(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二次電池およびそれを含む二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241203BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2023520071
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 KR2022095119
(87)【国際公開番号】W WO2023027566
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0112116
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス ハン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨン フワン
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224309(JP,A)
【文献】特開2018-174079(JP,A)
【文献】特開2019-102139(JP,A)
【文献】特開2010-199281(JP,A)
【文献】特開2019-153790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 50/489
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、正極および負極の間とこれらの最外部に位置する分離膜と、を含むスタック型構造の電極組立体と、
前記電極組立体が収容される電池ケースと、を含み、
前記電極組立体に含まれた分離膜は、
前記電極組立体の外周縁に前記分離膜の端部が接合され、前記正極および前記負極を個別的にシールする第1シール部と、
前記負極の上面および下面に配置された前記分離膜間の接合により前記負極の端部と第1シール部の間に収容部を形成する第2シール部と、を含
み、
前記電極組立体は、タップが形成される面を除いた残りの外側面のうち少なくとも1つに火炎伝播防止部を含む二次電池。
【請求項2】
前記収容部は、100℃~300℃で気相に相変化する消火薬剤を収容する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記消火薬剤は、ハロゲン化カーボン、ハロゲン化ケトン、ハロゲン化アルカンおよび不活性ガスのうち1種以上を含む、請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1シール部および前記第2シール部は、接着または熱融着により接合されて形成する、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記分離膜の平均厚さは、5μm~50μmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電極組立体は、複数の単位セルが積層されて構成され、
積層された単位セルと単位セルの間に火炎伝播防止部が挿入される、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記火炎伝播防止部は火炎伝播防止シートを含み、前記火炎伝播防止シートは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、フッ素(F)および酸素(O)のうち1種以上の元素を含有するケイ酸塩で構成されたケイ酸塩シートである、請求項
6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記火炎伝播防止部は火炎伝播防止シートを含み、前記火炎伝播防止シートは、白雲母、フェンジャイト、セラドナイト、パラゴナイト、マーガライト、金雲母、黒雲母、アナイト、鉄雲母、シデロフィライト、クリントナイト、リチウム白雲母、トリリチオナイト、ポリリチオナイト、チンワルダイトおよびテニオライトのうち1種以上を含む、請求項
6に記載の二次電池。
【請求項9】
前記ケイ酸塩シートは、ケイ酸塩全体100重量部に対して1~20重量部のバインダーを含有し、
前記バインダーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリ(エチレン-プロピレン)共重合体を含むポリオレフィン;ナイロンを含むポリアミド;および耐熱性シリコンのうち1種以上を含む、請求項
7に記載の二次電池。
【請求項10】
前記火炎伝播防止部は火炎伝播防止シートを含み、前記火炎伝播防止シートは、表面に突出部;凹部;または突出部と凹部が繰り返し形成された所定のパターンを有する、請求項
6に記載の二次電池。
【請求項11】
前記請求項1に記載の二次電池と、前記二次電池が収納されるモジュールケースと、を含む二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池およびそれを含む二次電池モジュールに関するものである。
【0002】
本出願は、2021年8月25日付の韓国特許出願第10-2021-0112116号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要の増加に伴い、二次電池の需要も急激に増加している。その中でも、リチウム二次電池は、エネルギー密度と作動電圧が高く、貯蔵と寿命特性に優れているという点から、各種モバイル機器はもちろん、様々な電子製品のエネルギー源として広く使用されている。
【0004】
このような二次電池の種類には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池などがある。また、リチウム二次電池は、その形状によって角型電池、パウチ型電池、円筒型電池に区分される。
【0005】
最近では、携帯型電子機器のような小型装置のみならず、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリーパックまたは電力貯蔵装置のような中大型装置に二次電池が広く使用されている。
【0006】
このような二次電池は、作動電圧が高く、エネルギー密度が高いというなどの長所があるが、有機電解液を使用するので、リチウム二次電池が過充電されると、過電流および過熱を誘発して、ひどい場合、爆発や発火による火災が発生することがある。
