(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】マルチターン測定システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
G01D5/245 R
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020147195
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-06-07
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510225465
【氏名又は名称】メジャメント スペシャリティーズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520336805
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ゼンザーズ ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス,ビショップ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン マイセンベルク
(72)【発明者】
【氏名】スコット,ヤンキー
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276240(JP,A)
【文献】特開2002-107177(JP,A)
【文献】特開2016-109431(JP,A)
【文献】特開2015-129660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0080162(US,A1)
【文献】特開2009-145076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0023212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
G01B 7/00 ~ 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチターン測定システムであって、
前記マルチターン測定システムは、
- シャフト(10)と、
- 複数のギア(30)と、
- 前記複数のギア(30)に係合している複数のピニオン(20)であって、中心軸(C)の周りを前記複数のピニオン(20)が回転することにより前記複数のギア(30)の回転が駆動される、複数のピニオン(20)と、
- 各々が、前記複数のギア(30)のうちの1つに配設されており、前記複数のギア(30)のうちの1つの角度位置に基づいて変化する磁界を有する、複数の磁石(40)と、
- 各々が前記複数の磁石(40)のうちの1つの前記磁界を感知するように配置されている、複数の磁界センサ(56)と、
を備えるとともに、
前記複数のピニオン(20)は前記シャフト(10)に配設されており、前記中心軸(C)の周りを前記シャフト(10)と共に回転する、
マルチターン測定システム。
【請求項2】
前記複数のピニオン(20)の各々は異なる数の歯(22t、24t)を有し、前記複数のピニオン(20)は前記中心軸(C)周りに同時に回転する、
請求項1に記載のマルチターン測定システム。
【請求項3】
前記複数のピニオン(20)は、前記中心軸(C)に沿った異なる位置に配設されている第1のピニオン(22)および第2のピニオン(24)を含む、
請求項2に記載のマルチターン測定システム。
【請求項4】
前記複数のギア(30)は異なる数の歯(32t、34t)を有する第1のギア(32)および第2のギア(34)を含み、
前記第1のギア(32)および前記第2のギア(34)は、前記中心軸(C)に沿った異なる場所に配設されており、
前記第1のギア(32)は前記第1のピニオン(22)に係合しており、
前記第2のギア(34)は前記第2のピニオン(24)に係合している、
請求項3に記載のマルチターン測定システム。
【請求項5】
前記複数のギア(30)は、前記中心軸(C)に沿って前記第1のギア(32)と位置合わせされ前記第1のピニオン(22)に係合している第3のギア(38)を含む、
請求項4に記載のマルチターン測定システム。
【請求項6】
前記複数の磁石(40)の各々は、前記複数のギア(30)のうちの1つの回転軸(32B、34B、38B)上で中央に配置されており、
