、車椅子呼びボタンと称す)が並設されており、どちらかの呼びボタンを押すことで、エレベータ(乗りかご)を乗場に呼ぶように構成されている。一般呼びボタンを押した場合には、「一般呼び」と呼ばれる乗場呼びが登録され、車椅子対応かご以外の乗りかごが応答する。車椅子呼びボタンを押した場合には、「車椅子呼び」と呼ばれる乗場呼びが登録され、車椅子対応かごが応答する。
【0005】
ところが、利用者によっては、一般呼びボタンと車椅子呼びボタンの違いを知らず、両方の呼びボタンを押してしまうことがある。この場合、先に通常の乗りかごが応答すると、当該乗りかごの到着時に「一般呼び」はキャンセルされるが、「車椅子呼び」についてはキャンセルされない。これは、「車椅子呼び」をキャンセルしてしまうと、ボタン操作した利用者が車椅子利用者であった場合に、車椅子対応かごに乗れなくなってしまうためである。「車椅子呼び」によって車椅子対応かごも応答し、結果的に乗場には車椅子対応かごを含む2台の乗りかごが到着する。なお、先に車椅子対応かごが応答した場合には、「一般呼び」はキャンセルされるので、乗場には車椅子対応かごだけが到着することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平4-169478号公報
【文献】特開2019-210135号公報
【文献】特許第6473250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、一般呼びボタンと車椅子呼びボタンが押されると、車椅子対応かごを含む2台の乗りかごが到着することがある。この場合、ボタン操作した利用者が一般利用者であると、車椅子対応かごが無駄応答になり、運行効率の低下を招いてしまう。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、一般呼びボタンと車椅子呼びボタンが押下された場合に、車椅子対応かごの必要性を判断し、無駄応答による運行効率の低下を防ぐことのできるエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るエレベータシステムは、車椅子対応かごを含む複数の乗りかごを備える。前記エレベータシステムは、一般呼びボタンと、車椅子呼びボタンと、カメラと、速度センサと、呼び管理手段と、判定手段と、割当制御手段とを備える。前記一般呼びボタンは、任意の階の乗場に設置される。前記車椅子呼びボタンは、前記乗場に前記一般呼びボタンとは別に設置される。前記カメラは、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者を撮影する。前記速度センサは、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンの設置付近に近づく利用者の正面に向けて設置され、前記一般呼びボタン又は前記車椅子呼びボタンが押下される前に、当該利用者の速度を検出する。前記呼び管理手段は、前記一般呼びボタンの操作によって登録される一般呼び、前記車椅子呼びボタンの操作によって登録される車椅子呼びを前記乗場の階床情報と共に記憶する。前記判定手段は、前記一般呼びボタンと前記車椅子呼びボタンとが連続的に操作された場合に、前記カメラの画像と前記速度センサの検出速度とに基づいて、前記各ボタンを操作した利用者が前記車椅子対応かごを必要としない一般利用者であるか否かを判定する。割当制御手段は、前記判定手段の判定結果に応じて、前記呼び管理手段に記憶された前記一般呼び及び前記車椅子呼びの一方をキャンセルし、残りの呼びに基づいて前記各乗りかごのいずれかの乗りかごを前記乗場に応答させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係る任意の乗場の構成の一例を示す図である。
図3図3は、同実施形態に係るエレベータシステムの処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、同実施形態に係る第1判定処理の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、同実施形態に係る第2判定処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、同実施形態に係る第3判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に相当し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施形態に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0012】
