(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】熱交換器及び空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F28F 1/30 20060101AFI20241202BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20241202BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F28F1/30 D
F28D1/053 A
F28F1/02 B
(21)【出願番号】P 2024541211
(86)(22)【出願日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2024001185
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾中 洋次
(72)【発明者】
【氏名】岸田 七海
(72)【発明者】
【氏名】足立 理人
(72)【発明者】
【氏名】八柳 暁
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇志
(72)【発明者】
【氏名】森本 修
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-72100(JP,A)
【文献】特開平6-147785(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154806(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0360755(US,A1)
【文献】実開昭62-18583(JP,U)
【文献】特開2010-181140(JP,A)
【文献】特開平11-148796(JP,A)
【文献】特開平8-247675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/00 - 99/00
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が扁平形状に形成され、貫通孔で形成された複数の流路を有し、上下方向に立てて配置されて互いに間隔を空けて並設された複数の扁平伝熱管と、
前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に配置されたコルゲートフィンと、
を備え、
前記コルゲートフィンは、
板状のフィン部が前記複数の扁平伝熱管の管軸方向に波形状に連なるように形成されており、前記管軸方向と前記複数の扁平伝熱管の並設方向である管並設方向とに対して直交する方向を空気流通方向とした場合に、前記空気流通方向において、前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に流入する空気の流れに対して前記コルゲートフィンの風上側の先端部である前縁部が、前記複数の扁平伝熱管の風上側の先端部である管前端部よりも風上側に位置するように突出しており、
前記フィン部は、
前記複数の扁平伝熱管と前記コルゲートフィンとの最も風上に位置する部分のロウ付け部よりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部と、
前記管並設方向に延びるルーバースリットと前記フィン部の平板状の平板部に対して傾斜した板部とを有する複数のルーバーと、
を含み、
前記複数の扁平伝熱管の前記管軸方向に見た場合において、前記空気流通方向における前記フィン部の寸法をフィン長さL
Fとし、前記空気流通方向における前記前縁部の位置と前記管前端部の位置との間の最小線分長さをL
tと定義した場合に、
前記フィン部と前記複数の扁平伝熱管とにおけるL
t/L
Fの関係が、
0<L
t/L
F<0.22の式を満たすように構成されて
おり、
前記複数の扁平伝熱管は、
前記管並設方向に見た場合に、前記管軸方向の中央部が両端部に対して突出するように前記空気流通方向に湾曲して形成されおり、
前記管並設方向に見た場合における、前記空気流通方向において前記コルゲートフィンが前記複数の扁平伝熱管から突出した長さを突出長さδとした場合に、
前記管軸方向における前記コルゲートフィンの下端部付近における下部突出長さδ
1
が、前記管軸方向における前記コルゲートフィンの中央部における中央部突出長さδ
2
よりも小さくなるように構成されている熱交換器。
【請求項2】
断面が扁平形状に形成され、貫通孔で形成された複数の流路を有し、上下方向に立てて配置されて互いに間隔を空けて並設された複数の扁平伝熱管と、
前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に配置されたコルゲートフィンと、
を備え、
前記コルゲートフィンは、
板状のフィン部が前記複数の扁平伝熱管の管軸方向に波形状に連なるように形成されており、前記管軸方向と前記複数の扁平伝熱管の並設方向である管並設方向とに対して直交する方向を空気流通方向とした場合に、前記空気流通方向において、前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に流入する空気の流れに対して前記コルゲートフィンの風上側の先端部である前縁部が、前記複数の扁平伝熱管の風上側の先端部である管前端部よりも風上側に位置するように突出しており、
前記フィン部は、
前記複数の扁平伝熱管と前記コルゲートフィンとの最も風上に位置する部分のロウ付け部よりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部と、
前記管並設方向に延びるルーバースリットと前記フィン部の平板状の平板部に対して傾斜した板部とを有する複数のルーバーと、
を含み、
前記複数の扁平伝熱管の前記管軸方向に見た場合において、前記空気流通方向における前記フィン部の寸法をフィン長さL
Fとし、前記空気流通方向における前記前縁部の位置と前記管前端部の位置との間の最小線分長さをL
tと定義した場合に、
前記フィン部と前記複数の扁平伝熱管とにおけるL
t/L
Fの関係が、
0<L
t/L
F<0.22の式を満たすように構成されて
おり、
前記コルゲートフィンは、
前記空気流通方向において、前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に流入する空気の流れに対して前記コルゲートフィンの風下側の先端部である後縁部が、前記複数の扁平伝熱管の風下側の先端部である管後端部よりも風下側に位置するように突出しており、
前記フィン部は、
前記複数の扁平伝熱管と前記コルゲートフィンとの最も風下に位置する部分のロウ付け部よりも風下側に延設した部分を構成する後縁突出部を含み、
前記前縁突出部は、
前記フィン部の上面側又は下面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた前縁側縁折部を含み、
前記前縁側縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成しており、
前記後縁突出部は、
前記フィン部の上面側又は下面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた後縁側縁折部を含み、
前記後縁側縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成しており、
前記フィン部は、
前記管軸方向に見た場合に、前記後縁側縁折部の面積が、前記前縁側縁折部の面積よりも大きくなるように構成されている熱交換器。
【請求項3】
前記フィン部と前記複数の扁平伝熱管とにおけるL
t/L
Fの関係が、
0.06<L
t/L
F<0.22の式を満たす請求項1
又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記複数のルーバーの内、前記前縁部に最も近い位置に設けられたルーバーであって最も風上側の位置に設けられたルーバーの前記板部は、
前記フィン部に付着した結露水を前記空気流通方向において前記前縁部とは反対側の前記コルゲートフィンの後縁部側に導水する傾斜面を有する請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記フィン部には、
前記空気流通方向における前記複数の扁平伝熱管の幅の中央部の位置において、前記フィン部の上面の結露水を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリットが前記管並設方向に延びるように形成されている請求項1
又は2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記前縁突出部には、
前記フィン部の上面の結露水を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリットが前記管並設方向に延びるように形成されている請求項1
又は2に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記前縁突出部には、
前記平板部から上方に突出した形状の壁を構成する凸部又は前記平板部の上面に形成された窪んだ形状の壁である凹部が前記管並設方向に延びるように設けられている請求項1
又は2に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記前縁突出部は、
前記フィン部の上面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた第1縁折部を含み、
前記第1縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成している請求項1
又は2に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記前縁突出部は、
前記フィン部の下面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた第2縁折部を含み、
前記第2縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成しており、
前記コルゲートフィンは、
前記管軸方向において、前記第1縁折部と前記第2縁折部とが交互に形成されている請求項8に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記コルゲートフィンは、
前記空気流通方向において、前記複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に流入する空気の流れに対して前記コルゲートフィンの風下側の先端部である後縁部が、前記複数の扁平伝熱管の風下側の先端部である管後端部よりも風下側に位置するように突出しており、
前記フィン部は、
前記複数の扁平伝熱管と前記コルゲートフィンとの最も風下に位置する部分のロウ付け部よりも風下側に延設した部分を構成する後縁突出部を含む請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記後縁突出部は、
前記フィン部の上面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた第3縁折部を含み、
前記第3縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成している請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記後縁突出部は、
前記フィン部の下面側に折り曲げられて前記平板部に重ねられた第4縁折部を含み、
