(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20241203BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241203BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020064652
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-06-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平野 真彦
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
(72)【発明者】
【氏名】大河内 健史
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159795(JP,A)
【文献】特開2017-180428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するとともに外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子が実装された回路基板を有するモータ制御装置と、
前記モータ制御装置を内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングを貫通するとともに前記電動モータと前記モータ制御装置とを電気的に接続するための導電部材と、
前記導電部材と前記回路基板とを電気的に接続する出力バスバーと、
前記出力バスバーを内蔵するとともに前記ハウジングに収容される樹脂製のホルダと、を備え、
前記回路基板及び前記ホルダは前記ハウジングに固定されている電動圧縮機であって、
前記出力バスバーは、前記導電部材に接続される筒状の接続端子と、前記回路基板に接続されるバスバーリード線と、前記接続端子と前記バスバーリード線とを連結するバスバー連結部と、を有し、
前記ホルダには、前記出力バスバーが収容されるバスバー収容凹部が形成されており、
前記ホルダは、前記バスバー収容凹部の開口を閉塞する蓋部を有し、
前記蓋部は、樹脂製であるとともに板状であり、
前記蓋部は、前記出力バスバーから前記回路基板に向けて放射されるノイズを遮蔽する金属板を保持しており、
前記金属板は、前記蓋部に埋設されて
おり、
前記金属板は、薄板平板状であるとともに、インサート成形により前記蓋部と一体化されており、
前記回路基板には、前記電動モータを駆動する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子のスイッチング動作を制御する制御回路と、が実装されており、
前記出力バスバーは、前記回路基板における前記制御回路が実装された部位に対して、前記回路基板と前記ホルダとの積層方向で重なる位置に配置され、
前記金属板は、前記接続端子及び前記バスバー連結部と前記回路基板における前記制御回路が実装された部位との間に配置されており、
前記蓋部の一部分は、前記金属板と前記回路基板との間に配置されており、
前記蓋部の他部分は、前記金属板と前記接続端子に接続された端子ピンとの間に配置されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記金属板は、前記回路基板に実装されたグランドパターンに電気的に接続されるグランド用バスバーを有していることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するとともに外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子が実装された回路基板を有するモータ制御装置と、モータ制御装置を内部に収容するハウジングと、を備えている。回路基板及びホルダはハウジングに固定されている。また、例えば特許文献1に開示されているように、回路基板に実装されるフィルタ素子を保持する樹脂製のホルダを備えた電動圧縮機が知られている。ホルダは、ハウジングに収容されている。このような電動圧縮機は、ハウジングを貫通するとともに電動モータとモータ制御装置とを電気的に接続するための導電部材と、導電部材と回路基板とを電気的に接続する出力バスバーと、を備えている。また、ホルダは、出力バスバーを内蔵している場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルタ素子や出力バスバーからは回路基板に向けてノイズが放射される場合がある。すると、回路基板上の回路や素子がフィルタ素子や出力バスバーからのノイズの影響を受けてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、耐ノイズ性に優れた電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するとともに外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子が実装された回路基板を有するモータ制御装置と、前記モータ制御装置を内部に収容するハウジングと、前記フィルタ素子を保持するとともに前記ハウジングに収容される樹脂製のホルダと、を備え、前記回路基板及び前記ホルダは前記ハウジングに固定されている電動圧縮機であって、前記ホルダは、前記フィルタ素子から前記回路基板に向けて放射されるノイズを遮蔽する金属板を保持している。
