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特許7596557自動車タイヤの現場使用過酷度を定量化するためのシステム、方法、及びタイヤ老化モデル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】自動車タイヤの現場使用過酷度を定量化するためのシステム、方法、及びタイヤ老化モデル
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20241202BHJP
   B60C 23/04 20060101ALI20241202BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C23/04 220B
B60C23/04 160A
B60C19/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023555697
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022024038
(87)【国際公開番号】W WO2022217061
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】63/172,879
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スタルネーカー,デイビッド オー.
(72)【発明者】
【氏名】パルマー,ロバート
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223857(JP,A)
【文献】国際公開第2020/190430(WO,A1)
【文献】特開2012-116417(JP,A)
【文献】特開2014-177273(JP,A)
【文献】特開2020-085610(JP,A)
【文献】特開2019-104473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0185429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 23/04
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ監視方法であって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、前記複数のタイヤの各々について、少なくとも周囲温度及び含有空気温度と、垂直荷重膨張圧力速度のうちの1つ以上と、に対応する信号を収集することと、
前記複数のタイヤの各々の酸化老化特性を算出することであって、少なくとも前記信号により収集された前記周囲温度及びそれぞれの含有空気温度と、時間及び走行距離に関する前記酸化老化特性のそれぞれの蓄積レートであり前記複数のタイヤの各々につい記垂直荷重と前記膨張圧力と前記速度のうちの前記1つ以上に関して算出されそれぞれの前記蓄積レートと、に基づいて、前記酸化老化特性を算出することと、
前記複数のタイヤの各々の算出された前記酸化老化特性を補正することであって、前記周囲温度から置換された固定された基準周囲温度と前記含有空気温度との差、時間及び走行距離に関する算出された前記酸化老化特性のそれぞれの蓄積レートと、に関して、少なくとも部分的にアレニウス反応速度積分により、算出された前記酸化老化特性を補正することと、
前記複数のタイヤのうちの1つ以上について、補正された前記酸化老化特性に基づいて、監視された特性及び前記監視された特性のそれぞれの蓄積レートに対応する出力信号を選択的に生成することと、を含む、タイヤ監視方法。
【請求項2】
前記複数のタイヤの各々について前記自動車上のそれぞれの位置を識別することと、
前記複数のタイヤの前記自動車上のそれぞれの位置ごとに、補正された前記特性、及び補正された前記特性の前記それぞれの蓄積レートに基づいて、タイヤ寿命状態を予測することと、を更に含み、
前記出力信号が、前記複数のタイヤのうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
定義されたフリート内の複数の自動車の各々に関して更に提供され、
前記対応する複数のタイヤの各々についての周囲温度及び含有空気温度に対応する、収集された前記少なくとも信号の各々について、少なくともそれぞれの自動車を識別することと、
前記定義されたフリート内のそれぞれの自動車ごとに、補正された前記特性、及び補正された前記特性の前記それぞれの蓄積レートに基づいて、タイヤ寿命状態を予測することと、を含み、
前記出力信号が、前記複数の自動車のうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
義された複数のフリートの各々内の複数の自動車の各々に関して更に提供され、
前記対応する複数のタイヤの各々についての周囲温度及び含有空気温度に対応する、収集された前記少なくとも信号の各々について、少なくともそれぞれの自動車及びそれぞれのフリートを識別することと、
それぞれのフリートごとに、補正された前記特性、及び補正された前記特性の前記それぞれの蓄積レートに基づいて、タイヤ寿命状態を予測することと、を含み、
前記出力信号が、前記複数のフリートのうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タイヤ監視システムであって、
複数のタイヤを有する自動車に搭載され、前記複数のタイヤの各々について、少なくとも、周囲温度及び含有空気温度に対応する信号を生成するように構成された少なくとも1つのデータ取得デバイスと、
前記少なくとも1つのデータ取得デバイスに通信可能にリンクされ、そこから生成された前記信号を受信するコンピューティングデバイスであって、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法のステップの実行を命令するように更に構成された、コンピューティングデバイスと、を備える、タイヤ監視システム。
【請求項6】
複数のタイヤを有する1つ以上の自動車の各々に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイスに通信可能にリンクされたクラウドサーバであって、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法のステップの実行を命令するように構成された、クラウドサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、車輪付き自動車のタイヤの性能面の定量化に関する。より詳細には、本明細書に開示されるシステム、方法、及び関連するアルゴリズムは、自動二輪車、民生用車両(例えば、乗用車及び軽トラック)、商用車及びオフロード(off-road、OTR)車両を含むがこれらに限定されない車輪付き自動車のタイヤについて、フリート、フリート内の個々の自動車、又は個々のタイヤ位置に固有の動作条件及び/又は環境条件の過酷度を定量化するために利用される老化メトリックに関する。
【背景技術】
【0002】