前記第4縁折部の縁は、
前記平板部に対して段差を形成しており、
前記コルゲートフィンは、
前記管軸方向において、前記第3縁折部と前記第4縁折部とが交互に形成されている請求項11に記載の熱交換器。
【請求項13】
請求項1
又は2に記載の熱交換器を有する空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コルゲートフィンを有する熱交換器及び空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低温外気にて蒸発器として機能する熱交換器において、コルゲートフィンの前縁を扁平管先端よりも突き出す構造にした熱交換器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の熱交換器は、このような構造にすることによって、フィンの前縁部のフィン効率を落とし、先端部の温度を相対的に上昇させることで、熱交換器のフィンの前縁部の着霜量を抑制して、着霜耐力を向上させることができ、また、変形による破損等を防ぐことができるとされている。なお、フィン効率とは、実際にフィンから放熱された熱エネルギー量と、フィンの温度とが全域で一様であるときの放熱量の比である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱交換器は、扁平管を鉛直方向に延伸するように配置し、扁平管の間にコルゲートフィンを挟み込んだ熱交換器である。特許文献1の熱交換器のように、着霜耐力を向上させようとし、フィンを扁平管よりも突き出して形成しようとすると、熱交換器は、着霜運転時には着霜耐力が向上するものの、除霜運転時にはフィンの先端部ほど霜が溶けにくく、残氷を発生させることがある。特に、熱交換器が外風にさらされているような条件下では、フィンの先端で融解した水が排水されにくく、扁平管から突き出たフィンの突出部では再び外風によって再氷結し、除霜性能の大幅低下を引き起こす、という課題がある。
【0005】
本開示は、上記のような問題点を解決するため、着霜耐力向上と除霜運転時の残氷の発生抑制とを両立可能にし、除霜性能の低下を抑制する熱交換器及び空気調和装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る熱交換器は、断面が扁平形状に形成され、貫通孔で形成された複数の流路を有し、上下方向に立てて配置されて互いに間隔を空けて並設された複数の扁平伝熱管と、複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に配置されたコルゲートフィンと、を備え、コルゲートフィンは、板状のフィン部が複数の扁平伝熱管の管軸方向に波形状に連なるように形成されており、管軸方向と複数の扁平伝熱管の並設方向である管並設方向とに対して直交する方向を空気流通方向とした場合に、空気流通方向において、複数の扁平伝熱管の内、隣接する扁平伝熱管同士の間に流入する空気の流れに対してコルゲートフィンの風上側の先端部である前縁部が、複数の扁平伝熱管の風上側の先端部である管前端部よりも風上側に位置するように突出しており、フィン部は、複数の扁平伝熱管とコルゲートフィンとの最も風上に位置する部分のロウ付け部よりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部と、管並設方向に延びるルーバースリットとフィン部の平板状の平板部に対して傾斜した板部とを有する複数のルーバーと、を含み、複数の扁平伝熱管の管軸方向に見た場合において、空気流通方向におけるフィン部の寸法をフィン長さLFとし、空気流通方向における前縁部の位置と管前端部の位置との間の最小線分長さをLtと定義した場合に、フィン部と複数の扁平伝熱管とにおけるLt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されており、複数の扁平伝熱管は、管並設方向に見た場合に、管軸方向の中央部が両端部に対して突出するように空気流通方向に湾曲して形成されおり、管並設方向に見た場合における、空気流通方向においてコルゲートフィンが複数の扁平伝熱管から突出した長さを突出長さδとした場合に、管軸方向におけるコルゲートフィンの下端部付近における下部突出長さδ
1
が、管軸方向におけるコルゲートフィンの中央部における中央部突出長さδ
2
よりも小さくなるように構成されているものである。
【0007】
また、本開示に係る空気調和装置は、上記の熱交換器を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る熱交換器及び空気調和装置は、熱交換器のフィン部が、複数の扁平伝熱管とコルゲートフィンとの最も風上に位置する部分のロウ付け部よりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部を含む。また、熱交換器は、フィン部と複数の扁平伝熱管とにおけるLt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されている。熱交換器は、上記構成を有することで、着霜耐力向上と除霜運転時の残氷の発生抑制とを両立可能にし、除霜性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る熱交換器の構成を説明する図である。
【
図2】実施の形態1に係る熱交換器の一部の概略斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係るコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図5】比較例に係る熱交換器の空気流通方向におけるフィン部の温度分布を示す概念図である。
【
図6】実施の形態1に係る熱交換器の空気流通方向におけるフィン部の温度分布を示す概念図である。
【
図7】フィン部の突出長さ比(L
t/L
F)と、暖房低温能力[%]との関係を示す図である。
【
図8】実施の形態2に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図9】比較例に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図10】実施の形態3に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図11】実施の形態3に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図12】実施の形態4に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図13】実施の形態4に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図14】実施の形態5に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図15】実施の形態6に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図16】実施の形態7に係る熱交換器の一部の第1例の概略平面図である。
【
図17】実施の形態7に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した第1例の概略断面図である。
【
図18】実施の形態7に係る熱交換器の一部の第2例の概略平面図である。
【
図19】実施の形態7に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した第2例の概略断面図である。
【
図20】実施の形態8に係る熱交換器の概略側面図である。
【
図21】実施の形態8に係る熱交換器の管軸方向における端部の一部の概略平面図である。
【
図22】実施の形態8に係る熱交換器の管軸方向における中央部の一部の概略平面図である。
【
図23】実施の形態9に係る熱交換器の管軸方向における端部の一部の概略平面図である。
【
図24】実施の形態10に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図25】実施の形態10に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図26】実施の形態11に係る熱交換器のコルゲートフィンの平板部を空気流通方向に切断した概略断面図である。
【
図27】実施の形態12に係る熱交換器の一部の概略平面図である。
【
図28】実施の形態13に係る空気調和装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に係る熱交換器及び空気調和装置について、添付図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、以下の説明において、図における上方を「上側」とし、下方を「下側」として説明する。さらに、理解を容易にするために、方向を表す用語(たとえば「右」、「左」など)などを適宜用いるが、説明のためのものであって、これらの用語により本開示が限定されるものではない。また、湿度及び温度の高低については、特に絶対的な値との関係で高低が定まっているものではなく、装置などにおける状態及び動作などにおいて相対的に定まるものとする。そして、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
[熱交換器10の構成]
図1は、実施の形態1に係る熱交換器10の構成を説明する図である。
図1の矢印は、熱交換器10が蒸発器として使用される場合の冷媒の流れを示している。熱交換器10が蒸発器として使用される場合、低温及び低圧の冷媒が扁平伝熱管1の管内の冷媒流路を流れる。熱交換器10が凝縮器として使用される場合、高温及び高圧の冷媒が扁平伝熱管1の管内の冷媒流路を流れる。
【0012】
図1に示すように、実施の形態1の熱交換器10は、パラレル配管形となるコルゲートフィンチューブ型の熱交換器である。熱交換器10は、複数の扁平伝熱管1、複数のコルゲートフィン2及び一対のヘッダー3を有する。
【0013】
一対のヘッダー3は、それぞれ、空気調和装置90(
図28参照)を構成する他の装置と配管接続され、熱交換媒体となる流体である冷媒が流入出し、冷媒を分岐または合流させる管である。一対のヘッダー3は、第1ヘッダー3Aと第2ヘッダー3Bとを有する。第1ヘッダー3Aと第2ヘッダー3Bとは、上下に間隔を空けて配置されている。熱交換器10が蒸発器として使用される場合、上側の第2ヘッダー3Bには液状の冷媒が通過し、下側の第1ヘッダー3Aにはガス状の冷媒が通過する。熱交換器10が凝縮器として使用される場合、上側の第2ヘッダー3Bにはガス状の冷媒が通過し、下側の第1ヘッダー3Aには液状の冷媒が通過する。
【0014】
一対のヘッダー3の間には、各ヘッダー3に対して垂直に複数の扁平伝熱管1が配置されており、複数の扁平伝熱管1は互いに平行に配置されている。複数の扁平伝熱管1は、空気流通方向Y(
図2参照)と直交する方向に等間隔に並設されている。複数の扁平伝熱管1は、互いに間隔を空けて並設されている。以下、複数の扁平伝熱管1が並設される方向(
図1の左右方向)を「管並設方向X」、扁平伝熱管1の軸方向(
図1の上下方向)を「管軸方向Z」という。管軸方向Zは、熱交換器10の上下方向である。また、「管並設方向X」と「管軸方向Z」とに直交する方向を「空気流通方向Y」という。空気流通方向Yでは、後述する白抜き矢印の方向(
図2~
図4参照)に空気が流れる。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る熱交換器10の一部の概略斜視図である。
