(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】エピタキシャル成長方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20241202BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/06 504D
(21)【出願番号】P 2023553666
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 CN2022076524
(87)【国際公開番号】W WO2022252693
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】202110607902.1
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523334095
【氏名又は名称】ウェハー・ワークス・エピタキシャル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チャンピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チャンアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チアン
(72)【発明者】
【氏名】シ、ハイフェン
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272773(JP,A)
【文献】特開2006-080196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバーの上方に冷却チャンバーが配置され、前記冷却チャンバーの上方にある冷却チャンバー壁には複数の溝形状の入口が形成され、前記複数の溝形状の入口は反応ガスの主流れ方向に沿って設けられており、
エピタキシャル成長の過程中に、
冷却ガスは、反応ガス出口に近い位置に分布する冷却ガス入口を介して前記冷却チャンバーに入
り、そして反応チャンバー壁の表面に直接吹き付けられ、そしてこの位置での前記反応チャンバー壁と熱交換し、その間に前記冷却ガスは前記反応チャンバーを適切に冷却することを特徴とするエピタキシャル成長方法。
【請求項2】
上記のエピタキシャル成長は、N型の超重ヒ素ドープ基板上で行われることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長方法。
【請求項3】
上記の基板の抵抗率は、0.002-0.003ohm-cmであることを特徴とする請求項2に記載のエピタキシャル成長方法。
【請求項4】
上記の基板の裏側の構造は、最初に二酸化ケイ素膜を成長させ、次にポリシリコンを成長させ、最後に二酸化ケイ素膜を成長させることを特徴とする請求項2に記載のエピタキシャル成長方法。
【請求項5】
反応チャンバーの上方に冷却チャンバーが配置され、前記冷却チャンバーの上方にある冷却チャンバー壁に複数の溝形状の入口が形成され、前記複数の溝形状の入口は反応ガスの主流れ方向に沿って設けられており、前記冷却チャンバーの冷却ガス入口が反応ガス出口に近い位置に分布しており、
冷却ガスは、前記反応ガス出口に近い位置に分布する前記冷却ガス入口を介して前記冷却チャンバーに入り、そして反応チャンバー壁の表面に直接吹き付けられ、そしてこの位置での前記反応チャンバー壁と熱交換し、その間に前記冷却ガスは前記反応チャンバーを適切に冷却することを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項6】
前記溝形状の入口は、反応ガスの入口側にバッフルプレートを取り外し可能に備えており、バッフルプレートは、溝形状の入口の反応ガスの入口側に近い局部に配置されているので、溝形状の入口の反応ガスの出口側に近い局部に冷却ガスの入口は形成されることを特徴とする請求項5に記載のエピタキシャル成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造、特にエピタキシャル成長方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、300mmシリコンエピタキシーの分野では、50um厚さのエピタキシャル層のエピタキシャル成長は一般に分配によって行われる。通常の工程は、1回で10um以下の厚さの薄いエピタキシャル層を成長させることで、複数回のエピタキシャル成長を介して厚膜エピタキシーの必要な厚さに徐々に到達する。一回で連続エピタキシャル成長が不可能な理由は、エピタキシャル成長の過程において、反応チャンバー内の温度が時間の経過とともに徐々に上昇することで、基板の中の不純物が反応チャンバーに逃げる副反応の発生が増加し、エピタキシャル層の抵抗率が影響を受け、また、温度が上昇するとともに、反応チャンバーの内面にカバー層が形成され、エピタキシャル温度が正確に制御できなくなるにつながある。複数回のエピタキシャル成長は、反応時間が長すぎることによる温度上昇の問題を回避できる。ただし、複数の成長は新たな問題を引き起こす。複数回のエピタキシャル成長によって形成された厚膜エピタキシャル層には、ドーピングが不連続であるため、成長における各層の界面に不連続ドーピングが発生する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、300mmのシリコンウェーハ上に一度に厚膜のエピタキシャル成長を完了することができるエピタキシャル成長方法を提供することである。
