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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/38 20060101AFI20241202BHJP
   E02F 9/14 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
E02F3/38 A
E02F9/14 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023531435
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014329
(87)【国際公開番号】W WO2023276345
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021107839
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八田 和之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-214537(JP,A)
【文献】特開平08-269996(JP,A)
【文献】特開2019-127725(JP,A)
【文献】特開2021-008741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/38
E02F 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体の前部に設けられた1つの支持ブラケットと、
前記支持ブラケットに上下方向に延伸するスイング軸心回りに揺動可能に取り付けられた1つのブーム支持体と、
前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされた1本のブームと、
前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、
を備えた単腕型の作業機であって
前記ブームは、前記ブーム支軸回りに上下揺動した場合に、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位の正面と、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位の正面との成す角度である屈曲角が変化しない構成であり、
さらに、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記ブーム支持体よりも後方を通り、且つ、記第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されている作業機。
【請求項2】
機体と、
前記機体の前部に設けられた1つの支持ブラケットと、
前記支持ブラケットに上下方向に延伸するスイング軸心回りに揺動可能に取り付けられた1つのブーム支持体と、
前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされた1本のブームと、
前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、
を備えた単腕型の作業機であって
前記ブームは、前記ブーム支軸回りに上下揺動した場合に、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位の正面と、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位の正面との成す角度である屈曲角が変化しない構成であり、
さらに、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通り、且つ前記アーム支軸に直交する鉛直線が側方視で前記ブーム支持体の一部と重畳するように構成されている作業機。
【請求項3】
前記機体に搭載された運転席を備え、
前記ブームは、前記最上げ位置における前記第2部位の背面の延長線であって、前記第2部位の背面から下方に延びる第1延長線が前記運転席の前方を通るように構成されている請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
前記最上げ位置において、前記アーム支軸及び前記ブーム支軸に直交する直線を第2直線とし、前記第2直線及び前記第1シリンダ支軸に直交する直線を第3直線とし、前記第2直線と前記第3直線との交点を第1交点とし、前記第3直線と前記ブーム本体部の正面との交点を第2交点とし、前記第直線と前記ブーム本体部の背面との交点を第3交点としたときに、
前記第1交点と前記第2交点と間の第1距離は、前記第2交点と前記第3交点との間の第2距離よりも小さい請求項1~3のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項5】
機体と、
前記機体の前方に設けられたブーム支持体と、
前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされたブームと、
前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、
を備え、
前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されており、
前記最上げ位置において、前記アーム支軸に直交する鉛直線を第4直線とし、前記第4直線及び前記第1シリンダ支軸に直交する直線を第5直線とし、前記第4直線と前記第5直線との交点を第5交点とし、前記第5直線と前記ブーム本体部の背面との交点を第6交点としたときに、
前記第5交点と前記第6交点との間の第5距離は、前記アーム支軸の軸心と前記第5交点との間の第6距離よりも小さい作業機。
【請求項6】
前記最上げ位置において、前記ブーム支軸に直交する鉛直線を第6直線とし、前記第2シリンダ支軸に直交する鉛直線を第7直線としたときに、
前記第4直線と前記第7直線との間の第7距離は、前記第6直線と前記第7直線との間の第8距離よりも小さい請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記第6距離は、前記第5直線と前記ブーム基部の側面の上縁との間の鉛直方向の第9距離よりも大きい請求項5または請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
機体と、
前記機体の前方に設けられたブーム支持体と、
前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされたブームと、
前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、
を備え、
前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されており、
前記ブーム基部は、前記ブーム支軸を介して枢支される枢支部位と、前記ブーム本体部の前記第1部位に接続される接続部位とを有し、且つ、前記ブームが前記最上げ位置に揺動された状態で、前記枢支部位が前記ブーム支軸側から上方に向かうにつれて後方に移行する傾斜方向に延び、前記接続部位が前記枢支部位から上方に延びるように、前記枢支部位と前記接続部位との間で屈曲されている作業機。
【請求項9】
前記第1部位の正面と前記第2部位の正面との成す第1屈曲角は、前記枢支部位の正面と前記接続部位の正面との成す第2屈曲角よりも大きい請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記アームに作業具支軸を介して枢支され、前記作業具支軸回りに揺動することで、先端部が前記アームに最も近づいた作業具クラウド位置と、前記先端部が前記アームから最も離れた作業具ダンプ位置との間を揺動可能な作業具と、
前記アームを、前記ブームに近づくアームクラウド方向及び前記ブームから遠ざかるアームダンプ方向に揺動させるアームシリンダと、
前記作業具の前記先端部の揺動軌道と前記ブームシリンダとが所定間隔以上隔てられるように、前記アームシリンダの前記アームクラウド方向のストロークを制限するアームクラウド制限部と、
を備えている請求項1~9のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項11】
前記アームに作業具支軸を介して枢支され、前記作業具支軸回りに揺動することで、先端部が前記アームに最も近づいた作業具クラウド位置と、前記先端部が前記アームから最も離れた作業具ダンプ位置との間を揺動可能な作業具と、
