(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241202BHJP
B29C 61/06 20060101ALI20241202BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20241202BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29C61/06
C08L67/00
B29K67:00
(21)【出願番号】P 2024194063
(22)【出願日】2024-11-06
(62)【分割の表示】P 2024533826の分割
【原出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2023050954
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523012126
【氏名又は名称】ボンセット アメリカ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Bonset America Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】金子 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】弓削 秀太
(72)【発明者】
【氏名】入船 達也
(72)【発明者】
【氏名】海野 竜馬
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/032429(WO,A1)
【文献】特開2022-74157(JP,A)
【文献】特許第6837188(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B29C 61/00
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
前記非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a)~(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
構成(a):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成(b):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、110℃以上、140℃以下の温度域に、第2の損失係数ピークを有する。
構成(c):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
【請求項2】
前記第1の損失係数ピークを有する100℃未満の温度域を70~90℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
【請求項3】
前記第2の損失係数ピークを有する100℃以上の温度域を120~160℃の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
【請求項4】
前記第1の損失係数ピークの高さを100としたときに、前記第2の損失係数ピークの高さを20~50の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
【請求項5】
前記非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とし、前記結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
【請求項6】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、ホモPET樹脂及びPCRPET樹脂、或いは、いずれか一方であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
【請求項7】
全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
前記非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)において、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a´)~(e´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
構成(a´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃未満の温度域に、貯蔵弾性率が低下する第1の変曲点を有する。
構成(b´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃以上の温度域に、貯蔵弾性率が上昇する第2の変曲点を有する。
構成(c´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
構成(d´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成:(e´)前記第2の変曲点の温度と、前記第1の損失係数ピーク温度との差が20℃以上である。
【請求項8】
全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
前記非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、おいて、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
前記結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a´´)~(c´´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法。
構成(a´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失弾性ピークを有する。
構成(b´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、110℃以上、140℃以下の温度域に、前記第1の損失弾性ピークと逆方向に凸状である第2の損失弾性ピークを有する。
構成(c´´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法に関する。
より詳しくは、動的粘弾性測定装置(以下、DMAと称する場合がある。)を用いて測定されてなる損失係数ピーク等が、複数温度領域で制御されてなる、耐しわ特性に優れたポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シュリンクフィルムは、PETボトル等のラベル用基材フィルムとして幅広く用いられている。特に、ポリエステル系樹脂は透明性や強度に優れ、広範に使用されている。これらのシュリンクフィルムは、熱風やスチームを発生するトンネル内を通過させることにより熱収縮させ、容器に装着するが、熱収縮時に収縮差(ムラ)が生じてシワの発生や色のムラが見られる場合がある。
そこで、熱収縮時に収縮差(ムラ)が生じてシワの発生や色のムラの発生を防止するための熱収縮性ポリエステル系フィルムが、各種提案されている。
【0003】
例えば、幅方向に高い熱収縮率を有し、長手方向は小さい熱収縮率を示し、長手方向の機械的強度が大きく、ミシン目開封性も良好で、収縮仕上がり性も優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
より具体的には、以下の要件(1)~(5)を満足する二軸延伸熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
(1)非晶モノマーとして1,4-シクロヘキサンジメタノールをアルコール成分100モル%中5モル%以上30モル%以下用い、
(2)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向で60%以上90%以下、
(3)98℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム主収縮方向に直交する方向で-5%以上5%以下、
(4)80℃の温水中で主収縮方向に10%収縮させた後の主収縮方向に直交する方向の単位厚み当たりの直角引裂強度が、180N/mm以上350N/mm以下である。
(5)90℃の熱風で測定したフィルム主収縮方向の最大収縮応力が2MPa以上10MPa以下であり、かつ、測定開始から30秒後の収縮応力が最大収縮応力の60%以上100%以下である。
【0004】
更に、全ポリエステル樹脂成分中における非晶質成分の配合量を厳格に制御するとともに、フィルム長手方向における、80℃及び90℃の温湯熱収縮率や、フィルム幅方向における、90℃における温湯熱収縮率を制限する熱収縮性ポリエステル系フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
より具体的には、熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし、全ポリエステル樹脂成分中における非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を含有し、その合計が15モル%以上である。
そして、ポリエステル系フィルムの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において、処理温度80℃、処理時間10秒で30%以上であり、処理温度90℃、処理時間10秒で40%以上であり、フィルム幅方向における温湯収縮率90℃、処理時間10秒で10%以下である事を特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-081378号公報(特許請求の範囲等)
【文献】特開2007-016120号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~2に記載された熱収縮性フィルムのいずれにおいても、所定温度、所定収縮方向での熱収縮率を所定範囲内に制限しているものの、当該熱収縮率や損失係数等を定量的に制御することについては、何ら考慮されていなかった。
特に、胴部のボトル径が一様でなく、かつ、部位によっては、胴部の水平断面形状が円状ではなく、複雑な形状を有するPETボトル等の場合、熱収縮性が不均一となりやすいことから、微細なしわの発生の抑制が、極めて困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の発明者らは、動的粘弾性測定装置を用いて、所定のポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法において、複数温度領域の損失係数等を、それぞれ所定範囲内に制御することにより、熱収縮特性や耐しわ特性等を効率的かつ精度良く管理できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所定の簡易測定方法を用い、熱収縮特性がより均一であって、耐しわ特性に優れたポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a)~(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法が提供され、上記課題を解決することができる。