【0007】
これによれば、フィルタ素子から回路基板に向けて放射されるノイズが金属板によって遮蔽されるため、回路基板上の回路や素子がノイズの影響を受けてしまうことを抑制することができ、耐ノイズ性に優れる。
【0008】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するとともに外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子が実装された回路基板を有するモータ制御装置と、前記モータ制御装置を内部に収容するハウジングと、前記ハウジングを貫通するとともに前記電動モータと前記モータ制御装置とを電気的に接続するための導電部材と、前記導電部材と前記回路基板とを電気的に接続する出力バスバーと、前記出力バスバーを内蔵するとともに前記ハウジングに収容される樹脂製のホルダと、を備え、前記回路基板及び前記ホルダは前記ハウジングに固定されている電動圧縮機であって、前記ホルダは、前記出力バスバーから前記回路基板に向けて放射されるノイズを遮蔽する金属板を保持している。
【0009】
これによれば、出力バスバーから回路基板に向けて放射されるノイズが金属板によって遮蔽されるため、回路基板上の回路や素子がノイズの影響を受けてしまうことを抑制することができ、耐ノイズ性に優れる。
【0010】
上記電動圧縮機において、前記金属板は、前記回路基板に実装されたグランドパターンに電気的に接続されるグランド用バスバーを有しているとよい。
これによれば、金属板によって遮蔽されたノイズが、グランド用バスバー及びグランドパターンを介してグランド流れるため、金属板からのノイズの放射が抑制される。このように、金属板がグランド用バスバーを有している構成は、金属板からのノイズの放射を抑制する構成として好適である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、耐ノイズ性に優れた電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態における電動圧縮機を一部破断して示す側断面図。
【
図2】インバータケース周辺を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、有底筒状の吐出ハウジング12と、吐出ハウジング12に連結される有底筒状のモータハウジング13と、モータハウジング13に連結されるインバータケース14と、を備えている。吐出ハウジング12、モータハウジング13、及びインバータケース14は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。モータハウジング13は、底壁13aと、底壁13aの外周縁から筒状に延びる周壁13bと、を有している。
【0014】
モータハウジング13内には、回転軸15が収容されている。また、モータハウジング13内には、回転軸15の回転によって駆動して流体としての冷媒を圧縮する圧縮部16と、回転軸15を回転させて圧縮部16を駆動する電動モータ17と、が収容されている。圧縮部16及び電動モータ17は、回転軸15の回転軸線が延びる方向である軸線方向に並んで配置されている。電動モータ17は、圧縮部16よりもモータハウジング13の底壁13a側に配置されている。そして、モータハウジング13内における圧縮部16と底壁13aとの間には、電動モータ17を収容するモータ室18が形成されている。
【0015】
圧縮部16は、例えば、モータハウジング13内に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない可動スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0016】
電動モータ17は、筒状のステータ19と、ステータ19の内側に配置されるロータ20と、を有している。ロータ20は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ19は、ロータ20を取り囲んでいる。ロータ20は、回転軸15に止着されたロータコア20aと、ロータコア20aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。ステータ19は、筒状のステータコア19aと、ステータコア19aに巻回されたモータコイル21とを有している。
