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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ガスケットおよび密封構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
F16J15/10 N
F16J15/10 R
F16J15/10 T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024517333
(86)(22)【出願日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2023016250
(87)【国際公開番号】W WO2023210627
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2024-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2022074738
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】新地 祐晟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徳朗
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-152472(JP,A)
【文献】特開2002-340191(JP,A)
【文献】特開2016-033401(JP,A)
【文献】特公昭47-037981(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材の孔の内周面と内側部材の外周面に接触して、大気空間と前記外側部材の内部空間を隔てるエラストマー製の円環状のガスケットであって、
第1の広幅部であって、
前記ガスケットの軸線方向において、前記孔の内周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第1の大径外周面と、
前記ガスケットの軸線方向において、前記内側部材の前記外周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第1の小径内周面と、
第1の端面と、
前記第1の大径外周面と前記第1の端面とがなす第1の外側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第1の外側角部と、
前記第1の小径内周面と前記第1の端面とがなす第1の内側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第1の内側角部と、
を有する第1の広幅部と、
第2の広幅部であって、
前記ガスケットの軸線方向において、前記孔の内周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第2の大径外周面と、
前記ガスケットの軸線方向において、前記内側部材の前記外周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第2の小径内周面と、
第2の端面と、
前記第2の大径外周面と前記第2の端面とがなす第2の外側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第2の外側角部と、
前記第2の小径内周面と前記第2の端面とがなす第2の内側角部と、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第2の内側角部と、
を有する第2の広幅部と、
第3の広幅部であって、
前記孔の内周面に接触する第3の大径外周面であって、前記孔の内周面に対して0.05mm以上の締め代を有する第3の大径外周面と、
前記内側部材の前記外周面に接触する第3の小径内周面であって、前記内側部材の前記外周面に対して0.05mm以上の締め代を有する第3の小径内周面と、
を有する第3の広幅部と、
前記第1の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第1の狭幅部であって、
前記孔の内周面から離れた第1の小径外周面であって、第1の外周溝を有する第1の小径外周面と、
前記内側部材の前記外周面から離れた第1の大径内周面であって、第1の内周溝を有する第1の大径内周面と、
を有する第1の狭幅部と、
前記第2の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第2の狭幅部であって、
前記孔の内周面から離れた第2の小径外周面であって、第2の外周溝を有する第2の小径外周面と、
前記内側部材の前記外周面から離れた第2の大径内周面であって、第2の内周溝を有する第2の大径内周面と、
を有する第2の狭幅部と、
を有し、
前記ガスケットの非圧縮状態で、
前記第1の大径外周面と前記第2の大径外周面の直径は、前記孔の内周面の直径に等しく、
前記第1の小径内周面と前記第2の小径内周面の直径は、前記内側部材の前記外周面の直径に等しく、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されている状態で、前記第1の外周溝と前記孔の内周面との間の最大距離、前記第2の外周溝と前記孔の内周面との間の最大距離、前記第1の内周溝と前記内側部材の前記外周面との間の最大距離、および前記第2の内周溝と前記内側部材の前記外周面との間の最大距離は、0.05mm以上である、
ガスケット。
【請求項2】
外側部材の孔の内周面と内側部材の外周面に接触して、大気空間と前記外側部材の内部空間を隔てるエラストマー製の円環状のガスケットであって、
第1の広幅部であって、
円柱状の第1の大径外周面と、
円柱状の第1の小径内周面と、
を有する第1の広幅部と、
第2の広幅部であって、
円柱状の第2の大径外周面と、
円柱状の第2の小径内周面と、
を有する第2の広幅部と、
第3の広幅部であって、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されていない場合、前記第1の大径外周面と前記第2の大径外周面の直径より大きい直径を有する第3の大径外周面と、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されていない場合、前記第1の小径内周面と前記第2の小径内周面の直径より小さい直径を有する第3の小径内周面と、
を有する第3の広幅部と、
前記第1の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第1の狭幅部であって、
第1の外周溝を有する第1の小径外周面と、
第1の内周溝を有する第1の大径内周面と、
を有する第1の狭幅部と、
