(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】光源装置、観察システムおよびカラーバランス補正方法
(51)【国際特許分類】
H05B 45/28 20200101AFI20241202BHJP
H05B 45/22 20200101ALI20241202BHJP
H05B 47/155 20200101ALI20241202BHJP
H05B 45/12 20200101ALI20241202BHJP
H05B 45/18 20200101ALI20241202BHJP
【FI】
H05B45/28
H05B45/22
H05B47/155
H05B45/12
H05B45/18
(21)【出願番号】P 2024504307
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009422
(87)【国際公開番号】W WO2023166710
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】西尾 真博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和人
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131256(WO,A1)
【文献】特開2015-165641(JP,A)
【文献】特開2006-318773(JP,A)
【文献】特開2015-62656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0400181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源と、
前記複数の光から生成された照明光を外部に出射する光出射部と、
特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタであって、前記複数の光源のうち少なくとも1つの光源から出射される少なくとも1つ
の光が前記1以上の光学フィルタを通過する、1以上の光学フィルタと、
前記少なくとも1つの光源の現在の温度をそれぞれ検出する少なくとも1つの温度センサと、
前記光学フィルタを通過する前の前記少なくとも1つの光の現在の光量をそれぞれ検出する少なくとも1つの光量センサと、
記憶部と、
プロセッサと、を備え、
前記記憶部が、前記少なくとも1つの光源の各々の第1相関情報および第2相関情報を記憶し、
前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、
前記第2相関情報が、前記スペクトル情報と前記光出射部での前記光の光量との間の関係を示し、
前記プロセッサが、
前記現在の温度と前記第1相関情報とに基づいて前記少なくとも1つの光の各々の前記スペクトル情報の変化量を算出し、
該スペクトル情報の変化量と前記第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記光出射部での前記少なくとも1つの光の各々の光量の変化量を算出し、
該光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記少なくとも1つの光源の各々の光量補正量を算出する、光源装置。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記光量補正量に基づいて、前記少なくとも1つの光源の各々が出射する前記光の光量を所定の目標光量に補正する、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記スペクトル情報は、前記光源が出射する前記光のスペクトルの中心波長、波長幅および形状の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記第1相関情報が、基準温度における前記中心波長を含み、
前記プロセッサが、
前記少なくとも1つの光源の各々の前記現在の温度と前記基準温度と間の温度変化量を算出し、
該温度変化量と前記第1相関情報とに基づいて前記少なくとも1つの光の各々の前記中心波長のシフト量を算出し、
該シフト量と前記第2相関情報とに基づいて、前記中心波長のシフトに起因する前記光出射部での前記少なくとも1つの光の各々の光量の変化量を算出する、請求項3に記載の光源装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記光学フィルタが、通過帯域の短波長側にカット帯域を有するローカット特性を有し、前記通過帯域内の波長の光を通過させ、前記カット帯域内の波長の光をカットし、
前記通過帯域と前記カット帯域との間の境界のカットオフ波長が、前記少なくとも1つの
前記光学フィルタに入射する光の中心波長よりも短波長側に配置される、請求項1に記載の光源装置。
【請求項6】
前記照明光における光量の寄与が最も大きい光が通過する前記光学フィルタが、前記寄与が最も大きい光に対して前記ローカット特性を有する、請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
少なくとも1つの前記光学フィルタが、通過帯域の短波長側にカット帯域を有するローカット特性と、通過帯域の長波長側にカット帯域を有するハイカット特性と、を有し、前記通過帯域内の波長の光を通過させ、前記カット帯域内の波長の光をカットし、
前記ローカット特性の前記通過帯域と前記カット帯域との間の境界の第1カットオフ波長が、前記少なくとも1つの
前記光学フィルタに入射する光の中心波長よりも短波長側に配置され、
前記ハイカット特性の前記通過帯域と前記カット帯域との間の境界の第2カットオフ波長が、前記少なくとも1つの
前記光学フィルタに入射する光の中心波長よりも長波長側に配置され、
前記第1カットオフ波長と前記中心波長との間の波長差が、前記第2カットオフ波長と前記中心波長との間の波長差よりも小さい、請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記照明光における光量の寄与が最も大きい光が通過する前記光学フィルタが、前記寄与が最も大きい光に対して前記ローカット特性を有する、請求項7に記載の光源装置。
【請求項9】
前記スペクトル情報が、前記光のスペクトルの前記中心波長、前記波長幅および前記形状を含む、請求項3に記載の光源装置。
【請求項10】
光源装置と、
該光源装置から出射された照明光によって照明された被写体を撮像し画像信号を生成する撮像部と、
