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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20241203BHJP
   F28D 1/03 20060101ALI20241203BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F28F9/22
F28D1/03
F28F3/00 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020134484
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021025764
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019146403
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】菊池 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】村松 憲志郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】二田 智史
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-111293(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170877(WO,A1)
【文献】特開平04-155194(JP,A)
【文献】特開平11-287573(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0141706(US,A1)
【文献】国際公開第2014/068687(WO,A1)
【文献】特開2011-231972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/22
F28D 1/03
F28F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器であって、
冷媒を受け入れる冷媒受入タンク(61)と、
熱交換後の冷媒を送り出す冷媒送出タンク(62)と、
前記冷媒受入タンクと前記冷媒送出タンクとを繋ぎ、他の流体との間で熱交換を行う冷媒流路(W10)と、を備え、
前記冷媒受入タンクには、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造(5,5A,5B)が設けられており、
複数のプレートを重ね合わせることによって構成されており、
D:流路間距離
d:流入口高さ
θ:旋回構造の羽根角度
x:冷媒受入タンクの断面積に対する羽根面積の割合
とした場合に、
0.02<d・x・cosθ/D<0.5 (f2)
を満たす。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記旋回構造は前記プレートにより形成されている。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱交換器であって、
前記旋回構造は前記冷媒受入タンクに冷媒が流入する入口近傍に設けられている。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の熱交換器であって、
前記冷媒受入タンクの冷媒流入方向におけるタンク長さが100mm未満である。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の熱交換器であって、
前記旋回構造は、羽根及び前記羽根が繋がる主軸を有しており、
前記羽根は、前記主軸に対する傾斜が一端から他端にかけて変わらないように設けられている。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の熱交換器であって、
前記旋回構造は、前記冷媒受入タンクとは別体で形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されているように、冷媒の分配集合を行うタンク部と、タンク部から冷媒が流れる冷媒流路が設けられている熱交換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-82883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、タンク部に流入した冷媒が各冷媒流路に均等に分配されることが理想的であるものの、冷媒の慣性力の影響により分配に偏りが生じる。
【0005】
