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特許7596538トリスアミド化合物およびトリスアミド化合物を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】トリスアミド化合物およびトリスアミド化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/20 20060101AFI20241202BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20241202BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20241202BHJP
   C07C 233/65 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C08K5/20
C08L23/00
C08L23/14
C07C233/65
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023533716
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021061635
(87)【国際公開番号】W WO2022132455
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/125,374
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレマー、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ハンス-ベルナー
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ジョン・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ、スチトラ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、キース
(72)【発明者】
【氏名】メール、ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】スクリブンス、ウォルター
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070621(JP,A)
【文献】国際公開第2008/075410(WO,A1)
【文献】特表2004-515592(JP,A)
【文献】特開2010-095667(JP,A)
【文献】特開2012-012595(JP,A)
【文献】特開2009-079188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
C09K3/20-3/32
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、R、R、およびRは、アルキル基からなる群から独立して選択され、組成
物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の70%以上
は、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある]の1つ以上のトリメシン酸誘導体を含む組成物。
【請求項2】
、R、およびRが、C~Cアルキル基からなる群から独立して選択される
、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
、R、およびRのうちの少なくとも1つが、分枝アルキル基である、請求項1
または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
、R、およびRのうちの少なくとも2つが、分枝アルキル基である、請求項3
に記載の組成物。
【請求項5】
、R、およびRの各々が、分枝アルキル基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
N,N,N-トリ(4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-イソプロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
N,N,N-トリ(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
およびこれらの混合物
からなる群から選択されるトリメシン酸誘導体を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-イソプロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、N,N,N-トリ(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中に存在する式(I)の前記トリメシン酸誘導体のR、R、およびR
基の90%以上が、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中に存在する式(I)の前記トリメシン酸誘導体の約50モル%以上が、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にあるR、R
、およびR基を有する、請求項1~14の何れか1項に記載の組成物。
【請求項16】
(a)請求項1~15の何れか1項に記載の組成物と、
(b)ポリオレフィンポリマーと
を含むポリマー組成物。
【請求項17】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンポリマーである、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリプロピレンランダムコポリマーである、請求項18に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記組成物が、前記ポリマー組成物の総重量に対して約0.001重量%以上の式(I)のトリメシン酸誘導体を含有する、請求項16~19の何れか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、トリスアミド化合物(具体的には、トリメシン酸[すなわち、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸]から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体)およびトリスアミド化合物を含む組成物に関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002]ポリマー樹脂は、数ある中でも、それらの優れた加工性、機械的特性(とりわけ相対重量基準で)および電気的特性により、様々な分野で広く使用されている。ポリマー自体が有益な特性を有し得るが、さらにポリマーの特性を高めるため、および/または不都合な点を軽減するために添加剤が使用されてもよい。
