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特許7596705クレーン、クレーンの組立方法及び分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】クレーン、クレーンの組立方法及び分解方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20241203BHJP
   B66C 23/36 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B66C23/26 C
B66C23/26 F
B66C23/36 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020175373
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066822
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】中司 健一
(72)【発明者】
【氏名】住本 宏治
(72)【発明者】
【氏名】栗原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】江藤 崇夫
(72)【発明者】
【氏名】和又 司
(72)【発明者】
【氏名】高岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓也
(72)【発明者】
【氏名】猪川 哲平
(72)【発明者】
【氏名】濱口 裕充
(72)【発明者】
【氏名】小泉 幸雄
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111642(WO,A1)
【文献】特開2005-145569(JP,A)
【文献】特開2018-48015(JP,A)
【文献】国際公開第2020/26842(WO,A1)
【文献】特開2017-137164(JP,A)
【文献】特開2019-112152(JP,A)
【文献】特開平10-218563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
B66C 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体と、
前記クレーン本体に対して当該クレーン本体の左右方向に延びるブーム回動軸回りに回動可能に取り付けられたブーム基端部とその反対側の端部であるブーム先端部とを有していて前記ブーム基端部を支点として起伏可能なブームと、
前記ブーム先端部に前記ブーム回動軸と平行なジブ回動軸回りに回動可能に取り付けられたジブ基端部とその反対側の端部であるジブ先端部とを有するジブと、
前記ブームが起立したときに前記ジブを前記ブームに対して所定の前傾姿勢で保持するジブ姿勢保持装置と、を備え、
前記ブームは、前記ブーム先端部から前記ブーム基端部へ向かって離れた所定の位置にロープ連結箇所を有し、
前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブ先端部に連結された一端部とその反対側の端部である他端部とを有するジブ側支持ロープと、前記ブームの前記ロープ連結箇所に連結された一端部とその反対側の端部である他端部とを有するブーム側支持ロープと、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が着脱可能に連結されるロープ連結部と、前記ブーム先端部及び前記ジブ基端部のいずれか一方である取付対象部に取り付けられて前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るときに前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープの各々が直線的に張った状態になる程度に前記ジブ基端部及び前記ブーム先端部からそれらの背後へ離れた張設位置に前記ロープ連結部を保持するジブマストであって前記所定の前傾姿勢にある前記ジブを前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープとともにそのジブの背後から支えるジブマストと、を有し、
前記ジブマストは、前記取付対象部からその背後へ延びる起立姿勢にて前記ロープ連結部を前記張設位置に保持する張設形態と、前記張設位置よりも前記ブーム先端部及び前記ジブ基端部に近い位置であって前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープが弛むのを許容する位置である弛緩許容位置に前記ロープ連結部を配置する弛緩許容形態とを取り得るように構成されている、クレーン。
【請求項2】
前記ジブマストは、前記ロープ連結部が設けられた一端部であるジブマスト先端部とその反対側の端部であるジブマスト基端部とを有し、
前記取付対象部は、前記ジブマスト基端部に着脱可能に連結されるとともに前記ジブマストが前記起立姿勢を取るときに前記ジブマスト基端部を支持する起立時基端部支持部を有し、
前記ジブマストは、前記弛緩許容形態として前記ジブマスト先端部が前記ブーム先端部寄りに配置されるとともに前記ジブマスト基端部が前記ジブ先端部寄りに配置されて前記ロープ連結部が前記弛緩許容位置に配置される程度に倒伏した弛緩許容倒伏姿勢を取り、
前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブのうち前記ジブ基端部から前記ジブ先端部へ向かって離れた所定箇所に設けられ、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢を取ったときに前記ジブマスト基端部が前記ジブ先端部へ向かって移動するのを阻止するように前記ジブマスト基端部を保持する倒伏時基端部保持部を有する、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブに取り付けられ、前記ジブマストが前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行するときに前記起立時基端部支持部から前記倒伏時基端部保持部への前記ジブマスト基端部の移動を案内し、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行するときに前記倒伏時基端部保持部から前記起立時基端部支持部への前記ジブマスト基端部の移動を案内するガイド部をさらに有する、請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記ブームが倒伏した状態で前記ジブ先端部が地面に接触するとともに前記ジブ側支持ロープが前記ロープ連結部と前記ジブ先端部との間で直線的に張り且つ前記ブーム側支持ロープが前記ロープ連結部と前記ブームの前記ロープ連結箇所との間で直線的に張る程度に前記ジブが前記ブームに対して倒伏したときに前下がりに傾斜する姿勢で前記ジブに取り付けられている、請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記倒伏時基端部保持部は、当該倒伏時基端部保持部によって前記ジブマスト基端部が保持された状態で前記ジブマストが当該倒伏時基端部保持部から前記ジブに沿って前記ブーム先端部へ向かって延びる格納時倒伏姿勢を取ることを許容し、
前記起立時基端部支持部は、前記ジブマストが前記格納時倒伏姿勢を取るときに前記ロープ連結部を保持するようにそのロープ連結部と連結可能に構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記ジブマストの前記弛緩許容倒伏姿勢は、前記ジブマスト基端部から前記ジブマスト先端部へ向かうにつれて前記ジブから離間するように前記ジブマストが前記ジブの軸方向に対して傾斜した姿勢であり、
前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢を取ったときにその姿勢を保持するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装されるマスト姿勢保持部材をさらに有する、請求項2~5のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項7】
前記マスト姿勢保持部材は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときに前記ジブマスト基端部を中心として前記ジブに沿う向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装可能に構成されている、請求項6に記載のクレーン。
【請求項8】
前記ジブマストは、前記取付対象部に前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられた下側マスト部材と、前記ロープ連結部が設けられ、前記下側マスト部材に対して進退可能に取り付けられた上側マスト部材とを有し、
前記ジブマストの前記張設形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材が前記下側マスト部材に対して前記ロープ連結部が前記張設位置に配置される進出位置まで進出した状態であり、
前記ジブマストの前記弛緩許容形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記ロープ連結部が前記弛緩許容位置に配置される退入位置まで前記上側マスト部材が前記下側マスト部材側へ退入した状態である、請求項1に記載のクレーン。
【請求項9】
前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記進出位置まで進出したときにその進出位置で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材に対して固定する位置固定部材をさらに有する、請求項8に記載のクレーン。
【請求項10】
前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記進出位置を越えて前記下側マスト部材から進出するのを阻止する進出止め部をさらに有する、請求項8又は9に記載のクレーン。
【請求項11】
前記ジブマストは、前記取付対象部に前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられた下側マスト部材と、前記ロープ連結部が設けられ、前記下側マスト部材に対して前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に接続された上側マスト部材とを有し、
前記ジブマストの前記張設形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びるとともに前記上側マスト部材が前記下側マスト部材の延長線上でその下側マスト部材と同方向に延びる伸長姿勢を取る状態であり、
前記ジブマストの前記弛緩許容形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部から前記ジブ先端部側へ向かうにつれて前記ジブからその背後へ離れるように延びる傾斜姿勢を取るとともに前記上側マスト部材が前記下側マスト部材に対する接続箇所から前記ブーム先端部側へ向かうにつれてさらに前記ジブの背後へ離れるように延びる屈曲姿勢を取る状態である、請求項1に記載のクレーン。
【請求項12】
前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記伸長姿勢を取ったときにその伸長姿勢で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材に対して固定する姿勢固定部材をさらに有する、請求項11に記載のクレーン。
【請求項13】
前記ジブマストは、前記下側マスト部材と前記上側マスト部材のいずれか一方に設けられ、前記上側マスト部材が前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動するのを阻止する回動阻止部をさらに有する、請求項11又は12に記載のクレーン。
【請求項14】
前記ジブ姿勢保持装置は、前記下側マスト部材が前記傾斜姿勢を取るとともに前記上側マスト部材が前記屈曲姿勢を取るときに前記ジブに対する前記下側マスト部材の姿勢を保持するとともに前記下側マスト部材に対する前記上側マスト部材の姿勢を保持する保持具をさらに有する、請求項11~13のいずれか1項に記載のクレーン。
【請求項15】
前記保持具は、前記下側マスト部材が前記傾斜姿勢を取ったときにその傾斜姿勢から前記ジブに近づく向きに回動するのを阻止するように当該下側マスト部材と前記ジブとの間に介装される下側保持具と、前記上側マスト部材が前記屈曲姿勢を取ったときにその屈曲姿勢から前記下側マスト部材に近づく向きに回動するのを阻止するように当該上側マスト部材と前記下側マスト部材との間に介装される上側保持具と、を含む、請求項14に記載のクレーン。
【請求項16】
前記下側保持具は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときにそのジブマストが前記ジブに沿う向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装可能に構成され、
前記上側保持具は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときにそのジブマストが前記ジブに沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ブーム先端部との間に介装可能に構成されている、請求項15に記載のクレーン。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のクレーンを組み立てる方法であって、
前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、
前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備える、クレーンの組立方法。
【請求項18】
請求項2に記載のクレーンを組み立てる方法であって、
前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、
前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記ジブマストに前記弛緩許容倒伏姿勢を取らせるとともに前記倒伏時基端部保持部に前記ジブマスト基端部を保持させ、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記ジブマストを前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行させ、その起立姿勢へ移行した前記ジブマストの前記ジブマスト基端部を前記起立時基端部支持部に支持させる、クレーンの組立方法。
【請求項19】
請求項8に記載のクレーンを組み立てる方法であって、
前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、
前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記下側マスト部材に前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材を前記退入位置まで前記下側マスト部材側へ退入させた状態にし、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材から前記進出位置まで進出させる、クレーンの組立方法。
【請求項20】
請求項11に記載のクレーンを組み立てる方法であって、
前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、
前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記下側マスト部材に前記傾斜姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材に前記屈曲姿勢を取らせ、
前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材に前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材に前記伸長姿勢を取らせる、クレーンの組立方法。
