(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ペリクル膜及びペリクル
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20241203BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20241203BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20241203BHJP
【FI】
G03F1/62
C01B32/194
C01B32/168
(21)【出願番号】P 2020031985
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 直也
(72)【発明者】
【氏名】関 和範
(72)【発明者】
【氏名】小寺 豊
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0038676(US,A1)
【文献】国際公開第2020/008978(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0038675(US,A1)
【文献】国際公開第2018/111433(WO,A1)
【文献】特表2019-520296(JP,A)
【文献】特表2018-536617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0296979(US,A1)
【文献】特開2018-194840(JP,A)
【文献】特表2018-537720(JP,A)
【文献】Ivan POLLENTIER et al.,“EUV lithography imaging using novel pellicle membranes”,Proceedings of SPIE,米国,SPIE,2016年03月18日,Vol. 9776,977620,DOI: 10.1117/12.2220031
【文献】Amir KHAKPAY et al.,“Molecular Insights on the CH4/CO2 Separation in Nanoporous Graphene and Graphene Oxide Separation Platforms: Adsorbents versus Membranes”,The Journal of Physical Chemistry C,米国,ACS,2017年05月17日,Vol. 121, No. 22,p.12308-12320,DOI: 10.1021/acs.jpcc.7b03728
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
C01B 32/00-32/991
SPIE Digital Library
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、カーボンナノチューブ及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部が規則的に配置されたペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項2】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、カーボンナノチューブ及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部は形状が等しいペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項3】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は窒化珪素からなるペリクル膜。
【請求項4】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の前記2以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部が規則的に配置されたペリクル膜。
【請求項5】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の前記2以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部は形状が等しいペリクル膜。
【請求項6】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなるペリクル膜。
【請求項7】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層はカーボンナノチューブからなり、前記複数の層の1以上に1以上の開口部が設けられており、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下であり、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部が規則的に配置されたペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項8】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層はカーボンナノチューブからなり、前記複数の層の1以上に1以上の開口部が設けられており、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下であり、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部は形状が等しいペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項9】