前記作業具を、当該作業具の先端部が前記作業具クラウド位置に近づく作業具クラウド方向、及び前記先端部が前記作業具ダンプ位置に近づく作業具ダンプ方向に揺動させる作業具シリンダと、
前記作業具の前記先端部の揺動軌道と前記ブームシリンダとが所定間隔以上隔てられるように、前記作業具シリンダの前記作業具クラウド方向のストロークを制限する作業具クラウド制限部と、
を備えている請求項1~10のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された作業機が知られている。
特許文献1に開示された作業機は、機体の前方に設けたブーム支持体に上下揺動可能に支持されたブームを有している。ブームは、ブーム支持体に枢支されるブーム基部と、アームが枢支されるブーム先端部と、ブーム基部とブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含む。ブーム本体部は、中間部とブーム基部との間の第1部位と、中間部と先端部との間の第2部位とを含む。
【0003】
ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、第1部位がブーム基部から上方に延び、第2部位が中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延びる姿勢とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特許公開公報「特開2020-148070号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブームを最上げ位置にしたときでのブーム先端部の高さを高くしたいという要望がある。また、ブームの重量を低減したいという要望もある。
本発明は、前記問題点に鑑み、ブームを最上げ位置にしたときでのブーム先端部の高さを高くすることができ、且つブームの重量を低減できる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業機は、機体と、前記機体の前部に設けられた1つの支持ブラケットと、前記支持ブラケットに上下方向に延伸するスイング軸心回りに揺動可能に取り付けられた1つのブーム支持体と、前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされた1本のブームと、前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、を備えた単腕型の作業機であって前記ブームは、前記ブーム支軸回りに上下揺動した場合に、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位の正面と、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位の正面との成す角度である屈曲角が変化しない構成であり、さらに、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記ブーム支持体よりも後方を通り、且つ、記第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されている。
【0007】
本発明の他の態様に係る作業機は、機体と、前記機体の前部に設けられた1つの支持ブラケットと、前記支持ブラケットに上下方向に延伸するスイング軸心回りに揺動可能に取り付けられた1つのブーム支持体と、前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされた1本のブームと、前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、を備えた単腕型の作業機であって前記ブームは、前記ブーム支軸回りに上下揺動した場合に、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位の正面と、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位の正面との成す角度である屈曲角が変化しない構成であり、さらに、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通り、且つ前記アーム支軸に直交する鉛直線が側方視で前記ブーム支持体の一部と重畳するように構成されている。
また、前記機体に搭載された運転席を備え、
前記ブームは、前記最上げ位置における前記第2部位の背面の延長線であって、前記第2部位の背面から下方に延びる第1延長線が前記運転席の前方を通るように構成されている。
【0008】
また、前記最上げ位置において、前記アーム支軸及び前記ブーム支軸に直交する直線を第2直線とし、前記第2直線及び前記第1シリンダ支軸に直交する直線を第3直線とし、前記第2直線と前記第3直線との交点を第1交点とし、前記第3直線と前記ブーム本体部の正面との交点を第2交点とし、前記第直線と前記ブーム本体部の背面との交点を第3交点としたときに、
前記第1交点と前記第2交点と間の第1距離は、前記第2交点と前記第3交点との間の第2距離よりも小さい。
【0009】
本発明のさらに他の態様に係る作業機は、機体と、前記機体の前方に設けられたブーム支持体と、前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされたブームと、前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、を備え、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されており、前記最上げ位置において、前記アーム支軸に直交する鉛直線を第4直線とし、前記第4直線及び前記第1シリンダ支軸に直交する直線を第5直線とし、前記第4直線と前記第5直線との交点を第5交点とし、前記第5直線と前記ブーム本体部の背面との交点を第6交点としたときに、前記第5交点と前記第6交点との間の第5距離は、前記アーム支軸の軸心と前記第5交点との間の第6距離よりも小さい。
【0010】
また、前記最上げ位置において、前記ブーム支軸に直交する鉛直線を第6直線とし、前記第2シリンダ支軸に直交する鉛直線を第7直線としたときに、前記第4直線と前記第7直線との間の第7距離は、前記第6直線と前記第7直線との間の第8距離よりも小さい。
また、前記第6距離は、前記第5直線と前記ブーム基部の側面の上縁との間の鉛直方向の第9距離よりも大きい。
【0011】
本発明のさらに他の態様に係る作業機は、機体と、前記機体の前方に設けられたブーム支持体と、前記ブーム支持体にブーム支軸を介して枢支されるブーム基部と、アーム支軸を介してアームを揺動可能に枢支するブーム先端部と、前記ブーム基部と前記ブーム先端部との間の部分であってブーム長手方向の中間部で屈曲されたブーム本体部とを含み、前記ブーム支軸回りに上下揺動可能とされたブームと、前記ブームの正面側に配置され且つ一端が前記ブーム本体部の正面側に第1シリンダ支軸を介して枢支され他端が前記ブーム支持体に第2シリンダ支軸を介して枢支されていて伸縮させることにより前記ブームを揺動させるブームシリンダと、を備え、前記ブームは、当該ブームが最も上方に揺動された最上げ位置において、前記中間部と前記ブーム基部との間の第1部位が前記ブーム基部から前記中間部に向けて上方に延伸し、前記中間部と前記ブーム先端部との間の第2部位が前記中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、前記アーム支軸及び前記第1シリンダ支軸に直交し且つ前記第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が前記機体よりも前方を通るように構成されており、前記ブーム基部は、前記ブーム支軸を介して枢支される枢支部位と、前記ブーム本体部の前記第1部位に接続される接続部位とを有し、且つ、前記ブームが前記最上げ位置に揺動された状態で、前記枢支部位が前記ブーム支軸側から上方に向かうにつれて後方に移行する傾斜方向に延び、前記接続部位が前記枢支部位から上方に延びるように、前記枢支部位と前記接続部位との間で屈曲されている。
【0012】
また、前記第1部位の正面と前記第2部位の正面との成す第1屈曲角は、前記枢支部位の正面と前記接続部位の正面との成す第2屈曲角よりも大きい。
