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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20241203BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20241203BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20241203BHJP
   H01G 11/10 20130101ALI20241203BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/588
H01M50/593
H01G11/10
H01G11/78
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020048190
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021150141
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
【審査官】山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135012(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146238(WO,A1)
【文献】特開2019-197648(JP,A)
【文献】特開2017-197012(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157267(WO,A1)
【文献】特開2012-119156(JP,A)
【文献】特開2013-246990(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047683(WO,A1)
【文献】特開2018-088424(JP,A)
【文献】国際公開第2019/123903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/00-11/86
H01M 50/20-50/298
50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、
前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されており
前記導電部材は、前記外装体の内底面を形成する底壁を貫通し、かつ、前記底壁の外側に配置された外側部材を、前記底壁に対して固定する固定部材である、
蓄電装置。
【請求項2】
前記外装体の前記内底面には、前記固定部材の側方の位置において前記底面カバー部に向けてリブが立設されており、
前記リブの前記内底面からの高さは、前記固定部材の前記内底面の高さよりも大きい、
請求項記載の蓄電装置。
【請求項3】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、
前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されており、
前記外装体には、前記蓄電素子を含む複数の蓄電素子が配列された蓄電素子列が収容されており、
前記スペーサは、前記蓄電素子列における前記複数の蓄電素子の並び方向の端部に位置するエンドスペーサである、
電装置。
【請求項4】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、
前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されており、
前記底面カバー部は、前記蓄電素子の底面の一部を覆い、かつ、他の部分を露出させる形状及びサイズに形成されている、
電装置。
【請求項5】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、
前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されており
前記底面カバー部と前記導電部材とは、離間している、
蓄電装置。
【請求項6】
蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する外装体と、
前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、
前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、
前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されており
