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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】搬送装置及びその搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/68 20060101AFI20241203BHJP
   B65G 13/10 20060101ALI20241203BHJP
   B65G 47/28 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B65G47/68 D
B65G13/10
B65G47/28 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021086536
(22)【出願日】2021-05-21
(65)【公開番号】P2022179213
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-075387(JP,A)
【文献】特開平03-067814(JP,A)
【文献】特開2013-136447(JP,A)
【文献】実開昭57-033629(JP,U)
【文献】特開2015-40122(JP,A)
【文献】特開2006-182464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/68
B65G 13/10
B65G 47/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2列以上で並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能と、
前記搬送機能を有する装置の特定の領域に隣接して備えられる、前記移動方向に対して左方向に0~90度及び右方向に0~90度の範囲で前記搬送物を方向変換可能な移載機能と、
前記移載機能を有する装置を基点として、前記移動方向の上流側及び下流側に備えられる前記搬送物を貯留可能なバッファリング機能と、
前記バッファリング機能を有する領域に貯留している前記搬送物の情報に基づいて、前記搬送機能を有する装置の前記上流側から搬送されてきた前記搬送物の、前記搬送機能を有する装置の前記下流側に対する前記移載機能を実行させる情報処理制御機能を有していることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送機能を有する装置が駆動式コンベヤであり、
前記移載機能を有する装置が駆動式ローラウェイであり、
前記バッファリング機能を有する装置がアキュムレイティングコンベヤであることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動式ローラウェイを構成するローラは、
前記駆動式コンベヤの幅の1/10~1/3の長さで、
前記搬送物を移動可能な間隔及び数量が備えられ、
前記駆動式コンベヤの前記移動方向及び前記幅方向に配列され、
前記駆動式コンベヤの搬送面とほぼ等しい位置に搬送面が形成されており、
前記駆動式コンベヤの前記幅方向及び前記駆動式コンベヤの搬送物と接触する搬送面に平行な回動軸を中心に回動すると共に、前記搬送面に垂直な回動軸を中心に回動することを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置において、前記バッファリング機能を有する領域に貯留している前記搬送物の数量情報に基づいて前記情報処理制御機能が動作して前記移載機能を実行させることを特徴とする搬送方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置を通過する前記搬送物の単位時間当たりの数量が最大となるように前記数量情報を処理するアルゴリズムの結果に基づいて、前記情報処理制御機能が動作して前記移載機能を実行させることを特徴とする請求4に記載の搬送方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の搬送装置が配備された物流システムにおいて、
データ管理コンピュータとデータ制御コンピュータを有する中央情報システムと、
機械学習コンピュータを備え、
前記中央情報システムに蓄積された管理データ及び制御データが、前記機械学習コンピュータに入力され、
前記機械学習コンピュータが、前記管理データ及び制御データを用い、動的計画法による前記搬送物の搬送経路の強化学習又は深層強化学習を行って搬送経路モデルを生成し、
前記バッファリング機能を有する領域に貯留している前記搬送物の情報が、前記機械学習コンピュータに入力され、
前記機械学習コンピュータが、前記搬送経路モデルと前記バッファリング機能を有する領域に貯留している前記搬送物の情報とから推論した結果により、前記情報処理制御機能が動作して前記移載機能を実行させることを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送機能、移載機能、バッファリング機能、並びに、搬送速度を維持する情報処理制御機能を備えた搬送装置、及び、その搬送方法に関する。更に詳しくは、少なくとも2列以上で搬送物を独立移動可能な搬送機能、搬送機能を有する装置内で方向変換可能な移載機能、搬送物を貯留可能なバッファリング機能、及び、搬送物の情報に基づいて搬送物の移動方向を指示可能な情報処理制御機能を有する搬送装置、並びに、インテリジェントに最適な搬送速度を維持するように、情報処理制御機能が搬送速度を適正化する搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のサプライ・チェーン・マネージメントには、従来の物流システムでは想像することもできなかった、目を見張るものがある(非特許文献1及び2)。コンピュータ及びインターネット技術が発達するまでの物流システムは、物を移動させる手段であるコンベヤ、トラック、クレーン等の搬送装置を用い、物を供給者から需要者へ、時間的及び空間的に移動させることを主たる目的とした物の運搬及び保管機能に限定されたものであった。従って、物には多種多様な情報が付随されているが、このような物の運搬及び保管に係る物流システムと物に付随する情報に係る情報システムとが相互に連携されるものではなく、情報システムによる物流システムの統合的管理が行われることはなかった。
【0003】
しかし、コンピュータ及びインターネット技術が急速に発達し、それらを利用できる環境が整うに従って、入荷、検品、保管、搬送、仕分け、出荷等の物の運搬及び保管機能を備えた物流センターに、物に付随する情報を把握し、制御できる、計画処理、統計処理、会計処理、在庫管理等の機能を備えた保管設備、仕分け設備、及び、搬送装置として、自動倉庫、積層棚、移動棚、デジタル・ソータ及びピッキングシステム、コンベヤ、及び、AGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)等が導入され、物流システムと情報システムとが結合し、情報システムによる物流システムの統合的管理が行われるようになった。
【0004】
更に、物流を支援するPOS(Point of Sales)及びPOP(Point of Production)を用いて、物の運搬及び保管に係る動きだけでなく、物の需要及び生産を含めた物の動きを把握及び制御可能な情報システムが開発されてきた。一方、社会経済システムも、EC(electronic commerce、電子商取引)に代表されるように、消費者の物に対する需要が多種多様化するに伴い、少品種を大量に生産及び消費する大量生産・大量消費は崩壊し、消費者の要求に合致した物を適時、適量供給する多品種少量生産・消費が望まれ移行してきた。その結果、自動車等の生産方式に代表されるジャストインタイムのシステムが、一般消費者にも、必要な物を、必要な時に、必要な量だけが供給されるジャストインタイムの社会経済システムが展開されるようになった。
【0005】
ジャストインタイム社会経済システムを構築するためには、POSに基づいた消費者の需要動向を、生産、流通、販売で共有化し、その需要動向に応えることが可能な生産、流通、販売に適正化する必要がある。そのため、情報システムによる物流システムの統合的管理に加え、物の生産も情報システムによって管理されることが必要であり、それを可能とするFA(Factory Automation、工場自動化)、FMS(Flexible Manufacturing System、フレキシブル製造システム)、及び、CIM(Computer Integrated Manufacturing、コンピュータによる統合製造)が発達した。このようにして、生産システムと物流システムとが連携され得るように、情報システムによってこれらが統合的に管理され、消費者の需要性動向に基づいた、原材料の調達から、生産、流通、小売、納入に至るまで、効率的に行われるサプライ・チェーンが構築された。
【0006】
そして、サプライ・チェーンでは、適正な量を、適正な場所へ、適正な時機に、生産、搬送、納入し、消費者の要求を満足させ、かつ、生産システム及び物流システムが情報システムによって効率的に実行されることが求められている。
【0007】
そこで、このようなサプライ・チェーンにおける物流システムは、一つの重要な要素であり、従来の物に関する供給者と需要者との時間的及び空間的間隔を解消する物流という考え方から、物の流れを一元管理し、効率的に行い、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ、必要な人に供給し、物流システムを最適化するロジスティックスの考え方に変化し、このロジスティックスに基づいて運営されるようになった。
【0008】
この考え方に基づいた物流システムの運営は、それを構成する製造物流、販売物流、調達物流、回収物流、リサイクル物流全体が総合的に機能する必要がある。そのため、それぞれの物流における役割を果たすハードウェア及びソフトウェア双方の技術開発が益々重要となっている。
【0009】
特に、販売物流に着目すると、サプライ・チェーンの発達と共に、物を扱う技術として、ロボット、機械学習、人工知能、ビッグデータ、IоT(Internet of Things、モノのインターネット)等の導入が検討され、既に導入されつつある。これらは、販売物流を構成する、輸送・配送、保管、包装、荷役、流通加工、及び、情報処理の機能向上を図ることを目的としている。中でも、物流センターは、保管、包装、荷役、及び、情報処理の技術進歩により大きく変貌している。
【0010】
これらは、基本的に、コンベヤを中心とした物流センター内の物の移動を適正に制御し、物流センターへの物の搬入速度と物流センターからの物の搬出速度、すなわち、物流センター内の物の連続搬送を維持することを目的とする技術開発を達成しようとするものである。その中心となる解決課題は、やはりバッファリングの短縮である。
【0011】
従来より、物流センターでは、保管、包装、及び、荷役において、需要動向から、入庫、保管、ソーティング、ピッキング、包装、出庫等の物の流れが、情報処理システムで一元管理され、これらの各工程を中継するバッファリング機能を有するコンベヤを中心とした各種搬送システムにおける搬送及びバッファリング条件の適正化、すなわち、適正なバッファリング機能を有する搬送システムが、物流センター内の連続搬送を維持してきた。
【0012】
しかし、EC等が益々増加するに従って、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなり、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の差異が顕著となってきたため、従来のバッファリング機能を有する搬送システムでは、効率よく高速で連続搬送することが困難となってきた(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2008-540291号公報
【文献】特開2012-250824号公報
【文献】特開2012-028417号公報
【文献】特開2012-028418号公報
【文献】特開2007-269477号公報
【文献】特開2003-341830号公報
【文献】特開2006-027899号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】谷崎隆士,「工場における搬送業務自動化技術の回顧と展望」,システム/制御/情報,Vol.64,No.5,pp.159-164,2020