前記画像信号を処理する画像処理部と、
記憶部と、
プロセッサと、を備え、
前記光源装置が、
相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源と、
前記複数の光から生成された前記照明光を外部に出射する光出射部と、
特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタであって、前記複数の光源のうち少なくとも1つの光源から出射される少なくとも1つ
の光が前記1以上の光学フィルタを通過する、1以上の光学フィルタと、
前記少なくとも1つの光源の現在の温度をそれぞれ検出する少なくとも1つの温度センサと、
前記光学フィルタを通過する前の前記少なくとも1つの光の現在の光量をそれぞれ検出する少なくとも1つの光量センサと、を備え、
前記記憶部が、前記少なくとも1つの光源の各々の第1相関情報および第2相関情報を記憶し、
前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、
前記第2相関情報が、前記スペクトル情報と前記光出射部での前記光の光量との間の関係を示し、
前記プロセッサが、
前記現在の温度と前記第1相関情報とに基づいて前記少なくとも1つの光の各々の前記スペクトル情報の変化量を算出し、
該スペクトル情報の変化量と前記第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記光出射部での前記少なくとも1つの光の各々の光量の変化量を算出し、
該光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記少なくとも1つの光源の各々の光量補正量を算出し、
前記画像処理部が、前記光量補正量に基づいて、前記画像信号から生成される画像の各色の信号値を補正する、観察システム。
【請求項11】
光源から出射される光の光量を補正するカラーバランス補正方法であって、前記光源は、相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源のうちの1つであり、前記光源から出射される前記光は、特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタを通過し、
前記光源の現在の温度を検出し、
前記1以上の光学フィルタを通過する前の前記光の現在の光量を検出し、
前記現在の温度と第1相関情報とに基づいて前記光のスペクトル情報の変化量を算出し、前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、
前記スペクトル情報の変化量と第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記1以上の光学フィルタを通過した後の前記光の光量の変化量を算出し、前記第2相関情報が、前記光のスペクトル情報と前記1以上の光学フィルタを通過した後の前記光の光量との間の関係を示し、
前記光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記光源の光量補正量を算出する、カラーバランス補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、観察システムおよびカラーバランス補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLEDから発せられた複数色のLED光を混合することによって所望の色の照明光を生成する光源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、LEDの温度変化によって、LEDから発せられる光の波長は変化する。したがって、照明光の色を一定にするために、温度に基づいて各LEDの出力が制御される。特許文献1では、各色のLEDの温度に対する発光ピーク波長変動データと、複数のLEDが実装されたLEDユニットの温度とに基づいて各色のLEDへの供給電力を制御することによって、照明光の色を一定に維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源装置には、複数色の光を混合するダイクロイックミラーおよび特定の波長帯域の光のみを透過させる特殊光フィルタのように、特定の分光透過特性を有する光学素子が設けられることがある。LEDの温度変化によって、光学素子を通過した後の各光の光量が変化する。したがって、光が光学素子を通過する場合、光が光学素子を通過しない場合と比較して、温度変化に因る波長シフトが照明光のカラーバランスに及ぼす影響が大きくなる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数の光源からの光が特定の分光透過特性を有する光学素子を経由する構成において、温度変化に関わらず照明光のカラーバランスを一定に維持することができる光源装置、観察システムおよびカラーバランス補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源と、前記複数の光から生成された照明光を外部に出射する光出射部と、特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタであって、前記複数の光源のうち少なくとも1つの光源から出射される少なくとも1つの光が前記1以上の光学フィルタを通過する、1以上の光学フィルタと、前記少なくとも1つの光源の現在の温度をそれぞれ検出する少なくとも1つの温度センサと、前記光学フィルタを通過する前の前記少なくとも1つの光の現在の光量をそれぞれ検出する少なくとも1つの光量センサと、記憶部と、プロセッサと、を備え、前記記憶部が、前記少なくとも1つの光源の各々の第1相関情報および第2相関情報を記憶し、前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、前記第2相関情報が、前記スペクトル情報と前記光出射部での前記光の光量との間の関係を示し、前記プロセッサが、前記現在の温度と前記第1相関情報とに基づいて前記少なくとも1つの光の各々の前記スペクトル情報の変化量を算出し、該スペクトル情報の変化量と前記第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記光出射部での前記少なくとも1つの光の各々の光量の変化量を算出し、前記光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記少なくとも1つの光源の各々の光量補正量を算出する、光源装置である。