【請求項21】
請求項1~16のいずれか1項に記載のクレーンを分解する方法であって、
前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備える、クレーンの分解方法。
【請求項22】
請求項2に記載のクレーンを分解する方法であって、
前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記起立姿勢にある前記ジブマストの前記ジブマスト基端部を前記起立時基端部支持部から取り外した後、そのジブマストを前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させて前記倒伏時基端部保持部に前記ジブマスト基端部を保持させる、クレーンの分解方法。
【請求項23】
請求項8に記載のクレーンを分解する方法であって、
前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材を前記進出位置から前記退入位置まで前記下側マスト部材側へ退入させる、クレーンの分解方法。
【請求項24】
請求項11に記載のクレーンを分解する方法であって、
前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、
倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、
倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、
前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢にある前記下側マスト部材を前記傾斜姿勢へ移行させるとともに、前記伸長姿勢にある前記上側マスト部材を前記屈曲姿勢へ移行させる、クレーンの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、クレーンの組立方法及び分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン本体に起伏可能に設けられたブームと、そのブームの先端部に接続されたジブと、を備え、ジブの先端部から吊り下げられるフック装置によりクレーン作業を行うクレーンが知られている。例えば、下記特許文献1には、このようなクレーンの一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたクレーンは、クレーン本体としての旋回体と、その旋回体に対してその旋回体の左右方向に延びる回動軸回りに回動可能に取り付けられたブームと、そのブームの先端部にブームの回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられたジブと、を備える。また、当該クレーンは、ブームが起立したときにジブをブームに対して前方に所定角度で傾いた所定の前傾姿勢で保持するためにジブマスト、ジブペンダントロープ及び後側ジブペンダントロープを備える。
【0004】
ジブマストは、ブームの先端部にジブの回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられ、ブームが起立した状態でジブの回動軸に直交し且つブームの先端部から後方へ延びる起立姿勢を取る。ジブペンダントロープは、ジブマストの先端部とジブの先端部との間に張架され、当該ジブペンダントロープの一端部がジブマストの先端部に連結ピンにより着脱可能に連結されるとともに、当該ジブペンダントロープの他端部がジブの先端部に接続されている。後側ジブペンダントロープは、ジブマストの先端部とブームとの間に張架され、当該後側ジブペンダントロープの一端部がジブマストの先端部に連結ピンにより着脱可能に連結されるとともに、当該後側ジブペンダントロープの他端部がブームのうちその先端部から基端部へ向かって離間した箇所に接続されている。
【0005】
ブームが起立した状態では、後側ジブペンダントロープがブームとジブマストの先端部との間で直線的に張った状態となってジブマストの起立姿勢から前方への回動を阻止するとともに、ジブペンダントロープがジブマストの先端部とジブの先端部との間で直線的に張った状態となってジブの前記所定の前傾姿勢から前方への回動を阻止する。このようにして、ジブがジブマスト、ジブペンダントロープ及び後側ジブペンダントロープによりブームに対して前記所定の前傾姿勢で保持されるようになっている。
【0006】
特許文献1に開示されたクレーンが組み立てられるときには、ブームが旋回体から地面に沿って前方へ延びるように倒伏した状態で当該ブームの基端部が旋回体に取り付けられ、そのブームの先端部からジブがさらに前方へ延びるように倒伏した状態で当該ジブの基端部がブームの先端部に対して取り付けられる。そして、ジブマストが、倒伏したブームの先端部から倒伏したジブに沿ってそのジブ上に倒伏した姿勢で、当該ジブマストの先端部にジブペンダントロープの一端部が連結されるとともにジブの先端部にジブペンダントロープの他端部が連結される。また、その状態で、ジブマストの先端部に後側ジブペンダントロープの一端部が連結される。その後、ジブマストがその基端部を支点として起こされた後、後側ジブペンダントロープの他端部がブームのロープ連結箇所に連結される。その後、ブームが僅かに起こされて、ジブペンダントロープがジブマストの先端部とジブの先端部との間で直線的に張った状態になるとともに後側ジブペンダントロープがジブマストの先端部とブームのロープ連結箇所との間で直線的に張った状態になる。その後、ブームが旋回体から起立した姿勢になるまで起こされ、ジブがジブマスト、ジブペンダントロープ及び後側ジブペンダントロープにより後方から支持されてブームに対して前記所定の前傾姿勢で保持される。
【0007】
また、クレーンが分解されるときには、組み立ての場合と逆の手順によりそのクレーンの分解が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-190084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されたクレーンでは、ブーム側支持ロープとしての後側ジブペンダントロープをジブマストの先端部とブームのロープ連結箇所との間に架設する作業及びその架設された後側ジブペンダントロープを取り外す作業にかかる作業者の負担が非常に大きくなるという問題がある。特に、ブームのロープ連結箇所に対する後側ジブペンダントロープの前記他端部の着脱にかかる作業者の負担が大きくなる。
【0010】
具体的に、特許文献1に開示されたクレーンにおいて後側ジブペンダントロープの他端部をブームのロープ連結箇所に連結するときには、起立したジブマストの先端部から後側ジブペンダントロープが垂れ下がって当該後側ジブペンダントロープの他端部はジブマスト側に寄った状態になっており、作業者は、この後側ジブペンダントロープの他端部をブームのロープ連結箇所へ引き寄せてからそのロープ連結箇所に連結しなければならない。後側ジブペンダントロープは重量物であるため、この後側ジブペンダントロープの他端部の引き寄せには大きな労力を要し、作業者の負担が大きくなる。
【0011】
また、後側ジブペンダントロープの他端部をブームのロープ連結箇所から取り外すときには、その他端部をロープ連結箇所に連結している連結ピンをロープ連結箇所から取り外す必要があるが、この連結ピンには後側ジブペンダントロープの張力がかかっているため、その連結ピンにかかっている張力を解除しないと当該連結ピンをロープ連結箇所から取り外すことができない。このため、作業者は、後側ジブペンダントロープを引っ張って連結ピンにかかっている張力を解除する必要があり、これには大きな労力を要するため、作業者の負担が大きくなる。
【0012】
本発明の目的は、ジブ側支持ロープを架設する作業及び架設されたジブ側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減しつつ、ブーム側支持ロープを架設する作業及び架設されたブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担も軽減することが可能なクレーンとそのクレーンの組立方法及び分解方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により提供されるクレーンは、クレーン本体と、前記クレーン本体に対して当該クレーン本体の左右方向に延びるブーム回動軸回りに回動可能に取り付けられたブーム基端部とその反対側の端部であるブーム先端部とを有していて前記ブーム基端部を支点として起伏可能なブームと、前記ブーム先端部に前記ブーム回動軸と平行なジブ回動軸回りに回動可能に取り付けられたジブ基端部とその反対側の端部であるジブ先端部とを有するジブと、前記ブームが起立したときに前記ジブを前記ブームに対して所定の前傾姿勢で保持するジブ姿勢保持装置と、を備える。前記ブームは、前記ブーム先端部から前記ブーム基端部へ向かって離れた所定の位置にロープ連結箇所を有する。前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブ先端部に連結された一端部とその反対側の端部である他端部とを有するジブ側支持ロープと、前記ブームの前記ロープ連結箇所に連結された一端部とその反対側の端部である他端部とを有するブーム側支持ロープと、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が着脱可能に連結されるロープ連結部と、前記ブーム先端部及び前記ジブ基端部のいずれか一方である取付対象部に取り付けられて前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るときに前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープの各々が直線的に張った状態になる程度に前記ジブ基端部及び前記ブーム先端部からそれらの背後へ離れた張設位置に前記ロープ連結部を保持するジブマストであって前記所定の前傾姿勢にある前記ジブを前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープとともにそのジブの背後から支えるジブマストと、を有する。前記ジブマストは、前記取付対象部からその背後へ延びる起立姿勢にて前記ロープ連結部を前記張設位置に保持する張設形態と、前記張設位置よりも前記ブーム先端部及び前記ジブ基端部に近い位置であって前記ジブ側支持ロープ及び前記ブーム側支持ロープが弛むのを許容する位置である弛緩許容位置に前記ロープ連結部を配置する弛緩許容形態とを取り得るように構成されている。
【0014】
このクレーンでは、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープをそれぞれ架設するときには、ブーム及びジブが倒伏した状態でジブマストを弛緩許容形態にしてロープ連結部を弛緩許容位置に配置することにより、重労働となるロープの引き寄せ作業を行うことなくそれらのジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープの架設を行うことができるとともにその架設作業を比較的低所で行うことができ、また、架設されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープをそれぞれ取り外すときもジブマストを弛緩許容形態にしてロープ連結部を弛緩許容位置に配置することにより、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープの張力を解除して大きな労力を要することなくそれらのロープを取り外すことができるとともにその取り外し作業を比較的低所で行うことができる。このため、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを架設する作業にかかる作業者の負担及び架設されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0015】
具体的に、このクレーンでは、ジブマストが、ロープ連結部をそれに連結されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープの各々が直線的に張った状態になる張設位置よりもブーム先端部及びジブ基端部に近い位置であってジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープが弛むのを許容する位置である弛緩許容位置に配置する弛緩許容形態を取り得るため、ブーム及びジブが倒伏した状態でジブマストを当該弛緩許容形態にしてロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置することにより、その弛緩許容位置に配置されたロープ連結部の地面からの高さ位置をそのロープ連結部が仮に前記張設位置に配置されていた場合の地面からの高さ位置に比べて低減できるとともに、当該ロープ連結部をジブ先端部に対してジブ側支持ロープの長さよりも小さい距離まで近づけることができ且つ当該ロープ連結部をブームのロープ連結箇所に対してブーム側支持ロープの長さよりも小さい距離まで近づけることができる。このため、前記弛緩許容位置に配置されたロープ連結部からジブ先端部に亘って延びるようにジブ側支持ロープを配置するとともに前記弛緩許容位置のロープ連結部にジブ側支持ロープを連結したときに、そのロープ連結部からジブ側支持ロープが垂れ下がって当該ジブ側支持ロープの一端部がジブ先端部からロープ連結部側へ大きく離れるのを抑制でき、その結果、当該ジブ側支持ロープの一端部をジブ先端部側へ大きく引き寄せなくても、当該ジブ側支持ロープの一端部をジブ先端部に連結することができる。また、前記弛緩許容位置に配置されたロープ連結部からブームのロープ連結箇所に亘って延びるようにブーム側支持ロープを配置するとともに前記弛緩許容位置のロープ連結部にブーム側支持ロープを連結したときに、そのロープ連結部からブーム側支持ロープが垂れ下がって当該ブーム側支持ロープの一端部がブームのロープ連結箇所からロープ連結部側へ大きく離れるのを抑制でき、その結果、当該ブーム側支持ロープの一端部をブームのロープ連結箇所側へ大きく引き寄せなくても、当該ブーム側支持ロープの一端部をブームのロープ連結箇所に連結することができる。よって、ジブマストに設けられたロープ連結部とジブ先端部との間にジブ側支持ロープを架設する作業及びジブマストに設けられたロープ連結部とブームのロープ連結箇所との間にブーム側支持ロープを架設する作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0016】
また、ジブマストに設けられたロープ連結部とジブ先端部との間に架設されたジブ側支持ロープ及びジブマストに設けられたロープ連結部とブームのロープ連結箇所との間に架設されたブーム側支持ロープを取り外すときには、それらの架設時と同様にジブマストを前記弛緩許容形態にすることにより、ジブ側支持ロープを弛ませて当該ジブ側支持ロープの張力を解除できるとともにブーム側支持ロープを弛ませて当該ブーム側支持ロープの張力を解除できる。この状態では、ジブマストに設けられたロープ連結部及びジブ先端部にジブ側支持ロープの大きな張力はかかっていないとともに、ジブマストに設けられたロープ連結部及びブームのロープ連結箇所にブーム側支持ロープの大きな張力はかかっていないため、作業者が、ジブ側支持ロープの大きな張力に対抗してジブ側支持ロープをジブ先端部側へ引っ張ることなくジブ先端部に対するジブ側支持ロープの連結を容易に解除できるとともに、ジブ側支持ロープの大きな張力に対抗してジブ側支持ロープをジブマストのロープ連結部側へ引っ張ることなくそのロープ連結部に対するジブ側支持ロープの連結を容易に解除でき、また、ブーム側支持ロープの大きな張力に対抗してブーム側支持ロープをブームのロープ連結箇所側へ引っ張ることなくそのロープ連結箇所に対するブーム側支持ロープの連結を容易に解除できるとともに、ブーム側支持ロープの大きな張力に対抗してブーム側支持ロープをジブマストのロープ連結部側へ引っ張ることなくそのロープ連結部に対するブーム側支持ロープの連結を容易に解除できる。よって、ジブマストに設けられたロープ連結部とジブ先端部との間に架設されたジブ側支持ロープを取り外す作業及びジブマストに設けられたロープ連結部とブームのロープ連結箇所との間に架設されたブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0017】