構成(a):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成(b):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、110℃以上、140℃以下の温度域に、第2の損失係数ピークを有する。
構成(c):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法につき、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数(tanδ)において、複数の温度領域に、それぞれピーク(第1の損失係数ピーク及び第2の損失係数ピーク)を有することによって、幅広い温度範囲における熱収縮率を精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
【0009】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成するにあたり、第1の損失係数ピークを有する温度域を70~90℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように第1の損失係数ピークを有する温度域を制御することにより、第2の損失係数ピークとの差異がより明確になって、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が更に容易になる。
【0010】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成するにあたり、第2の損失係数ピークを有する温度域を120~160℃の範囲内の値とすることが好ましい。
このように第2の損失係数ピークを有する温度域を制御することにより、第1の損失係数ピークとの差異がより明確になって、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が更に容易になる。
【0011】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成するにあたり、第1の損失係数ピークの高さを100としたときに、第2の損失係数ピークの高さを20~50の範囲内の値とすることが好ましい。
このように第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率を制御することにより、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が更に容易になる。
【0012】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成するにあたり、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とし、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とすることが好ましい。
このような範囲に非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度及び結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度をそれぞれ制御することにより、一部相分離しつつ、混合分散性が良好になるばかりか、熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が更に容易になる。
【0013】
本発明のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成するにあたり、結晶性ポリエステル樹脂が、ホモPET樹脂及びPCRPET樹脂、或いは、いずれか一方であることが好ましい。
このように、結晶性ポリエステル樹脂の種類を制御することにより、熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が容易になり、更には、環境特性を考慮することになる。
【0014】
又、本発明の別の態様によれば、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)において、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a´)~(e´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃未満の温度域に、貯蔵弾性率が低下する第1の変曲点を有する。
構成(b´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃以上の温度域に、貯蔵弾性率が上昇する第2の変曲点を有する。
構成(c´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
構成(d´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成:(e´)第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が20℃以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法につき、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、異なる温度域に、それぞれ、貯蔵弾性率が低下する下降変曲点(第1の変曲点)と、貯蔵弾性率が上昇する変曲点(第2の変曲点)を有することによって、ガラス領域と、ゴム弾性領域とのバランスが良くなって、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
【0015】
又、本発明の更に別の態様によれば、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、おいて、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a´´)~(c´´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失弾性ピークを有する。
構成(b´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、110℃以上、140℃以下の温度域に、第1の損失弾性ピークと逆方向に凸状である第2の損失弾性ピークを有する。
構成(c´´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法につき、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて得られる損失弾性率曲線において、異なる温度域に、それぞれ第1の損失弾性ピークと、第2の損失弾性ピークを有することによって、ガラス領域と、ゴム弾性領域とのバランスが良くなって、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルムの形態を説明するための図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルム(実施例1~3)につき、動的粘弾性測定装置を用いてなる、貯蔵弾性率曲線、損失弾性率曲線、及び、損失係数曲線を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルム(実施例4~6)につき、動的粘弾性測定装置を用いてなる、貯蔵弾性率曲線、損失弾性率曲線、及び、損失係数曲線を説明するための図である。
【
図4】
図4(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルム(実施例7~8及び比較例1)につき、動的粘弾性測定装置を用いてなる、貯蔵弾性率曲線、損失弾性率曲線、及び、損失係数曲線を説明するための図である。
【
図5】
図5は、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、損失係数曲線の第1のピークの温度及び第2のピークの温度との関係を説明するために供する図である。
【
図6】
図6は、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、損失係数曲線の第1のピークの高さ/第2のピークの高さとの関係を説明するために供する図である。
【
図7】
図7は、実施例1に相当し、シワが発生していない場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、
図7(b)~(d)は、
図7(a)に示された外観の領域P、Q、Rをそれぞれ拡大させた図である。
【
図8】
図8(a)は、比較例1に相当し、シワが発生した場合の筒状ラベルの外観状態を示す図(写真)であり、
図8(b)~(d)は、
図8(a)に示された外観の領域S、T、Uをそれぞれ拡大させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、
図1(a)等に例示するようなポリエステル系シュリンクフィルム10であって、全体量(100重量%)に対して、30~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記構成(a)~(c)を満足するポリエステル系シュリンクフィルムである。
構成(a):JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、100℃未満の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成(b):JIS K 7244-4に準拠し、
図2(a)~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、100℃以上の温度域に、第2の損失係数ピークを有する。
構成(c):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
より具体的には、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、下記構成(a)~(c)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成(b):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、110℃以上、140℃以下の温度域に、第2の損失係数ピークを有する。
