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特許7596699シミュレーションシステム及びピッキングステーションのレイアウト設計方法
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  • 特許-シミュレーションシステム及びピッキングステーションのレイアウト設計方法 図1
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  • 特許-シミュレーションシステム及びピッキングステーションのレイアウト設計方法 図4
  • 特許-シミュレーションシステム及びピッキングステーションのレイアウト設計方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】シミュレーションシステム及びピッキングステーションのレイアウト設計方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241203BHJP
   B65G 1/137 20060101ALI20241203BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20241203BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20241203BHJP
   G06Q 10/08 20240101ALI20241203BHJP
【FI】
G06F30/20
B65G1/137 E
G06F30/10
G06T19/00 300B
G06Q10/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020169226
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061305
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 富男
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-133867(JP,A)
【文献】特開2015-199562(JP,A)
【文献】特開2003-104519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0060462(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0287357(US,A1)
【文献】特開2003-002417(JP,A)
【文献】特開2013-245029(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002686(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/139810(WO,A1)
【文献】特開2007-264890(JP,A)
【文献】特開2015-160696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/20
B65G 1/137
G06F 30/10
G06T 19/00
G06Q 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッキングステーションを仮想空間内に3次元で表現する仮想空間作成部と、
ヘッドマウントディスプレイを装着した作業者が、前記仮想空間内の前記ピッキングステーションにおいて、仮想のオーダーに基づいて物品を一の容器から他の容器へピッキングするピッキング作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測する計測部と、
前記ピッキング作業にかかった時間に基づいて、前記ピッキングステーションの処理能力を算出する算出部と、
仮想空間内における、レイアウト、又は/及び、寸法の異なる複数のピッキングステーションについて、前記処理能力を前記算出部が算出した後、各ピッキングステーションの前記処理能力を互いに比較する、レイアウト決定部と
を備え
前記仮想空間にはピッキング完了スイッチが設けられており、
前記ピッキング作業にかかった時間は、前記物品がピッキング作業位置に到着してから、仮想のオーダーに基づいて前記作業者がピッキングを行い、前記オーダーに含まれる全ての物品のピッキングが完了してから前記作業者が前記ピッキング完了スイッチを操作するまでの時間である、シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記ピッキング作業にかかった時間に基づいて、前記作業者のピッキング作業能力を判定する判定部をさらに備えている、請求項に記載のシミュレーションシステム。
【請求項3】
ピッキングステーションを仮想空間内に3次元で表現するステップと、
ヘッドマウントディスプレイを装着した作業者が、前記仮想空間内の前記ピッキングステーションにおいて、仮想のオーダーに基づいて物品を一の容器から他の容器へピッキングするピッキング作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測するステップと、
前記ピッキング作業にかかった時間に基づいて、前記ピッキングステーションの処理能力を算出するステップと、
