(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20241203BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241203BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
F25B1/00 399Y
F25B47/02 570K
F25B47/02 570G
F25B47/02 510D
(21)【出願番号】P 2020158031
(22)【出願日】2020-09-22
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081530(JP,A)
【文献】特開2017-128223(JP,A)
【文献】特開2019-026111(JP,A)
【文献】特開2019-108031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F25B 1/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒と熱媒体とを熱交換させて前記冷媒を蒸発させるとともに前記熱媒体を冷却する蒸発部(17)と、
前記蒸発部で冷却された前記熱媒体に外気から吸熱させる外気吸熱部(45)と、
前記熱媒体に放熱して前記熱媒体を加熱する熱源(25、82)と、
前記熱源に前記熱媒体を循環させる第1循環回路(20、80)と、
前記蒸発部と前記外気吸熱部との間で前記熱媒体を循環させる第2循環回路(30)と、
前記外気吸熱部の除霜が必要か否かを判定し、
前記外気吸熱部の除霜が必要でないと判定した場合、前記第1循環回路と前記第2循環回路とで別々に熱媒体を循環させ、
前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、前記第1循環回路の前記熱媒体を前記外気吸熱部に循環させるように前記熱媒体の流路を切り替える流路切替部(26、60、83)と、
車室内へ送風される空気に前記熱媒体を放熱させて前記空気を加熱する空気加熱部(22)とを備え、
前記放熱部は、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記熱媒体に放熱させ、
前記熱源は、作動に伴って発生する廃熱を前記熱媒体に放熱する第1熱源(82)と、前記空気を加熱するための熱を発生する第2熱源(25)とを含み、
前記第1循環回路は、前記第1熱源に前記熱媒体が循環することで前記第1熱源の廃熱が前記熱媒体に蓄えられる蓄熱回路(80)と、前記放熱部、前記第2熱源および前記空気加熱部に前記熱媒体を循環させる暖房用回路(20)とを含み、
前記流路切替部は、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、前記蓄熱回路の前記熱媒体が前記第2熱源および前記空気加熱部に循環することなく前記外気吸熱部に循環するように前記熱媒体の流路を切り替え、前記蓄熱回路の前記熱媒体を前記外気吸熱部に循環させた後、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、前記暖房用回路の前記熱媒体が前記第1熱源に循環することなく前記
空気加熱部と前記外気吸熱部とに並列に流れるように前記熱媒体の流路を切り替える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記流路切替部は、車両が走行している場合において、前記外気吸熱部が着霜状態であり、かつ前記第1循環回路の前記熱媒体の温度(TWW、TWH)が所定温度(α1、α2)を上回っている場合、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定する請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記流路切替部は、乗員が車両に乗り込む前の空調を行っている場合において、前記外気吸熱部が着霜状態であり、かつ前記第1循環回路の前記熱媒体の温度(TWW、TWH)が所定温度(α1、α2)を上回っている場合、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定する請求項1
または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記流路切替部は、車両が走行状態から停止状態になった場合において、前記外気吸熱部が着霜状態である場合、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定する請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記流路切替部は、乗員が車両に乗り込む前の空調が終了した場合において、前記外気吸熱部が着霜状態である場合、前記外気吸熱部の除霜が必要であると判定する請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記流路切替部は、前記外気吸熱部を流れる前記熱媒体の温度(TWR)と、前記外気の温度(Tam)とに基づいて、前記外気吸熱部が着霜状態であるか否かを判定する請求項
2ないし5のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記外気吸熱部は、前記蒸発部で冷却された前記熱媒体が流れる第1熱媒体流通部(32)と、前記熱源で加熱された前記熱媒体が流れる第2熱媒体流通部(23)と、前記第1熱媒体流通部と前記第2熱媒体流通部とを熱移動可能に接続する伝熱部材(37)とを有している請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気から吸熱する冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、外気吸熱器としてのLTラジエータを備えるヒートポンプシステムが記載されている。LTラジエータでは、チラーにて冷媒で冷却された冷却水が外気から吸熱を行う。チラーにおいて冷却される際の冷却水温度は0℃以下となる場合があり、冷却水温度は0℃以下となるとLTラジエータの表面において外気中の水分が凝固して霜が付着することとなる(いわゆる着霜)。
【0003】
この従来技術では、水冷コンデンサで加熱された冷却水がLTラジエータに供給されて、LTラジエータの表面に付着した霜が溶かされて除去される(いわゆる除霜)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ヒートポンプシステム(換言すれば、外気から吸熱する冷凍サイクル装置)として、いつどのように除霜すれば最も効率的か、という観点について何ら言及されていない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、外気から吸熱する冷凍サイクル装置において、極力効率的に除霜を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の冷凍サイクル装置は、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
減圧部で減圧された冷媒と熱媒体とを熱交換させて冷媒を蒸発させるとともに熱媒体を冷却する蒸発部(17)と、
蒸発部で冷却された熱媒体に外気から吸熱させる外気吸熱部(45)と、
熱媒体に放熱して熱媒体を加熱する熱源(25、82)と、
熱源に熱媒体を循環させる第1循環回路(20、80)と、
蒸発部と外気吸熱部との間で熱媒体を循環させる第2循環回路(30)と、
外気吸熱部の除霜が必要か否かを判定し、
外気吸熱部の除霜が必要でないと判定した場合、第1循環回路と第2循環回路とで別々に熱媒体を循環させ、
外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、第1循環回路の熱媒体を外気吸熱部に循環させるように熱媒体の流路を切り替える流路切替部(26、60、83)と、
車室内へ送風される空気に熱媒体を放熱させて空気を加熱する空気加熱部(22)とを備え、
放熱部は、圧縮機から吐出された冷媒を熱媒体に放熱させ、
熱源は、作動に伴って発生する廃熱を熱媒体に放熱する第1熱源(82)と、空気を加熱するための熱を発生する第2熱源(25)とを含み、
第1循環回路は、第1熱源に熱媒体が循環することで第1熱源の廃熱が熱媒体に蓄えられる蓄熱回路(80)と、放熱部、第2熱源および空気加熱部に熱媒体を循環させる暖房用回路(20)とを含み、
流路切替部は、外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、蓄熱回路の熱媒体が第2熱源および空気加熱部に循環することなく外気吸熱部に循環するように熱媒体の流路を切り替え、蓄熱回路の熱媒体を外気吸熱部に循環させた後、外気吸熱部の除霜が必要であると判定した場合、暖房用回路の熱媒体が第1熱源に循環することなく空気加熱部と外気吸熱部とに並列に流れるように熱媒体の流路を切り替える。