また、前記作業機は、前記アームに作業具支軸を介して枢支され、前記作業具支軸回りに揺動することで、先端部が前記アームに最も近づいた作業具クラウド位置と、前記先端部が前記アームから最も離れた作業具ダンプ位置との間を揺動可能な作業具と、前記アームを、前記ブームに近づくアームクラウド方向及び前記ブームから遠ざかるアームダンプ方向に揺動させるアームシリンダと、前記作業具の前記先端部の揺動軌道と前記ブームシリンダとが所定間隔以上隔てられるように、前記アームシリンダの前記アームクラウド方向のストロークを制限するアームクラウド制限部と、を備えている。
【0013】
また、前記作業機は、前記アームに作業具支軸を介して枢支され、前記作業具支軸回りに揺動することで、先端部が前記アームに最も近づいた作業具クラウド位置と、前記先端部が前記アームから最も離れた作業具ダンプ位置との間を揺動可能な作業具と、前記作業具を、当該作業具の先端部が前記作業具クラウド位置に近づく作業具クラウド方向、及び前記先端部が前記作業具ダンプ位置に近づく作業具ダンプ方向に揺動させる作業具シリンダと、前記作業具の前記先端部の揺動軌道と前記ブームシリンダとが所定間隔以上隔てられるように、前記作業具シリンダの前記作業具クラウド方向のストロークを制限する作業具クラウド制限部と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
上記の作業機によれば、ブームが、最上げ位置に上方揺動された状態で、ブーム本体部の第1部位がブーム基部から中間部に向けて上方に延び、ブーム本体部の第2部位が中間部から上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延びるように屈曲された作業機において、アーム支軸及び第1シリンダ支軸に直交し且つ第1シリンダ支軸より下方に延びる第1直線が機体よりも前方を通るように構成することにより、ブームの屈曲角(第1部位と第2部位との成す角度)が従来に比べて大きくなる。これにより、ブームを最上げ位置にしたときでのブーム先端部の高さを高くすることができ、且つブームの重量も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業機の側面図である。
図2】作業装置の側面図である。
図3】ブームがスイングブラケットに枢支された状態の斜視図である。
図4】ブームの形状を説明するための側面図である。
図5】ブームの形状を説明するための側面図である。
図6】ブームの形状を説明するための側面図である。
図7】ブームの形状を説明するための側面図である。
図8】本実施形態のブームの効果を説明するための側面図である。
図9】ブームを下げ位置にしたときの側面図である。
図10】作業機の油圧システムを示す図である。
図11】ブームの揺動位置の変化状態を示した図である。
図12】ちりとり作業の状態の側面図である。
図13】油圧ホースの配策状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る作業機1の全体構成を示す概略側面図である。本実施形態では、作業機1として旋回作業機であるバックホーが例示されている。
図1に示すように、作業機1は、機体(旋回台)2と、走行装置3と、作業装置4とを備えている。機体2には、オペレータ(運転者)が着座する運転席6が搭載されている。また、機体2には、キャノピ5が搭載されている。キャノピ5は、運転席6を保護する運転席保護装置である。運転席保護装置としてキャノピ5に代えて運転席6を包囲するキャビンを搭載してもよい。
【0017】
本実施形態においては、作業機1の運転席6に着座したオペレータの前側に向かう方向(図1の矢印A1方向)を前方(機体前方)、オペレータの後側に向かう方向(図1の矢印A2方向)を後方(機体後方)、図1の矢印K1方向を前後方向(機体前後方向)として説明する。また、オペレータの左側に向かう方向(図1の手前側)を左方、オペレータの右側に向かう方向(図1の奥側)を右方として説明する。
【0018】
また、前後方向K1に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の幅方向の中央部から右部、或いは、左部へ向かう方向を機体幅方向外方として説明する。つまり、機体幅方向外方は、機体2の幅方向の中心から機体幅方向に離れる方向である。機体幅方向外方とは反対の方向を、機体幅方向内方として説明する。つまり、機体幅方向内方は、機体幅方向において機体2の幅方向の中心に近づく方向である。
【0019】
図1に示すように、走行装置3は、機体2を走行可能に支持するクローラ式の走行装置であって、走行フレーム3Aと、走行フレーム3Aの左側に設けられた第1走行装置3Lと、走行フレーム3Aの右側に設けられた第2走行装置3Rとを有する。第1走行装置3L及び第2走行装置3Rは、油圧モータ(油圧アクチュエータ)によって構成された走行モータM1によって駆動される。本実施形態ではクローラ式の走行装置3を用いているが、これに限らず、ホイール式等の走行装置を用いてもよい。
【0020】
走行装置3の前部には、ドーザ装置7が装着されている。ドーザ装置7は、図示しないドーザシリンダ(油圧アクチュエータ)を伸縮することによりブレード(排土板)7Aを昇降(上げ下げ)させることができる。
図1に示すように、機体2は、上下方向に延伸する軸心である旋回軸心X1回りに旋回する旋回基板15を有する。旋回基板15は、鋼板等から形成されており、機体2の底部を構成する。機体2の後部には、ウエイト14が設けられている。機体2(旋回基板15)は、走行装置3上に旋回ベアリング8を介して旋回軸心X1回りに旋回可能に支持されている。
【0021】
図1に示すように、作業機1は、支持ブラケット9及びスイングブラケット(ブーム支持体)10を有している。支持ブラケット9は、機体2から前方に突出するように設けられている。つまり、支持ブラケット9は、機体2の前面2aより前方に突出している。スイングブラケット10は、作業装置4を支持する部材であって、機体2の前方に設けられている。詳しくは、スイングブラケット10は、支持ブラケット9の前部に、上下方向に延伸するスイング軸心10a回りに揺動可能に取り付けられている。したがって、スイングブラケット10は、機体幅方向に(スイング軸心10aを中心として水平方向に)回動可能である。スイングブラケット10は、図示しないスイングシリンダ(油圧アクチュエータ)の伸縮によって揺動可能とされている。
【0022】
図1に示すように、機体2の後部には、原動機E1が搭載されている。詳しくは、原動機E1は、旋回基板15に搭載されている。原動機E1は、ディーゼルエンジンである。なお、原動機E1は、ガソリンエンジン又は電動モータであってもよいし、エンジン及び電動モータを有するハイブリッド型であってもよい。機体2の原動機E1より前方側には、運転席6、運転席6の前方に配置された走行レバー16、運転席6の左側に配置された操縦装置17L及び右側に配置された操縦装置17R等、を含む運転部18が搭載されている。走行レバー16は、走行装置3を操作する操作部材である。操縦装置17L,17Rは、例えば、作業装置4の操作(ブーム11の揺動操作、アーム12の揺動操作、バケット13の揺動操作)及び機体2の旋回操作等を行う装置である。機体2の上面側且つ運転席6の前方側には、床面を構成するステップ21が設けられている。
【0023】
図1図2に示すように、作業装置4は、ブーム装置30と、アーム装置40と、作業具装置50とを有している。ブーム装置30は、ブーム11と、ブームシリンダC2とを有している。アーム装置40は、アーム12と、アームシリンダC3とを有している。作業具装置50は、作業具としてのバケット13と、作業具シリンダとしてのバケットシリンダC4とを有している。
【0024】
図1図2に示すように、ブーム11は、ブーム基部11Aと、ブーム先端部11Bと、ブーム本体部11Cとを含む。ブーム基部11Aは、スイングブラケット10にブーム支軸35を介して枢支される。詳しくは、スイングブラケット10の第1枢支部23に機体幅方向に延伸する軸心を有するブーム支軸35を介して揺動可能(回動自在)に支持される。つまり、ブーム11は、ブーム支軸35回りに上下方向に揺動(上下揺動)する。
【0025】
図3に示すように、ブーム基部11Aは、二股状に形成されている。詳しくは、ブーム基部11Aは、ブーム支軸35を介して枢支される枢支部位11Aaと、ブーム本体部11C(第1部位11Ca)に接続される接続部位11Abとを有する。枢支部位11Aaは機体幅方向に一対設けられ、左の枢支部位11Aaと右の枢支部位11Aaとで第1枢支部23を機体幅方向で挟むように配置される。接続部位11Abとスイングブラケット10との間で且つ第1枢支部23の間には、空間部51が形成されている。