構成(c):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法につき、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数(tanδ)において、複数の温度領域に、それぞれピーク(第1の損失係数ピーク及び第2の損失係数ピーク)を有することによって、幅広い温度範囲における熱収縮率を精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
以下、適宜、図面を参照しながら、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を構成等に分けて、具体的に説明する。
【0018】
1.ポリエステル樹脂
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル樹脂は、30~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来することを特徴とする。
【0019】
(1)非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂として、基本的に、ポリアルコール及びジカルボン酸に由来したポリマーであって、室温でアモルファス状態のポリエステル樹脂であれば、使用することができる。
従って、ポリアルコール及びヒドロキシカルボン酸からなる非晶性ポリエステル樹脂、ポリアルコールジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなる非晶性ポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
なお、非晶性ポリエステル樹脂に該当するか否かにつき、DSC(示差走査熱量計)によって得られるDSC曲線において、結晶部分の融解ピークを基本的に現出しないことから、判断することができる。
【0020】
ここで、非晶性ポリエステル樹脂の原料成分であるポリアルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-ヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つのジオールが挙げられる。
従って、これらのポリアルコールの中でも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,4-ヘキサンジメタノールが好ましい。
このようなポリアルコールを用いることによって、多価カルボン酸と適度に反応させ、非晶性が所望状態に制御された非結晶性ポリエステル樹脂が得られやすいためである。
【0021】
又、同じくポリエステル樹脂の原料成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、テレフタル酸が好ましい。
又、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0022】
よって、非晶性ポリエステル樹脂として、非晶性ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリブチレンテレフタレート、非晶性ポリブチレンナフタレート、非晶性ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
特に、非晶性ポリエステル樹脂の一例として、反応成分の全体量(100重量部)において、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部と、からなる非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
又、必要に応じ、シュリンクフィルムの性質や特性を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。
【0023】
(2)結晶性ポリエステル樹脂
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、基本的に、室温で結晶部分を有するポリエステル樹脂であれば、使用することができる。
従って、ポリアルコール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ポリアルコール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ポリアルコールジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
なお、結晶性ポリエステル樹脂に該当するか否かにつき、DSC(示差走査熱量計)によって得られるDSC曲線において、所定温度域に、結晶部分の融解ピークを基本的に現出することから、判断することができる。
【0024】
ここで、ポリエステル樹脂の化合物成分であるポリアルコールとしては、非晶性ポリエステル樹脂の反応成分と同様の、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-ヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つのジオールが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,4-ヘキサンジメタノールが好ましい。
【0025】
又、同じくポリエステル樹脂の反応成分としてのジカルボン酸としては、非晶性ポリエステル樹脂の反応成分と同様の、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
【0026】
よって、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
特に、結晶性ポリエステル樹脂の一例として、反応成分の全体量において、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを100重量部と、からなる結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
又、結晶性ポリエステル樹脂の一例として、反応成分の全体量(100重量部)において、テレフタル酸を90~99重量部に対して、エチレングリコールを90~99重量部と、イソプロパノールを0.5~5重量部と、ジエチレングリコールを1~10重量部と、からなる結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
【0027】
(3)配合比
ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル系樹脂組成物として、全体量(100重量%)に対して、20~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~80重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むことを特徴とする。
この理由は、このように非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂の配合量を制限することによって、一部相分離しつつも、均一混合されて、損失係数等の粘弾性特性の調整が困難となる場合があるためである。
従って、収縮温度付近における熱収縮率や最大収縮応力を所望範囲に、更に容易に調整しやすくできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
【0028】
より具体的には、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が20重量%未満の値や、90重量%を超えた値になったりすると、損失係数等の粘弾性特性の調整が困難となって、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における熱収縮率や機械的強度、あるいは、最大収縮応力等の制御が困難となる場合があるためである。
従って、全体量に対して、25~85重量%の非晶性ポリエステル樹脂及び15~75重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むことがより好ましく、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂及び20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂を含むことが更に好ましい。
【0029】
2.構成(a)
構成(a)として、JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数(tanδ)において、100℃未満の温度域に、第1の損失係数ピークを有することを特徴とする。
この理由は、後述する構成(b)等とも関係するものの、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、所定温度域に、第1の損失係数ピークを有することにより、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができるためである。
【0030】
そして、かかる第1の損失係数ピークの現出する温度域を100℃未満であって、通常、80~98℃未満の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、損失係数曲線において、100℃未満の温度域に得られる損失係数のピーク温度を所定範囲の値に制御することによって、損失係数等の粘弾性特性の調整が困難となって、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における熱収縮率や機械的強度、あるいは、最大収縮応力等の制御が容易となる場合があるためである。
【0031】
ここで、
図5に言及して、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、第1の損失係数ピーク及び第2の損失係数ピークの温度との関係を説明する。
すなわち、
図5の横軸には、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量が採って示してあり、縦軸には、第1の損失係数ピーク及び第2の損失係数ピークの温度がそれぞれ示してある。
図5中の特性曲線から理解されるように、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、第1の損失係数ピークの温度及び第2の損失係数ピークの温度と、それぞれ良い相関関係がある。
従って、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の種類等にもよるが、これらの配合量を制御することによって、第1の損失係数ピークの温度及び第2の損失係数ピークの温度を、それぞれ制御できることが理解される。
【0032】
