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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】照明光学系、及び画像投射装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20241203BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20241203BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G02B3/00 A
G03B21/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021038347
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138458
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野島 啓
【審査官】武田 知晋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-102377(JP,A)
【文献】特開平11-281924(JP,A)
【文献】特開2017-187545(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112147748(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-10
21/12-13
21/134-30
33/00-16
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射される光を光変調素子に向けて出射するレンズアレイと、
前記レンズアレイを保持する保持部と、を有し、
前記レンズアレイは、光学機能領域を含み、平面視が長方形状の外形形状を有し、
第1状態で前記レンズアレイが保持された場合における前記光学機能領域の中心位置は、前記光学機能領域を含む平面内で前記第1状態に対して90度回転した第2状態で前記レンズアレイが保持された場合における前記光学機能領域の中心位置と、等しいことを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
前記レンズアレイは、所定突き当て面を端面に含み、
前記保持部は、前記所定突き当て面を突き当て可能な被突き当て面を有し、
前記被突き当て面は、第1被突き当て面と、前記第1被突き当て面に直交する第2被突き当て面と、を含み、
前記所定突き当て面が前記第1被突き当て面に突き当てられた状態で保持された場合における前記光学機能領域の中心位置は、前記所定突き当て面が前記第2被突き当て面に突き当てられた状態で保持された場合における前記光学機能領域の中心位置と、等しいことを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
前記レンズアレイは、突き当て面を端面に含み、
前記保持部は、前記突き当て面を突き当て可能な被突き当て面を有し、
前記突き当て面は、第1突き当て面と、前記第1突き当て面に直交する第2突き当て面と、前記第1突き当て面に直交する第3突き当て面と、を含み、
前記被突き当て面は、第1被突き当て面と、前記第1被突き当て面に直交する第2被突き当て面と、を含み、
前記第1状態では、前記第1突き当て面は前記第1被突き当て面に突き当てられ、前記第2突き当て面は前記第2被突き当て面に突き当てられ、
前記第2状態では、前記第3突き当て面は前記第1被突き当て面に突き当てられ、前記第1突き当て面は前記第2被突き当て面に突き当てられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項4】
前記レンズアレイは、突き当て面を端面に含み、
前記保持部は、前記突き当て面を突き当て可能な被突き当て面を有し、
前記突き当て面は、第1突き当て面と、前記第1突き当て面に直交する第2突き当て面と、を含み、
前記被突き当て面は、第1被突き当て面と、前記第1被突き当て面に直交する第2被突き当て面と、前記第2被突き当て面に直交する第3被突き当て面と、を含み、
前記第1状態では、前記第1突き当て面は前記第1被突き当て面に突き当てられ、前記第2突き当て面は前記第2被突き当て面に突き当てられ、