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられており、前記複数の層の2以上に前記1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上の層のうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっているペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項10】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上の層のうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっているペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項11】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、グラフェン、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の1以上には開口部が設けられていないペリクル膜。
【請求項12】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられており、前記複数の層は、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の1以上には開口部が設けられていないペリクル膜。
【請求項13】
互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層は、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の1以上に1以上の開口部が設けられており、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下であり、前記複数の層の1以上には開口部が設けられていないペリクル膜。
【請求項14】
前記開口部が設けられていない前記1以上の層は、前記ペリクル膜の最表面層の少なくとも一方を含んだ請求項11乃至13の何れか1項に記載のペリクル膜。
【請求項15】
互いに積層された複数の層を備えたペリクル膜であって、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられ、前記複数の層は、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、及びクロムからなる群より選択される1以上の金属元素を含んだ材料からなり、前記複数の層の1以上には開口部が設けられておらず、前記開口部が設けられていない前記1以上の層は、前記ペリクル膜の最表面層の少なくとも一方を含んだペリクル膜。
【請求項16】
互いに積層された複数の層を備えたペリクル膜であって、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられ、前記複数の層は、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、及びクロムからなる群より選択される1以上の金属元素を含んだ材料からなり、前記複数の層の1以上には開口部が設けられておらず、前記開口部が設けられていない前記1以上の層は、前記ペリクル膜の最表面層の少なくとも一方を含んだペリクル膜。
【請求項17】
厚さが200nm以下である請求項1乃至16の何れか1項に記載のペリクル膜。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載のペリクル膜と、
前記ペリクル膜を支持したフレームと
を備えたペリクル。
【請求項19】
互いに積層された複数のグラフェンシートを備え、前記複数のグラフェンシートの2以上に1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上のグラフェンシートのうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっている
ペリクル膜(層間にスペーサを配置してチャネルを形成したものを除く)。
【請求項20】
互いに積層された複数のグラフェンシートを備え、前記複数のグラフェンシートの1以上に1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下であり、前記複数のグラフェンシートの1以上には開口部が設けられていない
ペリクル膜。
【請求項21】
互いに積層された複数のグラフェンシートを備え、前記複数のグラフェンシートの2以上に1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上のグラフェンシートのうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっており、前記複数のグラフェンシートの1以上には開口部が設けられていない
ペリクル膜。
【請求項22】
前記開口部が設けられていない前記1以上のグラフェンシートは、前記
ペリクル膜の最表面層の少なくとも一方を含んだ請求項20又は21に記載の
ペリクル膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術によって形成可能なパターンの最小寸法は、露光に使用する光の波長に依存する。この最小寸法は、波長がより短い光を露光に使用することにより、小さくすることができる。
【0003】
これまで、露光には、波長が193nmのArFエキシマレーザ光が用いられていた。近年では、より微細なパターンを形成可能なフォトリソグラフィ技術への要求が高まっており、波長が13.5nmの極端紫外線(EUV光)が使用されつつある。
【0004】
ペリクルは、フォトマスク又はレチクルへの埃等の付着を防止するために使用されている。EUV光は様々な物質に吸収されやすいため、極端紫外線リソグラフィ(EUVL)では、EUV光に対する吸収率が低いポリシリコンを用いたペリクル膜の開発が進められている。