前記複数の磁石(40)の各々の磁化方向(42M、44M、46M)は、前記複数のギア(30)のうちの1つの直径方向(32D、34D、38D)に延びている、
請求項1に記載のマルチターン測定システム。
【請求項7】
前記複数の磁界センサ(56)は、センサボード(50)の前記磁石(40)に面する面(52)に配設されており、
前記複数の磁界センサ(56)の各々は、前記複数の磁石(40)のうちの1つと前記中心軸(C)と平行な方向において位置合わせされている、
請求項1に記載のマルチターン測定システム。
【請求項8】
前記センサボード(50)と前記複数のギア(30)の間に配設されている電磁シールド(60)を更に備え、
前記複数の磁界センサ(56)の各々は、前記電磁シールド(60)を貫通して延在する複数の通路(62)のうちの1つの中に配設されている、
請求項7に記載のマルチターン測定システム。
【請求項9】
前記シャフト(10)は、第1の端部(12)と第2の端部(14)を有し、
前記第1の端部(12)は自由端であり、
前記第2の端部(14)は、前記シャフト(10)の一部の周囲に延在するスプール(16)に回転自在に固定されるように構成されている、
請求項1に記載のマルチターン測定システム。
【請求項10】
集積回路(58)を更に備え、
前記集積回路(58)は、前記複数の磁界センサ(56)に接続されており、前記複数の磁石(40)の各々の前記磁界を表す複数の信号を受信する、
請求項
1に記載のマルチターン測定システム。
【請求項11】
前記集積回路(58)は、前記信号に基づいて前記中心軸(C)周りの前記シャフト(10)の回転数および角度位置を判定する、
請求項10に記載のマルチターン測定システム。
【請求項12】
前記集積回路(58)は、前記シャフト(10)の前記回転数および前記シャフト(10)の前記角度位置の両方を含む前記シャフト(10)の一意の回転位置を、前記信号の複数の組み合わせの各々と関連付ける、
請求項11に記載のマルチターン測定システム。
【請求項13】
前記集積回路(58)は、前記マルチターン測定システムの動作中の任意の所与の時間における前記一意の回転位置を判定できる、
請求項12に記載のマルチターン測定システム。
【請求項14】
前記集積回路(58)は、前記信号のみに基づいて前記一意の回転位置を判定する、
請求項12に記載のマルチターン測定システム。
【請求項15】
前記集積回路(58)から前記一意の回転位置を表す出力信号を受信する通信ボード(70)を更に備え、
前記通信ボード(70)は前記出力信号を前記マルチターン測定システムの外部に送信する、
請求項12に記載のマルチターン測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定システムに関し、より詳細には、複数ターンにわたる回転を測定できる測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数ターンにわたるシャフトの回転を測定するために、所与の時点におけるシャフトの角度位置(angular position)とシャフトが経た回転数とを示す既存の測定システムが使用される。かかる測定システムはたとえば、シャフトの周囲にケーブルが巻かれ、ケーブルが引かれてシャフトから繰り出されるとシャフトが回転する、ケーブル作動式位置センサにおいて使用される。様々な用途において、シャフトの角度位置およびシャフトの回転数は、直線位置を測定するために、繰り出されるケーブルの長さを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる測定システムにおけるシャフトの角度位置およびシャフトの回転数は一般にポテンショメータ(potentiometer)によって測定され、シャフトの回転はポテンショメータの出力電圧を線形に変化させる。しかしながら、精度のレベルの高いポテンショメータは非常に高価である。更に、ポテンショメータは不確実な製造に起因して機械的な不具合を非常に生じ易く、このことが電気的な問題およびそれに対応する不正確な測定につながる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マルチターン測定システムは、複数のギアと、複数のギアに係合している複数のピニオンと、複数のギアのうちの1つに各々配設されている複数の磁石と、複数の磁界センサと、を含む。中心軸周りにピニオンが回転することにより、複数のギアの回転が駆動される。磁石は各々、複数のギアのうちの1つの角度位置に基づいて変化する磁界を有する。磁界センサは各々、複数の磁石のうちの1つの磁界を感知するように配置されている。