【0007】
本発明の他の態様は、光源装置と、該光源装置から出射された照明光によって照明された被写体を撮像し画像信号を生成する撮像部と、前記画像信号を処理する画像処理部と、記憶部と、プロセッサと、を備え、前記光源装置が、相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源と、前記複数の光から生成された照明光を外部に出射する光出射部と、特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタであって、前記複数の光源のうち少なくとも1つの光源から出射される少なくとも1つの光が前記1以上の光学フィルタを通過する、1以上の光学フィルタと、前記少なくとも1つの光源の現在の温度をそれぞれ検出する少なくとも1つの温度センサと、前記光学フィルタを通過する前の前記少なくとも1つの光の現在の光量をそれぞれ検出する少なくとも1つの光量センサと、を備え、前記記憶部が、前記少なくとも1つの光源の各々の第1相関情報および第2相関情報を記憶し、前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、前記第2相関情報が、前記スペクトル情報と前記光出射部での前記光の光量との間の関係を示し、前記プロセッサが、前記現在の温度と前記第1相関情報とに基づいて前記少なくとも1つの光の各々の前記スペクトル情報の変化量を算出し、該スペクトル情報の変化量と前記第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記光出射部での前記少なくとも1つの光の各々の光量の変化量を算出し、該光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記少なくとも1つの光源の各々の光量補正量を算出し、前記画像処理部が、前記光量補正量に基づいて、前記画像信号から生成される画像の各色の信号値を補正する、観察システムである。
【0008】
本発明の他の態様は、光源から出射される光の光量を補正するカラーバランス補正方法であって、前記光源は、相互に異なるスペクトルを有する複数の光をそれぞれ出射する複数の光源のうちの1つであり、前記光源から出射される前記光は、特定の分光透過特性をそれぞれ有する1以上の光学フィルタを通過し、前記光源の現在の温度を検出し、前記1以上の光学フィルタを通過する前の前記光の現在の光量を検出し、前記現在の温度と第1相関情報とに基づいて前記光のスペクトル情報の変化量を算出し、前記第1相関情報が、前記光源の温度と該光源が出射する前記光のスペクトル情報との間の関係を示し、前記スペクトル情報の変化量と第2相関情報とに基づいて、前記スペクトル情報の変化に起因する前記1以上の光学フィルタを通過した後の前記光の光量の変化量を算出し、前記第2相関情報が、前記光のスペクトル情報と前記1以上の光学フィルタを通過した後の前記光の光量との間の関係を示し、前記光量の変化量と前記現在の光量とに基づいて前記光源の光量補正量を算出する、カラーバランス補正方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の光源からの光が特定の分光透過特性を有する光学素子を経由する構成において、温度変化に関わらず照明光のカラーバランスを一定に維持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る光源装置の全体構成図である。
【
図2】RDIフィルタの分光透過特性と、RDIモードにおける照明光のスペクトルとを示す図である。
【
図3】WLIモードおよびRDIモードにおける照明光のスペクトルを示す図である。
【
図4】ダイクロイックミラーおよびRDIフィルタを通過することによるアンバー光のスペクトルの変化を説明する図である。
【
図5B】第1相関情報の一例を説明するもう1つの図である。
【
図7】第1相関情報を取得する準備工程を示すフローチャートである。
【
図8】
図1の光源装置によって実行されるカラーバランス補正方法を示すフローチャートである。
【
図9A】ダイクロイックミラーのローカット特性を説明する図である。
【
図9B】ダイクロイックミラーのハイカット特性を説明する図である。
【
図9C】ダイクロイックミラーのローカット特性およびハイカット特性が混在する状態を説明する図である。
【
図10】LEDの温度上昇に因る、緑、アンバーおよび赤の光の光量の変化を説明する図である。
【
図11】カラーバランス補正のためにLEDに供給される電流量を説明する図である。
【
図12】スペクトル情報としてのスペクトルの波長幅および形状を説明する図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る光源装置および観察システムの全体構成図である。
【
図15】
図14の観察システムによって実行されるカラーバランス補正方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る光源装置1について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る光源装置1は、複数の光源21,22,23,24,25と、光出射部3と、複数の光学フィルタ41,42,43,44,45と、複数の温度センサ51,52,53,54,55と、複数の光量センサ61,62,63,64,65と、記憶部7と、プロセッサ8と、を備える。
【0012】
複数の光源21,22,23,24,25は、相互に異なるスペクトルを有する複数の光Lv,Lb,Lg,La,Lrをそれぞれ出射する。本実施形態において、複数の光源21,22,23,24,25は、紫(V)、青(B)、緑(G)、アンバー(A)および赤(R)の光Lv,Lb,Lg,La,Lrをそれぞれ出射する5つのLEDである。V光Lv、B光Lb、G光Lg、A光LaおよびR光Lrの中心波長はそれぞれ、415nm、455nm、575nm、600nmおよび630nmである。ここで中心波長とは、各光においてピーク波長が1つの場合はピーク波長を指し、複数のピーク波長を有する場合には複数のピーク波長のうち相対強度が最大のピーク波長を指す。
光源の数は、2以上の任意の数であってもよい。
【0013】
B-LED22、G-LED23、A-LED24およびR-LED25の光軸は、相互に並列であり、V-LED21の光軸と交差している。4つのLED22,23,24,25は、波長の順に配列し、波長が最も短いB-LED22がV-LED21に近い側に配置されている。