また、前記のようにブーム及びジブが倒伏した状態でジブマストを前記弛緩許容形態にしてロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置することによりロープ連結部の地面からの高さ位置を低減できるため、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを架設するときに、ジブマストに設けられたロープ連結部に対してジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを連結する作業を比較的低所で行うことができ、また、架設されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを取り外すときに、ジブマストに設けられたロープ連結部に対するジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープの各々の連結を解除する作業を比較的低所で行うことができる。この点からも、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを架設する作業及びその架設されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0018】
前記ジブマストは、前記ロープ連結部が設けられた一端部であるジブマスト先端部とその反対側の端部であるジブマスト基端部とを有し、前記取付対象部は、前記ジブマスト基端部に着脱可能に連結されるとともに前記ジブマストが前記起立姿勢を取るときに前記ジブマスト基端部を支持する起立時基端部支持部を有し、前記ジブマストは、前記弛緩許容形態として前記ジブマスト先端部が前記ブーム先端部寄りに配置されるとともに前記ジブマスト基端部が前記ジブ先端部寄りに配置されて前記ロープ連結部が前記弛緩許容位置に配置される程度に倒伏した弛緩許容倒伏姿勢を取り、前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブのうち前記ジブ基端部から前記ジブ先端部へ向かって離れた所定箇所に設けられ、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢を取ったときに前記ジブマスト基端部が前記ジブ先端部へ向かって移動するのを阻止するように前記ジブマスト基端部を保持する倒伏時基端部保持部を有していてもよい。
【0019】
この場合には、起立時基端部支持部によってジブマスト基端部を支持してジブマストに前記起立姿勢を取らせることができる、倒伏時基端部保持部によってジブマスト基端部を保持してジブマストを前記弛緩許容倒伏姿勢に保持することができる。このため、ジブマストに前記起立姿勢と前記弛緩許容倒伏姿勢とを取らせるための具体的な構成を得ることができる。
【0020】
前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブに取り付けられ、前記ジブマストが前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行するときに前記起立時基端部支持部から前記倒伏時基端部保持部への前記ジブマスト基端部の移動を案内し、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行するときに前記倒伏時基端部保持部から前記起立時基端部支持部への前記ジブマスト基端部の移動を案内するガイド部をさらに有することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ジブマストを前記起立姿勢と前記弛緩許容倒伏姿勢の一方から他方へ移行させるときにガイド部によりジブマスト基端部の前記起立時基端部支持部と前記倒伏時基端部保持部の一方から他方への移動を案内して、ジブマストの前記起立姿勢と前記弛緩許容倒伏姿勢との間での移行をスムーズに行うことができる。
【0022】
前記ガイド部は、前記ブームが倒伏した状態で前記ジブ先端部が地面に接触するとともに前記ジブ側支持ロープが前記ロープ連結部と前記ジブ先端部との間で直線的に張り且つ前記ブーム側支持ロープが前記ロープ連結部と前記ブームの前記ロープ連結箇所との間で直線的に張る程度に前記ジブが前記ブームに対して倒伏したときに前下がりに傾斜する姿勢で前記ジブに取り付けられていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ブームが倒伏し且つジブ先端部が地面に接触するようにジブがブームに対して倒伏した状態でジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープが直線的に張った状態から緩むようにジブマストを前記起立姿勢から倒伏させるときに、ジブマストの自重によりジブマスト基端部を起立時基端部支持部からガイド部の傾斜に沿って前方の倒伏時基端部保持部へ自然に移動させることができ、その結果、ジブマストを自然に前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させることができる。このため、ジブマストを前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させる作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0024】
前記倒伏時基端部保持部は、当該倒伏時基端部保持部によって前記ジブマスト基端部が保持された状態で前記ジブマストが当該倒伏時基端部保持部から前記ジブに沿って前記ブーム先端部へ向かって延びる格納時倒伏姿勢を取ることを許容し、前記起立時基端部支持部は、前記ジブマストが前記格納時倒伏姿勢を取るときに前記ロープ連結部を保持するようにそのロープ連結部と連結可能に構成されていることが好ましい。
【0025】
こうすれば、倒伏時基端部保持部を、ジブマストが弛緩許容倒伏姿勢を取るときにジブマスト基端部を保持するためだけでなく、ジブマストが格納時倒伏姿勢を取るときにジブマスト基端部を保持するためにも用いることができ、また、起立時基端部支持部を、ジブマストが起立姿勢を取るときにジブマスト基端部を支持するためだけでなく、ジブマストが格納時倒伏姿勢を取るときにジブマスト先端部に設けられたロープ連結部を保持するためにも用いることができる。このため、ジブマストを弛緩許容倒伏姿勢及び格納時倒伏姿勢の各々で保持するとともにジブマストを起立姿勢で支持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーンの製造コストを削減できる。
【0026】
前記ジブマストの前記弛緩許容倒伏姿勢は、前記ジブマスト基端部から前記ジブマスト先端部へ向かうにつれて前記ジブから離間するように前記ジブマストが前記ジブの軸方向に対して傾斜した姿勢であり、前記ジブ姿勢保持装置は、前記ジブマストが前記弛緩許容倒伏姿勢を取ったときにその姿勢を保持するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装されるマスト姿勢保持部材をさらに有することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、ジブマストが前記のように傾斜した姿勢である弛緩許容倒伏姿勢を取ったときにジブマストとジブとの間に介装されるマスト保持部材によりそのジブマストを弛緩許容倒伏姿勢で保持できるため、例えばジブマスト先端部を補助クレーン等で吊るだけでジブマストを弛緩許容倒伏姿勢に保持する場合に比べて、より安定的にジブマストを弛緩許容倒伏姿勢に保持できる。
【0028】
前記マスト姿勢保持部材は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときに前記ジブマスト基端部を中心として前記ジブに沿う向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装可能に構成されていることが好ましい。
【0029】
こうすれば、マスト姿勢保持部材を、ジブマストを前記弛緩許容倒伏姿勢で保持するためだけでなく、ジブマストを前記起立姿勢で保持するためにも用いることができる。このため、ジブマストを弛緩許容倒伏姿勢と起立姿勢の各々で保持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーンの製造コストを削減できる。
【0030】
前記ジブマストは、前記取付対象部に前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられた下側マスト部材と、前記ロープ連結部が設けられ、前記下側マスト部材に対して進退可能に取り付けられた上側マスト部材とを有し、前記ジブマストの前記張設形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材が前記下側マスト部材に対して前記ロープ連結部が前記張設位置に配置される進出位置まで進出した状態であり、前記ジブマストの前記弛緩許容形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記ロープ連結部が前記弛緩許容位置に配置される退入位置まで前記上側マスト部材が前記下側マスト部材側へ退入した状態であってもよい。
【0031】
こうすれば、下側マスト部材とその下側マスト部材に対して進退可能な上側マスト部材とにより、伸縮することで前記張設形態と前記弛緩許容形態とを取り得るジブマストを構成することができる。
【0032】
この場合において、前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記進出位置まで進出したときにその進出位置で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材に対して固定する位置固定部材をさらに有することが好ましい。
【0033】
この構成によれば、上側マスト部材が前記進出位置まで進出したときに位置固定部材により当該進出位置で上側マスト部材を下側マスト部材に対して固定してジブマストを張設形態に保持できる。
【0034】
また、前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記進出位置を越えて前記下側マスト部材から進出するのを阻止する進出止め部をさらに有することが好ましい。
【0035】
この構成によれば、上側マスト部材を下側マスト部材から進出させてその上側マスト部材が前記進出位置に達したときにその上側マスト部材の進出を進出止め部によって止めることができる。このため、上側マスト部材を下側マスト部材から進出させすぎて上側マスト部材が誤って下側マスト部材から離脱するのを防ぐことができる。
【0036】
前記ジブマストは、前記取付対象部に前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられた下側マスト部材と、前記ロープ連結部が設けられ、前記下側マスト部材に対して前記ジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に接続された上側マスト部材とを有し、前記ジブマストの前記張設形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びるとともに前記上側マスト部材が前記下側マスト部材の延長線上でその下側マスト部材と同方向に延びる伸長姿勢を取る状態であり、前記ジブマストの前記弛緩許容形態は、前記下側マスト部材が前記取付対象部から前記ジブ先端部側へ向かうにつれて前記ジブからその背後へ離れるように延びる傾斜姿勢を取るとともに前記上側マスト部材が前記下側マスト部材に対する接続箇所から前記ブーム先端部側へ向かうにつれてさらに前記ジブの背後へ離れるように延びる屈曲姿勢を取る状態であってもよい。
【0037】
こうすれば、下側マスト部材とその下側マスト部材に対してジブ回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられた上側マスト部材とにより、屈伸することで前記張設形態と前記弛緩許容形態とを取り得るジブマストを構成することができる。
【0038】
この場合において、前記ジブマストは、前記上側マスト部材が前記伸長姿勢を取ったときにその伸長姿勢で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材に対して固定する姿勢固定部材をさらに有することが好ましい。
【0039】
この構成によれば、上側マスト部材が前記伸長姿勢を取ったときに姿勢固定部材によりその伸長姿勢で上側マスト部材を下側マスト部材に対して固定してジブマストを張設形態に保持できる。
【0040】
また、前記ジブマストは、前記下側マスト部材と前記上側マスト部材のいずれか一方に設けられ、前記上側マスト部材が前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動するのを阻止する回動阻止部をさらに有することが好ましい。
【0041】
この構成によれば、クレーンの分解時にブーム及びジブが旋回体から前方へ延びるように倒伏した状態で上側マスト部材が前記伸長姿勢を取ってジブマストが前記取付対象部から上方へ延びる起立姿勢を取り、ロープ連結部が前記張設位置に配置されている状態からロープ連結部を前記弛緩許容位置へ降下させるときに、上側マスト部材が前記伸長姿勢から前記屈曲姿勢と反対向きに回動するのを回動阻止部によって阻止できる。このため、ロープ連結部を前記弛緩許容位置へ降下させるときに上側マスト部材を本来意図している向きに回動させて前記屈曲姿勢へ移行させることができる。
【0042】
また、前記ジブ姿勢保持装置は、前記下側マスト部材が前記傾斜姿勢を取るとともに前記上側マスト部材が前記屈曲姿勢を取るときに前記ジブに対する前記下側マスト部材の姿勢を保持するとともに前記下側マスト部材に対する前記上側マスト部材の姿勢を保持する保持具をさらに有することが好ましい。
【0043】
この構成によれば、保持具により下側マスト部材を前記傾斜姿勢で保持できるとともに上側マスト部材を前記屈曲姿勢で保持できるため、例えば補助クレーンによって上側マスト部材を吊るだけでその上側マスト部材を前記屈曲姿勢で保持するとともに下側マスト部材を前記傾斜姿勢で保持する場合に比べて上側マスト部材をより安定的に前記屈曲姿勢で保持できるとともに下側マスト部材をより安定的に前記傾斜姿勢で保持できる。このため、ロープ連結部をより安定的に前記弛緩許容位置で保持でき、そのロープ連結部に対するジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープの連結作業を行いやすくすることができる。
【0044】
前記保持具は、前記下側マスト部材が前記傾斜姿勢を取ったときにその傾斜姿勢から前記ジブに近づく向きに回動するのを阻止するように当該下側マスト部材と前記ジブとの間に介装される下側保持具と、前記上側マスト部材が前記屈曲姿勢を取ったときにその屈曲姿勢から前記下側マスト部材に近づく向きに回動するのを阻止するように当該上側マスト部材と前記下側マスト部材との間に介装される上側保持具と、を含むことが好ましい。
【0045】
こうすれば、下側マスト部材を前記傾斜姿勢で保持するとともに上側マスト部材を前記屈曲姿勢で保持するための保持具を具体的に構成することができる。
【0046】
前記下側保持具は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときにそのジブマストが前記ジブに沿う向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ジブとの間に介装可能に構成され、前記上側保持具は、前記ジブマストが前記起立姿勢を取ったときにそのジブマストが前記ジブに沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するように当該ジブマストと前記ブーム先端部との間に介装可能に構成されていることが好ましい。
【0047】
この場合には、下側保持具を、下側マスト部材が前記傾斜姿勢を取ったときにその傾斜姿勢からジブに近づく向きに回動するのを阻止するためのみならず、ジブマストが起立姿勢を取ったときにそのジブマストがジブに沿う向きに回動するのを阻止するストッパとしても用いることができ、また、上側保持具を上側マスト部材が前記屈曲姿勢を取ったときにその屈曲姿勢から下側マスト部材に近づく向きに回動するのを阻止するためのみならず、ジブマストが起立姿勢を取ったときにそのジブマストがジブに沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するジブマストバックストップとしても用いることができる。このため、下側マスト部材を前記傾斜姿勢で保持するとともに上側マスト部材を前記屈曲姿勢で保持し、ジブマストを起立姿勢で保持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーンの製造コストを削減できる。