【0008】
これによると、外気吸熱部の除霜が必要であるときに確実に除霜を行うことができるので、効率的に除霜を行うことができる。
【0009】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図2】第1実施形態における冷凍サイクル装置の電気制御部を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における冷凍サイクル装置の廃熱除霜モード時の作動状態を示す全体構成図である。
【
図4】第1実施形態における冷凍サイクル装置の暖房熱除霜モード時の作動状態を示す全体構成図である。
【
図5】第1実施形態における制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における制御プログラムの制御処理において共通ラジエータの着霜判定に用いられる判定図である。
【
図7】第1実施形態における冷凍サイクル装置の一作動例を示すタイムチャートである。
【
図8】第1実施形態における冷凍サイクル装置の他の作動例を示すタイムチャートである。
【
図9】第2実施形態における冷凍サイクル装置の全体構成図である。
【
図10】第2実施形態における冷凍サイクル装置の暖房熱除霜モード時の作動状態を示す全体構成図である。
【
図11】第3実施形態における制御プログラムの制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態における冷凍サイクル装置の一作動例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0012】
(第1実施形態)
以下、実施形態について図に基づいて説明する。
図1に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。
【0013】
冷凍サイクル装置10は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されている。電気自動車は、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。ハイブリッド自動車は、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。
【0014】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0015】
第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17は、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13、空気側蒸発器14および定圧弁15に対して並列に配置されている。
【0016】
冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁16、冷却水側蒸発器17の順に循環する。
【0017】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11の電動モータは、
図2に示す制御装置60によって制御される。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0018】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させる高圧側熱交換器である。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒と冷却水とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて冷却水を加熱する放熱部である。
【0019】
電気自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のモータールーム内に配置されている。モータールームは、走行用電動モータが収容される空間である。ハイブリッド自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のエンジンルーム内に配置されている。エンジンルームは、エンジンが収容される空間である。
【0020】
凝縮器12は、凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cを有している。凝縮器12において冷媒は凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cの順番に流れる。
【0021】
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる。
【0022】
レシーバ12bは、凝縮器12から流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を下流側へ流出させるとともに、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。
【0023】
過冷却部12cは、レシーバ12bから流出した液相冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する。
【0024】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、冷却水が循環する第1循環回路である。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0025】
第1膨張弁13は、過冷却部12cから流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0026】
第1膨張弁13は、空気側蒸発器14に冷媒が流れる状態と冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第1膨張弁13は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0027】
第1膨張弁13は機械式の温度膨張弁であってもよい。第1膨張弁13が機械式の温度膨張弁である場合、第1膨張弁13側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第1膨張弁13とは別個に設けられている必要がある。
【0028】
空気側蒸発器14は、第1膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器である。空気側蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。空気側蒸発器14は、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0029】
定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。定圧弁15で圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0030】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0031】
第2膨張弁16は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁16は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁16は冷媒流路を全閉可能になっている。
【0032】
第2膨張弁16は、冷却水側蒸発器17に冷媒が流れる状態と流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第2膨張弁16は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0033】
第2膨張弁16は機械式の温度膨張弁であってもよい。第2膨張弁16が機械式の温度膨張弁である場合、第2膨張弁16側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第2膨張弁16とは別個に設けられている必要がある。
【0034】
冷却水側蒸発器17は、第2膨張弁16から流出した冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発部である。冷却水側蒸発器17では、冷媒が低温冷却水回路30の冷却水から吸熱する。冷却水側蒸発器17は、低温冷却水回路30の冷却水を冷却する熱媒体冷却器である。冷却水側蒸発器17で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0035】
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温の熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。低温冷却水回路30は、冷却水が循環する第2循環回路である。
