(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、包装材、蓋材及び包装容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20241202BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20241202BHJP
C08L 31/04 20060101ALI20241202BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20241202BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241202BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241202BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241202BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L33/08
C08L31/04 S
C08L25/02
B65D65/40 D
C09K3/10
B32B27/00 H
B32B27/28
(21)【出願番号】P 2023506916
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007990
(87)【国際公開番号】W WO2022196297
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021044950
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】中野 重則
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 博樹
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094144(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110829(WO,A1)
【文献】特開2012-188133(JP,A)
【文献】特開2002-294996(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196673(WO,A1)
【文献】特開2013-018826(JP,A)
【文献】特開2001-123135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B65D 65/40
C09K 3/10
B32B 27/00、27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、
粘着付与樹脂(C)と、
を含み、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率が、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して8質量%以上であり、
前記粘着付与樹脂(C)は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)と、芳香族系炭化水素樹脂(C2)とを含
み、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有率が、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に20質量%以上80質量%以下であるヒートシール性樹脂組成物。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(C)の含有率が、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に1質量%以上40質量%以下である請求項1に記載のヒートシール性樹脂組成物。
【請求項3】
前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の軟化点が70℃以上140℃以下である請求項1又は請求項2に記載のヒートシール性樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の合計含有量に対する前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の含有量の質量比(C2/(C1+C2))が0.05以上0.8以下である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のヒートシール性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有量に対する前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が0.20以上1.0以下である請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載のヒートシール性樹脂組成物。
【請求項6】
下記方法により測定されるヘイズが6.0%未満である請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載のヒートシール性樹脂組成物。
(方法)
40mmφの3種3層キャスト成形機を用いて、共押し出し加工を行う低密度ポリエチレン(密度=917kg/m
3、MFR=23g/10分)を加工温度200℃、前記ヒートシール性樹脂組成物を加工温度200℃で、加工速度30m/分、エアナイフでのキャスト成形で積層し、低密度ポリエチレン(厚さ22μm)/ヒートシール性樹脂組成物層(厚さ8μm)の包装材を得る。次いで、得られた前記包装材のヘイズをJIS K 7136:2000に準拠してヘイズメーターにより測定する。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載のヒートシール性樹脂組成物により構成されたヒートシール材。
【請求項8】
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた請求項
7に記載のヒートシール材を含むヒートシール層と、を備える包装材。
【請求項9】
請求項
8に記載の包装材を含む蓋材。
【請求項10】
開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする請求項
9に記載の蓋材と、を備える包装容器。
【請求項11】
前記容器本体の少なくとも一部が非晶性ポリエチレンテレフタレートを含む請求項
10に記載の包装容器。
【請求項12】
開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする蓋材と、を備え、
前記容器本体の少なくとも一部が非晶性ポリエチレンテレフタレートを含み、
前記蓋材は、基材層と、前記基材層の一方の面に設けられたヒートシール材を含むヒートシール層と、を備える包装材を含み、
前記ヒートシール材は、
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、
粘着付与樹脂(C)と、