図2における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。扁平伝熱管1は、断面が扁平形状に形成されている。扁平伝熱管1は、扁平断面の長手側の外側面(以下、扁平面1aという)が平面状であり、扁平形状の短手側における外側面が曲面状である伝熱管である。扁平伝熱管1は、管の内部に、貫通孔で形成された複数の流路1bを有する多穴扁平伝熱管である。
【0016】
それぞれの扁平伝熱管1は上下方向に立てて配置されている。扁平伝熱管1の貫通孔は、上下方向に延びており、一対のヘッダー3に連通している。扁平伝熱管1は、扁平断面の長手側が空気流通方向Yに沿うようにして配置されている。各扁平伝熱管1は、一対のヘッダー3のそれぞれに形成された挿入穴(図示せず)に扁平伝熱管1の両端部が挿し込まれてロウ付けされることで一対のヘッダー3と接合されている。ロウ付けのロウ材には、たとえばアルミニウムを含むロウ材が使用される。
【0017】
複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間にはコルゲートフィン2が配置されている。コルゲートフィン2は、冷媒と外気との伝熱面積を広げるために配置されている。コルゲートフィン2は、後述する板状のフィン部24が複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに交互に折り返すように形成されている。コルゲートフィン2は、平板状のフィン材に対してコルゲート加工が行われ、山折り及び谷折りを繰り返すつづら折りにより折り曲げられ、波形状に、蛇腹となって形成されている。ここで、波形状に形成されてできた凹凸による折り曲げ部分は、波形状の頂部となる。実施の形態1において、コルゲートフィン2の頂部は、高さ方向にわたって並んでいる。コルゲートフィン2は、後述する板状のフィン部24が複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに波形状に連なるように形成されている。
【0018】
図3は、実施の形態1に係るコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。
図3における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図3の斜め方向の実線矢印は結露水4の流れを示している。なお、結露水4とは、空気中の水分が凝縮して熱交換器10の表面に付着した水のことである。
図2及び
図3に示すように、コルゲートフィン2は、扁平伝熱管1よりも空気流通方向Yの上流側に突出した後述する前縁突出部2aを除いて、扁平伝熱管1の扁平面1aに接合されている。この接合部分は、ロウ材によってロウ付けされ、接合されている。
【0019】
コルゲートフィン2を構成するフィン材の材質は、たとえば、アルミニウム合金である。そして、コルゲートフィン2を構成するフィン材の表面には、ロウ材層がクラッドされている。クラッドされたロウ材層の主材は、たとえば、アルミシリコン系のアルミニウムを含むロウ材である。ここで、コルゲートフィン2を構成するフィン材の板厚は、たとえば50μm~200μm程度である。
【0020】
コルゲートフィン2は、板状のフィン部24が管軸方向Zに波形状に連なる構成を有する。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yに見てフィン部24が交互に逆向きの傾斜で管軸方向Zに連なった形状を有する。フィン部24は、平板状の平板部21と、平板部21の管並設方向Xの両端の湾曲状の頂部20とを有する。コルゲートフィン2は、頂部20部分で、扁平伝熱管1の扁平面1aに面接触して扁平伝熱管1に接合されている。
【0021】
フィン部24には、複数のルーバー22が空気流通方向Yに並んで形成されている。ルーバー22は、空気を通過させるルーバースリット22aと、ルーバースリット22aに空気を導く板部22bと、を有する。板部22bは、平板部21に対して傾斜している。ルーバースリット22a及び板部22bは、管並設方向Xに延びた長方形状に構成されている。ルーバー22は、平板部21から板部22bが切り起こされて形成されている。
【0022】
複数のルーバー22は、フィン部24に形成された後述の排水スリット23よりも空気流通方向Yの上流側に形成された第1ルーバー群22Aと、排水スリット23よりも空気流通方向Yの下流側に形成された第2ルーバー群22Bと、に分けられる。排水スリット23は、フィン部24の上面、特に水平に近い平板部21に溜まった水を下面側に落下させるための開口である。
【0023】
ここで、
図3において、フィン部24の構成の一例を説明する。中心補助線l1は第1ルーバー群22Aの板部22bの板厚方向の仮想の中心補助線、中心補助線l2は第2ルーバー群22Bの板部22bの板厚方向の仮想の中心補助線である。
図3に示すように、重力gの向きを基準に平板部21の上面と下面を定義するとき、第1ルーバー群22Aの板部22bと第2ルーバー群22Bの板部22bとは、中心補助線l1と中心補助線l2とが下面側で交差するように、傾斜の向きが設定されている。
【0024】
第1ルーバー群22Aの板部22bと第2ルーバー群22Bの板部22bとが、平板部21に対して互いに逆向きに傾斜している。このような向きでルーバー22の板部22bが形成されていることで、あるフィン部24に形成されたルーバー22の板部22bに沿って流れた結露水4は、その下のフィン部24の排水スリット23に向かって導水される。よって、この構成を有する熱交換器10は、排水性を大きく改善することができる。なお、
図3に示すフィン部24におけるルーバー22の構成は、一例でありルーバー22の構成は、
図3に示す構成に限定するものではない。
【0025】
フィン部24には、フィン部24上に発生した結露水4を排水する排水スリット23が形成されている。排水スリット23は、コルゲートフィン2に形成された貫通孔である。低温外気の条件下では、空気中の水分が結露して、扁平伝熱管1及びコルゲートフィン2の表面に結露水4が生じる。コルゲートフィン2のフィン部24の表面に生じた結露水4は、排水スリット23から下部側のフィン部24に流下する。
【0026】
排水スリット23は、管並設方向X、つまり空気流通方向Yと直交する方向に長手に延びる長方形状に形成されている。排水スリット23は、一例としてフィン部24の空気流通方向Yの中央部分に形成されているが、排水スリット23の形成位置は中央部分に限定されるものではない。
【0027】
排水スリット23は、
図1には空気流通方向Yに1列形成した例を示しているが、排水スリット23の列数は2列以上でもよい。排水スリット23が複数列形成される場合、複数列の排水スリット23は、例えば、フィン部24の空気流通方向Yの中央部分に隣り合って形成される。隣り合ってとは、排水スリット23同士の間にルーバー22を有さないことを意図している。
【0028】
複数列の排水スリット23が形成されている場合、複数列の排水スリット23同士の間の領域は、典型的には平板部21と同様に平坦である。複数列の排水スリット23のうち、空気流通方向Yの最も上流側にある排水スリット23と第1ルーバー群22Aとの間、また、空気流通方向Yの最も下流側にある排水スリット23と第2ルーバー群22Bとの間も平板部21と同様に平坦な領域を形成してもよい。なお、排水スリット23の列数は、排水スリット23の個数と同義であり、以下、排水スリット23の数を、「列数」または「個数」のどちらかの表現を用いて示すこととする。
【0029】
図4は、実施の形態1に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。
図4は、複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに見た場合の熱交換器10を示している。また、
図4における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図4を用いてコルゲートフィン2について更に詳細に説明する。なお、
図4では排水スリット23の図示を省略している。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対してコルゲートフィン2の風上側の先端部である前縁部2bを有する。
【0030】
複数の扁平伝熱管1のそれぞれは、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対して複数の扁平伝熱管1の風上側の先端部である管前端部1cを有する。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対して前縁部2bが管前端部1cよりも風上側に位置するように突出している。
【0031】
フィン部24は、複数の扁平伝熱管1とコルゲートフィン2との最も風上に位置する部分のロウ付け部10aよりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部2aを含む。
図4においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。前縁突出部2aは、空気流通方向Yにおいて、ロウ付け部10aと前縁部2bとの間の部分を構成する。すなわち、前縁突出部2aは、空気流通方向Yにおいて、扁平伝熱管1よりも外側に突出した部分を構成する。また、フィン部24は、管並設方向Xに延びるルーバースリット22a(
図2参照)とフィン部24の平板状の平板部21に対して傾斜した板部22b(
図2参照)とを有する複数のルーバー22を含む。
【0032】
ここで、
図4に示すように、複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに見た場合において、空気流通方向Yにおけるフィン部24の寸法をフィン長さL
Fと定義する。フィン長さL
Fは、空気流通方向Yにおけるフィン部24の前縁部2bと後縁部2cとの間の両縁間の距離である。また、複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに見た場合において、空気流通方向Yにおける前縁部2bの位置と管前端部1cの位置との間の最小線分長さをL
tと定義する。より詳細には、最小線分長さをL
tは、複数の扁平伝熱管1の管軸方向Zに見た場合において、管並設方向Xに延ばした仮想の前縁部2bの位置と、管前端部1cの位置との間の空気流通方向Yにおける長さである。
【0033】
熱交換器10は、フィン部24と複数の扁平伝熱管1とにおけるLt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されている。熱交換器10は、フィン部24と複数の扁平伝熱管1とにおけるLt/LFの関係が、0.06<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されているとより好ましい。フィン部24と複数の扁平伝熱管1とにおけるLt/LFの関係は、フィン部24の突出長さ比と称する。ここで、フィン部24の突出長さ比(Lt/LF)を以下の範囲にすることに関して、熱交換器の暖房低温能力との関係において説明する。
【0034】
熱交換器の暖房低温能力とは、低外気環境下における熱交換器の暖房能力のことである。低温外気の条件下では、熱交換器は、フィン表面で空気中の水分が結露し、霜が形成される。すなわち、低温外気の条件下では、熱交換器は、着霜しながら運転を行う。この際、熱交換器は、着霜が進むことで、空気の通過する流路が閉塞し、次第に能力が低下していく。
【0035】