【0005】
ここで本発明について、以下の添付の図面を参照して、例示により記載する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態に係るマルチターン測定システムの斜視図である。
【
図2】マルチターン測定システムのセンサボードおよび電磁シールドが透明なものとして示されている、マルチターン測定システムの分解斜視図である。
【
図3】マルチターン測定システムのシャフト、複数のピニオン、複数のギア、および複数の磁石の斜視図である。
【
図4】マルチターン測定システムのピニオン、ギア、磁石、センサボード、および電磁シールドの一部の、詳細な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の例示的な実施形態について、同様の参照符号が同様の要素を指す添付の図面を参照して、以下で詳細に記載する。しかし、本開示は多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に明記する実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろこれらの実施形態は、本開示が本開示の概念を当業者に完全に伝えるように提供されている。更に、以下の詳細な説明では、説明の目的で、開示される実施形態の完全な理解をもたらすための多数の具体的な詳細を明記する。しかし、これらの具体的な詳細がなくても1つまたは複数の実施形態を実施できることが明らかである。
【0008】
一実施形態に係るマルチターン測定システムが、
図1および
図2に示されている。測定システムは、
図1および
図2に示すように、シャフト10と、シャフト10に配設されておりシャフト10と共に回転可能な複数のピニオン20と、複数のピニオン20に係合しピニオン20の回転によって駆動される複数のギア30と、ギア30に配設されている複数の磁石40と、ギア30および磁石40と隣り合って配設されているセンサボード50と、を備える。
【0009】
シャフト10は、
図2および
図3に示すように、第1の端部12と第2の端部14の間の中心軸Cに沿って延在する。
図1および
図2に示す実施形態では、第1の端部12は自由端であり、第2の端部14は、シャフト10の一部の周囲に延在するスプール16に回転自在に固定されている。この実施形態では、ケーブル、ストリング、または当業者に知られている任意の他の長い部材をスプール16の周囲に巻くことができ、この長い部材を繰り出すことによってスプール16に回転が付与され、対応する回転がシャフト10に付与される。別の実施形態では、シャフト10はスプール16に固止されていない。この実施形態では、当業者に知られている様々な他の要素によって、シャフト10に回転を付与することができる。
【0010】
複数のピニオン20は、
図2~
図4に示すように、第1のピニオン22および第2のピニオン24を含む。第1のピニオン22は、第1のピニオン22の外周の周囲に複数の第1のピニオン歯22tが均等に配設されている、円形の部材である。第2のピニオン24は、第2のピニオン24の外周の周囲に複数の第2のピニオン歯24tが均等に配設されている、円形の部材である。第1のピニオン歯22tの数は第2のピニオン歯24tの数とは異なり、第1のピニオン22の直径は第2のピニオン24の直径とは異なる。示されている実施形態では、第1のピニオン歯22tの数は第2のピニオン歯24tの数よりも少なく、第1のピニオン22の直径は第2のピニオン24の直径よりも小さい。示されている実施形態では、第1のピニオン歯22tの数は16であり、第2のピニオン歯24tの数は18である。第1のピニオン22および第2のピニオン24の個別の関連する歯の数および直径は、他の実施形態では異なっていてもよい。
【0011】
ピニオン20は、
図3に示すように、シャフト10の第1の端部12に配設されている。第1のピニオン22および第2のピニオン24は、中心軸Cに沿った異なる位置に配設されている。示されている実施形態では、第2のピニオン24は、第1のピニオン22よりもシャフト10の第2の端部14の近くに配設されている。ピニオン20はシャフト10に回転自在に固定されており、シャフト10の回転に対応して中心軸C周りに同時に回転する。