【0003】
[0003]ポリオレフィンは、特に用途の広いポリマー樹脂の群である。ポリオレフィンは半結晶性ポリマーである。比較的ゆっくり冷却したポリオレフィン(たとえば、成形プラスチック部品の製造中に行われる冷却など)は、ポリマー鎖が無作為に配置された非晶質領域と、ポリマー鎖が規則的な配置をとった結晶性領域とを含有する。ポリオレフィンのこれらの結晶性領域内では、ポリマー鎖は、一般に「結晶ラメラ」と称されるドメインに整列している。通常の加工条件下では、ポリオレフィンポリマーが溶融状態から冷却されるにつれて、結晶ラメラはあらゆる方向に放射状に成長する。この放射状の成長は球晶の形成を生じ、これは、非晶質領域によって遮られた複数の結晶ラメラから構成された球状の半結晶性領域である。球晶のサイズは、いくつかのパラメータによって影響を受け、直径で数百ナノメートルから数ミリメートルに及び得る。球晶サイズが可視光の波長よりもかなり大きい場合、球晶はポリマーを通過する可視光を散乱させる。可視光のこの散乱は、「ポリマーヘイズ」または単に「ヘイズ」と一般に称される、曇った外観を生じる。一部の用途では、かなりのレベルのポリマーヘイズが許容可能であり得るが、消費者が比較的透明なプラスチックを所望する特定の用途(たとえば、貯蔵容器)が存在し、それに応じて低いヘイズレベルが必要とされる。
【0004】
[0004]長年にわたって、ポリオレフィンにおけるヘイズを低減するために、いくつかのアプローチが開発されてきた。多くの商業的成功を収めた1つのアプローチは、透明化剤の使用を伴う。透明化剤は、ポリマーとともに溶融加工されるときに、冷却されつつあるポリマーの結晶化の核を形成し、球晶サイズを低減したり、これらの有効な光散乱物の形成を実質的に防止したりさえする添加剤(しばしば有機化合物)である。たとえば、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールは、ポリプロピレンポリマーにおけるヘイズを低減できるため、多くの商業的成功を収めた。しかしながら、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールは、その限界がないわけでなかった。特に、透明化剤は、ポリプロピレンポリマーにおけるヘイズを、より透明なポリマー、たとえば、ポリスチレンおよびアクリル樹脂のヘイズレベルに匹敵するところまで低減することはできない。ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールによって透明化されたポリマーの残留ヘイズにより、それらのポリマーの用途および最終使用が制限される。
【0005】
[0005]ソルビトールアセタール(たとえば、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール)の限界に対処するために、他の透明化剤が開発されてきた。たとえば、トリスアミド化合物(たとえば、1,3,5-ベンゼントリアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、5-アミノイソフタル酸、またはトリメシン酸から形式的に誘導されたトリスアミド誘導体)は、相対的に低い添加量のそのような化合物が、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールによって達成されるヘイズレベルに匹敵したポリプロピレンポリマーにおけるヘイズレベルをもたらすことができるという事実により、当初、有望視されていた。それらの当初の見込みにもかかわらず、開示されたトリスアミド化合物は、依然としてより透明なポリマーのヘイズレベルに匹敵するヘイズレベルをもたらすことができない。さらに、開示されたトリスアミド化合物の多くは、それらが添加されるポリプロピレンから抽出される可能性がある。これらの望ましくないレベルの抽出により、そのようなトリスアミド化合物は、産業の選好および/または規制上の要件によりポリマーから最小限の抽出を示す添加剤が要求される、食品接触および医療用途(すなわち、トリスアミド化合物で透明化されたポリマーが食品と接触する用途[たとえば、食品の貯蔵もしくは包装]または医療装置に使用される用途[たとえば、シリンジ])での使用にあまり適していないものとなる。
【0006】
[0006]したがって、ポリオレフィンポリマーにおいて望ましく低いヘイズレベルをもたらすことと、透明化剤が添加されるポリオレフィンポリマーから最小限の抽出を示すことの両方が可能な透明化剤が求められている。また、このような透明化剤を組み込み、低いヘイズと透明化剤の最小限の抽出の所望の組み合わせを示すポリマー組成物も求められている。ここで記載する様々な態様は、このような透明化剤および組成物を提供しようとするものである。
【発明の簡単な概要】
【0007】
[0007]第1の態様において、本発明は、式(I)
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、R、R、およびRは、アルキル基からなる群から独立して選択される]
の1つ以上のトリメシン酸誘導体を含む組成物を提供する。
【0010】
[0008]第2の態様において、本発明は、上述した組成物(すなわち、式(I)の1つ以上のトリメシン酸誘導体を含む組成物)と、ポリオレフィンポリマーとを含むポリマー組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0011】
[0009]第1の態様において、本発明は、トリメシン酸(すなわち、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸)から形式的に誘導されたトリスアミド化合物である、下記式(I)のトリメシン酸誘導体を提供する。式(I)の構造は以下の通りである:
【0012】
【化2】
【0013】
式(I)において、R、R、およびR基は、アルキル基からなる群から独立して選択される。
【0014】
