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特許7596587メタン発酵システム、及びメタン発酵方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】メタン発酵システム、及びメタン発酵方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20241202BHJP
   B09B 3/65 20220101ALI20241202BHJP
   C12M 1/113 20060101ALI20241202BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241202BHJP
   C12P 5/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C02F11/04 A
B09B3/65
C12M1/113
C12M1/00 C
C12P5/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024139225
(22)【出願日】2024-08-20
【審査請求日】2024-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】金 美貞
(72)【発明者】
【氏名】程 燕飛
(72)【発明者】
【氏名】張 振亜
(72)【発明者】
【氏名】城下 隆
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-000744(JP,A)
【文献】特許第7403781(JP,B1)
【文献】特開2007-216135(JP,A)
【文献】特開2005-324179(JP,A)
【文献】特開2016-155086(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106881333(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B09B1/00-5/00
C12M1/00-1/42
C12P5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵室と、
前記発酵室の床面よりも下方に設けられ、TS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する収容部と、
前記発酵室内に設置され、TSが15%以上の第2発酵原料を収容する函体部と、
を備え、
前記函体部は、前記収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を底板に穿設された分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離すること
を特徴とするメタン発酵システム。
【請求項2】
前記函体部は、それぞれ前記第2発酵原料を収容する上位函体部と下位函体部とを含み、
前記上位函体部は、前記収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を前記上位函体部の底板に穿設された上位分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離し、
前記下位函体部は、前記上位函体部から落下した前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を前記下位函体部の底板に穿設された下位分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離すること
を特徴とする請求項1に記載のメタン発酵システム。
【請求項3】
前記函体部は、前記第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成し、
前記収容部は、前記函体部により生成された前記バイオガスが供給されること
を特徴とする請求項1又は2に記載のメタン発酵システム。
【請求項4】
発酵室の床面よりも下方に設けられTSが15%未満の第1発酵原料を収容する収容部に収容された前記第1発酵原料を、前記発酵室内に設置されTSが15%以上の第2発酵原料が収容された函体部に供給する原料供給工程と、
前記原料供給工程により前記函体部に供給されて前記第2発酵原料と接触した前記第1発酵原料のうち少なくとも一部を、前記函体部の底板に穿設された分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、
を有すること
を特徴とするメタン発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農産残渣や畜産糞尿等のバイオマス資源を発酵させるために用いるメタン発酵システム、及びメタン発酵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス資源をエネルギー資源として有効活用するための方法として、貯留したバイオマス資源を効率よく発酵させるメタン発酵技術が研究されている。
【0003】
バイオマス資源を効率よく発酵させる方法として、固体バイオマスを貯留した発酵室に対して種菌液としての消化液を循環させることで固体バイオマスに繰り返し接触させる方法がある。この方法においては、発酵後の固体バイオマスが消化液の水分を吸収して含水率の高い高含水固体バイオマスとなるため、荷崩れしやすく、発酵室からの搬出作業性に問題がある。また、高含水固体バイオマスは、発酵室の壁面や床面にこびりつきやすく、放水によっても清掃作業性が向上できない問題がある。そのため、このメタン発酵方法の実施にあたり、高含水固体バイオマスの運搬作業性及び清掃作業性の向上が求められる。
【0004】
特許文献1には、発酵槽床面に形成され液体原料を収容する液溝と、発酵槽内に設置され固体原料を収容し、液溝に収容された発酵液が供給され、発酵液と固体バイオマスとを液溝表面の籾殻層により分離する発酵槽が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発酵槽によれば、バイオマスの入れ替え作業をスムーズに行うことができる。しかしながら、特許文献1に開示された発酵槽では、高含水のバイオマスの荷崩れ防止の観点での搬出作業性を向上できず、また液溝に籾殻が敷き詰められるため発酵槽内の清掃作業性を向上できない問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室の清掃作業性の向上が図られたメタン発酵システム、及びメタン発酵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明におけるメタン発酵システムは、発酵室と、前記発酵室の床面よりも下方に設けられ、TS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料を収容する収容部と、前記発酵室内に設置され、TSが15%以上の第2発酵原料を収容する函体部と、を備え、前記函体部は、前記収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を底板に穿設された分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離することを特徴とする。