このため、熱交換器は、ある一定量の霜が成長すると、室外ファンの運転を停止し、ホットガス冷媒を熱交換器の内部に流すことで、除霜運転を行う。除霜運転時では暖房は停止するため、熱交換器の暖房能力は0となる。熱交換器は、その後、霜が十分に溶けた後に、圧縮機と送風機とを再起動し、再び暖房運転を開始する。すなわち、暖房低温能力とは、熱交換器において、着霜しながら暖房運転する積算能力を、着霜しながら暖房運転する時間と除霜運転の時間との和で平均化したものと定義する。
【0036】
図5は、比較例に係る熱交換器10Lの空気流通方向Yにおけるフィン部24の温度分布を示す概念図である。
図5における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図5の(a)は、熱交換器10Lの概念図であり、
図5の(b)は、熱交換器10Lの空気流通方向Yにおけるフィン部24のフィン長さL
Fとフィン部24の表面温度との関係を示す概念図である。
【0037】
比較例に係る熱交換器10Lは、空気流通方向Yにおいてフィン部24の前縁部2bが空気の流れに対して風上側に突出していない機器である。
図5の(b)において、横軸は、フィン部24のフィン長さL
Fを示し、縦軸は、温度(℃)を示している。(b)の実線Aは、フィン部24の表面温度を示し、破線Bは、熱交換器10Lの周囲の空気の温度を示している。(b)のA1部は、フィン部24の前縁部2bの位置を示し、A2部は、後縁部2cの位置を示している。
【0038】
図6は、実施の形態1に係る熱交換器10の空気流通方向Yにおけるフィン部24の温度分布を示す概念図である。
図6においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。
図6における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図6の(a)は、熱交換器10の概念図であり、
図6の(b)は、熱交換器10の空気流通方向Yにおけるフィン部24のフィン長さL
Fとフィン部24の表面温度との関係を示す概念図である。
【0039】
熱交換器10は、上述したように、空気流通方向Yにおいてフィン部24の前縁部2bが空気の流れに対して風上側に突出している機器である。
図6の(b)において、横軸は、フィン部24のフィン長さL
Fを示し、縦軸は、温度(℃)を示している。(b)の実線Aは、空気流通方向Yにおけるフィン部24の位置に対するフィン部24の表面温度を示し、破線Bは、空気流通方向Yにおけるフィン部24の位置に対するフィン部24の熱交換器10の周囲の空気の温度を示している。(b)のA1部は、フィン部24の前縁部2bの位置を示し、A2部は、後縁部2cの位置を示している。
【0040】
図5及び
図6を用いて、低温外気の条件下における室外に配置された熱交換器10の暖房運転において、フィン部24の表面での霜の形成について説明する。
図5に示すように、比較例に係る熱交換器10Lのフィン部24は、風上側に突出した部分が無いため、熱伝導で隣接する扁平伝熱管1の内部を流れる冷媒飽和温度に近い値となる。なお、冷媒飽和温度は、一定温度であるとする。このため、実線Aで示すフィン部24の表面温度と、フィン部24の表面温度よりも温度の高い破線Bで示す空気の温度との温度差H1は、フィン部24の上流部で最も大きくなる。そのため、比較例の熱交換器10Lは、フィン部24の上流部で結露水4が生じやすく着霜量がフィン部24の上流部で最も大きくなるため、急激に霜による風路閉塞が起こり、暖房低温能力が低下する。
【0041】
これに対し、
図6に示すように実施の形態1に係る熱交換器10は、フィン部24が風上側に突出した部分を有している。実施の形態1に係る熱交換器10は、フィン部24の風上側の先端部となる前縁部2bが扁平伝熱管1から距離があるため、フィン部24の風上側の先端部における表面温度は、扁平伝熱管1の内部を流れる冷媒飽和温度よりも高くなる。そのため、フィン部24の空気の風上側の先端部での空気の温度とフィン部24の表面温度との温度差H2が、比較例に係る熱交換器の温度差H1よりも小さくなる。熱交換器10は、比較例の熱交換器10Lよりもフィン部24の上流部で結露水4が生じにくく、着霜量が上流部で抑えられるので、霜による急激な風路閉塞を抑制することができ、これによって暖房低温能力を向上させることができる。
【0042】
図7は、フィン部24の突出長さ比(L
t/L
F)と、暖房低温能力(%)との関係を示す図である。上述したように、熱交換器は、低外気温の環境条件下で暖房運転することによってコルゲートフィンが着霜する。熱交換器は、一定量着霜すると、暖房能力が低下するため、暖房運転から除霜運転に切り替える。熱交換器は、除霜運転中では暖房ができず、または暖房能力が低下する。一般に、除霜運転は、熱交換器の中に0℃より高い温度の冷媒を流すことで霜を溶かすが、その際に通常ではファンを停止する。
【0043】
しかし、除霜運転を行っても、外気温度が0℃未満で、かつ、熱交換器に対して風が吹く場合は、氷を解かす熱が風に奪われるため、霜が溶けきるまでの時間が長くなり、長時間除霜してもフィン部の先端部に霜(氷)が溶け残る場合があった(残霜)。そのため、フィン部24が風上側に突出した部分を有して着霜量を抑えつつ、除霜運転時に残霜が生じにくい熱交換器10が求められている。すなわち、着霜耐力向上と除霜運転時の残氷の発生抑制を両立可能にし、除霜性能の低下を抑制した熱交換器が求められている。
【0044】
そこで、発明者は、フィン部24の突出長さ比(Lt/LF)に着目した。発明者は、フィン部24の突き出し長さを変えたコルゲートフィン2について、一定量の着霜後に、外気温約0℃、一定の風速を外風として与えて、その条件下で除霜運転を行い、除霜にかかる時間(目視で着霜がほぼなくなる時間)を測定する実験を行った。発明者は、Lt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されていることで、フィン部の先端部で残霜が発生しないことを実験的に確認した。
【0045】
なお、残霜は、風速条件及び除霜運転条件にも影響を受けるが、フィン部24の厚みの影響を強く受ける。フィン部24の厚みは、扁平伝熱管1からの熱伝導の影響を強く受ける。特にフィン部24の厚みが、0.15mm以下と薄い場合、おおよそ
図7に示したように、暖房運転能力は、フィン部24の突出長さ比(L
t/L
F)に依存する変化となる。また、
図7の斜線部Fに示すように、フィン部24の突出長さ比(L
t/L
F)が0.22よりも大きくなると残氷が生じやすくなる。
【0046】
図7に示すように、熱交換器10は、フィン部24の突出長さ比(L
t/L
F)は、0より大きく、0.22未満の範囲で大幅に暖房低温能力が改善可能である。熱交換器10は、フィン部24の突出長さ比(L
t/L
F)が0.22以上になるようにフィン部24が突き出してもほぼ暖房低温能力の改善効果がなく、残霜が発生しやすくなる。
【0047】
[熱交換器10の効果]
熱交換器10のフィン部24は、複数の扁平伝熱管1とコルゲートフィン2との最も風上に位置する部分のロウ付け部10aよりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部2aを含む。また、熱交換器10は、フィン部24と複数の扁平伝熱管1とにおけるLt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されている。熱交換器10は、フィン部24が前縁突出部2aを含むことで着霜耐力を向上させることができ、Lt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されていることで除霜運転時においてもフィン部24の先端部での残氷を抑制可能である。すなわち、熱交換器10は、上記構成を有することで、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン部24の先端部での残氷を抑制可能であり、暖房低温能力を向上させることができる。熱交換器10は、上記構成を有することで、着霜耐力向上と除霜運転時の残氷の発生抑制とを両立可能にし、除霜性能の低下を抑制することができる。熱交換器10は、残氷が成長してしまうような熱交換器と比較して除霜性能を向上させることができる。
【0048】
また、熱交換器10は、フィン部24と複数の扁平伝熱管1とにおけるL
t/L
Fの関係が、0.06<L
t/L
F<0.22の式を満たすように構成されている。熱交換器10は、上記の構成を有することによって、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン部24の先端部での残氷の抑制が可能であり、暖房低温能力を向上させることができる。また、熱交換器10は、
図7のL
t/L
Fが0と0.06との場合を比較してわかるように、L
t/L
Fが0.06の場合の暖房運転能力は、L
t/L
Fが0の場合の暖房運転能力と比較して、少なくとも10%向上している。すなわち、熱交換器10は、フィン部24の前縁部2b側の突出が無い場合と比較して、0.06<L
t/L
Fとなるように構成されていることで、少なくとも10%以上の暖房低温能力を向上させることができる。
【0049】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。
図9は、比較例に係る熱交換器10Mのコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態2は、ルーバー22の構成を更に特定するものである。
図8及び
図9における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図8及び
図9における破線矢印は結露水4が流れる方向の一例を示している。以下、実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0050】
複数のルーバー22の内、前縁部2bに最も近い位置に設けられたルーバー22であって最も風上側の位置に設けられたルーバー221の板部22bは、次のような構造を有する。
図8に示すように、ルーバー221の板部22bは、フィン部24に付着した結露水4を空気流通方向Yにおいて前縁部2bとは反対側のコルゲートフィン2の後縁部2c側に導水する傾斜面22dを有する。ルーバー221の板部22bの上面は、空気流通方向Yにおいて内側を向くように形成されている。ルーバー221の板部22bは、平板部21に対して下方に位置するように形成されている。ルーバー221の板部22bにおける下側の先端部は、空気流通方向Yにおいて熱交換器10の中央側且つ下方に向くように形成されている。
【0051】
図9に示すように、比較例に係る熱交換器10Mにおけるルーバー221の板部22bは、フィン部24に付着した結露水4を空気流通方向Yにおいてコルゲートフィン2の前縁部2b側に導水する傾斜面22eを有する。比較例に係る熱交換器10Mにおけるルーバー221の板部22bの上面は、空気流通方向Yにおいて外側を向くように形成されている。比較例に係る熱交換器10Mの場合、結露水4は、板部22bに沿って前縁部2b側に流れ、フィン部24における表面張力によって残霜4aに向かって移動する。残霜4aは、結露水が付着して外風の影響により成長し更に大きくなる。そのため、比較例に係る熱交換器10Mは、大きくなった残霜4aによる影響を受け、熱交換性能が低下し、また、除霜性能が低下する恐れがある。
【0052】
[熱交換器10の効果]
実施の形態2に係る熱交換器10におけるルーバー221の板部22bは、フィン部24に付着した結露水4を空気流通方向Yにおいて前縁部2bとは反対側のコルゲートフィン2の後縁部2c側に導水する傾斜面22dを有する。熱交換器10は、前縁部2bとは反対側の方向に結露水4を導水することで、結露水4の残霜4aへの移動を抑制し、外風による霜成長を低減することができる。
【0053】
実施の形態3.