【0026】
図2に示すように、ブーム基部11Aは、枢支部位11Aaと接続部位11Abとの間で(ブーム11の長手方向であるブーム長手方向の中途部で)屈曲されている。言い換えると、ブーム基部11Aは、枢支部位11Aaと接続部位11Abとの間に屈曲部を有している。
図1図2に示すように、ブーム先端部11Bは、アーム12を揺動自在に支持する。詳しくは、ブーム先端部11Bは、機体幅方向に延伸する軸心を有するアーム支軸43を介してアーム12の基部を揺動可能に枢支する。図3に示すように、ブーム先端部11Bは、二股状に形成され、アーム12の基部を挟むように配置される。
【0027】
図1図2に示すように、ブーム本体部11Cは、ブーム基部11Aとブーム先端部11Bとの間に設けられた部分である。ブーム本体部11Cはブーム11の長手方向(ブーム長手方向)に沿って長尺状の4枚の板材の側部同士を溶接して形成された、ブーム長手方向に垂直な断面が矩形の四角柱状であって、中途部で屈曲している。詳しくは、ブーム本体部11Cは、ブーム長手方向の中間部11Ccで屈曲されており、中間部(屈曲部)11Ccとブーム基部11Aとの間の部分である第1部位11Caと、中間部11Ccとブーム先端部11Bとの間の部分である第2部位11Cbとを有する。つまり、ブーム本体部11Cは、第1部位11Caと第2部位11Cbとの間で屈曲されている。ブーム本体部11Cにおける中間部11Cc(屈曲部)の正面側には下部ブラケット33が設けられ、ブーム本体部11Cにおける中間部11Cc(屈曲部)の背面側(上部側)には上部ブラケット34が設けられている。
【0028】
図2に示すように、ブーム11は、スイングブラケット10及びブーム11が機体正面を向く状態で、当該ブーム11が上方に揺動された上げ位置19において、第1部位11Caがブーム基部11Aから中間部11Ccに向けて上方に延伸し、第2部位11Cbが中間部11Ccから上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされる。本実施形態の作業機1にあっては、キャノピ(キャビン)5の前方に、ブーム11がキャノピ(キャビン)5に対して正面視でオーバーラップ(重畳)するように配置され、ブーム11を上げ位置19にしたときに、ブーム11がキャノピ(キャビン)5に干渉しない位置でブーム11の上方揺動が停止するように構成されている。本実施形態にあっては、図1図2に示す上げ位置19は、ブーム11を最も上方に揺動した最上げ位置を示している。
【0029】
また、ブーム基部11Aは、ブーム11の上げ位置19において、枢支部位11Aaがブーム支軸35側から上方に向かうにつれて後方に移行する傾斜方向に延び、接続部位11Abが枢支部位11Aaから上方に延びるように屈曲されている。
図7に示すように、ブーム本体部11C(ブーム11)の屈曲角(第1屈曲角)27は、ブーム基部11Aの屈曲角(第2屈曲角)39よりも大きい。第1屈曲角27は、第1部位11Caの正面11Ca1と第2部位11Cbの正面11Cb1との成す角度である。第2屈曲角39は、枢支部位11Aaの正面11Aa1と接続部位11Abの正面11Ab1との成す角度である。
【0030】
ブーム11は、上記構造のものに限定されることはない。ブーム基部11A及びブーム先端部11Bはブーム本体部Cと別体で形成されているが、ブーム11は、ブーム基部11A、ブーム先端部11B及びブーム本体部Cを一体形成したものであってもよい。また、ブーム基部11Aは、屈曲されていなくてもよい。また、ブーム基部11A及びブーム先端部11Bは二股状に形成されていなくてもよい。また、本実施形態では、ブーム基部11A及びブーム先端部11Bを鋳鉄で形成し、ブーム本体部11Cを4枚の板材を筒状に溶接することで構成しているが、ブーム基部11A、ブーム先端部11B、及びブーム本体部11Cの材質はこれに限るものではない。
【0031】
図2に示すように、ブームシリンダC2は、ブーム11を揺動(回動)させる伸縮可能な油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)である。詳しくは、ブームシリンダC2は、ブーム11の正面側(ブーム11の機体前方側)に配置されている。また、ブームシリンダC2は、一端がブーム本体部11Cの正面側に機体幅方向の軸心を有するシリンダ支軸(第1シリンダ支軸)37を介して枢支され他端がスイングブラケット10に機体幅方向の軸心を有するシリンダ支軸(第2シリンダ支軸)36を介して枢支されていて伸縮させることによりブーム11を揺動させる。
【0032】
さらに詳しくは、ブームシリンダC2は、筒状のシリンダ部32Aと、一端側がシリンダ部32Aに対して摺動可能に挿入されたロッド32Bとを備えている。ブームシリンダC2は、ブーム11におけるアーム12がアームクラウド方向D1に揺動した際にアーム12に対向する側に配置されている。つまり、ブームシリンダC2は、ブーム11の正面側(前面側)の下部に配置されている。ブームシリンダC2の先端部(ロッド32Bの突出側端部)は、下部ブラケット33に第1シリンダ支軸37を介して揺動自在に支持されている。ブームシリンダC2の基端部(シリンダ部32Aのボトム側)は、スイングブラケット10の第2枢支部24に第2シリンダ支軸36を介して揺動自在に支持されている。したがって、ブーム装置30(ブーム11)は、第1枢支部23のブーム支軸35の周りに回動可能であり、当該ブーム装置30(ブーム11)は上又は下方向に揺動自在である。なお、ブームシリンダC2におけるアーム12側(下部側)の面に、ロッド32B及び/又はシリンダ部32Aに対する他の物体の接触を防止するガード部材(シリンダガード)を備えていてもよい。
【0033】
図2に示すように、アーム12は、長手方向に沿って長尺状である。アーム12の基部は、アーム支軸43を介してブーム11のブーム先端部11Bに揺動自在に支持されている。また、アーム12の基部の上面側には、上部ブラケット44が設けられている。
図2に示すように、アームシリンダC3は、アーム12を揺動させる伸縮可能な油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)である。アームシリンダC3の基端部は、ブーム11の上部ブラケット34に機体幅方向の軸心を有するシリンダ支軸(第3シリンダ支軸)38を介して揺動自在に支持され、アームシリンダC3の先端部は、上部ブラケット44に機体幅方向の軸心を有するシリンダ支軸(第4シリンダ支軸)46を介して揺動自在に支持されている。したがって、アーム装置40(アーム12)は、ブーム11のアーム支軸43の周りに回動可能であり、当該アーム装置40(アーム12)は、上又は下方向(前方又は後方)に揺動自在である。つまり、図2に示すように、アーム12は、ブーム11に近づくアームクラウド方向D1と、ブーム11から遠ざかるアームダンプ方向D2とに揺動可能にブーム11に枢支されている。本実施形態では、アームシリンダC3を伸長(アームクラウド方向D1にストローク)させることによりアーム12がアームクラウド方向D1に揺動し、アームシリンダC3が収縮(アームダンプ方向D2にストローク)させることによりアーム12がアームダンプ方向D2に揺動する。
【0034】
図2に示すように、バケット13は、機体幅方向の軸心を有する枢軸(バケット支軸)57を介してアーム12の先端部に揺動自在に支持されている。バケット13とアーム12の先端部との間にはリンク機構53が設けられている。バケット13は、土砂等を掬う部分であるバケット本体13aと、アーム12及びリンク機構53に取り付けられる部分である取付ブラケット13cとを有している。バケット本体13aは、底面13bと、先端部(爪部)58とを有している。
【0035】
図2に示すように、バケットシリンダC4は、バケット13を揺動させる伸縮可能な油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)で構成されている。バケットシリンダC4の基端部は、アーム12の上部ブラケット44に機体幅方向に延伸する軸心を有するシリンダ支軸(第5シリンダ支軸)48を介して揺動自在に支持されている。バケットシリンダC4の先端部は、リンク機構53のシリンダ支軸(第6シリンダ支軸)56に機体幅方向に延伸する軸心回りに揺動自在に支持されている。したがって、作業具装置50(バケット13)は、アーム12の先端側にクラウド動作(スクイ動作)及びダンプ動作可能に設けられている。クラウド動作(スクイ動作)とは、バケット13の先端部58をブーム11(アーム12)に近づける方向であるバケットクラウド方向(作業具クラウド方向)D3に揺動させる動作であり、例えば、土砂等を掬う場合の動作である。また、ダンプ動作とは、バケット13の先端部58をブーム11(アーム12)から遠ざける方向であるバケットダンプ方向(作業具ダンプ方向)D4に揺動させる動作であり、例えば、掬った土砂等を落下(排出)させる場合の動作である。