【0009】
第2発明におけるメタン発酵システムは、第1発明において、前記函体部は、それぞれ前記第2発酵原料を収容する上位函体部と下位函体部とを含み、前記上位函体部は、前記収容部に収容された前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を前記上位函体部の底板に穿設された上位分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離し、前記下位函体部は、前記上位函体部から落下した前記第1発酵原料が供給されて前記第2発酵原料と接触したとき、前記第1発酵原料の少なくとも一部を前記下位函体部の底板に穿設された下位分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離することを特徴とする。
【0010】
第3発明におけるメタン発酵システムは、第1発明又は第2発明において、前記函体部は、前記第1発酵原料が供給されてバイオガスを生成し、前記収容部は、前記函体部により生成された前記バイオガスが供給されることを特徴とする。
【0011】
第4発明におけるメタン発酵方法は、発酵室の床面よりも下方に設けられTSが15%未満の第1発酵原料を収容する収容部に収容された前記第1発酵原料を、前記発酵室内に設置されTSが15%以上の第2発酵原料が収容された函体部に供給する原料供給工程と、前記原料供給工程により前記函体部に供給されて前記第2発酵原料と接触した前記第1発酵原料のうち少なくとも一部を、前記函体部の底板に穿設された分離孔を通過させて落下させることにより前記第2発酵原料と分離する分離工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明~第2発明によれば、メタン発酵システムは、発酵室の床面よりも下方に設けられた収容部に収容された第1発酵原料が供給されたとき分離孔を通過させて落下させることにより第2発酵原料と分離する函体部を備える。このため、高含水の第2発酵原料の荷崩れ及び発酵室内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システムについて高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室の清掃作業性の向上を図ることができる。
【0013】
特に、第2発明によれば、収容部に収容された第1発酵原料が供給されたとき上位分離孔を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料と分離する上位函体部と、上位函体部から落下した第1発酵原料が供給されたとき下位分離孔を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料と分離する下位函体部と、を備える。このため、函体部の容積によらず大量の発酵原料を効率よく発酵させることができる。これにより、メタン発酵システムについてバイオガスの製造性の向上を図ることができる。
【0014】
特に、第3発明によれば、収容部は、函体部により生成されたバイオガスが供給される。すなわち、函体部により生成されるバイオガスは、収容部に収容される第1発酵原料及び第1発酵原料の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0015】
第4発明によれば、メタン発酵方法は、発酵室の床面よりも下方に設けられた収容部に収容された第1発酵原料を、第2発酵原料が収容された函体部に供給する原料供給工程と、供給された第1発酵原料について分離孔を通過させて落下させることにより第2発酵原料と分離する分離工程と、を有する。このため、高含水の第2発酵原料の荷崩れ及び発酵室内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システムについて高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室の清掃作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態におけるメタン発酵システムの一例を示す模式斜視図である。
図2図2は、本実施形態におけるメタン発酵システムを構成する発酵室の一例を示す模式斜視図である。
図3図3は、図2のA-A断面に対応する発酵室の一例を示す模式断面図である。
図4図4は、本実施形態におけるメタン発酵システムを構成する函体部の一例を示す模式平面図である。
図5図5は、図4のB-B断面に対応する函体部の一例を示す模式断面図である。
図6図6は、本実施形態におけるメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図7図7は、本実施形態におけるメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図8図8は、本実施形態におけるメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図9図9は、本実施形態におけるメタン発酵システムの動作に含まれる工程の第1変形例を示す模式断面図である。
図10図10は、本実施形態におけるメタン発酵システムを構成する発酵室の第2変形例を示す模式斜視図である。
図11図11は、図10のB-B断面に対応するメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図12図12は、図10のB-B断面に対応するメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図13図13は、図10のB-B断面に対応するメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
図14図14は、図10のB-B断面に対応するメタン発酵システムの動作に含まれる工程の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態としてのメタン発酵システム100、及びメタン発酵方法の一例について詳細に説明をする。なお、各図において、第1水平方向Xとし、第1水平方向Xと直交する1つの方向を第2水平方向Yとし、第1水平方向X及び第2水平方向Yのそれぞれと直交する方向を高さ方向Zとする。各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0018】