前記第2状態では、前記第1突き当て面は前記第2被突き当て面に突き当てられ、前記第2突き当て面は前記第3被突き当て面に突き当てられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記第1被突き当て面と前記第3被突き当て面との間の中間位置は、前記光学機能領域の中心位置と、等しいことを特徴とする請求項4に記載の照明光学系。
【請求項6】
前記光学機能領域は、平面視が矩形状の形状を有し、
前記レンズアレイは、突き当て面を端面に含み、
前記突き当て面は、第1突き当て面と、前記第1突き当て面に直交する第2突き当て面と、を含み、
前記レンズアレイは、以下の(1)式を満足することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の照明光学系。
H/2+a=V/2+b ・・・ (1)
(Vは前記第1突き当て面に平行な方向における前記光学機能領域の長さを表し、aは前記第1突き当て面から前記光学機能領域までの最短距離を表し、Hは前記第2突き当て面に平行な方向における前記光学機能領域の長さを表し、bは前記第2突き当て面から前記光学機能領域までの最短距離を表す。)
【請求項7】
前記光学機能領域は、平面視が矩形状の形状を有し、
前記レンズアレイは、以下の(2)式乃至(5)式を満足することを特徴とする請求項4又は5に記載の照明光学系。
V/2+D=H/2+B ・・・ (2)
H/2+B=V/2+D ・・・ (3)
A+E=B ・・・ (4)
D=C+E ・・・ (5)
(Vは前記第1突き当て面に平行な方向における前記光学機能領域の長さを表し、Bは前記第1突き当て面から前記光学機能領域までの最短距離を表し、Hは前記第2突き当て面に平行な方向における前記光学機能領域の長さを表し、Dは前記第2突き当て面から前記光学機能領域までの最短距離を表し、Aは前記レンズアレイにおける前記第1突き当て面とは反対側の端面から前記光学機能領域までの最短距離を表し、Cは前記レンズアレイにおける前記第2突き当て面とは反対側の端面から前記光学機能領域までの最短距離を表し、Eは前記レンズアレイにおける前記第1突き当て面とは反対側の端面から前記第3被突き当て面までの距離を表す。)
【請求項8】
請求項1乃至の何れか1項に記載の照明光学系を有することを特徴とする画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、及び画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から照射される光を光変調素子に向けて出射するレンズアレイを有した照明光学系が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の構成では、光変調素子の向きの変更に応じて異なる種類のレンズアレイを用いることで、照明光学系の開発効率が低下したり、照明光学系のコストが増大したりする場合があった。
【0004】
本発明は、光変調素子の向きが変わっても同じ種類のレンズアレイを使用可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る照明光学系は、光源から照射される光を光変調素子に向けて出射するレンズアレイと、前記レンズアレイを保持する保持部と、を有し、前記レンズアレイは、光学機能領域を含み、平面視が長方形状の外形形状を有し、第1状態で前記レンズアレイが保持された場合における前記光学機能領域の中心位置は、前記光学機能領域を含む平面内で前記第1状態に対して90度回転した第2状態で前記レンズアレイが保持された場合における前記光学機能領域の中心位置と、等しい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光変調素子の向きが変わっても同じ種類のレンズアレイを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る画像投射装置の構成例の図であり、図1(a)は全体構成の図、図1(b)はフライアイレンズを図1(a)の矢印20方向から視た図、図1(c)は光変調素子を図1(a)の矢印30方向から視た図である。
図2】第1実施形態に係るフライアイレンズの保持部への突き当て例の図であり、図2(a)は0度状態、図2(b)は90度状態である。
図3】第1実施形態に係る照明光学系の作用の図であり、図3(a)は全体構成の図、図3(b)はフライアイレンズを図3(a)の矢印20方向から視た図、図3(c)は光変調素子を図3(a)の矢印30方向から視た図である。
図4】第1変形例に係るフライアイレンズの図であり、図4(a)は0度状態の図、図4(b)は90度状態の図である。