【0007】
また、複数のバッテリーセルが積層されたバッテリーモジュールの場合、いずれか1つのバッテリーセルが爆発したり発火すると、正常に作動する他のバッテリーセルに火炎が伝播し、複数のバッテリーセルが連鎖的に爆発するので、バッテリーモジュールが装着された装置に損傷が発生することがあり、ユーザが安全事故の危険にさらされることがある。
【0008】
図1は、バッテリーセル間の火炎伝播を防止するために提示された従来のバッテリーモジュールの構造の一例を示す概略図である。
【0009】
上記従来のバッテリーモジュール1は、複数のバッテリーセル10と、各バッテリーセルの間に位置する火炎伝播防止部材20と、モジュールケース11と、を含む。
【0010】
上記複数のバッテリーセル10のうちいずれか1つのバッテリーセルに爆発や発火が発生しても、上記火炎伝播防止部材20が上記バッテリーセルの間に位置しているので、他のバッテリーセルに火炎が伝播するのを防止することができる。
【0011】
しかしながら、上述のような従来のバッテリーモジュールは、各バッテリーセルの外部に火炎伝播防止部材が設置されるので、バッテリーセル内部の電極組立体が燃焼するのを防ぐことができない。すなわち、セル内部の電極組立体に発火が発生すると、バッテリーセル内部段階では火炎伝播を遮断することができないので、電極組立体およびそれを取り囲む電池ケースを全て燃やすまで何の妨げもなくバッテリーセルが燃焼する。電極組立体のみならず、電池ケースまで燃やすなどバッテリーセルが完全に燃焼すると、燃焼温度がさらに高くなり、爆発の危険性が大きくなる。
【0012】
上記従来のバッテリーモジュールは、バッテリーセルとバッテリーセルとの間に火炎伝播防止部材が設置されているので、他のセルに火炎が伝播することを一定時間遅延させることができる。しかしながら、バッテリーセル内部段階から火炎を遮断しないので、バッテリーセル間の火炎転移時間が比較的短い。複数のバッテリーセル積層体が収納されるバッテリーモジュールにおいてバッテリーセルが発火するいわゆる熱暴走現象(thermal runaway)の発生時に火炎転移時間をどれくらい低減できるかは、バッテリーモジュールの品質評価において重要な要因となる。火炎転移時間が短ければ、個別バッテリーセルのみならず、全体バッテリーモジュールが爆発する危険が大きくなることを意味するところ、従来のバッテリーモジュール構造は、このような火炎転移時間を抑制するのに限界があった。
【0013】
一方、電極組立体に複数の正極と複数の負極が交互に積層され、正極と負極の間に分離膜が介在される。この際、上記負極は、正極より広い面積を有するように形成され、分離膜は、正極と負極の短絡を防止するために、正極および/または負極より拡張されて製作される。しかしながら、高容量の二次電池は、充放電過程で相当な熱が発生することがあり、そのため、分離膜が収縮することができる。収縮した分離膜は、正極と負極の接触を発生させて内部短絡を発生させることがあるが、このような内部短絡は、電池の爆発および発火を引き起こす可能性があるので、二次電池の安全性向上の観点から、電極組立体の内部短絡問題を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】韓国特許公開第10-2019-0094921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これより、本発明の目的は、二次電池が高温にさらされる場合、電極組立体に含まれた分離膜の収縮を防止して、内部短絡およびこれによる二次電池の爆発および/または発火を抑制する一方で、バッテリーセルの爆発や発火時に発生する火炎の電波をセル内部段階から遮断または遅延させながらも、火炎伝播防止シートの微粒子の脱落が防止される二次電池およびこれを含む二次電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述のような問題を解決するために、
本発明は、一実施形態において、
正極、負極および分離膜を含むスタック型構造の電極組立体と、上記電極組立体が収容される電池ケースと、を含み、
上記電極組立体に含まれた複数の分離膜は、
電極組立体の外周縁に分離膜の端部が接合され、正極および負極を個別的にシールする第1シール部と、
負極の上面および下面に配置された分離膜間の接合により負極の端部と第1シール部との間に収容部を形成する第2シール部と、を含む二次電池を提供する。
【0017】
この際、上記収容部は、100℃~300℃で気相に相変化する消火薬剤を収容することができ、上記消火薬剤は、ハロゲン化カーボン、ハロゲン化ケトン、ハロゲン化アルカンおよび不活性ガスのうち1種以上を含んでもよい。
【0018】
また、上記第1シール部および第2シール部は、接着または熱融着により接合されて形成されてもよい。
【0019】
また、上記分離膜の平均厚さは、5μm~50μmであってもよい。
【0020】
また、上記二次電池は、火炎伝播時間を遅延させる火炎伝播防止部を含んでもよい。
【0021】
一例として、上記二次電池は、電極組立体においてタップが形成される面を除いた残りの外側面のうち少なくとも1つに火炎伝播防止部を含んでもよい。
【0022】
他の一例として、上記二次電池は、電極組立体において複数の単位セルが積層されて構成され、積層された単位セルと単位セルの間に挿入された火炎伝播防止部を含んでもよい。
【0023】
ここで、上記火炎伝播防止部に含まれる火炎伝播防止シートは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、フッ素(F)および酸素(O)のうち1種以上の元素を含有するケイ酸塩で構成されたケイ酸塩シートであってもよい。
【0024】
具体的には、上記火炎伝播防止シートは、白雲母、フェンジャイト、セラドナイト、パラゴナイト、マーガライト、金雲母、黒雲母、アナイト、鉄雲母、シデロフィライト、クリントナイト、リチウム白雲母、トリリチオナイト、ポリリチオナイト、チンワルダイトおよびテニオライトのうち1種以上を含んでもよい。
【0025】
また、上記ケイ酸塩シートは、ケイ酸塩全体100重量部に対して1~20重量部のバインダーを含有し、上記バインダーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリ(エチレン-プロピレン)共重合体を含むポリオレフィン;ナイロンを含むポリアミド;および耐熱性シリコンのうち1種以上を含んでもよい。
