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特許7596536電気化学素子用電極組立体の製造方法、前記方法によって得られた電極組立体及び電気化学素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】電気化学素子用電極組立体の製造方法、前記方法によって得られた電極組立体及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20241202BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20241202BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241202BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241202BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241202BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20241202BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20241202BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M50/403 B
H01M50/491
H01M50/443 M
H01M50/403 D
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/417
H01M10/04 Z
H01M10/058
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023531685
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2022013093
(87)【国際公開番号】W WO2023033559
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0117235
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン-シク・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-ユン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ジュン・パク
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/145690(WO,A1)
【文献】特開平09-050800(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0007745(KR,A)
【文献】特開2018-181546(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034448(WO,A1)
【文献】特開2010-077335(JP,A)
【文献】特表2022-542178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40 - 50/497
H01M 10/00 - 10/04
H01M 10/06 - 10/34
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S100)多孔性の高分子フィルム部材を準備するステップ;
(S200)前記高分子フィルム部材を加圧して多孔性の分離膜基材を形成して、電気化学素子用分離膜を製造するステップ;及び
(S300)前記分離膜、正極及び負極を含む電極組立体を製造するステップ;を含み、
前記(S100)ステップの高分子フィルム部材は、気孔度が40vol%~70vol%のものであり、
前記(S200)ステップを行った後の前記分離膜基材の厚さは、前記加圧前の前記高分子フィルム部材の厚さに対して90%以下であ
前記加圧は、3.0MPa~8.0MPaの圧力範囲及び50℃~80℃の温度範囲で行われる、電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項2】
前記(S200)ステップで得られた高分子フィルム部材の一側面または両側面に無機物粒子及びバインダー樹脂を含む有機/無機複合コーティング層を形成するステップをさらに含むものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項3】
前記(S200)ステップを行った後の前記分離膜基材の気孔度は30vol%~60vol%のものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項4】
前記(S200)は、加圧ローラを用いるか、または加圧治具を用いて行われるものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項5】
前記(S200)は熱間加圧による方式で行われるものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項6】
前記高分子フィルム部材は、気孔形成剤を抽出して気孔を形成する方式の湿式製造方法によって製造されたものであり、
前記高分子フィルム部材は、ポリオレフィン樹脂を含むものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項7】