概括的に言えば、本明細書に開示されるシステム及び方法の様々な実施形態は、例えば所与のタイヤに関連付けられた周囲温度及び/又は含有空気温度(contained air temperature、CAT)を含む、自動車に関連付けられた検出された動作条件及び/又は環境条件を実装することができる。応答は、好ましくは、例えば、タイヤ内に、タイヤ上に、又は他の方法でタイヤに関連付けて取り付けられ得るタイヤ空気圧力監視システム(Tire Pressure Monitoring Systems、TPMS)などのデータ取得システムを使用して直接測定され得る。データ取得システムは、タイヤが種々の道路及び路面上を転動しているときにデータを連続的に収集し、更に、そのようなデータを、例えばセルラー通信ネットワークを介してクラウドサーバなどの中央コンピューティングデバイスに送信することができる。
【0003】
当業者であれば、含有空気温度が現場動作条件の過酷度を示すことを理解するであろう。高い荷重及び速度、低い膨張圧力、高い周囲温度及び太陽負荷は、個別に又は集合的に、含有空気温度を上昇させる働きをし得る。タイヤ寿命へのタイヤ温度の影響は線形ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に開示されるシステム及び方法の実施形態は、例えば、アレニウス酸化反応速度式及びタイヤサンプリング期間の時間/持続時間にわたる積分に基づいて老化単位(Aging Unit、AU)を計算するための方法を含むことができる。老化単位は、タイヤの寿命を通して、動作条件及び/又は環境条件が比較的厳しい場合にはより急速に、それらが比較的穏やかな場合にはよりゆっくりと蓄積され得る。自動車が駐車されているときでさえ、若干の蓄積が生じる。各AUは、特定の条件下で、例えば、70°Fのガレージに1ヶ月間駐車された(すなわち、動作していない)場合に生じる酸化老化の量として定義され得る。
【0005】
例えば、時間に関して、又は走行距離に関して指数付けされるような、AUが蓄積されるレート(それぞれ、AI時間、AI距離)は、自動車及び/又は車両フリート動作を別のものに対して比較するために使用され得る。
【0006】
測定値は更に、例えば二重駆動車軸の内側位置が対応する外側位置より急速に老化することなど、この場合に対しても、タイヤ位置決めが自動車に及ぼす影響を示すことができる。
【0007】
例えば、国中の長距離輸送車両フリート及び地域自動車フリートのような、車両フリート間の測定値は、老化の過酷度の相対的な差を示すために、比較されてもよい。
【0008】
動作条件の違いをよりよく理解するために、環境条件の影響も除去することができる。本明細書に更に開示されるデルタ老化単位(ΔAU)などの修正されたメトリックは、周囲温度を、固定された70°Fの周囲温度に置き換えることによって、周囲温度の影響を具体的に除去するか、又は他の方法で考慮することができる。このようにして、米国南西部で運転される自動車の動作条件のタイヤ過酷度は、周囲条件の影響を受けることなく、カナダで運転される自動車と有意に比較することができる。ΔAUはまた、時間及び/又は距離に指数付けすることができる(それぞれ、AI時間、AI距離)。
【0009】
本明細書に開示されるタイヤ監視方法の実施形態は、複数のタイヤを有する自動車に搭載された少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、複数のタイヤの各々について、少なくとも、周囲温度及び含有空気温度に対応する信号を収集することを含む。コンピューティングデバイスは、複数のタイヤの各々の酸化老化特性を、少なくとも、収集された周囲温度及びそれぞれの含有空気温度、並びに時間及び/又は走行距離に関する酸化老化特性のそれぞれの蓄積レートに基づいて、確認するように構成され得る。複数のタイヤの各々の酸化老化特性は、固定された基準周囲温度、並びに時間及び/又は走行距離に関する酸化老化特性のそれぞれの蓄積レートに関して更に確認され得る。出力信号は、複数のタイヤのうちの1つ以上について、監視された特性及び監視された特性のそれぞれの蓄積レートに対応して選択的に生成され得る。
【0010】
上記で参照した実施形態による例示的な態様では、酸化老化特性は、少なくとも部分的に、アレニウス反応速度積分によって確認され得る。
【0011】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様は、少なくとも1つのデータ取得デバイスを介して、複数のタイヤの各々について、垂直荷重、膨張圧力、及び速度のうちの1つ以上に対応する信号を収集することを含むことができ、酸化老化特性の蓄積レートは、複数のタイヤの各々について、垂直荷重、膨張圧力、及び速度のうちの1つ以上に関して更に確認され得る。
【0012】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様は、複数のタイヤの各々について自動車上のそれぞれの位置を識別することと、複数のタイヤの自動車上のそれぞれの位置ごとに、確認された特性、及び確認された特性のそれぞれの蓄積レートに基づいて、タイヤ寿命状態を予測することと、を含み得る。出力信号は、複数のタイヤのうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成され得る。
【0013】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様は、定義されたフリート内の複数の自動車の各々に関して更に提供され得る。少なくともそれぞれの自動車は、対応する複数のタイヤの各々についての周囲温度及び含有空気温度に対応する、収集された少なくとも信号の各々について識別され、タイヤ寿命状態は、定義されたフリート内のそれぞれの自動車ごとに、確認された特性、及び確認された特性のそれぞれの蓄積レートに基づいて予測される。出力信号は、複数の自動車のうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成され得る。
【0014】
上記で参照した実施形態による別の例示的な態様は、複数の定義されたフリートの各々内の複数の自動車の各々に関して更に提供され得る。少なくともそれぞれの自動車及びそれぞれのフリートは、対応する複数のタイヤの各々についての周囲温度及び含有空気温度に対応する、収集された少なくとも信号の各々について識別されてもよく、タイヤ寿命状態は、それぞれのフリートごとに、確認された特性、及び確認された特性のそれぞれの蓄積レートに基づいて予測される。出力信号は、複数のフリートのうちの1つ以上について決定された介入イベントに対応して選択的に生成され得る。
【0015】
別の実施形態では、タイヤ監視システムは、複数のタイヤを有する自動車に搭載され、複数のタイヤの各々について、少なくとも、周囲温度及び含有空気温度に対応する信号を生成するように構成された少なくとも1つのデータ取得デバイスを含み得る。コンピューティングデバイスは、少なくとも1つのデータ取得デバイスに通信可能にリンクされ、上記で参照した方法の実施形態、及び関連する(任意選択の)例示的な態様に従ってステップの実行を命令するように構成される。
【0016】
上記で参照したシステムの例示的な態様では、コンピューティングデバイスは、例えば、クラウドサーバシステム又はローカル電子制御ユニットの一部であり得る。