【0026】
また、上記火炎伝播防止シートは、表面に突出部;凹部;または突出部と凹部が繰り返し形成された所定のパターンを有していてもよい。
【0027】
しかも、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明による二次電池と、上記二次電池が収納されるモジュールケースと、を含む二次電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明による二次電池は、電極組立体に含まれた分離膜が正極と負極を個別的に封止するシール部を有し、かつ、負極の端部に消火薬剤を収容する収容部が設けられるように第1シール部および第2シール部を含む二重シール構造を有することによって、高温露出時に分離膜の収縮をより効果的に抑制することができ、電池の内部に火花が発生する場合、消火薬剤により即刻に消火が可能であるから、分離膜の収縮による内部短絡およびこれによる二次電池の爆発または発火を防止することができる。
【0029】
また、上記二次電池は、電極組立体の外側面に火炎伝播防止部を備えることによって、二次電池の熱暴走時に発生した火炎がセル内部段階で遮断され、火炎が転移する時間をより長く誘導することができるので、二次電池およびこれを含む二次電池モジュールの安全性がより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】バッテリーセル間の火炎伝播を防止するための従来のバッテリーモジュールの構造の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明による二次電池の構造を示す断面図である。
【
図3】本発明による電極組立体の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明による電極組立体の構造を示す断面図である。
【
図5】スタック型構造を有する電極組立体の火炎伝播状態を示す概略図である。
【
図6】本発明による二次電池の構造を示す断面図である。
【
図7】本発明の火炎伝播防止シートのパターンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有していてもよいところ、特定の実施形態を詳細な説明に詳細に説明しようとする。
【0032】
しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解すべきである。
【0033】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0034】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるというのは、上部のみならず、下部に配置される場合も含んでもよい。
【0035】
本発明において使用される「結合」または「連結」という用語は、1つの部材と他の部材が直接結合されるか、直接連結される場合のみならず、1つの部材が連結部材を通じて他の部材に間接的に結合されるか、間接的に連結される場合も含む。
【0036】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
<二次電池>
本発明は、一実施形態において、
複数の正極と複数の負極が交互に配置され、上記正極と負極の間に個別的に介在される複数の分離膜を含む電極組立体と、
上記電極組立体の少なくとも1つの外側面に設置される火炎伝播防止部と、
上記電極組立体および火炎伝播防止部が収容される電池ケースと、を含み、
上記電極組立体の正極および負極は、それぞれ、上面に配置された分離膜と下面に配置された分離膜の外周縁が接合され、正極と負極を個別的にシールするシール部を含む二次電池を提供する。
【0038】
図2は、本発明による二次電池100の構造を示す概略図である。
【0039】
図2を参照すると、本発明による二次電池100は、パウチ型の電池ケース130内に電極組立体110が収納され、電解液が上記電池ケース130内に注液され、上記電極組立体110が上記電解液に含浸する構造となっている。
【0040】
上記電極組立体110は、様々な構造を有していてもよく、また、様々な方式で積層されてもよい。正極-分離膜-負極のフルセル(full cell)(モノセル)1個が電池ケースに収容されたモノセル形状の二次電池に本発明を適用することが可能である。また、正極-分離膜-負極の順に配列されるモノセルまたは正極-分離膜-負極-分離膜-正極あるいは負極-分離膜-正極-分離膜-負極形状のバイセル(bi-cell)のような単位セル(unit cell)を電池容量に合わせて多数個積層させたスタック型構造を有していてもよい。上記電極組立体110の電極から多数の電極タップTが突出し、これは、電極リード140に連結される。上記電極リード140は、外部に露出し、外部機器に連結される一種の端子であり、導電性材質が使用されてもよい。電極リード140は、正極電極リードと負極電極リードを含んでもよい。正極電極リードと負極電極リードは、二次電池100の長さ方向に対して反対方向に配置されてもよく(いわゆる、双方向セル)、あるいは、互いに同じ方向に配置されてもよい(いわゆる、単方向セル)。
図2に双方向二次電池100が示されている。
【0041】
本発明の電極組立体110は、
図2のようなスタック型構造の電極組立体110であってもよい。あるいは、図示してはいないが、上記電極組立体110は、長いシート状の正極と負極を分離膜が介在した状態で巻き取った構造のゼリーロール型電極組立体、あるいは、ゼリーロール型とスタック型の混合タイプであり、フルセルまたはバイセルを長い連続的な分離膜シートを用いて巻き取った構造のスタックフォールディング型構造の電極組立体であってもよい。
【0042】
また、上記電極組立体110は、正極111と負極112との間に位置する分離膜113が隣接する分離膜と外周縁が接合された構造を有し、これによって、これらの間にある正極111と負極112は、分離膜113で取り囲まれてシールされ、接合された分離膜の端部にシール部114および/または115が設けられ得る。
【0043】