本開示は、冷媒の分配をより均等に行うことができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、熱交換器であって、冷媒を受け入れる冷媒受入タンク(61)と、熱交換後の冷媒を送り出す冷媒送出タンク(62)と、冷媒受入タンクと冷媒送出タンクとを繋ぎ、他の流体との間で熱交換を行う冷媒流路(W10)と、を備える。冷媒受入タンクには、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造(5,5A,5B)が設けられている。熱交換器は、複数のプレートを重ね合わせることによって構成されている。
【0007】
冷媒受入タンクに受け入れる冷媒に旋回成分を付与するので、冷媒受入タンクの周壁方向に冷媒を分散させることができる。旋回成分に応じて冷媒流路への流入口の高さや流路間距離が調整することが可能であり、複数のプレートを重ね合わせた積層構造によりその調整がより容易になるので、旋回構造に近い流入口のみに過度に冷媒が流れ込むことを抑制し、冷媒受入タンクの延伸方向において冷媒を分散させて、各流入口に冷媒を分散させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、冷媒の分配をより均等に行うことができる熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る熱交換器の正面図である。
図2図2は、本実施形態に係る熱交換器の平面図である。
図3図3は、熱交換器の冷媒分配構造を説明するための図である。
図4図4は、図1及び図2に示される熱交換器における冷媒分配の態様を説明するための部分断面図である。
図5図5は、旋回羽根を説明するための図である。
図6図6は、旋回羽根の冷媒分配効率を説明するための図である。
図7図7は、熱交換器の効率と旋回力及び流路への冷媒の入りやすさとの関係を説明するための図である。
図8図8は、旋回羽根の側面図である。
図9図9は、変形例としての旋回羽根の側面図である。
図10図10は、旋回部材を説明するための図である。
図11図11は、変形例としての旋回羽根の側面図である。
図12図12は、図11に示される旋回羽根を用いた場合の熱交換器における冷媒分配の態様を説明するための部分断面図である。
図13図13は、図12の変形例を説明するための部分断面図である。
図14図14は、図12の変形例を説明するための部分断面図である。
図15図15は、変形例としての旋回羽根の斜視図である。
図16図16は、図15に示される旋回羽根の平面図である。
図17図17は、図16のA方向からみた側面図である。
図18図18は、図17に示される旋回羽根の変形例を示す側面図である。
図19図19は、図17に示される旋回羽根の変形例を示す側面図である。
図20図20は、変形例としての冷媒分配構造を説明するための図である。
図21図21は、変形例としての冷媒分配構造を説明するための図である。
図22図22は、変形例としての冷媒分配構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1に示される本実施形態に係る熱交換器10について説明する。熱交換器10は、例えば車両に搭載される空調装置の冷凍サイクルを循環する冷媒と冷却水との間で熱交換を行うことにより冷媒を蒸発させる蒸発器として用いることができる。本実施形態では、冷却水が、冷媒と熱交換を行う流体に相当する。尚、熱交換器10は、蒸発器として用いる態様に限られることなく、例えば水冷コンデンサとして用いることも可能である。
【0012】
図1に示されるように、熱交換器10は、熱交換コア部20と、冷媒流入部30と、冷媒排出部31と、冷却水流入部40と、冷却水排出部41とを備えている。
【0013】
熱交換コア部20は、Z軸方向に積層して配置される複数のプレート部材21により構成されている。以下では、Z軸方向を「プレート積層方向Z」とも称する。各プレート部材21の内部には、冷媒の流れる冷媒流路と、冷却水の流れる冷却水流路とが設けられている。熱交換器10には、冷媒流路と冷却水流路とが交互に配置されている。
【0014】
図2に示されるように、熱交換コア部20は、プレート積層方向Zに直交する断面形状が略矩形状に形成されている。以下では、熱交換コア部20の長手方向及び短手方向を「X軸方向」及び「Y軸方向」とそれぞれ称する。
【0015】
複数のプレート部材21のうち、Z軸正方向の最も端部に配置される最外殻プレート部材の4つの角部において対角線上に位置する2つの角部には、冷媒流入部30及び冷媒排出部31がそれぞれ設けられている。また、対角線上に位置する残りの角部には、冷却水流入部40と冷却水排出部41とが設けられている。
【0016】
図1及び図2に示されるように、熱交換コア部20の内部には、冷媒流入部30からZ軸負方向に延びるように冷媒受入タンク61が形成されるとともに、冷媒排出部31からZ軸負方向に延びるように冷媒送出タンク62が形成されている。冷媒受入タンク61は、筒状に形成されている。冷媒送出タンク62は、筒状に形成されている。
【0017】
熱交換コア部20の内部には、冷却水流入部40からZ軸負方向に延びるように冷却水受入タンク71が形成されるとともに、冷却水排出部41からZ軸負方向に延びるように冷却水送出タンク72が形成されている。冷却水受入タンク71は、筒状に形成されている。冷却水送出タンク72は、筒状に形成されている。冷媒受入タンク61、冷媒送出タンク62、冷却水受入タンク71、及び冷却水送出タンク72は、複数のプレート部材21をプレート積層方向Zに貫通するように形成されている。