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明の第1方面では、エピタキシャル成長方法を提供し、エピタキシャル成長の過程中に、冷却チャンバーに入る冷却ガスを、反応ガスの出口側から提供する。
【0005】
本発明の第1方面のいくつかの実施例において、上記のエピタキシャル成長は、N型の超重ヒ素ドープ基板上で行われる。
【0006】
本発明の第1方面のいくつかの実施例において、上記の基板の抵抗率は、0.002-0.003ohm-cmである。
【0007】
本発明の第1方面のいくつかの実施例において、上記の基板の裏側の構造は、最初に二酸化ケイ素膜を成長させ、次にポリシリコンを成長させ、最後に二酸化ケイ素膜を成長させる。
【0008】
本発明の第2方面では、冷却ガスの入口を含むエピタキシャル成長装置を提供し、冷却ガスの入口は、反応ガスの出口側に近い冷却チャンバーに配置される。
【0009】
本発明の第2方面のいくつかの実施例において、冷却チャンバーは、反応ガスの方向に沿って溝形状の入口を備え、上記の溝形状の入口は、反応ガスの入口側にバッフルプレートを取り外し可能に備えており、バッフルプレートは、溝形状の入口の反応ガスの入口側に近い局部に配置されているので、溝形状の入口の反応ガスの出口側に近い局部に冷却ガスの入口は形成される。
【0010】
本発明のエピタキシャル成長方法は、300mmなどの大きいサイズのシリコンウェーハ上で一度に50umなどの厚膜のエピタキシャル成長を完了させることができ、且つ反応チャンバー上にカバー層を生成しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は実施例における一回の成長で形成されたエピタキシャルウェーハと複数回の成長によって形成されたエピタキシャルウェーハのSRP図である。
【
図2】
図2はエピタキシャル炉の反応チャンバーの温度比較図である。
【0012】
【
図3】
図3は従来技術の反応チャンバー内にカバー層を形成する概略図である。
【
図4】
図4は実施例における反応チャンバー内にカバー層がない場合の概略図である。
【
図5】
図5は実施例における冷却チャンバーの上部の概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、実施形態および添付図面を参照してさらに説明する。
【0014】
従来技術では50umの厚さの厚膜エピタキシーの単回成長を行うことができないことを考慮して、本発明のエピタキシー方法は、エピタキシャル成長の過程中に反応ガスの出口側から冷却チャンバーに入る冷却ガスを提供する。これは本発明は、エピタキシーの成長過程において、反応ガスの流れ方向に沿って反応チャンバーの出口側に近づくほど、反応ガスの温度が高くなり、また、エピタキシャル堆積プロセス中の副反応の大部分および反応チャンバーに形成されたカバー層もこの側に位置し、反応ガスの入口の方の温度は比較的に低いことを発現したのである。従来の技術は、一般に、反応チャンバーの全体的な温度に着目し、反応チャンバー内の局所温度の特性を気づかなかった。本発明は、この問題を発見し、反応ガスの出口側で冷却チャンバーに入る冷却ガスを提供することによって、この部分の冷却を強化し、副反応の発生を効果的に低減し、反応チャンバー内壁でカバー層を形成することを回避し、よって、300mmシリコンウェーハ上に単回成長で厚膜エピタキシーが形成することをを実現した。この方法による厚膜エピタキシーのドーピングが連続的であるため、製造工程のコストが大幅に削減され、高電圧機器の成長に用いられる。
【0015】
上記の基板の抵抗率は0.002~0.003ohm-cmである。上記の基板の裏側の構造は、最初に二酸化ケイ素膜を成長させ、次にポリシリコンを成長させ、最後に二酸化ケイ素膜を成長させる。この構造の基板は、基板からの不純物の脱出を効果的に制御することができ、それによって自己ドーピングの発生を低減し、これは厚膜エピタキシーの成長に有益である。
【0016】
本実施例において、またエピタキシャル成長装置を含む。
図6に示すように、反応チャンバー200の上方には冷却チャンバー100があり、冷却チャンバ100の上方の冷却チャンバーの壁103に複数の溝形状の入口102が開かれている。
図5に示すように、溝形状の入口102は反応ガスbの流れ方向に沿って開かれている。従来技術では、このような入口の配置方法は、反応炉の全体温度の変化のみを考慮し、反応チャンバー内の局所温度変化の特徴を気づかなかった。本発明は、大きいサイズのウェーハが単回成長して超厚エピタキシーが形成できない主な理由は、反応チャンバーの端部の反応ガスbの温度が高すぎる。反応ガスの出口に近い側により多くの副反応が起こり、それによってエピタキシャル成長の品質に影響を及ぼし、且つこの側の反応チャンバーの壁にカバー層を形成するのは容易である。したがって、本実施例の冷却ガスの入口110は、反応ガスの出口側に近い冷却チャンバー100上に配置されている。反応ガスの出口側に近い位置から冷却ガスaが冷却室100に入るのもまた、反応ガスの出口位置の温度が高すぎ、副反応の大部分はこの側で起こるという上記の発見に基づいている。冷却ガスaは、反応ガスの出口側に近くに位置する冷却入口から冷却室100に入り、反応チャンバーの壁の表面に直接吹き付けられ、この位置での反応チャンバーの壁で熱交換する。反応ガスの上向きに全長配置と比較して、反応ガスの出口側に近づく位置に配置するだけで、冷却ガスの流速を増やすことができる。よって、反応チャンバーの外壁に直接到達して十分な熱交換を行い、この部分の冷却効果を強化し、副反応の発生を効果的に低減し、反応チャンバーの内壁にカバー層が形成するのを防ぐことができる。同時に、冷却ガスaの自体圧力により、その一部が反応ガスに近い入口側に流れ込むことができ、反応チャンバー200の入口側を適切に冷却することができる。当該のエピタキシャル成長装置は、300mmシリコンウェーハの単回成長に用いられ、50umなどの厚膜エピタキシーを形成でき、得られた厚膜エピタキシャルのドーピングは連続で、製造工程のコストを大幅に削減し、高電圧機器の成長に用いられる。