【0048】
また、本発明によるクレーンの組立方法は、前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備える。
【0049】
この組立方法によれば、前記クレーンの構成でジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを架設する作業にかかる作業者の負担を軽減できる理由と同様の理由により、ジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを架設する作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0050】
また、本発明によるクレーンの組立方法は、前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記ジブマストに前記弛緩許容倒伏姿勢を取らせるとともに前記倒伏時基端部保持部に前記ジブマスト基端部を保持させ、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記ジブマストを前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行させ、その起立姿勢へ移行した前記ジブマストの前記ジブマスト基端部を前記起立時基端部支持部に支持させてもよい。
【0051】
また、本発明によるクレーンの組立方法は、前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記下側マスト部材に前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材を前記退入位置まで前記下側マスト部材側へ退入させた状態にし、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材を前記下側マスト部材から前記進出位置まで進出させてもよい。
【0052】
また、本発明によるクレーンの組立方法は、前記クレーン本体に対して前記ブーム基端部を取り付けて前記ブームを前記クレーン本体から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部に対して前記ジブ基端部を取り付けて前記ジブを前記ブーム先端部から前方へ延びるように倒伏した姿勢で配置する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部に前記ジブ側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ジブ側支持ロープの他端部を連結して前記ジブ先端部と前記ロープ連結部との間に前記ジブ側支持ロープを架設する工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所に前記ブーム側支持ロープの一端部を連結するとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部に前記ブーム側支持ロープの他端部を連結して前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記ロープ連結部との間に前記ブーム側支持ロープを架設する工程と、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程と、前記ジブが前記所定の前傾姿勢を取るように前記ブームを起立させて、前記ジブ先端部と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ジブ側支持ロープを直線的に張った状態にするとともに前記ブームの前記ロープ連結箇所と前記張設位置に配置された前記ロープ連結部との間で前記ブーム側支持ロープを直線的に張った状態にすることにより、前記所定の前傾姿勢を取った前記ジブをその背後から前記ジブ側支持ロープと前記ブーム側支持ロープと前記ジブマストとによって支えてその所定の前傾姿勢で保持する工程と、を備え、前記ジブマストを前記弛緩許容形態にして前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置に配置する工程では、前記下側マスト部材に前記傾斜姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材に前記屈曲姿勢を取らせ、前記ジブマストを前記弛緩許容形態から前記張設形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記弛緩許容位置から前記張設位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材に前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢を取らせるとともに前記上側マスト部材に前記伸長姿勢を取らせてもよい。
【0053】
また、本発明によるクレーンの分解方法は、前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備える。
【0054】
この分解方法によれば、前記クレーンの構成で架設されたジブ側支持ロープを取り外す作業及び架設されたブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる理由と同様の理由により、架設されたジブ側支持ロープ及びブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0055】
また、本発明によるクレーンの分解方法は、前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記起立姿勢にある前記ジブマストの前記ジブマスト基端部を前記起立時基端部支持部から取り外した後、そのジブマストを前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させて前記倒伏時基端部保持部に前記ジブマスト基端部を保持させてもよい。
【0056】
また、本発明によるクレーンを分解方法は、前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記下側マスト部材が前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢で前記上側マスト部材を前記進出位置から前記退入位置まで前記下側マスト部材側へ退入させてもよい。
【0057】
また、本発明によるクレーンの分解方法は、前記ブームが前記クレーン本体から前方へ延びるとともにそのブームの前記ブーム先端部から前方へ前記ジブが延びるように前記ブーム及び前記ジブを倒伏させる工程と、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて、前記ジブ側支持ロープの他端部及び前記ブーム側支持ロープの他端部が連結された前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程と、倒伏した前記ジブの前記ジブ先端部から前記ジブ側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ジブ側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ロープ連結箇所から前記ブーム側支持ロープの一端部を取り外すとともに前記弛緩許容位置に配置された前記ロープ連結部から前記ブーム側支持ロープの他端部を取り外す工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム先端部から前記ジブ基端部を取り外して前記ジブを前記ブームから分離させる工程と、倒伏した前記ブームの前記ブーム基端部を前記クレーン本体から取り外して前記ブームを前記クレーン本体から分離させる工程と、を備え、前記ジブマストを前記張設形態から前記弛緩許容形態へ移行させて前記ロープ連結部を前記張設位置から前記弛緩許容位置へ移動させる工程では、前記取付対象部からその背後へ延びる姿勢にある前記下側マスト部材を前記傾斜姿勢へ移行させるとともに、前記伸長姿勢にある前記上側マスト部材を前記屈曲姿勢へ移行させてもよい。
【発明の効果】
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、ジブ側支持ロープを架設する作業及び架設されたジブ側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減しつつ、ブーム側支持ロープを架設する作業及び架設されたブーム側支持ロープを取り外す作業にかかる作業者の負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の第1実施形態によるクレーンの側面図である。
図2】第1実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図3】第1実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図4】第1実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図5】第1実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図6】本発明の第2実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図9図8中のジブマストのIX部分の当該ジブマストの軸方向に沿った断面を拡大して示す図である。
図10】本発明の第3実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図11】本発明の第3実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態によるクレーンの起伏部材が倒伏した状態を示す側面図であってその起伏部材及びジブ姿勢保持装置の組み立て工程を示す図である。
図13図12中のジブマストの上側マスト部材と下側マスト部材との接続箇所であるXIII部分を部分的に拡大して示す図である。
図14図13に示した上側マスト部材と下側マスト部材との接続箇所を図13中の矢印XIV方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0061】
(第1実施形態)
まず、図1図5を参照して、本発明の第1実施形態によるクレーン100の構成について説明する。
【0062】
本発明の第1実施形態によるクレーン100は、図1に示すように、自走可能な走行体1と、その走行体1上に旋回可能に搭載された旋回体2と、吊り作業を行うために旋回体2に起伏可能に取り付けられた起伏部材3と、を備えている。旋回体2は、本発明におけるクレーン本体の一例である。
【0063】
起伏部材3は、ブーム5と、ジブ6と、ジブ連結ピン7と、ジブ姿勢保持装置8と、支持ピン9と、を有する。
【0064】
ブーム5は、前記旋回体2に起伏可能に取り付けられている。このブーム5は、直線的に延びるラチス構造のブーム本体11と、そのブーム本体11に取り付けられたブーム側ロープ連結箇所12と、を有する。
【0065】
ブーム本体11は、その長手方向の一端部であるブーム基端部14と、そのブーム基端部14と反対側の端部であるブーム先端部15と、を有する。ブーム基端部14は、旋回体2の前端部に対して当該旋回体2の左右方向に延びる回動軸回りに回動可能に取り付けられている。ブーム基端部14がこのように旋回体2に取り付けられることによって、ブーム5が当該ブーム基端部14の回動軸を支点として起伏可能となっている。ブーム基端部14は、旋回体2に対して分離可能に取り付けられている。
【0066】
ブーム本体11は、図1に示すようにブーム5が起立した状態で前方を向く腹面11aと、その状態で後方を向く背面11bとを有する。腹面11aは、図2に示すようにブーム5が倒伏した状態では下方を向く面であり、背面11bは、同状態で上方を向く面である。
【0067】
ブーム側ロープ連結箇所12は、ジブ姿勢保持装置8の後述のブーム側支持ロープ23の一端部が分離可能に連結される部分である。このブーム側ロープ連結箇所12は、ブーム先端部15からブーム基端部14へ向かって所定距離だけ離れた位置に配置され、ブーム本体11の背面11b上に設けられている。
【0068】
ジブ6は、ブーム先端部15に対してブーム5の回動軸(ブーム基端部14の回動軸)と平行な軸回りに回動可能に取り付けられており、そのブーム先端部15に対して着脱可能となっている。このジブ6は、直線的に延びており、ラチス構造を有する。ジブ6は、図1に示すようにブーム5とともに起立した状態で前方を向く腹面6aと、その状態で後方を向く背面6bとを有する。腹面6aは、図2に示すようにブーム5及びジブ6が倒伏した状態では下方を向く面であり、背面6bは、同状態で上方を向く面である。また、ジブ6は、その長手方向(延び方向)の一端部であるジブ基端部17と、そのジブ基端部17と反対側の端部であるジブ先端部18と、を有する。
【0069】
ジブ基端部17は、ブーム先端部15に対してブーム5の回動軸と平行に延びる軸回りに回動可能に取り付けられている。具体的には、ジブ基端部17は、ブーム5の回動軸と平行に延びるジブ連結ピン7によりブーム先端部15に対して連結され、このジブ連結ピン7を中心としてブーム先端部15に対して回動可能となっている。ジブ基端部17は、ブーム先端部15に対して着脱可能となっている。すなわち、ジブ基端部17は、ジブ連結ピン7を当該ジブ基端部17及びブーム先端部15から取り外すことによってブーム先端部15から分離できるようになっている。
【0070】
ジブ基端部17は、本発明における取付対象部の一例であり、ジブ姿勢保持装置8の後述のジブマスト26が起立姿勢を取るときに当該ジブ基端部17に取り付けられる。具体的に、ジブ基端部17は、ジブ姿勢保持装置8の後述のジブマスト26が起立姿勢を取るときにそのジブマスト26の基端部であるジブマスト基端部36が取り付けられてそのジブマスト基端部36を支持する起立時基端部支持部21を有する。起立時基端部支持部21は、ジブ基端部17の背面6b側に設けられている。起立時基端部支持部21は、ジブマスト基端部36を後述のように支持ピン9を介して支持するものであり、この起立時基端部支持部21には支持ピン9が挿嵌される図略の貫通孔が設けられている。
【0071】
ジブ先端部18は、ジブ姿勢保持装置8の後述のジブ側支持ロープ22の一端部が分離可能に連結されるジブ側ロープ連結箇所18aを有する。
【0072】
ジブ姿勢保持装置8は、ブーム5が起立した状態でそのブーム5に対してジブ6を所定の前傾姿勢、具体的にはブーム5の軸方向(延び方向)に対して所定角度で前方に傾いた所定の回動姿勢で保持するものである。ジブ姿勢保持装置8は、ジブ側支持ロープ22と、ブーム側支持ロープ23と、ロープ連結部24と、2つの連結ピン25a,25bと、ジブマスト26と、倒伏時基端部保持部27と、マスト姿勢保持部材28と、ジブマストバックストップ29と、ガイド部33と、格納用保持部34と、を有する。
【0073】
ジブ側支持ロープ22は、後述のようにジブマスト26の先端部であるジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24とジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aとの間に架設されてそのロープ連結部24とジブ先端部18とを繋ぐものである。このジブ側支持ロープ22は、ジブ側ロープ連結箇所18aに連結される一端部と、その反対側の端部であってロープ連結部24に連結される他端部と、を有する。当該ジブ側支持ロープ22の一端部はジブ側ロープ連結箇所18aに対して図略の連結ピンを介して連結され、当該ジブ側支持ロープ22の他端部はロープ連結部24に対して図略の連結ピンを介して連結される。
【0074】