【0017】
別の実施形態では、例えばクラウドサーバシステムなどのコンピューティングデバイスは、独立して提供され、1つ以上の車両に関連付けられたデータ取得デバイスに通信可能にリンクされ、上記で参照した方法の実施形態、及び関連する(任意選択の)例示的な態様に従ってステップの実行を命令するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に例解する。
図1図1は、本明細書に開示されるタイヤ監視システムの一実施形態を表すブロック図である。
図2図2は、本明細書に開示されるタイヤ監視方法の一実施形態を表すフローチャートである。
図3図3は、本明細書に開示されるタイヤ老化モデルへの入力として例示的な周囲温度及びタイヤ含有空気温度を表すグラフ図である。
図4図4は、例示的な自動車の左前タイヤの含有空気温度に関する319日間にわたるアレニウス反応速度積分を表すグラフ図である。
図5図5は、図4の積分から導出される例示的な老化単位を表すグラフ図である。
図6図6は、時間に関して指数付けされた図5の老化単位を表すグラフ図である。
図7図7は、距離に関して指数付けされた図5の老化単位を表すグラフ図である。
図8a図8aは、異なるフリートからのそれぞれの自動車についての例示的な周囲温度値及び含有空気温度値を表すグラフ図である。
図8b図8bは、異なるフリートからのそれぞれの自動車についての例示的な周囲温度値及び含有空気温度値を表すグラフ図である。
図8c図8cは、異なるフリートからのそれぞれの自動車についての例示的な周囲温度値及び含有空気温度値を表すグラフ図である。
図8d図8dは、異なるフリートからのそれぞれの自動車についての例示的な周囲温度値及び含有空気温度値を表すグラフ図である。
図8e図8eは、異なるフリートからのそれぞれの自動車についての例示的な周囲温度値及び含有空気温度値を表すグラフ図である。
図9a図9aは、それぞれ時間及び距離に関する、異なるフリートについての例示的な老化指数値を表すグラフ図である。
図9b図9bは、それぞれ時間及び距離に関する、異なるフリートについての例示的な老化指数値を表すグラフ図である。
図10a図10aは、図8a~図8eからのそれぞれの自動車についての例示的なデルタ含有空気温度(ΔCAT)値を表すグラフ図である。
図10b図10bは、図8a~図8eからのそれぞれの自動車についての例示的なデルタ含有空気温度(ΔCAT)値を表すグラフ図である。
図10c図10cは、図8a~図8eからのそれぞれの自動車についての例示的なデルタ含有空気温度(ΔCAT)値を表すグラフ図である。
図10d図10dは、図8a~図8eからのそれぞれの自動車についての例示的なデルタ含有空気温度(ΔCAT)値を表すグラフ図である。
図10e図10eは、図8a~図8eからのそれぞれの自動車についての例示的なデルタ含有空気温度(ΔCAT)値を表すグラフ図である。
図11a図11aは、それぞれ時間(ΔAI時間)及び距離(ΔAI距離)に関する、異なるフリートについての例示的なデルタ老化指数値を表すグラフ図である。
図11b図11bは、それぞれ時間(ΔAI時間)及び距離(ΔAI距離)に関する、異なるフリートについての例示的なデルタ老化指数値を表すグラフ図である。
図12図12は、異なるタイヤ位置について、距離(ΔAI距離)に関する特定の自動車についての例示的なデルタ老化指数値を表すグラフ図である。
図13図13は、所与の自動車に関連する例示的な周囲温度の傾向を表すグラフ図である。
図14図14は、図13の自動車についての例示的な含有空気温度傾向を表すグラフ図である。
図15図15は、時間に対する図13及び図14の自動車についての例示的な老化指数値及びデルタ老化指数値(それぞれΔAI時間及びΔAI時間)を表すグラフ図である。
図16a図16aは、異なるタイヤ位置に対する、異なる自動車についての例示的な値を表すグラフ図である。
図16b図16bは、異なるタイヤ位置に対する、異なる自動車についての例示的な値を表すグラフ図である。
図16c図16cは、異なるタイヤ位置に対する、異なる自動車についての例示的な値を表すグラフ図である。
図16d図16dは、異なるタイヤ位置に対する、異なる自動車についての例示的な値を表すグラフ図である。
図17a図17aは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson、AZ)における所与の期間についての例示的な周囲温度、アレニウス反応速度、及び老化指数値をそれぞれ表すグラフ図である。
図17b図17bは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson、AZ)における所与の期間についての例示的な周囲温度、アレニウス反応速度、及び老化指数値をそれぞれ表すグラフ図である。
図17c図17cは、アリゾナ州トゥーソン(Tucson、AZ)における所与の期間についての例示的な周囲温度、アレニウス反応速度、及び老化指数値をそれぞれ表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概して図1図17cを参照して、発明の種々の例示的な実施形態がここで詳細に説明され得る。様々な図が、様々な共通の要素及び特徴を他の実施形態と共有する実施形態を説明することがある場合、同様の要素及び特徴は同じ参照番号を与えられ、その重複する説明は以下で省略されることがある。
【0020】
本明細書に開示されるようなシステムの種々の実施形態は、本明細書に開示されるような少なくともタイヤ摩耗予測モデルを効果的に実装するために、複数の分散データコレクタ並びに(例えば、個々のユーザ及び/又は車両に関連付けられた)コンピューティングノードと機能的に通信する集中型コンピューティングノード(例えば、クラウドサーバ)を含み得る。
【0021】
最初に図1を参照すると、システム100の例示的な実施形態は、車両にオンボードであり、少なくともデータを取得し、当該データをリモートサーバ130に送信し及び/又は本明細書に開示されるように関連する計算を実行するように構成されたコンピューティングデバイス102を含む。コンピューティングデバイスは、(図示されるように)分散車両データ収集及び制御システムの一部として携帯型若しくは別様にモジュール式であり得るか、又は別様に、中央車両データ収集制御システム(図示せず)に対して一体的に提供され得る。デバイスは、プロセッサ104と、プログラム論理108が常駐するメモリ106とを含み得る。種々の実施形態におけるコンピューティングデバイス102は、車両電子制御ユニット(electronic control unit、ECU)若しくはその構成要素であり得るか、又は別様に、例えば、車両マウントに対して恒久的に若しくは取り外し可能に提供された、本質的に別個のものであり得る。
【0022】