前記第2の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第2の狭幅部であって、
第2の外周溝を有する第2の小径外周面と、
第2の内周溝を有する第2の大径内周面と、
を有する第2の狭幅部と、
を有し、
前記ガスケットの軸線方向において、前記第1の大径外周面の円柱状部分の長さ、前記第1の小径内周面の円柱状部分の長さ、前記第2の大径外周面の円柱状部分の長さ、および、前記第2の小径内周面の円柱状部分の長さは、前記第3の大径外周面の円柱状部分の長さ、および、前記第3の小径内周面の円柱状部分の長さより大き
前記ガスケットの非圧縮状態で、
前記第1の大径外周面と前記第2の大径外周面の直径は、前記孔の内周面の直径に等しく、
前記第1の小径内周面と前記第2の小径内周面の直径は、前記内側部材の前記外周面の直径に等しい、
ガスケット。
【請求項3】
前記ガスケットの非圧縮状態で、前記ガスケットの軸線を含む断面において、
前記第3の大径外周面は、径方向外側に向けて突出する半円形状を有し、
前記第3の小径内周面は、径方向内側に向けて突出する半円形状を有する、
請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記ガスケットの軸線に直交する平面に関して、前記ガスケットは、鏡像対称な形状を有する、
請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記第1の端面は、第1の突起を有し、
前記第2の端面は、第2の突起を有する、
請求項に記載のガスケット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のガスケットと、
前記外側部材と、
前記内側部材と、
を有する、密封構造。
【請求項7】
前記第1の大径外周面、前記第3の大径外周面および前記第2の大径外周面は、前記孔の前記内周面に接触し、
前記第1の小径内周面、前記第3の小径内周面および前記第2の小径内周面は、前記内側部材の前記外周面に接触し、
前記第1の小径外周面および前記第2の小径外周面は、前記孔の前記内周面に接触せず、
前記第1の大径内周面および前記第2の大径内周面は、前記内側部材の前記外周面に接触しない、
請求項に記載の密封構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスケットおよび密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2016-038076号公報や特開2015-4394号公報に開示されるように、2つの部材の間を封止するガスケットが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガスケットは、塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの水溶液を含む水が多い環境で使用される場合がある。このような環境において、アルミニウム製の部材にガスケットが装着される場合であっても、部材が水によって腐食しないことが望まれる。
【0004】
本開示は、装着される部材の腐食を抑制し、部材の寿命を延ばすことが可能なガスケットおよび密封構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の観点は、
外側部材の孔の内周面と内側部材の外周面に接触して、大気空間と前記外側部材の内部空間を隔てるエラストマー製の円環状のガスケットであって、
第1の広幅部であって、
前記ガスケットの軸線方向において、前記孔の内周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第1の大径外周面と、
前記ガスケットの軸線方向において、前記内側部材の前記外周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第1の小径内周面と、
第1の端面と、
前記第1の大径外周面と前記第1の端面とがなす第1の外側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第1の外側角部と、
前記第1の小径内周面と前記第1の端面とがなす第1の内側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第1の内側角部と、
を有する第1の広幅部と、
第2の広幅部であって、
前記ガスケットの軸線方向において、前記孔の内周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第2の大径外周面と、
前記ガスケットの軸線方向において、前記内側部材の前記外周面に0.1mm以上の長さで接触する円柱状の第2の小径内周面と、
第2の端面と、
前記第2の大径外周面と前記第2の端面とがなす第2の外側角部であって、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第2の外側角部と、
前記第2の小径内周面と前記第2の端面とがなす第2の内側角部と、前記ガスケットの軸線を含む断面における曲率半径が0.5mm以下である第2の内側角部と、
を有する第2の広幅部と、
第3の広幅部であって、
前記孔の内周面に接触する第3の大径外周面であって、前記孔の内周面に対して0.05mm以上の締め代を有する第3の大径外周面と、
前記内側部材の前記外周面に接触する第3の小径内周面であって、前記内側部材の前記外周面に対して0.05mm以上の締め代を有する第3の小径内周面と、
を有する第3の広幅部と、
前記第1の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第1の狭幅部であって、
前記孔の内周面から離れた第1の小径外周面であって、第1の外周溝を有する第1の小径外周面と、
前記内側部材の前記外周面から離れた第1の大径内周面であって、第1の内周溝を有する第1の大径内周面と、
を有する第1の狭幅部と、
前記第2の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第2の狭幅部であって、
前記孔の内周面から離れた第2の小径外周面であって、第2の外周溝を有する第2の小径外周面と、
前記内側部材の前記外周面から離れた第2の大径内周面であって、第2の内周溝を有する第2の大径内周面と、
を有する第2の狭幅部と、
を有し、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されている状態で、前記第1の外周溝と前記孔の内周面との間の最大距離、前記第2の外周溝と前記孔の内周面との間の最大距離、前記第1の内周溝と前記内側部材の前記外周面との間の最大距離、および前記第2の内周溝と前記内側部材の前記外周面との間の最大距離は、0.05mm以上である、
ガスケットである。
【0006】
本開示の第2の観点は、