【0017】
周壁13bには、吸入口13hが形成されている。吸入口13hには、外部冷媒回路22の一端が接続されている。吐出ハウジング12には、吐出口12hが形成されている。吐出口12hには、外部冷媒回路22の他端が接続されている。吸入口13hは、周壁13bにおける底壁13a側に位置する部分に形成されている。吸入口13hは、モータ室18に連通している。
【0018】
外部冷媒回路22から吸入口13hを介してモータ室18内に吸入された冷媒は、圧縮部16の駆動により圧縮部16で圧縮されて、吐出口12hを介して外部冷媒回路22へ流出する。そして、外部冷媒回路22へ流出した冷媒は、外部冷媒回路22の熱交換器や膨張弁を経て、吸入口13hを介してモータ室18内に還流する。電動圧縮機10及び外部冷媒回路22は、車両空調装置23を構成している。
【0019】
インバータケース14は、モータハウジング13の底壁13aに取り付けられている。インバータケース14内には、モータ制御装置30を収容するインバータ収容室14aが形成されている。したがって、ハウジング11は、インバータ収容室14aを有しており、内部にモータ制御装置30を収容している。圧縮部16、電動モータ17、及びモータ制御装置30は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。
【0020】
図2に示すように、インバータケース14は、有底筒状のケース本体24と、ケース本体24の開口を閉塞する有底筒状の蓋部材25と、を有している。ケース本体24は、円板状のケース底壁24aと、ケース底壁24aの外周縁から円筒状に延びるケース周壁24bと、を有している。蓋部材25は、円板状の蓋底壁25aと、蓋底壁25aの外周縁から円筒状に延びる蓋周壁25bと、を有している。
【0021】
ケース本体24及び蓋部材25は、ケース周壁24bの開口端面と蓋周壁25bの開口端面とが突き合わさった状態で互いに配置されている。インバータ収容室14aは、ケース本体24及び蓋部材25によって区画されている。インバータケース14は、ケース本体24のケース底壁24aの外面がモータハウジング13の底壁13aの外面に接した状態でモータハウジング13の底壁13aに取り付けられている。
【0022】
ケース底壁24aの外面の面積は、モータハウジング13の底壁13aの外面の面積よりも大きい。このため、ケース底壁24aの一部は、モータハウジング13の底壁13aの縁部よりも外側にはみ出している。ケース底壁24aの外面におけるモータハウジング13の底壁13aの縁部よりもはみ出した部位には、筒状のコネクタ接続部14fが突出している。コネクタ接続部14fには、図示しない外部電源の外部コネクタが電気的に接続されている。
【0023】
ケース底壁24aの内面には、複数のケースボス部24fが立設されている。また、ケース本体24には、ボルト挿通孔24hが複数形成されている。各ボルト挿通孔24hは、各ケースボス部24fを貫通している。各ボルト挿通孔24hは、ケース底壁24aの外面に開口している。また、モータハウジング13の底壁13aには、各ボルト挿通孔24hに連通する雌ねじ孔13cがそれぞれ形成されている。
【0024】
モータハウジング13の底壁13aには、底壁13aを貫通する孔13dが形成されている。また、ケース本体24のケース底壁24aには、ケース底壁24aを貫通する孔24cが形成されている。両孔13d,24cは互いに連通している。
【0025】
ケース本体24のケース底壁24aには、端子ピン26が取り付けられている。端子ピン26は、3つの導電部材27と、支持板28と、を有している。各導電部材27は、円柱状である。なお、
図1及び
図2では、図示の都合上、1つの導電部材27のみ図示している。支持板28は、孔24cを閉塞した状態でケース底壁24aの内面に取り付けられている。
【0026】
3つの導電部材27は、両孔13d,24cを貫通した状態で、支持板28を介してケース底壁24aに支持されている。したがって、各導電部材27の一端部は、モータ室18内に突出するとともに、各導電部材27の他端部は、インバータ収容室14a内に突出している。よって、各導電部材27は、ハウジング11を貫通している。モータ室18内には、クラスタブロック29が配置されている。また、モータコイル21からは3つのモータ配線21aが引き出されている。3つの導電部材27と3つのモータ配線21aとは、クラスタブロック29を介してそれぞれ電気的に接続されている。
【0027】