【0018】
熱交換器10では、気相及び液相の2相状態からなる冷媒が冷媒流入部30から冷媒受入タンク61に流入する。冷媒受入タンク61に流入した冷媒は、熱交換コア部20の複数の冷媒流路に分配される。複数の冷媒流路をそれぞれ流れた冷媒は、冷媒送出タンク62において集められた後、冷媒排出部31から排出される。
【0019】
熱交換器10では、冷却水が冷却水流入部40から冷却水受入タンク71に流入する。冷却水受入タンク71に流入した冷却水は、熱交換コア部20の複数の冷却水流路に分配される。複数の冷却水流路をそれぞれ流れた冷却水は、冷却水送出タンク72において集められた後、冷却水排出部41から排出される。熱交換器10では、冷媒流路を流れる冷媒と、冷却水流路を流れる冷却水との間で熱交換が行われることにより冷媒が加熱されて蒸発する。
【0020】
図3に示されるように、熱交換コア部20は、プレート部材21と、冷媒用フィンF10と、冷却水用フィンF20とを備えている。これらの部材は、アルミニウム合金等の金属材料により形成されている。
【0021】
プレート部材21は、アウタープレート22と、インナープレート23とにより構成されている。
【0022】
アウタープレート22は、プレート積層方向Zに直交する断面形状が略矩形状に形成された板状の部材からなる。アウタープレート22の外周縁部には、Z軸正方向に突出する張出部220が形成されている。複数のアウタープレート22は、張出部220がZ軸正方向を向くようにして積層して配置されている。各アウタープレート22の張出部220は、ろう付けにより互いに接合されている。
【0023】
アウタープレート22には、バーリング加工により形成されたバーリング部221が設けられている。バーリング部221は、冷媒受入タンク61の中心軸を中心としてZ軸正方向に筒状に突出するように形成された部分である。アウタープレート22においてバーリング部221の基端部にあたる部分には、Z軸負方向に突出する突出部222が形成されている。
【0024】
インナープレート23も、アウタープレート22と同様に、プレート積層方向Zに直交する断面形状が略矩形状に形成された板状の部材からなる。インナープレート23は、アウタープレート22の張出部220の内側であって、且つ隣り合うアウタープレート22とアウタープレート22との間に配置されている。
【0025】
インナープレート23の外周縁部は、アウタープレート22の張出部220の内周部分にろう付けにより接合されている。インナープレート23は、隣り合うアウタープレート22とアウタープレート22との間に形成される空間を、互いに連通されていない独立した冷媒流路W10及び冷却水流路W20に区画している。より詳しくは、インナープレート23と、インナープレート23に対してZ軸負方向に隣り合うアウタープレート22との間に形成される隙間が冷媒流路W10を構成している。また、インナープレート23と、インナープレート23に対してZ軸正方向に隣り合うアウタープレート22との間に形成される隙間が冷却水流路W20を構成している。
【0026】
冷媒流路W10には、冷媒用フィンF10が配置されている。冷却水流路W20にも、同様に冷却水用フィンF20が配置されている。冷媒用フィンF10及び冷却水用フィンF20としては、例えばオフセットフィンを用いることが可能である。冷媒用フィンF10は、冷媒流路W10を流れる冷媒に対する伝熱面積を増加させる。冷却水用フィンF20は、冷却水流路W20を流れる冷却水に対する伝熱面積を増加させる。
【0027】
インナープレート23には、アウタープレート22のバーリング部221に対応する部分に、バーリング加工により形成されたバーリング部231が設けられている。バーリング部231は、冷媒受入タンク61の中心軸を中心としてZ軸負方向に筒状に突出するように形成された部分である。インナープレート23においてバーリング部231の基端部にあたる部分には、Z軸負方向に突出する突出部232が形成されている。
【0028】
インナープレート23の突出部232は、Z軸正方向に隣り合うアウタープレート22の突出部222にろう付けにより接合されている。これにより、アウタープレート22のバーリング部221とインナープレート23のバーリング部231とにより、筒状の空間からなる冷媒受入タンク61が構成されている。
【0029】
アウタープレート22のバーリング部221及びインナープレート23のバーリング部231により冷媒受入タンク61の周壁610が構成されている。また、アウタープレート22の突出部222とインナープレート23の突出部232の突出部232とが互いに接合されることにより、冷却水流路W20と冷媒受入タンク61とが仕切られている。したがって、冷媒受入タンク61を流れる冷媒が冷却水流路W20に流入することはない。
【0030】
アウタープレート22のバーリング部221の先端部と、インナープレート23のバーリング部231の先端部との間には、隙間が形成されている。この隙間は流入口611を構成している。流入口611は、冷媒受入タンク61に流入した冷媒を複数の冷媒流路W10に分配して流入させる部分である。