【0012】
複数のギア30は、
図2および
図3に示すように、第1のギア32と、第2のギア34と、第3のギア38と、を含む。第1のギア32は、
図3に示すように、第1のギアの直径方向32Dと、第1のギア32の外周の周囲に均等に配設されている複数の第1のギア歯32tと、を有する、円形の部材である。第1のギア32は、第1の回転軸32B周りに回転する。第2のギア34は、第2のギアの直径方向34Dと、第2のギア34の外周の周囲に均等に配設されている複数の第2のギア歯34tと、を有する、円形の部材である。第2のギア34は、第2の回転軸34B周りに回転する。第2のギア34は、
図3に示すように、第2のギア34の中央に配置され第2の回転軸34Bに沿って第2のギア34から突出している、延長部36を有する。
第3のギア38は、第3のギアの直径方向38Dと、第3のギア38の外周の周囲に均等に配設されている複数の第3のギア歯38tと、を有する、円形の部材である。第3のギア38は、第3の回転軸38B周りに回転する。第1の回転軸32B、第2の回転軸34B、および第3の回転軸38Bは互いに平行であり、かつ中心軸Cと平行である。
【0013】
第1のギア歯32tの数は第2のギア歯34tの数とは異なり、第1のギア32の直径は第2のギア34の直径とは異なる。第2のギア歯34tの数は第3のギア歯38tの数に等しく、第2のギア34の直径は第3のギア38の直径に等しい。示されている実施形態では、第1のギア歯32tの数は、第2のギア歯34tおよび第3のギア歯38tの数よりも少なく、第1のギア32の直径は、第2のギア34および第3のギア38の直径よりも小さい。示されている実施形態では、第1のギア歯32tの数は42であり、第2のギア歯32tおよび第3のギア歯38tの数は48である。他の実施形態では、第1のギア32、第2のギア34、および第3のギア38の個別のおよび相対的な歯の数および直径は、異なっていてもよい。
【0014】
図3に示すように、第1のギア32および第3のギア38は、中心軸Cに沿った第2のギア34とは異なる位置に配設されており、第1のギア32および第3のギア38は第1のピニオン22に係合するように配置されており、第2のギア34は第2のピニオン24に係合するように配置されている。第1のギア32および第3のギア38は、中心軸Cに沿った同じ位置に位置合わせされている。第1のピニオン22の回転が、第1の回転軸32B周りの第1のギア32の、および第3の回転軸38B周りの第3のギア38回転を駆動し、第2のピニオン24の回転が、第2の回転軸34B周りの第2のギア34の回転を駆動する。
【0015】
複数の磁石40は、
図2および
図3に示すように、第1のギア32に配設されている第1の磁石42と、第2のギア34に配設されている第2の磁石44と、第3のギア38に配設されている第3の磁石46と、を含む。第2の磁石44は、
図3に示すように、第2のギア34の延長部36に、第1の磁石42および第3の磁石46と同一平面となるように配置されている。磁石40の各々は、対応するギア30の回転軸32B、34B、38B上の中央に配置されている。磁石40の各々の磁化方向42M、44M、46M、すなわち磁石40のN極とS極の間に延びる方向は、対応するギア30の直径方向32D、34D、38Dに延びている。磁石40は各々、ギア30と共に回転する。
【0016】
図1、
図2、
図4、および
図5に示すセンサボード50は、第1の面52と反対側の第2の面54とを有するプリント回路基板である。センサボード50の第1の面52には、複数の磁界センサ56が配設されている。磁界センサ56の数はギア30に配設されている磁石40の数に対応しており、示されている実施形態では3つの磁界センサ56が存在する。一実施形態では、磁界センサ56の各々は異方性磁気抵抗(AMR)センサである。
【0017】
図1に示すように、集積回路58は、センサボード50の第2の面54に配設されている。集積回路58は、センサボード50の配線を通して磁界センサ56の各々に電気接続されており、磁界センサ56の各々から電気信号を受信することができる。集積回路58は、プロセッサと、このプロセッサに接続されているメモリと、を含む。メモリは非一時的コンピュータ可読媒体であり、以下で更に詳細に記載するように、磁界センサ56からの入力信号に基づいて出力信号を生成するようにプロセッサによって実行可能なアルゴリズムを記憶している。示されている実施形態では、集積回路58は、iC Hausが製造するiC-MNFとして知られている、市販の特定用途向け集積回路(「ASIC」)である。