前記導電部材は、前記外装体の内底面を形成する底壁に固定されている、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子と蓄電素子を収容する外装体とを備える蓄電装置が知られている。例えば、特許文献1には、複数の電池セル(蓄電素子)を有する電池モジュールと、筐体(外装体)とを備える電池パック(蓄電装置)が開示されている。この電池パックでは、比較的に大きな筐体に複数の電池モジュールが収容されており、各電池モジュールは、ブラケットを介して筐体の側壁部にボルトで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-92797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄電装置のような、比較的に大きな外装体に複数の蓄電素子を収容する場合、外装体の内部空間に余裕があるため、外装体の内部における部材の配置レイアウトの自由度は高い。しかしながら、蓄電装置には、一般的に、エネルギー密度の向上または小型化等の観点から外装体の内部空間の有効利用が求められる。この要求に応えるためには、例えば、外装体の内部にできるだけ隙間ができないように各種の部材を配置することが考えられる。しかしながら、外装体の内部には、導電性を有する部材(導電部材)も含まれるため、安全性の観点からは、単に、部材間の隙間を詰めることのみに着目した構造は好ましくない。
【0005】
本発明は、本願発明者が上記課題に新たに着目することによってなされたものであり、安全性を確保しつつ、外装体の内部空間の有効利用を図ることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、前記蓄電素子を収容する外装体と、前記蓄電素子の側方に配置されたスペーサとを備え、前記スペーサは、前記蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有し、前記底面カバー部は、前記外装体の内底面に配置された導電部材と、前記蓄電素子の底面との間に配置されている。
【0007】
この構成によれば、蓄電素子と、その側方の他の蓄電素子等との間の絶縁等の役目を担うスペーサが、蓄電素子の底面の少なくとも一部を覆う底面カバー部を有している。また、底面カバー部は、外装体の内部に配置された導電部材と蓄電素子の底面との間に位置する。これにより、例えば、絶縁のためのシート等を別途用いることなく、蓄電素子の底面よりも下方に位置する導電部材と、その近くに位置する蓄電素子とを電気的に絶縁し、また、蓄電素子及び導電部材の一方を他方から保護することができる。つまり、蓄電素子の底面よりも下方の空間を利用して、かつ安全な態様で、導電性を有する部材を配置することができる。従って、本態様に係る蓄電装置によれば、安全性を確保しつつ、外装体の内部空間の有効利用を図ることができる。
【0008】
前記導電部材は、前記外装体の内底面を形成する底壁を貫通し、かつ、前記底壁の外側に配置された外側部材を、前記底壁に対して固定する固定部材である、としてもよい。
【0009】
この構成によれば、例えば、ボルト、リベット等の固定部材が外装体の底壁を貫通する状態で配置される。そのため、外側部材を、例えば金属製の固定部材で強固に固定することができる。また、金属製の固定部材の頭部が、蓄電素子側に露出する場合であっても、その頭部の上方には、スペーサの底面カバー部が位置するため、蓄電素子との導通等の問題は生じ難い。さらに、底壁に固定された外側部材は、例えば外装体の補強または蓄電装置の固定等の役割を担うことができ、このことは、蓄電装置の安全性の向上に寄与する。
【0010】
前記外装体の前記内底面には、前記固定部材の側方の位置において前記底面カバー部に向けてリブが立設されており、前記リブの前記内底面からの高さは、前記固定部材の前記内底面の高さよりも大きい、としてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば、固定部材よりも背が高いリブによって、底面カバー部と、導電性を有する固定部材との干渉が抑制される。これにより、例えば、底面カバー部が固定部材に干渉することによる固定の緩みの可能性が低減される。また、固定部材が金属等の硬度の高い材料で形成されている場合に、例えば樹脂製である底面カバー部が、固定部材に干渉することで損傷する可能性が低減される。
【0012】
前記外装体には、前記蓄電素子を含む複数の蓄電素子が配列された蓄電素子列が収容されており、前記スペーサは、前記蓄電素子列における前記複数の蓄電素子の並び方向の端部に位置するエンドスペーサである、としてもよい。
【0013】
この構成によれば、蓄電素子列における、隣り合う蓄電素子の間に配置されるセル間スペーサではなく、エンドスペーサに底面カバー部が設けられる。つまり、蓄電装置に用いられる複数のスペーサの内の、多くても2つのエンドスペーサに底面カバー部を設ければよいため、他のセル間スペーサは、共通部品として作製可能である。また、2つのエンドスペーサのそれぞれに底面カバー部を設ける場合は、これら2つのエンドスペーサを共通部品として作製することもできる。さらに、蓄電素子列の並び方向の端部の蓄電素子以外の蓄電素子の底面には底面カバー部が設けられないため、例えば、外装体の内底面に複数の蓄電素子の底面のほぼ全域を直接的に接着することもできる。つまり、蓄電装置の安全性の向上、安全性が向上された蓄電装置の製造コストの抑制、または、製造効率の向上の観点から有利である。
【0014】
