(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】キーボード装置
(51)【国際特許分類】
H01H 13/705 20060101AFI20241203BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01H13/705
G06F3/02 Z
G06F3/02 400
(21)【出願番号】P 2020149931
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大沢 求芽
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-127615(JP,U)
【文献】特開平03-011509(JP,A)
【文献】特開2003-186408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0259036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
G06F 3/02 - 3/027
H03M 11/00 - 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのケースをヒンジ機構を介して接続した折りたたみ式の電子機器の一方のケースの内面側に備えられるキーボード装置であって、
前記キーボード装置における複数のキーを同一平面に並列した各キーが、
内部にスイッチ電極部を形成したドーム状のラバー部材を含み、前記ラバー部材の上部に、上面が平らな突出部を形成したラバーベース部と、
上面が平らで貫通孔が形成された板状部材であって、前記貫通孔を介して前記突出部を上方に突出させるようにして前記ラバーベース部の上面に設置されたキートップ部と、
を備え、
前記各キーの内の一部のキーは、他のキーの前記突出部より突出量が大きい突出部を有
し、
且つ、前記各キーの内の端部に位置し、前記電子機器の折りたたみ時に前記電子機器の他の一方のケースの内面側に設けられた表示画面の外周枠に前記突出部が当接する少なくとも2つのキーである、
キーボード装置。
【請求項2】
前記キートップ部のキートップ面積は、前記ラバーベース部の設置面積以上である、
請求項1記載のキーボード装置。
【請求項3】
前記キートップ部は、前記ラバーベース部の上面に固定される、
請求項1または2記載のキーボード装置。
【請求項4】
前記ラバーベース部は、前記上面の略中央に上方に突出した突出部を形成し、
前記キートップ部は、平板状の略中央に形成された貫通孔を介して前記突出部を上方に突出させるよう、前記ラバーベース部の上面に設置される
、
請求項1乃至3いずれかに記載のキーボード装置。
【請求項5】
前記各キーの少なくとも一部のキーは、当該キーに割り当てられた機能に対応した平面形状の前記突出部を有する、
請求項1乃至4いずれかに記載のキーボード装置。
【請求項6】
前記各キーの少なくとも一部のキーは、前記突出部が当該キーに割り当てられた機能に対応した色のラバー素材で形成される、
請求項1乃至
5いずれかに記載のキーボード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば折りたたみ式の電子機器等に好適なキーボード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示部付きのラバーコンタクト式押し釦スイッチにおいて、押しボタンの外形内に発光ダイオードを配置することで、ラバーコンタクト部を釦の中心から外れた位置に配置しながらも釦操作時の引っかかりを防止するようにした技術が提案されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許技術1に記載された技術を含め、ラバードーム上に合成樹脂製等のキートップを配置するラバーキーの構造において、より簡易な構成が求められていた。
【0005】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、より簡易な構成のキーボード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、2つのケースをヒンジ機構を介して接続した折りたたみ式の電子機器の一方のケースの内面側に備えられるキーボード装置であって、前記キーボード装置における複数のキーを同一平面に並列した各キーが、内部にスイッチ電極部を形成したドーム状のラバー部材を含み、前記ラバー部材の上部に、上面が平らな突出部を形成したラバーベース部と、上面が平らで貫通孔が形成された板状部材であって、前記貫通孔を介して前記突出部を上方に突出させるようにして前記ラバーベース部の上面に設置されたキートップ部と、を備え、前記各キーの内の一部のキーは、他のキーの前記突出部より突出量が大きい突出部を有し、且つ、前記各キーの内の端部に位置し、前記電子機器の折りたたみ時に前記電子機器の他の一方のケースの内面側に設けられた表示画面の外周枠に前記突出部が当接する少なくとも2つのキーである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より簡易な構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子辞書の展開時の外観構成を示す斜視図。
【
図2】同実施形態に係るキーボードを構成する1つのキーの断面構造を示す図。
【
図3】同実施形態に係るキーボードの右手前側端部に位置するカーソルキーの構成を例示する図。
【
図4】同実施形態に係るキートップ部上に突出した突出部をストッパとして機能させる場合を、一般的なストッパの構造と比較して示す図。
【