図5】第2変形例に係るフライアイレンズの図であり、図5(a)は0度状態の図、図5(b)は90度状態の図である。
図6】第3変形例に係るフライアイレンズの図であり、図6(a)は0度状態の図、図6(b)は90度状態の図である。
図7】第4変形例に係るフライアイレンズの図であり、図7(a)は0度状態の図、図7(b)は90度状態の図である。
図8】第2実施形態に係るフライアイレンズの保持部への突き当て例の図であり、図8(a)は0度状態の図、図8(b)は90度状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0009】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための照明光学系及び画像投射装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0010】
以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係る照明光学系が有するレンズアレイにおいて、レンズが配列する配列平面内での所定方向を示し、Y軸に沿うY方向は、配列平面内で所定方向に直交する方向を示し、Z軸に沿うZ方向は、配列平面に直交する方向を示すものとする。
【0011】
またX方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これは照明光学系の使用時における向きを制限するものではなく、照明光学系の向きは任意である。
【0012】
実施形態に係る照明光学系は、光源から照射される光を光変調素子に向けて出射するレンズアレイと、レンズアレイを保持する保持部と、を有するものである。このような照明光学系は、例えばプロジェクタ又は車載用のヘッドアップディスプレイ等の画像投射装置で使用される光学系である。光変調素子は、入射光を変調して出射する素子であり、具体的にはDMD(Digital Micromirror Device)等が挙げられる。
【0013】
例えば、画像投射装置の機種変更等に応じて、平面視が略長方形状の形状を有する光変調素子の向きが90度変更される場合に、変更に合わせて異なる種類のレンズアレイを用意すると、照明光学系の開発効率低下やコスト増大を招く場合がある。なお、光変調素子の向きが90度変更される場合とは、光変調素子を平面視した場合の平面内で、光変調素子の向きが0度の状態から90度回転した状態に変更される場合をいう。
【0014】
実施形態では、レンズアレイは、光学機能領域を含み、平面視が矩形状の外形形状を有し、第1状態でレンズアレイが保持された場合における光学機能領域の中心位置は、光学機能領域を含む平面内で第1状態に対して90度回転した第2状態でレンズアレイが保持された場合における光学機能領域の中心位置と、等しい。これにより、照明光学系で使用される光変調素子の向きが変わっても同じ種類のレンズアレイを使用可能とし、照明光学系の開発効率低下やコスト増大を抑制する。
【0015】
ここで、光学機能領域とは、レンズアレイにおいて、レンズアレイの所望の光学機能が得られる領域をいう。例えばレンズアレイにおいて、複数のレンズが配列して設けられている領域が光学機能領域に該当する。
【0016】
また、90度は厳密に90度が要求されるものではなく、略90度でよい。この「略」は、一般に誤差と認められる程度のずれは許容されることを意味する。一般に誤差と認められる程度のずれは、例えばJISB0405に従った角度寸法の普通公差内でのずれ等である。
【0017】
同様にレンズアレイの中心位置が等しいことも、厳密に一致することが要求されるものではなく、略等しければよい。なお、実施形態における「略」の意味は、略90度及び略等しい以外で使用される場合においても同様である。
【0018】
以下、実施形態に係る照明光学系を有する画像投射装置を一例として、実施形態を説明する。
【0019】
[実施形態]
(画像投射装置10の構成例)
まず図1を参照して、実施形態に係る画像投射装置10の構成について説明する。図1は、画像投射装置10の構成の一例を示す図である。図1(a)は、全体構成を示す図、図1(b)は、画像投射装置10が有するフライアイレンズ1を図1(a)の矢印20方向から視た図、図1(c)は、画像投射装置10が有する光変調素子7を図1(a)の矢印30の方向から視た図である。
【0020】
画像投射装置10は、フロント投射型プロジェクタであり、スクリーンに画像を投射するものである。このような画像投射装置10には、プレゼンテーション等で使用されるプロジェクタや、自動車、バイク又は航空機等に搭載されるヘッドアップディスプレイ(HUD;Head Up Display)等が挙げられる。