【0036】
したがって、図2に示すように、バケット13は、バケットシリンダC4を最伸長(バケットクラウド方向D3に最もストローク)させた位置であって先端部58がアーム12に最も近づいたバケットクラウド位置(作業具クラウド位置)Y1と、バケットシリンダC4を最収縮(バケットダンプ方向D4に最もストローク)させた位置であって先端部58がアーム12から最も離れたバケットダンプ位置(作業具ダンプ位置)Y2との間を揺動可能である。第2図中、M3は、バケット13がバケットクラウド位置Y1とバケットダンプ位置Y2との間を移動するときの先端部58の揺動軌道を示している。
【0037】
作業機1は、バケット13に代えて或いは加えて、油圧アクチュエータにより駆動可能な他の作業具(油圧アタッチメント)を装着することが可能である。他の作業具としては、油圧ブレーカ、油圧圧砕機、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等が例示できる。
図4に示すように、ブーム11は、上げ位置19において、アーム支軸43(の軸心43a)及び第1シリンダ支軸37(の軸心37a)に直交し且つ第1シリンダ支軸37より下方に延びる直線(第1直線)26aが機体2よりも前方を通るように構成されている。本実施形態では、第1直線26aは、スイングブラケット10より後方で支持ブラケット9に交差している。
【0038】
従来のスイング機能を有する作業機にあっては、ブームは、最上げ位置に在る状態で、アーム支軸の軸心及び第1シリンダ支軸の軸心に直交し且つ第1シリンダ支軸より下方に延びる直線(従来の第1直線)が、機体(旋回台)に交差する(機体の前後方向の中央付近を通る)ように構成されている。これに対し、本実施形態では、ブーム11は、第1直線26aが機体2よりも前方を通るように構成されている。つまり、本実施形態の第1直線26aの水平線に対する傾斜角度は、従来の第1直線の水平線に対する傾斜角度よりも大きい。第1直線26aの水平線に対する傾斜角度は、ブーム11の屈曲角27が大きくなるにつれて大きくなる。したがって、第1直線26aが機体2よりも前方を通るように構成されていることにより、本実施形態のブーム11は、該ブーム11の屈曲角27が従来のブームの屈曲角よりも大きく(浅く)なるように形成されている。
【0039】
ブーム11の屈曲角27を従来よりも大きくすることにより、ブーム11の先端位置を高くする(バケット13の高さ位置であるバケット高さを高くする)ことができる。また、ブーム11の重量の低減(ブーム11の軽量化)を図ることもできる。
これについて図8を参照して詳しく説明すると、図8において、実線は、本実施形態のブームを示し、二点鎖線は、ブーム11の屈曲角27が、本実施形態よりも小さい場合(例えば、従来)のブーム11の上部を示している。符号22は、ブーム支軸35の軸心35aを中心とする円弧線であって、アーム支軸43の軸心43aを通る(ブーム支軸35の軸心35aとアーム支軸43の軸心43aとを結ぶ線を半径とする)円弧線を示している。アーム支軸43及びブーム支軸35に直交する直線が従来と本実施形態とで同じ寸法であるとすると、図8に示すように、従来と本実施形態とでは、アーム支軸43の高さ位置が従来よりも本実施形態の方がH1だけ高く、且つ、アーム支軸43とブーム本体部11Cの中間部11Ccとの間の距離H2が従来よりも本実施形態の方が小さい。つまり、従来に対して本実施形態は、ブームの屈曲角27を大きくすることにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0040】
本実施形態のブーム11の屈曲角27は、例えば、140°~170°に設定される。好ましくは、屈曲角27は、145°~165°に設定される。さらに好ましくは、屈曲角27は、150°~160°に設定される。
また、本実施形態にあっては、図4に示すように、ブーム11は、上げ位置19における側方から見た時の第2部位11Cbの背面11Cb2の延長線であって、第2部位11Cbの背面11Cb2から下方に延びる第1延長線28aが運転席6の前方を通るように構成されている。
【0041】
従来のスイング機能を有する作業機では、ブームは、最上げ位置における側方から見たときに第2部位の背面から下方に延びる延長線(従来の第1延長線)が運転席の後部(背もたれ部)を通るように構成されている。これに対し、本実施形態では、ブーム11は、第1延長線28aが運転席6の前方を通るように構成されている。つまり、第1延長線28aの水平線に対する傾斜角度は、従来の第1延長線の水平線に対する傾斜角度よりも大きい。第1延長線28aの水平線に対する傾斜角度は、ブーム11の屈曲角27が大きくなるにつれて大きくなる。したがって、第1延長線28aが運転席6の前方を通るように構成されていることにより、本実施形態のブーム11は、該ブーム11の屈曲角27が従来のブームの屈曲角よりも大きく(浅く)なるように形成されている。これにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態にあっては、図4に示すように、ブーム11は、上げ位置19における第2部位11Cbの正面11Cb1の延長線であって、第2部位11Cbの正面11Cb1から下方に延びる第2延長線28bが運転席6の前方を通るように構成されている。
従来のスイング機能を有する作業機では、ブームは、最上げ位置における第2部位の正面から下方に延びる延長線(従来の第2延長線)が運転席の前部(座部)を通るように構成されている。これに対し、本実施形態では、ブーム11は、第2延長線28bが運転席6の前方を通るように構成されている。つまり、第2延長線28bの水平線に対する傾斜角度は、従来の第2延長線の水平線に対する傾斜角度よりも大きい。第2延長線28bの水平線に対する傾斜角度は、ブーム11の屈曲角27が大きくなるにつれて大きくなる。したがって、第2延長線28bが運転席6の前方を通るように構成されていることにより、本実施形態のブーム11は、該ブーム11の屈曲角27が従来のブームの屈曲角よりも大きく(浅く)なるように形成されている。これにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態にあっては、図5に示すように、上げ位置19において、アーム支軸43(の軸心43a)及びブーム支軸35(の軸心35a)に直交する直線を第2直線26bとし、第2直線26b及び第1シリンダ支軸37(の軸心37a)に直交する直線を第3直線26cとし、第2直線26bと第3直線26cとの交点を第1交点29aとし、第3直線26cとブーム本体部11Cの正面との交点を第2交点29bとし、第直線26とブーム本体部11Cの背面との交点を第3交点29cとしたときに、第1交点29aと第2交点29bと間の第1距離31aは、第2交点29bと第3交点29cとの間の第2距離31bよりも小さい。
【0044】
従来のスイング機能を有する作業機では、ブームの屈曲角が小さいので、アーム支軸が本実施形態のアーム支軸43よりも前斜め下方に位置し、第1距離は第2距離よりも大きい。ブームの屈曲角を大きくするにつれてアーム支軸が後上方に移動して第1距離が小さくなっていく。したがって、本実施形態では、第1距離31aを第2距離31bよりも小さくすることにより、従来よりもブーム11の屈曲角27が大きくなる。これにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態にあっては、図5に示すように、上げ位置19におけるスイング軸心10aと第3直線26cとの交点を第4交点29dとしたときに、第2交点29bと第4交点29dとの間の第3距離31cは、第3交点29cと第4交点29dとの間の第4距離31dよりも小さい。
また、本実施形態にあっては、図6に示すように、上げ位置19において、アーム支軸43(の軸心43a)に直交する鉛直線を第4直線26dとし、第4直線26d及び第1シリンダ支軸37(の軸心37a)に直交する直線を第5直線26eとし、第4直線26dと第5直線26eとの交点を第5交点29eとし、第5直線26eとブーム本体部11Cの背面との交点を第6交点29fとしたときに、第5交点29eと第6交点29fとの間の第5距離31eは、アーム支軸43の軸心43aと第5交点29eとの間の第6距離31fよりも小さい。
【0046】