図5】同実施形態に係る4つのカーソルキーに対して各キーの突出部を配色した例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を電子辞書に適用した場合の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電子辞書10の展開時の外観構成を示す斜視図である。電子辞書10は、平板状の上ケース11と、同じく平板状の下ケース12とが、円筒状のヒンジ部13を介して連結されて一体に構成される。上ケース11と下ケース12はヒンジ部13により開閉可能な折りたたみ式となっており、同図は略135°程度に展開して、例えば机上等に設置した使用時の状態を例示している。
【0010】
ヒンジ部13は、両端がヒンジ機構を有するとともに、下ケース12の下面側から開閉可能な蓋部(図示せず)を設け、電源として例えば単三形の乾電池または二次電池が直列に2本収納可能な構造を有する。
【0011】
上ケース11の内面側には、タッチパネル式のカラー液晶パネルによる表示部14が備えられる。一方の下ケース12には、内面側(展開した状態で上面側)に複数のキーを配列したキーボード15が備えられる。
【0012】
図2は、キーボード15を構成する1つのキーの断面構造を示す図である。
図2(A)は、基部となるラバーベース部21と、その上部に装着されるキートップ部22とを示す図、
図2(B)は、キートップ部22をラバーベース部21に装着した状態を示す図である。
【0013】
図示する如く、ラバーベース部21は、上面が平板状で当該上面の略中央に上方に突出した突出部21Aを形成している。このラバーベース部21の内部には、図示しないが、1対のスイッチ電極が上下面で間隙を空けて形成されたラバードームが含まれる。ラバーベース部21内に形成するラバードームに関しては、ラバーベース部21を形成するラバー素材と一体的な構成としても良いし、あえてラバードームをラバーベース部21と弾性の異なる他のラバー素材により別体として形成して、ラバーベース部21がラバードームを内包する構成としても良い。ラバードームをラバーベース部21と別体の構成とすることで、構造は複雑となるが、キータッチ圧力の適切な設定が容易に可能となる。
【0014】
前述したように、ラバーベース部21の上面で上方に突出した突出部21Aの存在により、ラバードーム内の前記1対のスイッチ電極の間隙、すなわち当該キーの操作ストローク長を考慮するに当たって設計の自由度を上げることができる。
【0015】
キートップ部22は、平板状の合成樹脂製で、中央部に突出部21Aを貫通させるための貫通孔22Aを形成している。
図2(B)に示すように、ラバーベース部21にキートップ部22を装着した状態でも、ラバーベース部21の突出部21Aの上部は、キートップ部22の上面より上方に突出している。キートップ部22は、ラバーベース部21の上面に接着剤を用いて貼着されることで、ラバーベース部21に固定される。
【0016】
図示する如く、ラバーベース部21の設置面でのサイズSbに比して、キートップ部22の平面でのサイズSktが同じか、より大きいものとする。
【0017】
このようにラバーベース部21とキートップ部22とを別体で設計し、且つラバーベース部21のサイズをキートップ部22のサイズ以下とすることで、電子辞書10の下ケース12の上面に配置するキーボード15の構成に際して、盤面のより周囲端部側までキートップ部22が配置されるような設計が可能となる。
【0018】
前述したように、キートップ部22は、ラバーベース部21の上面に設置され、例えば合成ゴム系の接着剤で貼着されるもので、ラバーベース部21の突出部21Aとキートップ部22の貫通孔22Aとを嵌合させることで、キートップ部22の位置決めと設置、固定とがきわめて容易なものとして、製品の組み立て工程を簡略化するのに大きく寄与できる。加えて、ラバーベース部21の突出部21Aとキートップ部22の貫通孔22Aとの関係により、ラバーベース部21とキートップ部22の接触面積を大きく、且つ形状が合致した屈曲面での接着とすることで、接着による固定をより確実なものにできる。
【0019】
また、ラバーベース部21の突出部21Aとキートップ部22の貫通孔22Aに関しては、割り当てられた位置のキーの機能に応じた形状とすることが考えられる。
【0020】
図3は、キーボード15の右手前側端部に位置するカーソルキーの構成を例示する図である。
図3(A)は各キーのキートップ部22がラバーベース部21に設置する前の状態、
図3(B)は設置、固定した後の状態を示す。
【0021】
ここでは、カーソルキー、すなわち表示部14に表示されるカーソルに対し、上下左右各方向への移動を個別に指示するための一群の4つのキーとして、平面形状が二等辺三角形で頂角の方向が上下左右それぞれ異なるような形状となるラバーベース部21の突出部21A、およびそれと嵌合されるキートップ部22の貫通孔22Aを有する構成とした。
【0022】
そのため、キー表記に関して、別途キートップ部22の上面にキー名を記す必要がなく、突出部21A自体がキートップ部22の中央でキートップ部22より上方に突出していることも合わせて、特に突出部21Aの配色とキートップ部22の配色とを適切に設定することにより、容易にキーの機能がユーザに理解できると共に、自然とキーの中央を操作するように促していることも含めて、操作性を向上できる。
【0023】
なお、
図3で示したように、キーボード15を構成する各キーのラバーベース部21は、メインのゴム部分がシート状に一体成形される。
【0024】
さらに、キーボード15の周囲端部に位置するキーに関しては、特に電子辞書10のような折りたたみ式の電子機器において、隣接する他のキーの突出部21Aよりも大きい突出量とすることで、折りたたみ時のストッパとして機能させることも考えられる。
【0025】
図4は、キートップ部22上に突出した突出部21Aをストッパとして機能させる場合について、一般的なストッパの構造と比較して示す図である。