具体的には、上記電極組立体110は、複数の正極111と複数の負極112が交互に配置され、配置された正極111と負極112との間およびこれらの最外部には、分離膜113が個別的に挿入される。このように挿入された分離膜113は、電極組立体110の外周縁に端部が接合され、正極111および負極112を個別的にシールする第1シール部114を含み、負極112の上面および下面に配置された分離膜113間の接合により負極112の端部と第1シール部114との間に第2シール部115を含む。
【0044】
これによって、分離膜113によりシールされる正極111の端部に第1シール部114が位置し、負極112の端部に第1シール部114と第2シール部115が位置する。
【0045】
ここで、上記シール部114および115は、電極組立体110のタップTが形成される側の側面を除いた残りの外側面に形成されることが好ましい。電極組立体110のタップTが形成される側の側面は、電解液とガスが流動する通路であるから、この側面がシールされ、電気の基本的な機能が低下することができる。
【0046】
また、上記シール部114および/または115は、高温での分離膜113の収縮を抑制するために、正極111および/または負極112の全面積に対して一定の面積率を有していてもよい。具体的には、第1シール部114および/または第2シール部115は、正極111および/または負極112の全面積に対して2%以上の面積率を有していてもよく、より具体的には、4%以上、5%以上、8%以上、10%以上、15%以上、20%以上、5~20%、5~15%、5~10%、10~20%、11~19%または8~14%であってもよい。
【0047】
一例として、第1シール部114は、負極112の全面積に対して3%の面積率を有し、第2シール部115は、負極112の全面積に対して5~8%の面積率を有していてもよい。
【0048】
本発明は、シール部114および/または115の面積を上記シールした正極111および/または負極112の全面積に対して上記面積率を満たすことによって、高いエネルギー密度を維持しつつ、高温露出時に電極周囲に分離膜113の固定をより強固にして、分離膜113の収縮を最小化することができる。すなわち、顕著に低いシール部の面積率によって分離膜の収縮を抑制する効果を具現しないか、過度なシール部の面積率によって電極組立体のエネルギー密度が低下するのを防止することができる。
【0049】
また、上記分離膜113は、正極111と負極112の表面を覆い、各電極の周りに分離膜113の余剰部が残るほどの大きい面積であることが好ましい。この場合、上記分離膜113の余剰部に沿って分離膜間の接合を具現することによって、正極111および負極112の周りに各電極をシールすると同時に、分離膜113を固定させることができるシール部114および115を形成することができる。すなわち、上記シール部114および115は、二次電池100の高温露出時、分離膜113の端部を固定する役割を行い、これによって、分離膜113が収縮することを抑制することができる。特に、本発明による二次電池100は、第1シール部114の内側に負極112をさらに二重で封止する第2シール部115を備えることによって、正極111と負極112を個別的に封止する第1シール部114のみを備える場合と比較して、高温で分離膜113の収縮抵抗性をより向上させることができる。
【0050】
また、上記分離膜113は、分離膜の接合時に、当業界で適用する接着手段を使用したり、熱を加えて融着させることによって、第1シール部114と第2シール部115を形成することができる。
【0051】
一例として、
図3に示されたように、上記分離膜113は、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、およびアクリル系共重合体などを含有する接着剤などの手段115を用いてシール部114および/または115を形成することができる。
【0052】
他の一例として、
図4に示されたように、上記分離膜113は、高温条件下で分離膜113の外周縁を加圧して熱融着させることによって、シール部114および/または115を形成することができる。
【0053】
また、上記分離膜113の平均厚さは、5μm~50μmであってもよく、具体的には、10μm~40μm、20μm~30μm、または17μm~28μmであってもよい。本発明は、分離膜113の平均厚さを上記範囲に制御することによって、電極組立体110の総厚さが過度に厚くなるのを防止して、エネルギー密度をより増加させることができる。
【0054】
しかも、上記電極組立体110は、第1シール部114と第2シール部115との間に収容部118を含む構成を有する。上記収容部118は、負極112の上面および下面に配置された分離膜113間の接合により形成されるものであり、これによって、負極112の端部にパウチ形状の一定空間を含んでもよい。この際、上記収容部118は、そのサイズが特に限定されるものではないが、シール部が接着手段により形成される場合、厚さは、負極の平均厚さと同一であってもよい。
【0055】
また、上記収容部118は、二次電池セルの内部に火花(spark)が発生する場合、これに作用して火花を低減および/または除去させることができる消火薬剤を含んでもよい。
【0056】
ここで、上記消火薬剤は、通常の火災鎮圧に用いられる種類の消火薬剤であれば、その性状が粉末であるか、液状であるかまたは気体であるかにかかわらず使用可能であり、当業界で適用されている様々な消火薬剤が用いられ得る。消火の原理も、窒息消火、冷却消火またはこれらの2つの原理を共に用いた消火が全て適用可能である。
【0057】
具体的には、上記消火薬剤としては、モントリオール議定書によって生産および使用が制限されない成分を主成分とし、消火性能に優れた物質であり、常温で液相であり、特定温度、例えば、100~300℃、具体的には、100~200℃の温度で気相に相変化するものであってもよい。
【0058】
このような消火薬剤としては、例えば、フッ化カーボン(fluorine carbon)、フッ化塩化カーボン(fluorine chlorine carbon)、フッ化臭化カーボン(fluorine bromine carbon)、フッ化ヨウ化カーボン(fluorine iodine carbon)、ヨードフルオロカーボン(FIC-217I1またはFIC-13I1)などのハロゲン化カーボン;