【文献】株式会社キーエンス,「基礎から学ぶ-物流現場の効率化」,[online],[2021年4月2日検索],インターネット,<https://www.keyence.co.jp/ss/products/autoid/logistics/>
【文献】Rockwell Automation Inc.,「ワン・スマート・コンベア。無限の可能性」,[online],[2021年4月2日検索],インターネット,<https://www.rockwellautomation.com/ja-jp/company/news/case-studies/one-smart-conveyor--boundless-possibilities-.html>
【文献】伊東電機株式会社,「ボール式仕分けモジュール」,[online],[2021年3月30日検索],インターネット,<https://www.itohdenki.co.jp/company/test_inov.html, https://youtu.be/7PT6uRZF_bU>
【文献】伊東電機株式会社,取扱説明書「多角分岐モジュールMABS(マルチアングルボールソーター)<ユーザーマニュアル>」,[online],[2021年3月30日検索],インターネット,<https://www.itohdenki.co.jp/support/manual.html>
【文献】株式会社椿本チェイン,「クイックソート(コンベヤ式ソーター)」,[online],[2021年3月30日検索],インターネット,<https://www.tsubakimoto.jp/materials-handling/distribution/products/quicksort/>
【文献】トーヨーカネツ株式会社,「SRSソータ」,[online],[2021年3月30日検索],インターネット,<https://www.tksl.co.jp/ja/products-info/products-list/sort-sys/incf0u000000480y.html>
【文献】株式会社協和製作所,「PSU30(スイング式高速仕分けユニット)」,[online],[2021年3月30日検索],インターネット,<https://www.kyowa-mfg.co.jp/industrial/psu30/,https://www.youtube.com/watch?v=jQJDEUUZCjg&list=PLFE1xO61M8x2s5fzVbjzTSv1KswHDLTt8&t=16s>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
背景技術において説明したように、従来より、物流センターでは、保管、包装、及び、荷役において、需要動向から、入庫、保管、ソーティング、ピッキング、包装、出庫等の物の流れが、情報処理システムで一元管理され、これらの各工程を中継するバッファリング機能を有するコンベヤを中心とした各種搬送システムにおける搬送及びバッファリング条件の適正化、すなわち、適正なバッファリング機能を有する搬送システムが、物流センター内の連続搬送を維持してきた。
【0016】
しかし、ECが増加するに従って、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなり、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の差異が顕著となってきたため、従来のバッファリング機能を有する搬送システムでは、効率よく高速で連続搬送することが困難な状況に直面するようになってきた。
【0017】
そこで、本発明は、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなることによって生じる、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、効率よく高速で連続搬送が可能な搬送装置及びその搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するために種々検討した結果、並列して配置した2列のベルトコンベヤの特定の位置に、搬送物の方向変換自在な伊東電機(株)製ボール式仕分けモジュールを隣接して備え、更に、ボール式仕分けモジュールを基点として、2列のベルトコンベヤの上流側及び下流側それぞれにバッファ領域としてアキュムレイティングコンベヤを備えた搬送装置を設計した。すなわち、この搬送装置は、バッファ領域を有する2列のベルトコンベヤ間をボール式仕分けモジュールによって移載可能に一体化した、全く新しい発想の搬送装置である。
【0019】
そして、この搬送装置を試作し、2列のベルトコンベヤ内の4箇所のバッファ領域に存在する搬送物の数量を計算処理した結果に基づき、ボール式仕分けモジュールの動作を制御し、2列のベルトコンベヤの下流側の適正な方向に搬送物を移動させることによって、ベルトコンベヤの搬送速度を制御でき、物の移動量の変動に対するベルトコンベヤの最適な連続搬送速度を維持できることが分かった。更に、搬送装置の構成、並びに、搬送物の情報処理制御技術を種々検討することによって本発明の完成に至った。
【0020】
すなわち、本発明は、少なくとも2列以上で並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能、搬送機能を有する装置の特定の位置に隣接して備えられる搬送物を自在に方向変換可能な移載機能、移載機能を有する装置の上流側及び下流側に備えられるバッファリング機能、並びに、バッファリング機能を有する領域に存在する搬送物の情報に基づいて、搬送機能を有する装置の下流側に対する移載機能を実行させる情報処理制御機能を有している搬送装置であり、その搬送装置を最適な搬送速度に制御可能な搬送方法である。更に、本発明の搬送装置及び搬送方法の特徴について、それぞれ、詳しく説明する。
【0021】
本発明の搬送装置は、少なくとも2列以上で並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能、この搬送機能を有する装置の特定の領域に隣接して備えられる、搬送物の移動方向に対して左方向に0~90度及び右方向に0~90度の範囲で搬送物を方向変換可能な移載機能、この移載機能を有する装置を基点として、搬送物の移動方向の上流側及び下流側に備えられる搬送物を貯留可能なバッファリング機能、並びに、このバッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報に基づいて、搬送機能を有する装置の下流側に対する移載機能を実行させる情報処理制御機能を有していることを特徴としている。
【0022】
特に重要なことは、本発明の搬送装置は、上記搬送機能、方向変換機能、バッファリング機能、並びに、情報処理制御機能を備えている装置の組合せではなく、これらの機能をそれぞれ備えている装置が有機的に連携して構成され、一つの搬送装置として、異なる搬入及び搬出速度、又、変動する搬入及び搬出速度に対して、最適な連続搬送速度を維持できることにある。
【0023】
搬送機能を有する装置は、特に限定されるものではないが、駆動式コンベヤであることが好ましく、ベルトコンベヤ、ローラコンベヤ、ホイールコンベヤ、チェーンコンベヤ、スラットコンベヤ、エプロンコンベヤ、及び、メッシュコンベヤ等を用いることができる。駆動方式は、特に限定されず、電動モーター、モータローラ、リニアモーター等の動力がベルト、チェーン、ギア等の手段により伝達される一般的なものが用いられる。ただし、高速で連続的に搬送するためには、少なくとも100m/min以上の速度で稼働可能な駆動方式が好ましい。
【0024】
移載機能を有する装置は、搬送物の方向変換角度を自在に制御可能な移載装置であれば、特に限定されるものではないが、搬送速度の観点から駆動式ローラウェイであることが好ましい。
【0025】
特に、駆動式ローラウェイは、方向変換角度を自在に制御可能とし、高速搬送を可能にするため、次のような特徴を有している必要がある。本発明の駆動式ローラウェイのローラは、駆動式コンベヤの幅の1/10~1/3の長さであり、搬送物を移動可能な間隔及び数量が備えられ、駆動式コンベヤの移動方向及び幅方向に配列され、駆動式コンベヤの搬送面とほぼ等しい位置に搬送面が形成されており、駆動式コンベヤの幅方向及び駆動式コンベヤの搬送物と接触する搬送面に平行な回動軸を中心に回動すると共に、駆動式コンベヤの搬送面に垂直な回動軸を中心に回動するように構成されていることが好ましい。
【0026】
このようなローラを回動させる駆動方式も、電動モーター、モータローラ等の動力をベルト、チェーン、ギア等の手段により伝達される一般的なものが用いられるが、ローラ毎にモーターを備えていても構わない。ただし、高速で連続的に搬送するためには、少なくとも100m/min以上の速度で稼働可能な駆動方式が好ましい。
【0027】
しかし、ローラは、搬送物の移動方向に対して左方向に0~90度及び右方向に0~90度の範囲で搬送物を方向変換可能な移載機能を発現するために、少なくとも、搬送物の移動方向に対して少なくとも左方向に0~90度及び右方向に0~90度の範囲内で、連続的に自在に回動する必要があるため、搬送物の形状や重量等に依存するものであるが、駆動式コンベヤの幅の1/10~1/3の長さのローラであって、駆動式コンベヤの幅方向及び駆動式コンベヤの搬送物と接触する搬送面に平行な回動軸を中心に回動すると共に、駆動式コンベヤの搬送面に垂直な回動軸を中心に回動し、駆動式コンベヤの移動方向及び幅方向に配列され、ローラと搬送物とが接触する搬送面が、駆動式コンベヤの搬送面とほぼ等しい位置となるように配備されている必要がある。
【0028】
このように、ローラは、搬送物が移動する推進力となるように回動すると共に、ローラを搬送物の移動する方向と垂直になるように回動する必要があるが、必ずしもローラ自体が、これら双方の動作をする駆動方式とする必要はなく、回動するローラを支持するローラ支持体を設け、このローラ支持体が駆動式コンベヤの搬送面に垂直な回動軸を中心に回動し、ローラを搬送物の移動する方向と垂直になるように回動してもよい。すなわち、駆動式ローラウェイは、ローラ又はローラ及びローラ支持体、ローラを駆動式コンベヤの幅方向及び駆動式コンベヤの搬送物と接触する搬送面に平行な回動軸を中心に回動させる駆動源、並びに、ローラ及びローラ支持体を駆動式コンベヤの搬送面に垂直な回動軸を中心に回動させる駆動源とそれらの動力伝達手段から構成されるユニットを備えた装置であればよい。
【0029】
また、ローラは、必ずしも1本である必要はなく、上記ユニット内に駆動式コンベヤの幅の1/10~1/3の長さの複数のローラが、搬送方向に及び/又は搬送方向と並列に配列され、その搬送面を駆動式コンベヤの搬送面とほぼ等しい位置となるように配備されており、上記2つの駆動源とそれらの伝達手段を備えたユニットとすることも可能である。更に、駆動式コンベヤの幅の1/10~1/3の長さの複数のローラが搬送方向に配置され、ローラ間にベルトが回動可能に張架されたベルトコンベヤ式セルが、上記ローラと同様の機能を発現するように搬送方向に及び/又は搬送方向に並列に1つ以上配列され、セルに張架されたベルトの搬送面を駆動式コンベヤの搬送面とほぼ等しい位置となるように、セル支持体で回動可能に支え、上記2つの駆動源とそれらの動力伝達手段を備えたユニットとすることも可能である。
【0030】
そして、このようなローラ及びユニットは、駆動式コンベヤの移動方向及び幅方向に、規則的で、一定の面密度で配列されていることが好ましい。特に、四角形の頂点にローラ及びユニットを配置した基本パターンが連続している格子状、三角形の頂点にローラ及びユニットを配置した基本パターンが連続している千鳥状、並びに、六角形の頂点にローラ及びユニットを配置した基本パターンが連続している亀甲状に配列していることが好ましい。中でも、搬送物の駆動式ローラウェイ間の移動という観点から、底角が45度の二等辺三角形の頂点にローラ及びユニットを配置した基本パターンが連続している45度千鳥配列状が好ましい。ただし、ローラ及びユニットの間隔は、搬送の弊害とならないように搬送物の形状及び重量に応じて適宜設計される。
【0031】