を含み、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率が、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して8質量%以上であり、
前記粘着付与樹脂(C)は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)と、芳香族系炭化水素樹脂(C2)とを含むヒートシール性樹脂組成物により構成されたヒートシール材である包装容器。
【請求項13】
前記容器本体の少なくとも一部が、シリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレートを含む請求項
10~請求項12のいずれか1項に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、包装材、蓋材及び包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の容器として包装容器が広く使用されている。そしてこれら包装容器を蓋材で密封シールするためのヒートシール材として従来から種々のものが提案され、実用化されている。このようなヒートシール材としては、例えばエチレン・ビニルエステル共重合体を含む樹脂組成物が知られている。
【0003】
このようなエチレン・ビニルエステル共重合体を含む樹脂組成物に関する技術として、特許文献1では、酢酸ビニル含量が3~15重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)10~50重量部、酢酸ビニル含量8~25重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)10~50重量部、および粘着付与剤樹脂(C)5~40重量部((A),(B)及び(C)の合計は100重量部)を含み、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル含量とエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の酢酸ビニル含量の差が3~20重量%、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル含量はエチレン-酢酸ビニル共重合体(B)の酢酸ビニル含量より小さいものであることを特徴とする容器の蓋材シーラント用接着剤が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、エチレン残基単位68~90重量%、酢酸ビニル残基単位3~32重量%からなり、JIS K 6924-1で測定したメルトフローレイトが1~40g/10分であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)50~92重量%、エチレン残基単位50~94重量%、酢酸ビニル残基単位0~40重量%、ビニルアルコール残基単位1.2~50重量%からなるエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(B)3~30重量%、及び粘着付与剤(C)5~20重量%((A)、(B)及び(C)の合計は100重量%)を含み、JIS K 6924-1で測定したメルトフローレイトが1~100g/10分であるポリエチレンテレフタレート用シーラント接着剤が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、エチレン-不飽和エステル共重合体(A):20~45重量%、スチレンモノマーがグラフトされたポリエチレンワックス(B):3~45重量%、及び、融点が40℃以上80℃未満、120℃におけるセイボルトユニバーサル粘度が20~300秒であるワックス(C):30~70重量%を含み、前記ワックス(B)と前記ワックス(C)との合計が50~80重量%である、ホットメルト組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-76398公報
【文献】特開2017-132851公報
【文献】特開2017-149850公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、食品包装市場において篏合蓋タイプの容器から、蓋材を容器本体へヒートシールにより接着するタイプの容器への切替えが進んでいる。容器本体としてはポリエチレン、ポリスチレンなどが広く一般に使用されている。また、容器本体として非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、「APET」とも称する。)も注目されている。しかしながら、従来のヒートシール材では、ヒートシール材の透明性を維持したまま、容器本体であるAPETに対して十分な剥離強度を得ることは困難であった。また、APETに対するヒートシール材の剥離強度を上げようとすると、ヒートシール材の透明性が損なわれてしまうという問題点があった。この問題は、特にシリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレート(以下、「si-APET」とも称する。)を容器本体に用いた場合に顕著であり、ヒートシール材の透明性を維持したままsi-APETに対して十分な剥離強度を示すヒートシール材が求められていた。
【0008】
本開示は上記に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有するヒートシール材を製造可能なヒートシール性樹脂組成物、並びにこのヒートシール性樹脂組成物から得られるヒートシール材、包装材、蓋材及び包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、
粘着付与樹脂(C)と、
を含み、
前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率が、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して8質量%以上であり、
前記粘着付与樹脂(C)は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)と、芳香族系炭化水素樹脂(C2)とを含むヒートシール性樹脂組成物。
<2> 前記粘着付与樹脂(C)の含有率が、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に1質量%以上40質量%以下である<1>に記載のヒートシール性樹脂組成物。
<3> 前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の軟化点が70℃以上140℃以下である<1>又は<2>に記載のヒートシール性樹脂組成物。
<4> 前記脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の合計含有量に対する前記芳香族系炭化水素樹脂(C2)の含有量の質量比(C2/(C1+C2))が0.05以上0.8以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