【0036】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、ヒータコア22、共通ラジエータ45、リザーブタンク24および電気ヒータ25が配置されている。
【0037】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が一定となる電動式のポンプであるが、高温側ポンプ21は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0038】
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱部である。ヒータコア22では、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。ヒータコア22は、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を利用する熱利用部である。高温冷却水回路20は、ヒータコア22に冷却水を循環させる暖房用回路である。
【0039】
共通ラジエータ45は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。共通ラジエータ45は、高温冷却水回路20と低温冷却水回路30とで共通のラジエータである。
【0040】
凝縮器12および高温側ポンプ21は、凝縮器流路20aに配置されている。凝縮器流路20aは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0041】
凝縮器12における冷却水の流れ方向は、凝縮器12における冷媒の流れ方向と対向している。すなわち、凝縮器12において冷却水は、過冷却部12c、凝縮部12aの順番に流れる。
【0042】
ヒータコア22は、ヒータコア流路20bに配置されている。ヒータコア流路20bは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0043】
共通ラジエータ45は、ラジエータ流路20cに配置されている。ラジエータ流路20cは、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22に対して並列に流れる流路である。
【0044】
高温冷却水回路20の分岐部20dには、第1三方弁26が配置されている。分岐部20dは、凝縮器流路20aからヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとに分岐する分岐部である。
【0045】
第1三方弁26は、高温冷却水回路20における冷却水の流路を切り替える流路切替部である。第1三方弁26は、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとを開閉する。第1三方弁26は、ヒータコア流路20bの開度とラジエータ流路20cの開度とを調整する。第1三方弁26は、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの開度比を調整する。第1三方弁26は、ヒータコア22を流れる冷却水と共通ラジエータ45を流れる冷却水との流量比を調整する。
【0046】
高温冷却水回路20の合流部20eには、リザーブタンク24が配置されている。合流部20eは、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとから凝縮器流路20aに合流する合流部である。
【0047】
リザーブタンク24は、余剰冷却水を貯留する貯留部である。リザーブタンク24に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0048】
リザーブタンク24は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0049】
リザーブタンク24は、冷却水中に混在する気泡を冷却水から分離させる気液分離機能を有している。
【0050】
電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の分岐部20dの下流側かつヒータコア22の上流側に配置されている。電気ヒータ25は、バッテリから電力が供給されることによってジュール熱を発生して冷却水を加熱する熱源機器である。電気ヒータ25は第2熱源である。電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の冷却水を補助的に加熱する。電気ヒータ25は、制御装置60によって制御される。
【0051】
低温冷却水回路30には、低温側ポンプ31、冷却水側蒸発器17および共通ラジエータ45が配置されている。
【0052】
低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。共通ラジエータ45は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる外気吸熱部である。
【0053】
低温冷却水回路30の一部は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cと合流している。共通ラジエータ45は、低温冷却水回路30のうち高温冷却水回路20のラジエータ流路20cと合流している部分に配置されている。したがって、共通ラジエータ45には、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水と、低温冷却水回路30の冷却水の両方が流通可能になっている。
【0054】
共通ラジエータ45および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には共通ラジエータ45に走行風を当てることができるようになっている。
【0055】
室外送風機40は、共通ラジエータ45へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機40は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室外送風機40の作動は、制御装置60によって制御される。
【0056】
共通ラジエータ45および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時には共通ラジエータ45に走行風を当てることができるようになっている。
【0057】
空気側蒸発器14およびヒータコア22は、室内空調ユニット50の空調ケーシング51に収容されている。室内空調ユニット50は、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。空調ケーシング51は、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0058】
ヒータコア22は、空調ケーシング51内の空気通路において、空気側蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシング51には、内外気切替箱52と室内送風機53とが配置されている。
【0059】
内外気切替箱52は、空調ケーシング51内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。室内送風機53は、内外気切替箱52を通して空調ケーシング51内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。室内送風機53の作動は、制御装置60によって制御される。
【0060】
空調ケーシング51内の空気通路において空気側蒸発器14とヒータコア22との間には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、空気側蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と冷風バイパス通路55を流れる冷風との風量割合を調整する。
【0061】
冷風バイパス通路55は、空気側蒸発器14を通過した冷風がヒータコア22をバイスして流れる空気通路である。
【0062】
エアミックスドア54は、空調ケーシング51に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。エアミックスドア54の開度位置を調整することによって、空調ケーシング51から車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0063】
エアミックスドア54の回転軸は、サーボモータ56によって駆動される。エアミックスドア用サーボモータ56の作動は、制御装置60によって制御される。
【0064】
エアミックスドア54は、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0065】