ブーム側支持ロープ23は、後述のようにジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間に架設されてそのロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12とを繋ぐものである。このブーム側支持ロープ23は、ブーム側ロープ連結箇所12に連結される一端部と、その反対側の端部であってロープ連結部24に連結される他端部と、を有する。当該ブーム側支持ロープ23の一端部はブーム側ロープ連結箇所12に対して図略の連結ピンを介して連結され、当該ブーム側支持ロープ23の他端部はロープ連結部24に対して図略の連結ピンを介して連結される。
【0075】
ロープ連結部24は、ジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部が分離可能に連結されるものであり、ジブマスト26の先端部である後述のジブマスト先端部37に取り付けられている。ジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部は、2つの連結ピン25a,25bの対応するものを介してロープ連結部24に連結される。
【0076】
具体的に、ロープ連結部24には、ジブ側支持ロープ22の他端部を連結するための連結ピン25aが挿嵌される図略の一方の孔と、ブーム側支持ロープ23の他端部を連結するための連結ピン25bが挿嵌される図略の他方の孔とが設けられている。前記一方の孔に連結ピン25aが挿嵌されるとともにその連結ピン25aにジブ側支持ロープ22の他端部が結合されることによってジブ側支持ロープ22の他端部がロープ連結部24に連結され、前記他方の孔に連結ピン25bが挿嵌されるとともにその連結ピン25bにブーム側支持ロープ23の他端部が結合されることによってブーム側支持ロープ23の他端部がロープ連結部24に連結されている。そして、連結ピン25aを前記一方の孔から抜き出してロープ連結部24から取り外すことにより、ロープ連結部24に対するジブ側支持ロープ22の他端部の連結が解除され、また、連結ピン25bを前記他方の孔から抜き出してロープ連結部24から取り外すことにより、ロープ連結部24に対するブーム側支持ロープ23の他端部の連結が解除されるようになっている。
【0077】
ジブマスト26は、ジブ6が前記所定の前傾姿勢を取るときにロープ連結部24に連結されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23の各々が直線的に張る程度にジブ基端部17及びブーム先端部15からそれらの背後へ離れた張設位置でロープ連結部24を支持するものであり、その直線的に張ったジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23とともに前記所定の前傾姿勢にあるジブをその背後から支えるものである。なお、ブーム5についての背後とは、ブーム本体11の背面11bに対して腹面11aと反対側のことを意味し、ジブ6についての背後とは、ジブ6の背面6bに対して腹面6aと反対側のことを意味する。ジブマスト26は、直線的に延びる円管状もしくは角管状をなしている。ジブマスト26は、その長手方向の一端部であるジブマスト基端部36と、そのジブマスト基端部36と反対側の端部であるジブマスト先端部37と、を有する。
【0078】
ジブマスト26は、ジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24を前記張設位置に配置して支持する張設形態(図1及び図5参照)と、そのロープ連結部24を前記張設位置よりもブーム先端部15及びジブ基端部17に近い位置であってジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aからの直線距離がジブ側支持ロープ22の長さよりも小さく且つブーム側ロープ連結箇所12からの直線距離がブーム側支持ロープ23の長さよりも小さくなる位置である弛緩許容位置(図3参照)に配置する弛緩許容形態(図3参照)と、当該ジブマスト26がジブ6に沿うように配置されてジブ6に対して固定される格納形態(図2参照)と、を取り得るように構成されている。
【0079】
前記張設形態は、クレーン100が組み立てられた状態で図1に示すようにブーム5及びジブ6が起立してクレーン作業を行うときにジブマスト26が取る形態である。ジブマスト26は、この張設形態では、ジブ6の回動軸に対して直交し且つジブ6の軸方向(長手方向)に対して直交する方向に沿ってジブ基端部17からその背後へ延びる起立姿勢を取る。ジブマスト26が起立姿勢を取るときには、ジブマスト基端部36が起立時基端部支持部21によって支持される。ジブマスト基端部36は、その外面が円弧状の曲面となっているクレビスからなる。このジブマスト基端部36は、ジブ6の回動軸と平行な軸回りに回動可能に起立時基端部支持部21に支持される。具体的には、ジブマスト基端部36は、ジブ6の回動軸と平行に延びる支持ピン9を介して起立時基端部支持部21に支持される。ジブマスト基端部36には、支持ピン9が挿通される図略の貫通孔が設けられており、この貫通孔と起立時基端部支持部21に設けられた貫通孔とに支持ピン9は挿脱可能となっている。このため、支持ピン9をジブマスト基端部36の貫通孔及び起立時基端部支持部21の貫通孔から抜き出すことによって、ジブマスト基端部36は起立時基端部支持部21から脱着可能となっている。
【0080】
前記弛緩許容形態は、クレーン100の組み立て時にロープ連結部24とジブ先端部18との間にジブ側支持ロープ22を架設するとともにロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間にブーム側支持ロープ23を架設するとき及びそれらの架設されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23をクレーン100の分解時に取り外すときにジブマスト26が取る形態である。ジブマスト26は、前記弛緩許容形態として、ジブマスト先端部37がブーム先端部15寄りに配置されるとともにジブマスト基端部36がジブ先端部18寄りに配置された状態でロープ連結部24が前記弛緩許容位置に配置されるように倒伏した姿勢である弛緩許容倒伏姿勢(図3参照)を取る。この弛緩許容倒伏姿勢は、ジブマスト基端部36からジブマスト先端部37へ向かうにつれて徐々にジブ6からその背後に離間するようにジブマスト26がジブ6の軸方向に対して傾斜した姿勢である。
【0081】
ロープ連結部24に対してジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部を着脱するときには、図3に示すように、ブーム5及びジブ6がほぼ地面に沿って倒伏した状態とされ、この状態のブーム5及びジブ6に対してジブマスト26が弛緩許容倒伏姿勢を取ってロープ連結部24が前記弛緩許容位置に配置された状態では、ロープ連結部24は、ジブ基端部17の上方でブーム先端部15の背面の高さ位置近傍の高さ位置に配置される。この状態でのロープ連結部24の地面からの高さ位置は、作業者が地面上からもしくは地面に載置した台上からロープ連結部24に対するジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部の着脱作業を行える程度の高さ位置である。
【0082】
前記格納形態は、クレーン100の分解時及び輸送時にジブマスト26が取る形態である。すなわち、クレーン100の分解のためにジブ6がブーム5から分離されるときには、ジブマスト26は、この格納形態を取った状態でジブ6と一体的に取り扱われ、その後、輸送されるときもこの格納形態でジブ6と一体に輸送されるようになっている。ジブマスト26は、この格納形態では、前記弛緩許容倒伏姿勢よりもさらに倒伏した姿勢であってジブマスト先端部37がブーム先端部15寄りに配置されるとともにジブマスト基端部36がジブ先端部18寄りに配置された状態でジブ6に沿うように倒伏した姿勢である格納時倒伏姿勢を取る。
【0083】
倒伏時基端部保持部27は、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢及び前記格納時倒伏姿勢を取るとき、また、その弛緩許容倒伏姿勢と格納時倒伏姿勢の一方から他方への移行中に、ジブマスト基端部36を保持する部分である。倒伏時基端部保持部27は、ジブ6のうちジブ基端部17からジブ先端部18へ向かって離れた所定箇所、具体的にはジブ基端部17の起立時基端部支持部21からジブ先端部18へ向かって所定距離だけ離れた位置でジブ6の背面6b上に設けられている。倒伏時基端部保持部27は、円弧状をなしているとともにジブ基端部17側(起立時基端部支持部21側)へ向かって開口しており、その開口からジブマスト基端部36を受け入れて保持するようになっている。また、倒伏時基端部保持部27は、その円弧状の内面により、クレビスからなるジブマスト基端部36の円弧状曲面である外面を受け、それによって、ジブマスト基端部36がジブ6の回動軸(ジブ基端部17の回動軸)と平行な軸回りに回動可能となるように当該ジブマスト基端部36を保持する。また、倒伏時基端部保持部27は、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行するときには、保持しているジブマスト基端部36が当該倒伏時基端部保持部27からジブ基端部17側へ離脱するのを許容する。
【0084】
マスト姿勢保持部材28は、図3に示すように、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢を取ったときにその姿勢を保持するようにジブマスト26とジブ6との間に介装されるものである。マスト姿勢保持部材28は、棒状の部材であり、前記弛緩許容倒伏姿勢のジブマスト26とジブ6との間に介装される際、前記弛緩許容倒伏姿勢のジブマスト26及びジブ6の軸方向に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該マスト姿勢保持部材28の長手方向の一端部がジブマスト26に接続されるとともに、当該マスト姿勢保持部材28の一端部と反対側の端部である他端部がジブ6に接続される。マスト姿勢保持部材28の一端部はジブマスト26に対して着脱可能であり、マスト姿勢保持部材28の他端部はジブ6に対して着脱可能となっている。ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢(前記弛緩許容形態)から前記起立姿勢(前記張設形態)又は前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)へ移行させるときには、ジブマスト26に対するマスト姿勢保持部材28の接続が外され、マスト姿勢保持部材28はそのジブマスト26の姿勢の移行を阻害しない位置に配置される。
【0085】
また、マスト姿勢保持部材28は、ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢で保持するためだけではなく、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するためのストッパとしても用いられる。すなわち、マスト姿勢保持部材28は、図1及び図5に示すように、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにジブマスト基端部36(支持ピン9)を中心として前方へ回動するのを阻止するようにジブマスト26とジブ6との間に介装可能に構成されている。マスト姿勢保持部材28が前記起立姿勢のジブマスト26とジブ6との間に介装される際、マスト姿勢保持部材28は前記起立姿勢のジブマスト26及びジブ6の軸方向に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該マスト姿勢保持部材28の一端部がジブマスト26に接続されるとともに、当該マスト姿勢保持部材28の他端部がジブ6に接続される。この場合も、マスト姿勢保持部材28の一端部はジブマスト26に対して着脱可能であり、マスト姿勢保持部材28の他端部はジブマスト26に対して着脱可能となっている。ジブマスト26を前記起立姿勢(前記張設形態)から前記弛緩許容倒伏姿勢(前記弛緩許容形態)又は前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)へ移行させるときには、ジブマスト26に対するマスト姿勢保持部材28の接続が外され、マスト姿勢保持部材28はそのジブマスト26の姿勢の移行を阻害しない位置に配置される。
【0086】
また、マスト姿勢保持部材28は、上記のようにジブマスト26とジブ6との間に介装された状態で、起伏部材3が起立した姿勢を取ったときにジブ6が後向きに回動するのを阻止するジブバックストップとしても機能する。
【0087】
ジブマストバックストップ29は、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するためのものである。具体的には、ジブマストバックストップ29は、棒状の部材であり、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにジブマスト基端部36(支持ピン9)を中心として前記反対向きに回動するのを阻止するようにジブマスト26とブーム先端部15との間に介装される。ジブマスト26は、前記起立姿勢を取ったときに、前記マスト姿勢保持部材28とこのジブマストバックストップ29とによる当該ジブマスト26の前後両側への回動の阻止により、その起立姿勢で保持されるようになっている。ジブマストバックストップ29がジブマスト26とブーム先端部15との間に介装される際、ジブマストバックストップ29は前記起立姿勢のジブマスト26及びブーム5の軸方向(ブーム本体11の軸方向)に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該ジブマストバックストップ29の長手方向の一端部がジブマスト26に接続されるとともに、その一端部と反対側の端部である他端部がブーム先端部15に接続される。ジブマストバックストップ29の一端部はジブマスト26に対して着脱可能であり、ジブマストバックストップ29の他端部はブーム先端部15に対して着脱可能となっている。ジブマストバックストップ29は、ジブマスト26を前記起立姿勢(前記張設形態)から前記弛緩許容倒伏姿勢(前記弛緩許容形態)又は前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)へ移行させるときには、ジブマスト26及びブーム先端部15から取り外されるようになっている。
【0088】
ガイド部33は、ジブマスト26が前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行するときにジブマスト基端部36を起立時基端部支持部21から倒伏時基端部保持部27へ案内し、また、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢から前記起立姿勢へ移行するときにジブマスト基端部36を倒伏時基端部保持部27から起立時基端部支持部21へ案内するものである。ガイド部33は、起立時基端部支持部21と倒伏時基端部保持部27との間でジブ6の軸方向に沿って延びるようにジブ6の背面6b上に設置されている。ガイド部33の一端は起立時基端部支持部21に達し、ガイド部33の他端は倒伏時基端部保持部27に達している。ガイド部33は、その延び方向に沿って延びる凹溝状の図略のガイド溝を有する。ジブマスト基端部36は、このガイド溝の延び方向に沿ってガイド部33に対して摺動可能となるように当該ガイド溝に嵌合するようになっており、当該ガイド溝によって起立時基端部支持部21と倒伏時基端部保持部27の一方から他方へ案内される。このため、ジブマスト基端部36がガイド溝によって案内されるときに左右方向へぶれるのが抑制されるようになっている。
【0089】
また、このガイド部33は、図5に示すように、ブーム5が倒伏した状態でジブ先端部18が地面に接触するとともにジブ側支持ロープ22がジブマスト先端部37のロープ連結部24とジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aとの間で直線的に張り且つブーム側支持ロープ23がジブマスト先端部37のロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間で直線的に張る程度にジブ6がブーム5に対して倒伏したときに前下がりに傾斜する姿勢でジブ6に取り付けられている。
【0090】