第5距離が第6距離よりも大きい状態からブームの屈曲角を大きくしていくと、ブームの屈曲角を大きくするにつれて第4直線及び第5交点がブームの中間部に近づいていき第5距離が小さくなっていく。本実施形態では、第5距離31eを第6距離31fよりも小さくすることにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態にあっては、図6に示すように、上げ位置19において、ブーム支軸35(の軸心35a)に直交する鉛直線を第6直線26fとし、第2シリンダ支軸36(の軸心36a)に直交する鉛直線を第7直線26gとしたときに、第4直線26dと第7直線26gとの間の第7距離31gは、第6直線26fと第7直線26gとの間の第8距離31hよりも小さい。
【0048】
従来のスイング機能を有する作業機では、第7距離は第8距離よりも大きい。ブームの屈曲角を大きくするにつれて第4直線がブームの中間部に近づいていき第7距離が小さくなっていく。したがって、本実施形態では、第7距離31gを第8距離31hよりも小さくすることにより、従来よりもブーム11の屈曲角27が大きくなる。これにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態にあっては、図6に示すように、第6距離31fは、第5直線26eとブーム基部11Aの側面の上縁11Acとの間の鉛直方向の第9距離31iよりも大きい。
従来のスイング機能を有する作業機では、第6距離は第9距離よりも小さい。ブームの屈曲角を大きくするにつれてアーム支軸は後上方に移動し高くなっていき、第6距離は長くなっていく。したがって、本実施形態では、第6距離31fを第9距離31iよりも大きくすることにより、従来よりもブーム11の屈曲角27が大きくなる。これにより、ブーム11の先端位置を高くすることができ、且つブーム11の重量の低減を図ることができる。
【0050】
図9は、ブーム11を下方に揺動した下げ位置25にしたときの状態を示している。図9において、二点鎖線41は、ブーム基部11Aを屈曲させない場合のブーム11の第1部位11Ca及びブーム基部11Aを示している。本実施形態を示す実線では、ブーム11(第1部位11Ca)の正面側とブームシリンダC2(シリンダ部32A)との間に間隔が開いている(ブーム11とブームシリンダC2とが干渉しない隙間がある)。しかしながら、二点鎖線41で示すブーム11の第1部位11Caは、ブームシリンダC2(シリンダ部32A)に干渉する。したがって、ブーム基部11Aを屈曲させない場合にあっては、ブーム11を実線で示す下げ位置25まで下げることができない。つまり、本実施形態のように、ブーム基部11Aを屈曲させた場合は、ブーム基部11Aを屈曲させない場合よりも、ブーム11をより下方に下げることができる。言い換えると、本実施形態では、ブーム基部11Aを屈曲させることにより、ブーム基部11Aを屈曲させない場合にブーム11とブームシリンダC2とが干渉する位置までブーム11を下げることができる。そして、下げ位置25では、ブーム11の先端が十分に下がるため、ブーム11の屈曲角27が浅くても、掘削深さを確保することができる。即ち、本実施形態では、ブーム11を上げ位置19にしたときのバケット13の高さを上げることができること、ブーム11の重量を軽減できることに加えて、掘削深さの確保も図ることができる。
【0051】
図10は、作業装置4を作動させる作業機1の油圧システムを示した図である。
図10に示すように、作業機1の油圧システムは、ブーム制御弁71と、アーム制御弁72と、バケット制御弁73と、制御装置60と、操縦装置17L,17Rと、ブーム角度センサ91と、アーム角度センサ92と、作業具角度センサ93とを有している。
ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73は、それぞれ油路を介して、ブームシリンダC2、アームシリンダC3、バケットシリンダC4に接続されている。また、ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73には、それぞれ油路を介して、作動油を吐出する油圧ポンプP1が接続されている。
【0052】
ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73は、例えば、電磁式の3位置切換弁である。
具体的には、ブーム制御弁71は、第1ソレノイド71D及び第2ソレノイド71Eを励磁又は消磁することによって、第1位置71A、第2位置71B、第3位置71Cに切換可能な直動スプール型切換弁である。ブーム制御弁71が第1位置71Aに切り換わると、ブームシリンダC2への作動油の供給、排出によって、当該ブームシリンダC2が伸長し、ブーム11は上昇する方向に揺動する。一方。ブーム制御弁71が第2位置71Bに切り換わると、ブームシリンダC2への作動油の供給、排出によって、当該ブームシリンダC2が収縮し、ブーム11は下降する方向に揺動する。
【0053】
アーム制御弁72は、第1ソレノイド72D及び第2ソレノイド72Eを励磁又は消磁することによって、第1位置72A、第2位置72B、第3位置72Cに切換可能な直動スプール型切換弁である。アーム制御弁72が第1位置72Aに切り換わると、アームシリンダC3への作動油の供給、排出によって、当該アームシリンダC3が伸長し、アーム12は、アーム12はアームクラウド方向D1(後方且つ下方)に向けて揺動する。一方。アーム制御弁72が第2位置72Bに切り換わると、アームシリンダC3への作動油の供給、排出によって、当該アームシリンダC3が収縮し、アームダンプ方向D2(前方且つ上方)に向けて揺動する。
【0054】
バケット制御弁73は、第1ソレノイド73D及び第2ソレノイド73Eを励磁又は消磁することによって、第1位置73A、第2位置73B、第3位置73Cに切換可能な直動スプール型切換弁である。バケット制御弁73が第1位置73Aに切り換わると、バケットシリンダC4への作動油の供給、排出によって、当該バケットシリンダC4が伸長し、バケット13は作業具クラウド方向D3(スクイの方向)に揺動する。一方。バケット制御弁73が第2位置73Bに切り換わると、バケットシリンダC4への作動油の供給、排出によって、当該バケットシリンダC4が収縮し、バケット13はダンプ方向D4に揺動する。
【0055】
制御装置60は、ブーム制御部61、アーム制御部62、及びバケット制御部63を備えており、ブーム制御弁71、アーム制御弁72及びバケット制御弁73の切換動作を制御する。すなわち、制御装置60は、ブーム11、アーム12及びバケット13の動作を制御する。制御装置60は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、コンピュータを用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、上記コンピュータは、制御装置60の各機能を実現するソフトウェアであるプログラムおよび作業機1に関する各種データがコンピュータで読み取り可能に記録された記録媒体と、上記プログラムの命令を実行するCPU(Central Processing Unit)等の演算回路と、上記プログラムおよび各種データを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、演算回路が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、制御装置60の機能が実現される。
【0056】
制御装置60には、操作時にオペレータが把持する操縦装置17L,17Rが接続されている。操縦装置17L,17Rは、それぞれ運転席6の近傍に設けられている。操縦装置17L,17Rは、それぞれ操作レバー17aと、ポジションセンサ17bとを有している。操作レバー17aは、中立位置から、前、後、右、左に揺動自在であり、ポジションセンサ17bは、操作レバー17aの前、後、右、左の中立位置からの揺動量(操作量)を検出する。
【0057】
例えば、オペレータが操縦装置17Rの操作レバー17aを前又は後に揺動させると、前又は後に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。ブーム制御部61(制御装置60)は、取得した操作レバー17aの揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド71D及び第2ソレノイド71Eを励磁又は消磁することで、ブーム制御弁71の切換を行う。つまり、ブーム制御部61は、ブーム11の揺動を制御する。
【0058】