【0005】
また、グラフェンやカーボンナノチューブなどの炭素材料からなる膜は、ポリシリコンからなる膜と比較して耐熱性に優れている。そこで、グラフェンやカーボンナノチューブなどの炭素材料からなるペリクル膜が注目されている(特許文献1乃至3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-194838号公報
【文献】特開2018-194840号公報
【文献】国際公開第2018/008594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、厚さ方向に力が加わった場合に破損を生じ難く、高い透過率で光を透過させ得るペリクル膜を実現可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によると、互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の1以上に、幅又は径が10乃至500nmの範囲内にある1以上の開口部が設けられているペリクル膜が提供される。
【0009】
本発明の第2側面によると、互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層の2以上に1以上の開口部が設けられているペリクル膜が提供される。
【0010】
本発明の他の側面によると、前記複数の層は、グラフェン、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなる上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0011】
或いは、本発明の他の側面によると、前記複数の層は、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、及びクロムからなる群より選択される1以上の金属元素を含んだ材料からなる上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0012】
本発明の第3側面によると、互いに積層された複数の層を備え、前記複数の層は、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる群より選択される材料からなり、前記複数の層の1以上に1以上の開口部が設けられているペリクル膜が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下である上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部が規則的に配置された上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の層の前記1以上の少なくとも1つは、前記開口部が複数設けられ、それら開口部は形状が等しい上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の層の2以上に前記1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上の層のうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっている上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0017】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の層の1以上には開口部が設けられていない上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記開口部が設けられていない前記1以上の層は、前記ペリクル膜の最表面層の少なくとも一方を含んだ上記側面に係るペリクル膜が提供される。
【0019】
本発明の更に他の側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートを備えた上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0020】
本発明の第4側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートからなり、見かけ密度が真密度と比較してより小さいペリクル膜が提供される。
【0021】
本発明の第5側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートからなる膜であって、前記膜と同じ厚さを有し、連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して透過率がより高いペリクル膜が提供される。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、厚さが200nm以下である上記側面の何れかに係るペリクル膜が提供される。
【0023】
本発明の第6側面によると、上記側面の何れかに係るペリクル膜と、前記ペリクル膜を支持したフレームとを備えたペリクルが提供される。
【0024】
本発明の第7側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートを備え、前記複数のグラフェンシートの1以上に1以上の開口部が設けられている膜が提供される。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上の開口部は、幅又は径が500nm以下である上記側面に係る膜が提供される。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、前記複数のグラフェンシートの2以上に前記1以上の開口部が設けられ、前記1以上の開口部が設けられた前記2以上のグラフェンシートのうち互いに隣接したものは、前記1以上の開口部の位置が異なっている上記側面の何れかに係る膜が提供される。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、前記複数のグラフェンシートの1以上には開口部が設けられていない上記側面の何れかに係る膜が提供される。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記開口部が設けられていない前記1以上のグラフェンシートは、前記膜の最表面層の少なくとも一方を含んだ上記側面に係る膜が提供される。