【0031】
図4に示されるように、本実施形態では、冷媒受入タンク61内における冷媒の分配性を高めるため、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造としての旋回羽根5が設けられている。旋回羽根5は、冷媒受入タンク61の入口近傍に設けられている。
【0032】
図5は、旋回羽根5を、冷媒の流入方向から見た状態を示す図である。図5に示されるように、旋回羽根5は、羽根軸51と、羽根52と、主軸53と、を備えている。羽根軸51は、主軸53から放射状に延びるように設けられている。羽根軸51は、冷媒の流入方向からみて放射状に複数設けられている。羽根52は、1つの羽根軸51に対して1つ対応するように設けられている。
【0033】
図6に示されるように、旋回羽根5における羽根52は、水平面に対して冷媒流れ方向にθ傾斜している。
D:流路間距離(図3参照)
d:流入口高さ(図3参照)
θ:羽根角度
x:冷媒受入タンク断面積に対する羽根面積の割合(図5において、羽根軸51及び羽根52の投影面積の総和が羽根面積)
とした場合、本実施形態では、次式(f1)の関係を満たすようにすることが好ましい。
0<d・x・cosθ/D<0.6 (f1)
【0034】
より好ましくは、次式(f2)の関係を満たすようにすることが好ましい。
0.02<d・x・cosθ/D<0.5 (f2)
【0035】
図7に示されるように、縦軸に熱交換器10の性能、横軸に旋回力・積層流路への入りやすさ(d・x・cosθ/D)を取ると、所定の性能向上効果が認められる範囲が特定される。上記式(f1)及び式(f2)は、このような性能向上効果が認められる範囲を特定するためのものである。
【0036】
図8に示されるように、旋回羽根5は、羽根軸51から羽根52が下方に傾斜するように設けられている。図9に示されるような旋回羽根5Aであって、羽根軸51から下方に傾斜する羽根52に加え、羽根軸51から上方に傾斜する羽根52Aを設けてもよい。
【0037】
旋回羽根5は、冷媒受入タンク61に流入する冷媒に旋回成分を付与するためのものである。冷媒受入タンク61に流入する冷媒に旋回成分を付与するものとしては、図10に示されるような、らせん状の旋回部材5Bを用いてもよい。旋回部材5Bに沿って流れる冷媒には旋回成分が付与される。
【0038】
図11に示されるように、旋回羽根5Cは、羽根軸51から羽根52Cが下方に傾斜するように設けられている。図12に示されるように、旋回羽根5Cを用いた場合も、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造として機能し、冷媒受入タンク61内における冷媒の分配性を高めることができる。
【0039】
図13に示されるように、旋回羽根5Cを傾斜して配置しても、冷媒の分配性を高めることができる。図14に示されるように、羽根が非対称に設けられているような旋回羽根5Dを設けても、冷媒の分配性を高めることができる。
【0040】
図15を参照しながら、羽根軸を設けない旋回羽根5Eについて説明する。旋回羽根5Eは、主軸53Eと、主軸53Eに繋がる羽根52Eと、を備える。羽根52Eは、主軸53Eと同一平面を形成する板状部材を切り起して捩じることによって構成されている。
【0041】
図16に示されるように、旋回構造としての旋回羽根5Eは、羽根52E及び羽根52Eが繋がる主軸53Eを有しており、羽根52Eは、主軸53Eに対する傾斜が一端から他端にかけて変わらないように設けられている。この傾斜状態をより明確にするため、A方向からみた状態を図17に示す。図17に示されるように、羽根52Eは、途中に折れ曲がった部分がなく、一端から他端までの傾斜が一様なものとなっている。
【0042】
主軸53Eに対する羽根52Eの傾斜方向や配置態様は、様々な方向や態様を取りうるものである。図18に示されるように、旋回羽根5Fは、羽根52Fが主軸53Fから下方に傾斜するように設けられている。図19に示されるように、旋回羽根5Gは、羽根52Gが主軸53Gから上下両方向に傾斜して設けられている。
【0043】
上記説明した冷媒受入タンク61及び冷媒流路W10の形成態様は一例であって、他にも様々な態様のものが採用されうる。
【0044】
図20に示される熱交換コア21Aでは、上下対象形状のプレート24a及びプレート24bによって、冷媒受入タンク61及び冷媒流路W10を形成している。プレート24a及びプレート24bには互いに対向する突出部が設けられていて、その一対の突出部の間が流入口611となっている。
【0045】
図21に示される熱交換コア21Bでは、冷媒用フィンF10の代わりにリブが設けられたプレート25と、リブが設けられていないプレート26との組み合わせによって、冷媒受入タンク61及び冷媒流路W10を形成している。プレート25が端部において拡径する角部と、プレート26が端部において拡径する角部とによって、流入口611が形成されている。
【0046】