概して、本明細書に開示されるようなシステム100は、1つ以上の車両にわたって分散された多数の構成要素を実装し得るが、例えば必ずしもフリート管理エンティティに関連付けられておらず、更に、通信ネットワークを介して車両の各々と機能的に通信する中央サーバ130又はサーバネットワークを実装し得る。車両構成要素は、典型的には、例えば、コントローラエリアネットワーク(controller area network、CAN)バスネットワークにリンクされ、それによってローカル処理ユニットに信号を提供する、例えば、車体加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(inertial measurement unit、IMU)、全地球測位システム(global positioning system、GPS)トランスポンダ112などの位置センサ、タイヤ空気圧力監視システム(TPMS)センサ送信機118及び関連付けられたオンボード受信機などの1つ以上のセンサを含み得る。例解される実施形態は、それによって、例解目的のために、本発明の範囲を別様に限定することなく、周囲温度センサ116と、例えば車両に関連付けられる加速データを収集するように構成された車両速度センサ114と、DC電源110と、を含む。
【0023】
本明細書に開示されるセンサのうちの1つ以上は、一体化され得るか、又はそうでない場合、構造内で個別かつ分散されているのではなく、所与のモジュール構造内に集合的に配置され得る。例えば、本明細書で言及されるタイヤ搭載型TPMSセンサは、複数のタイヤ固有の条件(例えば、半径方向加速度、膨張圧力、含有空気温度)の各々に対応する出力信号を生成するように構成され得る。TPMSセンサは、例えば、タイヤの空気キャビティの内部に搭載され得、わずかに高く置かれ得、金属リムによる悪影響を受けないように、金属リムから隔離され得る。
【0024】
様々なバスインターフェース、プロトコル、及び関連ネットワークは、それぞれのデータソースとローカルコンピューティングデバイスとの間の通信に関して当技術分野で周知であり、当業者であれば、そのようなツール及びそれを実装するための手段の広範囲を認識するであろう。
【0025】
図1に表される実施形態は、本明細書に開示されるようなシステム又は方法の範囲を限定するものではなく、代替の実施形態では、モデル134のうちの1つ以上が、サーバレベルではなく、オンボードコンピューティングデバイス102(例えば、電子制御ユニット)においてローカルに実装され得ることに留意されたい。例えば、モデル134は、サーバレベルで経時的に生成及び訓練され、本明細書に開示されるような1つ以上のステップ又は動作のローカル実行のためにオンボードコンピューティングデバイス102にダウンロードされ得る。
【0026】
他の代替の実施形態では、様々なセンサ112、114、116、118のうちの1つ以上は、例えば、セルラー通信ネットワークを介して、又は車両のユーザが携行するモバイルコンピューティングデバイス(図示せず)を介して、ローカル車載デバイス102を用いずにリモートサーバ130と通信するように構成され得る。
【0027】
システム100は、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザのコンピューティングデバイス140上に常駐する追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための、車両に常駐するか、若しくはそのドライバに関連付けられたデバイス(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理デバイスは、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介してオンボードデバイス102に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによってオンボードで提供され得る。
【0028】
本明細書で使用されるときの「ユーザインターフェース」という用語は、別途記載のない限り、ダウンロードされた又は別様に常駐するプログラムアプリケーションを含むがこれらに限定されない、本明細書に開示されるようなサーバ及び/又はデバイスに対するユーザ対話をユーザデバイスが容易にするのに用いる任意の入出力モジュールと、ウェブブラウザ、個々のウェブページ又はホストされるホストされるウェブサイトを集合的に規定するウェブページなどのようなウェブポータル、などを含み得る。ユーザインターフェースは、パーソナルモバイルコンピューティングデバイスに関して、ボタン及びディスプレイ部分の文脈で更に説明され得、これらは、独立して配置され得るか又はそうでない場合、例えば、タッチスクリーンに対して相互に関連付けられ得、更に音声及び/又は明示的なユーザ対話機能を用いない視覚的な入出力機能を含み得る。
【0029】
車両及びタイヤセンサ112、114、116、118は、一実施形態では、一意の識別子が更に提供され得、オンボードデバイスプロセッサ104は、同じ車両上のそれぞれのセンサから提供される信号を区別することができ、更に、特定の実施形態では、中央サーバ130及び/又はフリート保守管理者クライアントデバイス140は、複数の車両にわたってタイヤ101並びに関連付けられた車両及び/又はタイヤセンサから提供される信号を区別し得る。換言すれば、センサ出力値は、種々の実施形態において、本明細書に開示されるような計算のために、オンボード又はリモート/下流のデータストレージ及び実装を目的として、特定のタイヤ101、特定の車両、及び/又は特定のタイヤ車両システムに関連付けられ得る。オンボードデバイスプロセッサ104は、図1に示すように、ホスト型サーバ130と直接通信し得るか、又は代替的には、ドライバのモバイルデバイス若しくはトラック装着されたコンピューティングデバイスが、オンボードデバイスの出力データを受信及び処理し/ホスト型サーバ130及び/又はフリート管理サーバ/デバイス140に送信するように構成され得る。
【0030】
特定の車両及び/又はタイヤセンサ112、114、116、118から受信された信号は、本明細書に開示される方法に従って計算するために必要に応じて選択的に取り出すために、オンボードデバイスメモリ106に記憶されるか、又はオンボードデバイスプロセッサ104に機能的にリンクされた等価なデータストレージネットワークに記憶され得る。本明細書で使用されるときの「データ記憶ネットワーク」は、一般に、データを記憶し、そこからのデータの選択的取り出しを可能にするように構成された個々の、集中化された、又は分散された論理的及び/又は物理的エンティティを指し得、例えば、限定はしないが、メモリ、ルックアップテーブル、ファイル、レジスタ、データベースなどを含み得る。いくつかの実施形態では、種々のセンサ112、114、116、118からの生データ信号は、車両からサーバ130に実質的にリアルタイムで通信され得る。代替的に、特に高周波データの連続データ伝送における固有の非効率を考慮して、データは、例えば、適切な(例えば、セルラー)通信ネットワークを介して、車両からリモートサーバ130へのより効率的な(例えば、周期的な時間ベース又は代替的に定義されたイベントベースの)送信のために、コンパイル、エンコード、及び/又は要約され得る。
【0031】