[0010]R、R、およびR基は、任意の適当なアルキル基であり得る。好ましい態様において、R、R、およびRは、C~C20アルキル基(たとえば、C~C20アルキル基)、より好ましくはC~C12アルキル基(たとえば、C~C12アルキル基)、さらにより好ましくはC~Cアルキル基(たとえば、C~Cアルキル基)、最も好ましくはC~Cアルキル基(たとえば、C~Cアルキル基またはC~Cアルキル基)からなる群から独立して選択される。適当なアルキル基は直鎖状または分枝の何れかであり得る。好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは分枝アルキル基である。別の好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも2つは、独立して選択された分枝アルキル基である。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRは、それぞれ独立して分枝アルキル基から選択される。分枝アルキル基を含有するこれらの態様において、アルキル基は、任意の適当な数の炭素原子を含有することができ、好ましい例は、C~C20分枝アルキル基、C~C12分枝アルキル基、C~C分枝アルキル基、およびC~C分枝アルキル基である。適当な分枝アルキル基は、好ましくは、シクロヘキサンジイル部分に対してアルファ炭素またはベータ炭素に位置する分枝点を含む。
【0015】
[0011]好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(すなわち、2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(すなわち、3-メチルブチル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、ペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)、および2-メチルブチルからなる群から独立して選択される。より好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、およびペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)からなる群から独立して選択される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から独立して選択される。
【0016】
[0012]上述したように、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、好ましくは、分枝アルキル基である。したがって、好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(すなわち、2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(すなわち、3-メチルブチル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、ペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)、および2-メチルブチルからなる群から選択される。別の好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、sec-ブチル(すなわち、ブタン-2-イルまたは1-メチルプロピル)、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、tert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)、sec-ペンチル(すなわち、ペンタン-2-イルまたは1-メチルブチル)、sec-イソペンチル(すなわち、3-メチルブタン-2-イルまたは1,2-ジメチルプロピル)、およびペンタン-3-イル(すなわち、1-エチルプロピル)からなる群から選択される。より好ましい態様において、R、RおよびRのうちの少なくとも1つは、イソプロピル、イソブチル(すなわち、2-メチルプロピル)、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)、およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から選択される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも1つは、tert-ブチル(すなわち、1,1-ジメチルエチル)およびtert-ペンチル(すなわち、2-メチルブタン-2-イルまたは1,1-ジメチルプロピル)からなる群から選択される。別の好ましい態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも2つは、本項で規定される基のうちの1つから独立して選択される分枝アルキル基である。好ましい態様において、R、RおよびRの各々は、この段落に記載した群のうちの1つから独立して選択される分枝アルキル基である。
【0017】
[0013]好ましい態様において、組成物は、
(i)N,N,N-トリ(4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(ii)N,N,N-トリ(4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(iii)N,N,N-トリ(4-イソプロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(iv)N,N,N-トリ(4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(v)N,N,N-トリ(4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(vi)N,N,N-トリ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(vii)N,N,N-トリ(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;および
(viii)これらの混合物(すなわち、前述の化合物の何れかの2つ以上の混合物)
からなる群から選択されるトリメシン酸誘導体を含む。
【0018】
好ましい一態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-イソプロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。
【0019】