2-ヨード-1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ea)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン(CF3CF3H、HFC-125)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CF3CHFCF3)、クロロテトラフルオロエタン(CHClFCF3)、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン(C2HClF4)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CHClFCF3、HCFC-124)などのハロゲン化アルカン;
ドデカフルオロ-2-メチルペンタン-3-オン(FK-5-1-12、CF3CF2C(O)CF(CF3)2)、デカフルオロシクロヘキサノン(ペルフルオロシクロヘキサノン)、CF3CF2C(O)CF(CF3)2(-1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-トリフルオロメチル-ブタン-3-オン)、(CF3)2CFC(O)CF(CF3)2(-1,1,1,2,4,5,5,5,6,6,6-オクタフルオロ-2,4,-ビス(トリフルオロメチル)ペンタン-3-オン)、CF3CF2C(O)CF2CF2CF3、CF3C(O)CF(CF3)2,1,1,1,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘキサドデカフルオロオクタン-2-オン(CF3CF2CF2CF2CF2CF2C(O)CF3)、1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-トリフルオロメチルブタン-2-オン(CF3C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5-オクタフルオロ-2-トリフルオロメチルペンタン-3-オン(HCF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン-3-オン(CF3CF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1-クロロ-、1,1,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-トリフルオロメチル-ブタン-2-オン((CF3)2CFC(O)CF2Cl)、1,1,1,2,2,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロヘキサン-3-オン(CF3CF2C(O)CF2CF2CF3)、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペンタン-2-4-ジオン(CF3C(O)CH2C(O)CF3)、1,1,1,2,5,6,6,6-オクタフルオロ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ヘキサン-3,4-ジオン((CF3)2CFC(O)C(O)C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,2,3,3,5,5,6,6,7,7,7,-テトラデカフルオロヘプタン-4-オン(CF3CF2CF2C(O)CF2CF2CF3)、1,1,1,3,3,4,4,4-オクタフルオロブタン-2-オン(CF3C(O)CF2CF3)、1,1,2,2,4,5,5,5-オクタフルオロ-1-トリフルオロメトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン-3-オン(CF3OCF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,7,7,7,-トリデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘプタン-3-オン(CF3CF2CF2CF2C(O)CF(CF3)2)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハロゲン化ケトン;
窒素ガス(N2)、アルゴンガス(Ar)などが単独または混合された形状の不活性ガスを含んでもよい。
【0059】
一例として、上記消火薬剤は、化学式CpHqOrXs(ここで、p、q、rおよびsは、0~20の整数であり、Xは、Br、IおよびFのうち1種以上である)であるものを使用することができ、一例として3M社のノベック1230(Novec 1230)を使用することができる。
【0060】
また、上記電極組立体110は、少なくとも1つの外側面に火炎伝播防止部120が配置される。本明細書において火炎伝播防止部120とは、例えば、複数の二次電池が挿入されたバッテリーモジュールやバッテリーパックにおいて、1つの二次電池に発火が発生した場合、その発火による火炎が他の二次電池セルに伝達されるのを防止するシート状の部材を意味する。また、上記火炎伝播防止部120は、シート状の部材であるから、従来の火炎防止網のように孔を含まず、例えば、雲母などのような結晶質のケイ酸塩鉱物などで細かく中が満たされている生地概念のシートを構成するので、火炎をより効果的に遮断することができる。
【0061】
また、本発明の火炎伝播防止部120は、二次電池100の剛性を増加させることができる。例えば、上記火炎伝播防止部120が電極組立体上に設置されると、後述するように、二次電池100のインパクト試験の場合に、バッテリーセルの押圧幅を減らし、電池ケース130内の電極組立体110を保護および補強する役割をする。本発明の火炎伝播防止部120は、電池ケース130内に設置されるものであるから、複数の二次電池100が共に設置される場合はもちろん、単一の二次電池100が電気機器の電源などに採用される場合にも、より強固な剛性を備えるという点から、独立的な技術的意味を有するものである。
【0062】
火炎伝播防止シート121は、例えば、過電流や熱暴走によって二次電池セル内に火炎が発生した場合、この火炎が二次電池セル内の他の部分、あるいは、隣接する他の二次電池セルに伝播するのを防止する機能を行う。したがって、上記火炎伝播防止シート121は、火炎を遮断できる耐熱性と断熱性を兼ね備えた材質を採用することができる。その中でも、本発明の火炎伝播防止部120に含まれる火炎伝播防止シート121は、耐熱性と断熱性を兼ね備えたケイ酸塩シートであることが好ましい。
【0063】