モータ制御装置30は、回路基板31を有している。回路基板31は、インバータ収容室14a内に収容されている。回路基板31には、複数のスイッチング素子32をモジュール化したパワーモジュール33が実装されている。したがって、回路基板31には、複数のスイッチング素子32が実装されている。各スイッチング素子32は、電動モータ17を駆動するためにスイッチング動作を行う。さらに、回路基板31には、各スイッチング素子32のスイッチング動作を制御する制御回路34が実装されている。より具体的には、回路基板31は、印加される電圧によって図示しない高電圧基板と、図示しない低電圧基板とに分かれ、パワーモジュール33は高電圧基板に実装され、制御回路34は低電圧基板に実装される。
【0028】
インバータ収容室14a内には、樹脂製のホルダ40が収容されている。したがって、ホルダ40は、ハウジング11に収容されている。ホルダ40は、各導電部材27と回路基板31とを電気的に接続するための出力バスバー50を内蔵する。ホルダ40は、出力バスバー50を3つ保持している。そして、各出力バスバー50は、各導電部材27にそれぞれ電気的に接続されている。なお、
図1及び
図2では、図示の都合上、1つの出力バスバー50のみ図示している。また、ホルダ40は、外部からの入力電流に含まれるノイズを低減するフィルタ素子であるコンデンサ35を保持している。本実施形態のコンデンサ35は、フィルムコンデンサであり、四角ブロック状である。コンデンサ35は、回路基板31に実装されている。さらに、ホルダ40は、パワーモジュール33や、コンデンサ35と共にフィルタ回路を構成する図示しないコイルも保持している。フィルタ回路は、高電圧基板に実装される。
【0029】
ホルダ40は、板状のホルダ本体部41を有している。ホルダ本体部41は、筒状のホルダボス部41fを複数有している。各ホルダボス部41fの軸線方向は、ホルダ本体部41の厚み方向に一致している。各ホルダボス部41fは、ホルダ本体部41の厚み方向の一方に位置する第1本体面41aから突出している。ホルダ40は、ホルダ本体部41の厚み方向の他方に位置する第2本体面41bが、各ケースボス部24fに載置された状態で、インバータ収容室14a内に配置されている。各ホルダボス部41fの内側は、ケース本体24の各ボルト挿通孔24hにそれぞれ連通している。
【0030】
回路基板31は、ボルト挿通孔31hを複数有している。回路基板31は、各ボルト挿通孔31hと各ホルダボス部41fの内側とが連通した状態で、各ホルダボス部41fにおける第1本体面41aとは反対側の端部に載置されている。そして、回路基板31の各ボルト挿通孔31h、各ホルダボス部41fの内側、各ボルト挿通孔24hを通過した各ボルトB1が、モータハウジング13の底壁13aの各雌ねじ孔13cに螺合されることにより、回路基板31及びホルダ40が、モータハウジング13に固定されている。
【0031】
したがって、ホルダ40は、インバータ収容室14a内に配置された状態でモータハウジング13に取り付けられている。ホルダ40は、回路基板31と重なって配置されている。なお、以下の説明では、回路基板31とホルダ40とが重なっている方向を、回路基板31とホルダ40との積層方向X1と記載する。回路基板31は、ホルダ本体部41の第1本体面41aに対して、各ホルダボス部41fにおける第1本体面41aからの突出量だけ離間した状態で、インバータ収容室14a内に収容され、ホルダ40に固定されている。
【0032】
図3に示すように、ホルダ本体部41の第2本体面41bには、コンデンサ35を保持する四角孔状の保持凹部42が形成されている。コンデンサ35は、保持凹部42内に一部分が入り込んでいるとともにその他の部分が保持凹部42から突出した状態で保持凹部42に保持されている。コンデンサ35は、回路基板31に電気的に接続されるリード部35aを有している。リード部35aは、ホルダ本体部41を貫通して第1本体面41aから突出し、回路基板31に電気的に接続されている。これにより、コンデンサ35が回路基板31に実装されている。コンデンサ35は、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重なる位置に配置されている。
【0033】
ホルダ40は、コンデンサ35から回路基板31に向けて放射されるノイズを遮蔽する金属板である第1金属板51を保持している。第1金属板51は、保持凹部42の底面とコンデンサ35との間に介在されている。第1金属板51は、薄板平板状である。第1金属板51は、保持凹部42の底面に沿って延びている。第1金属板51は、保持凹部42に嵌め込まれているとともに、保持凹部42の底面とコンデンサ35とによって挟み込まれている。ホルダ本体部41の一部分は、第1金属板51と回路基板31との間に配置されている。第1金属板51は、回路基板31とホルダ40との積層方向X1において、コンデンサ35と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に配置されている。