車両データ及び/又はタイヤデータは、通信ネットワークを介してホスト型サーバ130に送信されると、例えば、それと関連付けられたデータベース132に記憶され得る。サーバ130は、適切な入力として車両データ及び/又はタイヤデータを選択的に取り出し及び処理するために、本明細書に開示されるような1つ以上のアルゴリズムモデル134を含むか又は別様に関連付けられ得る。モデル134は、少なくとも部分的に、車両データ及び/又はタイヤデータの選択的な取り出しを可能にするプロセッサの実行を介して、更に、サーバ130に関連して記憶されているデータベース、ルックアップテーブルなどからの任意の追加のデータ又はアルゴリズムの入力のための電子通信において、実装され得る。
【0032】
システム100は、例えば、フリート管理サーバ若しくは他のユーザのコンピューティングデバイス140上に常駐するような追加の分散されたプログラム論理、又は(例えば、視覚及び/若しくは音声インジケータを介した)リアルタイム通知のための、車両に常駐するか、若しくはそのドライバに関連付けられたデバイス(図示せず)のユーザインターフェースを含み得、フリート管理デバイス140は、いくつかの実施形態では、通信ネットワークを介してオンボードデバイス102に機能的にリンクしている。システムプログラミング情報は、例えば、ドライバによって、又はフリートマネージャによってオンボードで提供され得る。
【0033】
次に、本明細書で更に説明されるような機能及び利点の中でも、自動車タイヤの異なる性能態様を定量化するための、図2に表される例示的な方法200について説明され得る。
【0034】
方法200は、車両動作ステージ(ステップ210)において収集された信号で開始し、この方法は、前述したように、タイヤ内又はタイヤ上に取り付けられたタイヤ空気圧力監視システム(TPMS)などの従来のデータ取得デバイスを実装することができ、TPMSは、含有空気温度211、周囲温度212、膨張圧力213、タイヤ識別子214、垂直荷重215、速度216などに対応する信号を生成する。データ取得デバイスは、タイヤが異なる道路及び路面上を転動しているときにデータを連続的に収集し得る。
【0035】
データ取得デバイスから収集された信号211~216は、例えば車両に常駐する電子制御ユニット102においてローカルに、又は例えばクラウドサーバノード130においてリモートに受信され、処理され得る(ステップ220)。システムは更に、対象のタイヤと同様のタイプの、及び対象のタイヤさえも含む複数のタイヤの各々に対応する情報を予め記憶しているか、又は別様にアクセス可能にし得る。
【0036】
方法200は更に、含有空気温度及び周囲温度の各々に関連付けるなど、動作条件を定量化するための第1の過酷度メトリックを決定するステップ(ステップ230)、及び/又は測定された周囲温度を除去するか、さもなければ測定された周囲温度を定義された基準温度に置き換える、動作条件を定量化するための第2の過酷度メトリックを決定するステップ(ステップ240)を含む。従来の含有空気温度(CAT)分布は、前述の第1又は第2のセットの範囲内の過酷度メトリックではない。たとえ有益であっても、そのような分布は、比較のために使用することが困難であり、例えば、より高い温度でのより短い時間が、より低い温度でのより長い時間よりも有害であり得ることを強調しない。
【0037】
本明細書に開示される例示的な第1の過酷度メトリックは、蓄積する老化メトリックとして老化単位(AU)を含むことができる。各AUは、例えば、華氏70度のガレージに1ヶ月間駐車した自動車のタイヤに生じる酸化老化の量に相当するものであってもよい。そのようなメトリックは、タイヤが経験した実際の蓄積老化を定量化するために、タイヤの寿命を通して蓄積され得る。車両が駐車されているときでさえ、AUは、比較的遅いレートではあるが、増加し続けると理解してもよい。
【0038】
本明細書に開示される例示的な第2の過酷度メトリックは、デルタ老化単位(ΔAU)を含んでもよく、ΔAUは、周囲温度の影響が計算から効果的に除去されることを除いて、AUと同様である。例えば、異なる地理的領域又は異なる季節に動作するタイヤ又はフリートの比較を提供することが望ましい場合がある。実際の周囲温度の影響を分単位でCATから分離し、それを固定基準(例えば、華氏70度)で置き換えることによって、動作条件(荷重、速度、膨張)の影響を環境条件から分離することが可能になる。
【0039】
追加の関連する過酷度メトリックは、時間又は距離に指数付けされたときの現場動作タイヤ温度の過酷度を表す単一の値として老化指数(AI又はΔAI)を含むことができる。例えば、異なる期間又は走行マイル数にわたるタイヤ又はフリートの比較を提供することが望ましい場合がある。例えば、AI時間メトリックは、月ベースで蓄積AUを正規化することができ、AI距離メトリックは、10,000マイルベースでAUを正規化することができる。
【0040】
老化単位は、アレニウス式に基づくことができ、これは、温度が上昇するときのポリマーにおける化学反応速度、又はより具体的には、酸素がポリマー鎖と反応して架橋を形成する速度を推定する。この反応速度は、温度が摂氏10度上昇するごとに約2倍になる。
【0041】
10のAUは、動作条件及び周囲温度条件が、華氏70度ガレージ内で10ヶ月に相当する酸化老化に対応する含有タイヤ温度をもたらしたことを意味し得る。これらのAUが2ヶ月の期間にわたって蓄積された場合、車両及び/又はタイヤに関連付けられた動作条件及び/又は環境条件は、駐車されたままの場合より5倍速く老化を生じさせている(AI時間=5)。
【0042】
周囲空気は、約21%の酸素からなり、タイヤキャビティが周囲大気より高圧であるので、タイヤキャビティからケーシングを通過する。酸素がタイヤを通過するとき、その自然な傾向は、ポリマー鎖と結合するか、又はポリマー鎖と架橋を形成することである。これは、剛性の増加、弾性の損失、及び内部疲労亀裂の形成の可能性の増加をもたらす。
【0043】
現場使用におけるタイヤ劣化を表すためにアレニウスに基づく指数を使用することの背後にある1つの原理は、活性化エネルギーに応じて、温度が摂氏10度上昇するごとに化学反応速度が約2倍になることに基づき得る。従来のアレニウス式は以下の通りである。
【0044】
k=Ae-Ea/RT
ここで、kは速度定数であり、Aは頻度因子又は前指数因子であり、Eaは活性化エネルギー(ジュール/モル単位)であり、Rは理想気体定数(8.3145ジュール/ケルビン度/モル)であり、Tは温度(ケルビン度)である。
【0045】
一実施形態では、老化単位は以下のように計算され得る。
【0046】
【数1】
【0047】
より具体的には、tが分単位であり、基準時間が1ヶ月(43,834分)である場合、老化単位は以下のようになり得る。
【0048】
【数2】
【0049】
温度関数T(t)は、この場合、例えばTPMSセンサから収集された測定された含有空気温度(CAT)である。タイヤ内のいくつかの内部位置は、より高温になり、いくつかはより低温になり、したがって、それぞれ、より速く又はより遅く老化するはずである。CATは、「平均」温度であり、様々な動作条件(例えば、荷重、膨張圧力、速度、走行マイル対駐車マイル)及び/又は特定の環境条件(例えば、周囲温度、舗装温度、太陽負荷)の強い関数、並びにタイヤ自体の熱発生傾向のより弱い関数と見なすことができる。
【0050】