エアミックスドア54によって温度調整された空調風は、空調ケーシング51に形成された吹出口57から車室内へ吹き出される。
【0066】
蓄熱回路80には、蓄熱用ポンプ81、廃熱機器82、共通ラジエータ45および第2三方弁83が配置されている。
【0067】
蓄熱回路80の冷却水は、熱媒体としての流体である。蓄熱回路80の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、蓄熱回路80の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。蓄熱回路80は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0068】
蓄熱用ポンプ81は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。蓄熱用ポンプ81は電動式のポンプである。
【0069】
廃熱機器82は、作動に伴って廃熱を発生する熱源機器である。廃熱機器82は第1熱源である。例えば、廃熱機器82はインバータである。廃熱機器82は、モータジェネレータや充電器等であってもよい。蓄熱用ポンプ81および廃熱機器82は、廃熱機器流路80aに配置されている。
【0070】
共通ラジエータ45は、除霜流路80bに配置されている。除霜流路80bは、蓄熱回路80の冷却水が流れる流路である。循環流路80cは、蓄熱回路80の冷却水が除霜流路80bに対して並列に流れる流路である。
【0071】
除霜流路80bの一部は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cおよび低温冷却水回路30と合流している。共通ラジエータ45は、除霜流路80bのうち高温冷却水回路20のラジエータ流路20cおよび低温冷却水回路30と合流している部分に配置されている。したがって、共通ラジエータ45には、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水と、低温冷却水回路30の冷却水と、蓄熱回路80の除霜流路80bの冷却水とが流通可能になっている。
【0072】
蓄熱回路80の分岐部80dには、第2三方弁83が配置されている。分岐部80dは、廃熱機器流路80aから除霜流路80bと循環流路80cとに分岐する分岐部である。除霜流路80bおよび循環流路80cは、合流部80eにて廃熱機器流路80aに合流する。
【0073】
第2三方弁83は、蓄熱回路80における冷却水の流路を切り替える流路切替部である。第2三方弁83は、除霜流路80bと循環流路80cとを開閉する。第2三方弁83は、除霜流路80bの開度と循環流路80cの開度とを調整する。第2三方弁83は、除霜流路80bと循環流路80cとの開度比を調整する。第2三方弁83は、除霜流路80bを流れる冷却水と循環流路80cを流れる冷却水との流量比を調整する。
【0074】
図2に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0075】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁13、第2膨張弁16、第1三方弁26、室外送風機40、室内送風機53、エアミックスドア用サーボモータ56および第2三方弁83等である。
【0076】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第1膨張弁13および第2膨張弁16を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、絞り制御部である。
【0077】
制御装置60のうち第1三方弁26および第2三方弁83を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、三方弁制御部である。制御装置60、第1三方弁26および第2三方弁83は、冷却水の流路を切り替える流路切替部である。
【0078】
制御装置60のうち室外送風機40を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。
【0079】
制御装置60のうち室内送風機53を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、空気送風能力制御部である。
【0080】
制御装置60のうちエアミックスドア用サーボモータ56を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、風量割合制御部である。
【0081】
制御装置60の入力側には、種々の制御用センサ群が接続されている。種々の制御用センサ群は、内気温度センサ61、外気温度センサ62、日射量センサ63、高温冷却水温度センサ64、ラジエータ温度センサ65、蓄熱冷却水温度センサ66等である。
【0082】
内気温度センサ61は車室内温度Trを検出する。外気温度センサ62は外気温Tamを検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0083】
高温冷却水温度センサ64は、高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHを検出する。例えば、高温冷却水温度センサ64は、電気ヒータ25から流出した冷却水の温度を検出する。
【0084】
ラジエータ温度センサ65は、共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRを検出する。蓄熱冷却水温度センサ66は、蓄熱回路80の冷却水の温度TWWを検出する。例えば、蓄熱冷却水温度センサ66は、廃熱機器82から流出した冷却水の温度を検出する。
【0085】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0086】
各種操作スイッチは、オートスイッチ、エアコンスイッチ、温度設定スイッチ等である。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転の設定および解除を行うスイッチである。エアコンスイッチは、室内空調ユニット50にて空気の冷却を行うか否かを設定するスイッチである。温度設定スイッチは、車室内の設定温度を設定するスイッチである。
【0087】
次に、上記構成における作動を説明する。以下では、制御装置60は、操作パネル70のオートスイッチが乗員によってオンされている場合の作動について説明する。操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオンされている場合、目標吹出温度TAO等と
図3に示す制御マップとに基づいて運転モードを切り替える。運転モードとしては、少なくとも冷房モードおよび除湿暖房モードがある。
【0088】
目標吹出温度TAOは、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、目標吹出温度TAOを以下の数式に基づいて算出する。
【0089】
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、Tsetは操作パネル70の温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温度センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0090】
目標吹出温度TAOの低温域では冷房モードに切り替える。目標吹出温度TAOの高温域では除湿暖房モードに切り替える。
【0091】
除湿暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿し、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気をヒータコア22で加熱することによって車室内を除湿暖房する。
【0092】
制御装置60は、操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオフされており且つ目標吹出温度TAOが高温域にある場合、暖房モードに切り替える。
【0093】
暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿することなくヒータコア22で加熱することによって車室内を暖房する。
【0094】
次に、冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードにおける作動について説明する。冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードでは、制御装置60は、目標吹出温度TAOや上述のセンサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(換言すれば、各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0095】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および蓄熱用ポンプ81を作動させ、低温側ポンプ31を停止させる。冷房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を絞り開度で開弁させ、第2膨張弁16を閉弁させる。冷房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cの両方が開くように第1三方弁26を制御し、除霜流路80bを閉じて循環流路80cを開けるように第2三方弁83を制御する。