外側部材の孔の内周面と内側部材の外周面に接触して、大気空間と前記外側部材の内部空間を隔てるエラストマー製の円環状のガスケットであって、
第1の広幅部であって、
円柱状の第1の大径外周面と、
円柱状の第1の小径内周面と、
を有する第1の広幅部と、
第2の広幅部であって、
円柱状の第2の大径外周面と、
円柱状の第2の小径内周面と、
を有する第2の広幅部と、
第3の広幅部であって、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されていない場合、前記第1の大径外周面と前記第2の大径外周面の直径より大きい直径を有する第3の大径外周面と、
前記ガスケットが前記外側部材と前記内側部材との間で圧縮されていない場合、前記第1の小径内周面と前記第2の小径内周面の直径より小さい直径を有する第3の小径内周面と、
を有する第3の広幅部と、
前記第1の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第1の狭幅部であって、
第1の外周溝を有する第1の小径外周面と、
第1の内周溝を有する第1の大径内周面と、
を有する第1の狭幅部と、
前記第2の広幅部と前記第3の広幅部との間に介在される第2の狭幅部であって、
第2の外周溝を有する第2の小径外周面と、
第2の内周溝を有する第2の大径内周面と、
を有する第2の狭幅部と、
を有し、
前記ガスケットの軸線方向において、前記第1の大径外周面の円柱状部分の長さ、前記第1の小径内周面の円柱状部分の長さ、前記第2の大径外周面の円柱状部分の長さ、および、前記第2の小径内周面の円柱状部分の長さは、前記第3の大径外周面の円柱状部分の長さ、および、前記第3の小径内周面の円柱状部分の長さより大きい、
ガスケットである。
【0007】
本開示の第3の観点は、
前記ガスケットと、
前記外側部材と、
前記内側部材と、
を有する、密封構造である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のガスケットの正面図
図2】実施形態のガスケットを有する密封構造の断面図
図3】実施形態のガスケットの拡大断面図
図4】外側部材と内側部材を仮想線で示す実施形態のガスケットの拡大断面図
図5】一般的なガスケットと部材の間の隙間への水の侵入を示す概略断面図
図6】比較例1のガスケットを有する密封構造の断面図
図7】比較例2のガスケットを有する密封構造の断面図
図8】実施形態と比較例1、2のガスケットの相対寿命を示すグラフ
図9】比較例3のガスケットを外側部材と内側部材の間に配置する時の不具合を示す断面図
図10】比較例4のガスケットを外側部材と内側部材の間に配置する時の不具合を示す断面図
図11】変形例1のガスケットの拡大断面図
図12】変形例2のガスケットの拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のガスケット1は、内部に貫通孔2を有する円環状である。ガスケット1は、中心軸線Axに関して回転対称な形状を有する。
【0011】
図2に示すように、ガスケット1は、外側部材3と内側部材4の間に配置される。ガスケット1は、外側部材3の孔の内周面3Aと、内側部材4の外周面4Cとに接触する。ガスケット1は、大気空間Aと外側部材3の内部空間Bとを隔てる。
外側部材3は、例えば、機械または構造物のハウジングである。内側部材4は、例えば、チューブである。外側部材3と内側部材4は、いずれも金属(例えば、アルミニウム)で形成される。
【0012】
内側部材4は、大気空間A側に大径部4Aを有する。内側部材4は、内部空間B側に、大径部4Bを有する。内側部材4は、大径部4A,4Bの間に、周溝4Dを有する。ガスケット1は、周溝4Dに配置される。
なお、大径部4A、大径部4Bは、フランジでもよい。
また、大径部4A、大径部4B、周溝4Dは、省略してもよい。
【0013】
ガスケット1は、大気空間Aに塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの水溶液を含む水が多い環境で使用される。そのため、ガスケット1は、大気空間Aから内部空間Bへの異物、特に水の侵入を防止または低減する役割を有する。例えば、内側部材4の大径部4Aと外側部材3の孔の内周面3Aの間の隙間を通じて、水などの異物が矢印Fで示すように、ガスケット1に向けて進行する。
【0014】
ガスケット1は、一般的なエラストマー(ゴムを含む)で形成される。ガスケット1は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、アクリルゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴムで形成され、好ましくは、耐水性または耐塩性が高いエラストマーによって形成される。耐水性または耐塩性が高い好ましいエラストマーは、例えば、EPDM、フッ素ゴムである。
【0015】
図3は、使用状態ではなく、外側部材3と内側部材4の間で圧縮されていない状態における、中心軸線Axを含む断面でのガスケット1の拡大断面図である。図3に示すように、ガスケット1は、第1の広幅部11と、第2の広幅部12と、第3の広幅部13と、第1の狭幅部14と、第2の狭幅部15とを有する。
【0016】
第1の広幅部11は、ガスケット1の軸線方向の第1端部に位置する。第1の広幅部11は、円柱状の第1の大径外周面11Aと、円柱状の第1の小径内周面11Bと、第1の端面11Eとを有する。「軸線方向」とは、中心軸線Axの方向である。第1の端面11Eは、ガスケット1の軸線方向の端面であり、平坦である。第1の広幅部11は、外側角部11C(第1の外側角部)と、内側角部11D(第1の内側角部)とを有する。外側角部11Cは、第1の大径外周面11Aと、第1の端面11Eとがなす。内側角部11Dは、第1の小径内周面11Bと、第1の端面11Eとがなす。
【0017】
第2の広幅部12は、ガスケット1の軸線方向の第2端部に位置する。第2の広幅部12は、円柱状の第2の大径外周面12Aと、円柱状の第2の小径内周面12Bと、第2の端面12Eとを有する。第2の端面12Eは、ガスケット1の軸線方向の端面であり、平坦である。第2の広幅部12は、外側角部12C(第2の外側角部)と、内側角部12D(第2の内側角部)とを有する。外側角部12Cは、第2の大径外周面12Aと、第2の端面12Eとがなす。内側角部12Dは、第2の小径内周面12Bと、第2の端面12Eとがなす。
【0018】
第3の広幅部13は、ガスケット1の軸線方向の中央部に位置する。第3の広幅部13は、第3の大径外周面13Aと、第3の小径内周面13Bとを有する。図3に示すように、外側部材3と内側部材4の間で第3の広幅部13が圧縮されていない状態では、第3の大径外周面13Aは、中心軸線Axを含む断面において、径方向外側に向けて突出する半円形状を有する。第3の小径内周面13Bは、中心軸線Axを含むの断面において、径方向内側に向けて突出する半円形状を有する。