<5> 前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有率が、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に20質量%以上80質量%以下である<1>~<4>のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
<6> 前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有量に対する前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)が0.20以上1.0以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
<7> 下記方法により測定されるヘイズが6.0%未満である<1>~<6>のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物。
(方法)
40mmφの3種3層キャスト成形機を用いて、共押し出し加工を行う低密度ポリエチレン(密度=917kg/m3、MFR=23g/10分)を加工温度200℃、前記ヒートシール性樹脂組成物を加工温度200℃で、加工速度30m/分、エアナイフでのキャスト成形で積層し、低密度ポリエチレン(厚さ22μm)/ヒートシール性樹脂組成物層(厚さ8μm)の包装材を得る。次いで、得られた前記包装材のヘイズをJIS K 7136:2000に準拠してヘイズメーターにより測定する。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載のヒートシール性樹脂組成物により構成されたヒートシール材。
<9> 基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた<8>に記載のヒートシール材を含むヒートシール層と、を備える包装材。
<10> <9>に記載の包装材を含む蓋材。
<11> 開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする<10>に記載の蓋材と、を備える包装容器。
<12> 前記容器本体の少なくとも一部が非晶性ポリエチレンテレフタレートを含む<11>に記載の包装容器。
<13> 前記容器本体の少なくとも一部が、シリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレートを含む<11>又は<12>に記載の包装容器。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有するヒートシール材を製造可能なヒートシール性樹脂組成物、並びにこのヒートシール性樹脂組成物から得られるヒートシール材、包装材、蓋材及び包装容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0012】
なお、本開示において、数値範囲における「~」は、「~」の前後の数値を含むことを意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の構成単位を意味する。
本開示において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を意味する。
本開示において、樹脂成分の全質量は、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)、粘着付与樹脂(C)及び必要に応じて含まれるその他の樹脂の合計質量を意味する。
【0013】
〔ヒートシール性樹脂組成物〕
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、粘着付与樹脂(C)と、を含み、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率が、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して8質量%以上であり、前記粘着付与樹脂(C)は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)と、芳香族系炭化水素樹脂(C2)とを含む。
【0014】
近年、食品包装市場において篏合蓋タイプの容器から、蓋材を容器本体へヒートシールにより接着するタイプの容器への切替えが進んでいる。本発明者らは、容器本体に接着させる蓋材のヒートシール材として用いるヒートシール性樹脂組成物として、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、粘着付与樹脂(C)と、を含む樹脂組成物を検討していた。
【0015】
しかし、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる粘着付与樹脂(C)として、脂環族系炭化水素樹脂(C1)を用いた場合、シリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレート(si-APET)に対するヒートシール材の接着性が充分でなかった。さらに、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる粘着付与樹脂(C)として、芳香族系炭化水素樹脂(C2)を用いた場合、非晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)に対するヒートシール材の接着性が充分でなく、かつ透明性に優れるヒートシール材の作製が困難であった。
また、粘着付与樹脂(C)として脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)を組み合わせることも検討したが、これらを組み合わせた場合であってもsi-APETに対するヒートシール材の接着性及びヒートシール材の優れた透明性を両立させることは困難であった。
【0016】
本発明者らは以上を考慮し、ビニルエステルに由来する構成単位の含有率が特定の範囲であるエチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)を含む粘着付与樹脂(C)と、を含むヒートシール性樹脂組成物を用いることで、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有するヒートシール材を製造可能であることを見出した。
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、例えば、非晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等によって構成される容器本体におけるヒートシール材の作製に用いられることが好ましく、シリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレート(si-APET)によって構成される容器本体におけるヒートシール材の作製に用いられることがより好ましい。
【0017】
以下、本開示のヒートシール性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
<エチレン・ビニルエステル共重合体(A)>
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を含む。エチレン・ビニルエステル共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位と、ビニルエステルに由来する構成単位とを含む共重合体であれば特に限定されない。