又、かかる損失係数により得られる第1の損失係数ピークの高さを、通常、1.5~2.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
すなわち、損失係数曲線において、第1の損失係数ピークの高さが1.5未満の値になると、非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂の配合量のバランスや、混合状態が低下し、損失係数等の粘弾性特性の調整が困難となって、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における熱収縮率や機械的強度、あるいは、最大収縮応力等の制御が容易となる場合があるためである。
従って、損失係数により得られる第1の損失係数ピークの高さを1.7~2.3の範囲内の値とすることがより好ましく、1.8~2.0の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0033】
又、
図6に言及して、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、損失係数曲線の第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率との関係を説明する。
ここで、
図6に言及して、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、損失係数曲線の第1のピークの温度及び第2のピークの温度との関係を説明する。
すなわち、
図6の横軸には、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量が採って示してあり、縦軸には、損失係数曲線の第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率が示してある。
図6中の特性曲線から理解されるように、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合量と、損失係数曲線における第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率と、良い相関関係がある。
従って、非晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の種類等にもよるが、これらの配合量を制御することによって、損失係数曲線の第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率、更には、それらの単独ピーク高さについても、それぞれ制御できることが理解される。
【0034】
なお、動的粘弾性測定によって得られる第1の損失係数ピークに関し、当該第1の損失係数ピーク温度と、貯蔵弾性率曲線において、貯蔵弾性率が下降する第1の変曲点が現出する温度と、の差を5℃以上とすることが好ましい。
この理由は、貯蔵弾性率曲線における、第1の変曲点温度を考慮して、第1の損失係数ピーク温度を所定範囲の値に制御することにより、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合割合が所定範囲に、更に、バランス良く制御されるためである。
すなわち、第1の損失係数ピーク温度と、貯蔵弾性率曲線における第1の変曲点が現出する温度との差を考慮することによって、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂が、一部相分離しつつも、混合分散性が良好になるばかりか、熱収縮率の調整等が更に容易になる。
よって、かかる損失係数の第1の損失係数ピーク温度と、貯蔵弾性率の第1の変曲点温度との差を、8~18℃の範囲内とすることがより好ましく、10~15℃の範囲内とすることが更に好ましい。
【0035】
3.構成(b)
構成(b)として、JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、
図2~
図4(b)に示すように、100℃以上の温度域に、第2の損失係数ピークを有することを特徴とする。
この理由は、前述した構成(a)等とも関係するものの、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、所定温度域に、第2の損失係数ピークを有することにより、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができるためである。
【0036】
そして、かかる第2の損失係数ピークが現出する温度域を、100℃以上の温度域であって、通常、110~150℃の範囲内の値とすることが好ましく、120~130℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、かかる第2の損失係数ピークが現出する温度域を制御することによって、損失係数等の粘弾性特性の調整が容易になって、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における熱収縮率や機械的強度、あるいは、最大収縮応力等の制御が容易となる場合があるためである。
【0037】
又、かかる第2の損失係数ピークの高さを、通常、0.2~1の範囲内の値とすることがより好ましい。
すなわち、損失係数曲線において、第1の損失係数ピークの高さが0.2未満の値になったり、1を超えたりすると、非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂の配合量のバランスや、混合状態が低下しする場合があるためである。
よって、損失係数等の粘弾性特性の調整が困難となって、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における熱収縮率や機械的強度、あるいは、最大収縮応力等の制御が容易となる場合があるためである。
従って、損失係数により得られる第1の損失係数ピークの高さを0.3~0.8の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~0.6の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0038】
又、かかる第2の損失係数ピークの高さを、第1の損失係数ピークの高さを考慮して、定めることがより好ましい。
すなわち、第1の損失係数ピークの高さを100としたときに、第2の損失係数ピークの高さを20~50の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように第1の損失係数ピークの高さ/第2の損失係数ピークの高さの比率を制御することにより、非晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂の配合量のバランスや、混合状態が良好になって、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が更に容易になるためである。
従って、第1の損失係数ピークの高さを100としたときに、第2の損失係数ピークの高さを25~45の範囲内の値とすることがより好ましく、20~40の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
4.構成(c)
構成(c)として、80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向(TD方向)における熱収縮率を30%以上とすることを特徴とする。
この理由は、かかる熱収縮温度条件において、汎用的な80℃で、所望の熱収縮率が得られやすくなると、幅広い温度範囲における熱収縮率を精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができるためである。
従って、ポリエステル系シュリンクフィルムの耐シワ特性が向上したり、機械的特性や熱収縮率等の調整についても、容易に行うことができるためである。
なお、80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率を35~55%の範囲内の値とすることが好ましく、38~50%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0040】
5.構成(d)
構成(d)として、動的粘弾性測定によって得られる貯蔵弾性率曲線において、80℃における貯蔵弾性率を40MPa~300MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、貯蔵弾性率曲線において、所定温度域の貯蔵弾性率を具体的範囲に制御することにより、変曲点(第1の変曲点)の認定が更に容易になるためである。
よって、製造上のバラツキ等があった場合であっても、所定温度域における貯蔵弾性率の変曲点を制御して、耐シワ特性を更に安定的に向上させることができる。
従って、貯蔵弾性率曲線において、80℃における貯蔵弾性率を50MPa~200MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、60MPa~150MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0041】
6.構成(e)
構成(e)として、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV1と称する場合がある。)と、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV2と称する場合がある。)との差(IV1-IV2)の絶対値を0.5以下とすることが好ましい。
このように、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度と、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度との差の絶対値を所定範囲内の値に制御することにより、非晶性ポリエステル樹脂/結晶性ポリエステル樹脂の配合割合が所定範囲に制御されやすくなって、熱収縮率の調整が更に容易になるためである。
しかも、これらの固有粘度の差を制限すると、機械的特性や耐久性をより安定させることができる。
従って、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV1)と、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV2)との差(IV1-IV2)の絶対値を0.001~0.1の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01~0.08の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0042】
又、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とすることが好ましい。