前記高分子フィルム部材は、高分子樹脂を溶融/圧出した後、引張によって気孔を形成する方式の乾式製造方法によって製造されたものである、請求項1に記載の電気化学素子用電極組立体を製造する方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法によって得られた電極組立体を含むものであって、前記電極組立体は分離膜、正極及び負極を含み、前記分離膜は多孔性の分離膜基材を含むものである電気化学素子の製造方法。
【請求項9】
前記電極組立体は、分離膜を正極と負極との間に配置しラミネートして製造されるものである、請求項に記載の電気化学素子の製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法によって得られた電極組立体を含むものであって、前記電極組立体は分離膜、正極及び負極を含み、前記分離膜は、多孔性の分離膜基材及び前記多孔性の分離膜基材の一面または両面に有機/無機複合コーティング層を含み、前記有機/無機複合コーティング層は、無機物粒子及びバインダー樹脂を含むものである電気化学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年9月2日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0117235号の出願日の利益を主張し、その全ての内容は本発明に含まれる。本発明は、電気化学素子用電極組立体を製造する方法及び前記方法によって製造された電極組立体に関する。また、本発明は、前記電極組立体を含む電気化学素子及びそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池など電気化学素子用分離膜として多孔性の高分子フィルム基材が使用されている。通常、電極組立体は、分離膜と電極を熱と圧力によって接合するラミネート工程を通じて製造され、この工程で印加される熱と圧力が高いほど、電極と分離膜との結着力が高くなる。近年、生産性向上の目的で工程速度が速くなるにつれ、分離膜に熱が加わる時間が短くなったため、圧力を増加する方法で接着力を確保しているが、高圧による変形が懸念される。また、ラミネート工程時に、高分子フィルム基材の厚さの減少が大きく現れ、気孔の損傷が大きくなり、それによって、電池の性能だけでなく分離膜の絶縁破壊電圧も低下し、結果的にハイポット(Hi-pot)(高電圧)不良及び低電圧不良を招くという問題がある。そのため、高圧ラミネートの条件下でも変形が少ない分離膜用多孔性高分子フィルム基材の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、電極組立体の製造のためのラミネート工程時における厚さの変化率や変形率が低く、絶縁破壊電圧の高い分離膜基材及びそれを含む電極組立体を提供することを目的とする。また、前記のように性能が改善した電極組立体を製造する方法を提供することを目的とする。また、前記電極組立体を含む電気化学素子及びその製造方法を提供することを本発明の他の目的とする。本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に記載された手段または方法及びその組み合わせによって実現できることを簡単に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1側面は、電気化学素子用電極組立体を製造する方法に関するものであって、前記方法は、
(S100)多孔性の高分子フィルム部材を準備するステップ;
(S200)前記高分子フィルム部材を加圧して多孔性の分離膜基材を形成して、電気化学素子用分離膜を製造するステップ;及び
(S300)前記分離膜、正極及び負極を含む電極組立体を製造するステップ;を含み、
前記(S100)ステップの高分子フィルム部材は、気孔度が40vol%~70vol%のものであり、
前記(S200)ステップを行った後の前記分離膜基材の厚さは、前記加圧前の前記高分子フィルム部材の厚さに対して90%以下である。
【0005】
本発明の第2側面は、前記第1側面において、前記(S200)ステップで得られた高分子フィルム部材の一側面または両側面に無機物粒子及びバインダー樹脂を含む有機/無機複合コーティング層を形成するステップをさらに含むものである。
【0006】
本発明の第3側面は、前記第1側面または第2側面において、前記(S200)ステップを行った後の前記多孔性分離膜基材の気孔度は30vol%~60vol%のものである。
【0007】
本発明の第4側面は、前記第1側面~第3側面のいずれか一つにおいて、前記(S200)は、加圧ローラを用いるか、または加圧治具を用いて行われるものである。
【0008】
本発明の第5側面は、前記第1側面~第4側面のいずれか一つにおいて、前記(S200)は熱間加圧による方式で行われるものである。
【0009】
本発明の第6側面は、第1側面~第5側面のいずれか一つにおいて、前記加圧は、3.0MPa~8.0MPaの圧力範囲で行われるものである。
【0010】
本発明の第7側面は、前記第1側面~第6側面のいずれか一つにおいて、前記高分子フィルム部材は、ポリオレフィン樹脂を含むものである。
【0011】
本発明の第8側面は、前記第1側面~第7側面のいずれか一つにおいて、前記高分子フィルム部材は、気孔形成剤を抽出して気孔を形成する方式の湿式製造方法によって製造されたものである。
【0012】
本発明の第9側面は、前記第1側面~第8側面のいずれか一つにおいて、前記高分子フィルム部材は、高分子樹脂を溶融/圧出した後、引張によって気孔を形成する方式の乾式製造方法によって製造されたものである。
【0013】
本発明の第10側面は、電気化学素子用電極組立体に関するものであって、前記電極組立体は、前記第1側面~第9側面のいずれか一つの側面に係る方法によって得られたものであり、分離膜、正極及び負極を含み、前記分離膜は多孔性の分離膜基材を含むものである。