【0034】
第1金属板51は、グランド用バスバーとしての第1グランド用バスバー51aを有している。第1グランド用バスバー51aは、第1金属板51に一体形成されている。第1グランド用バスバー51aは、保持凹部42の底面からホルダ本体部41を貫通して第1本体面41aから突出し、回路基板31に実装されたグランドパターン31aに電気的に接続されている。なお、図示の都合上、グランドパターン31aをドットハッチングで模式的に示している。グランドパターン31aは、グランドに電気的に接続されている。
【0035】
図4に示すように、ホルダ本体部41の第1本体面41aには、各出力バスバー50がそれぞれ収容されるバスバー収容凹部43が形成されている。また、ホルダ40は、バスバー収容凹部43の開口を閉塞する蓋部44を有している。蓋部44は、樹脂製である。蓋部44は板状である。蓋部44の厚み方向は、ホルダ本体部41の厚み方向と一致している。
【0036】
各出力バスバー50は、筒状の接続端子50aと、接続端子50aから延びるバスバー連結部50bと、バスバー連結部50bに連結されるバスバーリード線50cと、を有している。接続端子50aとバスバー連結部50bとは一体形成されている。バスバー連結部50bとバスバーリード線50cとは、例えば、溶接により接合されることにより互いに一体化されている。各出力バスバー50のバスバーリード線50cは、バスバー収容凹部43内から蓋部44を貫通して回路基板31に向けて突出し、回路基板31にそれぞれ半田付けされている。各出力バスバー50は、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重なる位置に配置されている。
【0037】
ホルダ本体部41には、バスバー収容凹部43内に連通する端子挿通孔41hが3つ形成されている。なお、図示の都合上、1つの端子挿通孔41hのみ図示している。各端子挿通孔41hは、一端がバスバー収容凹部43の底面に開口し、他端がホルダ本体部41の第2本体面41bに開口している。各端子挿通孔41hは、各出力バスバー50の接続端子50aに対応する位置にそれぞれ配置されている。各端子挿通孔41hの軸線方向と各出力バスバー50の接続端子50aの軸線方向とは一致している。
【0038】
蓋部44は、各出力バスバー50から回路基板31に向けて放射されるノイズを遮蔽する金属板である第2金属板52を保持している。第2金属板52は、薄板平板状である。第2金属板52との厚み方向は、蓋部44の厚み方向と一致している。第2金属板52は、インサート成形により蓋部44と一体化されている。第2金属板52は、蓋部44に埋設されている。蓋部44の一部分は、第2金属板52と回路基板31との間に配置されている。第2金属板52は、回路基板31とホルダ40との積層方向X1において、各出力バスバー50と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に配置されている。したがって、第2金属板52は、各出力バスバー50と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に配置される金属プレートである。
【0039】
第2金属板52は、グランド用バスバーとしての第2グランド用バスバー52aを有している。第2グランド用バスバー52aは、第2金属板52に一体形成されている。第2グランド用バスバー52aは、蓋部44におけるバスバー収容凹部43の底面とは反対側に位置する面から突出し、グランドパターン31aに電気的に接続されている。
【0040】
各導電部材27の他端部は、各端子挿通孔41hを介して各出力バスバー50に挿抜可能になっている。そして、各導電部材27の他端部が、各端子挿通孔41hを通過して各出力バスバー50にそれぞれ挿し込まれることにより、各導電部材27と各出力バスバー50とがそれぞれ電気的に接続されている。
【0041】
電動モータ17とモータ制御装置30の回路基板31とは、各モータ配線21a、クラスタブロック29、各導電部材27、及び各出力バスバー50を介して電気的に接続されている。したがって、各導電部材27は、電動モータ17とモータ制御装置30とを電気的に接続するために用いられている。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
コネクタ接続部14fに接続される外部電源からの直流電圧が、各スイッチング素子32のスイッチング動作によって交流電圧に変換され、変換された交流電圧が駆動電圧として、各出力バスバー50、各導電部材27、クラスタブロック29、及び各モータ配線21aを介して電動モータ17に供給される。これにより、電動モータ17が駆動し、電動モータ17の駆動に伴う回転軸15の回転によって、圧縮部16が駆動して冷媒が圧縮部16により圧縮される。