【0019】
第1の狭幅部14は、第1の広幅部11と第3の広幅部13との間に介在する。第1の狭幅部14は、第1の小径外周面14Aと、第1の大径内周面14Bとを有する。第1の小径外周面14Aは、第1の外周溝14Cを有する。第1の大径内周面14Bは、第1の内周溝14Dを有する。
【0020】
第1の外周溝14Cは、中心軸線Axを含む断面において、第3の大径外周面13Aに滑らかに接続され、ほぼ半円形状を有する部分と、傾斜部分とを有する。ほぼ半円形状を有する部分は、径方向内側に向けて凹む。傾斜部分は、第1の大径外周面11Aに滑らかに接続される。
第1の内周溝14Dは、中心軸線Axを含む断面において、ほぼ半円形状を有する部分と、傾斜部分とを有する。ほぼ半円形状を有する部分は、第3の小径内周面13Bに滑らかに接続され、径方向外側に向けて凹む。傾斜部分は、第1の小径内周面11Bに滑らかに接続される。
【0021】
第2の狭幅部15は、第2の広幅部12と第3の広幅部13との間に介在する。第2の狭幅部15は、第2の小径外周面15Aと、第2の大径内周面15Bとを有する。第2の小径外周面15Aは、第2の外周溝15Cを有する。第2の大径内周面15Bは、第2の内周溝15Dを有する。
【0022】
第2の外周溝15Cは、中心軸線Axを含む断面において、ほぼ半円形状を有する部分と、傾斜部分とを有する。ほぼ半円形状を有する部分は、第3の大径外周面13Aに滑らかに接続される。傾斜部分は、第2の大径外周面12Aに滑らかに接続される。
第2の内周溝15Dは、中心軸線Axを含む断面において、ほぼ半円形状を有する部分と、傾斜部分とを有する。ほぼ半円形状を有する部分は、第3の小径内周面13Bに滑らかに接続される。傾斜部分は、第2の小径内周面12Bに滑らかに接続される。
【0023】
好ましくは、中心軸線Axを含む断面におけるガスケット1の形状(図3の断面形状)は、断面の縦軸線Xに関して線対称である。また、好ましくは、中心軸線Axを含む断面におけるガスケット1の形状(図3の断面形状)は、断面の横軸線Yに関しても線対称である。したがって、ガスケット1は、中心軸線Axに直交する平面(横軸線Yを含む平面)に関して、鏡像対称な形状を有する。
【0024】
したがって、図4に示すように、第1の広幅部11を大気空間A側に配置し、第2の広幅部12を内部空間B側に配置した場合の効果と、第1の広幅部11を内部空間B側に配置し、第2の広幅部12を大気空間A側に配置した場合の効果は、同等である。したがって、ガスケット1を取り扱う作業者は、ガスケット1の向きに注意を払う必要がない。
【0025】
但し、ガスケット1が中心軸線Axに直交する平面に関して、完全に鏡像対称ではなくてもよい。例えば、第2の狭幅部15と第1の狭幅部14とが類似の寸法と形状を有し、第2の広幅部12と第1の広幅部11とが類似の形状と寸法を有すれば、第1の広幅部11を大気空間A側に配置し、第2の広幅部12を内部空間B側に配置した場合の効果と、第1の広幅部11を内部空間B側に配置し、第2の広幅部12を大気空間A側に配置した場合の効果は、ほぼ同等である。
【0026】
図4は、外側部材3と内側部材4の間にガスケット1を配置した、使用状態のガスケット1を示す。図4において、外側部材3と内側部材4は、仮想線で示され、非使用状態(非圧縮状態)の図3と同じガスケット1の輪郭が、実線で示される。図4は、中心軸線Axを含む断面におけるガスケット1の形状を示す。外側部材3と内側部材4の間で圧縮されたガスケット1の輪郭は、仮想線で示される。
【0027】
第1の広幅部11において、第1の大径外周面11Aは、外側部材3の孔の内周面3Aに面接触する。室温(例えば、20℃)において、非圧縮状態での第1の大径外周面11Aの直径D1は、孔の内周面3Aの直径d1に等しい。したがって、孔の内周面3Aに対する第1の大径外周面11Aの締め代In1は、0mmである。
【0028】
第1の広幅部11において、第1の小径内周面11Bは、内側部材4の外周面4Cに面接触する。室温において、非圧縮状態での第1の小径内周面11Bの直径D2は、内側部材4の外周面4Cの直径d2に等しい。したがって、内側部材4の外周面4Cに対する第1の小径内周面11Bの締め代In2は、0mmである。
【0029】
第2の広幅部12において、第2の大径外周面12Aは、外側部材3の孔の内周面3Aに面接触する。室温において、非圧縮状態での第2の大径外周面12Aの直径D1は、孔の内周面3Aの直径d1に等しい。したがって、孔の内周面3Aに対する第2の大径外周面12Aの締め代In1は、0mmである。
【0030】
第2の広幅部12において、第2の小径内周面12Bは、内側部材4の外周面4Cに面接触する。室温において、非圧縮状態での第2の小径内周面12Bの直径D2は、内側部材4の外周面4Cの直径d2に等しい。したがって、内側部材4の外周面4Cに対する第2の小径内周面12Bの締め代In2は、0mmである。
【0031】
このため、ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、第1の広幅部11と第2の広幅部12の寸法は、ほとんど変化しない。
【0032】
非圧縮状態での第1の広幅部11と第2の広幅部12の外側角部11C,12Cと、第1の広幅部11と第2の広幅部12の内側角部11D,12Dの曲率半径Rは、0.5mm以下である。締め代In1,In2が0mmであるので、圧縮状態のガスケット1での曲率半径Rは、非圧縮状態での曲率半径Rとほとんど同じである。
【0033】
第3の広幅部13において、第3の大径外周面13Aは、外側部材3の孔の内周面3Aに面接触する。非圧縮状態での第3の大径外周面13Aの直径は、直径D1より大きい。第3の大径外周面13Aの最大径D3は、直径D1、直径d1より大きい。好ましくは、孔の内周面3Aに対する第3の大径外周面13Aの締め代In3、つまり(D3-d1)/2は、0.05mm以上である。したがって、第3の大径外周面13Aは、第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aに比べて、水の進行を阻止する能力が高い。
【0034】
第3の小径内周面13Bは、内側部材4の外周面4Cに面接触する。非圧縮状態での第3の小径内周面13Bの直径は、直径D2より小さい。第3の小径内周面13Bの最小径D4は、直径D2、直径d2より小さい。好ましくは、内側部材4の外周面4Cに対する第3の小径内周面13Bの締め代In4、つまり(d2-D4)/2は、0.05mm以上である。したがって、第3の小径内周面13Bは、第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bに比べて、水の進行を阻止する能力が高い。
【0035】
ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、第1の広幅部11と第2の広幅部12の寸法は、ほとんど変化しない。一方、第3の大径外周面13Aは、仮想線で示すように、外側部材3の孔の内周面3Aに圧縮されて変形し、第3の大径外周面13Aは、孔の内周面3Aと一致した形状になる。そして、第3の大径外周面13Aの直径は、孔の内周面3Aのd1まで縮小する。また、第3の小径内周面13Bは、仮想線で示すように、内側部材4の外周面4Cに圧縮されて変形し、第3の小径内周面13Bは、外周面4Cと一致した形状になる。そして、第3の小径内周面13Bの直径は、内側部材4の外周面4Cの直径d2まで拡大する。
【0036】
ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、第1の狭幅部14において、第1の小径外周面14Aは、外側部材3の孔の内周面3Aに接触しない。また、第1の大径内周面14Bは、内側部材4の外周面4Cに接触しない。但し、第3の大径外周面13Aの変形に伴って、仮想線で示すように、第1の小径外周面14Aと第1の外周溝14Cが変形する。また、第3の小径内周面13Bの変形に伴って、第1の大径内周面14Bと第1の内周溝14Dが変形する。
【0037】
ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、圧縮状態での第1の外周溝14C(変形後の仮想線)と孔の内周面3Aの間の最大距離e1は、好ましくは、0.05mm以上である。圧縮状態での第1の内周溝14D(変形後の仮想線)と内側部材4の外周面4Cの間の最大距離e2は、好ましくは、0.05mm以上である。
【0038】
ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、第2の狭幅部15において、第2の小径外周面15Aは、外側部材3の孔の内周面3Aに接触しない。また、第2の大径内周面15Bは、内側部材4の外周面4Cに接触しない。但し、第3の大径外周面13Aの変形に伴って、仮想線で示すように、第2の小径外周面15Aと第2の外周溝15Cが変形する。また、第3の小径内周面13Bの変形に伴って、第2の大径内周面15Bと第2の内周溝15Dが変形する。
【0039】
ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、圧縮状態での第2の外周溝15C(変形後の仮想線)と孔の内周面3Aの間の最大距離e1は、好ましくは、0.05mm以上である。圧縮状態での第2の内周溝15D(変形後の仮想線)と内側部材4の外周面4Cの間の最大距離e2は、好ましくは、0.05mm以上である。
【0040】
最大距離e1,e2は、ガスケット1、外側部材3および内側部材4が熱膨張した場合でも、0.05mm以上であることが好ましい。
【0041】
ガスケット1の軸線方向において、第1の大径外周面11Aの円柱状部分の長さL1、第1の小径内周面11Bの円柱状部分の長さL2、第2の大径外周面12Aの円柱状部分の長さL1、および、第2の小径内周面12Bの円柱状部分の長さL2は、第3の大径外周面13Aの円柱状部分の長さL3、および、第3の小径内周面13Bの円柱状部分の長さL4より大きい。したがって、ガスケット1の軸線方向において、第1の大径外周面11Aが孔の内周面3Aに接触する長さL1、第1の小径内周面11Bが内側部材4の外周面4Cに接触する長さL2、第2の大径外周面12Aが孔の内周面3Aに接触する長さL1、および、第2の小径内周面12Bが内側部材4の外周面4Cに接触する長さL2を大きく確保できる。長さL1,L2は、好ましくは、0.1mm以上である。
【0042】
図5は、一般的なガスケット20と部材21との間の隙間への水の侵入を概略的に示す。大気空間Aにある水滴22が、ガスケット20の角部23に付着したと想定する。すると、部材21とガスケット20の界面Kにある微小な隙間(不図示)に、水が侵入しやすくなる。図中の矢印fは、水の進行方向を示す。水は、界面Kの微小な隙間を、毛細管現象によってゆっくり進行する。界面Kでの水の停留時間が長い場合、部材21の界面Kでの腐食が早く進行する。停留する水が少量であっても、部材21は進行する。停留する水が少量の場合は、水が大量の場合に比べて、部材21の腐食が促進される場合が多い。
【0043】
ここで、角部23の曲率半径rが大きい場合には、水の隙間への侵入が促されると考えられる。曲率半径rが大きい場合には、角部23に大きな水滴が付着しやすく、かつ、界面Kへの侵入開始部となる、角部23と部材21の間の鋭角的な部分Sの長さが大きくなるからである。
【0044】
図4に示すように、第1の広幅部11を大気空間A側に配置し、第2の広幅部12を内部空間B側に配置した状態で、大気空間Aから水が矢印Fで示すようにガスケット1に到来すると想定する。図4では、大気空間Aが上にあり、内部空間Bが下にあるが、空間A,Bの相対位置は図示に限定されない。例えば、大気空間Aと内部空間Bは、水平方向に配置されていてもよい。
【0045】
水は、大気空間Aから第1の広幅部11に到達する。しかし、第1の広幅部11の外側角部11Cと内側角部11Dの曲率半径Rは、0.5mm以下であって小さい。このため、大気空間Aから外側部材3と第1の広幅部11の間の隙間(孔の内周面3Aと第1の大径外周面11Aの間の隙間)および内側部材4と第1の広幅部11の間の隙間(内側部材4の外周面4Cと第1の小径内周面11Bの間の隙間)への水の侵入が抑制され、外側部材3と内側部材4の腐食が抑制される。曲率半径Rが0.5mmより大きい場合には、より多くの水が孔の内周面3Aと第1の大径外周面11Aの間の隙間、および、外周面4Cと第1の小径内周面11Bの間の隙間に侵入する。
【0046】
大気空間Aから外側部材3と第1の広幅部11の間の隙間を通じて、第1の小径外周面14Aと孔の内周面3Aの間の空間に水が侵入しても、第1の外周溝14Cが大きい、すなわち、第1の外周溝14Cと孔の内周面3Aの間の最大距離e1は、0.05mm以上である。そのため、外側部材3の腐食が抑制される。これは、孔の内周面3Aに水が接触したまま停留したとしても、水の量がある程度多い場合には、むしろ腐食が抑制されるためである。
【0047】
また、大気空間Aから内側部材4と第1の広幅部11の間の隙間を通じて、第1の大径内周面14Bと内側部材4の外周面4Cの間の空間に水が侵入しても、第1の内周溝14Dが大きい、すなわち、第1の内周溝14Dと内側部材4の外周面4Cの間の最大距離e2は、0.05mm以上である。そのため、内側部材4の腐食が抑制される。これは、内側部材4の外周面4Cに水が接触したまま停留したとしても、水の量がある程度多い場合には、むしろ腐食が抑制されるためである。
距離e1,e2が0.05mm未満であれば、停留する水の量が少なく、腐食が進行しやすい。
【0048】