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0019】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0020】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)は、エチレンに由来する構成単位及びビニルエステルに由来する構成単位のみからなる共重合体であってもよく、エチレン及びビニルエステル以外のモノマーに由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0021】
エチレン及びビニルエステル以外のモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等の不飽和炭化水素、ビニル硫酸、ビニル硝酸等の酸化物、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化合物、ビニル基含有の1級及び2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0022】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して、8質量%以上であり、ヒートシール材としたときの透明性と、si-APETに対する剥離強度とのバランスの観点から、8質量%以上46質量%以下であることが好ましく、9質量%以上42質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0023】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるエチレンに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して、54質量%以上92質量%以下であることが好ましく、58質量%以上91質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)はエチレン及びビニルエステル以外のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。エチレン・ビニルエステル共重合体に含まれ得るエチレン及びビニルエステル以外のモノマーに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・ビニルエステル共重合体(A)を構成する共重合体の全構成単位に対して、0質量%以上10質量%以下であってもよく、0質量%以上5質量%以下であってもよい。
【0025】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR;JIS K 7210:1999、190℃、荷重2160g)は、0.1g/10分~50g/10分であることが好ましく、0.5g/10分~20g/10分であることがより好ましく、1g/10分~10g/10分であることがさらに好ましい。
【0026】
ヒートシール性樹脂組成物に含まれるエチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有率は、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、APETに対してより優れた剥離強度を有するヒートシール材を製造可能な観点から、25質量%~70質量%であることがより好ましく、30質量%~60質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温及び高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。オートクレーブ法又はチューブラー法のいずれの方法でも製造可能である。また、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0028】
<エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)>
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)を含む。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、エチレンに由来する構成単位と、不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位を含む共重合体であれば特に限定されない。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸アルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0029】
不飽和カルボン酸エステル、好ましくは不飽和カルボン酸アルキルエステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0030】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基等のアルキル基が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位の炭素数は、1~8であることが好ましい。
【0031】
不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、及び(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルは1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、及び(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0032】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であることが好ましい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、具体的には、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等が好ましい。
【0033】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、エチレンに由来する構成単位及び不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位のみからなる共重合体であってもよく、エチレン及び不飽和カルボン酸エステル以外のモノマーに由来する構成単位を含む共重合体であってもよい。
【0034】