光出射部3は、V-LED21の光軸上または光軸の延長上に配置され、複数の光Lv,Lb,Lg,La,Lrから生成された照明光Lを光源装置1の外部に出射する。
一例では、光出射部3は、光源装置1の各構成部品を覆う筐体14上に配置され、光源からの光を筐体14の外部へ射出するための孔である。当該孔は、円形状でも多角形状等、光を外部へ射出できるものであればいかなる形状であってもよい。光源装置1が内視鏡用光源装置等の場合には、当該孔に対して内視鏡のライトガイドのような導光部材が嵌合されてもよい。ここで、ライトガイドは、光を光出射部3から内視鏡先端の照明光学系へ導光する光ファイバなどから構成される。
【0014】
光学フィルタは、複数のダイクロイックミラー41,42,43,44と、特殊光フィルタ45と、を含む。各光学フィルタ41,42,43,44,45は、特定の分光透過特性を有する。各光Lv,Lb,Lg,La,Lrは、各LED21,22,23,24,25から光出射部3までの間に、1以上の光学フィルタ41,42,43,44,45を通過する。
本明細書において、光が光学フィルタを通過するとは、光が光学フィルタを透過する、または、光が光学フィルタによって反射されることを意味する。
【0015】
ダイクロイックミラー41,42,43,44は、V-LED21の光軸が他のLED22,23,24,25の光軸と交差する位置にそれぞれ配置されている。LED21,22,23,24,25から出射された光Lv,Lb,Lg,La,Lrは、レンズ9によって平行光に変換された後にダイクロイックミラー41,42,43,44にそれぞれ入射する。光出射部3と、光出射部3に最も近いダイクロイックミラー44との間には、照明光Lを集束光に変換するためのレンズ10が配置されていてもよい。
【0016】
ダイクロイックミラー41,42,43,44は、入射した光Lv,Lb,Lg,La,Lrを透過または反射させることによって5つの光Lv,Lb,Lg,La,Lrを混合する。
具体的には、ダイクロイックミラー41は、V光Lvを透過させ、B光Lbを反射する。ダイクロイックミラー42は、V光LvおよびB光Lbを透過させ、G光Lgを反射する。ダイクロイックミラー43は、V光Lv、B光LbおよびG光Lgを透過させ、A光Laを反射する。ダイクロイックミラー44は、V光Lv、B光Lb、G光LgおよびA光Laを透過させ、R光Lrを反射する。
【0017】
特殊光フィルタ45は、赤色光観察(RDI)用のRDIフィルタであり、光出射部3と、ダイクロイックミラー44との間の光路に配置される。
図2に示されるように、RDIフィルタ45は、485nm~550nmの透過帯域と、600nm~680nmの透過帯域とを有し、少なくともG光Lg、A光LaおよびR光Lrから、G、AおよびRの光を含む照明光Lを生成する。RDIフィルタ45は、光路から取り外し可能であり、RDIモードのときに光路上に配置される。
図2において、実線のスペクトルは、LED23,24,25の温度変化前の照明光Lのスペクトルを示し、破線のスペクトルは、LED23,24,25の温度変化後の照明光Lのスペクトルを示している。
【0018】
図3は、照明光Lのスペクトルの例を示している。白色光観察(WLI)モードにおいて、RDIフィルタ45が光路から取り外され、白色の照明光Lが生成される。RDIモードにおいて、RDIフィルタ45が光路に配置され、緑、アンバーおよび赤の光を含む照明光Lが生成される。
【0019】
各LED21,22,23,24,25が出射する各光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量およびスペクトルは、各LED21,22,23,24,25の温度に依存する。一般に、LEDの温度が高くなるにつれて、LEDが出射する光の光量は低下する。また、一般に、LEDの温度が高くなるにつれて、LEDが出射する光の波長は長波長側にシフトし、光のこのような波長シフトによって、光学フィルタ41,42,43,44,45を通過後の光量が変化する。したがって、LED21,22,23,24,25の温度変化によって、光出射部3での照明光Lのカラーバランスおよび光量が変化する。照明光Lのカラーバランスとは、照明光Lを構成する複数の色の光の間での光量の比である。
【0020】
図4は、一例として、光量が一定の状態でのA光Laの波長のシフトに因る、ダイクロイックミラー43,44を通過後(中段)およびRDIフィルタ45を通過後(下段)のA光Laのスペクトルの変化を示している。中段のスペクトルは、ダイクロイックミラー43において反射されダイクロイックミラー44を透過した後のA光Laのスペクトルを示している。
【0021】
図4から分かるように、波長シフトによって、光学フィルタ43,44,45を通過後のA光Laの光量は変化する。例えば、ダイクロイックミラー43,44に関して、長波長側への波長シフトによってダイクロイックミラー44を透過するA光Laの光量が低下し、短波長側への波長シフトによってダイクロイックミラー43において反射されるA光Laの光量が低下する。このことは、温度変化に因る光出射部3での各光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量の変化は、各LED21,22,23,24,25の光量の変化と、波長シフトに起因する光量の変化とを含むことを意味する。
【0022】
複数の温度センサ51,52,53,54,55は、複数のLED21,22,23,24,25にそれぞれ設けられ、複数のLED21,22,23,24,25の現在の温度Tcurをそれぞれ検出する。
複数の光量センサ61,62,63,64,65は、複数のLED21,22,23,24,25が出射する光Lv,Lb,Lg,La,Lrの現在の光量Qcurをそれぞれ検出する。各光量センサ6は、光学フィルタ41,42,43,44,45を通過する前の光Lv,Lb,Lg,La,Lrの現在の光量Qcurをそれぞれ検出する。したがって、光量センサ61,62,63,64,65は、LED21,22,23,24,25と、LED21,22,23,24,25からの光が最初に通過するダイクロイックミラー41,42,43,44との間にそれぞれ配置される。
【0023】
光源装置1は、LED21,22,23,24,25を制御する制御基板11を備え、記憶部7およびプロセッサ8は制御基板11に搭載されている。