図10は、実施の形態3に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。
図11は、実施の形態3に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態3は、排水スリット23の位置を特定するものである。
図10においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。
図10及び
図11における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。以下、実施の形態3について説明するが、実施の形態1又は実施の形態2と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1及び実施の形態2と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0054】
フィン部24には、空気流通方向Yにおける複数の扁平伝熱管1の幅の中央部1Cの位置において、フィン部24の上面の結露水4を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリット23が管並設方向Xに延びるように形成されている。排水スリット23は、フィン部24に形成された開口部であり、貫通孔である。排水スリット23の数は、1つでもよく複数でも良い。排水スリット23は、空気流通方向Yにおける複数の扁平伝熱管1の幅のおおよそ中央部1Cに形成されていればよく、排水スリット23の形成位置は、中央部1Cに対して前縁部2b側に偏っていてもよく、あるいは、後縁部2c側に偏っていても良い。
【0055】
[熱交換器10の効果]
フィン部24には、空気流通方向Yにおける複数の扁平伝熱管1の幅の中央部1Cの位置において、フィン部24の上面の結露水4を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリット23が管並設方向Xに延びるように形成されている。実施の形態3に係る熱交換器10は、フィン部24の表面の結露水4を効率的にフィン部24の中心付近で排水することで、前縁部2bの残霜4aに結露水4が導水することを抑制し、外風による霜成長を低減することができる。
【0056】
実施の形態4.
図12は、実施の形態4に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。
図13は、実施の形態4に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態4は、前縁突出部2aの構成を更に特定するものである。
図12及び
図13における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図12及び
図13における破線矢印は結露水4が流れる方向の一例を示している。以下、実施の形態4について説明するが、実施の形態1~実施の形態3と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態3と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0057】
実施の形態4に係る熱交換器10の前縁突出部2aは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第1縁折部2a1を含む。
図12においてハッチング部は第1縁折部2a1を示している。第1縁折部2a1の縁は、平板部21に対して段差2a2を形成している。第1縁折部2a1は、フィン部24を構成する板状部材が平板部21に対して上側に重ねられている部分である。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおける前縁部2b側の端部に第1縁折部2a1を有している。第1縁折部2a1の折り曲げ部分が、フィン部24の前縁部2bを構成する。熱交換器10の内側に向いた第1縁折部2a1の縁部分は、段差2a2を形成する。段差2a2は、管軸方向Z且つ管並設方向Xに延びる壁を構成し、結露水4が前縁部2b側に移動することを防ぐ。
【0058】
[熱交換器10の効果]
実施の形態4に係る熱交換器10の前縁突出部2aは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第1縁折部2a1を含む。第1縁折部2a1の縁は、平板部21に対して段差2a2を形成している。実施の形態4に係る熱交換器10は、第1縁折部2a1を有し、前縁突出部2aに段差2a2を形成することで、結露水4が前縁部2bに導水されることを抑制し、外風による霜の成長を低減することができる。また、実施の形態4に係る熱交換器10は、フィン部24の縁を折り曲げることで第1縁折部2a1を形成し、前縁部2b側のフィン部24の板の厚さを厚くすることによって熱伝導率を増加させ、前縁部2b側の霜を溶かしやすくできる。そのため、実施の形態4に係る熱交換器10は、第1縁折部2a1を有することで、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン先端での残氷を抑制することができ、暖房低温能力を向上させることができる。
【0059】
実施の形態4に係る熱交換器10は、第1縁折部2a1を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、前縁突出部2aのフィン強度を向上させることができる。また、熱交換器10は、第1縁折部2a1を有することで、フィン材の厚みを厚くしフィン先端部の強度を向上させることができ、フィン部24が上流側に突き出した構造を製造する際に、コルゲートフィン2が倒れにくくなり、製造性を向上させることができる。
【0060】
実施の形態5.
図14は、実施の形態5に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態5は、前縁突出部2aの構成を更に特定するものである。
図14における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図14における破線矢印は結露水4が流れる方向の一例を示している。以下、実施の形態5について説明するが、実施の形態1~実施の形態4と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態4と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0061】
実施の形態5に係る熱交換器10の前縁突出部2aは、フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第2縁折部2a3を含む。第2縁折部2a3の縁は、平板部21に対して段差2a2を形成している。第2縁折部2a3は、フィン部24を構成する板状部材が平板部21に対して下側に重ねられている部分である。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおける前縁部2b側の端部に第2縁折部2a3を有している。第2縁折部2a3の折り曲げ部分が、フィン部24の前縁部2bを構成する。熱交換器10の内側に向いた第2縁折部2a3の縁部分は、段差2a2を形成する。
【0062】
コルゲートフィン2は、
図14に示すように、管軸方向Zにおいて、第1縁折部2a1と第2縁折部2a3とが交互に形成されている。すなわち、コルゲートフィン2は、第1縁折部2a1と第2縁折部2a3とを含む。
【0063】
[熱交換器10の効果]
実施の形態5に係る熱交換器10の前縁突出部2aは、フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第2縁折部2a3を含む。実施の形態5に係る熱交換器10は、第2縁折部2a3を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、前縁突出部2aのフィン強度を向上させることができる。
【0064】
また、実施の形態5に係る熱交換器10の前縁突出部2aは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第1縁折部2a1を含む。そのため、実施の形態4に係る熱交換器10と同様に、熱交換器10は、第1縁折部2a1を有することで、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン先端での残氷を抑制することができ、暖房低温能力を向上させることができる。実施の形態5に係る熱交換器10は、第1縁折部2a1及び第2縁折部2a3を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、前縁突出部2aのフィン強度を向上させることができる。
【0065】
実施の形態6.