【0014】
本発明の第11側面は、電気化学素子用電極組立体に関するものであって、前記電極組立体は前記第2側面~第9側面のいずれか一つの側面に係る方法によって得られたものであり、前記分離膜は、前記多孔性の分離膜基材及び前記多孔性の分離膜基材の一面または両面に有機/無機複合コーティング層を含み、前記有機/無機複合コーティング層は、無機物粒子及びバインダー樹脂を含むものである。
【0015】
本発明の第12側面は、電気化学素子を製造する方法に関するものであって、前記方法は第1側面~第9側面のいずれか一つに係る方法によって得られた電極組立体を含むものであって、前記電極組立体は分離膜、正極及び負極を含み、前記分離膜は多孔性の分離膜基材を含むものである。
【0016】
本発明の第13側面は、前記第12側面において、前記電極組立体は、分離膜を正極と負極との間に配置しラミネートして製造されるものである。
【0017】
本発明の第14側面は、電気化学素子を製造する方法に関するものであって、第2側面に係る方法によって得られた電極組立体を含むものであって、前記電極組立体は分離膜、正極及び負極を含み、前記分離膜は、多孔性の分離膜基材及び前記多孔性の分離膜基材の一面または両面に有機/無機複合コーティング層を含み、前記有機/無機複合コーティング層は、無機物粒子及びバインダー樹脂を含むものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電極組立体の製造方法は、予め圧縮された分離膜基材を使用することによって、電極組立体の製造のためのラミネート工程時に印加される圧力による分離膜の厚さ減少率が少ない。そのため、前記製造方法による電極組立体の分離膜は、絶縁破壊電圧が低下せず、絶縁特性に優れる。また、ラミネート工程時に高圧が印加されても分離膜の損傷が少なく、工程速度を上げることができ、工程性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳しく説明する。それに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常の意味や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、その自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないので、本出願の時点においてこれらを代替できる様々な均等物と変形例があり得るということを理解しなければならない。
【0020】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0021】
また、本願の明細書全体で使用される用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値でまたはその数値に近い意味として使用され、本願の理解を助けるために、正確であるか或いは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防ぐために使用される。
【0022】
本願の明細書全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、またはその両方」を意味する。
【0023】
本願の明細書における多孔質特性は、対象物が複数の気孔を含み、前記気孔同士の間で互いに連結された構造によって、前記対象物の一側面から他側面へと気相及び/または液相の流体が通過できることを意味する。
【0024】
本発明は、電気化学素子用電極組立体の分離膜に適用可能な分離膜基材、前記分離膜基材を含む電極組立体に関する。また、前記電極組立体を含む電気化学素子に関する。最後に、前記電極組立体及び電気化学素子を製造する方法に関する。本発明において、前記電気化学素子は、電気化学的反応によって化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する装置であって、一次電池と二次電池(Secondary Battery)を包括する概念である。本明細書において、前記二次電池は充電と放電が可能なものであって、リチウムイオン二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などを意味する。
【0025】
本願の明細書において、分離膜は複数の気孔を含む多孔性特性を有するものであって、電気化学素子で負極と正極との間の電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)の役割を担うものである。
【0026】
本発明において、前記電極組立体の分離膜は多孔性の分離膜基材を含む。後述するように、前記分離膜基材は、多孔性の高分子フィルム部材が加圧されて準備されたものである。また、前記分離膜は、必要に応じて、前記分離膜基材の少なくとも一側の表面上に、素材や機能の側面から、別の層を追加で配置することができる。本発明の一実施態様において、前記分離膜は前記多孔性基材の少なくとも一側面または両側面に、無機物粒子及び/またはバインダー樹脂を含む有機/無機複合コーティング層が形成されているものであり得る。
【0027】
次に、本発明に係る電極組立体の製造方法、及びそれに係る電極組立体について、より詳しく説明する。
【0028】
本発明に係る電極組立体の製造方法は、
(S100)高分子フィルム部材を準備するステップ;
(S200)前記高分子フィルム部材を加圧して多孔性の分離膜基材を形成して、電気化学素子用分離膜を製造するステップ;及び
(S300)前記分離膜、正極及び負極を含む電極組立体を製造するステップ;を含む。
【0029】