仮想空間内における、レイアウト、又は/及び、寸法の異なる複数のピッキングステーションのそれぞれについて、仮想空間内に3次元で表現するステップと、ピッキング作業にかかった時間を計測するステップと、ピッキングステーションの処理能力を算出するステップとを行い、算出された複数のピッキングステーションの処理能力を比較して、前記ピッキングステーションのレイアウトを決定するステップと、
を備えた、ピッキングステーションのレイアウト設計方法であって、
前記仮想空間にはピッキング完了スイッチが設けられており、
前記ピッキング作業にかかった時間は、前記物品がピッキング作業位置に到着してから、仮想のオーダーに基づいて前記作業者がピッキングを行い、前記オーダーに含まれる全ての物品のピッキングが完了してから前記作業者が前記ピッキング完了スイッチを操作するまでの時間である、ピッキングステーションのレイアウト設計方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーションシステム、特に、ピッキングステーションにおけるピッキング作業をシミュレートできるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ピッキングステーションは、作業者が物品の仕分け作業を行う設備である。例えば、自動倉庫のスタッカクレーンによってラックから取り出されてきたバケットは、ピッキングステーションに搬送される。ピッキングステーションでは、作業者がバケット内の収納物を取り出して他の容器に投入することで仕分け作業を行う。
物流設備の概略レイアウトを作成し、性能評価シミュレーションを行う方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002―197128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピッキングステーションの設備配置は、例えばCADを用いて作図され決定されている。
しかし、そのような場合、ピッキングステーションの空間のスペースが妥当か、作業者の操作位置が適切かなどを判定することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、シミュレーションシステムにおいて、ピッキングステーションのレイアウトを検証することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係るシミュレーションシステムは、仮想空間作成部と、計測部と、算出部と、を備えている。
仮想空間作成部は、ピッキングステーションを仮想空間内に3次元で表現する。
計測部は、ヘッドマウントディスプレイを装着した作業者が、仮想空間内のピッキングステーションにおいて、仮想のオーダーに基づいて物品をピッキングする作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測する。
算出部は、ピッキング作業にかかった時間に基づいて、ピッキングステーションの処理能力を算出する。
【0008】
このシミュレーションシステムでは、作業者が仮想空間内のピッキングステーションにおいて仮想のオーダーに基づいてピッキング作業すると、ピッキングステーションの処理能力が得られる。このようにして、実機の試作を必要とせず、ピッキングステーションの特定のレイアウトにおける作業性を検証できる。
その結果、作業者の負担が少ないレイアウトのピッキングステーションが得られる。
なお、「ピッキングステーション」とは、作業者が、物品を仕分ける作業を行う設備である。
なお、「仮想空間」とは、例えば、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)又はそれらの組み合わせにおける仮想の空間を意味する。
【0009】
仮想空間にはピッキング完了スイッチが設けられていてもよい。
ピッキング作業にかかった時間は、物品がピッキング作業位置に到着してから、仮想のオーダーに基づいて作業者がピッキングを行い、オーダーに含まれる全ての物品のピッキングが完了してから作業者がピッキング完了スイッチを操作するまでの時間であってもよい。
このシミュレーションシステムでは、作業者が実際に作業した時間がピッキング作業にかかった時間として得られる。つまり、搬送機器が要する時間がピッキング作業にかかった時間に算入されず、そのためピッキングステーションにおける作業性が正確に得られる。
【0010】
システムは、判定部をさらに備えていてもよい。判定部は、ピッキング作業にかかった時間に基づいて、作業者のピッキング作業能力を判定してもよい。
このシミュレーションシステムでは、作業者のピッキング作業能力を判定できるので、例えば算出部は、作業者のピッキング作業能力を考慮して、ピッキングステーションの処理能力を算出できる。
【0011】
本発明の他の見地に係るピッキングステーションのレイアウト設計方法は、下記のステップを備えている。
◎ピッキングステーションを仮想空間内に3次元で表現するステップ。
◎ヘッドマウントディスプレイを装着した作業者が、仮想空間内のピッキングステーションにおいて、仮想のオーダーに基づいて物品をピッキングする作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測するステップ。
◎ピッキング作業にかかった時間に基づいて、ピッキングステーションの処理能力を算出するステップ。
◎ピッキングステーションの処理能力に基づいて、ピッキングステーションのレイアウトを決定するステップ。