【0096】
これにより、冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、以下のように冷媒が流れる。すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0097】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0098】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0099】
このように、冷房モードでは、空気側蒸発器14にて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0100】
冷房モード時の高温冷却水回路20では、共通ラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環して共通ラジエータ45で冷却水から外気に放熱される。
【0101】
このとき、ヒータコア22にも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、ヒータコア22における冷却水から空気への放熱量はエアミックスドア54によって調整される。
【0102】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54によって温度調整された空調風が目標吹出温度TAOとなるように決定される。具体的には、エアミックスドア54の開度が、目標吹出温度TAO、空気側蒸発器14の温度、および高温冷却水回路20の冷却水の温度TW等に基づいて決定される。
【0103】
冷房モード時の蓄熱回路80では、廃熱機器82に冷却水が循環して廃熱機器82の廃熱が冷却水に蓄えられる。
【0104】
(2)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21、低温側ポンプ31および蓄熱用ポンプ81を作動させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13および第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bが開き、ラジエータ流路20cが閉じるように第1三方弁26を制御し、除霜流路80bを閉じて循環流路80cを開けるように第2三方弁83を制御する。
【0105】
除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、以下のように冷媒が流れる。すなわち、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0106】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0107】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0108】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0109】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0110】
除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、凝縮器12とヒータコア22との間で冷却水が循環するが共通ラジエータ45には冷却水が循環しない。
【0111】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54がヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0112】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0113】
このとき、第1三方弁26がラジエータ流路20cを閉じているので、共通ラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、共通ラジエータ45で冷却水から外気に放熱されない。
【0114】
除湿暖房モード時の低温冷却水回路30では、共通ラジエータ45に低温冷却水回路30の冷却水が循環して共通ラジエータ45にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0115】
このように、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0116】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気が加熱される。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0117】
除湿暖房モード時の蓄熱回路80では、廃熱機器82に冷却水が循環して廃熱機器82の廃熱が冷却水に蓄えられる。
【0118】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21、低温側ポンプ31および蓄熱用ポンプ81を作動させる。暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を閉弁させ、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bが開きラジエータ流路20cが閉じるように第1三方弁26を制御し、除霜流路80bを閉じて循環流路80cを開けるように第2三方弁83を制御する。
【0119】
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、以下のように冷媒が流れる。すなわち、冷凍サイクル装置10では、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0120】
このとき、第1膨張弁13が閉弁されているので、空気側蒸発器14に冷媒が流れない。したがって、空気側蒸発器14で空気が冷却除湿されない。
【0121】
暖房モード時の高温冷却水回路20では、凝縮器12とヒータコア22との間で冷却水が循環するが共通ラジエータ45には冷却水が循環しない。
【0122】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54がヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0123】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14を通過した空気(すなわち、空気側蒸発器14で冷却除湿されていない空気)がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0124】
このとき、第1三方弁26がラジエータ流路20cを閉じているので、共通ラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、共通ラジエータ45で冷却水から外気に放熱されない。
【0125】
暖房モード時の低温冷却水回路30では、共通ラジエータ45に低温冷却水回路30の冷却水が循環して共通ラジエータ45にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0126】
このように、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0127】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿されることなく空気側蒸発器14にてを通過した空気を加熱する。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0128】
暖房モード時の蓄熱回路80では、廃熱機器82に冷却水が循環して廃熱機器82の廃熱が冷却水に蓄えられる。
【0129】
(4)除霜モード
除霜モードは、除湿暖房モード後または暖房モード後に共通ラジエータ45の除霜を行う。除湿暖房モードまたは暖房モードでは、共通ラジエータ45で低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱するので、共通ラジエータ45の温度が氷点下になると共通ラジエータ45に着霜が生じる。そこで、共通ラジエータ45に着霜が生じた場合、除霜モードを実行して共通ラジエータ45を除霜する。