一方、ローラ及びセルのベルトは、搬送物が移動する推進力となるように回動すると共に、ローラを搬送物の移動する方向と垂直になるように回動して、駆動式ローラウェイ間の搬送物の高速移動が安定して実現されるためには、搬送物とそれが接触するローラ及びセルのベルトとの間に、ローラ及びベルトが空転しない程度の摩擦力が求められるため、エラストマーであることが好ましく、耐久性という観点から、架橋性エラストマーであることがより好ましい。エラストマーの材質は、合成ゴム又は天然ゴムであれば特に限定されないが、合成ゴムの場合は、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、イソブチレン・イソプレンゴム(ブチルゴム、IIR)、塩素化ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPDM、EPM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(ニトリルゴム、NBR)、シリコーンゴム(SR)、フッ素ゴム(FKM、FPM)、アクリルゴム(ACM,ANM)、ポリウレタンゴム(PUR)、多硫化ゴム(T)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、エチレン・酢酸ビニルゴム(EVA)、及び、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等が好ましく、引張強度が250~450kg/cm、伸び率が300~800%であるウレタンゴムがより好ましい。
【0032】
更に、ローラ及びベルトの表面に、摩擦力を増加させるための凹凸を形成しておくことによって、空転をより確実に防止することができる。
【0033】
また、ローラの材質を限定することなく、ローラの少なくとも搬送物と接触する領域に、上記材質及び表面形状のエラストマーを被覆してもよい。
【0034】
次いで、バッファリング機能を有する装置は、搬送の障害となることなく、搬送装置を占拠する空間が少ないことが好ましく、アキュムレイティングコンベヤが相応しい。
【0035】
以上に説明した搬送装置は、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなることによって生じる、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、効率よく高速で連続搬送を実現するために考案されたハードウェアとしての搬送装置であるが、本発明は、ソフトウェアによって制御される搬送方法と両輪をなすものである。以下、本発明の搬送装置を用いた搬送方法について説明する。
【0036】
背景技術に記述したように、サプライ・チェーンにおける一つの重要な要素である物流システムは、従来の物に関する供給者と需要者との時間的及び空間的間隔を解消する物流という考え方から、物の流れを一元管理し、効率的に行い、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ、必要な人に供給し、物流システムを最適化するロジスティックスの考え方に変化しており、消費者の要求を満足させるために、物流システムが情報システムによって効率的に実行されることが求められている。
【0037】
そのため、本発明の搬送装置が活躍する販売物流に着目すると、サプライ・チェーンの発達と共に、物を扱う技術として、ロボット、機械学習、人工知能、ビッグデータ、IоT等の導入が検討され、既に導入されつつある。
【0038】
そこで、本発明の搬送方法は、上記本発明の搬送装置において、搬送物の情報を用い、最適な搬送速度が維持されるアルゴリズムの結果に基づいて、情報処理制御機能が動作することを特徴とするものである。すなわち、本発明は、移載機能を有する装置を基点として搬送機能を有する装置の上流側から搬送されてきた搬送物を、移載機能を有する装置を基点として搬送機能を有する装置の下流側に対し、本発明の搬送装置の適正な高速搬送速度が維持されるように、搬送物の移動方向を、移載機能を有する装置に指示する情報処理が行われ、その情報処理結果に基づいて移載機能が制御される搬送方法を提供するものである。
【0039】
搬送物の情報は、バッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報を用いることが、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、効率よく高速で連続搬送を実現することができる。このバッファリング機能を有する領域とは、物流の根幹をなす少なくとも2列以上で並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能を有する搬送装置の、移載機能を有する装置を基点として、移動方向の上流側及び下流側双方に備えられているバッファリング機能を有する領域を指すものであり、これらの情報を活用することによって、本発明の搬送装置の最適な搬送速度が維持される。また、搬送物の情報としては、本発明の搬送装置の活用方法に応じて選択されるものであるが、バッファリング機能を有する領域に貯留されている搬送物の数量が、どのような物流においても効果的であることを見出した。
【0040】
その結果、本発明の搬送方法は、少なくとも2列以上で並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能、搬送機能を有する装置の特定の位置に隣接して備えられる搬送物を自在に方向変換可能な移載機能、移載機能を有する装置の上流側及び下流側に備えられるバッファリング機能、並びに、バッファリング機能を有する領域に存在する搬送物の情報に基づいて、搬送機能を有する装置の下流側に対する移載機能を実行させる情報処理制御機能を有している搬送装置において、バッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の数量情報に基づいて情報処理制御機能が動作して、搬送物の移動方向を指示し移載機能を実行させることを特徴としている。
【0041】
特に、本発明の搬送方法は、本発明の搬送装置の搬送機能を有する装置を通過する搬送物の単位時間当たりの数量が最大となるように、バッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の数量情報を処理するアルゴリズムの結果に基づいて、情報処理制御機能が動作して、搬送物の移動方向を指示し移載機能を実行させることを特徴としている。
【0042】
このアルゴリズムは、特に限定されるものではないが、最適化の課題に有効な動的計画法であることが好ましい。
【0043】
更に、本発明の搬送装置は、例えば、物流センター等の物流システムに配備されて使用されるので、物流システムを掌る中央情報システムの膨大なデータを用いることが可能であり、有効である。中央情報システムは、主に、在庫管理部、入庫管理部、出庫管理部を管理するデータ管理コンピュータと、コンベア制御部、入庫制御部、仕分け制御部、出庫制御部等を制御するデータ制御コンピュータとを備え、搬送物の膨大なデータに基づいた情報処理制御により物流システムが管理されているので、中央情報システムの膨大なデータを本発明の搬送装置に利用した搬送方法を検討した結果、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなることによって生じる、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、最適な搬送速度が維持され、効率よく高速で連続搬送が可能な搬送方法を見出した。
【0044】
すなわち、本発明の搬送方法は、本発明の搬送装置が配備された物流システムにおいて、
データ管理コンピュータとデータ制御コンピュータを有する中央情報システムに加え、機械学習コンピュータを備え、中央情報システムに蓄積された管理データ及び制御データが、機械学習コンピュータに入力され、機械学習コンピュータが、中央情報システムの管理データ及び制御データを用い、動的計画法による搬送物の搬送経路の強化学習又は深層強化学習を行って搬送経路モデルを生成した後、バッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報が、機械学習コンピュータに入力され、機械学習コンピュータが、搬送経路モデルとバッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報とから推論した結果により、情報処理制御機能が動作して移載機能を実行させることを特徴とする搬送方法である
【0045】
この搬送方法は、中央情報システムのデータを機械学習コンピュータにより強化学習された結果として生成する搬送経路モデルに対し、実際に注文が入力された結果として本発明の搬送装置のバッファリング機能を有する領域に搬入された搬送物の情報を入力して推論することによって、本発明の搬送装置の最適な搬送経路という正解を創出させるものである。従って、搬送経路モデルを生成するためのアルゴリズムとしては、特に限定されないが、動的計画法が好ましい。
【0046】
物流の根幹をなす並列した搬送物の独立した移動が可能な搬送機能を有する搬送装置が、特に3列以上の複数から構成されるような場合には、搬送物の情報量が多くなるため、このような機械学習を採用することが好ましい。
【0047】
本発明の搬送装置及びその装置を用いた搬送方法は、搬入速度と搬出速度の制御に力点が置かれて説明したが、本発明の搬送装置の移載機能を有する装置に隣接して、本発明とは異なる新たな搬送装置を接続することによって、本発明の移載機能を有する装置が、搬送物の分岐及び合流ポイントともなり得るので、本発明の搬送装置及び搬送方法を更に多様な物流システムとして活用することが可能である。
【発明の効果】
【0048】
本発明により、サプライ・チェーンにおける物の移動量の変動が大きくなることによって生じる、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、効率よく高速で連続搬送が可能な搬送を実現することができる。また、本発明の搬送装置の移載機能を有する装置に隣接して、本発明とは異なる新たな搬送装置を接続することによって、本発明の搬送装置及び搬送方法を更に多様な物流システムとして活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置であり、移載機能を有する装置として伊東電機(株)製マルチアングルボールソーター(Multi Angle Ball Sorter、MABS)、搬送機能を有する装置としてベルトコンベヤ、バッファリング機能を有する装置としてアキュムレイティングコンベヤを採用した高速スイッチング搬送装置の斜視模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る図1の高速スイッチング搬送装置の平面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作の概要を示すフローチャートである。
図4-1】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例(Case1~3)前半(1-1)を示すフローチャートである。
図4-2】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例(Case1~3)後半(1-2)を示すフローチャートである。
図5-1】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例(Case4&5)前半(2-1)を示すフローチャートである。
図5-2】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例(Case4&5)後半(2-2)を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例Case1のアキュムレイティングコンベヤに貯留されている搬送物の状況を示す平面模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例Case2のアキュムレイティングコンベヤに貯留されている搬送物の状況を示す平面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例Case3のアキュムレイティングコンベヤに貯留されている搬送物の状況を示す平面模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例Case4のアキュムレイティングコンベヤに貯留されている搬送物の状況を示す平面模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置における、搬送物の相互乗入れ動作例Case5のアキュムレイティングコンベヤに貯留されている搬送物の状況を示す平面模式図である。