図15は、実施の形態6に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。実施の形態6は、排水スリット23の位置を特定するものであり、実施の形態3とは異なる位置に排水スリット23が形成されているものである。
図15においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。
図15における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。以下、実施の形態6について説明するが、実施の形態1~実施の形態5と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態5と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0066】
実施の形態6に係る熱交換器10の前縁突出部2aには、フィン部24の上面の結露水4(
図2参照)を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリット23が管並設方向Xに延びるように形成されている。排水スリット23は、フィン部24に形成された開口部であり、貫通孔である。排水スリット23の数は、1つでもよく複数でも良い。排水スリット23は、管並設方向Xに沿った横幅の長い開口である。排水スリット23は、少なくとも一部が最も風上のロウ付け部10aの位置よりも風上側に形成されている。すなわち、排水スリット23は、少なくとも一部が前縁部2bの位置と最も風上のロウ付け部10aの位置との間のフィン部24に形成されている。
【0067】
[熱交換器10の効果]
熱交換器10の前縁突出部2aには、フィン部24の上面の結露水4(
図2参照)を落下させて排水する少なくとも1つの排水スリット23が管並設方向Xに延びるように形成されている。熱交換器10は、前縁突出部2aに排水スリット23が設けられていることで、結露水4が前縁部2bに導水することを抑制し、外風による霜の成長を抑制することができる。すなわち、熱交換器10は、前縁突出部2aに排水スリット23が設けられていることで、結露水4が残霜に導水されて再氷結することを防ぐことができ、残霜の成長を抑制することができる。
【0068】
実施の形態7.
図16は、実施の形態7に係る熱交換器10の一部の第1例の概略平面図である。
図17は、実施の形態7に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した第1例の概略断面図である。
図18は、実施の形態7に係る熱交換器10の一部の第2例の概略平面図である。
図19は、実施の形態7に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した第2例の概略断面図である。実施の形態7は、前縁突出部2aの構成を更に特定するものである。
図16及び
図18においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。
図16~
図19における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。以下、実施の形態7について説明するが、実施の形態1~実施の形態6と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態6と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0069】
図16及び
図17に示すように、実施の形態7に係る熱交換器10の前縁突出部2aには、平板部21から上方に突出した形状の壁を構成する凸部25が管並設方向Xに延びるように設けられている。または、
図18及び
図19に示すように、実施の形態7に係る熱交換器10の前縁突出部2aには、平板部21の上面に形成された窪んだ形状の壁である凹部26が管並設方向に延びるように設けられている。
【0070】
凸部25は、前縁突出部2aの上面に設けられたリブである。凸部25は、平板部21の表面から上方に突出している。なお、凸部25は、前縁突出部2aの下面に設けられてもよい。凹部26は、前縁突出部2aの上面に設けられた窪みあるいは溝である。凹部26は、平板部21の上面から下方に凹んでいる。凸部25及び凹部26の数は、1つでもよく複数でも良い。凸部25及び凹部26は、最も風上のロウ付け部10aの位置よりも風上側に形成されている。すなわち、凸部25及び凹部26は、前縁部2bの位置と最も風上のロウ付け部10aの位置との間のフィン部24に形成されている。凸部25は、結露水4の移動を妨げる壁である。凹部26は、内部に結露水が流入することによって、結露水4の移動を妨げることができる。
【0071】
[熱交換器10の効果]
実施の形態7に係る熱交換器10の前縁突出部2aには、凸部25又は凹部26が管並設方向Xに延びるように設けられている。熱交換器10は、前縁突出部2aに凸部25が設けられていることで、結露水4がフィン部24の先端側に導水されることを抑制することができ、外風による霜の再成長を抑制することができる。熱交換器10は、前縁突出部2aに凹部26が設けられていることで、結露水4がフィン部24の先端側に導水されることを抑制することができ、外風による霜の再成長を抑制することができる。すなわち、熱交換器10は、前縁突出部2aに凸部25又は凹部26が設けられていることで、結露水4がフィン部24の先端部に流動することを抑制し、残霜の発生を抑制しつつ、着霜耐力を向上させることができる。また、熱交換器10は、前縁突出部2aに凸部25又は凹部26が設けられていることで、当該構成を有していない場合と比較して前縁突出部2aのフィン強度を向上させることができる。
【0072】
実施の形態8.
図20は、実施の形態8に係る熱交換器10の概略側面図である。
図21は、実施の形態8に係る熱交換器10の管軸方向Zにおける端部の一部の概略平面図である。
図22は、実施の形態8に係る熱交換器10の管軸方向Zにおける中央部の一部の概略平面図である。実施の形態8は、コルゲートフィン2と扁平伝熱管1との関係を更に特定するものである。
図20は、管並設方向Xに見た場合の熱交換器10を示している。
図21及び
図22においてハッチング部は前縁突出部2aを示している。
図20~
図22における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。以下、実施の形態8について説明するが、実施の形態1~実施の形態7と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態7と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0073】
複数の扁平伝熱管1は、管並設方向Xに見た場合に、管軸方向Zの中央部10cが両端部10c1に対して突出するように空気流通方向Yに湾曲して形成されている。すなわち、管並設方向Xに見た場合に、扁平伝熱管1は、鉛直方向に対して湾曲している。ここで、管並設方向Xに見た場合における、空気流通方向Yにおいてコルゲートフィン2が複数の扁平伝熱管1から突出した長さを突出長さδとする。コルゲートフィン2は、扁平伝熱管1の先端部に対して、風上方向に突き出して形成されている。突出長さδは、管並設方向Xに見た場合において、空気流通方向Yにおける熱交換器10の扁平伝熱管1の風上側の先端部である管前端部1cと、コルゲートフィン2の前縁部2bとの間の距離である。突出長さδを構成する部分は、前縁突出部2aに含まれる。
【0074】
コルゲートフィン2は、風上方向への突出長さδが管軸方向Zにおける熱交換器10の位置において異なっている。
図20及び
図21に示すように、熱交換器10において、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の下端部付近10bにおける突出長さδを、下部突出長さδ
1とする。
図20及び
図22に示すように、熱交換器10において、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の中央部における突出長さδを、中央部突出長さδ
2とする。
図20に示すように、熱交換器10は、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の下端部付近10bにおける下部突出長さδ
1が、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の中央部における中央部突出長さδ
2よりも小さくなるように構成されている。下部突出長さδ
1を構成する熱交換器10の下端部付近10bの部分は、管軸方向Zの中央部10cに対して、下端部10c11に近い部分であり、第1ヘッダー3A付近の部分である。
【0075】
[熱交換器10の効果]
実施の形態8に係る熱交換器10は、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の下端部付近10bにおける下部突出長さδ1が、管軸方向Zにおけるコルゲートフィン2の中央部における中央部突出長さδ2よりも小さくなるように構成されている。実施の形態8に係る熱交換器10は、当該構成により、中央部10cに比べて結露水が多くなり残霜の残りやすい下端部付近10bのフィン部24の突出長さδを小さくすることで、前縁突出部2aの先端での霜の残霜を抑制することができる。
【0076】
実施の形態9.
図23は、実施の形態9に係る熱交換器10の管軸方向Zにおける端部の一部の概略平面図である。コルゲートフィン2の構成を更に特定するものである。
図23における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。以下、実施の形態9について説明するが、実施の形態1~実施の形態8と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態8と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0077】
コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対してコルゲートフィン2の風下側の先端部である後縁部2cを有する。
【0078】
複数の扁平伝熱管1のそれぞれは、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対して複数の扁平伝熱管1の風下側の先端部である管後端部1dを有する。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおいて、複数の扁平伝熱管1の内、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対して後縁部2cが管後端部1dよりも風下側に位置するように突出している。
【0079】
フィン部24は、複数の扁平伝熱管1とコルゲートフィン2との最も風下に位置する部分のロウ付け部10dよりも風下側に延設した部分を構成する後縁突出部2eを含む。
図23において前縁部2b側のハッチング部は前縁突出部2aを示し、後縁部2c側のハッチング部は後縁突出部2eを示している。後縁突出部2eは、空気流通方向Yにおいて、ロウ付け部10dと後縁部2cとの間の部分を構成する。すなわち、後縁突出部2eは、空気流通方向Yにおいて、扁平伝熱管1よりも外側に突出した部分を構成する。
【0080】
[熱交換器10の効果]
フィン部24は、複数の扁平伝熱管1とコルゲートフィン2との最も風下に位置する部分のロウ付け部10dよりも風下側に延設した部分を構成する後縁突出部2eを含む。熱交換器10は、残霜によって前縁突出部2aの延伸長さを抑制しなくてはならない場合に、当該構成を有することにより、後縁部2c側の部分を延伸させることで、伝熱面積を増加させ、残霜を抑制しつつ暖房低温能力を向上させることができる。熱交換器10は、当該構成を有することによりフィン部24の下流側にも突き出すことで、表面積を増加させ、着霜耐力を向上させることができる。
【0081】
実施の形態10.