図1は、本実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係るエレベータシステムでは、車椅子対応かごを含む複数台の乗りかごが群管理されている。図1の例では、2台の一般かご12a、12bと、1台の車椅子対応かご12wの合計3台の乗りかごが群管理されている構成が示されている。
【0013】
車椅子対応かご12wは、例えば、一般かご12a、12bよりも戸開時間が長く設定された乗りかごである。また、車椅子対応かご12wのかご室内には、車椅子利用者用の呼びボタンやバックミラー等が設置される。一般かご12a、12bは、標準仕様の乗りかごである。
【0014】
車椅子対応かご12wは、他の一般かご12a、12bよりも戸開時間が長いため、あわてずに乗降することができる。このため、車椅子利用者だけではなく、例えば、歩行補助器(松葉づえ等)を使用している利用者、妊婦、高齢者等、一般的な利用者と比較して歩行が困難な利用者にも必要とされている。以下の説明では、車椅子対応かご12wを必要とする利用者を、「特定利用者」と表記する。これに対し、車椅子対応かご12wを必要としない利用者を「一般利用者」と表記する。
【0015】
なお、図1の例では2台の一般かご12a、12bと1台の車椅子対応かご12wとが群管理された構成が示されているが、少なくとも1台の一般かごと少なくとも1台の車椅子対応かごとを含む2台以上の乗りかごが群管理された構成であればよい。
【0016】
図中の11a、11b、11wはエレベータ制御装置(かご制御装置とも言う)である。エレベータ制御装置11a、11b、11wは、エレベータシステムに群管理される乗りかご(一般かご12a、12b、車椅子対応かご12w)毎に設けられており、それぞれに対応した乗りかごの運転制御を行う。
【0017】
具体的には、エレベータ制御装置11a、11bは、一般かご12a、12bをそれぞれ昇降路内で昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御等を行う。同様にして、エレベータ制御装置11wは、車椅子対応かご12wを昇降路内で昇降動作させるためのモータの制御やドアの開閉制御等を行う。なお、エレベータ制御装置11wには、車椅子対応かご12wのドアの開閉時間が一般かご12a、12bよりも長く設定されている。これらのエレベータ制御装置11a、11b、11wは、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。
【0018】
各階の乗場(エレベータホール)13には、一般呼びボタン14、車椅子呼びボタン15、カメラ16、速度センサ17が設置されている。一般呼びボタン14、椅子呼びボタン15、カメラ16、速度センサ17は、図示せぬ伝送ケーブルを介してそれぞれ群管理制御装置20に接続されている。
【0019】
一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15は、乗場呼びを登録するための押下式操作ボタンであり、実際には、上方向ボタンと下方向ボタンからなる。なお、最下階では上方向ボタンのみが設置され、最上階では下方向ボタンのみが設置される。「乗場呼び」とは、乗場での一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15の操作により登録される呼び信号のことであり、登録階(階床情報)及び行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご11内に設けられた図示せぬ行先呼びボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0020】
また、以下の説明では、一般呼びボタン14の押下操作によって登録される乗場呼びを「一般呼び」、車椅子呼びボタン15の押下操作によって登録される乗場呼びを「車椅子呼び」と表記する。
利用者によって登録された一般呼び及び車椅子呼びの情報は、群管理制御装置20に送信される。
【0021】
なお、図1では、便宜的に1つの一般呼びボタン14と1つの車椅子呼びボタン15を図示しているが、乗場13には複数の一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが設置されていてもよい(図2参照)。また、各階の乗場13にも、一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15が、それぞれ1つ以上設置されている。
【0022】
カメラ16は、乗場13を撮影するための撮像装置であり、本実施形態では、一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15の設置付近に近づく利用者を撮影するために用いられる。カメラ16の設置箇所は、各号機の乗降口側から乗場13に向かって移動する利用者を撮影可能な場所であれば、どこでもよい(図2参照)。カメラ16によって撮影された画像は、群管理制御装置20にリアルタイムに送信される。
【0023】