図11-1】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、搬送物の相互乗入れ動作を実行させる搬送ボールの回動動作の概要前半(3-1)を示すフローチャートである。
図11-2】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、搬送物の相互乗入れ動作を実行させる搬送ボールの回動動作の概要後半(3-2)を示すフローチャートである。
図12】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、搬送物が、右側MABSから左側MABSに移動する際に実行させる搬送ボールの回動動作の条件を示すフローチャートである。
図13】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置が配備されている物流センターの中央情報システムの概要図である。
図14】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置が配備されている物流センターの中央情報システムのデータを活用し、機械学習コンピュータが実行する強化学習に基づいた高速スイッチング搬送装置の搬送方法の概要図である。
図15】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したボール式仕分けモジュールの斜視模式図である。
図16】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したボール式仕分けモジュールの平面模式図である。
図17】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの正面模式図である。
図18】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの左側面模式図である。
図19】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの背面模式図である。
図20】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの搬送ボールエレメントの動作機構を示す上面カバーを取り除いた平面模式図(a)、(a)の領域Sの搬送ボールエレメントを1つ取り外した平面拡大模式図(b)、及び、搬送ボールエレメントの側面模式図(c)である。
図21】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの搬送物を分岐する直前の斜視模式図である。
図22】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの搬送物を分岐した直後の斜視模式図である。
図23】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの搬送物を直進する場合のボールの状態を示す平面模式図である。
図24】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABSの搬送物を分岐する場合のボールの状態を示す平面模式図である。
図25】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の搬送物を直進する場合のローラの状態を示す斜視模式図である(非特許文献6)。
図26】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の搬送物を分岐する場合のローラの状態を示す斜視模式図である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図27】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の搬送物を直進する場合のローラの状態を示す平面模式図である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図28】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の搬送物を分岐する場合のローラの状態を示す平面模式図である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図29】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の上面カバーを取り除き、ローラの動作機構を示す平面模式図(a)及び(a)のI切断線で紙面に垂直に切断した左側の断面模式図(b)である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図30】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の正面カバーを取り除き、ローラの動作機構を示す正面模式図である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図31】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)の上面及び右側面カバーを取り除き、ローラの動作機構を示す右側面模式図(a)及び(a)のI切断線で紙面に垂直に切断した左側の断面図(b)である(非特許文献6、並びに、特許文献2~4)。
図32】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータの斜視模式図である。
図33】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータの搬送物を直進する場合のセルの状態を示す平面模式図である。
図34】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータの搬送物を分岐する場合のセルの状態を示す平面模式図である。
図35】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータのセルの斜視模式図である。
図36】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータのセルの動作機構を示すセルの搬送ローラ回動軸に対し、紙面の垂直方向から見た上部側面と下部断面を組み合わせた模式図である。
図37】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、トーヨーカネツ(株)製SRSソータに適用可能なセルの平面模式図(a)及び(b)、並びに、(株)協和製作所製スイング式高速仕分けユニットPSU(Pulse Swivel Unit)30を参考にしたSRSソータに適用可能なセルの平面模式図(c)である。
図38】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、回転体に短尺及び長尺ローラを備えた分岐設備の平面模式図である。
図39】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、図36に示す分岐設備の動作機構を示す直進搬送方向に垂直な方向から見た側面図である。
図40】本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置の移載機能を有する搬送装置を構成する装置として代替可能な、図36に示す分岐設備(a)と図13~22に示すMABS(b)とを比較した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面に示した実施形態を用い、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0051】
図1及び2に、本発明の一実施形態に係る搬送装置100の斜視模式図及び平面図を示した。この実施例の搬送装置100では、搬送物を左右に振り分ける移載機能を有する装置として伊東電機(株)製マルチアングルボールソーター(Multi Angle Ball Sorter、MABS)を複数配列したMABSスイッチング装置110、搬送機能を有する装置としてベルトコンベヤ120、及び、バッファリング機能を有する装置としてアキュムレイティングコンベヤ130のそれぞれ2列が、搬送方向に併設するように装備、一体化され、一つの搬送装置を構成している。
【0052】
更に、MABSスイッチング装置110は、図1及び2に示すように、右第1MABS(R1)1111~右第5MABS(R5)が直線的に接続された右MABSスイッチング装置と、左第1MABS(L1)1121~左第5MABS(L5)が直線的に接続された左MABSスイッチング装置とが併設され、一体化されて移載機能を発揮することに特徴がある。従来は、後述するように、これらそれぞれのMABSが、単独でコンベヤに組み込まれ、MABSを構成する搬送ボールの搬送面に平行な回動軸を中心とする回動と、搬送面に垂直な軸を中心とする搬送ボールの搬送面に平行な回動軸の回動とによって搬送物を振り分けるソータとして利用されるのが一般的であった。なお、このようなMABSの台数及び配置は一例であり、これに限定されるものではなく、工程間のコンベヤの種類や能力、搬送物の種類や形状等に応じて設定されるものである。
【0053】
また、搬送機能を有する装置であるベルトコンベヤ120、及び、バッファリング機能を有する装置であるアキュムレイティングコンベヤ130は、MABS110を中心とした上流側及び下流側の対象な位置に、上流ベルトコンベヤ121及び下流ベルトコンベヤ122、並びに、上流アキュムレイティングコンベヤ131及び下流アキュムレイティングコンベヤ132として配備されていると共に、上流ベルトコンベヤ121及び下流ベルトコンベヤ122は二つに分割されて、MABS110との間の右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に、搬送物検知センサ140が、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)として備えられていることを特徴としている。但し、上流ベルトコンベヤ121及び下流ベルトコンベヤ122共に、必ずしも分割されている必要はない。
【0054】
そして、本発明の搬送装置100は、図1及び2の実施例では、物流システムの搬送速度を制御するために、そのアキュムレイティングコンベヤ130が、工程間ベルトコンベヤ200に接続され使用されている。この実施例では、上流アキュムレイティングコンベヤ131の右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)に上流工程間ベルトコンベヤ210の右上流工程間ベルトコンベヤ211が、また、上流アキュムレイティングコンベヤ131の左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1311(BR2)に上流工程間ベルトコンベヤ210の左上流工程間ベルトコンベヤ212が接続されている。同様に、下流アキュムレイティングコンベヤ132の右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に下流工程間ベルトコンベヤ220の右下流工程間ベルトコンベヤ221が、また、下流アキュムレイティングコンベヤ132の左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に下流工程間ベルトコンベヤ220の左下流工程間ベルトコンベヤ222が接続されている。
【0055】