記憶部7は、RAMのような揮発性のメモリと、ROMのような不揮発性の記憶媒体とを有する。記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であり、後述するカラーバランス補正方法を光源装置1に実行させるためのカラーバランス補正プログラムを記憶している。
記憶部7は、各LED21,22,23,24,25の第1相関情報および第2相関情報を記憶する。第1相関情報および第2相関情報は、LED21,22,23,24,25毎に準備され記憶部7に記憶される。
【0024】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第1相関情報は、LED21、22、23、24または25の温度と、光Lv、Lb、Lg、LaまたはLrのスペクトル情報と、の間の関係を示す情報である。第1相関情報は、後述する準備工程において取得され記憶される。
図6に示されるように、第2相関情報は、光Lv、Lb、Lg、LaまたはLrのスペクトル情報と、光出射部3での光Lv、Lb、Lg、LaまたはLrの光量と、の間の関係を示す情報である。このような第2相関情報は、理論的にまたは実験的に得られる。第2相関情報は、スペクトル情報と光量との間の関係を示す式として記憶部7に記憶されていてもよく、複数のスペクトル情報と複数の光量とが相互に対応付けられたテーブルとして記憶部7に記憶されていてもよい。
本実施形態において、スペクトル情報は、光Lv、Lb、Lg、LaまたはLrのスペクトルの中心波長λcである。
【0025】
図7は、第1相関情報を準備する準備工程を示している。準備工程は、光源装置1の出荷前または出荷時に、工場等においてLED21,22,23,24,25毎に作業者によって実行される。
以下、準備工程について、A-LED24の第1相関情報を準備する場合を例に挙げて説明する。他のLED21,22,23,25の第1相関情報も、A-LED24の第1相関情報と同様にして準備される。
【0026】
A-LED24のみを発光させた後(ステップS1)、A-LED24の現在の温度が温度センサ54によって計測され(ステップS2)、計測された現在の温度が基準温度Trefとして記録される(ステップS3)。
図5Aに示されるように、A-LED24の光量(A-LED24に供給される電流量)が増加すると、A-LED24の温度センサ54によって計測される温度の値も増加する。よって、基準温度Trefは、光量Qrefの状態(A-LED24に供給される電流量)を保持した場合の温度として計測する必要がある。
【0027】
次に、基準温度TrefでのA光Laの中心波長λcが計測され(ステップS4)、計測された中心波長λcが記録される(ステップS5)。
図5Bに示されるようにA-LED24の光量が増加すると、中心波長λcの値も増加する。よって、中心波長λcは、光量Qrefの状態を保持した場合、つまり基準温度Trefでの中心波長の値である。
【0028】
中心波長λcは、光学フィルタ43,44,45を通過前のA光Laの中心波長λcである。
図4に示されるように、ダイクロイックミラー43,44を通過することによる中心波長λcの変化がほとんど生じず、ダイクロイックミラー44の前後において中心波長λcが相互に等しいまたは略等しい場合、中心波長λcは、ダイクロイックミラー43,44の後において計測されてもよい。
【0029】
次に、基準温度Trefでの光量Qref,Qref’が計測され(ステップS6)、計測された光量Qref,Qref’が記録される(ステップS7)。
光量Qrefは、光学フィルタ43,44,45を通過する前のA光Laの光量であり、光量センサ64によって計測される。
【0030】
光量Qref’は、光学フィルタ43,44,45を通過した後のA光Laの光量であり、光出射部3において特殊な計測器を使用して計測される。光量Qref’は、
図4の下段に示されるように、LED24から出射される光Laが、フィルタ43,44,45の分光透過特性の影響のみを受けた後の光量である。
【0031】
ステップS2~S7によって、基準温度Trefでの中心波長λcと光量Qref’とが得られる。これにより、
図6に示されるように、第2相関情報において、光量Qref’に対応する波長が基準温度Trefでの中心波長λcに決定される。
ここで、中心波長λcおよび光量Qref’は、通常、光源装置1のユーザが計測することができない。したがって、上述の準備工程を出荷前または出荷時に実行し、記憶部7に記憶させる必要が有る。
【0032】
LED24の温度および中心波長λcは、環境温度tと、LED24の光量と、によって決まる。そのため、ステップS2において、環境温度tおよびLED24の光量も計測され、LED24の異なる光量においてLED24の温度および中心波長λcが計測および記録される。したがって、
図5Aに示されるように、上記の準備工程によって、各光量におけるLED24の温度と中心波長λcとの相関関係を示す情報が取得され、さらに
図5Bに示されるように、LED24の温度変化に対する中心波長λcの変化を示す情報が取得される。
【0033】
プロセッサ8は、中央演算処理装置のようなハードウェアを有する。プロセッサ8は、駆動基板121,122,123,124,125を経由してLED21,22,23,24,25と接続され、検出基板13を経由してセンサ51,52,53,54,55,61,62,63,64,65と接続されている。駆動基板121,122,123,124,125は、LED21,22,23,24,25を発光させるための電流をLED21,22,23,24,25にそれぞれ供給する。
【0034】
プロセッサ8は、現在の温度Tcurおよび現在の光量Qcurに基づき、駆動基板121,122,123,124,125がLED21,22,23,24,25にそれぞれ供給する電流量を制御することによって、LED21,22,23,24,25が出射する光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量を補正し、それにより、照明光Lのカラーバランスおよび光量を補正する。
【0035】
次に、光源装置1が実行するカラーバランス補正方法について説明する。
図8に示されるように、LED21,22,23,24,25の発光開始後(ステップS11)、各LED21,22,23,24,25についてステップS12~S18が実行されることによって、各LED21,22,23,24,25が出射する各光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量が補正される。