第1の大径外周面11Aが孔の内周面3Aに接触する長さL1は、0.1mm以上であり、十分に大きい。そのため、第1の大径外周面11Aと第3の大径外周面13Aの間にある第1の外周溝14Cの形状が安定し、最大距離e1が確保される。また、第1の小径内周面11Bが内側部材4の外周面4Cに接触する長さL2は、0.1mm以上であり、十分に大きい。そのため、第1の小径内周面11Bと第3の小径内周面13Bの間にある第1の内周溝14Dの形状が安定し、最大距離e2が確保される。
長さL1,L2が0.1mm未満であれば、第1の外周溝14Cおよび第1の内周溝14Dは顕著に変形し、最大距離e1,e2が0.05mm未満になってしまう。
【0049】
さらに、たとえ第1の小径外周面14Aと孔の内周面3Aの間の空間に水が侵入しても、孔の内周面3Aに対する第3の大径外周面13Aの締め代In3が0.05mmであり、十分大きい。そのため、水は、第3の大径外周面13Aと孔の内周面3Aの間の隙間を通じて、第2の小径外周面15Aと孔の内周面3Aの間の空間に侵入しにくい。
また、たとえ第1の大径内周面14Bと内側部材4の外周面4Cの間の空間に水が侵入しても、外周面4Cに対する第3の小径内周面13Bの締め代In4が0.05mmであり、十分大きい。そのため、水は、第3の小径内周面13Bと内側部材4の外周面4Cの間の隙間を通じて、第2の大径内周面15Bと内側部材4の外周面4Cの間の空間に侵入しにくい。
このように、外側部材3と内側部材4の腐食を抑制し、外側部材3と内側部材4の寿命を延ばすことが可能となる。
【0050】
第2の狭幅部15は、第1の狭幅部14と同一または類似の形状と寸法を有する。第2の広幅部12は、第1の広幅部11と同一または類似の形状と寸法を有する。そのため、第1の広幅部11を内部空間B側に配置し、第2の広幅部12を大気空間A側に配置した場合にも、上記の効果が達成される。
【0051】
ガスケット1の断面の幅、すなわち、ガスケット1の外側最大半径D3/2と内側最小半径D4/2の差である(D3-D4)/2は、限定されないが、好ましくは、1mm~4mmである。外側部材3の孔の内周面3Aの直径d1は、限定されないが、好ましくは、約10mm~約40mmである。内側部材4の外周面4Cの直径d2は、限定されないが、好ましくは、約8mm~約38mmである。また、ガスケット1の軸線方向長さTは、限定されないが、好ましくは、2mm~5mmである。
【0052】
発明者は、実施形態のガスケット1による外側部材3と内側部材4の腐食抑制効果を確認する実験を行った。実験においては、外側部材3の孔の内周面3Aの直径d1は、18.98mmである。内側部材4の外周面4Cの直径d2は、15.18mmである。
【0053】
ガスケット1の軸線方向長さTは、3.5mmである。非圧縮状態での第1の広幅部11の外側角部11Cと内側角部11Dの曲率半径Rは、0.2mmである。第1の広幅部11と第3の広幅部13の接触長さL1,L2は、1.1mmである。第3の大径外周面13Aの最大径D3は、19.6mmである。第3の小径内周面13Bの最小径D4は、14.8mmである。ガスケット1の外側最大半径D3/2と内側最小半径D4/2の差は、2.4mmである。
第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aの直径D1は、孔の内周面3Aの直径d1に等しく、18.98mmである。第2の大径外周面12Aと第2の小径内周面12Bの直径D2は、内側部材4の外周面4Cの直径d2に等しく、15.18mmである。
【0054】
したがって、ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、内径伸長率(d2-D4)/D4=0.026であり、ガスケット1の径方向の圧縮率[(D3-D4)-(d1-d2)]/(D3-D4)=0.21である。
【0055】
比較例1として、図6に示すガスケット31を準備した。ガスケット31は、Oリングである。図6の下方に、非圧縮状態のガスケット31を示す。非圧縮状態でのガスケット31の外径D13は、19.6mmであり、内径D14は、14.8mmである。非圧縮状態でのガスケット31の中心軸線Axを含む断面(円形)の直径は、2.4mmである。
【0056】
したがって、ガスケット31を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、内径伸長率(d2-D14)/D14=0.026であり、ガスケット31の径方向の圧縮率[(D13-D14)-(d1-d2)]/(D13-D14)=0.21である。
【0057】
比較例2として、図7に示すガスケット41を準備した。ガスケット41は、Xリングである。図7の下方に、非圧縮状態のガスケット41を示す。非圧縮状態でのガスケット41の角部の曲率半径R1は、0.4mmである。非圧縮状態でのガスケット41の最大外径D23は19.6mmであり、最小内径D24は14.8mmである。非圧縮状態でのガスケット41の中心軸線Axを含む断面(X形)の幅は、2.4mmであり、非圧縮状態でのガスケット41の高さは、2.4mmである。
【0058】
したがって、ガスケット41を外側部材3と内側部材4の間に配置した場合、内径伸長率(d2-D24)/D24=0.026であり、ガスケット41の径方向の圧縮率[(D23-D24)-(d1-d2)]/(D23-D24)=0.21である。
【0059】
実験では、小型のスプリンクラーで塩水を散布し、大気空間Aから外側部材3の孔の内周面3Aと内側部材4の大径部4Aの間の円環状の隙間CLを通じて、使用状態にあるガスケット1,31,41に向けて塩水を供給した。隙間CLの幅(内周面3Aと大径部4Aの間の距離)は0.075mmである。
【0060】
実験では、塩水の供給の後、部材3,4およびガスケット1,31,41を乾燥させ、さらに加湿器で加湿し、さらに乾燥させた後、大気に解放した。大気に解放した状態で、外側部材3と内側部材4の所定箇所に腐食が発生したか否か、目視で調べた。
実施形態のガスケット1について、所定箇所とは、外側部材3の孔の内周面3Aの第2の小径外周面15Aに対向する部分と、内側部材4の外周面4Cの第2の大径内周面15Bに対向する部分である。比較例1のガスケット31について、所定箇所とは、外側部材3の孔の内周面3Aのガスケット31より内部空間B側の部分と、内側部材4の外周面4Cのガスケット31より内部空間B側の部分である。比較例2のガスケット41について、所定箇所とは、外側部材3の孔の内周面3Aのガスケット41より内部空間B側の部分と、内側部材4の外周面4Cのガスケット41より内部空間B側の部分である。
【0061】
実験では、塩水の供給、乾燥、加湿、乾燥、大気への解放からなるサイクルを繰り返し、外側部材3と内側部材4の所定箇所に腐食が発生するまでのサイクル数を計測した。1サイクルの時間は24時間であった。
【0062】
図8は、実験結果を示す。図8の縦軸の相対寿命は、Oリングであるガスケット31を使用した場合の所定箇所の腐食発生サイクル数を1.0とした場合の、各ガスケットを使用した場合の所定箇所の腐食発生サイクル数である。図8から明らかなように、Oリングであるガスケット31とXリングであるガスケット41の寿命はほぼ同じであった。これに対し、実施形態のガスケット1の寿命は、比較例1、2のガスケット31,41の寿命の2倍より長かった。