このように構成された本発明の搬送装置100が物流システムの搬送速度を制御できるのは、アキュムレイティングコンベヤ130、より正確には、上流アキュムレイティングコンベヤ131の右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)及び左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)、並びに、下流アキュムレイティングコンベヤ132の右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)及び左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)のそれぞれに貯留している搬送物の情報に基づいて、5台のMABS1111(R1)~1115(R5)が直線的に配備された右MABSスイッチング装置111と5台のMABS1121(L1)~1125(L5)が直線的に配備された左MABSスイッチング装置112が併設された10台のMABSから構成されているMABSスイッチング装置110が制御され、右MABSスイッチング装置111と左MABSスイッチング装置112との間で、搬送物が高速で相互に乗り入れすることによって実現できることに起因している。そこで、本発明の搬送装置100を、その機能を発現する基本的なメカニズムに基づいて、高速スイッチング搬送装置と呼称する。
【0056】
このメカニズムをより具体的に説明するために、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に貯留されている搬送物の情報の一例として、搬送物の数量の状況に基づいた、右MABSスイッチング装置111と左MABSスイッチング装置112との間で、搬送物が高速で相互に乗り入れする動作のフローチャートを図3に示す。図3は、本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置100における、搬送物の相互乗入れ動作の概要を示すフローチャートである。
【0057】
搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着した(S701)ことを、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が検知した際に、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量、又は、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量を検知するステップ(S702)において、いずれにも差がない場合、右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着した物品は、それぞれ、直進するように動作するステップに進む(S703)。すなわち、右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着した物品は、右MABSスイッチング装置111から右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)に搬送されるように右MABSスイッチング装置111が制御され動作し、右上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着した物品は、左MABSスイッチング装置112から左下流第5ベルトコンベヤ1227(M7)に搬送されるように左MABSスイッチング装置112が制御され動作する。
【0058】
しかし、ステップS702において、いずれかに差がある場合、上流アキュムレイティングコンベヤ131の右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量を検知するステップ(S704)における情報から、設定値に基づいた判定を行い、次の判定を行うステップに進む。なお、この設定値は、物流システムによって異なり、固定値であってもよいが、物流システムの状況に応じて決定される変動値であることが、高速スイッチング搬送装置100による物流システム全体の搬送を適正かつ高速な速度で連続運転できるので好ましい。以下の設定値も同様である。
【0059】
ステップS704において、上流アキュムレイティングコンベヤ131の右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも多い場合は、ステップS707に進み、下流アキュムレイティングコンベヤ132の右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の情報に従って判定するステップS707に進む。ここで、下流アキュムレイティングコンベヤ132の右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも多い場合は、ステップS709に進み、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の多い側から、上流ベルトコンベヤ121の右上流第1ベルトコンベヤ1211(M1)及び第2ベルトコンベヤ1212(M2)又は左上流第3ベルトコンベヤ1213(M3)及び第4ベルトコンベヤ1214(M4)を経由し、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の少ない方の下流ベルトコンベヤ122、すなわち、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)又は左下流第7コンベヤ1227(M7)へ物品が優先的に供給されるように、MABSスイッチング装置110が制御され動作する。逆に、ステップS707において、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも少ない場合は、ステップS708に進み、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の多い方の上流ベルトコンベヤ121から、MABSスイッチング装置110へ物品を優先的に供給し、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)と左下流第7コンベヤ1227(M7)へ物品が交互に供給されるように、MABSスイッチング装置110が制御され動作する。
【0060】
一方、ステップS704において、上流アキュムレイティングコンベヤ131の右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも少ない場合も、下流アキュムレイティングコンベヤ132の右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の情報に従って判定するステップS705に進み、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも少ない場合、ステップS707からステップS708に進み、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の差が少ないが、上記同様、貯留している物品の数量が多い上流アキュムレイティングコンベヤ131と接続している上流ベルトコンベヤ121から、MABSスイッチング装置110へ物品を優先的に供給し、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)と左下流第7コンベヤ1227(M7)へ物品が交互に供給されるように、MABSスイッチング装置110が制御され動作する。しかし、ステップS705において、逆に、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の差が設定値よりも多い場合、ステップS706に進み、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とに貯留されている物品の数量の差が多い上流アキュムレイティングコンベヤ131と接続している上流ベルトコンベヤ121から、物品が優先的にMABSスイッチング装置110に供給され、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)とに貯留されている物品の数量の少ない方の下流ベルトコンベヤ122、すなわち、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)又は左下流第7コンベヤ1227(M7)へ物品が優先的に供給されるように、MABSスイッチング装置110が制御され動作する。
【0061】
以上、本発明に特徴的な移載機能を有するスイッチング装置を備えた搬送装置が、バッファリング機能を有する装置に貯留された搬送物の情報である数量を用いることによって、搬送物を物流システムにおける搬送ラインに適正に振り分ける基本システムの概要を説明した。更に、図4~11では、本発明の技術思想を容易に理解できるように、図3同様、搬送物の数量という簡単な情報に基づいて、本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置100が、搬送物を具体的に移動させる経路を説明する。
【0062】
そこで、バッファリング機能を有する装置であるアキュムレイティングコンベヤ130に貯留する物品の数量を5つの場合、Case1~5に設定した。
【0063】
Case1は、図6に示すように、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着するステップ(S701)において、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が物品を検知した際に、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)のいずれにも、2個ずつの物品を貯留している場合である。
【0064】
この場合、いずれのアキュムレイティングコンベヤに貯留されている物品の数量が等しいので、図4-1のフローチャートにおけるステップS702からステップS703に進み、右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着した物品が、それぞれ、右MABSスイッチング装置111の右第1MABS1111(R1)~右第5MABS1115(R5)及び左MABSスイッチング装置112の左第1MABS1121(L1)~左第5MABS1125(L5)を経由して、右下流第5ベルトコンベヤ1125(M5)及び左下流第7ベルトコンベヤ1127(M7)に搬送されるように、MABSスイッチング装置が制御され動作される。
【0065】
Case2は、図7に示すように、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着するステップ(S701)において、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が物品を検知した際に、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)には物品がなく、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)に5個の物品、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に5個の物品、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に1個の物品を貯留している場合である。ここで、アキュムレイティングコンベヤ130に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値を仮に3とする。以下、Case3~5の場合の設定値も同様である。
【0066】
この場合、アキュムレイティングコンベヤ130に貯留されている物品の数量の差が存在するため、図4-1のフローチャートにおけるステップS702からステップS704に進む。
【0067】
ステップS704では、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)とには、貯留している物品の数量に5個の差があり、ステップS704における判定基準である、上流アキュムレイティングコンベヤ131に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値3を上回っているため、図4-2のフローチャートにおけるステップS707に進むものと判定される。
【0068】