図24は、実施の形態10に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。
図25は、実施の形態10に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態10は、後縁突出部2eの構成を更に特定するものである。
図24及び
図25における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図24及び
図25における破線矢印は結露水4が流れる方向の一例を示している。なお、
図25では、フィン部24は、前縁部2b側に第1縁折部2a1を含んでいるが、第1縁折部2a1の代わりに第2縁折部2a3(
図14参照)を含んでいてもよく、第1縁折部2a1及び第2縁折部2a3のいずれも含んでいなくてもよい。以下、実施の形態10について説明するが、実施の形態1~実施の形態9と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態9と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0082】
実施の形態10に係る熱交換器10の後縁突出部2eは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第3縁折部2e1を含む。
図24においてハッチング部は第3縁折部2e1を示している。第3縁折部2e1の縁は、平板部21に対して段差2e2を形成している。第3縁折部2e1は、フィン部24を構成する板状部材が平板部21に対して上側に重ねられている部分である。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおける後縁部2c側の端部に第3縁折部2e1を有している。第3縁折部2e1の折り曲げ部分が、フィン部24の後縁部2cを構成する。熱交換器10の内側に向いた第3縁折部2e1の縁部分は、段差2e2を形成する。段差2e2は、管軸方向Z且つ管並設方向Xに延びる壁を構成し、結露水4が後縁部2c側に移動することを防ぐ。
【0083】
[熱交換器10の効果]
実施の形態10に係る熱交換器10の後縁突出部2eは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第3縁折部2e1を含む。第3縁折部2e1の縁は、平板部21に対して段差2e2を形成している。実施の形態10に係る熱交換器10は、第3縁折部2e1を有し、後縁突出部2井eに段差2e2を形成することで、結露水4が後縁部2cに導水されることを抑制し、外風による霜の成長を低減することができる。また、実施の形態10に係る熱交換器10は、フィン部24の縁を折り曲げることで第3縁折部2e1を形成し、後縁部2c側のフィン部24の板の厚さを厚くすることによって熱伝導率を増加させ、後縁部2c側の霜を溶かしやすくできる。そのため、実施の形態10に係る熱交換器10は、第3縁折部2e1を有することで、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン後端での残氷を抑制することができ、暖房低温能力を向上させることができる。
【0084】
実施の形態10に係る熱交換器10は、第3縁折部2e1を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、後縁突出部2eのフィン強度を向上させることができる。また、熱交換器10は、第3縁折部2e1を有することで、フィン材の厚みを厚くしフィン先端部の強度を向上させることができ、フィン部24が下流側に突き出した構造を製造する際に、コルゲートフィン2が倒れにくくなり、製造性を向上させることができる。また、熱交換器10は、第1縁折部2a1又は第2縁折部2a3(
図14参照)と、第3縁折部2e1との両方を備えることで、上記の効果を更に向上させることができる。
【0085】
実施の形態11.
図26は、実施の形態11に係る熱交換器10のコルゲートフィン2の平板部21を空気流通方向Yに切断した概略断面図である。実施の形態11は、後縁突出部2eの構成を更に特定するものである。
図26における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図26における破線矢印は結露水4が流れる方向の一例を示している。なお、
図26では、フィン部24は、前縁部2b側に第1縁折部2a1及び第2縁折部2a3を含んでいるが、第1縁折部2a1及び第2縁折部2a3を含んでいなくてもよい。以下、実施の形態11について説明するが、実施の形態1~実施の形態10と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態10と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0086】
実施の形態11に係る熱交換器10の後縁突出部2eは、フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第4縁折部2e3を含む。第4縁折部2e3の縁は、平板部21に対して段差2e2を形成している。第4縁折部2e3は、フィン部24を構成する板状部材が平板部21に対して下側に重ねられている部分である。コルゲートフィン2は、空気流通方向Yにおける後縁部2c側の端部に第4縁折部2e3を有している。第4縁折部2e3の折り曲げ部分が、フィン部24の後縁部2cを構成する。熱交換器10の内側に向いた第4縁折部2e3の縁部分は、段差2a2を形成する。
【0087】
コルゲートフィン2は、
図26に示すように、管軸方向Zにおいて、第3縁折部2e1と第4縁折部2e3とが交互に形成されている。すなわち、コルゲートフィン2は、第3縁折部2e1と第4縁折部2e3とを含む。
【0088】
[熱交換器10の効果]
実施の形態11に係る熱交換器10の後縁突出部2eは、フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第4縁折部2e3を含む。実施の形態11に係る熱交換器10は、第4縁折部2e3を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、後縁突出部2eのフィン強度を向上させることができる。熱交換器10は、第4縁折部2e3を有することで、フィン材の厚みを厚くしフィン先端部の強度を向上させることができ、フィン部24が下流側に突き出した構造を製造する際に、コルゲートフィン2が倒れにくくなり、製造性を向上させることができる。また、熱交換器10は、第1縁折部2a1又は第2縁折部2a3(
図14参照)と、第4縁折部2e3との両方を備えることで、上記の効果を更に向上させることができる。
【0089】
また、実施の形態11に係る熱交換器10の後縁突出部2eは、フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた第3縁折部2e1を含む。そのため、実施の形態10に係る熱交換器10と同様に、熱交換器10は、第3縁折部2e1を有することで、着霜耐力を向上させつつ、除霜運転時においてもフィン先端での残氷を抑制することができ、暖房低温能力を向上させることができる。実施の形態11に係る熱交換器10は、第3縁折部2e1及び第4縁折部2e3を有することで、当該構成を有していない場合と比較して、後縁突出部2eのフィン強度を向上させることができる。また、熱交換器10は、第1縁折部2a1及び第2縁折部2a3(
図14参照)と、第3縁折部2e1及び第4縁折部2e3との両方を備えることで、上記の効果を更に向上させることができる。
【0090】
実施の形態12.
図27は、実施の形態12に係る熱交換器10の一部の概略平面図である。実施の形態12は、フィン部24の構成を更に特定するものである。
図27における白抜き矢印は空気が流れる方向を示している。
図27において前縁部2b側のハッチング部は後述する前縁側縁折部2fを示し、後縁部2c側のハッチング部は後縁側縁折部2gを示している。以下、実施の形態12について説明するが、実施の形態1~実施の形態11と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1~実施の形態11と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0091】
コルゲートフィン2は、隣接する扁平伝熱管1同士の間に流入する空気の流れに対してコルゲートフィン2の風下側の先端部である後縁部2cが、複数の扁平伝熱管1の風下側の先端部である管後端部1dよりも風下側に位置するように突出している。フィン部24は、複数の扁平伝熱管1とコルゲートフィン2との最も風下に位置する部分のロウ付け部10dよりも風下側に延設した部分を構成する後縁突出部2eを含む。
【0092】
前縁突出部2aは、フィン部24の上面側又は下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた前縁側縁折部2fを含む。フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた前縁側縁折部2fは、上述した第1縁折部2a1(
図26参照)である。フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた前縁側縁折部2fは、上述した第2縁折部2a3(
図26参照)である。前縁側縁折部2fの縁は、平板部21に対して段差2a2を形成している。
【0093】
後縁突出部2eは、フィン部24の上面側又は下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた後縁側縁折部2gを含む。フィン部24の上面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた後縁側縁折部2gは、上述した第3縁折部2e1(
図26参照)である。フィン部24の下面側に折り曲げられて平板部21に重ねられた後縁側縁折部2gは、上述した第4縁折部2e3(
図26参照)である。後縁側縁折部2gの縁は、平板部21に対して段差2e2を形成している。
【0094】
フィン部24は、管軸方向Zに見た場合に、後縁側縁折部2gの面積S1が、前縁側縁折部2fの面積S2よりも大きくなるように構成されている。
【0095】
空気流通方向Yにおける後縁突出部2eの長さL1は、前縁突出部2aの長さL2よりも長い。後縁突出部2eの長さL1は、空気流通方向Yにおける、ロウ付け部10dと後縁部2cとの間の長さである。前縁突出部2aの長さL2は、空気流通方向Yにおける、ロウ付け部10dと前縁部2bとの間の長さである。後縁突出部2eは、前縁突出部2aよりも扁平伝熱管1から突出している。
【0096】
なお、熱交換器10は、後縁突出部2eが前縁突出部2aよりも扁平伝熱管1からの突出量が大きいものに限定するものではない。熱交換器10は、後縁突出部2eと前縁突出部2aとの突出量が同じものでもよく、前縁突出部2aが後縁突出部2eよりも突出量が大きいものでもよい。空気流通方向Yにおける後縁突出部2eの長さL1が、前縁突出部2aの長さL2よりも長い場合、熱交換器10は、フィン部24の下流側にも突き出すことで、表面積を増加させ、着霜耐力を向上させることができる。
【0097】
[熱交換器10の効果]
フィン部24は、管軸方向Zに見た場合に、後縁側縁折部2gの面積S1が、前縁側縁折部2fの面積S2よりも大きくなるように構成されている。熱交換器10は、当該構成に構成されていることによって、前縁部2b側に対して後縁部2c部側のフィン部24の突出長さが長い場合に、当該構成を有していない場合と比較してフィン部24の強度を向上させることができる。
【0098】
実施の形態13.