以下、A光Laの光量を補正する場合について説明する。他の光Lv,Lb,Lg,Lrの光量も、A光Laの光量と同様にして補正される。
【0036】
カラーバランス補正方法は、A-LED24の現在の温度Tcurを温度センサ54によって検出するステップS12と、光学フィルタ43,44,45を通過する前のA光Laの現在の光量Qcurを光量センサ64によって検出するステップS13と、基準温度Trefからの現在の温度Tcurの温度変化量ΔTを算出するステップS14と、温度変化量ΔTおよび第1相関情報に基づいてA光Laの中心波長λcのシフト量Δλcを算出するステップS15と、シフト量Δλcおよび第2相関情報に基づいて光出射部3での光Laの光量Q’の変化量ΔQ’を算出するステップS16と、変化量ΔQ’および現在の光量Qcurに基づいてA-LED24の光量補正量を算出するステップS17と、光量補正量に基づいてA-LED24が出射するA光Laの光量を補正するステップS18と、を含む。
【0037】
LED21,22,23,24,25の発光開始後(ステップS1)、A-LED24の現在の温度Tcurおよび現在の光量Qcurがセンサ54,64によってそれぞれ検出される(ステップS12,S13)。プロセッサ8は、現在の温度Tcurおよび現在の光量Qcurをセンサ54,64から取得する。
【0038】
次に、プロセッサ8は、基準温度Trefからの現在の温度Tcurの温度変化量ΔTを算出し(ステップS14)、温度変化量ΔTおよび第1相関情報に基づいて中心波長λcのシフト量Δλcを算出する(ステップS15)。
図5Bに示されるように、シフト量Δλcは、LED24の温度が基準温度Trefから現在の温度Tcurまで変化したことに因る中心波長λcの変化量である。
【0039】
次に、プロセッサ8は、シフト量Δλcおよび第2相関情報に基づいて、光出射部3でのA光Laの光量の変化量ΔQ’を算出する(ステップS16)。
図6に示されるように、光量変化量ΔQ’は、中心波長λcがシフト量Δλcだけ変化したことに起因する光量Q’の変化量である。すなわち、光量変化量ΔQ’は、温度変化に因るA-LED24の光量Qの変化を含まず、波長シフトおよび光学フィルタ43,44,45の分光透過特性のみに起因する変化量である。
【0040】
次に、プロセッサ8は、光量変化量ΔQ’と現在の光量Qcurとから、A-LED24の光量補正量を算出する(ステップS17)。
例えば、プロセッサ8は、現在の光量Qcurの基準温度Trefでの光量Qrefからの変化量ΔQを算出し、変化量ΔQと光量変化量ΔQ’との和を光量補正量として算出する。光量補正量は、A-LED24の温度が基準温度Trefから現在の温度Tcurまで変化したことによる、光出射部3でのA光Laの光量の総変化量である。
【0041】
次に、プロセッサ8は、駆動基板124を制御することによって、A-LED24が出射するA光Laの光量を光量補正量だけ変化させる(ステップS18)。これにより、光出射部3でのA光Laの光量が所定の目標光量に補正される。例えば、A-LED24の温度上昇によって、光出射部3でのA光Laの光量が所定の目標光量から光量補正量だけ増加している場合、プロセッサ8は、光量補正量に相当する分だけA-LED24に供給する電流量を低下させることによって、光出射部3でのA光Laの光量を目標光量まで低下させる。
【0042】
プロセッサ8は、全てのLED21,22,23,24,25について、ステップS11~S18を実行することによって、光出射部3での全ての光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量を各々の目標光量に補正する。これにより、光出射部3から出射される照明光Lのカラーバランスおよび光量が、LED21,22,23,24,25の温度変化に関わらず、所定のカラーバランスおよび所定の光量に維持される。
【0043】
このように、本実施形態によれば、第1相関情報を用いて、各LED21,22,23,24,25の現在の温度Tcurから、温度変化に因る各光Lv,Lb,Lg,La,Lrのスペクトル情報の変化量Δλcが予測される。そして、第2相関情報を用いて、変化量Δλcから、波長シフトおよび光学フィルタ41,42,43,44,45の分光透過特性に起因する光出射部3での各光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量変化量ΔQ’が予測される。
【0044】
このように予測された変化量ΔQ’を用いることによって、各光Lv,Lb,Lg,La,Lrが通過する光学フィルタ41,42,43,44,45の分光透過特性を考慮して各LED21,22,23,24,25が出射する各光Lv,Lb,Lg,La,Lrの光量を補正し、温度変化に関わらず照明光Lのカラーバランスおよび光量を一定に維持することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、現在の温度Tcurおよびスペクトル情報の絶対値ではなく、温度変化量ΔTおよびこれから推測されるスペクトル情報の変化量Δλcを用いることによって、LED21,22,23,24,25および光源装置1の個体差を考慮せずとも、カラーバランスを良好に補正することができる。
【0046】
上記実施形態において、ダイクロイックミラー41,42,43,44のうち少なくとも1つは、通過する光に対してローカット特性を有することが好ましい。もしくは、ローカット特性とハイカット特性とが混在する場合は、ローカット特性の寄与度がハイカット特性の寄与度よりも高いことが好ましい。つまり、寄与度が高いということは、中心波長λcとカットオフ波長λcutとの間の波長差が小さいことを意味する。
【0047】
図9Aは、ダイクロイックミラーのローカット特性を説明し、
図9Bは、ダイクロイックミラーのハイカット特性を説明している。
図9Cは、ローカット特性とハイカット特性とが混在した場合において、ローカット特性の寄与度がハイカット特性の寄与度よりも高い状態を説明している。
図9Aおよび
図9B、
図9Cにおいて、実線のスペクトルは温度上昇前のスペクトルを示し、二点鎖線のスペクトルは、温度上昇後のスペクトルを示している。
【0048】
図9Aに示されるように、ローカット特性のダイクロイックミラーは、通過帯域と、通過帯域の短波長側のカット帯域と、を有する。
図9Aおよび
図9B、