また、オペレータが操縦装置17Lの操作レバー17aを前又は後に揺動させると、前又は後に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。アーム制御部62(制御装置60)は、取得した操作レバー17aの揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド72D及び第2ソレノイド72Eを励磁又は消磁することで、アーム制御弁72の切換を行う。つまり、アーム制御部62は、アーム12の揺動を制御する。
【0059】
また、オペレータが操縦装置17Rの操作レバー17aを左又は右に揺動させると、左又は右に揺動させた際の揺動量が制御装置60に入力される。バケット制御部63(制御装置60)は、取得した操作レバー17aの揺動方向及び揺動量に応じて、第1ソレノイド73D及び第2ソレノイド73Eを励磁又は消磁することで、バケット制御弁73の切換を行う。つまり、バケット制御部63は、バケット13の揺動を制御する。
【0060】
ブーム角度センサ91、アーム角度センサ92及びバケット角度センサ(作業具角度センサ)93は、制御装置60に接続されている。ブーム角度センサ91は、ブーム11の揺動角度θ2(揺動位置)を検出する。アーム角度センサ92は、アーム12の揺動角度θ3(揺動位置)を検出する。バケット角度センサ93は、アーム12の先端部に対するバケット13の枢軸57の周りの揺動角度θ4(揺動位置)を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサ91、アーム角度センサ92、及びバケット角度センサ93としてポテンショメータを用いているが、これに限らず、他の角度センサを用いてもよく、あるいは、ブームシリンダC2、アームシリンダC3、及びバケットシリンダC4のストローク(伸長位置)を検出し、その検出結果からブーム11、アーム12、及びバケット13の揺動角度を算出するようにしてもよい。
【0061】
図10に示すように、制御装置60は、アームクラウド制限部64を有している。アームクラウド制限部64は、図11に示すように、バケット(作業具)51の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2(シリンダガードがある場合はシリンダガード)とが所定間隔以上隔てられるように、アームシリンダC3のアームクラウド方向D1のストロークS1を制限する。これにより、バケット13の先端部58がブームシリンダC2に干渉(当接)するのを防止することができる。
【0062】
図11は、ブーム11の揺動位置の変化状態、アーム12がアームクラウド方向D1の制限位置Y10にある状態、バケット13をバケットクラウド位置Y1からバケットダンプ位置Y2まで揺動させた様子を示している。ブーム11の揺動位置の変化状態は、具体的には、ブーム11を上げ位置(最上げ位置)19から下げ位置(最下げ位置)25まで変化させた状態を示し、揺動位置Y5は、上げ位置19と下げ位置25との間のブーム11の中間位置を示している。後述するストロークS1の制限解除域以外では、揺動軌道M3とブームシリンダC2(シリンダガード)とが所定間隔以上隔てられるように、アームシリンダC3のアームクラウド方向D1のストロークS1が制限(アームクラウド制限)される。図11において、点線で示す線R1は、アーム12が制限位置Y10にある状態で、ブーム11が最上げ位置19と最下げ位置25との間を揺動する過程において、揺動軌道M3と接する線である。
【0063】
図10に示すように、制御装置60は、クラウド制限解除部65を有している。クラウド制限解除部65は、作業装置4によって特定の作業を行うときに、該作業を有効に行えるように、アームクラウド制限を解除する。クラウド制限解除部65は、アーム12を揺動範囲のアームクラウド方向D1のエンドまで揺動できるようにアームシリンダC3のストロークS1の制限を解除する。
【0064】
図10に示すように、制御装置60は、バケットクラウド制限部(作業具クラウド制限部)66を有している。バケットクラウド制限部66は、クラウド制限解除部65によってアームシリンダC3のストロークS1の制限が解除されているときに、バケット13の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2(シリンダガードがある場合はシリンダガード)とが所定間隔以上隔てられるように、バケット13のバケットクラウド方向D3の揺動を制限する。つまり、バケットクラウド制限部66は、バケット13の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2とが所定間隔以上隔てられるように、バケットシリンダC4のバケットクラウド方向D3のストロークを制限する。
【0065】
ところで、作業機1によって行う作業として、例えば、ドーザ装置7のブレード7Aの前面(ブレード面)を利用してバケット13で土をすくい上げる、いわゆる「ちりとり作業」がある。
図12に示すように、ブーム11の屈曲角27を大きく(浅く)すると、「ちりとり作業」では、従来のようにブームの屈曲角が小さい(深い)場合にくらべて、バケット13の先端部58がブームシリンダC2に干渉するところまで、ブームシリンダC2とバケット13の先端部58とが近づいてしまう。従来では、ブームの屈曲角が小さい(深い)ので、「ちりとり作業」でもバケットの先端部がブームシリンダに干渉しない。しかしながら、本実施形態では、上述したように、アームクラウド制限部64を設け、バケット13の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2とが所定間隔以上隔てられるように、アームシリンダC3のアームクラウド方向D1のストロークS1を制限するアームクラウド制限(アームクラウド制御)を行えるようにしているので、ブーム11の屈曲角27を大きくしも、アームクラウド制御によって、バケット13の先端部58がブームシリンダC2に干渉(当接)するのを防止することができる。
【0066】
また、クラウド制限解除部65によってアームシリンダC3のストロークS1の制限が解除されているときには、バケットクラウド制限部66によってバケット13のバケットクラウド方向D3の揺動が制限されることにより、バケット13の先端部58がブームシリンダC2に干渉(当接)するのを防止することができる。
図3図13に示すように、ブーム基部11Aは、接続部位11Abから一対の枢支部位11Aaが延びるように形成されていて二股状とされており、一対の枢支部位11Aaはスイングブラケット10の第1枢支部23を挟むように配置されると共に接続部位11Abと第1枢支部23及びブーム支軸35との間に空間部51が形成されている。したがって、図13に示すように、空間部51に油圧ホース42を通すことができ、支持ブラケット9の下部からスイングブラケット10の内部を通ってブーム支軸35の前方に配策される油圧ホース45を空間部51を通してブーム11の背面側に配策することができる。
【0067】
本実施形態の作業機1は、機体2と、機体2の前方に設けられたブーム支持体(スイングブラケット10)と、ブーム支持体10にブーム支軸35を介して枢支されるブーム基部11Aと、アーム支軸43を介してアーム12を揺動可能に枢支するブーム先端部11Bと、ブーム基部11Aとブーム先端部11Bとの間の部分であってブーム長手方向の中間部11Ccで屈曲されたブーム本体部11Cとを含み、ブーム支軸35回りに上下揺動可能とされたブーム11と、ブーム11の正面側に配置され且つ一端がブーム本体部11Cの正面側に第1シリンダ支軸37を介して枢支され他端がブーム支持体10に第2シリンダ支軸36を介して枢支されていて伸縮させることによりブーム11を揺動させるブームシリンダC2と、を備え、ブーム11は、当該ブーム11が最も上方に揺動された最上げ位置19において、中間部11Ccとブーム基部11Aとの間の第1部位11Caがブーム基部11Aから中間部11Ccに向けて上方に延伸し、中間部11Ccとブーム先端部11Bとの間の第2部位11Cbが中間部11Ccから上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延伸する姿勢とされると共に、アーム支軸43及び第1シリンダ支軸37に直交し且つ第1シリンダ支軸37より下方に延びる第1直線26aが機体2よりも前方を通るように構成されている。
【0068】