そして、ステップS707では、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に貯留している5個の物品と、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に貯留している1個の物品との数量の差によって判定され、下流アキュムレイティングコンベヤ132に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値3を上回っているため、ステップS709に示すように、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)側の右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着した物品が優先的にMABSスイッチング装置110に供給され、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112を経由して、左下流第7ベルトコンベヤ1227(M7)に優先的に物品が移動するように、MABSスイッチング装置110を制御し動作する。
【0069】
Case3は、図8に示すように、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着するステップ(S701)において、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が物品を検知した際に、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)には物品がなく、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)に5個の物品、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に2個の物品、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に2個の物品を貯留している場合である。
【0070】
この場合も、Case2と同様に、ステップS707に進むが、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に貯留している2個の物品と、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に貯留している2個の物品との数量の差によって判定され、上記設定値3を下回っているため、ステップS708に示すように、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)側の右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着した物品が優先的にMABSスイッチング装置110に供給され、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112を経由して、左下流第7ベルトコンベヤ1227(M7)への物品の移動と、右MABSスイッチング装置111の右第1MABS(R1)~右第5MABS(R5)を経由して、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)への物品の移動とが交互に行われるように、MABSスイッチング装置110を制御し動作する。
【0071】
Case4は、図9に示すように、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着するステップ(S701)において、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が物品を検知した際に、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)に5個の物品、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)には4個の物品、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に5個の物品、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に1個の物品を貯留している場合である。
【0072】
この場合も、Case2及び3と同様、アキュムレイティングコンベヤ130に貯留されている物品の数量の差が存在するため、図5-1のフローチャートにおけるステップS702からステップS704に進む。
【0073】
しかし、Case4のステップS704では、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)との貯留している物品の数量に1個の差しかなく、ステップS704における判定基準である、上流アキュムレイティングコンベヤ131に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値3を下回っているため、図5-1のフローチャートにおけるステップS705に進むものと判定される。
【0074】
そして、ステップS705において、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)との物品の数量の差が4個あり、下流アキュムレイティングコンベヤ132に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値3を上回っているため、図5-1のステップS706に進むものと判定される。その結果、S706に示されているように、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)との貯留している物品の数量には、物品の数量に1個の差しかないが、右上流第1アキュムレイティング1311(BR1)側の右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着した物品が優先的にMABSスイッチング装置110に供給され、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112を経由して、左下流第7ベルトコンベヤ1227(M7)へ優先的に物品が移動するように、MABSスイッチング装置110を制御し動作する。
【0075】
Case5は、図10に示すように、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)及び左上流第4ベルトコンベヤ1214(M4)に到着するステップ(S701)において、それぞれ、M2搬送物検知センサ141(SA1)及びM4搬送物検知センサ142(SA2)が物品を検知した際に、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)に5個の物品、左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)には4個の物品、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)に2個の物品、及び、左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)に2個の物品を貯留している場合である。
【0076】
この場合、Case4と同様に、図5-1及び図5-2のステップS705に進むように判定される。しかし、右下流第3アキュムレイティングコンベヤ1323(BR3)と左下流第4アキュムレイティングコンベヤ1324(BR4)との物品の数量の差がなく、下流アキュムレイティングコンベヤ132に貯留されている物品の数量の差の多少の閾値の設定値3を下回っているため、図5-2のステップS707からステップS708に進むものと判定される。その結果、S708に示されているように、右上流第1アキュムレイティングコンベヤ1311(BR1)と左上流第2アキュムレイティングコンベヤ1312(BR2)との貯留している物品の数量には、物品の数量に1個の差しかないが、右上流第1アキュムレイティング1311(BR1)側の右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着した物品が優先的にMABSスイッチング装置110に供給され、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112を経由して、左下流第7ベルトコンベヤ1227(M7)への物品の移動と、右MABSスイッチング装置111の右第1MABS(R1)~右第5MABS(R5)を経由して、右下流第5ベルトコンベヤ1225(M5)への物品の移動とが交互に行われるように、MABSスイッチング装置110を制御し動作する。
【0077】
このように、本発明の搬送装置は、物流システムの搬送物の搬送状況、例えば、図3図10に記載したように、バッファリング機能を有するアキュムレイティングコンベア上に存在する物品の個数に基づき、MABSスイッチング装置110内を構成する右MABSスイッチング装置111と左MABSスイッチング装置112の動作を制御することによって、物流システムにおける異なる搬入速度と搬出速度を緩和する機能を有し、物流システムの適正かつ高速な連続搬送を可能にする。
【0078】
そして、このMABSスイッチング装置110内を構成する右MABSスイッチング装置111と左MABSスイッチング装置112の動作は、物品を直進搬送する場合、右MABSスイッチング装置111及び左MABSスイッチング装置112を構成する全てのMABSの搬送ボールについて、搬送面に平行な回動軸を搬送方向に垂直な位置で回動するように、搬送面に垂直な回動軸を保持すればよい。更に、高速スイッチング搬送装置100による、物流システムにおける異なる搬入速度と搬出速度の緩和、及び、物流システムの適正かつ高速な連続搬送を可能にするためには、高速スイッチング搬送装置100の搬送速度は大きい程好ましく、工程間ベルトコンベヤ200の搬送速度より大きく、100m/min以上であることが好ましい。そのため、少なくとも、上流ベルトコンベヤ121及びMABSスイッチング装置110の搬送速度は、右側のラインを例に説明すれば、右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)と右MABSスイッチング装置を構成する右第1MABS(R1)~右第5MABS(R5)を同一速度とすることが好ましい。この場合、右上流第1ベルトコンベヤ1211(M1)は、工程間ベルトコンベヤ200と高速スイッチング搬送装置100の速度差を緩衝するベルトコンベヤとして機能する。
【0079】
しかし、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112への物品の移動は、物品の転倒、搬送装置からの脱落等の事故を防止するように制御される必要がある。特に、高速スイッチング搬送装置100による、物流システムにおける異なる搬入速度と搬出速度の緩和、及び、物流システムの適正かつ高速な連続搬送を可能にするため、100m/min以上の高速で搬送する場合、MABSスイッチング装置110を構成する全てのMABS(1111(R1)~1115(R5)並びに1121(L1)~1125(L5))の動作を適正に制御する必要がある。
【0080】
そこで、図11及び12に、本発明の高速スイッチング搬送装置100のMABSスイッチング装置110を構成する全てのMABS(1111(R1)~1115(R5)並びに1121(L1)~1125(L5))に適した搬送ボールの回動動作をフローチャートで示した。
【0081】
例えば、搬送物として、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)に到着し、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112への物品の移動、すなわち、切替要件の有無を判定するステップS710において切替要件が発生しない場合には、上記直進搬送を行うステップS711に進む。
【0082】
ステップS710において切替要件が発生した場合、MABSスイッチング装置110の動作を判定するステップS712に進む。ここで、MABSスイッチング装置110が動作している場合は、ステップS713に示すように、上流アキュムレイティングコンベヤ131の物品の数量が多い右又は左上流ベルトコンベヤ121からMABSスイッチング層110に物品が優先的に供給され、下流アキュムレイティングコンベヤ132の物品の数量が少ない右又は左下流ベルトコンベヤ122に物品が優先的に供給されるように、既にMABSスイッチング装置110が制御されている。
【0083】