【0029】
本発明の第8側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートからなり、見かけ密度が真密度と比較してより小さい膜が提供される。
【0030】
本発明の第9側面によると、互いに積層された複数のグラフェンシートからなる膜であって、前記膜と同じ厚さを有し、連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して透過率がより高い膜が提供される。
【0031】
本発明の第10側面によると、1以上の開口部が設けられたグラフェンシートが提供される。
【0032】
本発明の第11側面によると、金属層上にその一部を覆うマスク層を形成することと、前記金属層のうち前記マスク層で覆われていない部分でグラフェンを生成させることと
を含むグラフェンシートの製造方法が提供される。
【0033】
本発明の第12側面によると、1以上の開口を有する金属層上でグラフェンを生成させることを含むグラフェンシートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、厚さ方向に力が加わった場合に破損を生じ難く、高い透過率で光を透過させ得るペリクル膜を実現可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】フォトマスクに取り付けられた、本発明の一実施形態に係るペリクルを概略的に示す断面図。
【
図2】
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の一例を概略的に示す断面図。
【
図3】
図2のペリクル膜を構成する層に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図。
【
図4】グラフェンシートの製造方法の一例における一工程を概略的に示す断面図。
【
図6】グラフェンシートの製造方法の他の例における一工程を概略的に示す断面図。
【
図8】
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の他の例を概略的に示す断面図。
【
図9】
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の更に他の例を概略的に示す断面図。
【
図10】
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の更に他の例を概略的に示す断面図。
【
図11】開口部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図12】開口部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図。
【
図13】開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
【
図14】開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
【
図15】開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、以下で参照する図において、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図において、寸法比や形状は、実物とは異なる可能性がある。
【0037】
図1は、フォトマスクに取り付けられた、本発明の一実施形態に係るペリクルを概略的に示す断面図である。
図1において、ペリクル1が取り付けられたフォトマスク2は、EUVリソグラフィ用の反射型フォトマスクである。ペリクル1は、他のフォトマスクに取り付けてもよい。
【0038】
フォトマスク2は、基板21と、多層反射膜22と、キャッピング膜23と、吸収層24とを含んでいる。
【0039】
基板21は、平坦な表面を有している。基板21は、例えば、合成石英のように熱膨張率が小さい材料からなる。
【0040】
多層反射膜22は、基板21の上記表面上に設けられている。多層反射膜22は、EUV光に対する屈折率が異なる2以上の層を含んでいる。多層反射膜22は、繰り返し反射干渉により、EUV光に対して高い反射率を示し、他の光に対して低い反射率を示すように設計されている。
【0041】
ここでは、多層反射膜22は、EUV光に対する屈折率が互いに異なり、交互に積層された反射層22a及び22bを含んでいる。反射層22a及び22bは、例えば、一方が珪素からなり、他方がモリブデンからなる。なお、
図1では、多層反射膜22は、反射層22a及び22bの組み合わせを3つ含んでいるが、通常は、より多くの組み合わせを、例えば、40程度の組み合わせを含む。
【0042】
キャッピング膜23は、多層反射膜22上に設けられている。キャッピング膜23は、吸収層24を得るためのパターニングの際やフォトマスク2を洗浄する際に、エッチング剤や洗浄剤から多層反射膜22を保護する役割を果たす。キャッピング膜23は、例えば、ルテニウムからなる。
【0043】
吸収層24は、キャッピング膜23上に設けられている。吸収層24には、半導体ウエハ上のフォトレジスト層に対する露光パターンに対応したパターンの開口部が設けられている。
【0044】