前記(S100)ステップの高分子フィルム部材は、気孔度が40vol%~70vol%のものであり、前記(S200)ステップを行った後に得られた前記分離膜基材の厚さは、前記加圧前の前記高分子フィルム部材の厚さよりも小さいものである。
【0030】
前記高分子フィルム部材は、高分子材料を含む多孔膜のものであって、電池の出力及びサイクル特性の側面から、40vol%~70vol%の気孔度を有することができる。
【0031】
本発明において、用語「気孔度(porosity)」とは、全体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位としてvol%を使用し、空隙率、多孔度などの用語と同じ意味で使用することができる。本発明において、前記気孔度の測定は特に限定されず、本発明の一実施例に従い、例えば、窒素気体を使用したBET(Brunauer-Emmett-Teller)測定法、または水銀浸透法(Hg porosimeter)によって測定することができる。または、本発明の一実施態様において、得られた電極(電極活物質層)の密度(見掛け密度)と電極(電極活物質層)に含まれる材料の組成比と各成分の密度から電極活物質層の真密度を計算し、見掛け密度(apparent density)と真密度(net density)との差から電極活物質層の気孔度を計算することができる。
【0032】
本発明の一実施態様において、前記高分子フィルム部材は、気孔の直径が10nm~100nmの大きさを有することができる。前記気孔の大きさは、キャピラリーフローポロメーター(Capillary flow Porometer)法を用いて測定された気孔径分布(pore size distribution)から算出することができる。例えば、まず、測定対象の分離膜基材をガルウィック溶液(galwick solution)といった湿潤剤(wetting agent)で湿らせた後、基材の一側面の空気圧を徐々に増加させる。この時、加えた空気圧が気孔内に存在する湿潤剤(wetting agent)の毛細管引力よりも大きくなると、気孔を塞いでいる湿潤剤(wetting agent)が追い出され、追い出された瞬間の圧力と流量を通じて気孔の大きさ及び分布を測定することができる。一実施態様において、前記空気圧の範囲は30~450psiに制御することができる。
【0033】
本発明において、前記高分子フィルム基材は、厚さが5μm~30μmであり得る。多孔性基材の厚さが前記数値範囲に満たない場合は、加圧後分離膜基材に適切な厚さを確保することが困難であり、一方で前記範囲を過度に超える場合(すなわち、厚すぎると)、分離膜の抵抗が過度に増加する可能性がある。
【0034】
一方、本発明の一実施態様において、前記高分子材料は、シャットダウン機能を付与する観点から、熱可塑性樹脂を含むことができる。シャットダウン機能とは、電池温度が高くなった場合に、高分子樹脂が溶けて多孔性基材の気孔を閉塞することによって、正極と負極との間のイオンの移動を遮断して、電池の熱暴走を防止する機能のことをいう。
【0035】
このような熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂を使用することができ、特にポリオレフィン系高分子樹脂を含むことができる。前記ポリオレフィン系高分子樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリペンテンなどを例に挙げることができる。本願の発明の一実施態様において、前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリペンテンの中から選択される2つ以上を含むことができる。
【0036】
一方、本発明の具体的な一実施態様において、前記高分子フィルム部材は、必要に応じて、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンといった高分子樹脂の中で少なくともいずれか一つをさらに含むことができる。
【0037】
本発明の一実施態様において、前記高分子フィルム部材は、高分子材料を溶融圧出してシート状に成形した後、延伸して高分子の結晶部分であるラメラ(lamella)の間に微細クラック(micro crack)を誘発させて微細孔隙を形成させる方法(乾式法)によって製造されたものであり得る。または前記高分子フィルム部材は、高分子材料を高温で可塑剤(diluents)と混練して単一相を作り、冷却過程で高分子材料と可塑剤を相分離させた後、可塑剤を抽出させて気孔を形成させる方法(湿式法)によって製造されたものであり得る。
【0038】
前記のように高分子フィルム部材を準備したら、次にこれを加圧して多孔性の分離膜基材を準備する(S200)。
【0039】
本発明の一実施態様において、前記加圧は、高分子フィルム部材の全面にわたって一定で均一な圧力を印加するための側面から、線圧よりは面圧による加圧方式を適用することが好ましい。具体的には、前記加圧は平板治具(jig)を用いて行うことができる。また、前記加圧は熱間加圧の方法で行うことができる。例えば、前記加圧はホットプレス(hot press)の方法で行うことができる。本発明の一実施態様において、前記加圧工程において、温度は約50℃~80℃の範囲内で調節することができ、圧力は3.0MPa~8.0MPaの範囲に調節することができ、時間は1秒(sec)~20秒(sec)の範囲に調節することができる。前記温度、圧力及び時間条件は、それぞれ独立に制御されるものである。しかし、本発明の加圧工程条件が前記範囲に限定されるものではなく、高分子フィルム部材を加圧して適切な厚さ及び気孔度を有する多孔性分離膜基材が得られる範囲内で適切に調節することができる。
【0040】