エチレン及び不飽和カルボン酸エステル以外のモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等の不飽和炭化水素、ビニル硫酸、ビニル硝酸等の酸化物、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化合物、ビニル基含有の1級及び2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0035】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)に含まれる不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)を構成する共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、6質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)に含まれるエチレンに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)を構成する共重合体の全構成単位に対して、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上94質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上92質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は、エチレン及び不飽和カルボン酸エステル以外のモノマーに由来する構成単位を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体に含まれ得るエチレン及び不飽和カルボン酸エステル以外のモノマーに由来する構成単位の含有率は、前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)を構成する共重合体の全構成単位に対して、0質量%以上10質量%以下であってもよく、0質量%以上5質量%以下であってもよい。
【0038】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)のメルトマスフローレート(MFR;JIS K 7210:1999、190℃、荷重2160g)は、0.1g/10分~100g/10分であることが好ましく、1g/10分~50g/10分であることがより好ましく、5g/10分~30g/10分であることがさらに好ましい。
【0039】
ヒートシール性樹脂組成物中にて、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有量に対するエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の含有量の質量比(B/A)は、ヒートシール材としたときの透明性並びにAPET及びsi-APETに対する剥離強度のバランスの観点から、0.20以上1.0以下であることが好ましく、0.30以上0.95以下であることがより好ましく、0.40以上0.90以下であることがさらに好ましい。
【0040】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温及び高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。オートクレーブ法又はチューブラー法のいずれの方法でも製造可能である。また、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)は市販されているものを用いてもよい。
【0041】
エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率とエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)に含まれる不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位の含有率との平均エステル含有率は、ヒートシール材としたときの透明性と、si-APETに対する剥離強度とのバランスの観点から、14質量%を超えることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、16質量%以上であることがさらに好ましく、18質量%を超えることが特に好ましい。上限値については、特に限定はなく、ブロッキング防止の観点から、46質量%以下であることが好ましく、si-APETに対する剥離強度の観点から、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。
なお、平均エステル含有率は、以下の式にて計算できる。(エチレン・ビニルエステル共重合体(A)に含まれるビニルエステルに由来する構成単位の含有率[質量%]×エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有量[質量%]+エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)に含まれる不飽和カルボン酸エステルに由来する構成単位の含有率[質量%]×エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の含有量[質量%])÷(エチレン・ビニルエステル共重合体(A)の含有量[質量%]+エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)の含有量[質量%])
【0042】
<粘着付与樹脂(C)>
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、粘着付与樹脂(C)を含む。さらに、粘着付与樹脂(C)は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)と、芳香族系炭化水素樹脂(C2)とを含む。
脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)は、それぞれ独立に、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0043】
脂環族系炭化水素樹脂(C1)としては、スペントC4~C5留分中のジエン成分を環化二量体化後重合させた樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などが挙げられる。これらの中でも、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂がより好ましい。
【0044】
芳香族系炭化水素樹脂(C2)としては、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレンなどのC8~C10のビニル芳香族炭化水素、スチレン、イソプロペニルトルエン等を主成分とした樹脂、これらC8~C10のビニル芳香族炭化水素、スチレン、イソプロペニルトルエンを、後述のC4又はC5であるモノ又はジオレフィンと共重合して得られる樹脂(脂肪族-芳香族共重合体系炭化水素樹脂)などが挙げられる。これらの中でも、α-メチルスチレンを主成分とした樹脂及びスチレンを主成分とした樹脂がより好ましく、α-メチルスチレンを主成分とした樹脂がさらに好ましい。なお、「主成分とした」とは、樹脂の全構成単位に対して、当該成分に由来する構成単位の含有率が50質量%を超えることを意味する。
【0045】
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)以外のその他の粘着付与樹脂を含んでいてもよい。その他の粘着付与樹脂としては、脂肪族系炭化水素樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン類等が挙げられる。