【0043】
制御回路34は、PWM信号を制御することにより、各スイッチング素子32のスイッチング動作のデューティ比を可変制御する。これにより、電動モータ17の回転数が制御される。制御回路34は、図示しない空調ECUから電動モータ17の目標回転数に関する情報を受信すると、その目標回転数で電動モータ17が回転するように各スイッチング素子32のスイッチング動作を制御する。
【0044】
コンデンサ35から回路基板31に向けて放射されるノイズは、第1金属板51によって遮蔽される。具体的には、コンデンサ35と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に第1金属板51が配置されているため、コンデンサ35から制御回路34に向かうノイズが第1金属板51によって遮蔽される。そして、第1金属板51によって遮蔽されたノイズは、第1グランド用バスバー51a及びグランドパターン31aを介してグランド流れる。
【0045】
また、各出力バスバー50から回路基板31に向けて放射されるノイズは、第2金属板52によって遮蔽される。具体的には、各出力バスバー50と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に第2金属板52が配置されているため、各出力バスバー50から制御回路34に向かうノイズが第2金属板52によって遮蔽される。そして、第2金属板52によって遮蔽されたノイズは、第2グランド用バスバー52a及びグランドパターン31aを介してグランド流れる。
【0046】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ホルダ40は、コンデンサ35から回路基板31に向けて放射されるノイズを遮蔽する第1金属板51を保持している。これによれば、コンデンサ35から回路基板31に向けて放射されるノイズが第1金属板51によって遮蔽されるため、回路基板31上の回路や素子がノイズの影響を受けてしまうことを抑制することができ、耐ノイズ性に優れる。
【0047】
(2)ホルダ40は、各出力バスバー50から回路基板31に向けて放射されるノイズを遮蔽する第2金属板52を保持している。これによれば、各出力バスバー50から回路基板31に向けて放射されるノイズが第2金属板52によって遮蔽されるため、回路基板31上の回路や素子がノイズの影響を受けてしまうことを抑制することができ、耐ノイズ性に優れる。
【0048】
(3)第1金属板51は、回路基板31に実装されたグランドパターン31aに電気的に接続される第1グランド用バスバー51aを有している。これによれば、第1金属板51によって遮蔽されたノイズが、第1グランド用バスバー51a及びグランドパターン31aを介してグランド流れるため、第1金属板51からのノイズの放射が抑制される。このように、第1金属板51が第1グランド用バスバー51aを有している構成は、第1金属板51からのノイズの放射を抑制する構成として好適である。
【0049】
(4)第2金属板52は、回路基板31に実装されたグランドパターン31aに電気的に接続される第2グランド用バスバー52aを有している。これによれば、第2金属板52によって遮蔽されたノイズが、第2グランド用バスバー52a及びグランドパターン31aを介してグランド流れるため、第2金属板52からのノイズの放射が抑制される。このように、第2金属板52が第2グランド用バスバー52aを有している構成は、第2金属板52からのノイズの放射を抑制する構成として好適である。
【0050】
(5)ホルダ本体部41の一部分が、第1金属板51と回路基板31との間に配置されている。これによれば、各コンデンサ35と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に第1金属板51を配置しても、ホルダ本体部41の一部分によって、第1金属板51と回路基板31との間の絶縁を確保することができる。
【0051】
(6)蓋部44の一部分が、第2金属板52と回路基板31との間に配置されている。これによれば、各出力バスバー50と回路基板31における制御回路34が実装された部位との間に第2金属板52を配置しても、蓋部44の一部分によって、第2金属板52と回路基板31との間の絶縁を確保することができる。
【0052】