本発明において、前記(S200)ステップを行った後に得られた前記分離膜基材の厚さは、前記加圧前の前記高分子フィルム部材よりも小さいものである。本発明の具体的な一実施態様において、前記分離膜基材の厚さは、加圧前の高分子フィルム部材の厚さに対して99%~70%であり得る。
【0041】
一方、本発明において、(S200)ステップを行った後の前記多孔性の分離膜基材の気孔度は、前記高分子フィルム部材の気孔度に対して50vol%~80%volの水準を示すことができる。また、前記(S200)ステップを行った後の前記多孔性分離膜基材の気孔度は30vol%~60vol%であり得る。
【0042】
一方、本発明の一実施態様において、前記分離膜は、前記分離膜基材の少なくとも一側の表面に形成された有機/無機複合コーティング層をさらに含むことができる。
【0043】
前記有機/無機複合コーティング層は、バインダー樹脂及び無機物粒子を含み、多孔性特性を有するものである。本発明の一実施態様において、前記有機/無機複合コーティング層の中でバインダー樹脂と無機物粒子は、重量比で1:99~30:70の比率で含むことができる。前記比率は前記範囲内で適切に調節することができ、例えば、バインダー樹脂と無機物粒子との合計100wt%、バインダー樹脂が1wt%以上、5wt%以上、または10wt%以上であり得、無機物粒子が80wt%以上、85wt%以上、90wt%以上、または95wt%以上であり得る。
【0044】
前記有機/無機複合コーティング層は、無機物粒子がバインダー樹脂によって結着され、側部に集積して形成され得る。前記有機/無機複合コーティング層内部の気孔は、前記無機物粒子同士の間の空き空間であるインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)に起因するものであり得る。
【0045】
本発明の一実施態様において、前記有機/無機複合コーティング層の気孔度は30vol%~70vol%であり得る。気孔度が70vol%以下であると、電極と接着させるプレス工程に耐えられる力学特性を確保することができ、また、表面開口率が高くなりすぎないので、接着力を確保するのに適する。一方、前記気孔度が30vol%以上であると、イオン透過性の観点で有利である。
【0046】
前記有機/無機複合コーティング層の厚さは、分離膜基材のいずれか一方に対して1μm~20μmの厚さで形成することができるが、これに特に限定されるものではない。前記厚さは、耐熱性や電気抵抗の側面から、当業者が適切な範囲に調節することができる。
【0047】
本願の発明において、前記有機/無機複合コーティング層に使用可能なバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)からなる群から選択されたいずれか一つの高分子樹脂またはこれらのうちの2種以上の混合物を挙げることができる。しかし、特にこれに限定されるものではない。
【0048】
本発明の具体的な一実施態様において、前記有機/無機複合コーティング層に使用可能な前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえしていれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧の範囲(例えば、Li/Liを基準として0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。
【0049】
前記無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、Mg(OH)、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al、SiC、Al(OH)、TiO、アルミニウム過酸化物、亜鉛錫水酸化物(ZnSn(OH))、錫-亜鉛酸化物(ZnSnO、ZnSnO)、三酸化アンチモン(Sb)、四酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)などを挙げることができ、これらのうちの一つまたは二つ以上を含むことができる。
【0050】
また、無機物粒子の平均直径(D50)は、特に制限はないが、均一な厚さのコーティング層形成及び適切な空隙率のために、0.3μm~1μmの範囲であることが好ましい。0.3μm未満である場合、有機/無機複合コーティング層製造のために準備されたスラリーで無機物粒子の分散性が低下する可能性があり、1μmを超える場合、形成されるコーティング層の厚さが増加する可能性がある。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記有機/無機複合コーティング層を形成する方法は、例えば次の通りである。まず、バインダー樹脂を適切な有機溶媒に溶解させて高分子溶液を製造する。溶媒としては、使用しようとするバインダー高分子と溶解度指数が類似しており、沸点(boiling point)が低いことが好ましい。これは均一な混合とその後の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水またはこれらの混合物などがある。
【0052】
次に、製造された高分子溶液に無機物粒子を添加及び分散させる。本願の発明において、前記無機物粒子とバインダーの含有量比は前述した通りであり、最終的に製造される本発明の有機/無機複合コーティング層の厚さ、気孔の大きさ及び気孔度を考慮して適切に調節する。
【0053】
次に、前記で製造された無機物粒子スラリーを、準備された分離膜基材の少なくとも一側面に塗布し乾燥する。前記スラリーを分離膜基材の表面に塗布する方法は、特にいずれか一つの方法に限定されるものではなく、当業界で知られている通常の方法を使用することができる。例えば、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、またはこれらの混合方式など様々な方式を用いることができる。