(メタン発酵システム100)
図面を参照して、本実施形態におけるメタン発酵システム100の一例を説明する。
【0019】
メタン発酵システム100は、種菌液、家畜ふん尿、消化液等を含み得るTS(固形物濃度)が15%未満の発酵原料(第1の発酵原料)と、籾殻や廃材等の固体バイオマスを含み得るTSが15%以上の発酵原料(第2の発酵原料)と、を接触させることでメタン発酵を促進してバイオガスを生成するシステムである。なお、TSの単位「%」は質量%を指す。
【0020】
メタン発酵システム100は、例えば図1に示すように、開閉部11を有する1以上の発酵室1と、函体部2と、を備える。メタン発酵システム100は、例えば発酵室1で発生したバイオガスを貯留するためのバイオガス採集タンクTを備えてもよい。また、メタン発酵システム100は、作業者Uにより、第2の発酵原料が収容された函体部2が発酵室1内に搬入され、開閉部11が閉塞されてメタン発酵が完了した後、開閉部11が開放されて函体部2が発酵室1外に搬出される。
【0021】
メタン発酵システム100は、例えば図2図3に示すように、発酵室1の床面12(発酵室1の床板材の内表面)よりも下方に設けられ、TSが15%未満の第1の発酵原料を収容する収容部3を備える。ここで、床面12よりも下方の収容部3とは、高さ方向Z(鉛直方向)において、収容部3の底の高さが発酵室1の床板材の内表面(床面12)の高さよりも低ければよい。具体的には、床面12よりも下方の収容部3とは、床面12に切り欠かれて形成される溝部のように床面12と一体であり発酵室1と不可分とされる場合と、床面12よりも鉛直下方(図10参照)又は斜め下方に設けられる収容空間のように床面12と別体であり発酵室1から分離される場合とを含む。
【0022】
また、メタン発酵システム100は、例えば図4図5に示すように、函体部2が底板21と側板22とからなり、上方が開口した開口部Oを有する函体であり、底板21には第1の発酵原料を通過させつつ第2の発酵原料を通過させない分離孔23が予め穿設されている。このため、メタン発酵システム100は、収容部3に収容された第1の発酵原料が函体部2に供給されて第2の発酵原料と接触したとき、第1の発酵原料の少なくとも一部について分離孔23を通過させて落下させることにより第2の発酵原料と分離できる。
【0023】
ここで、従来技術では第1の発酵原料と第2の発酵原料とを繰り返し接触させたとき、第2の発酵原料の含水率が向上し、その結果、高含水の第2の発酵原料が発酵室1内で荷崩れを起こしたり発酵室1内の床や壁にこびりついたりする等、搬出や清掃の作業性に課題があった。一方で、本発明のメタン発酵システム100によれば、高含水の第2の発酵原料について函体部2から漏出せず、かつ、函体部2の分離孔23から第1の発酵原料を排出できる。この場合、高含水の第2の発酵原料の荷崩れ及び発酵室1内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システム100について高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室1の清掃作業性の向上を図ることができる。また、収容部3が床面12よりも下方に設けられるため、床面12上でフォークリフト等の車両を走行させて発酵室1内の発酵原料の入替を効率よく実施できる。これにより、メタン発酵システム100について高含水固体バイオマスの搬出作業性の向上を図ることができる。
【0024】
メタン発酵システム100は、例えば図2に示すように、排水パイプ4と、送水ポンプ5と、散水パイプ6と、をさらに備えてもよい。メタン発酵システム100は、例えば排水パイプ4を介して収容部3に収容された第1の発酵原料を収容部3から排水し、送水ポンプ5及び散水パイプ6を介して函体部2の上方から第1の発酵原料を供給し、その後第1の発酵原料を収容部3に回収することを繰り返す。この場合、第1の発酵原料を追加することなくメタン発酵の促進を持続させることができる。これにより、メタン発酵システム100について作業性及び経済性の向上を図ることができる。
【0025】
<発酵室1>
発酵室1は、発酵原料を収容してメタン発酵を行うための開閉自在の閉塞空間である。メタン発酵システム100が複数の発酵室1を備えるとき、各発酵室1は互いに独立した閉塞空間となる。発酵室1の材質としては、発酵室1内を密閉でき、かつ、フォークリフト等の車両が内部を走行できる程度の強度を有する材質であればよく、例えばコンクリート製又は鋼製である。
【0026】
発酵室1の形状及び寸法は、1以上の函体部2を収容でき、かつ収容部3を形成できる十分な床面積を確保できれば任意であるが、例えば幅1m~10m×高さ1m~10m×奥行1m~50mの略直方体ある。
【0027】
発酵室1は、例えば図2図3に示すように、開閉部11と、床面12と、側面13と、天井14と、で囲われた閉塞空間である。発酵室1は、床面12に1以上の収容部3が切り欠かれて形成される。
【0028】
発酵室1は、例えば函体部2の設置性を考慮して床面12が略水平に形成される。発酵室1は、例えば床面12が開閉部11から発酵室1の排水パイプ4側の奥行方向(図2の第1水平方向X)に向かうにつれて下方に傾斜して形成されてもよい。この場合、第1の発酵原料が開閉部11を通過して発酵室1の外へ漏れ出ることを防ぐことができる。これにより、メタン発酵システム100について経済性の向上を図ることができる。
【0029】
<函体部2>
函体部2は、TSが15%以上の第2の発酵原料を収容する。函体部2の材質としては、例えば鋼製であり、剛性を有する。
【0030】
函体部2の形状及び寸法は、発酵室1内に自立して設置できれば任意であるが、例えば幅0.5m~2.5m×高さ0.5m~2.5m×奥行0.5m~2.5mの略直方体である。函体部2は、例えば多角柱体や円柱体等、高さ方向Zに延長された柱体が好ましい。この場合、複数の函体部2を高さ方向Zに積み上げることができ、函体部2の寸法によらずメタン発酵に用いる第2の発酵原料の量を柔軟に調整できる。これにより、メタン発酵システム100について製造性の向上を図ることができる。また、作業者Uが搬出入しやすい寸法に設計しやすい。これにより、メタン発酵システム100について作業性の向上を図ることができる。
【0031】