後述する結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度とも関係するが、このように非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を所定範囲内の値とすることにより、結晶性ポリエステル樹脂との間で、一部相分離しつつ、混合分散性が良好になるばかりか、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が容易になる。
従って、非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.65~0.83dL/gの範囲内の値とすることがより好ましく、0.7~0.8dL/gの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0043】
又、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.6~0.85dL/gの範囲内の値とすることが好ましい。
前述した後述する結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度とも関係するが、このように非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を所定範囲内の値とすることにより、非結晶性ポリエステル樹脂との間で、一部相分離しつつ、混合分散性が良好になるばかりか、幅広い温度範囲での熱収縮率の調整や、機械的特性や耐久性についての調整が容易になる。
従って、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度を0.65~0.83dL/gの範囲内の値とすることがより好ましく、0.7~0.8dL/gの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0044】
7.厚さ
ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さは、通常、10~200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように熱収縮前のフィルム厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することにより、均一な厚さに製造しやすくなるとともに、熱収縮率の制御や、最大収縮応力の制御も容易になって、収縮ムラの発生を防止しやすくなるためである。
従って、熱収縮前のフィルム厚さを20~100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、30~50μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0045】
8.ポリエステル系シュリンクフィルムの熱的特性等
(1)TD方向の熱収縮率1
ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、温度90℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率(A2)を40~80%未満の値とする旨の構成要件である。
この理由は、かかる90℃熱収縮率を40~80%未満に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、TD方向における、90℃熱収縮率を42~75%未満の範囲内の値とすることがより好ましく、45~70%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0046】
(2)TD方向の熱収縮率2
ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、TD方向における、温度70℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率(A3)を25%未満の値とする旨の構成要件である。
この理由は、かかる70℃熱収縮率を制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、TD方向における、70℃熱収縮率を5~23%の範囲内の値とすることがより好ましく、10~20%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
(3)MD方向の熱収縮率3
ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主収縮方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、温度80℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率(B1)を5%以下の値とする旨の構成要件である。
この理由は、かかるMD方向の80℃熱収縮率を5%以下の値に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主熱収縮方向において、良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、かかるMD方向における80℃熱収縮率を3%以下の範囲内の値とすることがより好ましく、1%以下の値とすることが更に好ましい。
【0048】
(4)MD方向の熱収縮率4
ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、主収縮方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、温度90℃、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率(B2)を10%以下の値とする旨の構成要件である。
この理由は、かかるMD方向の90℃熱収縮率を10%以下の値に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な熱収縮率が得られ、ひいては最大収縮応力も得られやすくなるためである。
従って、かかるMD方向における90℃熱収縮率を8%以下の値とすることがより好ましく、5%以下の値とすることが更に好ましい。
【0049】
(5)MD方向における延伸倍率
ポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における延伸倍率(平均MD方向延伸倍率、単に、MD方向延伸倍率と称する場合がある。)を100~200%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにMD方向延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、所定熱収縮率やその標準偏差等を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、微細なシワの発生を更に抑制できるためである。
従って、MD方向延伸倍率を105~180%の範囲内の値とすることがより好ましく、110~160%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
(6)TD方向における延伸倍率
ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における延伸倍率構成(平均TD方向延伸倍率、又は、単に、TD方向延伸倍率と称する場合がある。)を200~600%の範囲内の値とすることが好ましく、220~550%の範囲内の値とすることがより好ましく、250~500%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、このようにTD方向の延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、所定熱収縮率やその標準偏差等を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、微細なシワの発生を更に抑制できるためである。
【0051】
(7)ヘイズ値
熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのJIS K 7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができるためである。
より具体的には、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、5%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合があるためである。
一方、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
従って、構成(g)として、熱収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1~3%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~1%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0052】
(8)ポリエステル系シュリンクフィルムの構成
ポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01~10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1~1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0053】
又、
図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたとときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1~10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0054】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0055】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、
図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0056】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1~3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
又、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0057】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、