【0063】
以上、説明した通り、本実施形態によれば、外側部材3と内側部材4の腐食を抑制し、外側部材3と内側部材4の寿命を延ばすことができる。
【0064】
曲率半径Rが0.5mm未満であり、最大距離e1,e2が0.05mm未満であり、接触長さL1,L2が0.1mm未満であり、締め代In3,In4が0.05mm未満である場合でも、本実施形態によれば、外側部材3と内側部材4の腐食を抑制し、外側部材3と内側部材4の寿命を延ばすことができる。
【0065】
本実施形態において、第1の広幅部11を大気空間A側に配置し、第2の広幅部12を内部空間B側に配置した場合、たとえ、大気空間Aから外側部材3と第1の大径外周面11Aの間の隙間を通じて、第1の小径外周面14Aと孔の内周面3Aの間の空間に水が侵入しても、第1の小径外周面14Aには第1の外周溝14Cが形成されているため、外側部材3の腐食が抑制される。
また、たとえ、大気空間Aから内側部材4と第1の小径内周面11Bの間の隙間を通じて、第1の大径内周面14Bと内側部材4の外周面4Cの間の空間に水が侵入しても、第1の大径内周面14Bには第1の内周溝14Dが形成されているため、内側部材4の腐食が抑制される。
【0066】
第1の大径外周面11Aの円柱状部分の長さがある程度大きければ、第1の大径外周面11Aが孔の内周面3Aに接触する長さL1が大きくなる。そのため、第1の大径外周面11Aと第3の大径外周面13Aの間にある第1の外周溝14Cの形状が安定する。
また、第1の小径内周面11Bの円柱状部分の長さがある程度大きければ、第1の小径内周面11Bが外周面4Cに接触する長さL2が大きくなる。そのため、第1の小径内周面11Bと第3の小径内周面13Bの間にある第1の内周溝14Dの形状が安定する。
【0067】
また、たとえ、第1の小径外周面14Aと孔の内周面3Aの間の空間に水が侵入しても、第3の大径外周面13Aの最大径D3が第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aの直径D1より大きいため、孔の内周面3Aに対する第3の大径外周面13Aの締め代In3が大きくなる。そのため、水は、第3の大径外周面13Aと孔の内周面3Aの間の隙間を通じて、第2の小径外周面15Aと孔の内周面3Aの間の空間に侵入しにくい。
また、たとえ第1の大径内周面14Bと内側部材4の外周面4Cの間の空間に水が侵入しても、第3の小径内周面13Bの最小径D4が第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bの直径D2より小さいため、外周面4Cに対する第3の小径内周面13Bの締め代In4が大きくなる。そのため、水は、第3の小径内周面13Bと外周面4Cの間の隙間を通じて、第2の大径内周面15Bと外周面4Cの間の空間に侵入しにくい。
【0068】
したがって、外側部材3と内側部材4の腐食を抑制し、外側部材3と内側部材4の寿命を延ばすことができる。
【0069】
第2の狭幅部15は、第1の狭幅部14と同一または類似の形状を有する。第2の広幅部12は、第1の広幅部11と同一または類似の形状を有する。そのため、第1の広幅部11を内部空間B側に配置し、第2の広幅部12を大気空間A側に配置した場合にも、上記の効果が達成される。
【0070】
実施形態においては、非圧縮状態での第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aの直径D1は、外側部材3の孔の内周面3Aの直径d1に等しい。そのため、孔の内周面3Aに対する第1の大径外周面11Aの締め代In1と、孔の内周面3Aに対する第2の大径外周面12Aの締め代In1は、0mmである。
また、非圧縮状態での第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bの直径D2は、内側部材4の外周面4Cの直径d2に等しい。そのため、外周面4Cに対する第1の小径内周面11Bの締め代In2と、外周面4Cに対する第2の小径内周面12Bの締め代In2は、0mmである。
【0071】
このため、ガスケット1を孔の内周面3Aと内側部材4の外周面4Cの間に配置しやすい。特に、ガスケット1を外側部材3の孔の内周面3Aと内側部材4の外周面4Cの間に配置する時に、ガスケット1の軸線方向に摩擦力が働いても、第1の広幅部11と第2の広幅部12は、軸線方向にも径方向にも変形しにくく、ガスケット1の封止能力が損なわれにくい。
【0072】
図9は、比較例3のガスケット51を外側部材3と内側部材4の間に配置する時の不具合を示す。ガスケット51においては、非圧縮状態での第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aの直径は、外側部材3の孔の内周面3Aの直径d1より大きい。そのため、孔の内周面3Aに対する第1の大径外周面11Aの締め代と、孔の内周面3Aに対する第2の大径外周面12Aの締め代は、0mmより大きい。また、非圧縮状態での第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bの直径は、内側部材4の外周面4Cの直径d2より小さい。そのため、外周面4Cに対する第1の小径内周面11Bの締め代と、外周面4Cに対する第2の小径内周面12Bの締め代は、0mmより大きい。
【0073】
ガスケット51を外側部材3と内側部材4の間に配置する時、ガスケット51を内側部材4の外周面4Cに接触させた状態で、矢印Pに示すように、中心軸線Axに沿って外側部材3の孔の内周面3Aに対して摺動させる。この場合、第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aには、外側部材3の孔の内周面3Aにより大きな摩擦力が働く。また、第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bには、内側部材4の外周面4Cにより大きな摩擦力が働く。このため、第1の広幅部11と第2の広幅部12は、軸線方向に大きく変形する。また、第3の広幅部13を含むガスケット51全体も、軸線方向に大きく変形する。これにより、第3の大径外周面13Aの直径は減少し、第3の小径内周面13Bの直径は拡大する。そのため、外側部材3の孔の内周面3Aに対する第3の大径外周面13Aの締め代が減少する。また、外周面4Cに対する第3の小径内周面13Bの締め代が減少する。したがって、ガスケット51の封止能力が損なわれる。
【0074】
また、外側角部11Cが外側部材3の孔の内周面3Aと内側部材4の大径部4Aとの間の円環状の隙間CLに挟まってしまった場合には、予期しない応力がガスケット51の内部に発生し得る。これにより、ガスケット51が、大気空間A側かつ径方向外側に引っ張られ、ガスケット51の封止能力が損なわれてしまう。