アレニウス反応速度kの積分は、関心のある時間範囲にわたって分単位で行うことができる。しかしながら、TPMSセンサの信号強度が低いこと、タイヤと受信機との間の過度の干渉、又は他の計測上の問題に起因して、データの欠落又はデータのギャップがあるときには、複雑な問題が生じる可能性がある。データギャップが60分未満である場合、欠落した温度の線形補間が実行され、例えば、周囲温度及びCATの両方が比較的ゆっくりと変化する値であり、限界内にあり、補間がデータなしより良好であるので、積分が継続する。データギャップが60分よりも大きい場合、積分は停止され、それに応じて調整された総時間及び総マイル数で、部分単位で実行される。
【0051】
データ品質指数は、総時間期間の何パーセントがギャップのために除去されたかに関して定義され得る。例えば、ギャップ指数が20パーセントを超える場合、計算された老化メトリックの品質に影響を及ぼし始める可能性がある。
【0052】
デルタ老化指数(上記の例示的な第2の過酷度メトリック)を計算するために、周囲温度は、例えば、所定の基準周囲温度値(例えば、華氏70度)が加算された状態で、測定ごとに含有空気温度から減算され得る。実験データは、周囲温度と含有空気温度との間に1対1の関係がないことを示唆し、更に、周囲温度の1°の上昇が含有空気温度の約0.80°~0.83°の上昇をもたらし得ることを示す。したがって、デルタ老化指数の目的では、例示的な計算は以下の通りであり得る。
ΔCAT=CAT-(0.80amb
ここで、ΔCATは、°F単位の正規化された含有空気温度であり、CATは、°F単位の測定された含有空気温度であり、Tambは、°F単位の測定された周囲温度である。この経験的関係は、本質的に例示的なものであり、排他的な表現であることを意図するものではなく、定常状態データに基づいており、現場条件の動作範囲において非常に正確であるように思われる。タイヤが過渡状態(例えば、加熱又は冷却、あるいは駐車)にあるとき、この関係は正確であるとは推定されない。
【0053】
図3図17cは、少なくとも上記で参照した計算に関する例示的なサポート及び更なる例を提供する。
【0054】
図3を参照すると、例示的な周囲温度及びタイヤ含有空気温度が、本明細書に開示されるタイヤ老化モデルへの基本入力として表されている。表された温度は、1パーセントのギャップ指数を有する左前車輪位置に関して計られた華氏での温度である。
【0055】
図4に示されるように、アレニウス速度定数kは、図3に示されている車両の同じタイヤの測定されたCATについて、319日間にわたって積分される。下側の線は実際の老化速度であり、冬の月にはより遅い蓄積を示し、夏の月にはより高い蓄積を示す。上側の線は、基準温度、すなわち一定の華氏70度周囲温度で置き換えられた周囲温度を有する。
【0056】
図5に示されるように、図4からの2つの積分値を70°Fでの1ヶ月間の反応速度kで割ることによって、図3及び図4からの車両に関して老化単位(AU)が定義される。夏の月では下側の線の傾きがより大きくても、周囲温度は概して70°F未満であるため、上側の線(ΔAU)は下側の線(ΔAU)より多く蓄積する。図示の例では、この車両の左前タイヤは、動作の最初の319日間に148AUを蓄積した。車両が、固定された70Fの周囲環境で動作された場合、理論的には、198ΔAUが蓄積されるであろう。ΔAU値は、異なる周囲環境又は異なる季節にわたって動作した車両を比較する場合に有利であり、目的は、動作条件と環境条件との混合ではなく、動作条件を比較することである。
【0057】
図6に示されるように、なおも図3図5と同じ例示的な車両に関して、老化単位は、時間に関して(例えば、月ごと、又は30.44日ごとに)指数化することもできる。これらの曲線は、図5のそれぞれの曲線の微分である。この車両の同じ(左前)タイヤは、1ヶ月当たり約14AUを蓄積する(下側の曲線)が、非常に迅速に横ばいにならないことに留意されたい。上側の曲線は、周囲環境の影響を有していないので、1ヶ月当たり19AUでより迅速に横ばいになる。AI時間又はAI時間は、異なる長さの時間にわたって使用された車両又はタイヤを比較するときのメトリックとして好都合に実装され得る。
【0058】
図7に示されるように、再び図3図6と同じ例示的な車両及びタイヤに関して、距離によって正規化された老化指数は、時間によって正規化されたときより迅速に横ばいになる。季節的影響は、AI距離値では明らかであるが、ΔAI距離値ではほとんど消去される。図示されたタイヤは、10kマイル走行ごとに約7.1単位を蓄積し、周囲温度が70°Fに固定されているとき、10kマイルごとに9.5単位を蓄積する。
【0059】
図8a~図8eは、広範囲の用途を有する異なるフリートについてのそれぞれのステアタイヤ含有空気温度分布のプロットである。例えば、年間マイレージは21k~244kの範囲であり、平均周囲温度は華氏50~98度の範囲である。図9a及び図9bに表されたフリート(A~E)の両方の老化指数は、含有空気温度の強い関数であるが、周囲温度の関数でもある。時間に関する老化指数AI時間図9a参照)も、走行マイル数及び利用率パーセント(すなわち、路上滞在時間対駐車時間)の強い関数である。距離に関する老化指数AI距離図9b参照)は、フリートEがマイル数に基づいて比較的厳しいことを示す。
【0060】
図10a~図10eは、それぞれ図8a~図8eに示された同じフリート(A~E)についてのステアタイヤΔCAT分布のプロットである。図11a及び図11bに表されたフリート(A~E)の両方のデルタ老化指数は、含有空気温度の強い関数であるが、周囲温度の影響は除去されている。時間に関するデルタ老化指数ΔAI時間図11a参照)も、走行マイル数及び利用率パーセント(すなわち、路上滞在時間対駐車時間)の強い関数である。距離に関するデルタ老化指数ΔAI距離図11b参照)は、フリートEがマイル数に基づいて比較的厳しいことを示す。
【0061】
図12は、距離に関して指数付けされた、例示的なトラックのステアタイヤ(位置1及び2)並びにドライブタイヤ(位置3~10)についてのデルタ老化単位メトリックΔAU距離のプロットを示す。プロットは、同じ地域フリート(図示せず)内の様々な他のトラックについて取り込まれたものであり、利用パーセントは、11.5%という低い値から29.3%という高い値まで変化している。種々のトラック間にいくつかの明確な差があったとしても、コンシステンシーは注目すべきものであった。例えば、ステアタイヤ(位置1及び2)は10キロマイル当たり8~12AUの老化であると決定され、ステアタイヤはドライブタイヤより速く老化し、内側ドライブタイヤ(位置4~5及び8~9)は、対応する外側ドライブタイヤ(位置3~6及び7~10)より速く老化する。
【0062】
図13図15は、一般的な自動車からの例示的なデータ点及び計算に関連する。図13は、706日の長さのTPMSデータファイルの結果を表し、周囲温度の季節的な傾向を示す。図14に更に示されるように、これらの周囲条件の傾向はまた、含有空気温度に変換される。図15の上側のプロットにおける得られたAI時間値は、機器の誤動作によるデータギャップが大きくても、5ヶ月後に比較的安定している。図15の下側のプロットにおける得られたΔAI時間値は、より早く安定化し、季節的影響を示さない。この場合、平均周囲温度は、ΔAI時間を正規化するために使用される華氏70度基準温度に比較的近いので、AI時間及びΔAI時間は値が近い。