【0021】
図1に示すように、画像投射装置10は、フライアイレンズ1と、保持部2と、第1フィールドレンズ3と、折り返しミラー4と、第2フィールドレンズ5と、全反射プリズム6と、光変調素子7と、投射光学系8とを有する。
【0022】
図1に白抜き矢印で示した照射光Lrは、光源から照射される光の一例である。照射光Lrの伝搬方向における上流側から順次離隔して配置されるフライアイレンズ1、第1フィールドレンズ3及び折り返しミラー4は、第2フィールドレンズ5及び全反射プリズム6を介して、照射光Lrを光変調素子7に導光する。これらのうち、フライアイレンズ1及び保持部2は、照明光学系50を構成する。
【0023】
フライアイレンズ1は、第1フライアイレンズ1Aと、第2フライアイレンズ1Bとを有する。第1フライアイレンズ1A及び第2フライアイレンズ1Bのそれぞれは、光源から照射される照射光Lrを光変調素子7に向けて出射するレンズアレイの一例である。なお、第1フライアイレンズ1A及び第2フライアイレンズ1Bは配置の位置及び向きを除き同じ構成であるため、以下では特に区別しない場合にはフライアイレンズ1と総称する。
【0024】
図1(b)に示すように、フライアイレンズ1は、光学機能領域11を含み、平面視が略矩形状の外形形状を有する板状部材である。光学機能領域11内には、複数のレンズ111が2次元配列して設けられている。図1(b)に示す例では、複数のレンズ111はXY平面内に2次元配列している。
【0025】
複数のレンズ111は、平面視がY軸に沿う方向を長手とする略長方形状の外形形状を有し、またZ方向側に突き出す凸面の球面又は非球面形状を有する。複数のレンズ111の形状は何れも同じであるが、これに限定されるものではなく、異なっていてもよい。
【0026】
第1フライアイレンズ1A及び第2フライアイレンズ1Bは、凸面同士が反対側を向くように設置されることが好ましい。つまり、第1フライアイレンズ1Aにおけるレンズ111は、凸面が-Z方向側に突き出し、第2フライアイレンズ1Bにおけるレンズ111は、凸面が+Z方向側に突き出すように設置されることが好ましい。
【0027】
また、フライアイレンズ1は突き当て面12を端面に含む。ここで端面とは、フライアイレンズ1におけるレンズ111が配列して設けられた面に交差する外周面に含まれる面をいう。
【0028】
また突き当て面とは、被突き当て面に突き当てることで、フライアイレンズ1を位置決めするための面をいう。突き当て面12は、突き当て面12以外の端面と比較して、平面度及び突き当て面同士の直角度の精度を高くした面である。
【0029】
また被突き当て面とは、フライアイレンズ1を保持する保持部2に設けられ、突き当て面を突き当てることでフライアイレンズ1を位置決めするための基準となる面をいう。
【0030】
突き当て面12は、第1突き当て面12aと、第1突き当て面12aに略直交する第2突き当て面12bと、第1突き当て面12aに略直交する第3突き当て面12cとを含む。より具体的には、外形を構成する4つの端面のうち、第1の端面が第1突き当て面12aを含み、第2の端面が第2突き当て面12bを含み、第3の端面が第3突き当て面12cを含む。
【0031】
また光学機能領域中心15は、光学機能領域11の中心位置である。
【0032】
このようなフライアイレンズ1は、照射光Lrに含まれる波長に対して光透過性を有する樹脂材料を成形加工することで製作される。但し、これに限定されるものではなく、照射光Lrに含まれる波長に対して光透過性を有するガラス材料等を用いて製作されてもよい。
【0033】
保持部2は、フライアイレンズ1を保持する箱状の部材である。保持部2は、内側面にフライアイレンズ1の突き当て面12が突き当てられる被突き当て面を有する。保持部2は、被突き当て面が突き当て面12に突き当てられ、フライアイレンズ1を位置決めした状態で、接着剤による接着又は嵌合等によりフライアイレンズ1を固定して保持する。
【0034】
保持部2の材質は特段に制限されず、例えば樹脂材料又は金属材料等を含んで保持部2を製作可能である。なお、図1では、保持部2がフライアイレンズ1のみを保持する構成を例示するが、これに限定されるものではない。保持部2が第1フィールドレンズ3及び折り返しミラー4等の他の部材も一体に保持する構成であってもよい。
【0035】
全反射プリズム6は、それぞれ2面以上を有するプリズムで構成されることが好ましく、本実施形態では、全反射三角プリズムユニット(所謂、TIRプリズムユニット)で構成される。