[0014]式(I)において分かるように、各シクロヘキサンジイル部分は、1位と4位の両方において非水素置換基(すなわち、R、R、またはR基およびアミド置換ベンゼン部分)で置換されている。各シクロヘキサンジイル部分に結合した非水素置換基は、互いに対して2つの異なる空間的配置で配置され得る。両方の非水素置換基がシクロヘキサン環の平均平面の同じ側に存在することができ、これはcis立体配置に相当し、または両方の非水素置換基がシクロヘキサン環の平均平面の両側に存在することができ、これはtrans立体配置に相当する。R、R、およびR基の各々は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対して、cis位またはtrans位の何れかに配置され得る。(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対して)好ましい態様において、R、R、およびR基のうちの少なくとも1つは、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。別の好ましい態様において、R、R、およびR基のうちの少なくとも2つは、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。さらに別の好ましい態様において、R、R、およびR基の各々は、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位に配置される。
【0020】
[0015]好ましい態様において、組成物は、
(i)N,N,N-トリ(cis-4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(ii)N,N,N-トリ(cis-4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(iii)N,N,N-トリ(cis-4-イソプロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(iv)N,N,N-トリ(cis-4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(v)N,N,N-トリ(cis-4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(vi)N,N,N-トリ(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;
(vii)N,N,N-トリ(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド;および
(viii)これらの混合物(すなわち、前述の化合物の何れかの2つ以上の混合物)
からなる群から選択されるトリメシン酸誘導体を含む。
【0021】
好ましい一態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-n-プロピルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-n-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-イソブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-tert-ブチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。さらに別の好ましい態様において、組成物は、N,N,N-トリ(cis-4-tert-ペンチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドを含む。
【0022】
[0016]上述のように、本出願は、式(I)の1つ以上のトリメシン酸誘導体を含有する組成物、たとえば、式(I)の2つ以上のトリメシン酸誘導体の混合物を含有する組成物をも包含する。(これに関連して、cisおよびtrans異性体は異なる化合物と考えられ、そのため、2つ以上の異性体の混合物は式(I)の2つ以上のトリメシン酸誘導体の混合物を含有する組成物を構成する)。このような態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、RおよびR基の60%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)ことが好ましい。より好ましくは、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約65%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約70%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約75%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約80%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約85%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約90%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)の全てのトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約95%以上(たとえば、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上)が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)。
【0023】
[0017]式(I)の2つ以上の化合物の混合物を含有する組成物の別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約60モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。より好ましくは、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約65モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約70モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約75モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約80モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約85モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。さらに別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約90モル%以上が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。別の好ましい態様において、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体の約95モル%以上(たとえば、約96モル%以上、約97モル%以上、約98モル%以上、または約99モル%以上)が、対応するシクロヘキサンジイル部分の1位に結合した非水素置換基に対してそれぞれcis位にある(すなわち、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある)R、R、およびR基を有する。