吸収層24は、EUV光に対して高い吸収率を示す材料からなる層である。吸収層24は、例えば、タンタル、酸化インジウム、酸化テルル、又はテルル化錫からなる。
【0045】
ペリクル1は、フォトマスク2に取り付けられている。ペリクル1は、ここでは、フォトマスク2の反射面に埃等が付着するのを防止する。なお、フォトマスクが透過型である場合には、ペリクル1は、フォトマスクの両面に取り付けてもよい。
【0046】
ペリクル1は、フレーム11とペリクル膜12とを含んでいる。
フレーム11は、図示しない接着剤を介して、フォトマスク2に取り付けられている。フレーム11は、ペリクル膜12をフォトマスク2から離間させるスペーサとしての役割を果たす。フレーム11は、例えば、アルミニウムからなる。
【0047】
ペリクル膜12は、露光光、ここではEUV光に対して高い透過率を示す膜である。ペリクル膜12は、フレーム11を間に挟んでフォトマスク2と向き合うように、フレーム11に支持されている。具体的には、ペリクル膜12の周縁部は、例えば、接着剤によってフレーム11に固定されている。
【0048】
ペリクル膜12は、自立膜である。ここで、「自立膜」は、支持体などの他の部材に支持させることなしに、単独で取り扱うことが可能な膜を意味している。ペリクル膜12は、互いに積層された複数の層を含んでいる。これら層の1以上、好ましくは2以上には、1以上の開口部が設けられている。
【0049】
図2は、
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の一例を概略的に示す断面図である。
図3は、
図2のペリクル膜を構成する層に採用可能な構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【0050】
図2のペリクル膜12は、互いに積層された複数の層120を含んでいる。これら層120の主面は、ペリクル膜12の主面に対して略平行である。
【0051】
層120の各々には、
図2及び
図3に示すように、複数の開口部120Hが設けられている。ここでは、これら開口部120Hは、
図3に示すように、形状及び寸法が互いに等しい。具体的には、各開口部120Hは、円形に開口した貫通孔である。これら開口部120Hは、互いに交差する2つの方向へ規則的に配列している。
【0052】
開口部120Hの幅又は径は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましい。開口部120Hの幅又は径を大きくすると、ペリクル膜12を埃等が透過する可能性が高まる。
【0053】
開口部120Hの幅又は径は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましい。開口部120Hの幅又は径が小さな層120は、製造が難しい。
【0054】
開口部120Hが設けられた層120は、空隙率又は開口率が、5乃至75%の範囲内にあることが好ましく、10乃至50%の範囲内にあることがより好ましく、10乃至25%の範囲内にあることが更に好ましい。空隙率又は開口率を小さくすると、ペリクル膜12の透過率が低下する。空隙率又は開口率を大きくすると、個々の層120の強度が低下し、ペリクル膜12の製造が難しくなる。
【0055】
層120のうち互いに隣接したものは、
図2に示すように、開口部120Hの位置が異なっている。この構成を採用すると、ペリクル膜12を埃等が透過する可能性が低くなる。
【0056】
層120の各々は、例えば、グラフェン、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素からなる群より選択される材料からなる。層120の各々は、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる群より選択される材料からなることが好ましい。
【0057】
なお、ここで、「グラフェンシート」は、一分子のグラフェンからなる層、又は、一分子のグラフェンから各々がなる複数の層を厚さ方向に積層してなる積層体を意味している。グラフェンは、炭素原子間の距離が約0.142nmであり、厚さが約0.335nmの分子である。グラフェンシートは、紫外域から赤外域までの全波長域で、EUV光の波長での吸収率と比較して、より高い吸収率を示す。具体的には、1つのグラフェンシートは、EUV光の波長で0.2%程度の吸収率を示すのに対し、可視域の波長域で2.3%程度の吸収率を示す。
【0058】
層120の各々は、1以上の金属元素を含んだ材料からなるものであってもよい。例えば、層120の各々は、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、及びクロムからなる群より選択される1以上の金属元素を含んだ材料からなるものであってもよい。この場合、金属元素は、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、及びチタンからなる群より選択される1以上を含んでいることが好ましく、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、及びチタンからなる群より選択される1以上であることがより好ましい。ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、ハフニウム、スカンジウム、及びチタンは、炭素よりも質量吸収係数が小さい。
【0059】
層120の各々は、上記の金属元素に加え、炭素及び窒素の少なくとも一方を更に含むことができる。この場合、金属元素と炭素及び窒素の少なくとも一方とは、二次元無機化合物を構成し得る。この二次元無機化合物は、例えば、金属炭化物、金属窒化物又は金属炭窒化物からなる数原子厚さの薄片状化合物である。そのような薄片状化合物からなる層では、薄片の多くは、それらの厚さ方向が層の厚さ方向とほぼ一致するように配置される。従って、複数の層120が薄片状化合物からなる層である場合、層120の各々は、1以上の薄片によって構成される。
【0060】