【0036】
以上の構成において、全反射プリズム6は、照明光学系50を介して導光される照射光Lrを入射光Liとして光変調素子7に向けて入射させる。
【0037】
光変調素子7は、入射光Liを画像データに基づいて変調する。光変調素子7は、複数のマイクロミラーからなる略矩形のミラー面を有するDMDにより構成され、入力された画像データに基づいて各マイクロミラーを時分割駆動することにより、画像データに基づく画像へと光を加工して反射する。
【0038】
図1(c)に示すように、光変調素子7は光変調領域71を含み、平面視がY軸方向に沿う方向を長手とする略長方形状の外形形状を有する。光変調領域71内には、複数のマイクロミラーが2次元配列して設けられている。図1(c)に示す例では、複数のマイクロミラーはYZ平面内に2次元配列している。
【0039】
光変調領域71の外形形状と、フライアイレンズ1における各レンズ111の外形形状は略相似形である。照射光Lrが複数のレンズ111のそれぞれを透過した複数の光束であって、各レンズ111の外形形状に対応した略長方形状の断面形状を有する複数の光束は、光変調領域71に重畳して照射される。
【0040】
光変調素子7は、各マイクロミラーを時分割駆動することにより、入射光Liを反射し、全反射プリズム6に向けて第1の出射光Lo及び第2の出射光を出射する。
【0041】
全反射プリズム6は、光変調素子7から第1の方向に出射された第1の出射光Loを反射し、光変調素子7から第2の方向に出射された第2の出射光を透過する。
【0042】
全反射プリズム6で反射された第1の出射光Loは、画像データに基づく画像を形成するON光として投射光学系8へ導光される。一方、第2の方向に出射された第2の出射光は、画像を形成しないOFF光として処理され、例えば機構的なシボや光吸収帯に入射することにより再反射を防止される。
【0043】
投射光学系8は、第1の出射光Loを投射光Lpとしてスクリーンに投射して画像(入力された画像データに基づく画像)を形成する。スクリーンは、マルチレイヤーアレイ(MLA)等により構成される。
【0044】
[第1実施形態]
(フライアイレンズ1の保持部2への突き当て例)
次に図2を参照して、第1実施形態に係る照明光学系50が有するフライアイレンズ1の保持部2への突き当てについて説明する。図2は、フライアイレンズ1の保持部2への突き当ての一例を示す図である。図2は、図1(a)におけるフライアイレンズ1を矢印20方向から視た図であり、図2(a)は0度状態、図2(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0045】
図2に示す第1被突き当て面21a及び第2被突き当て面21bのそれぞれは、保持部2に設けられ、フライアイレンズ1の突き当て面12が突き当てられ、フライアイレンズ1を位置決めするための基準面である。付勢部材Pは、突き当てのために+Y方向への付勢力を付与する部材である。なお、-X方向側への突き当てのための力は、重力により付与される。
【0046】
図2(a)では、第1突き当て面12aは第1被突き当て面21aに突き当てられ、第2突き当て面12bは第2被突き当て面21bに突き当てられている。この状態で、フライアイレンズ1は保持部2に固定される。ここで、第1突き当て面12aは所定突き当て面の一例である。
【0047】
図2(a)における光学機能領域中心15の位置は、Y軸方向では第1被突き当て面21aから距離Y1の距離にあり、X軸方向では第2被突き当て面21bから距離X1の距離にある。
【0048】
一方、図2(b)は、図2(a)の状態に対して、フライアイレンズ1がXY平面内で右回りに90度回転した状態を示している。この場合のXY平面は、光学機能領域11を含む平面に対応する。
【0049】
図2(b)では、第1突き当て面12aは第2被突き当て面21bに突き当てられ、第3突き当て面12cは第1被突き当て面21aに突き当てられている。この状態で、フライアイレンズ1は保持部2に固定される。
【0050】
図2(b)における光学機能領域中心15の位置は、Y軸方向では第1被突き当て面21aから距離Y2の距離にあり、X軸方向では第2被突き当て面21bから距離X2の距離にある。
【0051】
本実施形態では、距離Y1が距離Y2と略等しく、且つ距離X1と距離X2が略等しくなるように照明光学系50が構成されている。換言すると、第1状態でフライアイレンズ1が保持された場合における光学機能領域中心15の位置は、光学機能領域11を含む平面内で第1状態に対して90度回転した第2状態でフライアイレンズ1が保持された場合における光学機能領域中心15の位置と、略等しい。