図4(A)は、電子辞書等で採用される一般的なストッパの構成を示す図、
図4(B)は本実施形態に係る、キートップ部22上に突出した突出部21Aをストッパとして機能させる場合を例示する図である。
【0026】
図4(A)に示す如く、一般的な折りたたみ式の電子機器では、上ケースの内面側に設けられる表示部の表示パネルが、下ケースの内面側に設けられるキーボードの盤面と直接に物理的に干渉するのを確実に防止するために、液晶パネルの外周枠位置と対応する、キーボードの周囲端部に、ゴム製のストッパ31を配設する例が多い。
【0027】
これに対して本実施形態では、前述した如く下ケース12の内面側の周囲端部のより外側にまでキーボード15を延在させることが可能となる。そのため、
図1および
図4(B)に示すように、キーボード15の周囲端部に位置する左右端2箇所のキーに対し、キートップ部22の中央から突出した突出部21Aが、隣接する他のキーの突出部21Aよりも高く突出するものとして、折りたたみ時に上ケース11の内面の表示部14周囲の枠部と当接するように構成した。
【0028】
これにより、突出部21Aを
図4(A)で示したストッパ31の機能を兼用して、装置全体の構成をより簡易化できる。
【0029】
また、ラバーベース部21に関しては、ラバー成形の工程で色を部分的に変えることが可能であるため、キーボード15を構成する各キーの突出部21A毎に割り当てられたキーに対応して異なる色となるように配色できる。
【0030】
図5は、4つのカーソルキーに対して各キーの突出部21Aに配色した例を示す図である。ここでは、4つのカーソルキーのうち、「左」方向キーの突出部21Aが赤、「上」方向キーおよび「下」方向キーが黄色、「右」方向キーが緑の配色であることを、図中に色を表すハッチングで示している。
【0031】
このように、ラバーベース部21を構成するラバーシートを、ラバー成形工程で部分的に彩色できる点を有効に利用して、割り当てられたキーの機能に対応した配色を有することで、多色射出成形により構成する場合に比して、製造コストをより低減させることが可能となる。
【0032】
また、ラバーベース部21の突出部21Aに相当する部分を透明性を有する素材とすることで、内部のラバースイッチを構成する下側の電極部を形成した基板に、併せてLED(発光ダイオード)を設置して、突出部21Aを光らせることができる。
【0033】
以上詳述した如く本実施形態によれば、より簡易な構成にできる。
また本実施形態では、ラバーベース部21の上面の略中央に突出した突出部21Aが、キートップ部22の略中央に形成した貫通孔22Aを貫通して上方に突出した構成としたので、接着、固定のバランスが良く、またキー操作時にユーザが無意識でも突起部22Aの存在に基づいたキー操作を行うようになるため、キー入力ミスを未然に防いで確実なキー操作が可能となる。
【0034】
なお、本実施形態では、キーボード15に備えられる一部のキー、例えばカーソルキー等において、キートップ部22の中央から突出した突出部21Aを、当該キーの機能に対応した形状としたので、キートップ部22自体に当該キーの機能名を表記する必要がなく、キーボード15の構成をより簡易化できる。
【0035】
なお、本実施形態は、電子辞書に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えばノートブック形のパーソナルコンピュータ等、各種電子機器にも同様に適用可能となる。
【0036】
その他、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0037】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[請求項1]
複数のキーを同一平面に並列した各キーが、
内部にスイッチ電極部を形成したラバードームを含み、上面が平板状で当該上面の一部に上方に突出した突出部を形成したラバーベース部と、
前記ラバーベース部の上面に設置され、平板状の一部に形成された貫通孔を介して前記突出部を上方に突出させるキートップ部と、
を備える、キーボード装置。
[請求項2]
前記キートップ部のキートップ面積は、前記ラバーベース部の設置面積以上である、
請求項1記載のキーボード装置。
[請求項3]
前記キートップ部は、前記ラバーベース部の上面に固定される、
請求項1または2記載のキーボード装置。
[請求項4]
前記ラバーベース部は、前記上面の略中央に上方に突出した突出部を形成し、
前記キートップ部は、平板状の略中央に形成された貫通孔を介して前記突出部を上方に突出させるよう、前記ラバーベース部の上面に設置される
請求項1乃至3いずれかに記載のキーボード装置。
[請求項5]
前記各キーの少なくとも一部のキーは、当該キーに割り当てられた機能に対応した平面形状の前記突出部を有する、
請求項1乃至4いずれかに請求項1記載のキーボード装置。
[請求項6]
前記各キーの端部に位置する少なくとも2つのキーは、他のキーの前記突出部より突出量が大きい突出部を有する、請求項1または2記載のキーボード装置。
[請求項7]
前記キーボード装置は、2つのケースをヒンジ機構を介して接続した折りたたみ式の電子機器の一方のケースの内面側に備えられ、
前記少なくとも2つのキーは、前記電子機器の折りたたみ時に、前記電子機器の他の一方のケースの内面側に設けられた表示画面の外周枠に当接する、
請求項6記載のキーボード装置。
[請求項8]
前記各キーの少なくとも一部のキーは、前記突出部が当該キーに割り当てられた機能に対応した色のラバー素材で形成される、
請求項1乃至7いずれかに記載のキーボード装置。
【符号の説明】
【0038】
10…電子辞書
11…上ケース
12…下ケース
13…ヒンジ部
14…表示部
15…キーボード
21…ラバーベース部
21A…突出部
22…キートップ部
22A…貫通孔