これに対し、実施形態のガスケット1は、これらの不具合を防止できる。
【0075】
実施形態のガスケット1は、図10に示す外側部材63と内側部材64の間に配置して、外側部材63の孔の内周面63Cと内側部材64の外周面64Aに接触して、大気空間Aと外側部材63の内部空間Bを隔ててもよい。外側部材63は、例えば、機械または構造物のハウジングである。内側部材64は、例えば、チューブである。外側部材63及び内側部材64は、いずれも金属(例えば、アルミニウム)で形成される。外側部材63は、大気空間A側に大径部63Aを有し、内部空間B側に大径部63Bを有する。大径部63A,63Bの間の内周溝63Dに、ガスケット1が配置される。
なお、大径部63A、大径部63Bは、フランジでもよい。
【0076】
図10は、比較例4のガスケット61を外側部材63と内側部材64の間に配置する時の不具合を示す。ガスケット61においては、非圧縮状態での第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aの直径は、外側部材63の孔の内周面63Cの直径d1より大きい。そのため、孔の内周面63Cに対する第1の大径外周面11Aの締め代と、孔の内周面63Cに対する第2の大径外周面12Aの締め代は、0mmより大きい。また、非圧縮状態での第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bの直径は、内側部材64の外周面64Aの直径d2より小さい。そのため、内側部材64の外周面64Aに対する第1の小径内周面11Bの締め代と、内側部材64の外周面64Aに対する第2の小径内周面12Bの締め代は、0mmより大きい。
【0077】
ガスケット61を外側部材63と内側部材64の間に配置する時、ガスケット61を外側部材63の孔の内周面63Cに接触させた状態で、矢印Qに示すように、中心軸線Axに沿って外側部材63の孔の内周面63Cに対して摺動させる。この場合、第1の大径外周面11Aと第2の大径外周面12Aには、外側部材63の孔の内周面63Cにより大きな摩擦力が働く。また、第1の小径内周面11Bと第2の小径内周面12Bには、内側部材64の外周面64Aにより大きな摩擦力が働く。このため、第1の広幅部11と第2の広幅部12は、軸線方向に大きく変形する。また、第3の広幅部13を含むガスケット61全体も、軸線方向に大きく変形する。これにより、第3の大径外周面13Aの直径は減少し、第3の小径内周面13Bの直径は拡大する。そのため、外側部材63の孔の内周面63Cに対する第3の大径外周面13Aの締め代が減少する。また、内側部材64の外周面64Aに対する第3の小径内周面13Bの締め代が減少する。したがって、ガスケット61の封止能力が損なわれる。
【0078】
また、内側角部11Dが外側部材63の大径部63Aと内側部材64の外周面64Aとの間の円環状の隙間CL2に挟まってしまった場合には、予期しない応力がガスケット61の内部に発生し得る。これにより、ガスケット61が、大気空間A側かつ径方向内側に引っ張られ、ガスケット61の封止能力が損なわれてしまう。
これに対し、実施形態のガスケット1は、これらの不具合を防止できる。
【0079】
実施形態において、図3および図4に示すように、ガスケット1が外側部材3と内側部材4の間で圧縮されていない場合、第3の大径外周面13Aは、ガスケット1の軸線を含む断面において、径方向外側に向けて突出する半円形状を有する。また、第3の小径内周面13Bは、ガスケット1の軸線を含む断面において、径方向内側に向けて突出する半円形状を有する。
【0080】
したがって、ガスケット1を外側部材3の孔の内周面3Aと内側部材4の外周面4Cの間に配置する時、ガスケット1を外側部材3または内側部材4に摺動させても、摩擦による第3の広幅部13の変形量が最小限で済む。
【0081】
以上、本開示の好ましい実施形態を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本開示の範囲に包含されるはずである。
【0082】
例えば、上記の実施形態においては、ガスケット1は単一の第3の広幅部13を有するが、図11に示す変形例1のように、複数の第3の広幅部13を有してもよい。隣り合う2つの第3の広幅部13の間には、第3の狭幅部16が介在される。第3の狭幅部16は、第3の小径外周面16Aと、第3の大径内周面16Bとを有する。第3の小径外周面16Aは、外周溝を有する。第3の大径内周面16Bは、内周溝を有する。第3の小径外周面16Aの外周溝は、ガスケット1の中心軸線Axを含む断面において、径方向内側に向けて凹むほぼ半円形状を有する。第3の小径外周面16Aの外周溝は、隣り合う2つの第3の大径外周面13Aを滑らかに接続する。第3の大径内周面16Bの内周溝は、ガスケット1の中心軸線Axを含む断面において、径方向外側に向けて凹むほぼ半円形状を有する。第3の大径内周面16Bの内周溝は、隣り合う2つの第3の広幅部13の第3の小径内周面13Bを滑らかに接続する。
【0083】
また、図12に示す変形例2のように、第1の端面11Eが第1の突起11Fを有し、第2の端面12Eが第2の突起12Fを有してもよい。これにより、ガスケット1を外側部材3と内側部材4の間に配置する時、ガスケット1を内側部材4の外周面4Cに接触させた状態で、中心軸線Axに沿って外側部材3の孔の内周面3Aに対して摺動させる際に、外側角部11Cが外側部材3の孔の内周面3Aと内側部材4の大径部4Aとの間の円環状の隙間CLに挟まることを抑制できる。また、ガスケット1を内側部材4の外周面4Cに接触させた状態で、第1の突起11F、第2の端面12Eは、断面の縦軸線Xから離れる方向に広がりにくくなる。そのため、第1の突起11Fや第2の端面12Eの変形が抑制され、ガスケット1の面圧が維持され、シール性が向上する。
【符号の説明】
【0084】
A 大気空間
B 内部空間
Ax 中心軸線
1 ガスケット
3,63 外側部材
4,64 内側部材
3A,63C 孔の内周面
4C,64A 外周面
11 第1の広幅部
11A 第1の大径外周面
11B 第1の小径内周面
11C,12C 外側角部
11D,12D 内側角部
11E 第1の端面
11F 第1の突起
12 第2の広幅部
12A 第2の大径外周面
12B 第2の小径内周面
12E 第2の端面
12F 第2の突起
13 第3の広幅部
13A 第3の大径外周面
13B 第3の小径内周面
14 第1の狭幅部
14A 第1の小径外周面
14B 第1の大径内周面
14C 第1の外周溝
14D 第1の内周溝
15 第2の狭幅部
15A 第2の小径外周面
15B 第2の大径内周面
15C 第2の外周溝
15D 第2の内周溝

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12