図9Cにおいて、カット帯域は、ハッチングが掛けられている波長帯域である。ダイクロイックミラーは、通過帯域内の波長の光を反射することによって光出射部3へ向かって通過させ、カット帯域内の波長の光をカットする。通過帯域とカット帯域との間の境界のカットオフ波長λcutは、ダイクロイックミラーに入射する光の中心波長よりも短波長側に配置される。
一方、
図9Bに示されるように、ハイカット特性のダイクロイックミラーは、通過帯域と、通過帯域の長波長側のカット帯域とを有し、カットオフ波長λcutは、ダイクロイックミラーに入射する光の中心波長よりも長波長側に配置される。
【0049】
図9Cに示されるように、ローカット特性およびハイカット特性が混在する場合、ローカット特性の第1カットオフ波長λcut1と中心波長との間の波長差は、ハイカット特性の第2カットオフ波長λcut2と中心波長との間の波長差よりも小さい。ローカット特性とハイカット特性の混在は、例えば、ローカット特性を有するダイクロイックミラーとハイカット特性を有するダイクロイックミラーとの組み合わせによって実現される。
【0050】
図10は、G光Lgに対してダイクロイックミラー42がハイカット特性であり、A光LaおよびR光Lrに対してダイクロイックミラー43,44がそれぞれローカット特性である場合の、波長シフトに起因する光出射部3での光量の変化を示している。
ハイカット特性の場合、G-LED23の温度上昇に因る波長シフトによって、ダイクロイックミラー42を通過後のG光Lgの光量が減少し、それにより、光出射部3での光量がさらに低下する。したがって、カラーバランスの補正に必要なG-LED23への供給電流量が増大し、電流の可変範囲が大きく大型の駆動基板123が必要となる。
【0051】
一方、ローカット特性の場合、LED24,25の温度上昇に因る波長シフトによって、ダイクロイックミラー43,44を通過後のA光LaおよびR光Lrの光量が増加し、それにより、光出射部3での光量の低下が低減される。したがって、カラーバランスの補正に必要なLED24,25への供給電流量が低減され、電流の可変範囲が小さく小型の駆動基板を使用することができる。
【0052】
ローカット特性は、照明光Lにおける光量の寄与が大きい光に対して適用されることが、特に好ましい。
例えば、
図3に示されるように、RDIモードのとき、A光LaおよびR光Lrの光量の寄与が大きく、G光Lgの光量の寄与が小さい。したがって、ダイクロイックミラー43,44が、A光LaおよびR光Lrに対してそれぞれローカット特性であることが好ましい。
ローカット特性の場合、少ない電流量によって、光出射部3において大きな光量が得られる。したがって、小光量のLED24,25を使用することができる。
【0053】
図11は、温度上昇に因る、LED24,25に供給する電流の変化を示している。
例えば、LED24の温度が25℃から40℃へ上昇することによって、LED24が出射するA光Laの光量が低下する。
仮に、温度センサ54によって検出される光量Qcurの低下分だけLED24が出射するA光Laの光量を増大させる場合、LED24に供給される電流が、例えば、18Aから22Aまで増加される。
【0054】
ダイクロイックミラー43がローカット特性である場合、温度上昇によって、ダイクロイックミラー43を通過するA光Laの光量が増大する。したがって、電流を22Aに増加した場合、光出射部3におけるA光Laの光量が、25℃における目標光量よりも多くなる。すなわち、LED24に供給される電流量が過剰になる。よって、光出射部3におけるA光Laの光量を目標光量に補正するための電流は、22Aよりも少ない電流、例えば19Aで足りる。
【0055】
このように、ダイクロイックミラー43,44がローカット特性である場合、温度上昇に因る光出射部3での光量変化を補正するための電流の範囲は、温度センサ54,55によって検出される光量Qcurの低下分だけLED24が出射する光La,Lrの光量を増大させる場合の電流の可変範囲内に入る。
同様に、温度下降に因る光出射部3での光量変化を補正するための電流の範囲も、温度センサ54,55によって検出される光量Qcurの増加分だけLED24が出射する光La,Lrの光量を低下させる場合の電流の可変範囲内に入る。
したがって、従来の駆動基板の可変範囲を超える電流をLED24,25に供給する必要がなく、従来の可変範囲の駆動基板を使用することができる。
【0056】
上記実施形態において、スペクトル情報が中心波長λcであることとしたが、スペクトル情報が、中心波長λcに加えて、スペクトルの波長幅および形状の少なくとも一方を含んでいてもよい。
図12に示されるように、LEDの温度変化によって、中心波長λcのみならず、スペクトルの波長幅Aおよび形状も変化する。スペクトルの形状は、例えば、第1波長幅Bと第2波長幅Cとの比によって表される。第1波長幅Bは、中心波長λcの短波長側の波長幅であり、第2波長幅Cは、中心波長λcの長波長側の波長幅である。条件によっては、波長幅Aが変化せず、第1波長幅Bおよび第2波長幅Cが変化することがある。
RDIフィルタ45を通過後の光量の変化は、中心波長λcのシフトのみならず、波長幅A,B,Cの変化によっても引き起こされる。同様の補正方法によって、これらを考慮したカラーバランスの補正が可能である。
【0057】
図13は、中心波長λcおよび波長幅W(波長幅A,B,C)の全ての変化を考慮してカラーバランスを補正する場合の第1相関情報の例を示している。
LEDの温度、中心波長λcおよび波長幅は、LEDの光量および環境温度によって決まる。したがって、
図13に示されるように、LEDの光量および環境温度が異なる複数の状態1,2,3,4,…において、LED温度、中心波長および波長幅が計測および記録され、複数の状態1,2,3,4,…のテーブルまたは関係式が記憶部7に記憶される。環境温度tを検出する温度センサがさらに光源装置1に設けられてもよい。
【0058】
ここで、環境温度とLEDの温度および光量とは、光源装置1の使用時にユーザが計測することができる値であり、一方、中心波長、波長幅および光学フィルタ後の光量は、ユーザが計測することができない値であり、工場出荷前又は出荷時にしか計測することができない値である。
【0059】
本変形例において、環境温度tと、LEDの温度Tcurおよび光量Qcurとから、第1相関情報を用いて中心波長λcおよび波長幅Wが推測され、推測された中心波長λcおよび波長幅Wから、第2相関情報を用いて光出射部3での光量Q’が推測される。具体的には、現在の環境温度t、現在の温度Tcurおよび現在の光量Qcurの各々の基準値からの変化量Δt,ΔT,ΔQが算出される。そして、これら変化量Δt,ΔT,ΔQから、中心波長λcおよび波長幅Wの各々の変化量Δλc,ΔWが推測され、変化量Δλc,ΔWから、光出射部3での光量変化量ΔQ’が推測される。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る光源装置および観察システムについて説明する。