【0130】
除霜モードには、廃熱除霜モードと、暖房熱除霜モードとがある。廃熱除霜モードでは、廃熱機器82の廃熱を利用して共通ラジエータ45を除霜する。暖房除霜モードでは、暖房のために作られた熱を利用して共通ラジエータ45を除霜する。
【0131】
(4-1)廃熱除霜モード
廃熱除霜モードでは、制御装置60は、蓄熱用ポンプ81を作動させ、圧縮機11、低温側ポンプ31、室外送風機40および室内送風機53を停止させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bを開けてラジエータ流路20cを閉じるように第1三方弁26を制御し、除霜流路80bを開けて循環流路80cを閉じるように第2三方弁83を制御する。
【0132】
圧縮機11を停止させるので、除霜モードの冷凍サイクル装置10には冷媒が流れない。低温側ポンプ31を停止させるので、除霜モード時の低温冷却水回路30に冷却水が循環しない。
【0133】
廃熱除霜モード時の蓄熱回路80では、
図3の太実線に示すように、廃熱機器82と共通ラジエータ45との間で蓄熱回路80の冷却水が循環する。
【0134】
具体的には、蓄熱用ポンプ81から吐出された冷却水が廃熱機器82を通過して共通ラジエータ45を流れ高温側ポンプ21に吸入される。これにより、廃熱機器82で加熱された高温の冷却水が共通ラジエータ45に流入する。
【0135】
室外送風機40を停止させているので、共通ラジエータ45に空気が流れない。したがって、共通ラジエータ45では冷却水が外気によって冷却されない。
【0136】
このように共通ラジエータ45を流れる蓄熱回路80の冷却水の熱によって、共通ラジエータ45の表面に付着した霜を融かすことができる。すなわち、廃熱機器82の廃熱を除霜に有効利用できる。
【0137】
(4-2)暖房熱除霜モード
暖房熱除霜モードでは、制御装置60は、高温側ポンプ21および蓄熱用ポンプ81を作動させ、圧縮機11、低温側ポンプ31、室外送風機40および室内送風機53を停止させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cの両方を開けるように第1三方弁26を制御し、除霜流路80bを閉じて循環流路80cを開けるように第2三方弁83を制御する。
【0138】
圧縮機11を停止させるので、除霜モードの冷凍サイクル装置10には冷媒が流れない。低温側ポンプ31を停止させるので、除霜モード時の低温冷却水回路30に冷却水が循環しない。
【0139】
暖房熱除霜モード時の高温冷却水回路20では、
図4の太実線に示すように、凝縮器12とヒータコア22、電気ヒータ25および共通ラジエータ45との間で高温冷却水回路20の冷却水が循環する。
【0140】
具体的には、高温側ポンプ21から吐出された冷却水が凝縮器12を通過して分岐部20dでヒータコア22側と共通ラジエータ45側とに分岐し、ヒータコア22および電気ヒータ25と共通ラジエータ45とを並列に流れて合流部20eで合流し、高温側ポンプ21に吸入される。これにより、凝縮器12内の高温の冷却水が共通ラジエータ45に流入する。
【0141】
室内送風機53を停止させているので、ヒータコア22に空気が流れない。したがって、ヒータコア22内の高温の冷却水は空気で冷却されることなく共通ラジエータ45に流入する。
【0142】
室外送風機40を停止させているので、共通ラジエータ45に空気が流れない。したがって、共通ラジエータ45では冷却水が外気によって冷却されない。
【0143】
このように共通ラジエータ45を流れる高温冷却水回路20の冷却水の熱によって、共通ラジエータ45の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0144】
共通ラジエータ45で冷却された冷却水は、ヒータコア22から流出した冷却水と合流部20eで合流した後、凝縮器12に流入する。
【0145】
このように冷却水が循環することにより、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を除霜に有効利用できる。凝縮器12で加熱された冷却水の熱が除霜に必要な熱に対して不足する場合、電気ヒータ25が発生する熱によって除霜できる。
【0146】
暖房熱除霜モード時の蓄熱回路80では、
図4の太実線に示すように、廃熱機器82に冷却水が循環して廃熱機器82の廃熱が冷却水に蓄えられる。
【0147】
制御装置60は、
図5のフローチャートに示す制御処理を実行することにより、廃熱除霜モードおよび暖房熱除霜モードへの切り替えを行う。
【0148】
ステップS100では、イグニッションスイッチ(すなわち車両システムの起動スイッチ)がONされ且つ空調がONされているか否かが判定される。例えば、操作パネル70のオートスイッチやエアコンスイッチがONされている場合、空調がONされていると判定する。
【0149】
ステップS100にてイグニッションスイッチがONされ且つ空調がONされていると判定された場合、ステップS110へ進む。ステップS100にてイグニッションスイッチがONされ且つ空調がONされていると判定されなかった場合、ステップS200へ進む。
【0150】
ステップS110では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っているか否かが判定される。例えば、共通ラジエータ45が着霜しているか否かは、共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRと外気温Tamとに基づいて
図6に示す制御特性図を用いて判定される。
【0151】
すなわち、外気温Tamと共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRとの差が大きい場合、共通ラジエータ45が着霜していると判定する。共通ラジエータ45が着霜している場合、共通ラジエータ45の性能が低下するため、制御装置60は必要な吸熱量を確保するために圧縮機11の回転数を増加させてサイクルの低圧を低下させる。サイクルの低圧が低下すると冷却水側蒸発器17で冷却された冷却水の温度(すなわち共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWR)が低下する。したがって、外気温Tamと共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRとの差が大きい場合、共通ラジエータ45が着霜していると推定できる。
【0152】
廃熱除霜温度α1は、共通ラジエータ45の表面に付着した霜を融かすことのできる冷却水の温度(所定温度)であり、予め制御装置60に記憶されている。
【0153】
ステップS110にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っていると判定されなかった場合、ステップS120へ進む。ステップS110にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っていると判定された場合、ステップS130へ進む。
【0154】
ステップS120では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされているか否かが判定される。ステップS120にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされていると判定された場合、ステップS130へ進む。ステップS120にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされていると判定されなかった場合、ステップS100へ戻る。
【0155】
ステップS130では、廃熱除霜モードに切り替えてステップS140へ進む。
【0156】
ステップS140では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っているか否かが判定される。暖房熱除霜温度α2は、共通ラジエータ45の表面に付着した霜を融かすことのできる冷却水の温度(所定温度)であり、予め制御装置60に記憶されている。
【0157】
ステップS140にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っていると判定されなかった場合、ステップS150へ進む。ステップS140にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っていると判定された場合、ステップS160へ進む。
【0158】
ステップS150では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされているか否かが判定される。ステップS150にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされていると判定された場合、ステップS160へ進む。ステップS150にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつイグニッションスイッチがOFFされていると判定されなかった場合、ステップS100へ戻る。ステップS160では、暖房熱除霜モードに切り替えてステップS100へ戻る。