【0024】
[0018]式(I)のトリメシン酸誘導体は、任意の適当な方法または合成過程を用いて生成することができる。たとえば、この化合物は、所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンを1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(すなわち、トリメシン酸の酸クロリド)と反応させて式(I)のトリメシン酸誘導体を生成させることにより生成することができる。
【0025】
[0019]R、R、およびRの何れかが異なる式(I)のトリメシン酸誘導体は、最初に5-アルコキシカルボニルイソフタル酸(たとえば、5-メトキシカルボニルイソフタル酸)を塩化オキサリルと反応させて下記式(J)
【0026】
【化3】
【0027】
[式中、R11はアルキル基(たとえば、メチル基)である]の酸クロリド化合物を生成させることにより生成することができる。次に、式(J)の酸クロリド化合物を所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンと反応させて下記式(K)
【0028】
【化4】
【0029】
の中間体化合物を生成することができる。次いで、式(K)の中間体化合物を適当な塩基(たとえば、水酸化リチウム)で鹸化して、対応するカルボン酸塩(たとえば、カルボン酸のリチウム塩)およびアルコール(すなわち、構造R11OHを有するアルコール、たとえばR11がメチルの場合にはメタノール)を得ることができる。次に、対応するカルボン酸塩を適当な酸(たとえば、塩酸)で加水分解して、下記式(L)
【0030】
【化5】
【0031】
の酸を生成することができる。次に、式(L)の酸を塩化オキサリルと反応させて、対応する下記式(M)
【0032】
【化6】
【0033】
の酸クロリド化合物を得ることができる。最後に、式(M)の酸クロリドを所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンと反応させて、式(I)の所望のトリメシン酸誘導体を生成することができる。
【0034】
[0020]R、R、およびRがそれぞれ異なる式(I)のトリメシン酸誘導体は、いくつかの方法で生成することができる。1つの可能なアプローチは、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリドを3つの異なる4-アルキルシクロヘキシルアミンの混合物に反応させることであろう。この手順では、所望の非対称トリメシン酸誘導体(すなわち、R、R、およびRがそれぞれ異なる誘導体)を含むいくつかのトリメシン酸誘導体を含有する反応生成物が得られるであろう。次に、既知の分離技術を用いて、反応生成物から所望のトリメシン酸誘導体を分離することができる。
【0035】
[0021]あるいは、このようなトリメシン酸誘導体の合成は、最初に、下記式(P)
【0036】
【化7】
【0037】
[式中、R11はアルキル基(たとえば、メチル基)である]の3-ヨード-5-(アルコキシカルボニル)安息香酸化合物(たとえば、3-ヨード-5-(メトキシカルボニル)安息香酸))により開始することができる。式(P)の化合物を塩化オキサリルと反応させて、下記式(Q)
【0038】
【化8】
【0039】
の対応する酸クロリドを生成することができる。次に、式(Q)の酸クロリド化合物を所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンと反応させて下記式(R)
【0040】
【化9】
【0041】
の中間体化合物を生成することができる。次いで、式(R)の中間体化合物を適切な塩基(たとえば、水酸化リチウム)で鹸化して、対応するカルボン酸塩(たとえば、カルボン酸のリチウム塩)およびアルコール(すなわち、構造R11OHを有するアルコール、たとえばR11がメチルの場合メタノール)を得ることができる。次に、対応するカルボン酸塩を適当な酸(たとえば、塩酸)で加水分解して、下記式(S)
【0042】
【化10】
【0043】
の酸を生成することができる。式(S)の酸を塩化オキサリルと反応させて、対応する酸クロリド化合物を得ることができ、この酸クロリド化合物を所望の4-アルキルシルコヘキシルアミンと反応させて下記式(T)
【0044】
【化11】
【0045】
の中間体ビスアミド化合物を得る。次に、式(T)の中間体ビスアミド化合物を、いくつかの好適な手法の何れか、たとえば一酸化炭素のパラジウム触媒付加反応および酸処理によって、下記式(U)
【0046】
【化12】
【0047】
の対応するカルボン酸に変換することができる。次いで、式(U)のカルボン酸を塩化オキサリルと反応させて、対応する酸クロリドを得ることができる。最後に、酸クロリドを所望の4-アルキルシクロヘキシルアミンと反応させて、式(I)のトリメシン酸誘導体を得ることができる。
【0048】
[0022]第2の態様において、本発明は、上述した組成物(すなわち、式(I)の1つ以上のトリメシン酸誘導体を含む組成物)とポリマーとを含むポリマー組成物を提供する。そのような態様において、式(I)のトリメシン酸誘導体は、本発明の第1の態様に関連して上記で論じた態様(たとえば、特定の化合物または化合物の混合物を含有する組成物)の何れかであり得る。
【0049】
[0023]ポリマー組成物は、任意の適当なポリマーを含むことができる。好ましくは、ポリマーは、熱可塑性ポリマー、たとえば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリカーボネート、アクリルポリマー、またはこれらの混合物である。より好ましくは、ポリマーは、ポリオレフィンポリマー、たとえば、ポリプロピレンポリマー、ポリエチレンポリマー、ポリメチルペンテンポリマー(たとえば、ポリ(4-メチル-1-ペンテン))、ポリブチレンポリマー、ポリ(ビニルシクロヘキサン)ポリマー、およびこれらの混合物である。好ましい態様において、ポリマーはポリプロピレンポリマーである。より好ましくは、ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー(たとえば、アタクチックポリプロピレンホモポリマー、アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー、およびシンジオタクチックポリプロピレンホモポリマー)、ポリプロピレンコポリマー(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー)、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。