照明光Lのカラーバランスの変化によって、照明光Lによって照明される被写体Sの見かけの色が変化する。本実施形態は、光量補正量に基づいて画像の色を補正することによって、画像上での照明光Lの見かけのカラーバランスを補正する点において、第1実施形態と相違する。
本実施形態において、第1実施形態と異なる構成について説明し、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図14に示されるように、観察システム100は、光源装置1と、照明部20と、撮像部30と、画像処理部40と、を備える。例えば、観察システム100は、内視鏡を備える内視鏡システムまたは顕微鏡を備える顕微鏡システムであり、照明部20および撮像部30は、内視鏡または顕微鏡に設けられていてもよい。
【0062】
照明部20は、光源装置1の光出射部3と接続される照明光学系20aを備える。
図14において、照明光学系20aは、ライトガイドのような導光部材20bを経由して光出射部3と接続されている。照明光学系20aは、光出射部3から供給された照明光Lを被写体Sに向かって照射する。
撮像部30は、対物光学系30aと、撮像素子30bとを備える。対物光学系30aは、照明光Lによって照明された被写体Sからの光を受光し、被写体Sの光学像を形成する。撮像素子30bは、被写体Sの光学像を撮像し、被写体Sの画像信号を生成し、画像信号を画像処理部40に送信する。
【0063】
画像処理部40は、CPUのようなハードウェアを有するプロセッサ40aを備える。画像処理部40は、撮像素子30bから受信した画像信号を処理することによって被写体Sの画像を生成する。画像は、画像処理部40から表示装置50に送信され、表示装置50に表示される。
【0064】
画像内の被写体Sの色および明るさは、照明光Lのカラーバランスおよび光量に応じて変化する。プロセッサ40aは、光源装置1のプロセッサ8から各LED21,22,23,24,25の光量補正量を取得し、光量補正量に基づいて画像の信号値を補正する。これにより、プロセッサ40aは、画像内の被写体Sの色および明るさを、所定のカラーバランスおよび所定の光量の照明光Lによって被写体Sが照明されている場合と同じ色および同じ明るさに補正する。
【0065】
画像処理部40が補正する信号値は、撮像部30から画像処理部40に入力される撮像素子30bのRAW信号値であってもよい。
画像処理部40が補正する信号値は、RAW信号から生成された画像の各画素の信号値であってもよい。撮像素子30bは、画素アレイ上にRGBの原色フィルタまたはCMKYの補色フィルタを有する。撮像素子30bが補色フィルタを有する場合、補色から原色に色変換された後の各画素のR、G、Bの各々の信号値が補正されてもよい。または、デモザイキング処理後の各画素のR、G、Bの各々の信号値が補正されてもよい。
【0066】
図15は、本実施形態に係るカラーバランス補正方法を示している。
本実施形態に係るカラーバランス補正方法は、第1実施形態において説明したステップS11~S17と、ステップS19とを含む。
ステップS19において、画像処理部40のプロセッサ40aは、光源装置1から取得した各LED21,22,23,24,25の光量補正量から、画像の各色の補正値を算出する。例えば、画像がRGB形式である場合、プロセッサ40aは、R、GおよびBの補正値を算出する。補正値は、撮像素子30bの分光感度も考慮して決定されてもよい。
【0067】
次に、プロセッサ40aは、補正値を用いてR信号値、G信号値およびB信号値を補正し、補正された信号値を用いた画像を生成する。これにより、LED21,22,23,24,25の温度変化に因って照明光Lのカラーバランスおよび光量が変化したとしても、所定のカラーバランスおよび所定の光量の照明光Lによって被写体Sが照明されている場合と同じ色および同じ明るさの画像を生成することができる。すなわち、LED21,22,23,24,25の温度変化に関わらず、画像上での照明光Lの見かけのカラーバランスおよび見かけの光量を一定に維持することができる。
【0068】
本実施形態において、ステップS14~S17が、光源装置1のプロセッサ8によって実行されることとしたが、これに代えて、画像処理部40のプロセッサ40aによって実行されてもよい。この場合、第1相関情報および第2相関情報は、画像処理部40が備える記憶部に記憶され、画像処理部40は、センサ51,52,53,54,55,61,62,63,64,65によって検出された現在の温度Tcurおよび現在の光量Qcurを光源装置1から取得する。
あるいは、光源装置1および画像処理部40とは別に、第1相関情報および第2相関情報を記憶する記憶部と、ステップS14~S17を実行するプロセッサとが設けられていてもよい。
【0069】
上記第1および第2実施形態において、全ての光源21,22,23,24,25の光量補正量を算出することとしたが、光量補正量の算出は、少なくとも1つの光源についてのみ実行されてもよい。
すなわち、一部の光源から出射された光のみが光学フィルタを通過する場合、一部の光源のみ光量補正量を算出し、他の光源の光量補正量は算出しなくてもよい。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用を実施することができることは勿論である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせによって、種々の発明が抽出され得る。例えば、上記一実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。この発明は、添付のクレームによって限定される以外にはそれの特定の実施態様によって制約されない。
【符号の説明】
【0071】
1 光源装置
21,22,23,24,25 LED(光源)
3 光出射部
41,42,43,44 ダイクロイックミラー(光学フィルタ)
45 特殊光フィルタ(光学フィルタ)
51,52,53,54,55 温度センサ
61,62,63,64,65 光量センサ
7 記憶部
8 プロセッサ
20 照明部
30 撮像部
40 画像処理部
40a プロセッサ
100 観察システム