【0052】
ここで、図2(a)に示すフライアイレンズ1が90度回転する前の0度の状態(以下、0度状態という)は、第1状態の一例であり、図2(b)に示すフライアイレンズ1が90度回転した後の90度の状態(以下、90度状態という)は、第2状態の一例である。
【0053】
(照明光学系50の作用効果)
次に照明光学系50の作用効果について説明する。
【0054】
ここで図3は、照明光学系50の作用を説明するための図である。図3(a)は画像投射装置10aの全体構成を示す図、図3(b)は図3(a)のフライアイレンズ1を矢印20方向から視た図、図3(c)は図3(a)の光変調素子7aを矢印30の方向から視た図である。
【0055】
画像投射装置10aは、画像投射装置10の光変調素子7に対して、光変調素子7aの長手方向の向きが光変調領域71aを含む平面(YZ平面)内で90度回転した点が異なっている。
【0056】
上述したように本実施形態では、照射光Lrが複数のレンズ111のそれぞれを透過した複数の光束であって、各レンズ111の略長方形状の断面形状を有する複数の光束が、光変調領域71aに重畳して照射される。
【0057】
光変調素子7aの長手方向の向きが変わると、複数のレンズ111による複数の光束と、光変調素子7aと、の間で長手方向の向きが一致しなくなり、照射光Lrにより光変調素子7aの光変調領域71aを適切に照射できなくなる。
【0058】
そのため、画像投射装置10aのフライアイレンズに含まれるレンズは、光変調素子7aの長手方向の向きに合わせるために、図3(b)に示すように、平面視がX軸に沿う方向を長手とする略長方形状の外形形状を有することが好ましい。
【0059】
しかしながら、レンズの長手方向の向きがX軸方向に沿うフライアイレンズをフライアイレンズ1とは別に用意すると、フライアイレンズを設計し直したり、フライアイレンズの成形用金型を新たに製作したりする必要が生じる。これにより照明光学系の開発効率低下やコスト増大を招く場合がある。
【0060】
そのため、本実施形態では、フライアイレンズ1(レンズアレイ)は、光学機能領域11を含み、平面視が矩形状の外形形状を有する。また0度状態(第1状態)でフライアイレンズ1が保持された場合における光学機能領域中心15の位置は、90度状態(第2状態)でフライアイレンズ1が保持された場合における光学機能領域中心15の位置と略等しい。
【0061】
また、本実施形態では、フライアイレンズ1は、第1突き当て面12a(所定突き当て面)を端面に含む。保持部2は、突き当て面を突き当て可能な被突き当て面21を有し、被突き当て面21は、第1被突き当て面21aと、第1被突き当て面21aに直交する第2被突き当て面21bと、を含む。
【0062】
第1突き当て面12aが第1被突き当て面21aに突き当てられた状態で保持された場合における光学機能領域中心15の位置は、第1突き当て面12aが第2被突き当て面21bに突き当てられた状態で保持された場合における光学機能領域中心15の位置と、略等しい。
【0063】
また、本実施形態では、フライアイレンズ1は、突き当て面12を端面に含む。保持部2は、突き当て面12を突き当て可能な被突き当て面21を有する。突き当て面12は、第1突き当て面12aと、第1突き当て面12aに直交する第2突き当て面12bと、第1突き当て面12aに直交する第3突き当て面12cと、を含む。被突き当て面21は、第1被突き当て面21aと、第1被突き当て面21aに直交する第2被突き当て面21bと、を含む。
【0064】
0度状態では、第1突き当て面12aは第1被突き当て面21aに突き当てられ、第2突き当て面12bは第2被突き当て面21bに突き当てられる。90度状態では、第3突き当て面12cは第1被突き当て面21aに突き当てられ、第1突き当て面12aは第2被突き当て面21bに突き当てられている。
【0065】
このようにすることで、光変調素子7に対し、長手方向の向きがYZ平面内で90度回転された光変調素子7aに変更された場合にも、フライアイレンズ1をXY平面内で90度回転させて保持部2に固定することで、同じ種類のフライアイレンズ1を使用できる。換言すると、光変調素子の向きが変わっても同じ種類のフライアイレンズ1を使用できる。
【0066】
その結果、フライアイレンズを設計し直したり、フライアイレンズの成形用金型を新たに製作したりする必要をなくすことができ、照明光学系50の開発効率の低下やコスト増大を抑制できる。
【0067】