【0054】
前記乾燥工程は、前記有機/無機複合コーティング層の表面欠陥の発生を最小限に抑えるために、温度と時間の条件を適切に設定する。前記乾燥は、適切な範囲内で乾燥オーブンや熱風などの乾燥補助装置を使用することができる。
【0055】
前記のように分離膜を準備したら、前記分離膜、正極及び負極を含む電極組立体を製造する(S300)。
【0056】
前記で説明したように、本発明に係る電極組立体の製造方法は、高分子フィルム部材を加圧し、その結果物を分離膜基材として使用する。前記分離膜基材は、電極組立体の製造に投入される前に予め加圧されて準備されるため、電極組立体の製造のためのラミネート工程時に、分離膜の厚さ変形を低減することができる。また、前記分離膜が有機/無機複合多孔層を含む場合、ラミネート工程時に、有機/無機複合多孔層と対面する分離膜基材の表面で無機物粒子の押圧による損傷を低減することができる。
【0057】
前記電極組立体の製造は、負極と正極との間に、前述した方法によって得られた分離膜を介在させて積層し、これを熱及び/または圧力を加えて結着させるラミネート工程によって行うことができる。本発明の一実施態様において、前記ラミネート工程は、一対の加圧ローラを含むロールプレス装置によって行うことができる。すなわち、負極、分離膜及び正極を順次に積層し、これを前記加圧ローラの間に投入して層間結着を達成することができる。この時、前記ラミネート工程は熱間加圧の方法で行うことができる。前述した通り、電極組立体の製造のためのラミネート工程の前に分離膜基材が予め加圧されて準備されるため、ラミネート工程で印加される圧力による分離膜の厚さ変形を低減することができ、有機/無機複合多孔層中に含まれる無機物粒子の押圧による多孔性基材表面の損傷を低減することができる。
【0058】
一方、本発明は、前記電極組立体を含む二次電池を提供する。前記電池は、負極、正極、及び前記負極と正極との間に介在した分離膜を含む電極組立体を含み、前記分離膜は、前述した通り、高分子フィルム部材を圧着して得た分離膜基材を含むものである。
【0059】
本発明において、正極は、正極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に正極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む正極活物質層を備える。前記正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物(LiMnO4、LiMnOなど)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1またはそれ以上の遷移金属に置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn1-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンに置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoOのうちの1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0060】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記集電体の少なくとも一側の表面に負極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む負極活物質層を備える。前記負極は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe(0≦x≦1)、LixWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;錫系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、及びBiなどの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物の中から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0061】
本発明の具体的な一実施態様において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、活性炭素(activated carbon)及びポリフェニレン誘導体からなる群から選択されたいずれか一つまたはこれらのうちの2種以上の導電性材料の混合物であり得る。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーピー(super-p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、デンカ(denka)ブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンからなる群から選択された1種またはこれらのうちの2種以上の導電性材料の混合物であり得る。
【0062】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。
【0063】
前記バインダー樹脂としては、当業界で電極に通常使用される高分子を使用することができる。このようなバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyethylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetatepropionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などを挙げることができ、これに限定されるものではない。