(7)コンデンサ35を、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重なる位置に配置しても、制御回路34がコンデンサ35からのノイズの影響を受けてしまうことが第1金属板51によって抑制される。したがって、インバータ収容室14a内でのコンデンサ35や回路基板31のレイアウトの自由度を向上させることができる。また、制御回路34がコンデンサ35からのノイズの影響を受けてしまうことを回避するために、コンデンサ35を、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重ならない位置に配置する必要が無いため、電動圧縮機10の小型化を図ることができる。
【0053】
(8)各出力バスバー50を、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重なる位置に配置しても、制御回路34が各出力バスバー50からのノイズの影響を受けてしまうことが第2金属板52によって抑制される。したがって、インバータ収容室14a内での各出力バスバー50や回路基板31のレイアウトの自由度を向上させることができる。また、制御回路34が各出力バスバー50からのノイズの影響を受けてしまうことを回避するために、各出力バスバー50を、回路基板31における制御回路34が実装された部位に対して、回路基板31とホルダ40との積層方向X1で重ならない位置に配置する必要が無いため、電動圧縮機10の小型化を図ることができる。
【0054】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
○ 実施形態において、第1グランド用バスバー51aが第1金属板51に一体形成されていなくてもよく、例えば、第1グランド用バスバー51aが第1金属板51に溶接により接合されていてもよい。
【0056】
○ 実施形態において、第2グランド用バスバー52aが第2金属板52に一体形成されていなくてもよく、例えば、第2グランド用バスバー52aが第2金属板52に溶接により接合されていてもよい。
【0057】
○ 実施形態において、第1金属板51が、ホルダ本体部41にインサート成形されることによりホルダ本体部41に埋設されていてもよい。
○ 実施形態において、第2金属板52が、蓋部44に対して、例えば、ボルトにより取り付けられていてもよい。
【0058】
○ 実施形態において、例えば、各出力バスバー50が、インサート成形によってホルダ40にモジュール化されていてもよい。
○ 実施形態において、例えば、コンデンサ35を保持するホルダと、各出力バスバー50を保持するホルダとが、別部品であってもよい。
【0059】
○ 実施形態において、コンデンサ35は、例えば、電解コンデンサであってもよい。
○ 実施形態では、フィルタ素子の一例として、コンデンサ35を挙げたが、これに限らず、フィルタ素子の一例として、例えば、コイルを挙げてもよい。
【0060】
○ 実施形態において、第1金属板51は、コンデンサ35から制御回路34に向かうノイズを遮蔽したが、これに限らず、コンデンサ35から回路基板31上の制御回路34以外の回路や素子に向かうノイズを遮蔽するようにホルダ40に保持されていてもよい。
【0061】
○ 実施形態において、第2金属板52は、各出力バスバー50から制御回路34に向かうノイズを遮蔽したが、これに限らず、各出力バスバー50から回路基板31上の制御回路34以外の回路や素子に向かうノイズを遮蔽するようにホルダ40に保持されていてもよい。
【0062】
○ 実施形態において、例えば、モータハウジング13の底壁13aに、有底筒状のカバー部材が取り付けられることにより、モータハウジング13の底壁13a及びカバー部材によって、インバータ収容室14aが区画されている構成であってもよい。
【0063】
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、例えば、モータ制御装置30が、ハウジング11に対して回転軸15の径方向外側に配置されている構成であってもよい。要は、圧縮部16、電動モータ17、及びモータ制御装置30が、この順で、回転軸15の軸線方向に並設されていなくてもよい。
【0064】
○ 実施形態において、圧縮部16は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 実施形態において、電動圧縮機10は、車両空調装置23を構成していたが、これに限らず、例えば、電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部16により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、16…圧縮部、17…電動モータ、27…導電部材、30…モータ制御装置、31…回路基板、31a…グランドパターン、35…フィルタ素子であるコンデンサ、40…ホルダ、50…出力バスバー、51…金属板である第1金属板、51a…グランド用バスバーとしての第1グランド用バスバー、52…金属板である第2金属板、52a…グランド用バスバーとしての第2グランド用バスバー。