図22に示される熱交換コア21Cでは、チューブ27によって冷媒流路W10が形成されている。この場合、冷媒受入タンク61は独立したタンクとして構成される。チューブ27の端部が、流入口611となっている。
【0047】
本実施形態における熱交換器10は、冷媒を受け入れる冷媒受入タンク61と、熱交換後の冷媒を送り出す冷媒送出タンク62と、冷媒受入タンク61と冷媒送出タンク62とを繋ぎ、他の流体との間で熱交換を行う冷媒流路W10と、を備え、冷媒受入タンク61には、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造(旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5G及び旋回部材5B)が設けられており、複数のプレートを重ね合わせることによって構成されている。
【0048】
本実施形態における熱交換器10は、冷媒を受け入れる冷媒受入タンク61と、熱交換後の冷媒を送り出す冷媒送出タンク62と、冷媒受入タンク61と冷媒送出タンク62とを繋ぎ、他の流体との間で熱交換を行う冷媒流路W10と、を備え、冷媒受入タンク61には、受け入れる冷媒に旋回成分を付与する旋回構造(旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5G及び旋回部材5B)が設けられており、冷媒流路W10への流入口611の高さd及び流路間距離Dが、旋回構造によって付与される旋回成分に応じて調整されている。
【0049】
冷媒受入タンク61に受け入れる冷媒に旋回成分を付与するので、冷媒受入タンク61の周壁方向に冷媒を分散させることができる。旋回成分に応じて、冷媒流路W10への流入口611の高さdや流路間距離Dが調整されているので、旋回構造に近い流入口のみに過度に冷媒が流れ込むことを抑制し、冷媒受入タンク61の延伸方向において冷媒を分散させて、各流入口に冷媒を分散させることができる。
【0050】
本実施形態における熱交換器10は、
D:流路間距離
d:流入口高さ
θ:旋回構造の羽根角度
x:冷媒受入タンクの断面積に対する羽根面積の割合
とした場合に、
0<d・x・cosθ/D<0.6 (f1)
を満たすように構成されている。
【0051】
本実施形態における熱交換器10は、好ましくは、
0.02<d・x・cosθ/D<0.5 (f2)
を満たすように構成されている。
【0052】
本実施形態における熱交換器10は、複数のプレートを重ね合わせることによって構成されている。複数のプレートとしては、アウタープレート22とインナープレート23との組み合わせや、プレート24aとプレート24bとの組み合わせや、プレート25とプレート26との組み合わせを用いることができる。
【0053】
本実施形態における熱交換器10において、旋回構造としての旋回羽根5,5Aはプレートにより形成されている。プレートと一体的に設けることで、熱交換器10の部品点数を減じることができる。
【0054】
本実施形態における熱交換器10において、旋回構造は冷媒受入タンク61に冷媒が流入する入口近傍に設けられている。旋回構造を入口近傍に設けることで、流入する冷媒に確実に旋回成分を付与することができる。
【0055】
本実施形態の場合、旋回羽根5は、冷媒受入タンク61の入口近傍に1つ設けられているが、設けられる個数や設けられる場所はこれに限られるものではない。旋回羽根5を冷媒流入部30の内部に設けることも好ましい一つの態様である。旋回羽根5は、冷媒受入タンク61の中程に設けてもよく、複数設けてもよい。
【0056】
本実施形態における熱交換器10において、冷媒受入タンク61の冷媒流入方向におけるタンク長さが100mm未満であることが好ましい。
【0057】
旋回構造としての旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5Gは、冷媒受入タンク61とは別体で形成されていてもよい。別体構造とすることで、旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5Gの構造上の自由度を高めることができる。例えば、旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5Gを静翼ではなく微動翼として形成することもできる。例えば、旋回羽根5,5A,5C,5D,5E,5F,5Gをアルミ又はアルミよりも強度の強いチタンといった別部材によって構成することも可能である。
【0058】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10:熱交換器
20:熱交換コア部
30:冷媒流入部
31:冷媒排出部
40:冷却水流入部
41:冷却水排出部
61:冷媒受入タンク
62:冷媒送出タンク
611:流入口
W10:冷媒流路
5:旋回羽根
図1
図2
図3
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図5
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