前記底面カバー部は、前記蓄電素子の底面の一部を覆い、かつ、他の部分を露出させる形状及びサイズに形成されている、としてもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば、底面カバー部は、蓄電素子の底面における導電部材に対向する部分のみを覆い、他の部分を露出させることができる。そのため、蓄電素子の底面の露出された部分を、外装体の内底面に直接的に接着することができる。つまり、蓄電素子の底面における比較的に大きい面積を、外装体の内底面に固定することができる。これにより、例えば蓄電装置の耐振動性または耐衝撃性が向上し、その結果、蓄電装置の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明における蓄電装置によれば、安全性を確保しつつ、外装体の内部空間の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る蓄電装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る蓄電装置の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係る蓄電ユニットの分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る外装体の内部構成の一部を示す切断図である。
図5】実施の形態に係るスペーサの外観を示す斜視図である。
図6】実施の形態に係る蓄電ユニットの底面図である。
図7】実施の形態に係る蓄電装置の固定部材及びその周辺の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。
【0019】
また、以下の説明及び図面中において、1つの蓄電素子における一対(正極側及び負極側)の電極端子の並び方向、蓄電素子の容器の短側面の対向方向、または、一対のサイドプレートの並び方向を、X軸方向と定義する。複数の蓄電素子の配列方向、蓄電素子の容器の長側面の対向方向、または、一対のエンドプレートの並び方向を、Y軸方向と定義する。蓄電装置の外装体本体と蓋体との並び方向、蓄電素子の容器本体と蓋部との並び方向、蓄電素子とバスバーとの並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0020】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0021】
(実施の形態)
[1.蓄電装置の全般的な説明]
まず、本実施の形態に係る蓄電装置10の全般的な説明を行う。図1は、実施の形態に係る蓄電装置10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電装置10の分解斜視図である。図3は、実施の形態に係る蓄電ユニット200の分解斜視図である。
【0022】
蓄電装置10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる装置であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電装置10は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用される電池モジュール(組電池)である。具体的には、蓄電装置10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール及びリニアモーターカーが例示される。また、蓄電装置10は、家庭用または発電機用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0023】
図1に示すように、蓄電装置10は、外装体100を備えている。また、図2及び図3に示すように、外装体100の内方には、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201を有する蓄電ユニット200が配置されている。なお、蓄電装置10は、上記の構成要素の他、バスバーが載置されるバスバーフレーム、蓄電素子210の充電状態及び放電状態を監視するための回路基板、ヒューズ、リレー及びコネクタ等の電気機器、並びに、蓄電素子210から排出されるガスを外装体100の外方へ排気するための排気部等を備えていてもよい。
【0024】
蓄電ユニット200は、複数の蓄電素子210が配列された蓄電素子列201と、複数のスペーサ300(301、302)、一対のエンドプレート400、及び、一対のサイドプレート500を有する。複数の蓄電素子210は、図示しない複数のバスバーにより例えば直列に接続されている。
【0025】
外装体100は、蓄電装置10の外装体を構成する箱形(略直方体形状)の容器(モジュールケース)である。つまり、外装体100は、蓄電ユニット200等を所定の位置で固定し、衝撃等から保護する。外装体100は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の絶縁部材、または、絶縁塗装をした金属等により形成されている。外装体100は、これにより、蓄電素子210等が外部の金属部材等に接触することを回避する。なお、蓄電素子210等の電気的絶縁性が保たれる構成であれば、外装体100は、金属等の導電部材で形成されていてもよい。
【0026】