上述した実施形態では、フライアイレンズ1の90度回転前後で、光学機能領域中心15の位置が略等しくなる機能を説明したが、この機能を実現するための具体的な構成には各種のものが考えられる。以下にこれらの構成を変形例として説明する。なお、以下に示す図において、上述した実施形態で説明した同一の構成部には、同一の部品番号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0068】
(第1変形例)
まず、図4は、照明光学系50aが有する第1変形例に係るフライアイレンズ1aを示す図である。図4(a)は0度状態、図4(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0069】
フライアイレンズ1aは、平面視が正方形状である外形形状を有し、フライアイレンズ1aの外形中心25の位置は、光学機能領域中心15の位置と略等しい。これにより、フライアイレンズ1aは以下の(1)式の条件を満足する。
H/2+a=V/2+b ・・・ (1)
【0070】
なお、(1)式において、Vは第1突き当て面12aに平行な方向における光学機能領域11の長さを表し、aは第1突き当て面12aから光学機能領域11までの最短距離を表し、Hは第2突き当て面12bに平行な方向における光学機能領域11の長さを表し、bは第2突き当て面12bから光学機能領域11までの最短距離を表す。
【0071】
(1)式を満足することで、0度状態と90度状態で光学機能領域中心15の位置は略等しくなる。その結果、照明光学系50aの構成により、照明光学系50と同様の作用効果が得られる。なお、(1)式における左辺と右辺は略等しければよい。
【0072】
(第2変形例)
次に図5は、照明光学系50bが有する第2変形例に係るフライアイレンズ1bを示す図である。図5(a)は0度状態、図5(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0073】
フライアイレンズ1bは、光学機能領域11の外形形状が正方形状のものであり、外形中心25の位置と、光学機能領域中心15の位置が一致しないものである。フライアイレンズ1bの外形形状は、正方形状であっても長方形状であってもよい。
【0074】
このようなフライアイレンズ1bでも、上記の(1)式の条件を満足することで、0度状態と90度状態で光学機能領域中心15の位置は略等しくなる。その結果、照明光学系50bの構成により、照明光学系50と同様の作用効果が得られる。
【0075】
(第3変形例)
次に図6は、照明光学系50cが有する第3変形例に係るフライアイレンズ1cを示す図である。図6(a)は0度状態、図6(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0076】
フライアイレンズ1cは、フライアイレンズ1cの外形形状が正方形状であり、光学機能領域11の外形形状が長方形状のものである。フライアイレンズ1cの外形中心25の位置は光学機能領域中心15の位置と略一致する。
【0077】
このようなフライアイレンズ1cでも、上記の(1)式の条件を満足することで、0度状態と90度状態で光学機能領域中心15の位置は略等しくなる。その結果、照明光学系50cの構成により、照明光学系50と同様の作用効果が得られる。
【0078】
(第4変形例)
次に図7は、照明光学系50dが有する第4変形例に係るフライアイレンズ1dを示す図である。図7(a)は0度状態、図7(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0079】
フライアイレンズ1dは、光学機能領域11の外形形状が長方形状のものであり、外形中心25の位置と、光学機能領域中心15の位置が一致しないものである。フライアイレンズ1dの外形形状は、正方形状であっても長方形状であってもよい。
【0080】
このようなフライアイレンズ1dでも、上記の(1)式の条件を満足することで、0度状態と90度状態で光学機能領域中心15の位置は略等しくなる。その結果、照明光学系50dの構成により、照明光学系50と同様の作用効果が得られる。
【0081】
ここで、フライアイレンズの外形形状が長方形状である場合には、0度状態と90度状態との間で、フライアイレンズと付勢部材Pとの間の距離が変化し、付勢力が変化する場合がある。
【0082】
従って、0度状態と90度状態との間で条件や構造の差をできるだけ小さくする観点では、フライアイレンズの外形形状は正方形状であることが好ましい。一方、フライアイレンズの小型化、又はフライアイレンズの材料使用量の低減によるコスト削減を図る観点では、フライアイレンズの外形形状は長方形状であることが好ましい。