【0017】
上記の構造は、既存の反応炉設備を改良することにより得られる。
図5に示すように、バッフルプレート101を追加して、反応ガスの入口側に近い溝形状の入口102にカバーすることにより、溝形状の入口102が反応ガスの出口側に近くの一部に冷却ガスの入口110を形成することができる。使用されているバッフルプレートは、放熱性能の良い素材からなるものを採用してもよく、冷却チャンバーとの間に溶接、ねじ接続、クリップ接続などの接続方法で接続することができる。
【0018】
実際のエピタキシャル成長過程中では、300mmの基板を本実施例のエピタキシャル成長装置に入れて、反応ガスは、反応ガスの入口から入り上記の基板を通って反応ガスの出口から流出する。高温の下で、基板の表面にエピタキシャル堆積が起こり、エピタキシャル層が形成される。エピタキシャル反応の過程中で、冷却ガスは冷却ガスの入口から入り、反応ガスの出口側にある反応チャンバーを冷却し、副反応の発生を効果的に抑制し、最終的に厚さ50umの厚膜エピタキシャル層が形成される。得られたエピタキシャル層は連続ドーピングを備えているため、連続的で安定した抵抗率を備えており(
図1を参照)、製造プロセスのコストを大幅に削減し、高電圧デバイスの成長に用いられる。
【0019】
大きいサイズのシリコンウェーハの厚膜エピタキシャルを成長させる際に、反応ガスが反応ガスの入口から反応チャンバーに入って、ウェーハの表面に所定の厚さのエピタキシャル層を堆積させ、反応ガスがウェーハを通過した後反応ガスの出口から排出される。エピタキシャルが成長しているプロセスで、バッフルプレートという制限により、冷却ガスが反応ガスの出口に近く側の溝形状の入口から入り、反応チャンバーの壁に対して冷却を行い、バッフルプレートにより、溝形状の入口の長さが短くなるため、溝形状の入口を通過する際の冷却ガスの流速が増加し、反応チャンバーの壁の表面まで直接吹き付けて熱交換を行うことができ、熱交換の効果が大幅に改善される。同じ条件下でバッフルプレートを使用しない反応チャンバーと比較すると、反応チャンバー内の温度は
図2に示され、バッフルプレートを溝形状の入口に追加した後の反応チャンバーの温度曲線5は、バッフルプレートを溝形状の入口に追加してない反応チャンバーの温度曲線よりも大幅に低くなっており、単一成長で厚膜エピタキシーを形成することができることを確保している。
図1に示すように、複数回の成長で形成されたエピタキシャルウェーハSRP曲線2は、明らかに界面で波動3を持っており、本実施例による単回成長で形成されたエピタキシャルウェーハSRP曲線1は、複数回の成長で形成されたエピタキシャルウェーハSRP曲線2よりもっと安定して連続的であり、エピタキシャルウェーハの品質が大幅に向上している。
【0020】
本発明の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、特許請求の範囲の制限を構成するものではない。当業者によって考案され得る他の実質的に均等の置換は、すべて、本発明の保護範囲内に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
エピタキシャル成長の過程中に、冷却チャンバーに入る冷却ガスを、反応ガスの出口側から提供することを特徴とするエピタキシャル成長方法。
[付記2]
上記のエピタキシャル成長は、N型の超重ヒ素ドープ基板上で行われることを特徴とする付記1に記載のエピタキシャル成長方法。
[付記3]
上記の基板の抵抗率は、0.002-0.003ohm-cmであることを特徴とする付記2に記載のエピタキシャル成長方法。
[付記4]
上記の基板の裏側の構造は、最初に二酸化ケイ素膜を成長させ、次にポリシリコンを成長させ、最後に二酸化ケイ素膜を成長させることを特徴とする付記2に記載のエピタキシャル成長方法。
[付記5]
反応ガスの出口側に近い冷却チャンバー上に配置される冷却ガスの入口を含むことを特徴とするエピタキシャル成長装置。
[付記6]
冷却チャンバーは、反応ガスの方向に沿って溝形状の入口を備え、上記の溝形状の入口は、反応ガスの入口側にバッフルプレートを取り外し可能に備えており、バッフルプレートは、溝形状の入口の反応ガスの入口側に近い局部に配置されているので、溝形状の入口の反応ガスの出口側に近い局部に冷却ガスの入口は形成されることを特徴とする付記5に記載のエピタキシャル成長装置。
【符号の説明】
【0021】
1は実施例における一回成長によって形成されたエピタキシャルウェーハのSRP曲線;2は複数回成長によって形成されたエピタキシャルウェーハのSRP曲線;3は界面での波動;4はバッフルプレートを配置してない場合の反応チャンバーの温度曲線;5はバッフルプレートを配置している場合の反応チャンバーの温度曲線;100、冷却チャンバー;101。バッフルプレート;102、溝形状の入口;110、冷却ガスの入口;103、冷却チャンバーの壁;200、反応チャンバー;201、反応チャンバーの壁;a、冷却ガス;b、反応性ガス;w、ウェーハ。