速度センサ17は、一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15に近づく利用者の速度を検出する。なお、例えば一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15が一対の形態で各箇所に離間して設置されている場合には、それぞれの箇所に速度センサ17が設置される(図2参照)。また、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15が個別に各箇所に離間して設置されている場合には、一般呼びボタン14の設置箇所と車椅子呼びボタン15の設置箇所の近くに速度センサ17がそれぞれ設置される。
【0024】
速度センサ17としては、例えばレーダーガンが用いられ、測定対象(本実施形態では利用者)に向けて照射された電磁波が当該測定対象で反射して戻ってきたときの周波数変化から移動速度を検出する。なお、速度センサ17は上述したレーダーガンに限られず、各ボタンに近づく利用者の速度が検出できるものであればよい。
速度センサ17によって検出された利用者の速度情報は、群管理制御装置20にリアルタイムに送信される。
【0025】
群管理制御装置20は、各号機の乗りかごの運転を群管理制御するための装置であり、エレベータ制御装置11a、11b、11wと同様に、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成される。本実施形態において、この群管理制御装置20には、画像記憶部21、速度記憶部22、呼び管理部23、判定部24、割当制御部25が備えられている。なお、これらの処理部は、実際にはソフトウェアあるいはソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実現される。
【0026】
画像記憶部21は、カメラ16からフレーム時間単位で得られる撮影画像を時系列順に順次記憶する。
速度記憶部22は、速度センサ17によって検出された利用者の速度(利用者が乗場13から一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15の設置場所に向かって移動しているときの平均的な速度)を記憶する。
【0027】
呼び管理部23は、各階の乗場13において、一般呼びボタン14の操作によって登録された一般呼び、車椅子呼びボタン15の操作によって登録された車椅子呼びを登録階の情報と共に記憶するとともに、これらの呼びが割り当てられた乗りかご(割当かご)の情報を記憶する。
【0028】
判定部24は、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作された場合に、カメラ16の撮影画像と、速度センサ17の検出速度とに基づいて、各ボタンを操作した利用者が一般利用者であるか否かを判定する。
【0029】
なお、「一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作された場合」とは、それぞれに、同じ方向のボタンが連続的に操作されたことをいう。つまり、上方向の一般呼びボタン14と上方向の車椅子呼びボタン15が続けて押下された場合、及び下方向の一般呼びボタン14と下方向の車椅子呼びボタン15が続けて押下された場合である。
【0030】
また、「連続的に操作された」とは、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが一定時間内に操作されたことをいう。「一定時間」は、利用者が一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15の一方を押下してから他方を押下するときの平均的な時間を基準にして定められ、各階の乗場13における一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15との配置間隔によって適宜設定される。
【0031】
判定部24を処理的に分けると、第1判定部24a、第2判定部24b、第3判定部24cとに分けられる。具体的な処理については図4図6を参照して後述し、ここでは簡単に説明する。
【0032】
第1判定部24aは、画像記憶部21に記憶されているカメラ16の撮影画像に基づいて、一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15に近づく利用者が、一般利用者であるか否かを判定する。
【0033】
第2判定部24bは、速度記憶部22に記憶されている速度センサ17の検出速度に基づいて、一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15に近づく利用者が一般利用者であるか否かを判定する。
【0034】