【0046】
脂肪族系炭化水素樹脂としては、1-ブテン、イソブチレン、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、ピペリレンなどのC4又はC5であるモノ又はジオレフィンを主成分とする重合体などが挙げられる。
【0047】
テルペン系樹脂としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン-フェノール共重合体、α-ピネン-フェノール共重合体、水素化テルペン樹脂(水添テルペン樹脂)などが挙げられる。
【0048】
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などが挙げられる。変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものが挙げられる。
【0049】
脂環族系炭化水素樹脂(C1)の軟化点は、熱安定性及び柔軟性の観点から、85℃以上155℃以下であることが好ましく、100℃以上145℃以下であることがより好ましく、110℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。
本開示において、軟化点は、JIS K 6863:1994に準拠して測定される環球法軟化点を意味する。
【0050】
芳香族系炭化水素樹脂(C2)の軟化点は、熱安定性及び柔軟性の観点から、70℃以上140℃以下であることが好ましく、85℃以上130℃以下であることがより好ましく、95℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
【0051】
ヒートシール性樹脂組成物に含まれる粘着付与樹脂(C)の含有率は、ヒートシール材としたときのAPET及びsi-APETに対する剥離強度並びに樹脂組成物の加工性、取扱い性等の観点から、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
ヒートシール性樹脂組成物では、脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)の合計含有量に対する芳香族系炭化水素樹脂(C2)の含有量の質量比(C2/(C1+C2))は、ヒートシール材としたときの透明性と、si-APETに対する剥離強度とのバランスの観点から、0.05以上0.8以下であることが好ましく、0.08以上0.6以下であることがより好ましく、0.1以上0.5以下であることがさらに好ましい。
【0053】
ヒートシール性樹脂組成物はその他の粘着付与樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。脂環族系炭化水素樹脂(C1)、芳香族系炭化水素樹脂(C2)及びその他の粘着付与樹脂の合計含有量(以下、「粘着付与樹脂(C)の全含有量」とも称する。)に対するその他の粘着付与樹脂の含有量の質量比(その他の粘着付与樹脂の含有量/粘着付与樹脂(C)の全含有量)は、0以上0.1以下であってもよく、0以上0.05以下であってもよい。
【0054】
本開示のヒートシール性樹脂組成物では、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)及び粘着付与樹脂(C)の合計含有率は、ヒートシール性樹脂組成物に含まれる樹脂成分の全質量を100質量%とした場合に、80質量%~100質量%であることが好ましく、85質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましく、95質量%~100質量%であることがさらにより好ましく、98質量%~100質量%であることが特に好ましく、99質量%を超えて100質量%以下であることがとりわけ好ましい。
【0055】
<その他の成分>
本開示のヒートシール性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)、及び粘着付与樹脂(C)以外の成分(以下、「その他の成分」とも称する。)を含んでいてもよい。その他の成分としては特に限定されず、例えば、添加剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等のその他の樹脂等が挙げられる。添加剤としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤等が挙げられる。その他の成分は1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<ヒートシール性樹脂組成物の調製方法>
本開示のヒートシール性樹脂組成物の調製方法としては特に限定されず、例えば、エチレン・ビニルエステル共重合体(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)と、脂環族系炭化水素樹脂(C1)及び芳香族系炭化水素樹脂(C2)を含む粘着付与樹脂(C)と、必要に応じて添加されるその他の成分と、をドライブレンドして混合することにより調製する方法、これらの成分を押出機等で溶融混練することにより調製する方法などが挙げられる。
【0057】
<ヒートシール性樹脂組成物の物性>
本開示のヒートシール性樹脂組成物では、ヒートシール材の透明性の観点から、下記方法により測定されるヘイズが6.0%未満であることが好ましく、5.8%以下であることがより好ましく、5.5%以下であることがさらに好ましい。
(方法)
40mmφの3種3層キャスト成形機を用いて、共押し出し加工を行う低密度ポリエチレン(密度=917kg/m3、MFR=23g/10分)を加工温度200℃、前記ヒートシール性樹脂組成物を加工温度200℃で、加工速度30m/分、エアナイフでのキャスト成形で積層し、低密度ポリエチレン(厚さ22μm)/ヒートシール性樹脂組成物層(厚さ8μm)の包装材を得る。次いで、得られた前記包装材のヘイズをJIS K 7136:2000に準拠してヘイズメーターにより測定する。
【0058】
本開示のヒートシール性樹脂組成物では、上記方法により測定されるヘイズの下限は特に限定されず、例えば、1.0%以上であってもよく、2.0%以上であってもよい。
【0059】
〔ヒートシール材〕
本開示のヒートシール材は、前述の本開示のヒートシール性樹脂組成物により構成されている。本開示のヒートシール材は、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有する。本開示のヒートシール材は、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有するため、APET製又はsi-APET製の容器本体の蓋材として特に好適に用いることができる。
【0060】
ヒートシール材の製造方法としては特に限定されず、従来公知の製造方法が挙げられる。具体的には、プレス成形法、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。
【0061】
〔包装材及び蓋材〕
本開示の包装材は、基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた前述の本開示のヒートシール材を含むヒートシール層と、を備える。本開示の包装材は、本開示のヒートシール材を含むヒートシール層を備えるため、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有する。そのため、本開示の包装材を含む蓋材は、容器本体の蓋材として特に好適に用いることができる。