【0063】
図16a及び図16cは、時間に関して指数付けされた、2つの例示的なトラックのステアタイヤ(位置1及び2)並びにドライブタイヤ(位置3~10)のについてデルタ老化指数メトリックΔAI時間のプロットを示す。これらの値は、内側ドライブタイヤ(位置4、5及び8、9)が、対応する外側ドライブタイヤ(位置3、6及び7、10)より高温であり、ステアタイヤがドライブタイヤより高温であることを示している。
【0064】
図16c及び図16dは、図16a及び図16bのトラックとは異なる例示的なトラック上の各タイヤについての冷間膨張圧力(CIPometers)及びデルタ老化指数ΔAI時間をそれぞれ示す。位置10のタイヤは、時間の約半分で極端に膨張不足であり、その結果、適切に膨張されたその姉妹タイヤ(位置9)は、そうでない場合より熱くなり、したがって、図16dに示されるように、比較的高いデルタ老化指数ΔAI時間を有する。
【0065】
図17aに示されるように、老化指数を使用して、異なる位置の年間周囲温度測定値がタイヤ老化に及ぼす影響を決定することもできる。図示されたプロットは、特定の場所(アリゾナ州トゥーソン)についての例示的な1時間ごとの周囲温度測定値を示す。周囲温度の影響は、含有空気温度に大きい影響を有するので、老化指数に既に含まれている。周囲温度の下側範囲と周囲温度の上側範囲との間の差は、約2.5倍であることに留意されたい。しかしながら、1時間ごとの周囲温度測定値が次いでアレニウス式に供給されるとき、対応する反応速度の低い値と高い値との間の差は約2桁であり、温度が反応率に及ぼす非線形効果を表すことに留意されたい。
【0066】
図17bに更に示されているのは、年の初めから始まった年の終わりまでの同じ例示的な時間範囲にわたる、図17aの値の反応速度の合計である。可変曲線は、トゥーソンの周囲温度分布を表し、線形曲線は、指数として使用される所定の固定基準周囲(すなわち、70°F)温度を表す。
【0067】
図17cは、図17bの2つの曲線の比として老化指数を示す。当業者は、トゥーソンにおける2016年からの代表的な周囲温度は、同じタイヤが制御された環境(例えば、70°Fの室温)に置かれていた場合より1.93倍速くタイヤを老化させると結論付けるであろう。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法200はまた、1つ以上の将来の時点におけるタイヤ老化又は摩耗状態を予測するためのモデルへの入力として、単独で、又は他の関連データと組み合わせて、過酷度メトリックのうちの1つ以上を提供することを含むことができる(ステップ250)。例えば、予測されたタイヤ老化状態に対応するフィードバック信号(ステップ260)は、インターフェースを介して、車両自体に関連付けられたオンボードデバイス102に、又はユーザに関連付けられたモバイルデバイスに提供されてもよく、例えば、1つ以上のタイヤが例えば交換、回転、位置合わせ、膨張などされるべきであるか又は間もなく必要になるなどの介入イベントの警告又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースと統合されてもよい。
【0069】
予測されたタイヤ老化及び/又は摩耗状態などの決定されたタイヤ過酷度メトリックに対応する入力は、例えば、特定の車両データとともにトラクションモデルへの入力として提供されてもよく、トラクションモデルは、それぞれのタイヤについての推定トラクション状態又は1つ以上のトラクション特性を提供するように構成され得る。トラクションモデルは、物理的部分、プロセス、又はシステムの「デジタルツイン」仮想表現を含み得、デジタルデータ及び物理データがペアリングされ、例えば人工ニューラルネットワークなどの学習システムと組み合わせられる。特定のタイヤ、車両、又はタイヤ-車両システムからの実車両データ及び/又はタイヤデータを、それぞれの資産のライフサイクル全体にわたって提供して、タイヤトラクションの推定のための車両タイヤの仮想表現を生成し得、推定タイヤトラクションと対応する測定又は判定された実際のタイヤトラクションとのその後の比較は、好ましくは、サーバレベルで実行される機械学習アルゴリズムのフィードバックとして実装し得る。
【0070】
トラクションモデルは、様々な実施形態において、多数のタイヤ-車両システム及び入力パラメータ(例えば、タイヤトレッド、膨張圧力、路面特性、車両速度及び加速度、スリップ率及び角度、垂直力、制動圧力及び負荷)の値の関連付けられた組み合わせに関して収集された、例えば、停止距離試験結果、タイヤトラクション試験結果などを含む事前試験からの結果を利用し得、タイヤトラクション出力は、現在の車両データ及びタイヤデータ入力の所与の設定について効果的に予測され得る。
【0071】
一実施形態では、このトラクションモデルからの出力は、アクティブセーフティシステムに組み込まれ得る。本明細書で使用するとき、「アクティブセーフティシステム」という用語は、好ましくは、衝突回避システム、高度運転補助システム(advanced driver-assistance system、ADAS)、アンチロック制動システム(anti-lock braking system、ABS)などの例を含むがこれらに限定されない、当業者に一般的に既知であるようなシステムを包含し得、これらは、最適な性能を達成するために、トラクションモデル出力情報を利用するように構成され得る。例えば、衝突回避システムは、典型的には、標的車両との潜在的な衝突を回避又は軽減するために、自車のブレーキを自動的に係合することなどの、及びタイヤのトラクション能力に関する情報の強化、ひいてはタイヤ車両システムの制動能力などの回避作用をとるように構成されており、タイヤのトラクション能力、すなわちタイヤ車両システムの制動能力に関する拡張情報が極めて望ましい。
【0072】
別の実施形態では、ライドシェア自律フリートは、トラクションモデルからの出力データを使用して、悪天候の間にトレッド深さが低い車両を使用不能にするか、又は別様に選択的に除去するか、又は潜在的にそれらの最大速度を制限し得る。
【0073】
種々の実施形態では、方法は、その時点の摩耗値を閾値に対して比較して、タイヤが例えば交換などの介入を必要とするかどうか(又はいつ必要とするか)を判定することを更に伴い得る。方法は、代替的に又は更に、1つ以上の将来の時点における摩耗値を予測することを含み得、そのような予測値は、それぞれの閾値と比較され得る。例えば図1に表されるように、予測されたタイヤ摩耗状態(例えば、所与の距離、時間などにおける予測されたトレッド深さ)に対応するフィードバック信号は、インターフェース120を介して、車両自体に関連付けられたオンボードデバイス102に、又はユーザに関連付けられたモバイルデバイス140に提供され得、例えば、タイヤが交換されるべきであるか又は間もなく交換される必要があるという警報又は通知/推奨を提供するように構成されたユーザインターフェースと統合され得る。
【0074】