格納用保持部34は、図2に示すように、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)を取るときにそのジブマスト26を保持するためのものである。この格納用保持部34は、倒伏時基端部保持部27と起立時基端部支持部21との間の位置でガイド部33に設けられている。なお、当該第1実施形態において、格納用保持部34は、ジブ6を構成する部材(例えば、ジブ6の背面6b側のラチス構造を構成する斜材等)に取り付けられてもよい。格納用保持部34は、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢を取ったときにそのジブマスト26のジブマスト先端部37とジブマスト基端部36との間の部分を保持する。この格納用保持部34によりジブマスト26のジブマスト先端部37とジブマスト基端部36との間の部分が保持されるとともに、前記倒伏時基端部保持部27によりジブマスト基端部36が保持され、さらに前記起立時基端部支持部21によりロープ連結部24が保持されることによって、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢で保持されるようになっている。
【0091】
格納用保持部34は、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢を取った状態でジブ基端部17の回動軸に平行な方向においてそのジブマスト26の両側に分かれて配置される一対の保持部側板部34aを有する。なお、各図では、一対の保持部側板部34aのうち各図の紙面の手前側に位置する一方の保持部側板部34aのみが表されている。一対の保持部側板部34aは、前記格納時倒伏姿勢を取った状態のジブマスト26から上方に突出する突出部分をそれぞれ有し、この各突出部分に支持ピン9を挿嵌可能な図略の貫通孔が設けられている。前記格納時倒伏姿勢を取ったジブマスト26は前記一対の保持部側板部34a間に配置され、その状態でこの一対の保持部側板部34aの貫通孔に支持ピン9が挿嵌される。これにより、ジブ基端部17の回動軸に平行な方向へのジブマスト26の変位が一対の保持部側板部34aにより阻止されるとともに、ジブマスト26の浮き上がりが支持ピン9により阻止され、それによってジブマスト26が保持されるようになっている。また、支持ピン9は、一対の保持部側板部34aの貫通孔から抜き出して格納用保持部34から取り外すことが可能となっており、ジブマスト26を前記格納時倒伏姿勢から他の姿勢へ移行させるときには、当該支持ピン9が格納用保持部34から取り外されて格納用保持部34からのジブマスト26の離脱が許容されるようになっている。なお、この格納用保持部34においてジブマスト26の保持に用いられる支持ピン9として、起立時基端部支持部21においてジブマスト基端部36を支持するための支持ピン9が流用されている。
【0092】
また、ガイド部33のうち起立時基端部支持部21と格納用保持部34との間の位置には、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢を取った状態でジブマスト先端部37のロープ連結部24と結合してそのロープ連結部24を係止する図略の係止部が設けられている。
【0093】
また、当該第1実施形態によるクレーン100は、図1に示すように、運転室38と、カウンタウェイト39と、ブーム起伏装置40と、ブームバックストップ41と、主巻ウインチ42と、主フック43と、補巻ウインチ44と、補フック45とをさらに備えている。
【0094】
運転室38は、その内部でオペレータがクレーン100の操縦を行う部分であり、ブーム基端部14の側方で旋回体2の最前部に設けられている。運転室38内には、主巻ウインチ42及び補巻ウインチ44のそれぞれの駆動を指示するための図略の操作レバーが個別に設けられている。
【0095】
カウンタウェイト39は、クレーン100の安定性を確保するための錘であり、旋回体2の最後部に搭載されている。
【0096】
ブーム起伏装置40は、ブーム5を起伏動作させる装置である。このブーム起伏装置40は、ブームマスト47と、ペンダントロープ48と、マスト側シーブ49と、図略の旋回体側シーブと、図略の起伏ウインチと、を有する。
【0097】
ブームマスト47は、ブーム5を起伏させるために用いられるものであり、ブーム5の後方に配置されている。ブームマスト47は、ブーム5の回動軸(ブーム基端部14の回動軸)と平行な軸回りに回動可能に旋回体2に取り付けられている。具体的には、ブームマスト47は、その長手方向の一端部であるブームマスト基端部52と、そのブームマスト基端部52と反対側の端部であるブームマスト先端部54とを有しており、ブームマスト基端部52がブーム5の回動軸と平行な軸回りに回動可能に旋回体2に取り付けられている。
【0098】
ペンダントロープ48は、ブームマスト先端部54とブーム先端部15とを繋いでいる。すなわち、ブーム先端部15は、ペンダントロープ48を介してブームマスト先端部54に接続されている。
【0099】
マスト側シーブ49は、旋回体2の左右方向に延びる軸回りに回転可能にブームマスト先端部54に取り付けられている。
【0100】
図略の旋回体側シーブは、旋回体2の左右方向に延びる軸回りに回転可能に旋回体2の後端部に取り付けられている。
【0101】
図略の起伏ウインチは、旋回体2に搭載されており、起伏ロープ56の巻き取り及び繰り出しを行うことによりブーム5を起伏させる。起伏ウインチは、起伏ロープ56が巻回された図略の起伏ドラムを有する。起伏ロープ56は、起伏ドラムから引き出され、マスト側シーブ49と図略の旋回体側シーブとに掛け回されている。起伏ウインチは、起伏ドラムを正回転させて起伏ロープ56を巻き取ることによりマスト側シーブ49を図略の旋回体側シーブ側へ引き寄せてブームマスト47を後向きに回動させ、それによって、ブームマスト47がペンダントロープ48を介してブーム先端部15を後方へ引っ張ってブーム5を起立させる。一方、起伏ウインチは、起伏ドラムを逆回転させて起伏ロープ56を繰り出すことによりブームマスト47が前向きに回動するのを許容し、それによって、ブームマスト47にペンダントロープ48を介してブーム先端部15を支持させながら、ブーム5を倒伏させる。
【0102】
ブームバックストップ41は、ブーム5の所定の起立角度以上の後方への回動を阻止するものである。ブームバックストップ41は、ブーム基端部14からブーム先端部15寄りに所定距離だけ離れた位置でブーム本体11の背面11bに接続されている。
【0103】
主巻ウインチ42は、主巻ロープ58の巻き取り及び繰り出しを行うことにより主フック43を昇降させるものであり、旋回体2に搭載されている。主巻ウインチ42は、主巻ロープ58が巻回された主巻ドラム42aを有する。主巻ロープ58は、主巻ドラム42aから引き出されてブーム先端部15に至り、そのブーム先端部15から主フック43を吊り下げる。主巻ウインチ42は、主巻ドラム42aを正回転させて主巻ロープ58を巻き取ることにより主フック43を上昇させる一方、主巻ドラム42aを逆回転させて主巻ロープ58を繰り出すことにより主フック43を降下させる。主巻ウインチ42は、運転室38内に設けられた対応する操作レバーの操作に応じて駆動するようになっている。
【0104】
補巻ウインチ44は、補巻ロープ60の巻き取り及び繰り出しを行うことにより補フック45を昇降させるものであり、旋回体2に搭載されている。補巻ウインチ44は、補巻ロープ60が巻回された補巻ドラム44aを有する。補巻ロープ60は、補巻ドラム44aから引き出されてジブ先端部18に至り、そのジブ先端部18から補フック45を吊り下げる。補巻ウインチ44は、補巻ドラム44aを正回転させて補巻ロープ60を巻き取ることにより補フック45を上昇させる一方、補巻ドラム44aを逆回転させて補巻ロープ60を繰り出すことにより補フック45を降下させる。補巻ウインチ44は、運転室38内に設けられた対応する操作レバーの操作に応じて駆動するようになっている。
【0105】
次に、当該第1実施形態によるクレーン100の組立方法について説明する。
【0106】
クレーン100は、走行体1、旋回体2、ブーム5及びジブ6等の構成要素に分解された状態で輸送された後、作業現場にてそれらの輸送された構成要素から組み立てられる。この組み立ての際、まず、走行体1上に旋回体2が搭載され、その旋回体2に対してブーム5が連結される。このとき、ブーム5は旋回体2から前方へ地面に沿って延びるように倒伏した状態で配置され、ブーム基端部14が旋回体2の前端部に連結される。このとき、ブーム先端部15は、地面上に載置されたブーム先端部支持台104上に載置される。
【0107】
次に、ジブ6がブーム先端部15に接続される。このとき、ジブ6は、図2に示すようにブーム先端部15から前方へ地面に沿って延びるように倒伏した状態で配置され、ジブ基端部17がブーム先端部15に接続される。このとき、ジブ先端部18は、地面上に載置されたジブ先端部支持台102上に載置される。ジブ6には、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)で固定されている。
【0108】
次に、ジブマスト26を格納用保持部34に保持している支持ピン9を格納用保持部34から取り外す。また、ジブマスト先端部37のロープ連結部24とガイド部33に設けられた図略の係止部との結合を解除する。これにより、格納用保持部34におけるジブマスト26の固定が解除される。
【0109】
その後、ジブマスト先端部37を前記弛緩許容位置(図3参照)へ移動させる。具体的には、図略の補助クレーンによりジブマスト先端部37を前記弛緩許容位置まで吊り上げる。このジブマスト先端部37の吊り上げにより、ジブマスト基端部36は倒伏時基端部保持部27に保持されたままで、ジブマスト26がそのジブマスト基端部36を支点として上向きに回動し、前記弛緩許容倒伏姿勢(前記弛緩許容形態)に移行する。これにより、ロープ連結部24が前記弛緩許容位置に配置される。
【0110】
次に、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢を取った状態で当該ジブマスト26の姿勢を固定する。具体的には、ジブ6の背面6bに沿って倒伏した姿勢でジブ6に固定されていたマスト姿勢保持部材28を起こしてジブ6の背面6bと前記弛緩許容倒伏姿勢のジブマスト26との間に介装する。このとき、起こしたマスト姿勢保持部材28の先端部をジブマスト26の所定箇所に接続する。
【0111】
次に、ジブ側支持ロープ22をジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aとジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24との間に架設するとともに、ブーム側支持ロープ23をブーム5のブーム側ロープ連結箇所12とジブマスト先端部37のロープ連結部24との間に架設する。具体的には、ジブ側支持ロープ22の一端部をジブ側ロープ連結箇所18aに図略の連結ピンによって連結するとともにジブ側支持ロープ22の他端部をロープ連結部24に連結ピン25aによって連結し、ブーム側支持ロープ23の一端部をブーム側ロープ連結箇所12に図略の連結ピンによって連結するとともにブーム側支持ロープ23の他端部をロープ連結部24に連結ピン25bによって連結する。このようにして架設されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23は弛んだ状態になっている。
【0112】
次に、ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢から起立させる。具体的には、まずジブマスト26に対するマスト姿勢保持部材28の先端部の接続を解除してマスト姿勢保持部材28をジブ6の背面6bに沿うように倒伏させ、その後、前記補助クレーンによりジブマスト先端部37を前記弛緩許容位置から吊り上げる。このジブマスト先端部37の吊り上げに伴って、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢からジブマスト基端部36を支点として上向きに回動しつつ、ジブマスト基端部36がガイド部33によって案内されて倒伏時基端部保持部27から起立時基端部支持部21へ移動する。これにより、図4に示すようにジブマスト26が起立する。そして、上述のようにジブマスト26の前記格納時倒伏姿勢での固定を解除した際に格納用保持部34から取り外した支持ピン9により、ジブマスト基端部36を起立時基端部支持部21に取り付ける。
【0113】
その後、ジブ先端部18の下からジブ先端部支持台102を取り除いてジブ先端部18を地面に接地させるとともに、ジブ6がブーム5に対して前記所定の前傾姿勢になるまでブーム5を上向きに回動させる。換言すれば、ジブ側支持ロープ22がロープ連結部24とジブ側ロープ連結箇所18aとの間で直線的に張った状態になり且つブーム側支持ロープ23がロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間で直線的に張った状態になるまでブーム5を上向きに回動させる。これにより、図5に示すように、ジブマスト26が前記起立姿勢(前記張設形態)になり、ロープ連結部24が前記張設位置に配置される。
【0114】
次に、ジブマスト26を前記起立姿勢で固定する。具体的には、マスト姿勢保持部材28を起こしてジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装してジブマスト26の前方への回動(ジブ6に沿う向きへの回動)を阻止するとともに、ブーム先端部15とジブマスト26との間にジブマストバックストップ29を介装してジブマスト26の後方への回動(ジブ6に沿う向きと反対向きへの回動)を阻止し、それによってジブマスト26を前記起立姿勢で固定する。
【0115】
その後、旋回体2上に搭載された主巻ウインチ42の主巻ドラム42aから主巻ロープ58を引き出してブーム先端部15に至るように当該主巻ロープ58を配索するとともにその主巻ロープ58に主フック43をブーム先端部15から吊り下げられるように取り付け、また、旋回体2上に搭載された補巻ウインチ44の補巻ドラム44aから補巻ロープ 60を引き出してジブ先端部18に至るように当該補巻ロープ60を配索するとともにその補巻ロープ60に補フック45をジブ先端部18から吊り下げられるように取り付ける。最後に、ブーム起伏装置40によりブーム5を図1に示すように起立させる。
【0116】
以上のようにして、当該第1実施形態によるクレーン100の組み立てが行われる。
【0117】
次に、当該第1実施形態によるクレーン100の分解方法について説明する。
【0118】
まず、クレーン100のブーム5を、図1のように起立した状態から図5のようにジブ先端部18が地面に接触するまで前方に倒伏させる。その後、ブーム5から主巻ロープ58及び主フック43等を取り外すとともに、ジブ6から補巻ロープ60及び補フック45等を取り外す。
【0119】
次に、マスト姿勢保持部材28によるジブマスト26の前方への回動阻止を解除するとともに、ジブマストバックストップ29によるジブマスト26の後方への回動阻止を解除する。具体的には、補助クレーンによりジブマスト先端部37を吊って支持し、その状態において、ジブマスト26とジブ6との間に介装されているマスト姿勢保持部材28の一端部とジブマスト26との接続を解除し、そのマスト姿勢保持部材28を、マスト姿勢保持部材28の起立姿勢から弛緩許容倒伏姿勢への移行を阻害しない位置に配置する。また、同状態において、ジブマスト26とブーム先端部15との間に介装されているジブマストバックストップ29をジブマスト26及びブーム先端部15から取り外す。
【0120】
そして、ブーム5及びジブ6が図5に示す姿勢を取っている状態で、ジブマスト26を弛緩許容倒伏姿勢へ倒伏させる。このジブマスト26に取らせる弛緩許容倒伏姿勢は、基本的には図3に示されているジブマスト26の姿勢と同様(ただし、ブーム5及びジブ6は図5に示す姿勢を取っている)、ジブマスト先端部37がブーム先端部15寄りに配置されるとともにジブマスト基端部36がジブ先端部18寄りに配置されて倒伏時基端部保持部27に保持された状態でロープ連結部24が弛緩許容位置に配置される倒伏姿勢である。このジブマスト26を弛緩許容倒伏姿勢へ倒伏させる際、具体的には、補助クレーンによりジブマスト先端部37を吊って支持した状態で、支持ピン9をジブマスト基端部36の貫通孔及び起立時基端部支持部21の貫通孔から抜き出して起立時基端部支持部21に対するジブマスト基端部36の結合を解除し、その後、補助クレーンによってジブマスト先端部37を吊って支持しながら前記弛緩許容位置へ移動させる。それに伴って、ジブマスト基端部36は図5に示されるガイド部33の傾斜に沿って前方へ移動して倒伏時基端部保持部27に達するとともに、ジブマスト26は起立姿勢から倒伏して弛緩許容倒伏姿勢へ移行する。ジブマスト26が弛緩許容倒伏姿勢へ移行することによって、ジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23は大きく弛んだ状態になる。