適当なポリプロピレンコポリマーには、エチレン、ブタ-1-エン(すなわち、1-ブテン)、およびヘキサ-1-エン(すなわち、1-ヘキセン)からなる群から選択されるコモノマーの存在下におけるプロピレンの重合から作成されたランダムコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなポリプロピレンランダムコポリマーにおいて、コモノマーは、任意の適当な量で存在することができるが、典型的には、約10重量%未満(たとえば、約1~約7重量%)の量で存在する。適当なポリプロピレンインパクトコポリマーには、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリプロピレンランダムコポリマーへの、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、ポリエチレン、およびプラストマーからなる群から選択されるコポリマーの付加によって生成されるものが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなポリプロピレンインパクトコポリマーにおいて、コポリマーは任意の適当な量で存在することができるが、典型的には、約5~約25重量%の量で存在する。好ましい態様において、ポリマー組成物は、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンポリマーを含む。より好ましくは、ポリマー組成物はポリプロピレンランダムコポリマーを含む。
【0050】
[0024]本発明のポリマー組成物は、任意の適当な量の上述した式(I)のトリメシン酸誘導体を含有することができる。好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.0001重量%(たとえば、少なくとも0.001重量%)の式(I)のトリメシン酸誘導体を含む。別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも0.002重量%、少なくとも0.003重量%、少なくとも0.004重量%、少なくとも0.005重量%、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.03重量%、少なくとも0.04重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%の式(I)のトリメシン酸誘導体を含む。別の態様において、ポリマー組成物は、好ましくは、組成物の総重量に対して、99重量%未満の式(I)のトリメシン酸誘導体を含む。別の好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、95重量%未満、80重量%未満、50重量%未満、25重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または0.07重量%未満の式(I)のトリメシン酸誘導体を含む。一連の特に好ましい態様において、ポリマー組成物は、組成物の総重量に対して、0.001重量%~0.5重量%(たとえば、0.01重量%~0.5重量%または0.05重量%~0.5重量%)、0.001重量%~0.2重量%(たとえば、0.01重量%~0.2重量%または0.05重量%~0.2重量%)、0.001重量%~0.1重量%(たとえば、0.01重量%~0.1重量%または0.05重量%~0.1重量%)、または0.001重量%~0.07重量%(たとえば、0.01重量%~0.07重量%)の式(I)のトリメシン酸誘導体を含む。上述したように、本発明のポリマー組成物は、式(I)の複数のトリメシン酸誘導体を含むことができる。ポリマー組成物が式(I)の2つ以上のトリメシン酸誘導体を含むそれらの態様において、各トリメシン酸誘導体は、上記に列挙した範囲のうちの1つの範囲内に含まれる量で存在することができ、または組成物中の全てのトリメシン酸誘導体の合わせた量が上記に列挙した範囲のうちの1つの範囲内に含まれ得る。
【0051】
[0025]ここで記載するポリマー組成物は、式(I)のトリメシン酸誘導体に加えて他のポリマー添加剤を含有することができる。適当な付加的なポリマー添加剤には、酸化防止剤(たとえば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、およびこれらの組み合わせ)、ブロッキング防止剤(たとえば、非晶質シリカおよび珪藻土)、顔料(たとえば、有機顔料および無機顔料)および他の着色剤(たとえば、染料およびポリマー着色剤)、充填剤および補強剤(たとえば、ガラス、ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム、およびオキシ硫酸マグネシウムウィスカー)、核形成剤、透明化剤、酸捕捉剤(脂肪酸の金属塩、たとえば、ステアリン酸の金属塩)、ポリマー加工添加剤(たとえば、フルオロポリマーのポリマー加工添加剤)、ポリマー架橋剤、スリップ剤(たとえば、脂肪酸と、アンモニアまたはアミン含有化合物との反応から誘導される脂肪酸アミド化合物)、脂肪酸エステル化合物(たとえば、脂肪酸と、ヒドロキシル含有化合物、たとえば、グリセリン、ジグリセロール、およびこれらの組み合わせとの反応から誘導される脂肪酸エステル化合物)、ならびに前述のものの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
[0026]ここで記載するポリマー組成物は、任意の適当な方法によって生成することができる。たとえば、ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィンポリマー、式(I)のトリメシン酸誘導体を含む組成物、および任意の追加の任意成分の単純な混合(たとえば、高せん断または高強度混合)により生成することができる。あるいは、式(I)のトリメシン酸誘導体および任意の付加的な任意成分(たとえば、上述したもの)を含む添加剤組成物を予めブレンドして、プレブレンド組成物を提供することができる。次に、このプレブレンド組成物をポリマーと混合して、上述したポリマー組成物を生成することができる。ポリマー組成物は、物品を製造するためのさらなる加工で使用するのに適した任意の形態で提供され得る。たとえば、ポリマー組成物は、粉末(たとえば、自由流動粉末)、フレーク、ペレット、小球、タブレット、アグロメレートなどの形態で提供され得る。
【0053】