第3判定部24cは、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作された場合に、第1判定部24aと第2判定部24bの判定結果に基づいて、各ボタン(一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15)を操作した利用者が一般利用者であるか否かを判定する。
【0035】
割当制御部25は、新たな乗場呼び(一般呼び及び車椅子呼び)が呼び管理部23に記憶されたときに、エレベータ制御装置11a、11b、11wから得られる一般かご12a、12b、車椅子対象かご12wの運転情報(現在位置、運転方向、戸開閉状態等)に基づいて、当該乗場呼びを割り当てる乗りかごを割当かごとして選出する。割当制御部25は、乗場呼びとして一般呼びが登録された場合には、一般かご12a、12bのいずれかの乗りかごを割当かごとして選出し、車椅子呼びが登録された場合には、車椅子対象かご12wを割当かごとして選出する。
【0036】
ここで、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作された場合、呼び管理部23に一般呼びと車椅子呼びが上記一定時間内に連続的に記憶される。割当制御部25は、呼び管理部23に記憶される一般呼びと車椅子呼びの連続性から各ボタン14、15が連続的に操作されたことを判断し、判定部24の判定結果に応じて、一般呼び及び車椅子呼びの一方の呼びをキャンセルする。「キャンセル」とは、当該呼びの情報を呼び管理部23から削除することである。
【0037】
具体的には、割当制御部25は、判定部24によって各ボタン14,15を操作した利用者が一般利用者であると判定された場合、呼び管理部23内の車椅子呼びをキャンセルする。そして、割当制御部25は、一般呼びを一般かご12a、12bのうちいずれかの乗りかごに割り当てる。一方、割当制御部25は、判定部24によって各ボタン14,15を操作した利用者が特定利用者であると判定された場合、呼び管理部23内の一般呼びをキャンセルする。そして、割当制御部25は、車椅子呼びを車椅子対応かご12wに割り当てる。
【0038】
図2は、本実施形態に係る任意の乗場13の構成の一例を示す図である。
図中の18a、18b、18wは、乗場ドアである。乗場ドア18aは、一般かご12aの到着時にかごドアと連動して開閉動作する。乗場ドア18bは、一般かご12bの到着時にかごドアと連動して開閉動作する。乗場ドア18wは、車椅子対応かご12wの到着時にかごドアと連動して開閉動作する。
【0039】
乗場ドア18aと乗場ドア18bの間の壁面19aに、一般呼びボタン14a及び車椅子呼びボタン15aが設置されている。車椅子呼びボタン15aは、車椅子利用者が操作しやすいように、一般呼びボタン14aよりも低い位置に設置されている。
【0040】
ここで、一般呼びボタン14a及び車椅子呼びボタン15aの付近に、速度センサ17aが設置される。図2の例では、速度センサ17aは、一般呼びボタン14aと車椅子呼びボタン15aとの間に設置されている。速度センサ17aは、一般呼びボタン14a又は車椅子呼びボタン15aに近づく利用者を検出対象として、その利用者の正面に向けて設置されている。
【0041】
乗場ドア18bと乗場ドア18wの間の壁面19bにも、壁面19aと同様に、一般呼びボタン14b、車椅子呼びボタン15b、及び速度センサ17bが設置される。
【0042】
なお、図2の例では、一般呼びボタン14aと車椅子呼びボタン15a、一般呼びボタン14bと車椅子呼びボタン15bがそれぞれに一対の形態で壁面19a、19bに設置されているが、例えば一般呼びボタン14aが壁面19a、車椅子呼びボタン15aが壁面19bに設置されていてもよい。この場合、速度センサ17aは、壁面19aの一般呼びボタン14aの近くに設置される。速度センサ17bは、壁面19bの車椅子呼びボタン15aの近くに設置される。
【0043】
すなわち、一般呼びボタン14aと乗場呼びボタン15aとが離間配置されている場合には、各ボタン14a、15aの近くに速度センサ17a、17bを個別に設置しておき、一般呼びボタン14a又は乗場呼びボタン15aに近づく利用者の速度を検出する。この場合、利用者の速度の検出については、速度センサ17a、17b双方の結果を用いて検出してもよく、また、速度センサ17bの結果を優先的に用いて検出してもよい。
【0044】