しかし、MABSスイッチング装置110が動作していない場合は、ステップS714に進み、例えば、右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)の物品が発信されると、右MABSスイッチング装置111の右第1MABS1111(R1)の走行DCモーターのホールセンサがモータ移動量のカウントを開始する。そして、ステップS715に示すように、カウント値が設定値に達するまで繰り返され、設定値に到達すると、ステップS716に進む。
【0084】
カウント値が設定値に到達すると、右第1MABS1111(R1)は、搬送面に垂直な回動軸を中心に搬送ボールが回動する移動指令を受信して規定のボール角度まで回動する。なお、搬送ボールは、通常、搬送面に平行な回動軸が搬送方向と直角、すなわち、物品を直進させるボール角度にある。次いで、右第1MABS1111(R1)は、回動すると共に、右第2MABS1112(R2)に移動指令を発信する。この移動指令を受信した右第2MABS1112(R2)も、規定のボール角度まで回動する。右第3MABS1113(R3)以下の搬送ボールも同様の動作を実施する。一方、右第1MABS1111(R1)は、回動すると共に、左第1MABS1121(L1)にも移動指令を発信し、移動指令を受信した左第2MABS1121は回動すると共に、左第2MABS1122(L2)に移動指令を発信する。このように、左第3MABS1123(L3)以降も、順次規定のボール角度となるように回動する。
【0085】
次いで、左右のMABSスイッチング装置110の搬送ボールのボール角度が形成されると、ステップS717に進み、物品が右上流第2ベルトコンベヤ1212(M2)のM2搬送物検知センサ141(SA1)を通過した後、右第1MABS1111(R1)から設定距離移動パルスを検出するまで、右第1MABS1111(R1)の搬送ボールのボール角度が維持される。
【0086】
設定距離移動パルスを検出すると、右第1MABS1111(R1)の搬送ボールのボール角度が、搬送ボールの搬送面に平行な回動軸が搬送方向と直角になり、直進方向に搬送する元の位置に戻る。以降、同様に、搬送ボールのボール角度が元の位置に戻って、右MABSスイッチング装置111から右MABSスイッチング装置112への物品の移動が完了する。
【0087】
更に、ステップS716の搬送ボールの回動動作条件は、図12に示すフローチャートに従って設定されることが、高速スイッチング搬送装置100による、物流システムにおける異なる搬入速度と搬出速度の緩和、及び、物流システムの適正かつ高速な連続搬送を可能にするためには好ましい。
【0088】
図12から分かるように、右MABSスイッチング装置111の搬送ボールは、ボール角度全てを搬送方向から左側に約80度傾けることが好ましい。また、搬送速度(回動速度)は、直進搬送が100m/minの場合、直進搬送と同時に下流ベルトコンベヤ122に到達させるため、全て140m/minとすることが好ましい。
【0089】
しかし、左MABSスイッチング装置112の搬送ボールの搬送速度は、直進搬送が100m/minの場合、全て直進搬送と同じ速度の100m/minとすることが好ましい。また、搬送ボールのボール角度は、左第1MABS1121(L1)、左第2MABS1122(L2)、左第3MABS1123(L3)、左第4MABS(L4)、及び、左第5MABS(L5)を、それぞれ、約80度、約50度、約35度、約20度、及び、約8度とすることが、物品の転倒及び脱落等がなく、右MABSスイッチング装置111から左MABSスイッチング装置112への安定した移動にとって好ましい。
【0090】
以上、本発明の搬送装置の構成及び本発明の搬送方法を理解し易くするために、本発明の一実施形態である図1及び2の高速スイッチング搬送装置100を用い、アキュムレイティングコンベヤ130上の搬送物の数量に基づいた搬送方法を説明した。
【0091】
しかしながら、本発明の搬送装置は、例えば、物流センターの物流システムに組み込まれることが想定される。このような場合、バッファリング機能を有する装置に貯留される搬送物に付随する情報は、数量ばかりでなないことは言うまでもなく、形状、重量、内容、搬送先等様々な情報が紐づけられている。実際、物流システムは、図13に示すような中央情報システムに掌られており、搬送物の膨大なデータに情報処理制御技術が駆使されて営されるようになり、ロジスティクスという情報システムによって統合的に管理される物流システムに発展してきた。
【0092】
すなわち、本発明の搬送方法は、本発明の搬送装置が配備された物流システムにおいて、データ管理コンピュータとデータ制御コンピュータを有する中央情報システムに加え、機械学習コンピュータを備え、中央情報システムに蓄積された管理データ及び制御データが、機械学習コンピュータに入力され、機械学習コンピュータが、中央情報システムの管理データ及び制御データを用い、動的計画法による搬送物の搬送経路の強化学習又は深層強化学習を行って搬送経路モデルを生成した後、バッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報が、機械学習コンピュータに入力され、機械学習コンピュータが、搬送経路モデルとバッファリング機能を有する領域に貯留している搬送物の情報とから推論した結果により、情報処理制御機能が動作して移載機能を実行させる搬送方法とすることも可能であり、より好ましい搬送方法である。
【0093】
より具体的な搬送方法の一例を図14に示す。まず、中央情報システムの管理データ及び制御データを機械学習コンピュータに入力し、動的計画法による強化学習又は深層強化学習を行った結果として搬送経路モデルを生成させる。一方、実際に注文が入り、図1及び2の高速スイッチング搬送装置に搬送されてくる搬送物は、上流工程間ベルトコンベア210を経て上流アキュムレイティングコンベヤ131に搬送されてくるので、そこに貯留されている搬送物の管理データを搬送経路モデルを生成した機械学習コンピュータに入力する。そこで、機械学習コンピュータが推論した結果として、MABSスイッチング装置に適正な搬送経路の指示し実行させることができる。更に、搬送物の搬送が進むに連れ、下流アキュムレイティングコンベヤ132にも搬送物が貯留されると、上流アキュムレイティングコンベヤ131及び下流アキュムレイティングコンベヤ132の搬送物の情報を、強化学習して生成した搬送モデルに入力し、より適正な搬送経路をMABSスイッチング装置に指示し実行することが行われる。搬送高速スイッチング搬送装置のバッファリングに対し、実際に注文が入力された結果として本発明の搬送装置のバッファリング機能を有する領域に搬入された搬送物の情報を入力して推論することによって、本発明の搬送装置の最適な搬送経路という正解を創出させるものである。従って、搬送経路モデルを生成するためのアルゴリズムとしては、特に限定されないが、動的計画法が好ましい。
【0094】
このように、本発明の搬送装置の搬送方法は、搬送物の数量だけでなく、搬送物に付随する様々な情報に基づいて、搬送物の移動する方向を適正に指示する情報処理制御機能を実行することができる。つまり、図1~10を用いて説明した実施形態の動作フローは、本発明の搬送装置の情報処理制御のアルゴリズムの単純な一例であって、機械学習コンピュータを用いた強化学習を情報処理制御機能として活用することが好ましい。
【0095】
一方、本発明の搬送装置の重要な特徴の一つに、本発明の搬送装置を構成するコンベヤ等の搬送機構の有する装置の特定の領域に、搬送物の搬送方向の左右に0~90度の範囲で方向変換できる装置を搬送方向及び搬送方向と直角方向に複数併設した移載機能を有する搬送装置を配備したことを挙げられるが、この基本単位となる搬送物の搬送方向の左右に0~90度の範囲で方向変換できる装置にも様々な形態の装置を部品として適用することができる。以下、この方向変換装置について説明する。
【0096】
図15は、本発明の一実施形態に係る図1及び2の高速スイッチング搬送装置100において、移載機能を有する装置を構成する装置として適用したMABS300(ボール式仕分けモジュール)の斜視模式図で、MABSの非特許文献4のディザリング白黒2値化したものである。これは、高速スイッチング搬送装置100のMABSスイッチング装置110を構成する移載機能を有する装置の最小単位であり、この機構を説明するための必要最低限の図面として、非特許文献5から、図15の平面模式図、正面模式図、左側面模式図、及び、背面模式図を、それぞれ、図16、17、18、及び、19に、図15のカバー350を取り除いた平面図(a)、この平面拡大図(a)の領域Sの搬送ボールエレメントを1つ取り外した平面拡大模式図(b)、及び、搬送ボールエレメントの側面模式図(c)を図20に引用した。
【0097】
図15~19から明らかなように、MABSは、搬送ボールエレメントセット310が、搬送方向と直角方向に一辺が接触するように連続して並べられた略正三角形の頂点に位置する、60°千鳥状パターンで配列しており、この搬送ボールエレメントセット310には、搬送ボール311が、搬送ボール搬送回動用モータローラ320及び搬送ボールエレメント首振り用モータローラ330によって回動可能に備えられている。
【0098】
搬送回動用モータローラ320は、搬送ボール311が、搬送面と平行な回動軸を中心に回動するための駆動源であり、首振り用モータローラ330は、搬送ボールエレメントセット310が、搬送面と直角な回動軸を中心に回動するための駆動源である。図20に示すように、搬送回動用モータローラ320の動力は、搬送回動用モータローラ動力伝達ギア321及び搬送ボール搬送回動ギア312を介して搬送ボール311の回動が生起するように伝達される。一方、首振り用モータローラ330の動力は、首振り用モータローラ動力伝達ギア331及び搬送ボール首振りギア313を介して搬送ボールエレメントセット310の回動が生起するように伝達され、原点用近接センサ341とセンサドグ341の首振り動作センサセットが首振り用モータロータ330の動作を制御する信号を発信する。
【0099】
このような機構を備えたMABS300は、従来、図21~24に示すように、主搬送ローラコンベヤ361に備えられ、分岐ローラコンベヤ362への仕分けモジュールとして使用されてきた。図21、22、及び、23の搬送ボールエレメントセット310及び搬送ボール311は、搬送物370を主搬送ローラコンベヤ361方向(D方向)に直進する場合の向きであり、搬送物370を分岐ローラコンベヤ362方向に振り分ける場合には、搬送物370がMABS300を通過する際に、図24に示す分岐ローラコンベヤ362方向(D方向)に回動し、振り分けが完了すると、図22に示す主搬送ローラコンベヤ361方向(D方向)に戻る。
【0100】
本発明の高速スイッチング搬送装置100は、このようなMABS300を搬送方向に複数配設すると共に、隣接して併設することによってMABSスイッチング装置110という全く新しい概念の移載機能を有するスイッチング装置を備えていることを特徴としている。
【0101】
しかし、このようなスイッチング装置を構成する装置は、MABS300に限定されるものではなく、動作するための機構が異なるが、MABS300と同様の機能を有する仕分け装置で代替することが可能である。そのような仕分け装置として、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)400、トーヨーカネツ(株)製SRSソータ500、及び、特許文献6及び7に開示されている回転体に短尺及び長尺ローラを備えた分岐装置600を挙げることができる。以下、非特許文献及び特許文献から必要最低限の図面を引用し、これらの機構を説明する。
【0102】
図25~31は、(株)椿本チェイン製クイックソート(登録商標)400を説明するために非特許文献6及び特許文献4から引用した模式図である。図25及び26には、非特許文献6の写真のディザリング白黒2値化した斜視模式図、図25及び26は、図25及び26の平面模式図、図29は、上面カバー400を取り除き、ローラユニット410の動作機構を示す平面模式図(a)及び(a)のI切断線で紙面に垂直に切断した左側の断面図(b)、図30は、正面カバーを取り除き、ローラユニット410の動作機構を示す正面模式図、図31は、上面及び右側面カバーを取り除き、ローラユニット410の動作機構を示す右側面模式図(a)及び(a)のI切断線で紙面に垂直に切断した左側の断面図(b)を示した。
【0103】