【0121】
そして、ジブマスト26が弛緩許容倒伏姿勢を取った状態で、マスト姿勢保持部材28をジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装してそのジブマスト26の姿勢を固定する。
【0122】
次に、ジブ側支持ロープ22をジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aとジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24とから取り外すとともに、ブーム側支持ロープ23をブーム5のブーム側ロープ連結箇所12とジブマスト先端部37のロープ連結部24とから取り外す。具体的には、ジブ側支持ロープ22の一端部とジブ側ロープ連結箇所18aとを連結している図略の連結ピンを取り外すとともにジブ側支持ロープ22の他端部とロープ連結部24とを連結している連結ピン25aを取り外し、ブーム側支持ロープ23の一端部とブーム側ロープ連結箇所12とを連結している図略の連結ピンを取り外すとともにブーム側支持ロープ23の他端部とロープ連結部24とを連結している連結ピン25bを取り外す。
【0123】
その後、マスト姿勢保持部材28によるジブマスト26の弛緩許容倒伏姿勢での固定を解除する。具体的には、ジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装されているマスト姿勢保持部材28の一端部とジブマスト26との接続を解除し、そのマスト姿勢保持部材28をジブマスト26のさらなる倒伏を阻害しない位置、具体的にはジブ6の背面6bに沿う位置に配置してジブ6に固定する。
【0124】
その後、ジブマスト先端部37を補助クレーンで吊って支持しながら弛緩許容位置からさらに降下させる。それにより、ジブマスト基端部36は倒伏時基端部保持部27に保持されたままで、ジブマスト26が、ジブマスト基端部36を支点として下向きに回動し、ジブ6に沿うように倒伏した前記格納時倒伏姿勢(前記格納形態)へ移行する。
【0125】
その後、ジブマスト26を格納用保持部34と支持ピン9により保持するとともに、ジブマスト先端部37のロープ連結部24をガイド部33に設けられた図略の係止部に結合させ、それによって、ジブマスト26を前記格納時倒伏姿勢で固定する。
【0126】
次に、ブーム5をより倒伏させて地面に沿うように配置するとともに、ジブ6をブーム先端部15からブーム5の延び方向と同方向に延びるように配置し、ジブ先端部18と地面との間にジブ先端部支持台102を介装し、また、ブーム先端部15と地面との間にブーム先端部支持台104を介装する。これにより、図2に示される状態にする。
【0127】
その後、ジブ連結ピン7によるブーム先端部15に対するジブ6の連結を解除するとともに、旋回体2に対するブーム5の連結を解除する。
【0128】
以上のようにして、当該第1実施形態によるクレーン100の分解が行われる。
【0129】
当該第1実施形態によるクレーン100では、ジブマスト26が、ロープ連結部24を前記張設位置よりもブーム先端部15及びジブ基端部17に近い位置であってジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aからの距離がジブ側支持ロープ22の長さよりも小さく且つブーム側ロープ連結箇所12からの距離がブーム側支持ロープ23の長さよりも小さくなる位置である前記弛緩許容位置に配置する前記弛緩許容倒伏姿勢(前記弛緩許容形態)を取り得るため、ブーム5及びジブ6が倒伏した状態でジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢にしてロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置することにより、その弛緩許容位置に配置されたロープ連結部24の地面からの高さ位置をそのロープ連結部24が仮に前記張設位置に配置されていた場合の地面からの高さ位置に比べて低減できるとともに、当該ロープ連結部24をジブ先端部18に対してジブ側支持ロープ22の長さよりも小さい距離まで近づけることができ且つ当該ロープ連結部24をブーム側ロープ連結箇所12に対してブーム側支持ロープ23の長さよりも小さい距離まで近づけることができる。
【0130】
よって、クレーン100の組立時には、前記弛緩許容位置に配置されたロープ連結部24にジブ側支持ロープ22を連結したときにそのロープ連結部24からジブ側支持ロープ22が垂れ下がり、ジブ先端部18からジブ側支持ロープ22が離れてロープ連結部24側に寄るのを抑制でき、その結果、当該ジブ側支持ロープ22をジブ先端部18側へ引き寄せなくても、当該ジブ側支持ロープ22をジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aに連結することができる。また、前記弛緩許容位置に配置されたロープ連結部24にブーム側支持ロープ23を連結したときにそのロープ連結部24からブーム側支持ロープ23が垂れ下がり、ブーム側ロープ連結箇所12からブーム側支持ロープ23が離れてロープ連結部24側に寄るのを抑制でき、その結果、当該ブーム側支持ロープ23をブーム側ロープ連結箇所12側へ引き寄せなくても、当該ブーム側支持ロープ23をブーム側ロープ連結箇所12に連結することができる。よって、ジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24とジブ先端部18との間にジブ側支持ロープ22を架設する作業及びジブマスト先端部37に設けられたロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間にブーム側支持ロープ23を架設する作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0131】
また、クレーン100の分解時に、前記のように架設されているジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23を取り外すときには、ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢にすることにより、ロープ連結部24をジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aに対してジブ側支持ロープ22の長さよりも小さい距離まで近づけてジブ側支持ロープ22の張力を解除できるとともに、ロープ連結部24をブーム側ロープ連結箇所12に対してブーム側支持ロープ23の長さよりも小さい距離まで近づけてブーム側支持ロープ23の張力を解除できる。この状態では、ジブ側ロープ連結箇所18aにジブ側支持ロープ22の一端部を連結している図略の連結ピン及びロープ連結部24にジブ側支持ロープ22の他端部を連結している連結ピン25aにジブ側支持ロープ22の大きな張力はかかっていないとともに、ブーム側ロープ連結箇所12にブーム側支持ロープ23の一端部を連結している図略の連結ピン及びロープ連結部24にブーム側支持ロープ23の他端部を連結している連結ピン25bにブーム側支持ロープ23の大きな張力はかかっていない。このため、作業者が、ジブ側支持ロープ22の大きな張力に対抗してジブ側支持ロープ22をジブ側ロープ連結箇所18a側へ引っ張ることなくジブ側ロープ連結箇所18aに対するジブ側支持ロープ22の一端部の連結を容易に解除できるとともに、ジブ側支持ロープ22の大きな張力に対抗してジブ側支持ロープ22をロープ連結部24側へ引っ張ることなくそのロープ連結部24に対するジブ側支持ロープ22の一端部の連結を容易に解除できる。また、ブーム側支持ロープ23の大きな張力に対抗してブーム側支持ロープ23をブーム側ロープ連結箇所12側へ引っ張ることなくそのブーム側ロープ連結箇所12に対するブーム側支持ロープ23の一端部の連結を容易に解除できるとともに、ブーム側支持ロープ23の大きな張力に対抗してブーム側支持ロープ23をロープ連結部24側へ引っ張ることなくそのロープ連結部24に対するブーム側支持ロープ23の他端部の連結を容易に解除できる。よって、ロープ連結部24とジブ先端部18との間に架設されたジブ側支持ロープ22を取り外す作業及びロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間に架設されたブーム側支持ロープ23を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0132】
また、ブーム5及びジブ6が倒伏した状態でジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢にしてロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置することによりロープ連結部24の地面からの高さ位置を低減できるため、クレーン100の組立時にロープ連結部24に対してジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23を連結する作業を比較的低所で行うことができ、また、クレーン100の分解時にロープ連結部24に対するジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23の各々の連結を解除する作業を比較的低所で行うことができる。この点からも、ジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23を架設する作業及びその架設されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0133】
また、当該第1実施形態では、ジブ姿勢保持装置8が前記ガイド部33を有するため、ジブマスト26を前記起立姿勢と前記弛緩許容倒伏姿勢の一方から他方へ移行させるときにガイド部33により起立時基端部支持部21と倒伏時基端部保持部27の一方から他方へのジブマスト基端部36の移動を案内して、ジブマスト26の前記起立姿勢と前記弛緩許容倒伏姿勢の一方から他方への移行をスムーズに行うことができる。
【0134】
また、前記ガイド部33は、ブーム5が倒伏した状態でジブ先端部18が地面に接触するとともにジブ側支持ロープ22がロープ連結部24とジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aとの間で直線的に張り且つブーム側支持ロープ23がロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間で直線的に張る程度にジブ6がブーム5に対して倒伏したときに前下がりに傾斜する姿勢でジブ6に取り付けられている。このため、クレーン100の分解時にブーム5が倒伏し且つジブ先端部18が地面に接触するようにジブ6がブーム5に対して倒伏した状態でジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23が直線的に張った状態から弛むようにジブマスト26を補助クレーン等で吊って支えながら前記起立姿勢から倒伏させるときには、ジブマスト26の自重によりジブマスト基端部36を起立時基端部支持部21からガイド部33の傾斜に沿って前方の倒伏時基端部保持部27へ自然に移動させることができ、その結果、ジブマスト26を自然に前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させることができる。このため、ジブマスト26を前記起立姿勢から前記弛緩許容倒伏姿勢へ移行させる作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0135】
また、当該第1実施形態では、ジブ姿勢保持装置8は、ジブマスト26がジブマスト基端部36からジブマスト先端部37へ向かうにつれてジブ6からその背後へ離間するようにジブ6の軸方向に対して傾斜した前記弛緩許容倒伏姿勢を取るときにその姿勢を保持するようにジブマスト26とジブ6との間に介装されるマスト姿勢保持部材28を有する。このため、ジブマスト26が前記弛緩許容倒伏姿勢を取るときにそのジブマスト26とジブ6との間にマスト姿勢保持部材28を介装することで、例えばジブマスト先端部37を補助クレーン等で吊るだけでジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢に保持する場合に比べて、より安定的にジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢に保持できる。
【0136】
また、マスト姿勢保持部材28は、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにジブマスト基端部36(支持ピン9)を中心として前方へ回動するのを阻止するようにジブマスト26とジブ6との間に介装可能に構成されているため、マスト姿勢保持部材28を、ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢で保持するためのみならず、ジブマスト26を前記起立姿勢で保持するためにも用いることができる。このため、ジブマスト26を前記弛緩許容倒伏姿勢で保持するとともにジブマスト26を前記起立姿勢で保持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーン100の製造コストを削減できる。
【0137】
(第2実施形態)
次に、図6図9を参照して、本発明の第2実施形態によるクレーン100の構成について説明する。
【0138】
当該第2実施形態によるクレーン100は、ジブマスト26の構成が前記第1実施形態によるクレーン100と異なっており、当該第2実施形態におけるジブマスト26は、伸縮することで張設形態と弛緩許容形態の一方から他方へ移行できるように構成されている。
【0139】
具体的に、当該第2実施形態では、ジブマスト26は、下側マスト部材62と、上側マスト部材63とを有する。
【0140】
下側マスト部材62は、ジブ基端部17に対してジブ6の回動軸(ジブ基端部17の回動軸)と平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。具体的に、下側マスト部材62は、直線的に延びる管状をなし、その一端部であるジブマスト基端部36が起立時基端部支持部21を介してジブ基端部17に取り付けられている。この下側マスト部材62の基端部は、前記第1実施形態におけるジブマスト基端部36の起立時基端部支持部21への取り付けと同様に支持ピン9によって取り付けられている。
【0141】
上側マスト部材63は、ジブマスト26が起立姿勢を取った状態で、図8に示す進出位置と、図7に示す退入位置との間で下側マスト部材62に対して進退移動可能に下側マスト部材62に対して取り付けられている。
【0142】
具体的に、上側マスト部材63は、直線的に延びる管状をなし、下側マスト部材62に対してその軸方向(延び方向)に沿って移動可能となるように下側マスト部材62の内側に挿入されている。上側マスト部材63の軸方向(延び方向)の両端部のうち下側マスト部材62からの当該上側マスト部材63の進出側の端部がジブマスト先端部37となっている。このジブマスト先端部37には、前記第1実施形態の場合と同様にロープ連結部24が取り付けられている。
【0143】
上側マスト部材63は、下側マスト部材62の内側から進出して図8に示す進出位置に配置された状態でロープ連結部24を前記張設位置に配置する。また、上側マスト部材63は、下側マスト部材62の内側に退入して図7に示される退入位置に配置された状態でロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置する。すなわち、当該第2実施形態では、ジブマスト26の前記張設形態は、下側マスト部材62がジブ基端部17からその背後へ延びる姿勢で上側マスト部材63が下側マスト部材62に対してロープ連結部24が前記張設位置に配置される進出位置まで進出した状態である。また、ジブマスト26の前記弛緩許容形態は、下側マスト部材62がジブ基端部17からその背後へ延びる姿勢でロープ連結部24が前記弛緩許容位置に配置される退入位置まで上側マスト部材63が下側マスト部材62側へ退入した状態である。