【0159】
ステップS200では、プレ空調がONされているか否かが判定される。プレ空調は、乗員が乗り込む前(換言すればイグニッションスイッチがOFFの時)に開始される空調運転のことである。プレ空調は、乗員が操作パネル70やリモコン端末によって、制御装置60に、車室内の目標温度Tset、プレ空調開始時刻等を記憶させることによって実行される。
【0160】
ステップS200にてプレ空調がONされていると判定された場合、ステップS210へ進む。ステップS200にてプレ空調がONされていると判定されなかった場合、ステップS100へ戻る。
【0161】
ステップS210では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っているか否かが判定される。例えば、共通ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRと外気温Tamとを比較して、共通ラジエータ45が着霜しているか否かが判定される。
【0162】
ステップS210にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っていると判定されなかった場合、ステップS220へ進む。ステップS210にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っていると判定された場合、ステップS230へ進む。
【0163】
ステップS220では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされているか否かが判定される。ステップS220にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされていると判定された場合、ステップS230へ進む。ステップS120にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされていると判定されなかった場合、ステップS100へ戻る。
【0164】
ステップS230では、廃熱除霜モードに切り替えてステップS240へ進む。
【0165】
ステップS240では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っているか否かが判定される。
【0166】
ステップS240にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っていると判定されなかった場合、ステップS250へ進む。ステップS240にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつ高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っていると判定された場合、ステップS260へ進む。
【0167】
ステップS250では、共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされているか否かが判定される。ステップS250にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされていると判定された場合、ステップS260へ進む。ステップS250にて共通ラジエータ45が着霜しており、かつプレ空調がOFFされていると判定されなかった場合、ステップS100へ戻る。ステップS260では、暖房熱除霜モードに切り替えてステップS100へ戻る。
【0168】
図7は、本実施形態の制御結果の一例を示すタイムチャートである。
図7は、走行中、停車時およびプレ空調時に廃熱除霜モードが実行された場合の冷凍サイクル装置10の成績係数(いわゆるCOP)または性能の時間推移を示している。共通ラジエータ45に着霜が進行することによって成績係数または性能が低下するが、廃熱除霜モードを実行することによって共通ラジエータ45が除霜されて成績係数または性能が回復する。
【0169】
図8は、廃熱除霜モードから暖房熱除霜モードに切り替えられた場合の冷凍サイクル装置10の成績係数(いわゆるCOP)または性能の時間推移を示している。廃熱除霜モードで除霜しきれなくても暖房熱除霜モードによって除霜を継続できるので、廃熱除霜モードのみを実行する場合と比較して成績係数または性能を高い水準まで回復できる。
【0170】
本実施形態では、制御装置60は、共通ラジエータ45の除霜が必要か否かを判定する。共通ラジエータ45の除霜が必要でないと判定した場合、蓄熱回路80と高温冷却水回路20と低温冷却水回路30とで別々に冷却水を循環させる。共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定した場合、蓄熱回路80または高温冷却水回路20の冷却水を共通ラジエータ45に循環させるように第1三方弁26または第2三方弁を制御する。
【0171】
これによると、共通ラジエータ45の除霜が必要であるときに確実に除霜を行うことができるので、効率的に除霜を行うことができる。
【0172】
本実施形態では、蓄熱回路80では、廃熱機器82に冷却水が循環することで廃熱機器82の廃熱が冷却水に蓄えられる。これによると、廃熱を除霜に有効利用できるので、省エネルギーで除霜を行うことができる。
【0173】
本実施形態では、制御装置60は、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定した場合、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22と共通ラジエータ45とに並列に流れるように第1三方弁26または第2三方弁を制御する。
【0174】
これによると、暖房熱の一部を除霜に利用できるので、確実に除霜を行うことができる。
【0175】
本実施形態では、制御装置60は、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定した場合、蓄熱回路80の冷却水を共通ラジエータ45に循環させるように第1三方弁26または第2三方弁を制御する。制御装置60は、蓄熱回路80の冷却水を共通ラジエータ45に循環させた後、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定した場合、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22と共通ラジエータ45とに並列に流れるように第1三方弁26または第2三方弁を制御する。
【0176】
これによると、廃熱で除霜しきれない場合、暖房熱で除霜するので、省エネルギーかつ確実に除霜を行うことができる。
【0177】
本実施形態では、制御装置60は、車両が走行している場合において、共通ラジエータ45が着霜状態であり、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っている、または高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っている場合、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定する。
【0178】
これにより、共通ラジエータ45の除霜が必要であることを適切に判定できるので、効率的に除霜を行うことができる。
【0179】
本実施形態では、制御装置60は、プレ空調を行っている場合において、共通ラジエータ45が着霜状態であり、かつ蓄熱回路80の冷却水の温度TWWが廃熱除霜温度α1を上回っている、または高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHが暖房熱除霜温度α2を上回っている場合、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定する。これにより、乗員に対する空調の快適性を極力損なうことなく除霜できる。
【0180】
本実施形態では、制御装置60は、車両が走行状態から停止状態になった場合において、共通ラジエータ45が着霜状態である場合、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定する。
【0181】
これにより、車両が走行している間に作られた熱の残りを有効利用して除霜できるので、省エネルギーで除霜を行うことができる。
【0182】
本実施形態では、制御装置60は、プレ空調が終了した場合において、共通ラジエータ45が着霜状態である場合、共通ラジエータ45の除霜が必要であると判定する。
【0183】
これにより、乗員が車両に乗り込む前の空調のために作られた熱の残りを有効利用して除霜できるので、省エネルギーで除霜を行うことができる。