外装体100は、外装体100の本体を構成する外装体本体110と、外装体100の蓋体を構成する外装体蓋体120と、を有している。外装体本体110は、開口が形成された有底矩形筒状のハウジング(筐体)であり、蓄電素子210等を収容する。外装体蓋体120は、外装体本体110の開口を閉塞する扁平な矩形状の部材である。外装体蓋体120は、接着剤、ヒートシールまたは超音波溶着等によって、外装体本体110と接合される。また、外装体蓋体120には、正極外部端子121と負極外部端子122とが設けられている。正極外部端子121は、蓄電ユニット200の総プラス端子である電極端子220と電気的に接続される。負極外部端子122は、蓄電ユニット200の総マイナス端子である電極端子220と電気的に接続される。蓄電装置10は、この正極外部端子121と負極外部端子122とを介して、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電する。
【0027】
蓄電素子210は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池(単電池)であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。蓄電素子210は、扁平な直方体形状(角形)を有しており、本実施の形態では、4個の蓄電素子210がY軸方向に並んで配列されている。なお、蓄電素子210の大きさ、形状、及び、配列される蓄電素子210の個数は限定されず、例えば1つの蓄電素子210しか配置されていなくてもよい。また、蓄電素子210は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子210は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子210は、ラミネート型の蓄電素子であってもよい。
【0028】
本実施の形態に係る蓄電素子210は、容器211と、一対(正極側及び負極側)の電極端子220と、を備えている(図3参照)。また、容器211の内方には、電極体、一対の集電体、及び、電解液(非水電解質)等が収容されており、容器211と電極端子220及び集電体との間にはガスケットが配置されているが、これらの図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子210の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。また、蓄電素子210は、上記構成の他、集電体の側方等に配置されるスペーサ、及び、容器211の外面を覆う絶縁シート等を備えていてもよい。
【0029】
容器211は、開口が形成された容器本体と、容器本体の開口を閉塞する蓋部とを有する直方体形状(角形)の容器であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板等の金属等で形成されている。本実施の形態では、容器211は、長側面がY軸方向に向き、短側面がX軸方向に向く姿勢、つまり、一対の長側面がY軸方向で対向し、一対の短側面がX軸方向で対向する姿勢で配置されている。また、容器211のZ軸プラス方向側の面(蓋部)には、容器211内方の圧力が上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出弁230が設けられている(図3参照)。
【0030】
電極端子220は、容器211のZ軸プラス方向側の面(蓋部)に配置される蓄電素子210の端子(正極端子または負極端子)であり、集電体を介して、電極体の正極板または負極板に電気的に接続されている。つまり、一対の電極端子220のそれぞれは、電極体に蓄えられている電気を蓄電素子210の外部空間に導出し、また、電極体に電気を蓄えるために蓄電素子210の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子220は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で形成されている。
【0031】
電極体は、正極板と負極板とセパレータとが積層されて形成された蓄電要素(発電要素)である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属からなる集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成されたものである。負極板は、銅または銅合金等の金属からなる集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成されたものである。正極活物質層及び負極活物質層に用いられる活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能なものであれば、適宜公知の材料を使用できる。なお、電極体は、極板(正極板及び負極板)が巻回されて形成された巻回型の電極体、複数の平板状の極板が積層されて形成された積層型(スタック型)の電極体、または、極板を蛇腹状に折り畳んだ蛇腹型の電極体等、どのような形態の電極体でもよい。
【0032】
集電体は、電極端子220と電極体とに電気的に接続される導電性の部材(正極集電体または負極集電体)である。なお、正極集電体は、正極板の正極基材層と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成され、負極集電体は、負極板の負極基材層と同様、銅または銅合金等で形成されている。
【0033】