【0083】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る照明光学系50eについて説明する。
【0084】
図8は、照明光学系50eが有するフライアイレンズ1eの保持部2eへの突き当ての一例を示す図である。図8(a)は0度状態、図8(b)は90度状態をそれぞれ示す。
【0085】
図8に示すように、フライアイレンズ1eは、突き当て面12eを端面に含み、保持部2eは、突き当て面12eを突き当て可能な被突き当て面21eを有する。突き当て面12eは、第1突き当て面12aと、第1突き当て面12aに直交する第2突き当て面12bとを含む。
【0086】
また被突き当て面21eは、第1被突き当て面21aと、第1被突き当て面21aに直交する第2被突き当て面21bと、第2被突き当て面21bに直交する第3被突き当て面21cと、を含む。
【0087】
つまり、フライアイレンズ1eは、2つの突き当て面を有し、保持部2eは3つの被突き当て面を有する。
【0088】
0度状態では、第1突き当て面12aは第1被突き当て面21aに突き当てられ、第2突き当て面12bは第2被突き当て面21bに突き当てられる。90度状態では、第1突き当て面12aは第2被突き当て面21bに突き当てられ、第2突き当て面12bは第3被突き当て面21cに突き当てられる。
【0089】
また、第1被突き当て面21aと第3被突き当て面21cとの間の中間位置Wは、光学機能領域中心15の位置と、略等しい。
【0090】
さらに、フライアイレンズ1eは、以下の(2)式乃至(5)式を満足する。
V/2+D=H/2+B ・・・ (2)
H/2+B=V/2+D ・・・ (3)
A+E=B ・・・ (4)
D=C+E ・・・ (5)
【0091】
ここで、Vは第1突き当て面12aに平行な方向における光学機能領域11の長さを表し、Bは第1突き当て面12aから光学機能領域11までの最短距離を表し、Hは第2突き当て面12bに平行な方向における光学機能領域11の長さを表す。またDは第2突き当て面12bから光学機能領域11までの最短距離を表し、Aはフライアイレンズ1eにおける第1突き当て面12aとは反対側の端面から光学機能領域11までの最短距離を表し、Cはフライアイレンズ1eにおける第2突き当て面12bとは反対側の端面から光学機能領域11までの最短距離を表す。Eはフライアイレンズ1eにおける第1突き当て面12aとは反対側の端面から第3被突き当て面21cまでの距離を表す。
【0092】
このように、フライアイレンズ1eが2つの突き当て面を有し、保持部2eが3つの被突き当て面を有する照明光学系50eの構成においても、第1実施形態に係る照明光学系50と同様の作用効果を得ることができる。
【0093】
つまり、光変調素子7に対し、長手方向の向きがYZ平面内で90度回転された光変調素子7aに変更された場合にも、フライアイレンズ1eをXY平面内で90度回転させて保持部2eに固定することで、同じ種類のフライアイレンズ1eを使用できる。換言すると、光変調素子の向きが変わっても同じ種類のフライアイレンズ1eを使用できる。
【0094】
その結果、フライアイレンズを設計し直したり、フライアイレンズの成形用金型を新たに製作したりする必要をなくすことができ、照明光学系50eの開発効率の低下やコスト増大を抑制できる。
【0095】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0096】
また、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。
【符号の説明】
【0097】
1 フライアイレンズ(レンズアレイの一例)
1A 第1フライアイレンズ
1B 第2フライアイレンズ
2 保持部
3 第1フィールドレンズ
4 折り返しミラー
5 第2フィールドレンズ
6 全反射プリズム
7 光変調素子
71 光変調領域
8 投射光学系
10 画像投射装置
11 光学機能領域
111 レンズ
12 突き当て面
12a 第1突き当て面(所定突き当て面の一例)
12b 第2突き当て面
12c 第3突き当て面
15 光学機能領域中心
21 被突き当て面
21a 第1被突き当て面
21b 第2被突き当て面
21c 第3被突き当て面
25 フライアイレンズの外形中心
50 照明光学系
P 付勢部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【文献】特開2020-187161号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8