図28は、実施の形態13に係る空気調和装置90の構成を示す図である。実施の形態13は、実施の形態1~実施の形態12の熱交換器10を備えた冷凍サイクル装置の一例としての空気調和装置90に関するものである。空気調和装置90は、実施の形態1~実施の形態12の熱交換器10を室外熱交換器230として用いる。
【0099】
図28に示すように、空気調和装置90は、室外機200と室内機100とを、ガス冷媒配管300及び液冷媒配管400により配管接続することで、冷媒回路を構成している。室外機200は、圧縮機210、四方弁220、室外熱交換器230及び室外ファン240を有している。実施の形態13の空気調和装置は、1台の室外機200と1台の室内機100とが配管接続されているものとするが、台数は任意である。
【0100】
圧縮機210は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。特に限定するものではないが、圧縮機210は、たとえばインバータ回路などにより、運転周波数を任意に変化させることにより、圧縮機210の容量を変化させることができる。四方弁220は、冷房運転時と暖房運転時とに応じて冷媒の流れを切り替える弁である。
【0101】
室外熱交換器230は、冷媒と室外の空気との熱交換を行う。室外熱交換器230は、暖房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。また、室外熱交換器230は、冷房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮し、液化させる。室外ファン240は、室外熱交換器230に室外の空気を送り込み、室外熱交換器230における熱交換を促す。
【0102】
一方、室内機100は、室内熱交換器110、減圧装置120及び室内ファン130を有している。室内熱交換器110は、空調対象となる室内の空気と冷媒との熱交換を行う。室内熱交換器110は、暖房運転時においては凝縮器として機能し、冷媒を凝縮し、液化させる。また、室内熱交換器110は、冷房運転時においては蒸発器として機能し、冷媒を蒸発させ、気化させる。
【0103】
減圧装置120は、冷媒を減圧して膨張させる。減圧装置120は、たとえば電子式膨張弁などで構成される。減圧装置120が電子式膨張弁で構成された場合には、減圧装置120は、制御装置(図示せず)などの指示に基づいて開度調整を行う。室内ファン130は、室内の空気を室内熱交換器110に通過させ、室内熱交換器110を通過させた空気を室内に供給する。
【0104】
次に、空気調和装置90の各機器の動作について、冷媒の流れに基づいて説明する。まず、暖房運転について説明する。暖房運転時には、四方弁220は
図28の点線側に切り替えられる。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温及び高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室内熱交換器110に流入する。室内熱交換器110に流入したガス冷媒は、空調対象空間の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。液化した冷媒は、減圧装置120で減圧されて気液二相状態となった後、室外熱交換器230に流入する。室外熱交換器230に流入した冷媒は、室外ファン240から送られた室外の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化する。ガス化した冷媒は、四方弁220を通過して、再度、圧縮機210に吸入される。以上のようにして冷媒が循環することで、空気調和装置90は暖房に係る空気調和を行う。
【0105】
次に、冷房運転について説明する。冷房運転時には、四方弁220は
図28の実線側に切り替えられる。圧縮機210により圧縮されて吐出した高温及び高圧のガス冷媒は、四方弁220を通過し、室外熱交換器230に流入する。室外熱交換器230に流入したガス冷媒は、室外ファン240が供給した室外の空気と熱交換することで凝縮し、液化する。液化した冷媒は、減圧装置120で減圧されて気液二相状態となった後、室内熱交換器110に流入する。室内熱交換器110に流入した冷媒は、空調対象空間の空気と熱交換することで蒸発し、ガス化する。ガス化した冷媒は、四方弁220を通過して再度圧縮機210に吸入される。以上のようにして冷媒が循環することで、空気調和装置90は冷房に係る空気調和を行う。
【0106】
次に、除霜運転について説明する。扁平伝熱管1(
図1参照)及びコルゲートフィン2(
図1参照)の表面温度が0℃以下となる低温環境において暖房運転を行う場合、室外熱交換器230には着霜が生じる。室外熱交換器230への着霜量が一定以上になると、室外ファン240によって発生する風が通過する室外熱交換器230の風路が閉塞され、室外熱交換器230の性能が低下し、暖房性能が低下する。そこで、暖房性能が低下した場合には、空気調和装置90は、室外熱交換器230の表面の霜を溶かす除霜運転が行われる。
【0107】
除霜運転では、室外ファン240が停止され、四方弁220が冷房運転時と同じ状態に切り替えられ、高温高圧のガス冷媒が室外熱交換器230に流入する。これにより、扁平伝熱管1及びコルゲートフィン2に付着した霜が融解する。除霜運転が開始されると、高温高圧のガス冷媒は、ヘッダー3(
図1参照)を介して扁平伝熱管1に流入する。そして、扁平伝熱管1に流入した高温の冷媒によって、扁平伝熱管1及びコルゲートフィン2に付着した霜は融解して水に変化する。霜が融解して生じた水は、扁平伝熱管1あるいはコルゲートフィン2に沿って室外熱交換器230の下方へ排水される。空気調和装置90は、付着した霜が融解したら除霜運転が終了され、暖房運転が再開される。なお、除霜運転を終了させ暖房運転を再開するタイミングは、既知の方法で決定することができる。例えば、図示しない温度センサの検知温度があらかじめ決められた温度になったとき、あるいは、除霜運転が一定時間実施された場合などに、除霜運転を終了させ暖房運転を再開する構成としてもよい。
【0108】
[空気調和装置90の効果]
実施の形態13の空気調和装置90は、実施の形態1~実施の形態12の熱交換器10を備えているので、熱交換器10と同様の効果を発揮させることができる。例えば、空気調和装置90は、着霜耐力向上と除霜運転時の残氷の発生抑制とを両立可能にし、除霜性能の低下を抑制することができる。
【0109】
上記の各実施の形態1~実施の形態13は、互いに組み合わせて実施することが可能である。例えば、後縁突出部2eには、排水スリット23が形成されていてもよい。また、後縁突出部2eは、凸部25又は凹部26を有していてもよい。また、以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 扁平伝熱管、1C 中央部、1a 扁平面、1b 流路、1c 管前端部、1d 管後端部、2 コルゲートフィン、2a 前縁突出部、2a1 第1縁折部、2a2 段差、2a3 第2縁折部、2b 前縁部、2c 後縁部、2e 後縁突出部、2e1 第3縁折部、2e2 段差、2e3 第4縁折部、2f 前縁側縁折部、2g 後縁側縁折部、3 ヘッダー、3A 第1ヘッダー、3B 第2ヘッダー、4 結露水、4a 残霜、10 熱交換器、10L 熱交換器、10M 熱交換器、10a ロウ付け部、10b 下端部付近、10c 中央部、10c1 両端部、10c11 下端部、10d ロウ付け部、20 頂部、21 平板部、22 ルーバー、22A 第1ルーバー群、22B 第2ルーバー群、22a ルーバースリット、22b 板部、22d 傾斜面、22e 傾斜面、23 排水スリット、24 フィン部、25 凸部、26 凹部、90 空気調和装置、100 室内機、110 室内熱交換器、120 減圧装置、130 室内ファン、200 室外機、210 圧縮機、220 四方弁、221 ルーバー、230 室外熱交換器、240 室外ファン、300 ガス冷媒配管、400 液冷媒配管。
【要約】
熱交換器は、複数の扁平伝熱管と、コルゲートフィンと、を備え、コルゲートフィンの風上側の先端部である前縁部が、複数の扁平伝熱管の風上側の先端部である管前端部よりも風上側に位置するように突出しており、フィン部は、複数の扁平伝熱管とコルゲートフィンとの最も風上に位置する部分のロウ付け部よりも風上側に延設した部分を構成する前縁突出部と、ルーバースリットと傾斜した板部とを有する複数のルーバーと、を含み、複数の扁平伝熱管の管軸方向に見た場合において、空気流通方向におけるフィン部の寸法をフィン長さLFとし、空気流通方向における前縁部の位置と管前端部の位置との間の最小線分長さをLtと定義した場合に、Lt/LFの関係が、0<Lt/LF<0.22の式を満たすように構成されているものである。