【0062】
包装材において、ヒートシール層の厚さは、5μm以上200μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0063】
ヒートシール層は単層であっても2層以上の多層であってもよい。ヒートシール層が2層以上である場合、ヒートシール層は、本開示のヒートシール材が2層以上積層されていてもよく、本開示のヒートシール材と他のヒートシール材とがそれぞれ少なくとも1層以上積層されていてもよい。他のヒートシール材に用いられる樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体もしくはそのアイオノマー、エチレン・メタクリル酸共重合体もしくはそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、結晶性もしくは非晶性ポリエステル変性体、又はこれらの多元共重合体若しくは混合物などが挙げられる。
【0064】
基材層は、包装材の取扱い性、機械的特性、導電性、断熱性、耐熱性、防湿性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。基材層としては、例えば、紙、不織布、金属層(アルミニウム箔等)、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、アル
ミニウム蒸着プラスチックフィルム、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム、非晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。基材層は、1層単独であってもよく、2層以上の組み合わせであってもよい。基材層は、任意の率で一軸又は二軸に延伸されたものであってもよい。
【0065】
基材層とヒートシール層との接着性を向上させる観点から、基材層に表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等が挙げられる。
【0066】
基材層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上40μm以下がさらに好ましい。
基材層の形状は特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。
【0067】
本開示の包装材は、基材層及びヒートシール層のみからなる包装材であってもよく、包装材に様々な機能を付与する観点から、基材層及びヒートシール層以外の層(以下、「その他の層」とも称する。)を備える包装材であってもよい。その他の層としては、例えば、発泡層、金属層、無機物層、ガスバリア性樹脂層、帯電防止層、ハードコート層、接着層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。その他の層は、1層単独であってもよく、2層以上の組み合わせであってもよい。
接着層は、例えば、各層同士の接着性を高めるために設けられる層である。
【0068】
ヒートシール層が2層以上の場合にそれらを積層させる方法、基材層とヒートシール層とを積層させる方法、あるいは、基材層とヒートシール層とその他の層とを積層させる方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、押出ラミネーション法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法等が挙げられる。
【0069】
本開示の包装材は、任意の率で一軸又は二軸に延伸されたものであってもよい。
【0070】
押出成形、射出成形、ブロー成形、フィルム成形、シート成形等の成形方法を用いて、本開示のヒートシール性樹脂組成物を成形することにより、本開示の包装材を各種形状とすることができる。
包装材の形状は特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。
【0071】
本開示の包装材は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装材として好適に用いることができ、食品又は医薬品の包装材として特に好適に用いることができる。
【0072】
〔包装容器〕
本開示の包装容器は、例えば、開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする前述の本開示の蓋材と、を備える。本開示の蓋材は、透明性に優れ、APET及びsi-APETに対して優れた剥離強度を有する。
【0073】
開口を有する容器本体の少なくとも一部に含まれる成分としては、特に限定されず、非晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の成分が挙げられる。中でも、非晶性ポリエチレンテレフタレート(APET)が好ましく、シリコーンが塗布された非晶性ポリエチレンテレフタレート(si-APET)がより好ましい。
前述の成分は、開口を有する容器本体の少なくとも一部に含まれていればよく、本開示の蓋材と接触する部分に含まれていることが好ましく、蓋材の包装材に含まれるヒートシール材と接触する部分に含まれていることがより好ましい。
【0074】
本開示の包装容器は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装容器として好適に用いることができ、食品又は医薬品の包装容器として特に好適に用いることができる。
【0075】
以上、本開示のヒートシール性樹脂組成物、ヒートシール材、包装材、蓋材及び包装容器について説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0076】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
ヒートシール性樹脂組成物の調製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
【0078】
<その他のエチレン・ビニルエステル共重合体>
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=7.5g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=94質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率=6質量%)
<エチレン・ビニルエステル共重合体(A)>
EVA2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=3.0g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=90質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率=10質量%)
EVA3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=1.3g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=86質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率=14質量%)