函体部2は、例えば図4図5に示すように、底板21と、側板22と、分離孔23と、開口部Oと、を有する。函体部2は、開口部Oを介して内部に第2の発酵原料を収容し、又は収容された第2の発酵原料を排出する。函体部2は、例えば1以上の公知の鋼板からなる側板22と、格子状鋼板とパンチングメタルを重ねた底板21と、で構成され、このとき格子とパンチ穴の隙間が分離孔23に相当する。底板21及び側板22の厚さは、例えば0.1mm~50mmである。
【0032】
<<分離孔23>>
分離孔23は、函体部2の底板21に1以上予め穿設される。分離孔23の幅(図5の第1水平方向Xの幅)は、例えば0.05mm~10mmである。分離孔23は、例えば複数穿設されるとき、所定の間隔だけ互いに離間して穿設される。分離孔23は、函体部2に収容された発酵原料のうち分離孔23の幅よりも小さい固形体、又は流動体を第2収容部32に落下させることで、互いに接触し又は混合された異なる複数の発酵原料を分離できる。
【0033】
分離孔23は、予め第2の発酵原料が収容された函体部2に第1の発酵原料が供給されて第2の発酵原料と接触したとき、第1の発酵原料の少なくとも一部を通過させて落下させることにより、第2の発酵原料と分離する。ここで、第1の発酵原料と第2の発酵原料との接触を起因とするメタン発酵に伴い溶出した第2の発酵原料に含まれる成分の一部については、分離孔23を通過して落下する第1の発酵原料とみなす。すなわち、メタン発酵の進行に伴い、第1の発酵原料の体積が増加し、第2の発酵原料の体積が減少し得る。
【0034】
<収容部3>
収容部3は、TSが15%未満の第1の発酵原料を収容する。収容部3は、例えば図2図3に示すように、発酵室1の床面12に切り欠かれて形成される溝形状である。すなわち、溝形状の収容部3は、発酵室1の床板材の内表面である床面12よりも下方に設けられる。
【0035】
収容部3は、例えば開閉部11から離間していれば床面12に任意の形状に切り欠かれて形成されてよく、平面視で1以上の矩形、台形、三角形等を組み合わせた形状でもよい。収容部3は、例えば一方部分(一端)が開閉部11側の床面12に形成され、他方部分(他端)が側面13側の床面12に形成される。収容部3は、例えば他端が排水パイプ4と接続される。このとき、収容部3に収容された第1の発酵原料は、収容部3内を一端から他端に向かって流動し、排水パイプ4を介して収容部3から排水される。
【0036】
収容部3の幅(図2の第2水平方向Yの幅)は任意であるが、例えば100mm~500mmである。
【0037】
収容部3は、例えば図2に示すように、第1収容部31と、第2収容部32と、第3収容部33と、を含んでもよい。各収容部31、32、33は、例えば一端側において互いに離隔し、他端側において合流する。この場合、一端側と他端側とにおいて合流する場合と比べて、第1の発酵原料が一端側に滞留しにくく、効率よく排水パイプ4側に流動させて収容部3から排水することができる。これにより、メタン発酵システム100について製造性の向上を図ることができる。
【0038】
収容部3は、例えば図3に示すように、底面が略水平に形成される。この場合、収容部3の底面が発酵室1の奥行方向に向かうにつれて下方に傾斜して形成する場合と比べて第1の発酵原料を収容する空間を拡張しやすく、一度のメタン発酵でより多くの第1の発酵原料を収容してメタン発酵に用いることができる。これにより、メタン発酵システム100について製造性の向上を図ることができる。
【0039】
収容部3は、例えば一端側から他端側に向かうにつれて下方に傾斜して形成されてもよい。この場合、第1の発酵原料が収容部3内に滞留しにくく、効率よく収容部3から排水できる。これにより、メタン発酵システム100について製造性の向上を図ることができる。
【0040】
<排水パイプ4>
排水パイプ4は、一端側が収容部3と接続され、他端側が送水ポンプ5と接続される。排水パイプ4は、収容部3に収容された第1の発酵原料を排水する。排水パイプ4の材質としては、例えば樹脂製である。
【0041】
なお、図2図3の例では、排水パイプ4は発酵室1外に設置された送水ポンプ5と接続するように発酵室1の内外を連通して設けられるが、これに限定されず、発酵室1内に設置された送水ポンプ5と接続されてもよい。
【0042】
<送水ポンプ5>
送水ポンプ5は、一端側が排水パイプ4と接続され、他端側が散水パイプ6と接続される。送水ポンプ5は、収容部3から排水パイプ4に排水された第1の発酵原料を散水パイプ6に送水する。送水ポンプ5としては、例えば公知の送水用ポンプが用いられる。
【0043】
<散水パイプ6>
散水パイプ6は、一端側が送水ポンプ5と接続され、他端側が発酵室1の内部に配置される。散水パイプ6の材質としては、例えば樹脂製である。
【0044】
散水パイプ6は、例えば図2図3に示すように、他端側が発酵室1の天井14付近に設けられる。散水パイプ6は、例えば剛体であるとき側面13に貫通して固定されて天井14に沿って延長され、柔軟体であるとき側面13を貫通して天井14に固定される。
【0045】
散水パイプ6は、発酵室1内に配置された他端側のパイプ側面に図示しない散水孔が予め穿設されており、送水ポンプ5を動力として一端側から圧送される第1の発酵原料をその散水孔を介して散水する。すなわち、散水パイプ6は、収容部3に収容された第1の発酵原料を発酵室1内の上方から散布して落下させることで、発酵室1内に設置された函体部2に対して第1の発酵原料を供給することができる。
【0046】
散水パイプ6は、例えば図2に示すように、第1散水パイプ61と、第2散水パイプ62と、第3散水パイプ63と、を含んでもよい。各散水パイプ61、62、63は、例えば発酵室1内の一端側において一のパイプから枝分かれしており、他端側において互いに離隔している。この場合、第1の発酵原料を枝分かれしない一のパイプから散水する場合と比べて、第1の発酵原料を広範囲に均等に散布でき、より多くの発酵原料についてメタン発酵の促進を持続できる。これにより、メタン発酵システム100について製造性の向上を図ることができる。
【0047】
<バイオガス採集タンクT>
バイオガス採集タンクTは、発酵室1内で生成されたバイオガスを採集するためのタンクである。バイオガス採集タンクTは、例えば発酵室1と直接接続される。
【0048】
バイオガス採集タンクTは、発酵室1内で生成されるバイオガスの採集及び排出のみを行い、バイオガス採集タンクT内でバイオガスの生成を行わない。バイオガス採集タンクTの材質としては、例えば公知のガスホルダーと同等の鋼材、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料が用いられる。
【0049】
(メタン発酵方法)
次に、図面を参照して、本実施形態におけるメタン発酵方法として、メタン発酵システム100の動作の一例を説明する。メタン発酵方法は、例えば原料供給工程と、分離工程と、を有する。
【0050】