図1(a)等に例示するようなポリエステル系シュリンクフィルム10であって、全体量(100重量%)に対して、30~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記構成(a´)~(c´)を満足するポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a´):JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃未満の温度域に、下降変曲点を有する。
構成(b´):JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃以上の温度域に、上昇変曲点を有する。
構成(c´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
より具体的には、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)において、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、 下記構成(a´)~(e´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃未満の温度域に、貯蔵弾性率が低下する第1の変曲点を有する。
構成(b´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、100℃以上の温度域に、貯蔵弾性率が上昇する第2の変曲点を有する。
構成(c´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
構成(d´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成:(e´)第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が20℃以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて得られる貯蔵弾性率曲線において、異なる温度域に、それぞれ第1の変曲点(下降変曲点)と、第2の変曲点(上昇変曲点)を有することによって、ガラス領域と、ゴム弾性領域とのバランスが良くなって、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
なお、第2の実施形態の構成である非晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂の種類や、配合量、その他の熱収縮率やシュリンクフィルムの構成等については、第1の実施形態の構成と同様の内容とすることができる。
【0058】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、
図1(a)等に例示するようなポリエステル系シュリンクフィルム10であって、全体量(100重量%)に対して、30~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記構成(a´´)~(c´´)を満足するポリエステル系シュリンクフィルムである。
構成(a´´):JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、100℃未満の温度域に、第1の損失係数ピークを有する。
構成(b´´):JIS K 7244-4に準拠し、
図2~
図4(b)に示すように、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、100℃以上の温度域に、第1の損失係数ピークと逆方向に凸状である第2の逆ピークを有する。
構成(c´´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
より具体的には、全体量(100重量%)に対して、30~80重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、20~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂(但し、78℃のガラス転移温度を有する低結晶性ポリエステル樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂を除く。)と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、
非晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、おいて、テレフタル酸を100重量部に対して、エチレングリコールを50~80重量部と、ジエチレングリコールを5~20重量部と、1,4-シクロヘキサンジメタノール又はネオペンチルグリコールを20~50重量部、とからなり、
結晶性ポリエステル樹脂は、反応成分の全体量(100重量部)につき、テレフタル酸を90重量部以上、エチレングリコールを90重量部以上、とからなり、
下記構成(a´´)~(c´´)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法である。
構成(a´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、70℃以上、95℃以下の温度域に、第1の損失弾性ピークを有する。
構成(b´´):JIS K 7244-4に準拠し、動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失弾性率曲線において、110℃以上、140℃以下の温度域に、第1の損失弾性ピークと逆方向に凸状である第2の損失弾性ピークを有する。
構成(c´´):80℃の温水に10秒間浸漬したときの、主収縮方向における熱収縮率が30%以上である。
すなわち、所定配合組成に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて得られる損失弾性率曲線において、異なる温度域に、それぞれ第1の損失係数ピークと、第2の損失係数ピークを有することによって、ガラス領域と、ゴム弾性領域とのバランスが良くなって、所定温度における熱収縮率を、精度良く制御し、ひいては、耐シワ特性を向上させることができる。
なお、第3の実施形態の構成である非晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂の種類や、配合量、その他の熱収縮率やシュリンクフィルムの構成等については、第1の実施形態の構成と同様の内容とすることができる。
【0059】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、第1の実施形態~第3の実施形態のいずれかのポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
すなわち、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断し、更に、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0060】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、TD方向の熱収縮率の標準偏差が20%以下の場合には、
図7(a)~(d)示すように、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
一方、TD方向の熱収縮率の標準偏差が20%を超えたような場合には、
図8(a)~(d)に示すように、ボトル胴部の上部から下部において、ラベルをボトル周囲の形状に追従させることができない領域が発生し、更にはシワの発生も顕著に観察されることになる。
【0061】
[第5の実施形態]
第5の実施形態は、第1の実施形態~第3の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法に用いる、ポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法に関する実施形態である。
すなわち、典型的には、下記工程に沿って、所定のポリエステル系シュリンクフィルムを製造することが好ましい。
【0062】
1.原材料の準備及び混合工程
まず、原材料として、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した結晶性ポリエステル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0063】
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度260℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、10~100μm)の原反シートを得ることができる。
【0064】
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で、所定温度で熱固定させることによって、第1の実施形態~第3の実施形態の装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
【0065】
4.動的粘弾性測定装置を用いてなる評価工程
典型的には、第1の実施形態~第3の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムを製造するに際して、下記の手順に沿って、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いてなる評価工程を含むことが好ましい。
すなわち、被測定物として、所定のポリエステル系シュリンクフィルムを準備し、JISK7244-4に準拠して、動的粘弾性測定装置を用い、所定温度範囲において、貯蔵弾性率曲線、損失弾性率曲線、及び、損失係数(Tanδ)等の粘弾性特性を測定し、評価することが好ましい。
その際、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが所定範囲内の値であることを、予め確認しておくことが好ましい。
【0066】
5.その他
得られたポリエステル系シュリンクフィルムにつき、所定の加熱装置を用いて、所定温度、所定時間の条件の保持した状態の湯に浸漬したり、あるいは、加熱処理したりして、ポリエステル系シュリンクフィルムを熱収縮させて、熱収縮率を測定する。
又、ポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズやガラス転移点、或いは、各種熱特性を予め測定しておくことが好ましい。
又、得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、PETボトル等の被着体に装着し、その状態で、所定条件で加熱処理し、ポリエステル系シュリンクフィルムの均一収縮性等につき、評価することが好ましい。
【0067】