この方法では、作業者が仮想空間内のピッキングステーションにおいて仮想のオーダーに基づいてピッキング作業すると、ピッキングステーションの処理能力が得られる。このようにして、実機の試作を必要とせず、ピッキングステーションの特定のレイアウトにおける作業性を検証できる。
その結果、作業者の負担が少ないレイアウトのピッキングステーションが得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシミュレーションシステムでは、ピッキングステーションのレイアウトが検証される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るシミュレーションシステムの概略構成を示す模式図。
図2】情報処理装置及び周辺機器の構成を示すブロック図。
図3】仮想空間の概略斜視図。
図4】作業者オブジェクトの視点としての仮想空間内の映像を示す図。
図5】レイアウトの能力算出制御動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1実施形態
(1)シミュレーションシステム
図1及び図2を用いて、シミュレーションシステム1を説明する。図1は、第1実施形態に係るシミュレーションシステムの概略構成を示す模式図である。図2は、情報処理装置及び周辺機器の構成を示すブロック図である。
シミュレーションシステム1は、ピッキングステーションを設計するために、仮想空間VSにおいて作業者の動作をシミュレートすることで、ピッキングステーションの設計を行うシステムである。仮想空間VSは、仮想現実技術(VR)を用いられて作成された実寸大の空間である。仮想空間VSは、3DCADのデータに基づいて作成される。
シミュレーションシステム1では、ヘッドマウントディスプレイ21を装着した作業者61が、仮想空間VS内でピッキング作業を行う。
【0015】
(2)情報処理装置
シミュレーションシステム1は、情報処理装置3によって実行される。つまり、情報処理装置3は、作業者61がヘッドマウントディスプレイ21を介して体験している仮想現実VRにおいて、作業者インターフェースを提供する。
【0016】
情報処理装置3は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。情報処理装置3は、記憶部19(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
情報処理装置3は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
情報処理装置3の各要素の機能は、一部又は全てが、制御部を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、情報処理装置3の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0017】
情報処理装置3は、オブジェクト管理部5を有している。
オブジェクト管理部5は、情報を保持する複数のオブジェクトそれぞれを、それぞれが保持する情報に基づいて、互いに関連付けて管理する。
オブジェクト管理部5は、オブジェクトデータベースを備えている。オブジェクトデータベースは、仮想空間内に配置される全てのオブジェクトを登録している。
この実施形態では、オブジェクトは、図3に示すように、ピッキングステーション41を構成する作業ステーション43、第1コンベヤ45、第2コンベヤ47、第1バケット49、第2バケット51、物品W、表示器53(図4)、ピッキング完了スイッチ55(図4)である。なお、図3は、仮想空間の概略斜視図である。
【0018】
情報処理装置3は、仮想空間作成部7を有している。
仮想空間作成部7は、オブジェクトデータベースに登録されているオブジェクトを用いて、情報処理装置3が備えるメモリのメモリ区間内に仮想空間VSを構築する。仮想空間VS内には、前述のピッキングステーション41が3次元で表現される。
仮想空間作成部7は、構築した仮想空間VS内に、作業者61を表す作業者オブジェクト63も配置し、ヘッドマウントディスプレイ21のディスプレイ(後述)に、作業者オブジェクト63を視点とした仮想空間VS内の映像を表示する。
仮想空間作成部7は、作業者61の実空間での姿勢、手の動き、及び位置を、作業者オブジェクト63に反映する(後述)。また、仮想空間作成部7は、反映の結果から、仮想空間VS内における作業者オブジェクト63の動作を検出する(後述)。
【0019】
情報処理装置3には、ヘッドマウントディスプレイ21と、作業者61の位置を検出するための位置検出装置23とが接続されている。
ヘッドマウントディスプレイ21は、それ自体の動きを検出するモーションセンサ27と、それを装着している作業者61の手の動きを検出する赤外線センサ29とを搭載している。
【0020】
モーションセンサ27は、加速度センサ(図示せず)及び角速度センサ(図示せず)を備え、ヘッドマウントディスプレイ21自体の動きを特定する信号を出力する。
赤外線センサ29は、赤外線を出力する光源(図示せず)と、作業者61の手で反射された赤外線を受光する撮像素子とを備え、信号として、赤外線画像を出力する。
なお、ヘッドマウントディスプレイ21及びそれに用いられるセンサは、特に限定されるものではない。本実施の形態では、将来開発される種々のヘッドマウントディスプレイ及びセンサを用いることができる。
【0021】