本実施形態では、説明の便宜上、収容部3のうち第2収容部32と、散水パイプ6のうち第2散水パイプ62と、を用いる例を挙げるが、これに限定されず、第1収容部31、第3収容部33又は第1散水パイプ61、第3散水パイプ63が用いられてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、メタン発酵方法の各工程について、メタン発酵システム100が備える図示しない公知のコンピュータ内にインストールされたプログラム等に基づいてメタン発酵システム100が各構成を制御して各工程を実行してもよく、作業者Uが主体となりメタン発酵システム100の各構成を操作してメタン発酵方法の各工程を実行してもよい。
【0052】
まず、本実施形態のメタン発酵方法に用いる発酵原料として、第1発酵原料A及び第2発酵原料Bを説明する。なお、第1発酵原料Aは上述の第1の発酵原料に、第2発酵原料Bは上述の第2の発酵原料に、それぞれ対応する。
【0053】
<第1発酵原料A>
第1発酵原料Aは、第2収容部32に予め収容され、送水ポンプ5を動力として収容部32からの排水と発酵室1内への散水とを繰り返して循環する。第1発酵原料Aは、発酵室1内で湿式メタン発酵する。第1発酵原料Aは、例えばバイオマス資源のうち、TSが2%~5%以上、15%未満の流動体が用いられ、種菌液、家畜ふん尿、消化液等が含まれる。上述のTSを満たす第1発酵原料Aを用いることで、液体の第1発酵原料Aが十分に流動性を保ちながら発酵室1内で循環し、メタン発酵に必要な微生物の活動が活発に行われることが期待される。
【0054】
<第2発酵原料B>
第2発酵原料Bは、函体部2に予め収容される。第2発酵原料Bは、函体部2内で乾式メタン発酵する。第2発酵原料Bは、例えばバイオマス資源のうち、TSが15%以上、30%~40%未満の固形体が用いられ、籾殻や廃材等の固体バイオマスが含まれる。一般的な単独の乾式メタン発酵では、含水率60%~80%程度の原料を用いて運転され、これはTS20%~40%程度に相当する。したがって、乾式メタン発酵される第2発酵原料BのTS上限値の目安として、40%が一般的と考えられる。上述のTSを満たす第2発酵原料Bを用いることで、固形バイオマスの第2発酵原料Bが適切に水分を保持しつつ発酵が進行し、効率的にメタンが生成されることが期待される。
【0055】
次に、本実施形態のメタン発酵方法の詳細を説明する。なお、図中の実線矢印は、第1発酵原料Aの流動方向を示している。
【0056】
<事前準備>
事前準備として、例えば図6に示すように、第2収容部32に第1発酵原料Aを予め収容し、函体部2に第2発酵原料Bを予め収容する。第1発酵原料A中又は第2発酵原料B中には、メタン生成菌が予め存在する。ここで、第2収容部32に収容される第1発酵原料Aを第1発酵原料Aaとする。
【0057】
また、作業者Uは、発酵室1内をメタン発酵が促進する嫌気性環境下とするために、開閉部11を開放した状態で第1発酵原料A及び第2発酵原料Bを収容した後に、開閉部11を閉塞して発酵室1を密閉し、必要に応じて発酵室1内を脱気(脱酸素)処理する。
【0058】
<原料供給工程>
原料供給工程において、メタン発酵システム100は、例えば図6に示すように、第1発酵原料Aについて送水ポンプ5を介して第2収容部32から排水パイプ4へ流動させて排水する。その後、メタン発酵システム100は、例えば図7に示すように、排水パイプ4に排水された第1発酵原料Aaを発酵室1上方に設置された第2散水パイプ62に送水する。ここで、第2散水パイプ62に送水される第1発酵原料Aを第1発酵原料Abとする。
【0059】
次に、メタン発酵システム100は、例えば図7に示すように、第1発酵原料Abについて、第2散水パイプ62に穿設された図示しない散水孔を介して発酵室1内の上方から散水する。ここで、発酵室1内の上方から散水される第1発酵原料Aを第1発酵原料Acとする。
【0060】
次に、メタン発酵システム100は、例えば図8に示すように、送水ポンプ5及び第2散水パイプ62を介して発酵室1内の上方から散水した第1発酵原料Acの少なくとも一部を、予め第2発酵原料Bが収容された函体部2の内部に供給する。ここで、函体部2に供給される第1発酵原料Aを第1発酵原料Adとする。
【0061】
このとき、第1発酵原料Adと接触した第2発酵原料Bは、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料Bが乾式メタン発酵され、函体部2内でバイオガス及び消化液が生成される。函体部2内で第2発酵原料Bから生じたバイオガスは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス採集タンクTに採集される。
【0062】
<分離工程>
分離工程において、メタン発酵システム100は、例えば図8に示すように、第1発酵原料Adについて函体部2の底板21に予め穿設された分離孔23を通過させて、函体部2よりも下方の第2収容部32に落下させる。ここで、分離孔23を通過する途中の第1発酵原料Aを第1発酵原料Aeとし、分離孔23を通過して第2収容部32に落下する第1発酵原料Aを第1発酵原料Afとする。
【0063】
すなわち、本実施形態のメタン発酵方法は、第2収容部32に収容された第1発酵原料Aを、第2発酵原料Bが収容された函体部2に供給する原料供給工程と、供給された第1発酵原料Aについて分離孔23を通過させて落下させることにより第2発酵原料Bと分離する分離工程と、を有する。この場合、高含水の第2発酵原料Bの荷崩れ及び発酵室1内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システム100について高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室1の清掃作業性の向上を図ることができる。
【0064】
また、函体部2の内部で乾式メタン発酵した第2発酵原料Bから生じた消化液は、第1発酵原料Aeと同様に、分離孔23を通過して第2収容部32に流下する。第2収容部32に流下した消化液は、第1発酵原料Afとともに、又は第1発酵原料Afの代わりに、第2収容部32から排出され、排水パイプ4、送水ポンプ5、及び第2散水パイプ62を介して発酵室1内上方から散水され、函体部2に供給される。
【0065】
このとき、第2収容部32では、函体部2から第1発酵原料A及び消化液の流下が繰り返されて第1発酵原料Aが攪拌され、その結果、第1発酵原料Aの湿式メタン発酵が促進され、第2収容部32内でバイオガス及び消化液が生成される。第2収容部32内で第1発酵原料Aから生じたバイオガスは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス採集タンクTに採集される。
【0066】