その他、作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、かかる所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの外観についての目視検査
2)厚さのばらつき測定
3)ヘイズ測定
4)ガラス転移点の測定
5)融点及び融解熱の測定
6)引張弾性率測定
7)引裂強度測定
8)SSカーブ測定
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
なお、実施例1等において用いたポリエステル系樹脂は、以下の通りである。
【0069】
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100重量部、ジオール:エチレングリコール63重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール24重量部、ジエチレングリコール13重量部からなる非晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:69.5℃、固有粘度:0.78dL/g)
【0070】
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100重量部、ジオール:エチレングリコール59.9重量部、1,4-シクロヘキサンジメタノール12.4重量部、ジエチレングリコール12.4重量部からなる非結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:75℃、固有粘度:0.78dL/g)
【0071】
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100重量部、ジオール:エチレングリコール70重量部、ネオペンチルグリコール28.2重量部、ジエチレングリコール12.4重量部からなる非結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:76.5℃、固有粘度:0.75dL/g)
【0072】
(APET1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%なる結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:無し、固有粘度:0.65dL/g)
【0073】
(APET2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%なる結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:無し、固有粘度:0.71dL/g)
【0074】
(PCR1)
ジカルボン酸:テレフタル酸98.6重量部、イソフタル酸1.4重量部、ジオール:エチレングリコール97.3重量部、ジエチレングリコール2.7重量部からなるリサイクル結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:無し、固有粘度:0.72dL/g)
【0075】
(PCR2)
ジカルボン酸:テレフタル酸98.6重量部、イソフタル酸1.4重量部、ジオール:エチレングリコール97.3重量部、ジエチレングリコール2.7重量部からなるリサイクル結晶性ポリエステル樹脂(ガラス転移点:無し、固有粘度:0.82dL/g)
【0076】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を70重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(APET1)を30重量部の割合で収容し、均一に混合攪拌して、それらを原材料とした。
次いで、この原料を絶乾状態にしたのち、押出温度260℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ100μmの原反シートを得た。
【0077】
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、予熱温度75℃、延伸温度75℃、延伸倍率(MD方向:100%、TD方向:500%)、熱固定温度60℃で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0078】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1:厚さのばらつき
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である30μmを基準値)を、マイクロメータを用いて測定し(n=6)、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:厚さのばらつきの平均が、基準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきの平均が、基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきの平均が、基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきの平均が、基準値±3.0μmの範囲内の値である。
【0079】
(2)評価2:TD方向の熱収縮率1
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、恒温槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(80℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、熱収縮率(A1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
熱収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ-熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:熱収縮率(A1)が40~50%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A1)が30~60%の範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:熱収縮率(A1)が20~70%の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:熱収縮率(A1)が20%未満又は70%を超える値である。
【0080】
(3)評価3:TD方向の熱収縮率2
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、恒温槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し、熱収縮させた。
次いで、所定温度(90℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、熱収縮率(A2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
熱収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ-熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:熱収縮率(A2)が45~70%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A2)が40~80%の範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:熱収縮率(A2)が35~90%の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:熱収縮率(A2)が35%未満又は90%を超える値である。
【0081】
(4)評価4:固有粘度
実施例に用いた各ポリエステル樹脂原料0.5gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタンの混合溶媒(重量比:60/40)50ml中に溶解した。
次いで、混合溶媒の温度を30℃とし、オストワルド粘度計を用いて、固有粘度(η)を測定し、表1に示す。
次いで、用いた非晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV1)と、結晶性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV2)との差(IV1-IV2)の絶対値を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:絶対値の差が0.05以下の値である。
〇:絶対値の差が0.08以下の値であって、上記◎の範囲外である。
△:絶対値の差が0.1以下の値であって、上記〇の範囲外である。
×:絶対値の差が0.1を超える値である。
【0082】
(5)評価5:耐シワ特性
市販の飲料水が充填された状態の円柱状PETボトル(容積:500ml)を準備した。
次いで、ポリエステル系シュリンクフィルムを幅26cmにスリットして得た長尺状のシュリンクフィルムに、長手方向に沿って幅1mmのミシン目を設け、幅方向の端部に1,3-ジオキソランを塗布した。
次いで、重ね代が約1cmとなるように、幅方向の端部同士を重ね合わせて接着し、直径約8cmの筒状ラベルとした。更に、この筒状ラベルを長手方向に16cm毎に切り出し、複数の筒状ラベルを得た。
次いで、当該筒状ラベルを準備した円柱状PETボトルの胴部に被せ、85℃に保持された蒸気トンネルの中を、ベルトコンベアの上にのせるとともに、6m/minの通過速度で移動させ、筒状ラベルが円柱状PETボトルの胴部の上部から下部にわたって密着するよう熱収縮させた。
次いで、熱収縮後の筒状ラベルを目視にて観察し、以下の基準に沿って、所定長さ(1cm以上)や所定幅(1mm以上)のシワが発生していないかにより、耐シワ特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:筒状ラベルの5個中、5個の全てに所定シワの発生が観察されなかった。
〇:筒状ラベルの5個中、3個以上に所定シワの発生が観察されなかった。
△:筒状ラベルの5個中、1個以上に所定シワの発生が観察されなかった。
×:筒状ラベルの5個中、5個の全てに所定シワの発生が観察された。
【0083】
(6)評価6:貯蔵弾性率
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、幅15mm×厚さ0.05mm(断面積0.75mm
2)、試料長(つかみ具間距離)15mmとし、切り出したものを試験片として準備した。
次いで、JISK7244-4に準拠して、動的粘弾性測定装置(TAインストルメンツ社製、DMA Q800)を用い、準備した試験片の粘弾性特性を測定した。
より具体的には、測定中に自動引張機構により適当な静的応力(1.4MPa)を作用させながら、液体窒素を冷却媒体として-30℃にしばらく保持した。