【0018】
図1、
図2、および
図4に示すように、センサボード50は、センサボード50の第1の面52がギア30および磁石40に面した状態で、ギア30と隣り合って配置されている。磁界センサ56の各々は、対応する磁石40の回転軸32B、34B、38Bに沿って磁石40のうちの1つと位置合わせされ、中央に配置されている。
【0019】
図2および
図4に示す実施形態では、マルチターン測定システムは電磁シールド60を備える。電磁シールド60は、
図2に示すように、材料のシートから形成されており、電磁シールド60を貫通して延在する複数のセンサ通路62を含む。一実施形態では、センサ通路62は材料のシートにパンチングされる。示されている実施形態では、電磁シールド60は鋼材料で形成される。他の実施形態では、電磁シールド60は、鉄材料、または当業者に知られているような電磁シールドを行うことのできる任意の他の材料で形成してもよい。
【0020】
図2および
図4に示すように、電磁シールド60は、センサボード50の第1の面52に配置されており、ギア30とセンサボード50の間に配設されている。磁界センサ56の各々は、電磁シールド60のセンサ通路62のうちの1つの中に配設されており、電磁シールド60によって包囲されている。
図4に示すように、磁界センサ56の各々は、電磁シールド60の厚さとほぼ同じ量だけ、センサボード50の第1の面52から突出している。
【0021】
図1および
図2に示す実施形態では、マルチターン測定システムは通信ボード70を備える。通信ボード70はセンサボード50に電気接続されているプリント回路基板であり、集積回路58から出力信号を受信するように適合されている。通信ボード70は、複数の異なるタイプの電気接続ポートのうちの1つ、および/または、通信ボード70に設置されている当業者に知られている複数の電気構成要素において実施された複数の異なるタイプの信号フォーマットのうちの1つを有する。
【0022】
マルチターン測定システムは、
図1および
図2に示す実施形態では、ハウジング80を備える。ハウジング80に、シャフト10、ピニオン20、ギア30、磁石40、センサボード50、電磁シールド60、および通信ボード70が組み付けられる、ハウジング80を備える。ハウジング80は、
図2に示すように、基部82と、基部82の中央を通って延在するシャフト通路84と、中心軸C周りに基部82から延在する側壁86と、を有する。基部82および側壁86は、構成要素受入れスペース88を画定する。
【0023】
図1および
図2に示すように、シャフト10はシャフト通路84を通って延在し、ピニオン20、ギア30、磁石40、センサボード50、および電磁シールド60は、構成要素受入れスペース88内に配置されている。ギア30は基部82に固止されており、それらのそれぞれの回転軸32B、34B、38B周りに、ハウジング80に対して回転可能である。センサボード50は、電磁シールド60がセンサボード50の第1の面52に配設されている状態で、構成要素受入れスペース88の大部分を閉じ込めるように配置されている。組み立てられた状態では、
図4に示すように、磁界センサ56および電磁シールド60は、ギア30に設けられた磁石40から中心軸Cと平行な方向に間隔89を有して配置されている。通信ボード70は、ハウジング80内で、基部82の構成要素受入れスペース88とは反対側に配置されている。
図1の実施形態に示すように、マルチターン測定システムを組み立てられた状態に固定するために、複数の固定具90を使用してもよい。
【0024】
マルチターン測定システムは、中心軸C周りのシャフト10の回転および中心軸C周りのシャフト10の角度位置を測定するが、このことについて以下でより詳細に説明する。
【0025】
中心軸C周りのシャフト10の回転は、スプール16の回転によって駆動され得るか、または外部要素によって直接駆動され得る。シャフト10が中心軸C周りに回転するにつれ、ピニオン20は中心軸C周りに同時に回転し、ギア30を、
図3に示すそれらの対応する回転軸32B、34B、38B周りに回転するように駆動する。ピニオン20は異なる数の歯22t、24tを有し、ギア30のうちのいくつかは異なる数の歯32t、34t、38tを有してピニオン20に係合するので、ギア30は各々が異なるギア比を有し、各々がそれらの回転軸32B、34B、38B周りの異なる角度位置を有する。ピニオン20の関連する歯22t、24tおよびギア30の歯32t、34t、38tの構成ならびに異なるギア30と異なるピニオン20との係合は、ギア30の各々が同じ開始角度位置に戻った位置に達するのに、シャフト10の多数回の回転を必要とする。