【0064】
前記のように準備された電極組立体は、適切なケースに装入し、電解液を注入して電池を製造することができる。
【0065】
本発明において、前記電解液はAのような構造の塩であって、AはLi、Na、Kのようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組み合わせからなるイオンを含み、BはPF 、BF 、Cl、Br、I、ClO 、AsF 、CHCO 、CFSO 、N(CFSO 、C(CFSO のような陰イオンまたはこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(g-ブチロラクトン)またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものがあるが、これだけに限定されるものではない。
【0066】
また、本発明は、前記電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。前記デバイスの具体例としては、電池的モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が下記に詳述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0068】
1.分離膜基材の準備
下記の[表1]のように、ポリエチレン素材の高分子フィルム部材(厚さ約15μm)を準備した。これらそれぞれをホットプレスを用いて加圧して厚さを変形させた。厚さ減少率は、下記の[数式1]を用いて計算した。前記加圧は、60℃、5.2MPa及び10秒(sec)の条件下で行った。
【0069】
[数1]
厚さ減少率={(高分子フィルム部材の厚さ-多孔性基材の厚さ)/高分子フィルム部材の厚さ}×100
【0070】
【表1】
【0071】
2.分離膜の製造
次に、各実施例及び比較例で得られた分離膜基材の表面に有機/無機複合コーティング層を形成して分離膜を製造した。
【0072】
バインダー樹脂としてPVDF-HFPを準備し、それを溶媒であるアセトン(Acetone)に投入し、固形分濃度18wt%の高分子溶液を製造した。前記高分子溶液に無機物粒子であるAlを投入し、コーティング層形成用スラリーを準備した。前記スラリー中のバインダー樹脂と無機物粒子の含有量は、重量比を基準として10:90の比率となるようにした。次に、前記スラリーを各分離膜基材の両面に塗布し乾燥して、厚さ8μmの有機/無機複合コーティング層を形成した。
【0073】
3.電極組立体の製造
1)正極の製造
正極活物質(LiNi0.8Mn0.1Co0.1)、導電材(カーボンブラック)、分散剤及びバインダー樹脂(PVDF-HFPとPVDFの混合)を97.5:0.7:0.14:1.66の重量比で水と混合して、水を除く残りの成分50wt%濃度の正極活物質層用スラリーを準備した。次に、前記スラリーをアルミニウム薄膜(厚さ10μm)の表面に塗布し乾燥して、正極活物質層(厚さ120μm)を有する正極を製造した。
【0074】
2)負極の製造
黒鉛(天然黒鉛及び人造黒鉛のブレンド)、導電材(カーボンブラック)、分散剤及びバインダー樹脂(PVDF-HFPとPVDFの混合)を97.5:0.7:0.14:1.66の重量比で水と混合して、水を除く残りの成分50wt%濃度の負極活物質層用スラリーを準備した。次に、前記スラリーを銅薄膜(厚さ10μm)の表面に塗布し乾燥して、負極活物質層(厚さ120μm)を有する負極を製造した。
【0075】
3)ラミネート工程
前記製造された負極と正極との間に分離膜を介在して積層させ、ラミネート工程を行って電極組立体を得た。前記ラミネート工程は、ホットプレスを用いて70℃、5.2MPaの条件で10秒間行った。
【0076】
4.物性評価
前記で得られた電極組立体で負極と正極を剥離して除去し、分離膜を取り出した後、アセトンを用いて分離膜の有機/無機複合コーティング層を除去し、多孔性基材を得た。
【0077】
【表2】
【0078】
前記[表2]で、ラミネート後の厚さ減少率は、電極組立体の製造前の多孔性基材の厚さ(A)と電極組立体の製造後に分離して得られた多孔性基材の厚さ(B)とを比較したものであって、AとBとの差をAで割った値の百分率である。
【0079】
また、前記ラミネート通気度は、有機/無機複合コーティング層の除去後の多孔性基材の通気度を測定して示したものである。前記通気度は、旭精工(Asahi seiko)社のEG01-55-1MR装置を用いて測定した。
【0080】
また、前記変形後のERは、有機/無機複合コーティング層の除去後の多孔性基材の抵抗を測定して示したものである。得られた多孔性基材をSUSの間に介在させ、電解液を注液してコインセルを作製し、EISの方法で抵抗(ER)を測定した。この時、周波数(frequency)は100000~10000Hzの範囲とした。
【0081】
高分子フィルム部材の気孔度が低い場合、高分子フィルム部材の厚さ方向に加圧する際の厚さ減少率が少ない。しかし、初期気孔度が低い状態で加圧された結果、通気度の増加及び抵抗の増加が発生して、セル性能が低下した。
【0082】
一方、比較例3の場合、初期気孔度が大きくて、加圧による厚さの減少後も気孔度が高いため、電極組立体の製造時のラミネート工程でさらに厚さの減少が大きく現れた。これは、電池の製造後も持続的な変形によって性能の劣化及び安全性に影響を与える可能性がある。
【0083】
一方、高分子フィルム部材の気孔度が40vol%~70vol%である場合、分離膜基材及び電極組立体の製造後も適切な気孔度を確保することができ、さらなる変形に対する懸念が少なかった。また、電池の製造時に通気度と抵抗が適切な水準で現れ、電池駆動に適した水準の物性が確保された。