また、乗場13には、少なくとも1台のカメラ16が設置され、乗場13にいる利用者を撮影している。図2の例では、乗場ドア18bの上部の壁面に乗場13に向けて設置されている。なお、カメラ16は、例えば乗場13の天井面等、呼びボタンの設置場所に近づく利用者を撮影可能な場所であれば、どこに設置されていてもよく、例えば防犯カメラなど乗場13を広域に撮影するカメラを用いてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係るエレベータシステムの処理の流れを示すフローチャートである。いま、任意の階の乗場13において、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15が一対の形態あるいは個別に配置されている場合を想定する。乗場13には、カメラ16と速度センサ17が設置されている。カメラ16は、一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15に近づいた利用者を撮影する(ステップS11)。カメラ16によって撮影された画像は、群管理制御装置20にリアルタイムに送信され、画像記憶部21に時系列順に記憶される。
【0046】
また、速度センサ17は、利用者が乗場13から一般呼びボタン14又は車椅子呼びボタン15に近づくときの移動速度を検出する(ステップS12)。速度センサ17によって検出された速度は、群管理制御装置20にリアルタイムに送信され、速度記憶部22に記憶される。
【0047】
ここで、利用者によって一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15の一方のボタンが操作された場合には(ステップS13のNO)、そのボタン操作によって登録された一般呼び又は車椅子呼びが呼び管理部23に記憶される。この場合、割当制御部25は、通常の割当処理によって、一般呼び又は車椅子呼びを割り当てる1台の乗りかごを選出して、乗場13に向かわせる(ステップS22)。
【0048】
一方、利用者によって一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作された場合(ステップS13のYES)、一般呼びと車椅子呼びが連続的に呼び管理部23に記憶される。この場合、割当制御部25は、判定部24の判定処理(ステップS14~ステップS16)の結果に応じて、一般呼びと車椅子呼びのうちの一方の呼びをキャンセルし、他方の呼びを用いて割当処理を行う。
【0049】
以下に、図4乃至図6を参照して、判定部24によって実行される第1~第3判定処理について詳しく説明する。
(第1判定処理)
図4は、本実施形態に係る第1判定処理の流れを示すフローチャートである。
判定部24の第1判定部24aは、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続的に操作されたときの直前に撮影された画像を画像記憶部21から取得し、当該画像を解析処理することにより、ボタン14、15の近くにいる利用者を検出する(ステップA11)。
【0050】
なお、ここでは、ボタン14、15が連続操作される直前の撮影画像を用いて、ボタン14、15の近くにいる利用者を検出したが、例えばカメラ16から時系列順に得られる各画像上で利用者を追跡処理し、その利用者がボタン14、15の近くに来た時点で、当該利用者をボタン操作者として検出することでもよい。
【0051】
ボタン14、15を連続操作した利用者が検出されると、第1判定部24aは、この利用者の画像を解析処理することによって、歩行補助器を使用しているか否かを判断する(ステップA12)。「歩行補助器」とは、例えば車椅子、松葉づえ、歩行器等である。
【0052】
なお、利用者が歩行補助器を使用しているか否かの判断処理には、例えば画像上の利用者の特徴量を抽出し、その特徴量と予め学習された歩行補助器を使用した利用者の特徴量との類似性から判断する方法や、歩行補助器を使用した利用者のパターン画像を数種類用意しておき、これらのパターン画像と撮影画像から得られた利用者の画像とを照らし合わせるパターンマッチング法等が用いられる。
【0053】
利用者が歩行補助器を使用している場合(ステップA12のYES)、第1判定部24aは、特定利用者がボタン操作したと判定する(ステップA13)。一方、利用者が歩行補助器を使用していない場合(ステップA12のNO)、第1判定部24aは、一般利用者がボタン操作したと判定する(ステップA14)。第1判定部24aは、ステップA13又はステップA14の判定結果を第3判定部24cに通知する(ステップA15)。
【0054】
(第2判定処理)
図5は、本実施形態に係る第2判定処理の流れを示すフローチャートである。
判定部24の第2判定部24bは、ステップS12(図3)において検出された利用者の移動速度を速度記憶部22から取得し(ステップB11)、その移動速度が予め定められた一定値以上であるか否かを判断する(ステップB12)。上記「一定値」は、一般利用者の平均的な歩行速度によって定められる。
【0055】
利用者の速度が一定値未満であった場合(ステップB12のNO)、第2判定部24bは、特定利用者がボタン操作したと判定する(ステップB13)。一方、利用者の速度が一定値以上であった場合(ステップB12のYES)、第2判定部24bは、一般利用者がボタン操作したと判定する(ステップB14)。第2判定部24bは、ステップB13又はステップB14の判定結果を第3判定部24cに通知する(ステップB15)。