【0026】
磁石40の各々は、対応するギア30の回転に起因して対応するギア30の角度位置に基づいて変化する磁界を有する。磁石40と位置合わせされている磁界センサ56は、
図2および
図4に示すように、各々が複数の磁石40のうちの1つの磁界を感知する。磁界センサ56は各々、磁界センサ56が位置合わせされている磁石40の磁界を示すセンサ信号を、集積回路58に出力する。磁界センサ56が出力するセンサ信号は、対応するギア30の回転に起因して磁石40の各々の磁界が回転するにつれて変化する。電磁シールド60のセンサ通路62内に磁界センサ56を配置することにより、外部の電界および磁界センサ56が位置合わせされていない他の磁石40からの浮遊磁界の、位置合わせされている磁石40の磁界の検出に対する影響が限定され、磁界センサ56が出力するセンサ信号の品質が改善される。
【0027】
集積回路58は、磁界センサ56の各々からセンサ信号を受信する。示されている実施形態では、集積回路58は3つのセンサ信号、すなわち、第1の回転軸32B周りの第1の磁石42の磁界を表す第1のセンサ信号、第2の回転軸34B周りの第2の磁石44の磁界を表す第2のセンサ信号、および第3の回転軸38B周りの第3の磁石46の磁界を表す第3のセンサ信号を受信する。
【0028】
磁石40の各々の磁界は対応するギア30の回転に起因して変動するので、集積回路58で受信されたセンサ信号は、所与の時点におけるギア30の各々の角度位置を表している。集積回路58に記憶されているアルゴリズムにより、バーニヤの原理(Vernier principle)に一部基づいて、対応するセンサ信号が処理される。集積回路58は、シャフト10の回転数およびその時点の回転におけるシャフト10の角度位置の両方を含む、シャフト10の一意の回転位置と各々関連付けられている磁界センサ56からの3つのセンサ信号の、可能な組み合わせを記憶する。すなわち、ギア30が異なるギア比を各々有し、シャフト10の多数回の回転によるそれらの回転軸32B、34B、38B周りの異なる角度位置を各々有するので、ギア30に設けられた磁石40の磁界を表す3つのセンサ信号の各組は区別可能であり、中心軸C周りのシャフトの個別の回転位置と個々に関連付けることができる。
集積回路58の一実施形態では、ギア30の回転中の磁石40の磁界を表すセンサ信号の各組み合わせを、中心軸C周りのシャフト10の時計回りおよび反時計回りの回転方向の各々について84回転を上限として、シャフト10の一意の回転位置と関連付けることができる。
【0029】
集積回路58は、所与の時間に受信されたセンサ信号に関連付けられた一意の回転位置を確認するためのアルゴリズムの実行に基づいて、所与の時間におけるシャフト10の一意の回転位置を判定する。集積回路58は、マルチターン測定システムをオンにした直後を含むマルチターン測定システムの動作中の任意の所与の時間における、シャフト10の一意の回転位置を判定することができる。一実施形態では、集積回路58は、磁界センサ56から受信されたセンサ信号のみに基づいて、シャフト10の一意の回転位置を判定する。
【0030】
iC Hausの製造するiC-MNFとして実施される集積回路58は、ギア30同士の間の角速度および角度位置の特定の関係を求める記載した計算を行うように適合されている。複数のピニオン20により、歯32t、34t、38tの数がより少ないギア30の場合に、集積回路58が磁界センサ56からのセンサ信号を処理することが可能になり、マルチターン測定システムの全体サイズが小さくなる。
【0031】
集積回路58は、出力信号としてのシャフト10の一意の回転位置を、通信ボード70が読み取り可能なフォーマットで通信ボード70に送信する。一実施形態では、集積回路58は、出力信号をシリアル周辺インタフェース(SPI)信号として出力する。
図1および
図2に示す通信ボード70は、集積回路58からの出力信号をマルチターン測定システムの外部のデバイスに送信する。複数の通信ボード70の間で入れ換えが可能であり、マルチターン測定システムと共に使用される特定の通信ボード70は、所望の接続構成および出力信号の信号フォーマットに基づいて選択される。