ヘッドマウントディスプレイ21は、ディスプレイ25を有している。ディスプレイ25には、仮想空間VSにおける作業者オブジェクト63からの視界が表示される(後述)。
【0022】
情報処理装置3は、作業者動作検出部9を有している。
作業者動作検出部9は、作業者61の仮想空間VS内での動作を検出する。具体的には、作業者動作検出部9は、モーションセンサ27からの信号と、赤外線センサ29からの信号と、位置検出装置23からの信号とに基づいて、作業者61の実空間での姿勢と手の動きとを検出する。
【0023】
情報処理装置3は、計測部11を有している。
計測部11は、ヘッドマウントディスプレイ21を装着した作業者61が、仮想空間VS内のピッキングステーション41において、仮想のオーダーに基づいて物品Wをピッキングする作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測する。上記オーダーは、情報処理装置3の記憶部19にあらかじめ記憶しておき、発生するバケットに紐づけされて順番に使用される。
なお、「仮想のオーダー」は、ランダムに生成することも可能であり、又は実際に使用した実績データを利用することも可能である。
【0024】
情報処理装置3は、算出部13を有している。
算出部13は、ピッキング作業にかかった時間に基づいて、ピッキングステーション41の処理能力を算出する。
【0025】
情報処理装置3は、レイアウト決定部15を有している。
レイアウト決定部15は、複数のピッキングステーション41の処理能力を比較して、優れたものを決定できる。
【0026】
(3)動作
(3-1)前提
仮想空間作成部7は、オブジェクトデータベースに登録されているオブジェクトを用いて、情報処理装置3が備えるメモリのメモリ区間内に仮想空間VSを構築する。仮想空間VS内には、ピッキングステーション41及び作業者オブジェクト63が配置されている。
仮想空間作成部7は、図4に示すように、ヘッドマウントディスプレイ21のディスプレイ25に、作業者オブジェクト63の視点としての仮想空間VS内の映像を表示する。これにより、作業者61が仮想現実を体験できる。図4は、作業者オブジェクトの視点としての仮想空間内の映像を示す図である。
【0027】
(3-2)基本動作
作業者動作検出部9は、ヘッドマウントディスプレイ21のモーションセンサ27及び赤外線センサ29からの信号と、位置検出装置23からの映像データとに基づき、実空間における作業者61の姿勢、手の動き、位置を検出する。
仮想空間作成部7は、作業者61の実空間での姿勢、手の動き、及び位置を、作業者オブジェクト63に反映する。
【0028】
仮想空間作成部7は、反映の結果から、仮想空間VS内における作業者オブジェクト63の動作を検出する。そして、作業者オブジェクト63の動作が他のオブジェクトを動作させる場合は、仮想空間作成部7は、当該他のオブジェクトに反映させる。例えば、作業者オブジェクト63が仮想空間VS内で物品Wを手に取ったり、移動したり、離したりする動作を行うと、仮想空間VS内の物品Wの動きとして実現される。
なお、以下に説明する仮想空間VS内での作業者オブジェクト63及び物品Wの動作は、上記の基本動作に基づいて行われる。
【0029】
(3-3)レイアウトの能力算出制御動作
このシミュレーションシステム1では、作業者オブジェクト63が、仮想空間VS内のピッキングステーション41において、仮想のオーダーに基づいてピッキング作業する。
図5を用いて、仮想空間VS内でのピッキング作業を説明する。図5は、レイアウトの能力算出制御動作を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS1では、図3に示すように、仮想空間VSが構築及び表示される。このとき、作業者オブジェクト63は、ピッキングステーション41の作業ステーション43の前に立っている。また、表示器53(図4)には、各第1バケット49からピッキングする物品Wの個数が表示される。
【0031】
ステップS2では、仮想空間VS内において、物品Wの搬送が開始される。具体的には、第1コンベヤ45が、複数の物品Wが入った第1バケット49を作業ステーション43に供給する。作業者オブジェクト63は、到着した第1バケット49内の物品Wをピッキングして、第2バケット51へ投入することができる。なお、ピッキング完了スイッチ55が操作されると、ピッキングが終わった第1バケット49は第2コンベヤ47によって搬出され、その後に新たな第1バケット49が作業ステーション43に搬入される。
上記の作業において、作業者61は、仮想空間VS内に入り、スペースの感覚や各種機器の高さなどの位置の確認を行うことができる。
【0032】
ステップS3では、仮想空間VS内で1オーダーに含まれる全ての物品Wのピッキングが完了してから最後にピッキング完了スイッチ55(図4)が押されたか否かが判断される。押された場合に、プロセスはステップS4に移行する。
【0033】
ステップS4では、計測部11が1回のピッキング作業にかかった時間を計測する。ピッキング作業にかかった時間は、最初の第1バケット49が作業ステーション43に到着してから、仮想のオーダーに基づいて作業者オブジェクト63がピッキングを行い(個々の物品Wをつかんで、入替作業を行い)、オーダーに含まれる全ての物品Wのピッキングが完了してから作業者オブジェクト63がピッキング完了スイッチ55を操作するまでの時間である。したがって、作業者オブジェクト63が実際に作業した時間がピッキング作業にかかった時間として得られる。つまり、第1コンベヤ45や第2コンベヤ47が要する時間が、ピッキング作業にかかった時間に算入されない。