【0056】
(第3判定処理)
図6は、本実施形態に係る第3判定処理の流れを示すフローチャートである。
判定部24の第3判定部24cは、第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果に基づいて、一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15を連続操作した利用者が一般利用者であるか否かを最終的に判定する。
【0057】
第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果が共に一般利用者であった場合(ステップC11のYES)、第3判定部24cは、一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15を連続操作した利用者が一般利用者であると判定する(ステップC12)。つまり、利用者が歩行補助器を使用せず、一定値以上の速度で移動している状況が検出された場合に、ボタン14、15を連続操作した利用者が一般利用者であると判定される。
【0058】
一方、第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果が共に特定利用者であった場合(ステップC11のNO→ステップC13のYES)、第3判定部24cは、一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15を連続操作した利用者が特定利用者であると判定する(ステップC14)。つまり、利用者が歩行補助器を使用し、一定値未満の速度で移動している状況が検出された場合に、ボタン14、15を連続操作した利用者が特定利用者であると判定される。
【0059】
第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果が異なっている場合(ステップC11のNO→ステップC13のNO)、第3判定部24cは、一般呼びボタン14及び車椅子呼びボタン15を連続操作した利用者が特定利用者であると判定する(ステップC15)。
【0060】
このように、第1判定部24aの判定結果と第2判定部24bの判定結果から一般利用者であるか否かが最終的に判定される。したがって、例えば高齢者や妊婦等、歩行補助器を使用していないが、歩行速度が遅い利用者の場合に、カメラ16を用いた第1判定部24aによっては「一般利用者」と判定され、速度センサ17を用いた第2判定部24bによっては「特定利用者」と判定されるが、「第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果が異なっている場合」に該当するため、特定利用者と判定することができる。
【0061】
また、足のケガで歩行補助器を使用しているが、歩行補助器の扱いに慣れていて移動速度が速い利用者の場合には、カメラ16を用いる第1判定部24aによっては「特定利用者」と判定され、速度センサ17を用いる第2判定部24bによっては「一般利用者」と判定されるが、「第1判定部24a及び第2判定部24bの判定結果が異なっている場合」に該当するため、特定利用者と判定することができる。
【0062】
第3判定部24cは、ステップC12、C14、又はC15における判定結果を割当制御部25に通知する(ステップC16)。
図3に戻って、第3判定部24cによって、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とを連続操作した利用者が一般利用者と判定された場合(ステップS17のYES)、割当制御部25は、呼び管理部23に記憶された一般呼び及び車椅子呼びのうち、車椅子呼びをキャンセルする(ステップS18)。そして、割当制御部25は、残った一般呼びを一般かご12a又は12bに割り当て、呼び登録階に応答させる(ステップS19)。
【0063】
一方、第3判定部24cによって、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とを連続操作した利用者が特定利用者と判定された場合(ステップS17のNO)、割当制御部25は、呼び管理部23に記憶された一般呼び及び車椅子呼びのうち、一般呼びをキャンセルする(ステップS20)。そして、割当制御部25は、残った車椅子呼びを車椅子対応かご12wに割り当て、呼び登録階に応答させる(ステップS21)。
【0064】