【0184】
本実施形態では、制御装置60は、共通ラジエータ45を流れる冷却水の温度TWRと、外気の温度Tamとに基づいて、共通ラジエータ45が着霜状態であるか否かを判定する。これにより、簡単な制御で正確に着霜状態を判定できる。
【0185】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cと低温冷却水回路30と蓄熱回路80の除霜流路80bとが合流していて、この合流部分に共通ラジエータ45が配置されている。本実施形態では、
図9に示すように、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cは、低温冷却水回路30および蓄熱回路80の除霜流路80bと合流しておらず、共通ラジエータ45は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cに配置される高温側ラジエータ23と、低温冷却水回路30と除霜流路80bとの合流部分に配置される低温側ラジエータ32とを有している。
【0186】
低温側ラジエータ32は、共通ラジエータ45の第1熱媒体流通部であり、高温側ラジエータ23は、共通ラジエータ45の第2熱媒体流通部である。
【0187】
高温側ラジエータ23は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。低温側ラジエータ32は、低温冷却水回路30の冷却水と外気とを熱交換させて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱させる外気吸熱部である。高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィン37によって互いに接合されている。
【0188】
共通のフィン37は、冷却水と空気との熱交換を促進する熱交換促進部材である。共通のフィン37は、金属製(例えばアルミニウム製)の部材である。共通のフィン37は、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とを金属で結合することによって、高温側ラジエータ23から低温側ラジエータ32へ熱を移動させる結合部である。共通のフィン37は、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とを熱移動可能に接続する伝熱部材である。
【0189】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、外気の流れ方向において、この順番に直列に配置されている。高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32には、室外送風機40によって外気が送風される。
【0190】
冷房モードでは、制御装置60は、ヒータコア流路20bおよびラジエータ流路20cの両方が開くように第1三方弁26を制御する。これにより、冷房モードでは、高温側ラジエータ23に高温冷却水回路20の冷却水が循環して高温側ラジエータ23で冷却水から外気に放熱される。
【0191】
除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1三方弁26は、ヒータコア流路20bが開き、ラジエータ流路20cが閉じるように第1三方弁26を制御する。これにより、除湿暖房モードでは、低温側ラジエータ32は低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱する。
【0192】
暖房モードでは、制御装置60は、第1三方弁26は、ヒータコア流路20bが開きラジエータ流路20cが閉じるように第1三方弁26を制御する。これにより、暖房モードでは、低温側ラジエータ32にて低温冷却水回路30の冷却水が外気から吸熱する。
【0193】
廃熱除霜モードでは、制御装置60は、低温側ポンプ31を停止させ、蓄熱回路80の廃熱機器流路80aの冷却水が低温側ラジエータ32に流通するように第2三方弁83を制御する。これにより、低温側ラジエータ32を流れる蓄熱回路80の冷却水の熱によって、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0194】
暖房熱除霜モードでは、制御装置60は、低温側ポンプ31を停止させ、
図10の太線矢印に示すように、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水が高温側ラジエータ23に流通するように第1三方弁26を制御する。
【0195】
高温側ラジエータ23および低温側ラジエータ32は、共通のフィン37によって互いに熱移動可能に接続されているので、高温側ラジエータ23を流れる高温冷却水回路20の冷却水の熱がフィン37を介して低温側ラジエータ32に移動する。
【0196】
このように低温側ラジエータ32に供給された熱によって、低温側ラジエータ32の表面に付着した霜を融かすことができる。
【0197】
本実施形態では、共通ラジエータ45は、冷却水側蒸発器17で冷却された冷却水が流れる低温側ラジエータ32と、電気ヒータ25で加熱された冷却水が流れる高温側ラジエータ23と、低温側ラジエータ32と高温側ラジエータ23とを熱移動可能に接続するフィン37とを有している。
【0198】
これにより、冷却水側蒸発器17で冷却された冷却水と電気ヒータ25で加熱された冷却水とが混在することなく除霜できるので、温度帯の異なる冷却水を効率的に管理できる。
【0199】
(第3実施形態)
上記実施形態では、廃熱除霜モードで除霜しきれない場合、廃熱除霜モードから暖房熱除霜モードへ移行して除霜能力を向上させるが、本実施形態では、
図11に示すように、廃熱除霜モードを実行せず、暖房熱除霜モードのみで除霜する。
【0200】
図11に示す本実施形態のフローチャートは、
図5に示す上記第1実施形態のフローチャートに対して、廃熱暖房モードに関するステップを削除したものである。
【0201】
図12は、走行中、停車時およびプレ空調時に暖房熱除霜モードが実行された場合の冷凍サイクル装置10の成績係数(いわゆるCOP)または性能の時間推移を示している。暖房熱の一部が暖房ではなく除霜に費やさせることから一時的に成績係数または性能が低下するが、共通ラジエータ45が除霜されることによって成績係数または性能が回復する。
【0202】
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせ可能である。上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0203】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。
【0204】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0205】
また、上記実施形態の冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0206】
(3)上記第2実施形態では、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが別々のラジエータになっていて、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが共通のフィン37によって互いに接合されているが、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0207】
例えば、高温側ラジエータ23の冷却水タンクと低温側ラジエータ32の冷却水タンクとが互いに一体化されていることによって、高温側ラジエータ23と低温側ラジエータ32とが1つのラジエータで構成されていてもよい。
【0208】
(4)上記実施形態では、電気ヒータ25が高温冷却水回路20の分岐部20dの下流側かつヒータコア22の上流側に配置されているが、高温冷却水回路20における電気ヒータ25の位置はこれに限定されるものではない。
【0209】
例えば、電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の凝縮器12の下流側かつ分岐部20dの上流側に配置されていてもよい。この場合、暖房熱除霜モードにて第1三方弁26でヒータコア流路20bを閉じてヒータコア流路20bの冷却水流れを止めてもよい。
【符号の説明】
【0210】
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱部)
16 第2膨張弁(減圧部)
17 冷却水側蒸発器(蒸発部)
20 高温冷却水回路(第1循環回路、暖房用回路)
25 電気ヒータ(熱源、第2熱源)
26 第1三方弁(流路切替部)
30 低温冷却水回路(第2循環回路)
45 共通ラジエータ(外気吸熱部)
60 制御装置(流路切替部)
80 蓄熱回路(第1循環回路、蓄熱回路)
82 廃熱機器(熱源、第1熱源)
83 第2三方弁(流路切替部)