スペーサ300(スペーサ301、302)は、蓄電素子210の側方(Y軸プラス方向またはY軸マイナス方向)に配置され、蓄電素子210と他の部材とを電気的に絶縁する矩形状かつ板状の部材である。具体的には、スペーサ301は、隣り合う2つの蓄電素子210の間に配置され、当該2つの蓄電素子210の間を電気的に絶縁する部材であり、例えばセル間スペーサと呼ばれる部材である。スペーサ302は、端部の蓄電素子210とエンドプレート400との間に配置され、当該端部の蓄電素子210とエンドプレート400との間を電気的に絶縁する。スペーサ302は、エンドスペーサの一例である。また、スペーサ301、302のそれぞれは、蓄電素子210のX軸方向両側も覆うように配置されて、蓄電素子210とサイドプレート500との間も電気的に絶縁する。
【0034】
本実施の形態では、4つの蓄電素子210に対応して、3つのスペーサ301と2つのスペーサ302とが配置されているが、蓄電素子210の個数が4つ以外の場合には、スペーサ301の個数も蓄電素子210の個数に応じて適宜変更される。スペーサ300は、例えば、上記の外装体100に使用可能ないずれかの電気的絶縁性の樹脂材料等で形成されている。
【0035】
エンドプレート400及びサイドプレート500は、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201の並び方向(Y軸方向)において、蓄電素子列201を外方から圧迫(拘束)する拘束部材である。つまり、一対のエンドプレート400は、蓄電素子列201を当該並び方向の両側から挟み込み、かつ、一対のサイドプレート500は一対のエンドプレート400に拘束力を与える。これにより、蓄電素子列201に含まれるそれぞれの蓄電素子210は、当該並び方向の両側から圧迫(拘束)される。
【0036】
本実施の形態では、サイドプレート500は、Z軸方向に並ぶ複数のナット500aによって、エンドプレート400に接続(接合)されている(図3)。具体的には、ナット500aは、サイドプレート500を貫通したエンドプレート400のネジ部と螺合されて当該ネジ部に締結される。エンドプレート400及びサイドプレート500は、鉄、ステンレス鋼、またはアルミニウム合金等の金属で形成されている。
【0037】
また、本実施の形態では、外装体100の外側に、外側部材の一例である補強部材40が配置されている。補強部材40は、鉄等の強度の高い材料で構成された部材であり、蓄電装置10の耐衝撃性等を高める機能を有している。本実施の形態では、図2に示すように、外装体100の底壁115に沿って補強部材40が配置されており、4つの固定部材80により、補強部材40が外装体100に固定されている。
【0038】
[2.スペーサと他の部材との構造上の関係について]
次に、スペーサ300と他の部材との構造上の関係について、図4図7を参照しながら説明する。図4は、実施の形態に係る外装体100の内部構成の一部を示す切断図である。図4では、図2のIV-IV線に平行なYZ平面で外装体本体110の一部を切り取り、かつ、外装体本体110の底壁115から蓄電ユニット200を浮かせた状態の外装体本体110が図示されている。図5は、実施の形態に係るスペーサ302の外観を示す斜視図である。図6は、実施の形態に係る蓄電ユニット200の底面図である。図6では、蓄電ユニット200と固定部材80との位置関係を示すために、固定部材80の配置範囲が斜線を付した円形で表され、かつ、蓄電素子210の底面211aにはドットが付されている。図7は、実施の形態に係る蓄電装置10の固定部材80及びその周辺の構成を示す断面図である。図7では、図4のVII-VII線を通るYZ平面における蓄電装置10の断面の一部が図示されている。
【0039】
図4に示すように、蓄電ユニット200は外装体100の内部において、内底面113に載置される。内底面113は、外装体100(外装体本体110)の底壁115の内面(外装体100の内部側の面)である。内底面113は、具体的には、蓄電素子210が載置される載置面部113aと、固定部材80が貫通する貫通孔115a(図7参照)が形成された固定面部113bとを有する。
【0040】
固定部材80は、導電部材の一例であり、本実施の形態では金属製のボルトである。固定部材80は、貫通孔115aを貫通して配置されており、補強部材40のネジ孔41(図7参照)に螺合することで、補強部材40を外装体100に対して固定する。固定部材80は、頭部81及び軸部82を有し、軸部82は貫通孔115aを貫通した状態で配置され、頭部81は、外装体100の内部に配置される。より詳細には、貫通孔115aと固定部材80との間にはガスケット85(図7参照)が配置されており、これにより、貫通孔115aにおける気密性または水密性が確保される。
【0041】
このように配置された固定部材80に対し、固定部材80の頭部81の上方(Z軸プラス方向)には蓄電素子210が存在する。従って、蓄電素子210と金属製の固定部材80との電気的な絶縁を確実に行う必要がある。この場合、固定部材80と、その直上の蓄電素子210との距離を大きくすれば、蓄電素子210と固定部材80とをより確実に絶縁することができる。しかしながらこの場合、例えば、蓄電素子210の小型化または外装体100の大型化が必要となり、このことは、蓄電装置10のエネルギー密度の低下または蓄電装置10の大型化等の問題を生じさせる。そこで、本実施の形態では、固定部材80とその直上の蓄電素子210とを比較的に近くに配置し、かつ、蓄電素子210と固定部材80との間に電気的な絶縁性を有する部材を配置する構造が採用されている。