その後、昇温速度3℃/minで加熱していき、変位振幅15μm、周波数1Hzの正弦波を与えて、
図2(a)に示すように、貯蔵弾性率E´、損失弾性率E´´を測定し、更に、損失係数(tanδ)を算出した。
又、このとき、上限温度は150℃に設定したが、試料伸長に伴い設定静的応力が保持できなくなった時点で測定を終了した。
得られた50℃、70℃及び80℃における貯蔵弾性率を、それぞれ、表2に示す。
又、得られた貯蔵弾性率曲線から、第1の変曲点及び第2の変曲点の温度を算出し、それぞれ、表2に示す。
【0084】
(7)評価7:損失弾性率
又、上記動的粘弾性測定で得られた50℃、70℃及び80℃における損失弾性率を、それぞれ、表2に示す。
又、得られた損失弾性率曲線から、第1の損失弾性ピークの温度及び第2の損失弾性ピークの温度を算出し、それぞれ、表2に示す。
【0085】
(8)評価8:損失係数
又、上記動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率曲線から、損失係数(tanδ)の第1の損失係数ピーク温度を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:第1の損失係数ピーク温度が、78~90℃の範囲内の値である。
〇:第1の損失係数ピーク温度が、75~93℃の範囲内の値であって、上記◎以外の値である。
△:第1の損失係数ピーク温度が70~95℃の範囲内の値であって、上記〇以外の値である。
×:第1の損失係数ピーク温度が70℃未満、又は、95℃超えの値である。
【0086】
又、同様に、上記動的粘弾性測定で得られた貯蔵弾性率曲線から、損失係数(tanδ)の第2の損失係数ピーク温度を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:第2の損失係数ピーク温度が、120~130℃の範囲内の値である。
〇:第2の損失係数ピーク温度が、115~135℃の範囲内の値であって、上記◎以外の値である。
△:第2の損失係数ピーク温度が、110~140℃の範囲内の値であって、上記〇以外の値である。
×:第2の損失係数ピーク温度が110℃未満、又は、140℃超えの値である。
【0087】
(9)評価9:第2の変曲点と第1の損失係数ピークの温度差
上記動的粘弾性測定で得られた、第2の変曲点及び第1の損失係数ピークから、第2の変曲点の温度と第1の損失係数ピークの温度との差を算出し、以下の基準に準じて評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が40℃以上である。
〇:第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が20℃以上であって、上記◎の範囲外である。
△:第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が10℃以上であって、上記〇の範囲外である。
×:第2の変曲点の温度と、第1の損失係数ピーク温度との差が10℃未満の値である。
【0088】
[実施例2~8]
実施例2~8において、表1に示すように、それぞれ用いる樹脂の種類等を変えて、実施例1と同様に、各種ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に、厚さのばらつき、熱収縮率(A1、A2)、及び、貯蔵弾性率等を評価した。結果を表1~2に示す。
【0089】
すなわち、実施例2において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を30重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(APET1)を70重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にして、
図2(b)に示すように、粘弾性特性等を評価した。結果を表1~2に示す。
【0090】
又、実施例3において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、結晶性ポリエステル樹脂(APET2)を30重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図2(c)に示すように、粘弾性特性等を評価した。結果を表1~2に示す。
【0091】
又、実施例4において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、結晶性ポリエステル樹脂(APET2)を用い、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を30重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(APET2)を70重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図3(a)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0092】
又、実施例5において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、リサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR1)を30重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図3(b)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0093】
又、実施例6において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、リサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR1)を用い、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を30重量部及びリサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR1)を70重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図3(c)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0094】
又、実施例7において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、リサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR2)を30重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図4(a)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0095】
又、実施例8において、結晶性ポリエステル樹脂(APET1)のかわりに、リサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR2)を用い、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を30重量部及びリサイクル結晶性ポリエステル樹脂(PCR2)を70重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図4(b)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0096】
[比較例1]
比較例1において、表1に示すように、非結晶性ポリエステル樹脂の種類を変えて、実施例1と同様に、各種ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に、厚さのばらつき、熱収縮率(A1、A2)、及び、動的粘弾性測定等を評価した。
【0097】
すなわち、比較例1において、結晶性ポリエステル樹脂を用いず、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)100重量部を原材料とし、押出条件を変えて、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様にし、
図4(c)に示すように、粘弾性特性等を評価した。得られた結果を表1~2に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
[実施例9~10]
実施例9~10において、非結晶性ポリエステルとして、PETG1のかわりに、PETG2及びPETG3に、それぞれ変えた以外は、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価した。
その結果、実施例1とほぼ同様の、それぞれ厚さのばらつき、熱収縮率(A1、A2)、及び、動的粘弾性測定等の結果が得られることを確認した。
【0101】
[比較例2~3]
比較例2~3において、非結晶性ポリエステルとして、PETG1のかわりに、PETG2及びPETG3に、それぞれ変えた以外は、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価した。
その結果、比較例2~3において、それぞれ比較例1とほぼ同様の、厚さのばらつき、熱収縮率(A1、A2)、及び、動的粘弾性測定等の結果が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、所定のポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、動的粘弾性測定装置を用いて複数温度領域の損失係数等を測定し、それぞれ所定範囲内に制御することにより、熱収縮特性や耐しわ特性等を効率的かつ精度良く管理できるようになった。
従って、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、各種PETボトル等に適用することができ、汎用性を著しく広げることができ、その産業上の利用可能性は極めて高いと言える。
【要約】
複数の温度領域で、損失係数等が制御された、耐しわ特性に優れたポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法を提供する。
全体量に対して、30~90重量%の非晶性ポリエステル樹脂と、10~70重量%の結晶性ポリエステル樹脂と、を含むポリエステル系樹脂組成物に由来したポリエステル系シュリンクフィルムの被着体に対する使用方法であって、(a)動的粘弾性測定装置を用いて得られる損失係数において、100℃未満の温度域に第1の損失係数ピークを有し、(b)同様にして得られる損失係数において、100℃以上の温度域に第2の損失係数ピークを有し、更に、(c)80℃の温水に10秒間浸漬したときの熱収縮率が30%以上である。
【選択図】
図2