第2収容部32において生成される消化液は、第2収容部32よりも上方の函体部2に供給された後、第2収容部32に流下する。この場合、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵システム100の小型化を図ることができる。また、第2収容部32において生成される消化液は、函体部2に収容される第2発酵原料B及び第2発酵原料Bの発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分をより多く含み得る。このため、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。
【0067】
上述した各工程を実施し、本実施形態におけるメタン発酵システム100の動作は終了する。なお、メタン発酵システム100では、例えば上述した各工程を繰り返し実施してもよい。
【0068】
(メタン発酵システム100の第1変形例)
メタン発酵システム100は、例えば図9に示すように、函体部2が、それぞれ第2発酵原料B’、B’’を収容する上位函体部2’と下位函体部2’’と、を含んでもよい。
【0069】
なお、上位函体部2’及び下位函体部2’’について、底板21’、21’’、側板22’、22’’、分離孔23’、23’’は、それぞれ底板21、側板22、分離孔23と同様の形状及び機能を有する。また、第2発酵原料B’、B’’は、第2発酵原料Bと同様の発酵原料である。
【0070】
すなわち、メタン発酵システム100は、第2収容部32に収容された第1発酵原料Aが供給されたとき上位分離孔23’を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料B’と分離する上位函体部2’と、上位函体部2’から落下した第1発酵原料Aが供給されたとき下位分離孔23’’を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料B’’と分離する下位函体部2’’と、を備える。この場合、函体部2の容積によらず大量の発酵原料を効率よく発酵させることができる。これにより、メタン発酵システム100についてバイオガスの製造性の向上を図ることができる。
【0071】
また、図9では、上位函体部2’及び下位函体部2’’について高さ方向Zに積み上げられた隣り合う2つの函体部2を例示したが、これに限定されない。上位函体部2’及び下位函体部2’’は、例えば高さ方向Zに積み上げられた3以上の函体部2のうち隣り合う何れか2つの函体部2でもよく、離間する何れか2つの函体部2でもよい。また、上位函体部2’及び下位函体部2’’は、上位函体部2’の分離孔23’と下位函体部2’’の開口部Oとが公知の樹脂製パイプ等を介して第1発酵原料Aを供給可能とされていれば、平面視で設置位置が互いに離間し、かつ、高さが異なるように配置された2つの函体部2でもよい。
【0072】
次に、本変形例のメタン発酵方法の詳細を説明する。
【0073】
<原料供給工程>
原料供給工程において、メタン発酵システム100は、例えば図9に示すように、送水ポンプ5及び第2散水パイプ62を介して発酵室1内の上方から散水した第1発酵原料Acの少なくとも一部を、予め第2発酵原料B’が収容された上位函体部2’の内部に供給する。ここで、上位函体部2’に供給される第1発酵原料Aを第1発酵原料Agとする。
【0074】
このとき、第1発酵原料Agと接触した第2発酵原料B’は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料B’が乾式メタン発酵され、上位函体部2’内でバイオガス及び消化液が生成される。上位函体部2’内で第2発酵原料B’から生じたバイオガスは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス採集タンクTに採集される。
【0075】
<分離工程>
分離工程において、メタン発酵システム100は、例えば第1発酵原料Agについて上位函体部2’の底板21’に予め穿設された分離孔23’を通過させて、上位函体部2’よりも下方の下位函体部2’’に落下させる。ここで、分離孔23’を通過して下位函体部2’’に落下する第1発酵原料Aを第1発酵原料Ahとする。
【0076】
その後、メタン発酵システム100は、例えば上位分離孔23’を通過させて上位函体部2’から落下した第1発酵原料Ahの少なくとも一部を、予め第2発酵原料B’’が収容された下位函体部2’’の内部に供給する。ここで、下位函体部2’’に供給される第1発酵原料Aを第1発酵原料Aiとする。
【0077】
このとき、第1発酵原料Aiと接触した第2発酵原料B’’は、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料B’’が乾式メタン発酵され、下位函体部2’’内でバイオガス及び消化液が生成される。下位函体部2’’内で第2発酵原料B’’から生じたバイオガスは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス採集タンクTに採集される。
【0078】
その後、メタン発酵システム100は、例えば第1発酵原料Aiについて下位函体部2’’の底板21’’に予め穿設された分離孔23’’を通過させて、下位函体部2’’よりも下方の第2収容部32に落下させる。ここで、分離孔23’’を通過する途中の第1発酵原料Aを第1発酵原料Ajとし、分離孔23を通過して第2収容部32に落下する第1発酵原料Aを第1発酵原料Akとする。
【0079】
すなわち、本変形例のメタン発酵方法は、原料供給工程では第2収容部32に収容された第1発酵原料Aを、第2発酵原料B’が収容された上位函体部2’に供給する。また、分離工程では、原料供給工程により供給された第1発酵原料Aについて分離孔23’を通過させて落下させることにより第2発酵原料B’と分離するとともに、第2発酵原料B’’が収容された下位函体部2’’に供給した第1発酵原料Aについて分離孔23’’を通過させて落下させることにより第2発酵原料B’’と分離する。この場合、函体部2の容積によらず大量の発酵原料を効率よく発酵させることができる。これにより、メタン発酵システム100についてバイオガスの製造性の向上を図ることができる。
【0080】
(メタン発酵システム100の第2変形例)
メタン発酵システム100は、例えば図10に示すように、収容部3(床下収容部34)が発酵室1の床面12よりも下方において発酵室1から分離されて設けられてもよい。また、メタン発酵システム100は、例えばガス回収パイプ7、ガスポンプ8、及びガス吹込みパイプ9をさらに備えてもよい。
【0081】
なお、散水パイプ6は、例えば第1水平方向Xに延長される基部から枝分かれして第2水平方向Yに延長された第1散水パイプ61と、第1散水パイプ61から枝分かれして第1水平方向Xに延長された第2散水パイプ62と、をさらに有してもよい。
【0082】
<床下収容部34>