[0027]ここで記載するポリマー組成物は、熱可塑性物品を製造するのに有用であると考えられる。ポリマー組成物は、任意の適当な技術、たとえば、射出成形、射出回転成形、ブロー成形(たとえば、射出ブロー形成または射出延伸ブロー成形)、押出し(たとえば、シート押出し、フィルム押出し、キャストフィルム押出し、または発泡押出し)、押出しブロー成形、熱成形、回転成形、フィルムブローイング(インフレーションフィルム)、フィルムキャスティング(キャストフィルム)などによって、所望の熱可塑性物品に成形することができる。
【0054】
[0028]ここで記載するポリマー組成物は、任意の適当な物品または製品を製造するために使用することができる。適当な製品には、医療機器(たとえば、レトルト用途のプレフィルドシリンジ、静脈内供給容器、および採血装置)、食品包装、液体容器(たとえば、飲料、薬物、パーソナルケア組成物、シャンプーなどのための容器)、衣装ケース、電子レンジ使用可能な物品、棚材料、キャビネットドア、機械部品、自動車部品、シート、パイプ、チューブ、回転成形部品、ブロー成形部品、フィルム、繊維などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
[0029]本発明のポリマー組成物は、式(I)のトリメシン酸誘導体の低ヘイズと低抽出の非常に望ましい組み合わせを示すことが認められた。式(I)のトリメシン酸誘導体を含有するポリマー組成物(たとえば、ポリプロピレンランダムコポリマー組成物)は、一般に、式(I)によって包含されない構造的に類似したトリメシン酸誘導体を含有するポリマー組成物によって示されるヘイズレベルより少なくとも15%低いヘイズレベルを示す。さらに、式(I)の特定のトリメシン酸誘導体を含有するポリマー組成物は、より透明なポリマー、たとえば、ポリスチレンおよびアクリルポリマーによって示されるものに匹敵する1桁のヘイズレベルを示すことが認められた。上述したように、これらのポリマー組成物はまた、ポリマー組成物からの式(I)のトリメシン酸誘導体のひときわ良好な(すなわち、低い)抽出を示す。実際、式(I)の特定のトリメシン酸誘導体を含有するポリマー組成物は、式(I)によって包含されない構造的に類似したトリメシン酸誘導体を含有するポリマー組成物によって示される抽出レベルより1桁~2桁小さい抽出レベルを示すことが認められた。本発明のポリマー組成物によって示されたこれらの特性により、ポリマー組成物は、低ヘイズレベルおよび低抽出を必要とする熱可塑性物品または製品、たとえば、食品接触および医療用途向けの物品および製品の製造に使用するためにとりわけよく適したものになると考えられる。
【0056】
[0030]以下の例は、上述した主題をさらに例示するが、当然ながら、その範囲をいかなるようにも限定すると解釈されるべきではない。
【0057】
例1
[0031]この実施例は、本発明によるトリメシン酸誘導体の調製を説明するものである。
【0058】
[0032]6.53g(57.7mmol)のcis-4-メチルシクロヘキシルアミン、0.10gのLiCI、および25.62g(253.2mmol)のトリエチルアミン(TEA)を不活性雰囲気下で550mLの無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に添加した。
【0059】
[0033]100mLの無水DMFに溶解させた4.52g(17.0mmol)の1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリドを、不活性雰囲気下で25℃にて撹拌しながら15分間にわたり、上記のcis-4-メチルシクロヘキシルアミン、LiCl、TEA反応混合物に添加した。次いで、反応溶液を80℃に加熱し、48時間撹拌した。
【0060】
[0034]反応混合物を25℃に冷却した後、反応スラリーに700mLのメタノールを投入し、48時間撹拌した。次いで、析出した固体を吸引ろ過によって収集し、次いで、メタノール(2×200mL)で洗浄した。
【0061】
[0035]次に、単離された固体を、真空オーブン内で140℃にて18時間乾燥させた。この反応により、6.62gの微細な白色粉末(78.4%)を得た。生成物がN,N,N-トリ(cis-4-メチルシクロヘキシル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミドであることを確認した。
【0062】
例2
[0036]本例は、本発明によるポリマー組成物の生成およびそのようなポリマー組成物の特性を示す。
【0063】
[0037]最初に、上述した実施例1で示した一般的な手順に従い、7つのトリメシン酸誘導体を合成した。これらのトリメシン酸誘導体を以下の表1に示す。化合物1~6はそれぞれ、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体のR、RおよびR基の99%超がシクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある組成物(たとえば、反応生成物)の形態で得た。化合物7は、組成物中に存在する式(I)のトリメシン酸誘導体のR、R、およびR基の約54%が、シクロヘキサンジイル部分に結合した窒素原子への結合に対してcis位にある組成物(たとえば、反応生成物)の形態で得た。組成物中のR、RおよびR基がcis位にある割合を、H NMRを用いて測定した。
【0064】
【表1】
【0065】
[0038]ポリマー組成物は、各トリメシン酸誘導体を12MFRポリプロピレンランダムコポリマー(LyondellBasell製のSA849 RCP)に配合することによって作成した。トリメシン酸誘導体(すなわち、化合物1~7)をポリマーのペレットにそれぞれ重量測定により添加し(添加剤/ポリマー混合物1000グラムあたり0.80グラムの粉末添加剤で、800ppmのトリメシン酸誘導体を得る)、次いでHenschel高強度ミキサで混合した。得られた混合物を、スクリュー直径25mmおよび長さ/直径比30:1を有したDeltaplast一軸スクリュー配合押出し機において260℃で溶融配合した。各試料の押出し品(ストランドの形態)を水浴中で冷却し、続いてペレット化した。次に、溶融配合したポリマー組成物を、40トン ARBURG ALLROUNDER 221K射出成形機を使用して、260℃の平坦なプロファイルのバレル温度および100barの背圧で射出成形して、約51mmx76mmの寸法で0.76mmの厚さを有したプラークを生成した。24時間エージングした後、プラーク寸法をマイクロメータで検証した。
【0066】
[0039]次に、プラーク(トリメシン酸誘導体を用いないで作成した対照プラークを含む)のパーセントヘイズを、ASTM規格D1103-92に従って、BYK-Gardner Haze-Guard Plusを使用して測定した。
【0067】