これによれば、ブーム11が、最上げ位置19に上方揺動された状態で、ブーム本体部11Cの第1部位11Caがブーム基部11Aから中間部11Ccに向けて上方に延び、ブーム本体部11Cの第2部位11Cbが中間部11Ccから上方に向かうにつれて前方に移行する傾斜方向に延びるように屈曲された作業機1において、アーム支軸43及び第1シリンダ支軸37に直交し且つ第1シリンダ支軸37より下方に延びる第1直線26aが機体2よりも前方を通るように構成することにより、ブーム11の屈曲角(第1部位11Caと第2部位11Cbとの成す角度)27が従来に比べて大きくなる。これにより、ブーム11を最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
【0069】
また、機体2に搭載された運転席6を備え、ブーム11は、最上げ位置19における第2部位11Cbの背面11Cb2の延長線であって、第2部位11Cbの背面から下方に延びる第1延長線28aが運転席6の前方を通るように構成されている。
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブーム11を最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
【0070】
また、機体2に搭載された運転席6を備え、ブーム11は、最上げ位置19における第2部位11Cbの正面11Cb1の延長線であって、第2部位11Cbの正面から下方に延びる第2延長線28bが運転席6の前方を通るように構成されている。
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブームを最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
【0071】
また、最上げ位置19において、アーム支軸43及びブーム支軸35に直交する直線を第2直線26bとし、第2直線26b及び第1シリンダ支軸37(の軸心37a)に直交する直線を第3直線26cとし、第2直線26bと第3直線26cとの交点を第1交点29aとし、第3直線26cとブーム本体部11Cの正面との交点を第2交点29bとし、第直線26とブーム本体部11Cの背面との交点を第3交点29cとしたときに、第1交点29aと第2交点29bと間の第1距離31aは、第2交点29bと第3交点29cとの間の第2距離31bよりも小さい。
【0072】
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブームを最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
また、最上げ位置19において、アーム支軸43に直交する鉛直線を第4直線26dとし、第4直線26d及び第1シリンダ支軸37に直交する直線を第5直線26eとし、第4直線26dと第5直線26eとの交点を第5交点29eとし、第5直線26eとブーム本体部11Cの背面との交点を第6交点29fとしたときに、第5交点29eと第6交点29fとの間の第5距離31eは、アーム支軸43の軸心43aと第5交点29eとの間の第6距離31fよりも小さい。
【0073】
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブームを最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
また、最上げ位置19において、ブーム支軸35(の軸心35a)に直交する鉛直線を第6直線26fとし、第2シリンダ支軸36(の軸心36a)に直交する鉛直線を第7直線26gとしたときに、第4直線26dと第7直線26gとの間の第7距離31gは、第6直線26fと第7直線26gとの間の第8距離31hよりも小さい。
【0074】
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブームを最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
また、第6距離31fは、第5直線26eとブーム基部11Aの側面の上縁11Acとの間の鉛直方向の第9距離31iよりも大きい。
【0075】
これによっても、ブーム11の屈曲角27が大きくされるので、ブームを最上げ位置19にしたときでのブーム先端部11Bの高さを高くすることができ、且つブーム11の重量も低減することができる。
また、ブーム基部11Aは、ブーム支軸35を介して枢支される枢支部位11Aaと、ブーム本体部11Cの第1部位11Caに接続される接続部位11Abとを有し、且つ、ブーム11が最上げ位置19に揺動された状態で、枢支部位11Aaがブーム支軸35側から上方に向かうにつれて後方に移行する傾斜方向に延び、接続部位11Abが枢支部位11Aaから上方に延びるように、枢支部位11Aaと接続部位11Abとの間で屈曲されている。
【0076】
これによれば、ブーム11を、下方に揺動した下げ位置25に十分に下げることができる。
また、第1部位11Caの正面11Ca1と第2部位11Cbの正面11Cb1との成す角度である屈曲角(第1屈曲角)27は、枢支部位11Aaの正面11Aa1と接続部位11Abの正面11Ab1との成す角度である屈曲角(第2屈曲角)39よりも大きい。
【0077】
また、アーム12に作業具支軸57を介して枢支され、作業具支軸57回りに揺動することで、先端部58がアーム12に最も近づいた作業具クラウド位置Y1と、先端部58がアーム12から最も離れた作業具ダンプ位置Y2との間を揺動可能な作業具13と、アーム12を、ブーム11に近づくアームクラウド方向D1及びブーム11から遠ざかるアームダンプ方向D2に揺動させるアームシリンダC3と、作業具13の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2とが所定間隔以上隔てられるように、アームシリンダC3のアームクラウド方向D1のストロークS1を制限するアームクラウド制限部64と、を備えている。
【0078】
これによれば、ブーム11の屈曲角27を浅くしても、作業具13とブームシリンダC2の干渉を避けることができる。
また、アーム12に作業具支軸57を介して枢支され、作業具支軸57回りに揺動することで、先端部58がアーム12に最も近づいた作業具クラウド位置Y1と、先端部58がアーム12から最も離れた作業具ダンプ位置Y2との間を揺動可能な作業具13と、作業具13を、当該作業具13の先端部58が作業具クラウド位置Y1に近づく作業具クラウド方向D3、及び先端部58が作業具ダンプ位置Y2に近づく作業具ダンプ方向D4に揺動させる作業具シリンダC4と、作業具13の先端部58の揺動軌道M3とブームシリンダC2とが所定間隔以上隔てられるように、作業具シリンダC4の作業具クラウド方向D3のストロークを制限する作業具クラウド制限部66と、を備えている。
【0079】
これによれば、ブーム11の屈曲角27を浅くしても、作業具13とブームシリンダC2の干渉を避けることができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
2 機体
6 運転席
9 支持ブラケット
10 ブーム支持体(スイングブラケット)
10a スイング軸心
11 ブーム
11A ブーム基部
11Aa 枢支部位
11Aa1 正面
11Ab 接続部位
11Ab1 正面
11Ac 上縁
11B ブーム先端部
11C ブーム本体部
11Ca 第1部位
11Ca1 正面
11Cb 第2部位
11Cb1 正面
11Cb2 背面
11Cc 中間部
12 アーム
13 作業具
19 最上げ位置
26a 第1直線
26b 第2直線
26c 第3直線
26d 第4直線
26e 第5直線
26f 第6直線
26g 第7直線
27 屈曲角(第1屈曲角)
28a 第1延長線
28b 第2延長線
29a 第1交点
29b 第2交点
29c 第3交点
29d 第4交点
29e 第5交点
29f 第6交点
31a 第1距離
31b 第2距離
31c 第3距離
31d 第4距離
31e 第5距離
31f 第6距離
31g 第7距離
31h 第8距離
31i 第9距離
35 ブーム支軸
36 第2シリンダ支軸
37 第1シリンダ支軸
39 屈曲角(第2屈曲角)
43 アーム支軸
43a 軸心
57 作業具支軸
58 先端部
64 アームクラウド制限部
66 作業具クラウド制限部
C2 ブームシリンダ
C3 アームシリンダ
D1 アームクラウド方向
D2 アームダンプ方向
D3 作業具クラウド方向
C4 作業具シリンダ
M3 揺動軌道
S1 ストローク
Y1 作業具クラウド位置
Y2 作業具ダンプ位置
D4 作業具ダンプ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13