【0042】
具体的には、本実施の形態に係る蓄電ユニット200では、図3で示したように、各蓄電素子210の側方にスペーサ300が配置され、これら複数のスペーサ300のうち、配列方向(Y軸方向)の端部の蓄電素子210の外側には、スペーサ302が配置される。スペーサ302は、図5図7に示すように、配列方向における蓄電素子210の側方に位置するスペーサ本体部302aと、蓄電素子210の底面211aに沿って配置される底面カバー部322とを有する。蓄電ユニット200を底面側から見た場合、図6に示すように、固定部材80の配置範囲と重複する位置に、底面カバー部322が配置される。つまり、固定部材80と、その直上の蓄電素子210との間に底面カバー部322が配置される。底面カバー部322は、蓄電素子210の底面211aの一部を覆い、他の部分を露出させる大きさに形成されている。
【0043】
また、固定部材80の側方には、図7に示すようにリブ114が立設されている。内底面113の固定面部113bを基準とした場合、リブ114は固定部材80よりも背が高い。そのため、仮に、固定部材80に対し、その上方から蓄電素子210が近づいた場合であっても、リブ114により、蓄電素子210の固定部材80に近づく向きの移動は規制される。
【0044】
[3.効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電装置10は、蓄電素子210と、蓄電素子210を収容する外装体100蓄電素子210の側方に配置されたスペーサ302とを備える。スペーサ302は、蓄電素子210の底面211aの少なくとも一部を覆う底面カバー部322を有する。底面カバー部322は、外装体100の内底面113に配置された導電部材である固定部材80と、蓄電素子210の底面211aとの間に配置されている。
【0045】
この構成によれば、蓄電素子210と、その側方の他の部材(本実施の形態ではエンドプレート400)の間の絶縁等の役目を担うスペーサ302が、蓄電素子210の底面211aの少なくとも一部を覆う底面カバー部322を有している。また、底面カバー部322は、外装体100の内部に配置された固定部材80と蓄電素子210の底面211aとの間に位置する。これにより、例えば、絶縁のためのシート等を別途用いることなく、蓄電素子210の底面211aよりも下方に位置する固定部材80とその近くに位置する蓄電素子210とを電気的に絶縁し、また、蓄電素子210及び固定部材80の一方を他方から保護することができる。つまり、蓄電素子210の底面211aよりも下方の空間を利用して、かつ安全な態様で、導電性を有する固定部材80を配置することができる。従って、本態様に係る蓄電装置10によれば、安全性を確保しつつ、外装体100の内部空間の有効利用を図ることができる。
【0046】
また、本実施の形態において、固定部材80は、外装体100の内底面113を形成する底壁115を貫通し、かつ、底壁115の外側に配置された補強部材40を、底壁115に対して固定する部材である。
【0047】
本実施の形態では、固定部材80は金属製のボルトであり、固定部材80の軸部82が外装体100の底壁115を貫通する状態で配置される。そのため、補強部材40を固定部材80で強固に固定(締結)することができる。また、金属製の固定部材80の頭部81が、蓄電素子210側に露出した状態となるが、その頭部81の上方には、スペーサ302の底面カバー部322が位置するため、蓄電素子210との導通等の問題は生じ難い。さらに、底壁115に固定された補強部材40により、外装体100の強度を向上させることができ、このことは、蓄電装置10の安全性の向上に寄与する。
【0048】
また、本実施の形態では、外装体100の内底面113には、固定部材80の側方の位置において底面カバー部322に向けてリブ114が立設されており、リブ114の内底面113からの高さは、固定部材80の内底面113からの高さよりも大きい。より具体的には、リブ114及び固定部材80の頭部81は、内底面113の固定面部113bから突出状に配置されており、リブ114の固定面部113bからの高さは、頭部81の固定面部113bからの高さよりも大きい。
【0049】
この構成によれば、固定部材80よりも背が高いリブ114によって、底面カバー部322と、固定部材80との干渉が抑制される。これにより、例えば、底面カバー部322が固定部材80に干渉することによる固定の緩みの可能性が低減される。また、樹脂製である底面カバー部322が、硬度の高い金属材料で形成された固定部材80と干渉することで損傷する可能性が低減される。
【0050】
また、本実施の形態において、外装体100には、複数の蓄電素子210が配列された蓄電素子列201が収容されており、スペーサ302は、蓄電素子列201における複数の蓄電素子210の並び方向の端部に位置するエンドスペーサである。
【0051】