[0040]また、プラークを、抽出されたトリメシン酸誘導体の量を求めるために所定の一連の条件を使用して試験した。特に、抽出は、テフロン(登録商標)で内張りされ、ステンレス鋼の蓋を有した550mLのステンレス鋼容器を使用して、100℃で2時間行った。ガラススペーサーを使用して、移行試験中におけるポリマー試料の分離を確実に行った。抽出は25%エタノール溶液を用いた。エタノールは無水グレードであった。水は、イオン交換浄化システムを使用して、脱イオン化して得た。溶媒中における二重移行試験は、250mLの溶媒に浸漬した2つのプラークを使用して実施した。対照プラークもトリメシン酸誘導体を用いないで調製し、上述した条件を用いて抽出した。アリコート(約1mL)を各加熱時間後に抽出溶媒からLC分析のためにバイアルに取り出した。
【0068】
[0041]各トリメシン酸誘導体の1000ppm溶液は、NMP中に0.100gを溶解させることにより調製し、希釈物は100%エタノールで調製した。これらの溶液を使用して、各トリメシン酸誘導体のための較正プロットを得た。分析カラムとしてPhenomenex Kinetex(粒径2.6μm)および検出器としてPDAとMSの両方を用いたWater ACQUITY UPLCをLC装置として使用した。カラム温度は40℃であった。使用した移動相はメタノールおよび水であった。流量は0.4mL/分に設定した。試料注入量は1~5μLであった。質量分析計は、SQD2検出器を使用して、シングルイオンレコーディング(SIR)モードで使用した。PDA検出器における波長は、200~800nmに設定した。各トリメシン酸誘導体は、標準溶液における対応するピークとのその保持時間の比較、ならびにそのMSおよびUVスペクトルによって同定した。定量は、外部標準の較正プロットを使用して行った。検出限界(LOD)は、3:1の信号対ノイズ比に対する外挿によって求めた。
【0069】
[0042]ヘイズおよび抽出の測定の結果を下記の表2に示す。抽出された量の列において、「N.D.」の表示は「不検出」を意味し、測定が上記の検出限界(LOD)を超えた信号を返さなかったので、抽出されたトリメシン酸誘導体の量(もしあれば)を定量化することができなかったことを示す。
【0070】
【表2】
【0071】
[0043]表2のデータから分かるように、化合物1~6を用いて作成したポリマー組成物は、それぞれ非常に低い抽出レベル(すなわち、50ppb以下)を示した。実際に、化合物1~3および5で作成されたポリマー組成物は、検出限界を下回る抽出レベル(存在する場合)を示した。対照的に、化合物7で作成されたポリマー組成物は、200ppbを超える抽出レベルを示し、これは、化合物6で作成されたポリマー組成物が示した抽出の4倍超である。この抽出結果は、化合物6と化合物7の唯一の違いが2つの試料のcis含量であることを考えると驚くべきものである。さらに、この結果は、これらの極めて低い抽出レベルが比較的高いcis含量を有するトリメシン酸誘導体により一貫して示されたことを表すものである。
【0072】
[0044]さらに、表2のデータは、化合物1~7の各々が、トリメシン酸誘導体を含有しない対照と比較して、ポリマー組成物のヘイズレベルを著しく低下させたことを示す。しかし、化合物7で作成されたポリマー組成物のヘイズレベルは、ヘイズの点で次に近い試料である化合物6で作成されたポリマー組成物のヘイズレベルよりも40%近く高い。これらの結果は、比較的高いcis含量を有するトリメシン酸誘導体が、より低いcis含量(たとえば、60%未満のcis含量)を有する同様のトリメシン酸誘導体に対して、改善されたヘイズ性能を一貫してもたらすことを示す。
【0073】
[0045]上記のことから、本発明者らは、本発明のトリメシン酸誘導体が、それらの低ヘイズと低抽出の非常に望ましい組み合わせにより、ひときわ優れていると考える。このようなトリメシン酸誘導体を用いて作成したポリマー組成物は、低いヘイズレベルおよび抽出レベルを示すポリマー組成物を必要とする広範囲の用途(たとえば、食品接触および医療機器用途)に適するであろう。
【0074】
[0046]ここで引用される刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、あたかも各参考文献が参照によって組み込まれることが個々に具体的に示され、その全体がここで記載されているのと同程度に、参照によってここに組み込まれる。
【0075】
[0047]本出願の主題を記載する文脈における(とりわけ以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」および「the」という用語ならびに類似の指示対象の使用は、ここで別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」という用語は、別段の注記がない限り、制限がない用語と解釈されるべきである(すなわち、「含むが、これ(ら)に限定されるものではない」を意味する)。ここでの値の範囲の列挙は、ここで別段の指示がない限り、範囲内に含まれるそれぞれの別個の値に個々に言及する簡単な方法として役立つように単に意図され、それぞれの別個の値は、それがあたかもここで個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。ここで記載される全ての方法は、ここで別段の指示がない限り、または別段文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施され得る。ここで提供されるありとあらゆる例または例示的な用語(たとえば、「たとえば、」)の使用は、単に本出願の主題をよりよく明らかにするように意図されており、別段特許請求されない限り、主題の範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる用語も、特許請求されていない任意の要素をここで記載される主題の実施に必須のものとして示すと解釈されるべきではない。
【0076】
[0048]本出願の主題の好ましい態様が、特許請求された主題を実行するために本発明者らに知られた最良のモードを含めて、ここに記載されている。これらの好ましい態様の変形物は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこれらの変形物を必要に応じて利用することを期待し、また本発明者らは、ここで記載した主題がここに具体的に記載されている以外のように実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用可能な法律によって認められる限り、ここに添付される特許請求の範囲に列挙される主題の修正および均等物の全てを含む。さらに、その全ての可能な変形物における上述の要素のいかなる組み合わせも、ここで別段の指示がない限り、または別段文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。