図25及び27は、主搬送ローラコンベヤ方向(D方向)に搬送物を直進する場合のローラユニット410の回動するローラ4111の向きを、図26及び28は、分岐ローラコンベヤ方向(D方向)に搬送物を振分ける場合のローラユニット410の回動するローラ4111の向きを示しているが、この動作により、MABS300で説明した図21~24のように、搬送物を移動させることができる。
【0104】
このような仕分け機能は、基本的には、MABSと同様、搬送面に平行な回動軸を中心に回動するローラ4111と、搬送面と直角な回動軸を中心に回動するローラ4111によるものであるが、動作機構が異なる。
【0105】
ローラ4111の搬送面に平行な回動軸を中心とする回動は、ローラ支持台4112でローラ4111の回動軸が軸支され、ローラ組立体411として、ローラ組立体保持体412に装着されており、モーターで回動する駆動プーリ421の回動が、ガイドプーリ423を経由して、ラインシャフト416の端部に備えられたプーリ422にベルト512を介して伝達されたラインシャフト416との接触によって生起するものである。
【0106】
また、ローラ4111の搬送面と直角な回動軸を中心とする回動は、ローラ組立体411を保持するローラ組立体保持体412が、エアシリンダ4151による第1及び第2作動ロッド4152、4153の直線運動がローラ組立体保持体412に伝達され、ローラ組立体411の回転運動に変換されることによって生起するものである。
【0107】
このように、クイックソート400の動作機構は、MABS300のそれと異なるが、本発明の高速スイッチング搬送装置100のMABSスイッチング装置と置き換えることが可能である。
【0108】
図32図37は、トーヨーカネツ(株)製SRSソータ500を説明するために非特許文献7から引用した図面及び非特許文献7と特許文献5とを複合化した図面である。図32は、非特許文献7の写真のディザリング白黒2値化した斜視模式図であり、図33~36は、それぞれ、非特許文献7と特許文献5とから考えられるSRSソータ500の搬送物を直進する場合のセル510の状態を示す平面模式図、搬送物を分岐する場合のセル510の状態を示す平面模式図、図33及び34のセル510の斜視模式図、及び、セル510の動作機構を示すセル510の搬送ローラ511の回動軸に対し、紙面の垂直方向から見た上部側面と下部断面を組み合わせた模式図である。また、図37は、SRSソータ500に適用可能なセル510の平面模式図(a)及び(b)、並びに、非特許文献8に開示されている(株)協和製作所製スイング式高速仕分けユニットPSU(Pulse Swivel Unit)30を参考にしたSRSソータに適用可能なセルの平面模式図(c)である。
【0109】
図32から分かるように、SRSソータ500も、搬送面に平行な回動軸を中心とする搬送方向に並設された二本の搬送ローラ511の回動と搬送ローラ511を備えたセル510が搬送面に垂直な回動軸を中心に回動することによって搬送物の振り分け機能を発現するものである。
【0110】
図32をより明確にするため、図33及び34に、それぞれ、搬送物を主搬送経路の方向(D方向)に搬送する場合のセル510及び搬送ローラ511の状態のSRSソータ500の平面模式図と、搬送物を分岐搬送経路の方向(D方向)に搬送する場合のセル510及び搬送ローラ511の状態のSRSソータ500の平面模式図を示した。
【0111】
このようなセル510には、図35に示すセル510を拡大した斜視模式図から分かるように、動力源となる第1搬送モータローラ5111と第2搬送ローラが、搬送方向に並設され、第1搬送モータローラ5111の動力がタイミングベルト5121で伝達される機構となっている。また、物品感知センサ540は、搬送セル510の搬送面に垂直な回転軸を中心とする回動を指示し制御するために備えられている。
【0112】
このセル510の搬送面に垂直な回転軸を中心とする回動は、図36の搬送ローラ511の回動軸に対し、紙面の垂直方向から見た下部断面模式図に示すように、コイル部531とロータ部532から構成される首振りモータ530によって生起される。
【0113】
また、SRSソータ500のセル510の構造は、図32~35で説明した構造に限定されるものではなく、図36の搬送ローラ511の回動軸に対し、紙面の垂直方向から見た下部断面模式図に示すように、搬送物を滑ることなく振分けるため、搬送ローラ511として、リング溝加工を施したウレタンローラ5113が好ましく用いられる。
【0114】
更に、SRSソータ500のセル510は、種々変形したものを用いることが可能であり、図35に示したセル510と比較して図37に示した。図37(a)は、図35のセル510の平面模式図であるが、例えば、図37(b)のような、平ベルト5122が第4搬送モータローラ5114と第5搬送ローラ5115に張設された構成のセル510、図37(c)のような、分割された搬送面が形成された第6搬送モータローラ5116を備えたセル510を適用できる。
【0115】
このように、SRSソータ500も動作機構は異なるが、MABS300と同様の機能を有する移載機能を有する装置として、本発明の高速スイッチング装置100を構成するスイッチング装置に適用することが可能である。
【0116】
特許文献6及び7に開示された、回転体に短尺及び長尺ローラを備えた分岐設備も、動作機構は異なるが、MABS300と同様の機能を有する移載機能を有する装置として、本発明の高速スイッチング装置100を構成するスイッチング装置に適用することが可能である。図38及び39に、それぞれ、この設備の平面模式図、及び、この分岐設備の動作機構を示す直進搬送方向に垂直な方向から見た側面図を示した。
【0117】
図38及び39から分かるように、この設備は、環状凹部6111を備えた短尺ローラ611が、主搬送経路の搬送方向に並設された環状凹部6121を備えた二本の長尺ローラ612を挟んで搬送方向に並設されており、各ロールが、搬送面に平行な回転軸を中心として回転すると共に、各ロールを支持する支持枠体622を備えた回転体620が、回転支持装置621で支えられて回転することによって、搬送物を移載する機能を発現する。
【0118】
四本のローラの回転は、回転駆動部640の動力が、ガイド輪体643を介して、駆動軸641の駆動輪体642と短尺ローラ611及び長尺ローラ612の環状凹部6111、6121とに張設された平ベルト644によって伝達されて生起する。一方、回転体620は、アクチュエータである向き変更装置630による押し引きロッド631の直線運動が、回動支持装置621も利用され、回転体620の搬送面に垂直な軸心を中心とした回転運動に変換され回動する。
【0119】
このように、回転体に短尺及び長尺ローラを備えた分岐設備も、MABS300と動作機構は異なるが、同じ機能を有し、本発明の高速スイッチング搬送装置100を構成するスイッチング装置に適用することが可能であるが、図40に示すように、この設備の搬送物を搬送する動力の基本単位である回転体620が、MABS300の搬送物を搬送する動力の基本単位である搬送ボールエレメントセット310と比較して大きな面積であるという点に特徴がある。このことは、以上説明した移載機能を有する各種仕分け装置は、搬送物の形状や重量等の様々な形態に応じて、高速スイッチング搬送装置100のスイッチング装置として選択することが可能であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の搬送装置及び搬送方法によれば、物流センター内の各工程を中継する搬送装置の搬入速度と搬出速度の顕著な差異に対して、効率よく高速で連続搬送が可能な搬送を実現することができる。このような搬送装置及び搬送方法は、物流センターだけでなく、自動車、家電製品、半導体製品等、多種多様な生産工場の搬送装置に適用することによっても、製造ラインが滞ることがなく、原料、部品等の搬入から、中間製品、そして、最終製品から搬出まで、最適な速度の連続搬送を実現することができる。従って、本発明は、産業上の利用可能性が極めて高いものである。
【符号の説明】
【0121】
100 高速スイッチング搬送装置
110 MABSスイッチング装置
111 右MABSスイッチング装置
1111 右第1MABS(R1)
1112 右第2MABS(R2)
1113 右第3MABS(R3)
1114 右第4MABS(R4)
1115 右第5MABS(R5)
112 左MABSスイッチング装置
1121 左第1MABS(L1)
1122 左第2MABS(L2)
1123 左第3MABS(L3)
1124 左第4MABS(L4)
1125 左第5MABS(L5)
120 ベルトコンベヤ
121 上流ベルトコンベヤ
1211 右上流第1ベルトコンベヤ(M1)
1212 右上流第2ベルトコンベヤ(M2)
1213 左上流第3ベルトコンベヤ(M3)
1214 左上流第4ベルトコンベヤ(M4)
122 下流ベルトコンベヤ
1225 右下流第5ベルトコンベヤ(M5)
1226 右下流第6ベルトコンベヤ(M6)
1227 左下流第7ベルトコンベヤ(M7)
1228 左下流第8ベルトコンベヤ(M8)
130 アキュムレイティングコンベヤ
131 上流アキュムレイティングコンベヤ
1311 右上流第1アキュムレイティングコンベヤ(BR1)
1312 左上流第2アキュムレイティングコンベヤ(BR2)
132 下流アキュムレイティングコンベヤ
1323 右下流第3アキュムレイティングコンベヤ(BR3)
1324 左下流第4アキュムレイティングコンベヤ(BR4)
140 搬送物検知センサ
141 M2搬送物検知センサ(SA1)
142 M4搬送物検知センサ(SA2)
200 工程間ベルトコンベヤ
210 上流工程間ベルトコンベヤ
211 右上流工程間ベルトコンベヤ
212 左上流工程間ベルトコンベヤ
220 下流工程間ベルトコンベヤ
221 右下流工程間ベルトコンベヤ
222 左下流工程間ベルトコンベヤ
300 MABS
310 搬送ボールエレメントセット
311 搬送ボール
312 搬送ボール搬送回動ギア
313 搬送ボール首振りギア
320 搬送ボール搬送回動用モータローラ
321 搬送回動用モータローラ動力伝達ギア
330 搬送ボールエレメント首振り用モータローラ
331 首振り用モータローラ動力伝達ギア
340 首振り動作センサセット
341 原点用近接センサ
342 センサドグ
350 カバー
351 上面カバー
352 側面カバー
360 搬送ローラコンベヤ
361 主搬送ローラコンベヤ
362 分岐ローラコンベヤ
370 搬送物
400 クイックソート(登録商標)
410 ローラユニット
411 ローラ組立体
4111 ローラ
4112 ローラ支持台
412 ローラ組立体保持体
4121 第1ローラ組立体保持フレーム
4122 第2ローラ組立体保持フレーム
4123 ローラ組立体連結体
413 ローラユニット支持体
4131 ローラ組立体保持フレーム連結及び第1作動ロッド連結支持体
4132 ローラ組立体連結体との第1連続体
4133 第1連続体と第2作動ロッドとの第2連続体
414 軸受け部
4141 基部
4142 機台フレーム
4143 ラインシャフト軸受けホルダ
415 回動駆動機構
4151 エアシリンダ
4152 第1作動ロッド
4153 第2作動ロッド
416 ラインシャフト
420 回動駆動機構
421 駆動プーリ
422 プーリ
423 ガイドプーリ
424 ベルト
430 回動制御装置
440 カバー
500 SRSソータ
510 セル
511 搬送ローラ
5111 第1搬送モータローラ
5112 第2搬送ローラ
5113 第3搬送ローラ(リング溝加工ウレタンローラ)
5114 第4搬送モータローラ
5115 第5搬送ローラ
5116 第6搬送モータローラ
512 ベルト
5121 タイミングベルト
5122 平ベルト
520 カバー
521 表面板
522 側面板
530 首振りモータ
531 コイル部
532 ロータ部
540 物品感知センサ
600 回転体に短尺及び長尺ローラを備えた分岐設備
610 ローラ
611 短尺ローラ
6111 環状凹部
612 長尺ローラ
6121 環状凹部
620 回転体
621 回転支持装置
622 支持枠体
6221 短尺ローラ支持枠体
6222 長尺ローラ支持枠体
623 支持ブラケット
630 向き変更装置
631 押し引きロッド
632 連結ピン
640 回転駆動部
641 駆動軸
642 駆動輪体
643 ガイド輪体
6431 ガイド輪体軸
644 平ベルト
D 搬送方向
I 切断線
S MABSの平面図の一領域
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40