【0034】
ステップS5では、算出部13がピッキングステーション41の処理能力を算出する。具体的には、算出部13が単位時間あたりの処理個数を算出する。
このようにして、実機の試作を必要とせず、ピッキングステーション41の特定のレイアウトにおける作業性を検証できる。
【0035】
上記の説明は1台のピッキングステーション41の処理能力の算出であるが、ピッキングステーションの設計は、レイアウトや寸法を変えた複数のものについて処理能力を算出した後に互いに比較することで、決定される。
具体的には、複数の互いに異なるピッキングステーション41の処理能力が算出された後に、レイアウト決定部15が、ピッキングステーション41の処理能力に基づいて、ピッキングステーションのレイアウトを決定する。なお、ピッキングステーション41を互いに異ならせる内容として、物品Wの入出庫の方向、空きバケットの移動場所、物品Wの取り出し位置や高さ、投入位置や高さなどがある。
以上に述べたピッキングステーションのレイアウト設計方法によって、作業者61が実機で動作するときに負担が少ないレイアウトのピッキングステーションが得られる。
【0036】
情報処理装置3は、判定部17をさらに備えている。判定部17は、ピッキング作業にかかった時間に基づいて、作業者61のピッキング作業能力を判定する。
このように作業者61のピッキング作業能力を判定できるので、例えば算出部13は、作業者61のピッキング作業能力を考慮して、ピッキングステーション41の処理能力を算出できる。
具体的には、同じレイアウト・形状のピッキングステーション41を用いて、複数の作業者61に同じ作業をさせることで、作業時間の長さによって作業者61のピッキング作業能力を判定できる。そして、算出部13は、例えば、特定のグループ(例えば、地域、年齢、性別ごとのグループ)に属する作業者61の作業能力を加味することで、ピッキングステーション41の処理能力を算出することができる。
【0037】
2.実施形態の特徴
上記第1実施形態は、下記のようにも説明できる。
シミュレーションシステム1(シミュレーションシステムの一例)は、仮想空間作成部7と、計測部11と、算出部13と、を備えている。
仮想空間作成部7(仮想空間作成部の一例)は、ピッキングステーション41(ピッキングステーションの一例)を仮想空間VS(仮想空間の一例)内に3次元で表現する。
計測部11(計測部の一例)は、ヘッドマウントディスプレイ21(ヘッドマウントディスプレイの一例)を装着した作業者61が、仮想空間VS内のピッキングステーション41において、仮想のオーダーに基づいて物品W(物品の一例)をピッキングする作業を行うと、当該ピッキング作業にかかった時間を計測する。
算出部13(算出部の一例)は、ピッキング作業にかかった時間に基づいて、ピッキングステーション41の処理能力を算出する。
【0038】
このシミュレーションシステム1では、作業者61が仮想空間VS内のピッキングステーション41において仮想のオーダーに基づいてピッキング作業すると、ピッキングステーション41の処理能力が得られる。このようにして、実機の試作を必要とせず、ピッキングステーションの特定のレイアウトにおける作業性を検証できる。
その結果、作業者61の負担が少ないレイアウトのピッキングステーションが得られる。
【0039】
3.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0040】
上記実施形態では、「仮想空間」を実現するための技術として、VR(仮想現実)技術を用いた。しかし、「仮想空間」は、VR、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)又はそれらの組み合わせによって実現されてもよい。
【0041】
仮想空間を実現するためのハードウェア、ソフトウェアの種類は特に限定されない。位置検出装置は、例えば、カメラ型センサでもよい。また、それに加えて又はそれとは別に、グローブやコントローラを用いて作業者の手の動きを検出してもよい。
ピッキングステーションの種類、コンベヤの種類や数、作業者の実際の作業は、第1実施形態に限定されない。ピッキングは、物品をバケットからバケット以外の載置場所に運ぶ動作でもよい。
レイアウト決定部、判定部は省略されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ピッキングステーションにおけるピッキング作業をシミュレートできるシステムに広く適用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 :シミュレーションシステム
3 :情報処理装置
5 :オブジェクト管理部
7 :仮想空間作成部
9 :作業者動作検出部
11 :計測部
13 :算出部
15 :レイアウト決定部
17 :判定部
19 :記憶部
21 :ヘッドマウントディスプレイ
23 :位置検出装置
25 :ディスプレイ
27 :モーションセンサ
29 :赤外線センサ
41 :ピッキングステーション
43 :作業ステーション
45 :第1コンベヤ
47 :第2コンベヤ
49 :第1バケット
51 :第2バケット
53 :表示器
55 :ピッキング完了スイッチ
61 :作業者
63 :作業者オブジェクト
VS :仮想空間
W :物品
図1
図2
図3
図4
図5