EVA4:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=2.5g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=81質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率=19質量%)
EVA5:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=2.5g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=75質量%、酢酸ビニルに由来する構成単位の含有率=25質量%)
【0079】
<エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体(B)>
EMA1:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=6g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=91質量%、アクリル酸メチルに由来する構成単位の含有率=9質量%、チューブラー高圧重合法により製造)
EMA2:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=8g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=80質量%、アクリル酸メチルに由来する構成単位の含有率=20質量%、チューブラー高圧重合法により製造)
EMA3:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=20g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=76質量%、アクリル酸メチルに由来する構成単位の含有率=24質量%、チューブラー高圧重合法により製造)
EMA4:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=18g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有率=80質量%、アクリル酸メチルに由来する構成単位の含有率=20質量%、オートクレーブ高圧重合法により製造)
【0080】
<脂環族系炭化水素樹脂(C1)>
粘着付与樹脂1:芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂(荒川化学工業社製、アルコンAM-1、環球法軟化点=115℃)
【0081】
<芳香族系炭化水素樹脂(C2)>
粘着付与樹脂2:α-メチルスチレンを主成分とした樹脂(エア・ブラウン社製、SYLVARES SA100、環球法軟化点=100℃)
【0082】
<添加剤>
スリップ剤:エルカ酸アミド(ELA、日油株式会社製)
【0083】
[実施例1~9、比較例1~5]
<評価サンプルの作製>
(1)ヒートシール性樹脂組成物の調製
表1に示す配合割合で各成分を押出機(65mmφ、L/D=28、先端ダルメージフライトスクリュー)にて160℃で溶融混練し、各実施例及び各比較例のヒートシール性樹脂組成物を得た。
【0084】
(2)包装材の作製
40mmφ単層キャスト成形機を用いて、上記の各種ヒートシール性樹脂組成物を加工温度200℃、加工速度25m/分の押出ラミネート法により溶融膜とし、予め作製したPET(厚さ12μm)/PE(厚さ15μm)の基材上に上記ヒートシール性樹脂組成物を30μm厚で積層し、PET(厚さ12μm)/PE(厚さ15μm)/ヒートシール性樹脂組成物層(厚さ30μm)の包装材(1)を得た。
得られた前記包装材(1)について、以下の評価をそれぞれ行った。その結果を表1に示す。
【0085】
[対シリコーン塗布APET剥離強度]
包装材(1)を、厚さ0.4mmのシリコーンが塗布されたAPETシート(以下、「シリコーン塗布APET」とも称する。)上に、押圧力0.2MPa、加熱温度180℃、加熱時間1.0秒の条件でヒートシールし、室温で24時間放置した。その後、前記包装材から切り出した15mm幅の試験片の両面を反対方向に(180°の剥離方向で)引張り、最大応力を求めた。
【0086】
以下の評価基準により包装材(1)の対シリコーン塗布APET剥離強度を評価した。評価がAであれば、対シリコーン塗布APET剥離強度は良好であり、評価がBであれば、対シリコーン塗布APET剥離強度は不良である。
-評価基準-
A:剥離強度が9N/15mm以上
B:剥離強度が9N/15mm未満
【0087】
[対シリコーン未塗布APET剥離強度]
包装材(1)を、厚さ0.4mmのシリコーンが塗布されていないAPET(以下、「シリコーン未塗布APET」とも称する。)シート上に、押圧力0.2MPa、加熱温度180℃、加熱時間1.0秒の条件でヒートシールし、室温で24時間放置した。その後、前記包装材から切り出した15mm幅の試験片の両面を反対方向に(180°の剥離方向で)引張り、最大応力を求めた。
【0088】
以下の評価基準により包装材(1)の対シリコーン未塗布APET剥離強度を評価した。評価がAであれば、対シリコーン未塗布APET剥離強度は良好であり、評価がBであれば、対シリコーン未塗布APET剥離強度は不良である。
-評価基準-
A:剥離強度が9N/15mm以上
B:剥離強度が9N/15mm未満
【0089】
[透明性]
40mmφの3種3層キャスト成形機を用いて、共押し出し加工を行う低密度ポリエチレン(密度=917kg/m3、MFR=23g/10分)を加工温度200℃、上記各種のヒートシール性樹脂組成物を加工温度200℃で、加工速度30m/分、エアナイフでのキャスト成形で積層し、低密度ポリエチレン(厚さ22μm)/ヒートシール性樹脂組成物層(厚さ8μm)の包装材(2)を得た。
得られた包装材(2)について、村上色彩社製ヘイズメーターHM-150を用いて、JIS K 7136:2000に準拠してヘイズ(曇り度、単位:%)を測定した。評価がAであれば、包装材(2)の透明性は良好であり、評価がBであれば、包装材(2)の透明性は不良である。
【0090】
以下の評価基準により包装材(2)の透明性を評価した。
-評価基準-
A:ヘイズが6.0%未満
B:ヘイズが6.0%以上
【0091】
【0092】
表1から明らかなように、実施例1~9のヒートシール性樹脂組成物を用いた包装材は、対シリコーン塗布APET剥離強度、対シリコーン未塗布APET剥離強度及び透明性に優れていた。これに対し、比較例1~5のヒートシール性樹脂組成物を用いた包装材は、対シリコーン塗布APET剥離強度、対シリコーン未塗布APET剥離強度及び透明性の中で少なくとも1つは不良であった。
以上から、本実施形態に係るヒートシール性樹脂組成物によれば、対シリコーン塗布APET剥離強度、対シリコーン未塗布APET剥離強度、透明性に優れた包装材を実現できることが確認できた。
【0093】
2021年3月18日に出願された日本国特許出願2021-044950号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
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