床下収容部34は、例えば発酵室1の床面12よりも下方に設けられる。床下収容部34は、TSが15%未満の第1の発酵原料を収容する。床下収容部34は、発酵室1と接続(連通)され、発酵室1内の第1の発酵原料等が落下して流入する。
【0083】
床下収容部34は、例えば図10に示すように、床面12の鉛直下方に設けられ、床面12の一部が貫通して穿設された1以上の穿孔121を介して発酵室1と接続される。すなわち、発酵室1内を清掃する場合に、洗浄水が穿孔121を介して床下収容部34に落下して床下収容部34内に満たされるので、発酵室1内と床下収容部34内とを同時に洗浄して、洗浄水を床下収容部34から汲み出すことで、発酵室1内と床下収容部34内とを同時に清掃できる。この場合、メタン発酵システム100の清掃作業の所要時間を短縮化できる。これにより、メタン発酵システム100について清掃作業性の向上を図ることができる。
【0084】
床下収容部34の形状及び寸法は、第1の発酵原料を収容できる十分な空間を確保できれば任意であるが、例えば幅1~10m×高さ1~10m×奥行1~50mの略直方体である。
【0085】
<ガス回収パイプ7>
ガス回収パイプ7は、一端側が発酵室1の内部に配置され、他端側がガスポンプ8と接続される。ガス回収パイプ7は、例えば発酵室1内の函体部2に収容された第2の発酵原料の発酵により生成されたバイオガスを回収する。ガス回収パイプ7の材質としては、例えば樹脂製である。
【0086】
ガス回収パイプ7は、例えば第1水平方向Xに延長される基部から枝分かれした第1ガス回収パイプ71と第2ガス回収パイプ72とをさらに有してもよい。
【0087】
<ガスポンプ8>
ガスポンプ8は、一端側がガス回収パイプ7と接続され、他端側がガス吹込みパイプ9と接続される。ガスポンプ8は、発酵室1からガス回収パイプ7に排出されたバイオガスをガス吹込みパイプ9に送る。ガスポンプ8としては、例えば公知のガス用ポンプが用いられる。
【0088】
<ガス吹込みパイプ9>
ガス吹込みパイプ9は、一端側がガスポンプ8と接続され、他端側が床下収容部34の内部に配置される。ガス吹込みパイプ9は、床下収容部34に収容された第1の発酵原料に対して、発酵室1から排出されたバイオガスを吹き込む。ガス吹込みパイプ9の材質としては、例えば樹脂製である。
【0089】
ガス吹込みパイプ9は、例えば第1水平方向Xに延長される基部から枝分かれした第1ガス吹込みパイプ91と第2ガス吹込みパイプ92とをさらに有してもよい。
【0090】
すなわち、メタン発酵システム100は、収容部3(床下収容部34)が、函体部2により生成されたガスが供給される。すなわち、函体部2により生成されるバイオガスは、収容部3に収容される第1の発酵原料及び第1の発酵原料の発酵による生成物に接触し、バイオガス中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。この場合、生成したバイオガスの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガス中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスの有用性向上を図ることができる。
【0091】
次に、本変形例のメタン発酵方法の詳細を説明する。図11図14は、図10のB-B断面に対応するメタン発酵システムの動作の一例を示す模式断面図である。
【0092】
<事前準備>
事前準備として、例えば図11に示すように、床下収容部34に第1発酵原料Aを予め収容し、函体部2に第2発酵原料Bを予め収容する。第1発酵原料A中又は第2発酵原料B中には、メタン生成菌が予め存在する。ここで、床下収容部34に収容される第1発酵原料Aを第1発酵原料Alとする。
【0093】
ここで、函体部2は、例えば底板21に予め脚部24が取り付けられ、脚部24を介して床面12に設置されてもよい。このとき、底板21と床面12との間に空間が形成されるため、函体部2が分離孔23と穿孔121とが平面視で重なるように発酵室1内に配置されなくても、供給された第1発酵原料Aについて分離孔23を通過させることができる。
【0094】
また、作業者Uは、発酵室1内をメタン発酵が促進する嫌気性環境下とするために、開閉部11を開放した状態で第1発酵原料A及び第2発酵原料Bを収容した後に、開閉部11を閉塞して発酵室1を密閉し、必要に応じて発酵室1内を脱気(脱酸素)処理する。
【0095】
<原料供給工程>
原料供給工程において、メタン発酵システム100は、例えば図12に示すように、第1発酵原料Aについて送水ポンプ5を介して床下収容部34から排水パイプ4へ流動させて排水する。その後、メタン発酵システム100は、例えば排水パイプ4に排水された第1発酵原料Amを発酵室1上方に設置された第2散水パイプ62に送水する。ここで、第2散水パイプ62に送水される第1発酵原料Aを第1発酵原料Anとする。
【0096】
次に、メタン発酵システム100は、例えば第1発酵原料Anについて、第2散水パイプ62に穿設された図示しない散水孔を介して発酵室1内の上方から散水する。ここで、発酵室1内の上方から散水される第1発酵原料Aを第1発酵原料Aoとする。
【0097】
次に、メタン発酵システム100は、例えば図13に示すように、送水ポンプ5及び第2散水パイプ62を介して発酵室1内の上方から散水した第1発酵原料Aoの少なくとも一部を、予め第2発酵原料Bが収容された函体部2の内部に供給する。ここで、函体部2に供給される第1発酵原料Aを第1発酵原料Apとする。
【0098】
このとき、第1発酵原料Apと接触した第2発酵原料Bは、メタン生成菌の作用によりメタン発酵が促進される。その結果、第2発酵原料Bが乾式メタン発酵され、函体部2内でバイオガスGa(G)及び消化液が生成される。函体部2内で第2発酵原料Bから生じたバイオガスGaは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス回収パイプ7に回収される。ここで、ガス回収パイプ7に回収されるバイオガスGをバイオガスGbとする。
【0099】
その後、ガスポンプ8は、ガス回収パイプ7に回収されたバイオガスGbを、ガス吹込みパイプ9を介して床下収容部34に収容された第1発酵原料Alに吹き込む。ここで、床下収容部34に送られるバイオガスGをバイオガスGcとし、床下収容部34内の第1発酵原料Alに吹き込まれるバイオガスGをバイオガスGdとする。バイオガスGdは、第1発酵原料Alと接触して一部成分が溶出した後、穿孔121を通過して発酵室1内に流動し、その後、バイオガスGaとともに、又はバイオガスGaの代わりに、ガス回収パイプ7に回収される。
【0100】
<分離工程>