ここでは、一例として、層120の各々は、グラフェンシートであるとする。
【0061】
ペリクル膜12の厚さは、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることが更に好ましい。ペリクル膜12を厚くすると、露光光、ここではEUV光に対する透過率が低下する。ペリクル膜12の厚さは10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることが更に好ましい。ペリクル膜12を薄くすると、その機械的強度が低下するとともに、ペリクル膜12を埃等が透過する可能性が高まる。
【0062】
ペリクル膜12は、露光光の波長で、90%以上の透過率を示すことが好ましい。例えば、露光光がEUV光である場合、ペリクル膜12は、EUV光の波長で約90%以上の透過率を示すことが好ましい。
【0063】
ペリクル膜12は、径が30nm超の埃等を透過させないことが好ましい。即ち、ペリクル膜12における開口部120Hの幅又は径及びそれらの配置は、径が30nm超の埃等を透過させないように設定されていることが好ましい。
【0064】
上述したペリクル膜12は、例えば、以下の方法により製造することができる。なお、ここでは、上記の通り、層120の各々はグラフェンシートであるとする。
【0065】
図4は、グラフェンシートの製造方法の一例における一工程を概略的に示す断面図である。
図5は、
図4の工程の次工程を概略的に示す断面図である。
【0066】
図4は、一例に係るグラフェンシートの製造方法における一工程を概略的に示す断面図である。
図5は、
図4の製造方法における他の工程を概略的に示す断面図である。
【0067】
上記のペリクル膜12を製造するに際しては、例えば、先ず、
図4に示す構造を準備する。
図4に示す構造は、基材31と金属層32とマスク層33とを含んでいる。
【0068】
基材31は、滑らかな表面を有している。基材31は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、及びサファイア基板などの非金属基材である。
【0069】
金属層32は、基材31の表面上に設けられている。金属層32は、例えば、銅及びニッケルなどの金属からなる。
【0070】
基材31と金属層32との間には、下地層が介在していてもよい。下地層は、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化シリコンからなる。また、金属層32が十分な厚さを有している場合、基材31は省略することができる。
【0071】
マスク層33は、金属層32の表面を部分的に被覆している。具体的には、マスク層33は、層120の開口部120Hに対応した位置でのみ、金属層32の表面を被覆している。
【0072】
マスク層33は、例えば、非金属材料からなる。この非金属材料は、例えば、有機高分子材料又は無機絶縁体である。有機高分子材料からなるマスク層33は、例えば、金属層32上にフォトレジスト層を形成し、これを紫外線によるパターン露光又は電子線描画に供し、その後、現像処理に供することにより得ることができる。無機絶縁体からなるマスク層33は、例えば、金属層32上に無機絶縁層及びフォトレジスト層をこの順に形成し、フォトレジスト層を紫外線によるパターン露光又は電子線描画及び現像処理にこの順に供してエッチングマスクを形成し、その後、無機絶縁体層をエッチングすることにより得ることができる。
【0073】
次に、化学気相堆積(CVD)、例えば、熱CVD又はプラズマCVDにより、金属層32の露出部上に、グラフェンを生成させる。このCVDでは、例えば、メタンと水素とを含んだ混合ガスを原料ガスとして用いる。このようにして、
図5に示すように、マスク層33に対応した位置で開口したグラフェンシートを層120として得る。なお、この方法では、例えば、金属層32がニッケルからなる場合、グラフェンシートは金属層32の上下に生成することもある。
【0074】
以上の手順を繰り返して、
図5に示す構造を複数作製する。その後、或るグラフェンシートを他のグラフェンシート上に転写する転写工程を繰り返す。
【0075】
例えば、先ず、或るグラフェンシート上に、有機高分子材料からなるバインダ層を形成する。有機高分子材料としては、例えば、シロキサン系化合物、アクリル系化合物、又はエポキシ系化合物を使用する。次に、マスク層33及び金属層32をエッチングによって除去する。これにより、グラフェンシートを金属層32からバインダ層へ転写する。なお、マスク層33は、有機高分子材料からなるバインダ層を形成する前に除去してもよい。次いで、バインダ層上のグラフェンシートを、他のグラフェンシートに圧着する。グラフェンシート同士は、ファンデルワールス力によって互いに結合する。その後、エッチングによって、グラフェンシートからバインダ層を除去する。このようにして、2つのグラフェンシートが重なり合った二層構造を得る。3つ以上のグラフェンシートが重なり合った多層構造は、上記と同様の操作を繰り返すことにより得られる。その後、この二層構造又は多層構造と接しているマスク層33及び金属層32をエッチングによって除去する。以上のようにして、各層120がグラフェンシートからなるペリクル膜12を得る。
【0076】
ペリクル膜12は、他の方法で製造することも可能である。
図6は、グラフェンシートの製造方法の他の例における一工程を概略的に示す断面図である。
図7は、
図6の工程の次工程を概略的に示す断面図である。
【0077】
図6及び
図7に示す方法は、
図4及び
図5を参照しながら説明した方法とは、以下の点を除いて同様である。即ち、
図6及び
図7に示す方法では、金属層32として、開口部120Hに対応した位置で開口したパターン層を形成するとともに、マスク層33を省略する。例えば、先ず、
図4に示す構造を形成し、マスク層33をエッチングマスクとして用いて、金属層32をエッチングする。次に、マスク層33を、例えば、エッチングにより除去する。次いで、