本発明において言及されるケイ酸塩シートは、ケイ酸塩で構成されるものであり、電池ケース内で防炎および/または難燃効果を具現する機能を行う。この際、上記ケイ酸塩は、当業界で通常使用されるものであれば、特に限定されずに適用することができるが、具体的には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、フッ素(F)および酸素(O)のうち1種以上の元素を含有するものを使用することができる。
【0064】
一般的に、ケイ酸塩は、ケイ酸の水素が他の金属原子で置換された中性塩を意味するが、本発明では、防炎および/または難燃効果を具現するために、水素サイトにアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などの元素で置換されたものを使用することができ、特に防炎性のために、層状のケイ酸塩を使用することができる。
【0065】
例えば、上記ケイ酸塩としては、白雲母、フェンジャイト、セラドナイト、パラゴナイト、マーガライト、金雲母、黒雲母、アナイト、鉄雲母、シデロフィライト、クリントナイト、リチウム白雲母、トリリチオナイト、ポリリチオナイト、チンワルダイトおよびテニオライトのうち1種以上を含んでもよい。
【0066】
一例として、上記火炎伝播防止シート121は、雲母を含む雲母シートを含んでもよい。
【0067】
雲母は、花崗岩を構成する造岩物質の1つであり、優れた電気絶縁性を有していて、加熱時に物性の変化が非常に少ない特性を有する。上記雲母は、500~1000℃の高温でも優れた絶縁抵抗を有する。また、雲母は、優れた難燃性を有し、燃焼または加熱時に煙が発生しない特性を有する。このような特性によって、二次電池の電池ケース内に雲母を含む雲母シートを設置することによって、バッテリーセル内部の熱暴走、さらには、バッテリーセル間の熱暴走の電波を防止または遅延することができる。
【0068】
また、上記火炎伝播防止シート121は、ケイ酸塩、例えば、雲母をシート状に製造するために、主成分であるスクラップ雲母または粉砕雲母をバインダー(例えば、耐熱性シリコン)と混合して、大きい板状に成形した後、適当な長さに切って、電極組立体のサイズに合うシート状に製造することができる。しかしながら、雲母シートの製造方法は、これに限定されるものではなく、当業界で通常的に知られた技術によって様々な方法で雲母シートを製造することができる。
【0069】
ここで、「主成分とする」というのは、対象成分が物質の全体100重量部において60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上、95重量部以上、98重量部以上、または99重量部以上で含まれることを意味する。
【0070】
一例として、上記火炎伝播防止シート121は、ケイ酸塩全体100重量部に対して1~20重量部のバインダーを含有していてもよい。
【0071】
また、上記シートに含まれるバインダーは、ケイ酸塩に対して付着力に優れたものを使用することができる。具体的には、上記バインダーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはポリ(エチレン-プロピレン)共重合体を含むポリオレフィン;およびナイロンを含むポリアミド、耐熱性シリコンのうち1種以上を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
また、上記火炎伝播防止部120のサイズは、火炎伝播防止のために、また、電極組立体110の保護の観点から、電極組立体110の表面をほとんどあるいは完全に覆うことが好ましい。また、火炎伝播防止シート121の厚さは、使用される電極組立体110の厚さに比例して適切なものを使用することができる。例えば、スタック型構造の電極組立体110を使用する場合、厚さが略0.1~1mm程度のシートを使用することができるが、これに限定されるものではない。すなわち、電極や電池規格によってそれより厚さが厚いかまたは薄いシートを使用することができる。
【0073】
上記火炎伝播防止部120は、電極組立体110を保護するために、電極組立体に接触することもできるが、他の層を介在して電極組立体上に積層することもできる。
図2のように、上記火炎伝播防止部120は、上記電極組立体110の上面および下面の両方に積層されるか、あるいは、上面および下面のいずれか1つの面に積層されてもよい。場合によって、上記電極組立体110の両側面に積層されてもよい。
【0074】
上記電池ケース130は、
図2に示されたように、パウチ型の電池ケースが使用されてもよいが、これに限定されるものではなく、円筒型缶、角型缶形状のケースが全部使用されてもよい。パウチ型の電池ケースは、樹脂とアルミニウムが積層されたアルミニウムラミネートフィルムからなる。上記アルミニウムラミネートフィルムは、熱暴走による電池(電極組立体)の発火時に、熱遮断機能が顕著に劣化して溶けてしまう。また、アルミニウムラミネートフィルムが燃焼する時に、有毒ガスが発生し、電極組立体の他に追加の材料(電池ケース)も燃焼するので、燃焼温度もさらに高くなる。また、円筒型缶や角型缶形状の電池ケースは、金属缶からなるので、熱暴走時に熱伝播の問題は、パウチ型バッテリーセルよりは少し深刻であるが、安全性の観点から、熱暴走時に熱伝播を防止または遅延させる必要がある。上記火炎伝播防止部120は、異常の熱暴走時に、熱または火炎の伝播を完全に遮断した方が良いが、それが不可能な場合にも、最大限その伝播を遅延させることが重要である。二次電池モジュールは、複数の二次電池セル100が積層されて構成されるので、個々の二次電池セル100において数秒~数十秒でも火炎伝播を遅延させると、全体二次電池モジュール単位では、数分以上火炎伝播を遅延させることができる。このような火炎伝播遅延特性は、発火、特に爆発防止あるいは爆発時間の最大遅延に関連する重要な特性である。
【0075】
図5は、スタック型構造の電極組立体の火炎伝播状態を示す概略図である。
【0076】
図5に示されたように、電極組立体110のスタック層を例えば上部(Xパート)と下部(Yパート)に区分した場合、Xパートの一部に火炎が発生した場合、この火炎は、上記電極組立体110内で何の妨害を受けずに電極組立体の上部および下部の終端まで進行する。したがって、