別の例として、自律型車両フリートは、様々な最小タイヤ摩耗状態(例えば、トレッド深さ)値を有する多数の車両を含み得、フリート管理システムは、最小閾値を下回る車両の配備を無効にするように構成され得る。フリート管理システムは、車輪位置に対応する様々な最小トレッド状態値を更に実装し得る。このシステムは、したがって、車両と関連付けられた複数のタイヤの各々の最小タイヤトレッド値に作用するように構成され得るか、又は一実施形態では、最小閾値と比較するために、複数のタイヤの集約されたトレッド状態を計算し得る。
【0075】
種々の実施形態では、方法は、閾値違反が検出されない場合であってもデータストリーミングを更に含み得、推定及び/又は予測された摩耗値は、ローカルユーザインターフェース及び/又はリモートディスプレイ(例えば、フリート管理サーバに関連付けられる)上にリアルタイムで表示することができる。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈がそうでない旨を指示しない限り、以下の用語は、少なくとも、本明細書に明示的に関連する意味をとる。以下で識別される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、単に用語の例解的な例を提供するものである。「a」、「an」、及び「the」の意味は、複数の参照を含み得、「in」の意味は、「in」及び「on」を含み得る。本明細書で使用されるとき、「一実施形態では」という句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではないが、指すこともあり得る。
【0077】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック、モジュール、及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はそれらの両方の組み合わせとして実装することができる。ハードウェア及びソフトウェアのこの互換性を明確に例解するために、様々な例解的な構成要素、ブロック、モジュール、及びステップは、概して、それらの機能性に関して上で説明されている。そのような機能性がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の適用例、及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。説明された機能性は、それぞれの特定の適用例ごとに様々な方式で実装することができるが、そのような実装決定は、本開示の範囲からの逸脱を引き起こすものとして解釈されるべきではない。
【0078】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される様々な例解的な論理ブロック及びモジュールは、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array、FPGA)若しくは他のプログラマブル論理デバイス、個別ゲート若しくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、又は本明細書に説明される機能を実行するように設計されたそれらの任意の組み合わせなど、機械によって実装又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替として、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシン、それらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、DSPとマイクロプロセッサとの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携する1つ以上のマイクロプロセッサ、又は任意の他のそのような構成の組み合わせとして実装することもできる。
【0079】
本明細書に開示される実施形態に関連して説明される方法、プロセス、又はアルゴリズムのステップは、ハードウェアで直接具現化するか、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化するか、又はこれら2つの組み合わせで具現化することができる。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD-ROM、又は当該技術分野において既知の任意の他の形態のコンピュータ可読媒体内に常駐することができる。例示的なコンピュータ可読媒体は、プロセッサがメモリ/記憶媒体から情報を読み取り、メモリ/記憶媒体に情報を書き込むことができるように、プロセッサに結合され得る。代替として、媒体は、プロセッサと一体であり得る。プロセッサ及び媒体は、ASIC内に常駐することができる。ASICは、ユーザ端末内に常駐することができる。代替として、プロセッサ及び媒体は、ユーザ端末内の別個の構成要素として常駐することができる。
【0080】
本明細書で使用される、とりわけ、「できる(can)」、「かもしれない(might)」、「場合がある(may)」、「など(e.g.)」など、条件付き文言は、具体的に別途記載のない限り、又はさもなければ使用される文脈内で理解されない限り、特定の実施形態が、特定の特徴、要素、及び/又は状態を含むが、他の実施形態は、それらの特定の特徴、要素、及び/又は状態を含まないことを伝えることを概して意図する。したがって、そのような条件付き文言は、特徴、要素、及び/又は状態が、1つ以上の実施形態のために何らかの方式で必要とされることを示唆することを概して意図せず、また、1つ以上の実施形態が、オーサー入力又はプロンプティングを用いて又は用いないで、これらの特徴、要素、及び/又は状態が、何らかの特定の実施形態に含まれるか又はそれにおいて実行されるべきかどうかを決定するための論理を、必ず含むことを示唆することを概して意図しない。
【0081】
本発明の特定の好ましい実施形態は、典型的には、フリート管理システム、より具体的には自律型車両フリート又は商業用トラック用途のためのタイヤ摩耗推定に対して明細書に説明されることがあるが、本発明は、それに全くもって明示的に限定されるものではなく、本明細書で使用されるとき「車両」という用語は、別途記載のない限り、自己推進式であるかどうかにかかわらず、1つ以上のタイヤを含み得る、自動車、トラック、又はそれらの任意の等価物を指し、したがってタイヤ摩耗及び/又はタイヤトラクションの正確な推定又は予測、並びに、例えば直接車両制御調節の形態での潜在的な無効化、交換、又は介入を必要とし得る。
【0082】
本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、「ユーザ」という用語は、例えば、本明細書に開示される特徴及びステップを提供するためのユーザインターフェースを有するデバイスと関連付けられ得る、ドライバ、搭乗者、メカニック、技術者、フリート管理職員、又は任意の他の人物若しくはエンティティを指し得る。
【0083】
前述の詳細な説明は、例解及び説明の目的のために提供されている。したがって、新規で有用な発明の特定の実施形態を説明してきたが、このような参照が、以下の特許請求の範囲における記載を除いて、本発明の範囲への限定として解釈されることを意図しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C