図5を参照しながら説明した方法により、金属層32上にグラフェンを生成させる。その後、
図4及び
図5を参照しながら説明した転写等を行い、各層120がグラフェンシートからなるペリクル膜12を得る。
【0078】
ペリクル膜12は、更に他の方法で製造することも可能である。
例えば、連続膜としてのグラフェンシートを作製し、これにパンチング加工又はレーザビーム照射により開口部を形成する。レーザビーム照射には、例えば、ピコ秒レーザやナノ秒レーザなどの極短パルスレーザを使用する。このようにしてグラフェンシートを作製すること以外は、上記と同様の方法により、各層120がグラフェンシートからなるペリクル膜12を得る。
【0079】
上記の通り、ペリクル膜12は、層120の1以上に、1以上の開口部120Hが設けられている。それ故、ペリクル膜12は、見かけ密度が真密度と比較してより小さい。従って、ペリクル膜12は、この膜と同じ厚さを有し、連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して、透過率がより高い。
【0080】
また、ペリクル膜12は、開口部120Hが設けられていないこと以外は層120と同様の層を積層してなり、面積当たりの質量が等しい膜と比較してより厚い。それ故、ペリクル膜12は、厚さ方向に力が加わった場合における変形が小さい。
【0081】
従って、ペリクル膜12は、厚さ方向に力が加わった場合に破損を生じ難く、高い透過率で光を透過させ得る。
【0082】
また、ペリクル膜12では、開口部120Hの位置や寸法等は、設計によって定めている。それ故、例えば、開口部120Hを規則的に配置することや、開口部120Hの寸法を揃えることが可能である。従って、上述した構造は、光学的性質や機械的強度の面内均一性に優れたペリクル膜12を得るのに適している。
【0083】
更に、ペリクル膜12は層120を積層した構造を有しているので、その積層数に応じて、光学的性質や機械的強度が変化する。それ故、上述した構造は、層120の積層数に応じて、光学的性質や機械的強度を調節することが可能である。
【0084】
ペリクル膜12は、見かけ密度D1と真密度D2との比D1/D2は、5乃至75の範囲内にあることが好ましく、10乃至50の範囲内にあることがより好ましく、10乃至25の範囲内にあることが更に好ましい。比D1/D2を小さくすると、各層120の機械的強度が低下し、ペリクル膜12の製造が難しくなる。比D1/D2を大きくすると、厚さ方向に力が加わった場合に破損を生じ難くなるが、高い透過率で光を透過させることが難しくなる。
【0085】
ここで、ペリクル膜12の見かけ密度D1は、ペリクル膜12の面積当たりの質量をペリクル膜12の厚さで除することにより得られる値である。ペリクル膜12の厚さは、例えば、ペリクル膜12のうち、互いから1mm以上離間した10か所で、断面の走査電子顕微鏡写真を撮像し、それら写真から厚さを計測し、それらの値を算術平均することにより得る。また、ペリクル膜12の真密度D2は、ペリクル膜12の分析によって特定した組成を有している物質の真密度である。例えば、ペリクル膜12がグラフェンシートからなる場合、その真密度は、細孔を有していないグラファイトの密度である。
【0086】
上記の通り、このペリクル膜12は、この膜と同じ厚さを有し、連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して、透過率がより高い。即ち、このペリクル膜12は、この膜と同じ厚さを有し、連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して、厚さ方向における線吸収係数μがより小さい。
【0087】
なお、線吸収係数μは、以下の等式から算出される値である。
I/I0=e-μx
上記等式において、I0は入射光の強度であり、Iは透過光の強度であり、eは自然対数の底(ネイピア数)であり、xは光路長である。
【0088】
層120に開口部120Hが設けられたペリクル膜12は、細孔を有していないグラファイトと比較して、見かけ密度がより小さい。それ故、このペリクル膜12は、層120と同じ数の連続膜としてのグラフェンシートからなる積層体と比較して、厚さ方向における線吸収係数μがより小さい。従って、このペリクル膜12は、高い透過率で光を透過させ得る。
【0089】
ペリクル膜12には、様々な変形が可能である。
図8は、
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の他の例を概略的に示す断面図である。
図8に示すペリクル膜12は、開口部120Hの幅又は径がより小さいこと以外は、
図1乃至
図3等を参照しながら説明したペリクル膜12と同様である。
【0090】
開口部120Hの幅又は径を小さくすると、隣接した層120間で開口部120Hが繋がる可能性が低くなる。それ故、ペリクル膜12に貫通孔が生じる可能性が低くなる。従って、この構造を採用した場合、ペリクル膜12を埃等が透過する可能性をより低くすることができる。
【0091】
図9は、
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の更に他の例を概略的に示す断面図である。
図9に示すペリクル膜12は、開口部120Hの幅又は径がより大きいこと以外は、
図1乃至
図3等を参照しながら説明したペリクル膜12と同様である。
【0092】
開口部120Hの幅又は径を大きくすると、隣接した層120間で開口部120Hが繋がる可能性が高くなる。しかしながら、層120の積層数が多ければ、ペリクル膜12を埃等が透過する可能性を十分に低くすることができる。
【0093】
図10は、
図1のペリクルに使用可能なペリクル膜の更に他の例を概略的に示す断面図である。
図10に示すペリクル膜12は、開口部120Hが設けられていないこと以外は層120と同様の層120’が一方の最表面層であること以外は、
図9を参照しながら説明したペリクル膜12と同様である。