図5のように、電極組立体110の上面および下面に火炎伝播防止部120を設置するとしても、当該電極組立体110外部への火炎の拡散を遮断することができるが、電極組立体110内部への火炎の拡散を防止することができない。この場合、高容量のために多段で高スタック化した電極組立体110がその一部の単位セルの発火によって全体が燃焼して消耗してしまう。また、高スタックの電極組立体全体が燃焼すると、燃焼範囲が拡大し、燃焼温度も上昇して、火炎伝播を抑制することが困難になる。
【0077】
図6は、上述のような問題を解消するための本発明の他の実施形態のバッテリーセルの構造を示す概略図である。
【0078】
図6を参照すると、電極組立体110の中間に位置する単位セル(モノセルM)と単位セルMとの間に火炎伝播防止部120が積層されている。上記単位セルは、正極-分離膜113-負極-分離膜113の層構成を有している。すなわち、火炎伝播防止部120を中心に上部のXパートに所定個数の単位セルが積層され、下部のYパートに所定個数の単位セルが積層される。例えば、Xパートに過熱による火炎が発生する場合、Xパートの上端に火炎が伝播することができる。しかしながら、XパートとYパートの単位セルの間に火炎伝播防止部120が位置するので、Xパートに発生した火炎は、Yパートに伝播しない。または、火炎が伝播する場合にも、まずXパートに火炎が先に伝播し、次にYパートに火炎が伝播する。言い換えれば、上記火炎伝播防止部120は、一種のバリアーの役割を行い、火炎の電波を遮断し、火炎伝播時にも順次に発火を誘導する機能を行う。これによって、発火がYパートに進行される場合にも、順次に発火が進行されるので、急速に電極組立体全体が発火するのを防止し、全体的な火炎伝播時間を遅延させることができ、バッテリーセルの安全性が向上する。
【0079】
上記火炎伝播防止部120は、積層された単位セルのほぼ中間部分に位置することが好ましいが、これに限定されるものではない。必要に応じて、電極組立体110の上部または下部に近い位置の単位セルの間に配置が可能である。
【0080】
いずれの位置に位置しても、上記火炎伝播防止部120は、そのシートを基準として上部または下部への火炎伝播を抑制することができる。また、設置される火炎伝播防止部の個数も、1個に限定されない。積層される単位セルの個数によって2個以上の複数個でスタック構造の電極組立体の適切な位置に配置することができる。ただし、火炎伝播防止部が配置されると、当該シート部を基準として上部または下部あるいは上下部の単位セルが電池としての充放電機能を行うことができない。したがって、できる限り、電極組立体内の火炎伝播防止部の個数は、少なく配置することが好ましい。言い換えれば、火炎伝播防止部の設置位置や個数は、電池容量と安全性などを考慮して最適の範囲内で決定することが好ましい。
【0081】
一方、
図6に示された電極組立体110は、上部と下部が対称構造を成す単位セル(モノセル)で配置し、かつ、その対称構造の間のハーフセルH1の一部分に火炎伝播防止部120を配置して、充放電に寄与しない単位セルの部分を最小化しようとするものである。
【0082】
本実施形態の火炎伝播防止部120は、単位セルの間にのみ位置するのではなく、特定単位セルMと単位セルMの間に位置する他の単位セルの一部である分離膜113や正極または負極の代わりに積層されてもよい。要するに、電池容量と安全性を比較測定して、適切な位置に火炎伝播防止部を設置することができる。
図6を参照すると、上記火炎伝播防止部120は、ハーフセルH1の負極の上部に位置する分離膜113の代わりに積層されている。
【0083】
一方、
図6に示されたように、火炎伝播防止部120を電極組立体の上面または下面、および積層された電極組立体110の内部に設置すると、火炎伝播防止効果が最大化される。しかしながら、火炎伝播防止部120が設置されると、電池反応に参加しない単位セルが増加するので、火炎伝播防止部の設置個数は、このような点を考慮して慎重に決定しなければならない。
【0084】
図7は、本発明の火炎伝播防止シート121のパターンを示す概略図である。
【0085】
図7の(a)は、火炎伝播防止シート121の平面形状を、
図7の(b)は、火炎伝播防止シート121の側面形状を示している。
【0086】
図7を参照すると、上記火炎伝播防止シート121は、表面に所定パターンを形成したものを使用することができる。すなわち、例えば、雲母シートを使用する場合、雲母は、長さ方向に割れる性質があるので、雲母シートの強度向上のために、表面に突出部、凹部、または突出部および凹部が繰り返される形状のパターンを形成することができる。
図7の(a)には、このようなパターンの形状として、四角形状Aが繰り返されたり、ストライプ形状Bがシートの長さ方向に形成された例を示しているが、このような形状に限定されるものではない。また、
図7の(b)のように、突出部a、凹部b、または突出部aおよび凹部bが繰り返される形状でパターンを構成すると、火炎伝播防止シート121の表面積が増加し、熱暴走時に放熱面積を増加させることができる。
図7には、火炎伝播防止シート121の上面にのみパターンが形成されたことを示しているが、必要に応じて上面および下面にそれぞれパターンを形成することもできる。
【0087】
本発明による二次電池は、上述した構成を有することによって、高温露出時に分離膜の収縮をより効果的に抑制することができるので、分離膜の収縮による内部短絡およびこれによる二次電池の爆発または発火を防止することができる。また、上記二次電池は、熱暴走時に発生した火炎がセル内部段階で遮断され、火炎が転移する時間をより長く誘導することができるので、二次電池およびこれを含む二次電池モジュールの安全性がより向上することができる。
【0088】
<二次電池モジュール>
また、本発明は、一実施形態において、
上述した本発明の二次電池と、
上記二次電池が収納されるモジュールケースと、を含む二次電池モジュールを提供する。
【0089】
本発明による二次電池モジュールは、本発明の二次電池を備える構成を有することによって、高温露出時に安全性に優れているので、高温安全性および長いサイクル特性と高いレート特性などが要求される中大型デバイスの電源に用いられ得る。このような中大型デバイスの具体例としては、電気モーターにより動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられ、より具体的には、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,HEV)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0090】