この構成によれば、隣り合う蓄電素子210の間に配置されるセル間スペーサ(スペーサ301)ではなく、エンドスペーサ(スペーサ302)に底面カバー部322が設けられる。つまり、蓄電装置10に用いられる複数のスペーサ300の内の、多くても2つのエンドスペーサ(スペーサ302)に底面カバー部322を設ければよいため、他のスペーサ300は、共通部品として作製可能である。また、2つのスペーサ302のそれぞれに底面カバー部322を設ける場合は、これら2つのスペーサ302を共通部品として作製することもできる。さらに、蓄電素子列201の並び方向の端部の蓄電素子210以外の蓄電素子210の底面211aには底面カバー部322が設けられないため、例えば、外装体100の内底面113(載置面部113a)に複数の蓄電素子210の底面211aのほぼ全域を直接的に接着することもできる。これらの効果は、蓄電装置10の安全性の向上、安全性が向上された蓄電装置10の製造コストの抑制、または、製造効率の向上の観点から有利である。
【0052】
また、本実施の形態において、底面カバー部322は、蓄電素子210の底面211aの一部を覆い、かつ、他の部分を露出させる形状及びサイズに形成されている。
【0053】
この構成によれば、底面カバー部322は、蓄電素子210の底面211aにおける固定部材80に対向する部分のみを覆い、他の部分を露出させることができる。そのため、蓄電素子210の底面211aの露出された部分を、外装体100の内底面113(載置面部113a)に直接的に接着することができる。つまり、蓄電素子210の底面211aにおける比較的に大きい面積を、外装体100の内底面113(載置面部113a)に固定することができる。これにより、例えば蓄電装置10の耐振動性または耐衝撃性が向上し、その結果、蓄電装置10の安全性が向上する。
【0054】
[4.変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る蓄電装置10について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0055】
例えば、上記実施の形態では、固定部材80はボルトであるとしたが、固定部材80の種類はボルトには限定されない。固定部材80は、例えば、かしめられることで補強部材40を底壁115に対して固定するリベットであってもよい。この場合であっても、リベットの頭部またはかしめ部が、外装体100の内部に露出する。従って、リベットと、蓄電素子210の底面211aとの間に、スペーサ302の底面カバー部322が配置されることで、導電部材であるリベットと蓄電素子210との電気的な絶縁性を確保しつつ、蓄電素子210とリベットとの離間距離を比較的に短くできる。
【0056】
また、スペーサ300を形成する材料として、樹脂以外の電気的な絶縁性を有する材料が採用されてもよい。例えば、スペーサ300は、マイカまたはガラス繊維などの無機材料で形成されていてもよく、これら樹脂以外の材料と樹脂との両方を含む材料で形成されていてもよい。また、金属製の基材の表面に絶縁性樹脂をコーティングすることでスペーサ300が形成されてもよい。つまり、スペーサ300は、スペーサ300に接触する複数の部材間で導通しない絶縁性を有すればよく、その材料は、要求される剛性、耐久性、耐熱性、難燃性、または重量等に応じて、適宜決定されてもよい。
【0057】
また、エンドスペーサであるスペーサ302に換えて、または加えて、セル間スペーサであるスペーサ301が、底面カバー部を有してもよい。例えば、外装体100の底壁115において、Y軸方向の中央部に固定部材80が位置する場合を想定する。この場合、3つのスペーサ301のうちの中央のスペーサ301が底面カバー部を有することで、固定部材80と、その直上の蓄電素子210との電気的な絶縁の確実性を向上させることができる。
【0058】
また、固定部材80の数は4には限定されず、4より多くてもよく、1以上3以下であってもよい。つまり、固定部材80の数及び配置位置は、例えば、補強部材40の大きさ、形状、または、重量等に応じて適宜決定されてもよい。また、固定部材80によって固定される外側部材は補強部材40には限定されない。例えば、蓄電装置10が収容される筐体またはラックの板状部に設けられたネジ孔に固定部材80が螺合することで、外装体100の底壁115に対して、当該板状部を固定してもよい。つまり、固定部材80を、蓄電装置10を筐体またはラックに固定するための部材として利用してもよい。また、放熱板としての金属板、外部に配置する緩衝材としての弾性部材等が、固定部材80によって固定される外側部材として採用されてもよい。
【0059】
また、蓄電ユニット200は、拘束部材(エンドプレート400及びサイドプレート500)を有しなくてもよい。例えば、外装体100によって、複数の蓄電素子210からなる蓄電素子列201を、その並び方向の両側から拘束できる場合、蓄電ユニット200は、拘束部材を有しなくてもよい。
【0060】
また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電素子を備えた蓄電装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 蓄電装置
40 補強部材
41 ネジ孔
80 固定部材
81 頭部
82 軸部
100 外装体
110 外装体本体
113 内底面
113a 載置面部
113b 固定面部
114 リブ
115 底壁
115a 貫通孔
120 外装体蓋体
200 蓄電ユニット
201 蓄電素子列
210 蓄電素子
211 容器
211a 底面
300、301、302 スペーサ
302a スペーサ本体部
322 底面カバー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7