【0094】
開口部120Hが設けられていない層120’を、埃等は透過できない。従って、この層120’を含んだペリクル膜12を、埃等は透過できない。
【0095】
図10に示すペリクル膜12は、層120’が外側を向くようにフレーム11に支持させることが好ましい。層120’には開口部が設けられていないので、上記の配置を採用した場合、例えば、風を当てることにより埃等を容易に除去することができる。
【0096】
ペリクル膜12は、隣り合った層120の間に層120’を含んでいてもよい。また、ペリクル膜12は、層120’を2以上含んでいてもよい。何れの場合も、ペリクル膜12を埃等が透過するのを防止できる。
【0097】
以上の説明は、開口部120Hが円形である場合を例に行ったが、開口部120Hの形状は円形に限られない。
【0098】
図11は、開口部に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図12は、開口部に採用可能な構造の他の例を概略的に示す平面図である。
図13は、開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。
図14は、開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。
図15は、開口部に採用可能な構造の更に他の例を概略的に示す平面図である。
【0099】
図11に示す構造では、開口部120Hは四角形状である。
図12に示す構造では、開口部120Hは楕円形状である。
図13に示す構造では、開口部120Hは三角形状である。
図14に示す構造では、開口部120Hは六角形状である。
図15に示す構造では、開口部120Hは不定形状である。このように、開口部120Hは、様々な形状を有し得る。
【0100】
各層120において、開口部120Hは、形状及び寸法が互いに等しくてもよく、形状及び寸法の少なくとも一方が異なっていてもよい。各層120において、開口部120Hは、形状及び寸法を互いに等しくすると、所望の物性を容易に達成することができる。
層120の1以上と層120の他の1以上とで、開口部120Hは、形状及び寸法が互いに等しくてもよく、形状及び寸法の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0101】
各層120において、開口部120Hは、不規則に配置されていてもよいが、規則的に配置されていることが好ましい。後者の場合、所望の物性を容易に達成することができる。
【0102】
層120の1以上と層120の他の1以上とで、開口部120Hの数は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。
層120は、開口部120Hを1つのみ有していてもよい。例えば、層120は、渦巻線のように一筆書きで描けるパターンを形成している開口部120Hを1つのみ有していてもよい。
【0103】
層120及び120’には、グラフェン以外の材料を使用してもよい。例えば、層120及び120’の材料として、カーボンナノチューブ、ポリシリコン及び窒化珪素の何れかを使用してもよい。
【0104】
例えば、層120がシリコンからなるペリクル膜12は、通常の半導体プロセスにより開口部120Hを形成したシリコン層を複数形成し、それらを貼り合わせることにより得ることができる。
【0105】
層120がカーボンナノチューブからなるペリクル膜12は、例えば、以下の方法により製造することができる。先ず、カーボンナノチューブを分散媒に分散させてなる分散液を調製する。この分散液を基材上に塗布し、塗膜から分散媒を除去することにより、カーボンナノチューブからなるシートを得る。次いで、このシートに、例えば、レーザビームを照射して、開口部120Hを有する層120を得る。このようにして複数の層120を形成し、それらを積層することにより、層120がカーボンナノチューブからなるペリクル膜12を得る。
【0106】
1以上の層120と他の1以上の層120とは、材質が同じであってもよく、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、1以上の層120としてグラフェンシートを使用し、他の1以上の層120としてカーボンナノチューブからなる層を使用してもよい。同様に、層120と層120’とは、材質が同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0107】
層120’がペリクル膜12の最表面層である場合、層120’は、層120の積層体を被覆した被覆層である。被覆層は、層120の積層体の一方の主面にのみ設けてもよく、この積層体の双方の主面に設けてもよい。
【0108】
被覆層は、層120について上述した材料からなるものであってもよく、他の材料からなるものであってもよい。被覆層は、例えば、金属又は半導体からなる。一例によれば、被覆層は、珪素、モリブデン、ルテニウム、ホウ素、窒素、ゲルマニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる1以上の元素を含む。他の例によれば、被覆層は、ホウ素、炭化ホウ素、窒化ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、炭化ケイ素、窒化チタン、アモルファスカーボン、グラフェン、又はそれらの2以上の組み合わせを含む。
【0109】
なお、ペリクル膜12について上述した構成は、他の目的で使用される膜に適用してもよい。上記の構成を採用した膜は、厚さ方向に力が加わった場合に破損を生じ難く、光透過性及び吸着性などの性能の面内均一性に優れている。
【符号の説明】
【0110】
1…ペリクル、2…フォトマスク、11…フレーム、12…ペリクル膜、21…基板、22…多層反射膜、22a…反射層、22b…反射層、23…キャッピング膜、24…吸収層、31…基材、32…金属層、33…マスク層、120…層、120’…層、120H…開口部。