分離工程において、メタン発酵システム100は、例えば図14に示すように、第1発酵原料Apについて函体部2の底板21に予め穿設された分離孔23を通過させて、函体部2よりも下方の床下収容部34に落下させる。ここで、分離孔23を通過する途中の第1発酵原料Aを第1発酵原料Aqとし、分離孔23を通過して床面12上を流動する第1発酵原料Aを第1発酵原料Arとし、床面12から穿孔121を通過して床下収容部34に落下する第1発酵原料Aを第1発酵原料Asとする。
【0101】
また、函体部2の内部で乾式メタン発酵した第2発酵原料Bから生じた消化液は、第1発酵原料Aqと同様に、分離孔23を通過して床面12上を流動し、穿孔121を通過して床下収容部34に流下する。床下収容部34に流下した消化液は、第1発酵原料Asとともに、又は第1発酵原料Asの代わりに、床下収容部34から排出され、排水パイプ4、送水ポンプ5、及び第2散水パイプ62を介して発酵室1内上方から散水され、函体部2に供給される。
【0102】
このとき、床下収容部34では、函体部2から第1発酵原料A及び消化液の流下が繰り返されて第1発酵原料Aが攪拌され、その結果、第1発酵原料Aの湿式メタン発酵が促進され、床下収容部34内でバイオガス及び消化液が生成される。床下収容部34内で第1発酵原料Aから生じたバイオガスは、発酵室1内を上方に移動し、発酵室1の上方に設けられたガス回収パイプ7に回収される。
【0103】
床下収容部34において生成される消化液は、床下収容部34よりも上方の函体部2に供給された後、床下収容部34に流下する。この場合、メタン発酵を促進するために発酵原料等を攪拌する攪拌器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵システム100の小型化を図ることができる。また、床下収容部34において生成される消化液は、函体部2に収容される第2発酵原料B及び第2発酵原料Bの発酵による生成物との接触により、溶出したNPK成分をより多く含み得る。このため、NPK成分の含有量が向上し、より良質なバイオ液肥として活用することができる。これにより、液肥施用に伴う労力が省力化されるなど、液肥の有用性向上を図ることができる。
【0104】
本実施形態によれば、メタン発酵システム100は、発酵室1の床面12よりも下方に設けられた収容部3に収容された第1発酵原料7が供給されたとき分離孔23を通過させて落下させることにより第2発酵原料8と分離する函体部2を備える。このため、高含水の第2発酵原料8の荷崩れ及び発酵室1内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システム100について高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室1の清掃作業性の向上を図ることができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、収容部3に収容された第1発酵原料7が供給されたとき上位分離孔23’を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料8’と分離する上位函体部2’と、上位函体部2’から落下した第1発酵原料7が供給されたとき下位分離孔23’’を通過させて落下させることにより収容された第2発酵原料8’’と分離する下位函体部2’’と、を備える。このため、函体部2の容積によらず大量の発酵原料を効率よく発酵させることができる。これにより、メタン発酵システム100についてバイオガスの製造性の向上を図ることができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、収容部3は、函体部2により生成されたバイオガスGが供給される。すなわち、函体部2により生成されるバイオガスGは、収容部3に収容される第1発酵原料A及び第1発酵原料Aの発酵による生成物に接触し、バイオガスG中の硫化水素及びアンモニアが溶出し得る。このため、生成したバイオガスGの脱硫処理及びアンモニア除去処理を行う機器を設ける必要がない。これにより、メタン発酵装置の小型化を図ることができる。また、生成されたバイオガスG中の二酸化炭素も同様に溶出するため、メタン濃度が純化された、発熱量の高いバイオガスGを生成することができる。これにより、ガスの運送・保管等に要するコストが低減されるなど、バイオガスGの有用性向上を図ることができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、メタン発酵方法は、発酵室1の床面12よりも下方に設けられた収容部3に収容された第1発酵原料7を、第2発酵原料8が収容された函体部2に供給する原料供給工程と、供給された第1発酵原料7について分離孔23を通過させて落下させることにより第2発酵原料8と分離する分離工程と、を有する。このため、高含水の第2発酵原料8の荷崩れ及び発酵室内へのこびりつきを抑制できる。これにより、メタン発酵システム100について高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室1の清掃作業性の向上を図ることができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
100 メタン発酵システム
1 発酵室
11 開閉部
12 床面
121 穿孔
13 壁面
14 天井
2 函体部
2’ 上位函体部
2’’ 下位函体部
21、21’、21’’ 底板
22、22’、22’’ 側板
23、23’、23’’ 分離孔
24 脚部
3 収容部
31、32、33 収容部
34 床下収容部
4 排水パイプ
5 送水ポンプ
6 散水パイプ
61、62、63、64、65 散水パイプ
7、71、72 ガス回収パイプ
8 ガスポンプ
9、91、92 ガス吹込みパイプ
A、Aa~As 第1発酵原料
B、B’、B’’ 第2発酵原料
G、Ga~Gd バイオガス
T ガス採集タンク
O 開口部
U 作業者
【要約】
【課題】高含水固体バイオマスの搬出作業性及び発酵室の清掃作業性の向上が図られたメタン発酵システム、及びメタン発酵方法を提供する。
【解決手段】メタン発酵システムは、発酵室1と、発酵室1の床面12よりも下方に設けられ、TS(固形物濃度)が15%未満の第1発酵原料7を収容する第2収容部32と、発酵室1内に設置され、TSが15%以上の第2発酵原料8を収容する函体部2と、を備え、函体部2は、第2収容部32に収容された第1発酵原料7が供給されて第2発酵原料8と接触したとき、第1発酵原料7の少なくとも一部を底板21に穿設された分離孔23を通過させて落下させることにより第2発酵原料8と分離することを特徴とする。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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