このように本実施形態によれば、利用者が一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15の両方を操作した場合に、その利用者が一般利用者であれば、車椅子呼びがキャンセルされて、一般かご12a又は12bが応答する。したがって、一般利用者に対する車椅子対応かご12wの無駄応答をなくして、運行効率の低下を防ぐことができる。一方、車椅子利用者等の特定利用者であった場合には、車椅子対応かご12wが応答する。この場合、一般呼びがキャンセルされるので、特定利用者に対する一般かご12a又は12bの無駄応答をなくして、運行効率の低下を防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態では、カメラ16を用いた判定結果と速度センサ17を用いた判定結果から一般利用者であるか特定利用者であるかを最終的に判定しているので、例えば歩行補助器を使用していなくても、歩行が遅い高齢者や妊婦等を特定利用者と判定して、車椅子対応かご12wを応答させることができる。また、歩行補助器を使用しているにも関わらず、移動が早かった場合にも、その利用者を特定利用者と判定して、車椅子対応かご12wを応答させることができる。つまり、カメラ16と速度センサ17を用いることで、車椅子対応かご12wを必要とする特定利用者を正しく判定して、2つの呼びボタン14、15が操作された場合に対処できる。
【0066】
(変形例)
上述した実施形態では、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15が連続的に操作された場合に、一方の呼びをキャンセルして、1台の乗りかごを応答させたが、乗場13の状況(利用者の待ち状況)によっては、2台の乗りかごを応答させた方が好ましいことがある。
【0067】
以下では、乗場の状況に応じて、2台の乗りかごを応答させる形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
【0068】
一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続して操作された場合、判定部24による判定を行う前に、割当制御部25は、カメラ16の撮影画像を用いて、ボタン14、15が操作された乗場13にいる利用者の数を検出する。
【0069】
具体的には、割当制御部25は、一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15とが連続して操作されたときの画像を画像記憶部21から取得する。割当制御部25は、当該画像を解析処理することで、各号機の乗降口の周辺にいる利用者の人数を検出する。
【0070】
乗場13に一定人数以上の利用者が存在する場合、割当制御部25は、呼び管理部23に記憶された一般呼び及び車椅子呼びの一方をキャセルせずに、これらの呼びに基づいて割当制御を行う。つまり、割当制御部25は、一般呼びを一般かご12a又は12bに割り当て、車椅子呼びを車椅子対応かご12wに割り当てる。
【0071】
このように変形例によれば、乗場13に多数の利用者がいる状況で、一人の利用者が一般呼びボタン14と車椅子呼びボタン15を操作した場合であっても、車椅子呼び又は一般呼びがキャンセルされないため、2台の乗りかごが応答する。したがって、乗場13で待つ多数の利用者を効率的に運ぶことができる。
【0072】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、一般呼びボタンと車椅子呼びボタンが押下された場合に、車椅子対応かごの必要性を判断し、無駄応答による運行効率の低下を防ぐことのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
11a,11b,11w…エレベータ制御装置、12a,12b…一般かご、12w…車椅子対応かご、13…乗場、14,14a,14b…一般呼びボタン、15,15a,15b…車椅子呼びボタン、16…カメラ、17,17a,17b…速度センサ、18a,18b,18w…乗場ドア、20…群管理制御装置、21…画像記憶部、22…速度記憶部、23…呼び管理部、24…判定部、24a…第1判定部、24b…第2判定部、24c…第3判定部、25…割当制御部。
【要約】
【課題】一般呼びボタンと車椅子呼びボタンが押下された場合に、車椅子対応かごの必要性を判断し、無駄応答による運行効率の低下を防ぐ。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、一般呼びボタンと、車椅子呼びボタンと、カメラと、速度センサと、呼び管理手段と、判定手段と、割当制御手段とを含む。判定手段は、一般呼びボタンと車椅子呼びボタンとが連続的に操作された場合に、カメラの画像と速度センサの検出速度とに基づいて、各ボタンを操作した利用者が車椅子対応かごを必要としない一般利用者であるか否かを判定する。割当制御手段は、判定手段の判定結果に応じて、呼び管理手段に記憶された一般呼び及び車椅子呼びの一方をキャンセルし、残りの呼びに基づいて各乗りかごのいずれかの乗りかごを乗場に応答させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6