以下、本発明を実施例および実験例に基づいてより詳細に説明する。
ただし、下記実施例および実験例は、本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0091】
<実施例1~3および比較例1~3>
正極および負極をそれぞれ40個ずつ準備し、上記正極および負極より広い分離膜(横9.5cm×縦34.5cm、平均厚さ:約20μm)を120個準備した。次に、分離膜-負極-分離膜-正極-分離膜のスタック用単位セルを40個積層したスタック型電極組立体が内蔵された横10cm×縦35cm×厚さ1.6cmのパウチ型二次電池セルを製作した。この際、上記分離膜は、多孔性ポリエチレンからなる分離膜を使用した。また、負極の上面および下面に位置する分離膜を対象に負極の端部で150℃の温度で外周縁を一次的に熱融着して、第2シール部を形成し、下記表1に示されたように、第2シール部が形成された分離膜の内側に消火薬剤としてノベック1230(3M社、Novec 1230)を注入し、電極組立体の外周縁を2次的に熱融着して、第1シール部を形成した。
【0092】
次に、製作された二次電池セルは、火炎伝播防止部を下記表1に示されたように配置して、スタック用単位セルを製造した:
-位置(1):積層された電極組立体のうち1番目および40番目に積層された電極組立体の外側面(二次電池セルの内部、
図7の構造)、
-位置(2):積層された電極組立体のうち1番目および40番目に積層されたスタック型電極組立体の外側面と19番目および20番目に積層された電極組立体の間(二次電池セルの内部、図
7の構造)、または
-位置(3):電池ケースの外側の上面および下面(二次電池セルの外部)。
【0093】
上記火炎伝播防止部は、白雲母とリチウム白雲母(1wt./1wt.)を合わせて100重量部とするケイ酸塩粉砕パウダーをポリエチレンおよびポリプロピレン(1mol%/mol%)を合計で10重量部とするバインダーと混合して、シート状に加工し、これを電極組立体のサイズと同一に切断した雲母シート(平均厚さ:0.2mm)を火炎伝播防止シートとして使用した。
【0094】
【0095】
<実験例>
本発明による二次電池の性能を評価するために、下記のような実験を行った。
【0096】
イ)分離膜の高温収縮率の評価
実施例および比較例の二次電池セルを150℃に加熱したオーブンに20秒間放置した。その後、試験片を回収および分解して、電極組立体に設けられた分離膜のオーブンに放置する前に、横および縦の長さ(横9.5cm×縦34.5cm)に比べて放置後の横および縦の長さの変化を測定し、これらの平均値を分離膜の収縮率として算出した。その結果を下記表2に示した。
【0097】
ロ)3P伝播試験
実施例および比較例の二次電池セルをそれぞれ3個ずつ準備し、準備した各二次電池セルのSOCが100%となるように充電した。準備した3個の二次電池セルをカートリッジタイプのモジュールでシミュレートされた3P伝播テスト装置内に積層されるように装着した。この際、上記3P伝播テスト装置は、モジュール内での二次電池セルの加圧構造を想定して、積層された二次電池セルの上部および下部に所定厚さを有するアルミニウム板をボルトで締結して、二次電池セルを加圧するように用意した。また、上部および下部のアルミニウム板と二次電池セルの間;および積層された二次電池セルの間にアルミニウム冷却板を具備した。最下段の二次電池セルとアルミニウム板の間にヒーティングパッド((株)八光社製シリコンヒーター、SBH2012)を設置し、上記ヒーティングパッドを発熱させて、7℃/minの昇温速度で二次電池セルを加熱して熱暴走を誘導した。
【0098】
ヒーティングパッドの昇温が始まって、装置の下段に位置する1番目の二次電池セルの発火から2番目の二次電池セルを経て3番目の二次電池セルの発火まで所要する時間を測定した。その結果を下記表2に示した。
【0099】
ハ)インパクト試験
上記で3P伝播試験と同一に実施例および比較例で製作された二次電池セルを3個ずつ準備し、積層させ、SOC100%に充電した。次に、準備した二次電池セルを対象にUN1642DLインパクト認証規格による二次電池衝撃試験を行った。この際、使用された分銅の重さは9kgであり、二次電池セルに配置された直径16mmの丸棒の上に落下させることによって実験を行った。その結果を下記表2に示した。
【0100】
【0101】
上記表2に示されたように、本発明による二次電池は、高温での安全性に優れていることが分かる。
【0102】
具体的には、実施例の二次電池は、高温での分離膜収縮率が5%未満であることが示され、3P伝播試験時に、3個のすべてのセルが発火するのに190秒以上の時間がかかることが確認された。また、実施例の二次電池は、インパクト試験時に、平均押圧幅が8mm未満であり、発火が発生しないことが示された。
【0103】
このような結果から、本発明による二次電池は、正極と負極を分離膜が個別的にシールした構造の電極組立体を含み、上記電極組立体の外側面に火炎伝播防止部を備えることによって、隣接するバッテリーセルへの火炎伝播を大きく抑制することができると共に、単一バッテリーセルとして使用される場合などにも、電池ケース自体を厚くする必要なく、上記火炎伝播防止シートにより外部衝撃からバッテリーセルを安全に保護することができるので、全体としてのセル安全性が顕著に向上することが分かる。
【0104】
以上では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野における通常の知識を有する者なら、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることが理解できる。
【0105】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0106】
1 二次電池モジュール
10、100 二次電池
11 モジュールケース
20 火炎伝播防止部材
110 電極組立体
111 正極
112 負極
113 分離膜
114 第1シール部
115 第2シール部
116 接着手段
117 消火薬剤
118 収容部
120 火炎伝播防止部
121 火炎伝播防止シート
130 電池ケース
140 電極リード
T 電極タップ
X 電極組立体の上部パート
Y 電極組立体の下部パート
M 単位セルまたはモノセル
H1 ハーフセル
A 四角形状突出部
B ストライプ形状突出部
a 突出部
b 凹部