【0144】
また、当該第2実施形態におけるジブマスト26は、上側マスト部材63が進出位置まで進出したときにその進出位置で上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して固定するための位置固定ピン65(図9参照)を有する。この位置固定ピン65は、本発明における位置固定部材の一例である。
【0145】
上側マスト部材63の進出側の端部と反対側の端部近傍には、位置固定ピン65を挿嵌可能な貫通孔63aが設けられている。また、下側マスト部材62のうちジブマスト基端部36を構成する端部と反対側の端部近傍には、位置固定ピン65を挿嵌可能な図略の貫通孔が設けられている。上側マスト部材63の貫通孔63aは、当該上側マスト部材63が前記進出位置に配置されたときに下側マスト部材62の貫通孔と一致する位置に設けられている。位置固定ピン65は、上側マスト部材63が前記進出位置に配置されたときに下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の貫通孔63aに挿嵌され、それによって上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して前記進出位置で固定する。また、位置固定ピン65が下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の貫通孔63aから抜脱されることによって下側マスト部材62に対する上側マスト部材63の固定が解除され、前記進出位置から前記退入位置への上側マスト部材63の移動が許容されるようになっている。
【0146】
また、位置固定ピン65は、上側マスト部材63が前記退入位置に退入したときにその退入位置で上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して固定するためにも用いられる。具体的に、上側マスト部材63の進出側の端部近傍には、位置固定ピン65を挿嵌可能な図略の貫通孔が設けられている。この上側マスト部材63の進出側の端部近傍の貫通孔は、当該上側マスト部材63が前記退入位置に配置されたときに下側マスト部材62の前記貫通孔と一致する位置に設けられている。位置固定ピン65は、上側マスト部材63が前記退入位置に配置されたときに下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の進出側の端部近傍の貫通孔に挿嵌され、それによって上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して前記退入位置で固定する。また、位置固定ピン65が下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の進出側の端部近傍の貫通孔から抜脱されることによって下側マスト部材62に対する上側マスト部材63の固定が解除され、前記退入位置から前記進出位置への上側マスト部材63の移動が許容されるようになっている。
【0147】
また、当該第2実施形態におけるジブマスト26は、上側マスト部材63が前記進出位置を越えて下側マスト部材62から進出するのを阻止する進出止め部67(図9参照)をさらに有する。この進出止め部67は、ストッパ67aと、取付ボルト67bと、当接部67cとを有する。
【0148】
ストッパ67aは、下側マスト部材62のうちジブマスト基端部36を構成する端部と反対側の端部の内側に配置され、取付ボルト67bによって下側マスト部材62に固定されている。当接部67cは、上側マスト部材63の進出側の端部と反対側の端部近傍の外面に固着され、その外面から外側へ突出している。当接部67cは、上側マスト部材63が前記進出位置まで進出した状態でストッパ67aに当接してそれ以上の進出方向への移動が阻止され、それによって、上側マスト部材63が前記進出位置を越えて下側マスト部材62から進出するのが阻止されるようになっている。
【0149】
また、当該第2実施形態では、ジブマスト26は、図6に示すように、その格納形態において、当該ジブマスト26が縮んだ状態、つまり上側マスト部材63が前記退入位置に配置された状態で、ジブマスト基端部36がジブ基端部17のマスト基端部支持部21aに支持ピン9を介して支持されるとともに、そのマスト基端部支持部21aからジブ先端部18へ向かってジブ6に沿うように延びる倒伏姿勢を取る。前記マスト基端部支持部21aは、前記第1実施形態における起立時基端部支持部21と同様に構成されている。
【0150】
当該第2実施形態における格納用保持部34は、前記のように縮んだ状態で倒伏姿勢を取ったジブマスト26を保持し、前記第1実施形態における格納用保持部34よりもジブ先端部18寄りの位置でジブ6の背面6b上に設けられている。当該第2実施形態における格納用保持部34は、具体的には、ジブ6を構成する部材(例えば、ジブ6の背面6b側のラチス構造を構成する斜材等)に取り付けられている。この格納用保持部34の以上の構成以外の構成は、前記第1実施形態における格納用保持部34と同様である。
【0151】
なお、当該第2実施形態では、ジブ姿勢保持装置8は、格納用保持部34におけるジブマスト26の保持のために前記第1実施形態における支持ピン9と同様の保持ピン68を有するが、ジブマスト基端部36をマスト基端部支持部21aに取り付ける支持ピン9も有している。すなわち、当該第2実施形態では、支持ピン9がジブマスト基端部36の支持と格納用保持部34でのジブマスト26の保持とに兼用されておらず、ジブ姿勢保持装置8が、マスト基端部支持部21aでジブマスト基端部36を支持するための支持ピン9とは別に、格納用保持部34でジブマスト26を保持するための保持ピン68を有している。
【0152】
また、当該第2実施形態では、ジブ姿勢保持装置8は、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26の前方への回動(ジブ6に沿う向きの回動)を阻止するようにそのジブマスト26とジブ6との間に介装される前側回動ストッパ28aを有する。この前側回動ストッパ28aは、起立姿勢を取ったジブマスト26とジブ6との間に介装された状態で、起伏部材3が起立した姿勢を取ったときにジブ6が後向きに回動するのを阻止するジブバックストップとしても機能する。この前側回動ストッパ28aは、前記第1実施形態におけるマスト姿勢保持部材28と同様の構成を有するものである。
【0153】
また、当該第2実施形態におけるジブ姿勢保持装置8は、前記第1実施形態のガイド部33及び倒伏時基端部保持部27を有していない。
【0154】
当該第2実施形態によるクレーン100の以上の構成以外の構成は、前記第1実施形態によるクレーン100と同様である。
【0155】
次に、当該第2実施形態によるクレーン100の組立方法について説明する。
【0156】
当該第2実施形態による組立方法では、前記第1実施形態と同様に、ブーム5が旋回体2に取り付けられるとともに、ブーム先端部15にジブ6が取り付けられ、その状態で、図6に示すように、ブーム5及びジブ6が地面に沿って倒伏した姿勢で配置される。この状態では、ジブマスト26が縮んだ状態で倒伏姿勢を取っていて格納形態になっており、格納用保持部34及び保持ピン68によって保持されている。
【0157】
この状態から、まず、保持ピン68を格納用保持部34から取り外す。その後、図略の補助クレーンによりジブマスト先端部37を吊り上げ、ジブマスト26を、支持ピン9を中心として後向きに回動させて起立させる。これにより、図7に示すように、ジブマスト26は、縮んだ状態のまま起立した姿勢を取り、ロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置する弛緩許容形態となる。
【0158】
次に、ジブ6の背面6bに沿って倒伏した姿勢でジブ6に固定されていた前側回動ストッパ28aを起こしてジブ6の背面6bと前記のように縮んだ状態で起立した姿勢になっているジブマスト26との間に介装する。このとき、起こした前側回動ストッパ28aの先端部を下側マスト部材62の所定箇所に接続する。この前側回動ストッパ28aにより、ジブマスト26の前方への回動(ジブ6に沿う向きへの回動)が阻止される。
【0159】
その後、前記第1実施形態の場合と同様にして、ジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aにジブ側支持ロープ22の一端部を連結するとともにロープ連結部24にジブ側支持ロープ22の他端部を連結してジブ側ロープ連結箇所18aとロープ連結部24との間にジブ側支持ロープ22を架設し、ブーム側ロープ連結箇所12にブーム側支持ロープ23の一端部を連結するとともにロープ連結部24にブーム側支持ロープ23の他端部を連結してブーム側ロープ連結箇所12とロープ連結部24との間にブーム側支持ロープ23を架設する。
【0160】
次に、位置固定ピン65を下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の進出側の端部近傍の貫通孔から抜脱して上側マスト部材63の前記退入位置での固定を解除する。その後、補助クレーンによってジブマスト先端部37を引き上げることにより、ジブマスト26を伸長させる。すなわち、上側マスト部材63を下側マスト部材62の内側から進出させて前記進出位置に配置する。これにより、ロープ連結部24に連結されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23が緩く張った状態になる。そして、下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の進出側の端部と反対側の端部近傍の貫通孔63aに位置固定ピン65を挿嵌し、上側マスト部材63を前記進出位置で固定する。
【0161】
その後、前記第1実施形態の場合と同様に、ジブ先端部18の下からジブ先端部支持台102を取り除いてジブ先端部18を地面に接地させるとともに、ジブ6がブーム5に対して前記所定の前傾姿勢になるまでブーム5を上向きに回動させる。すなわち、ジブ側支持ロープ22がロープ連結部24とジブ側ロープ連結箇所18aとの間で直線的に張った状態になり且つブーム側支持ロープ23がロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間で直線的に張った状態になるまでブーム5を上向きに回動させる。これにより、ジブマスト26が前記起立姿勢(前記張設形態)になり、ロープ連結部24が前記張設位置に配置される。当該第2実施形態におけるブーム5、ジブ6、ジブマスト26、ロープ連結部24、ジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23のこの状態は、前記第1実施形態の図5に示された状態と同様である。
【0162】
その後、ブーム先端部15とジブマスト26との間にジブマストバックストップ29を介装してジブマスト26の後方への回動(ジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きの回動)を阻止し、このジブマストバックストップ29と、先にジブマスト26とジブ6との間に介装した前側回動ストッパ28aとにより、ジブマスト26を前記起立姿勢で固定する。
【0163】
当該第2実施形態によるクレーン100の組立方法のこれ以降の工程は、前記第1実施形態によるクレーン100の組立方法と同様である。
【0164】
また、当該第2実施形態によるクレーン100の分解方法は、以上に説明した組立方法と逆の手順により実施される。その手順の中で、この第2実施形態によるクレーン100の分解方法では、前記張設形態にあるジブマスト26を前記弛緩許容形態へ移行させるときに、前記進出位置にある上側マスト部材63を前記退入位置まで下側マスト部材62側へ退入させる。この際、具体的には、補助クレーンでジブマスト先端部37を吊って支持しながら、上側マスト部材63を前記進出位置で固定している位置固定ピン65を下側マスト部材62の貫通孔及び上側マスト部材63の貫通孔63aから抜き出してその固定を解除し、その後、ジブマスト先端部37を補助クレーンによって吊りながら降下させ、それによって上側マスト部材63を前記退入位置まで下側マスト部材62側へ退入させる。このように上側マスト部材63を前記退入位置まで退入させてジブマスト26を前記弛緩許容形態に移行させることで、ロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置する。
【0165】
そして、前記弛緩許容位置に配置されたロープ連結部24からジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部を取り外し、また、ジブマスト26が前記弛緩許容形態を取った状態でジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aからジブ側支持ロープ22の一端部を取り外すとともにブーム側ロープ連結箇所12からブーム側支持ロープ23の一端部を取り外す。
【0166】
この第2実施形態では、ジブマスト26を伸縮させることでロープ連結部24を前記張設位置と前記弛緩許容位置の一方から他方へ移動させることができるため、ジブ側支持ロープ22を架設する作業及び架設されたジブ側支持ロープ22を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できるとともにブーム側支持ロープ23を架設する作業及び架設されたブーム側支持ロープ23を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できるという前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0167】
加えて、当該第2実施形態では、ジブマスト基端部36がマスト基端部支持部21aに取り付けられた状態のままでジブマスト26に格納形態(倒伏姿勢)と弛緩許容形態と張設形態(起立姿勢)とを取らせることができるので、ジブマスト26をこれらの形態間で移行させるときにマスト基端部支持部21aに対するジブマスト基端部36の着脱が不要である。このため、当該第2実施形態では、作業者の負担をより軽減できる。また、当該第2実施形態では、このようにジブマスト基端部36がマスト基端部支持部21aに取り付けられた状態のままでジブマスト26に格納形態と弛緩許容形態と張設形態とを取らせることができることから、前記第1実施形態のようにジブマスト26を弛緩許容形態(弛緩許容倒伏姿勢)と張設形態(起立姿勢)との間で移行させるために起立時基端部支持部21と倒伏時基端部保持部27との間でのジブマスト基端部36の移動を案内するガイド部33を設ける必要がない。このため、起伏部材3を軽量化できる。
【0168】
また、ジブマスト26を構成する下側マスト部材62及び上側マスト部材63は共に管状であるため、ジブマスト26の軽量化を図ることができる。
【0169】
また、当該第2実施形態では、前側回動ストッパ28aがジブマスト26とジブ6との間に介装されたままでジブマスト26に弛緩許容形態と張設形態とを取らせることができる。このため、前側回動ストッパ28aの着脱作業にかかる作業者の負担を軽減できる。具体的に、前記第1実施形態では、ジブマスト26を弛緩許容形態から張設形態へ移行させるときに、弛緩許容倒伏姿勢のジブマスト26とジブ6との間に介装されたマスト姿勢保持部材28を取り外し、ジブマスト26に起立姿勢を取らせた後、そのジブマスト26とジブ6との間にマスト姿勢保持部材28を装着し直すという作業が必要であり、また、ジブマスト26を張設形態から弛緩許容形態へ移行させるときに、起立姿勢のジブマスト26とジブ6との間に介装されたマスト姿勢保持部材28を取り外し、ジブマスト26に弛緩許容倒伏姿勢を取らせた後、そのジブマスト26とジブ6との間にマスト姿勢保持部材28を装着し直すという作業が必要であるが、当該第2実施形態では、ジブマスト26を弛緩許容形態と張設形態との間で移行させるときに前側回動ストッパ28aについて前記第1実施形態のマスト姿勢保持部材28のような着脱が不要である。このため、前側回動ストッパ28aの着脱作業にかかる作業者の負担を軽減できる。
【0170】
また、当該第2実施形態では、ジブマスト26が伸縮式であり、その格納形態では、当該ジブマスト26は、縮んだ状態で倒伏姿勢を取り、非常にコンパクトになるため、作業者の邪魔にならない。
【0171】
また、当該第2実施形態では、上側マスト部材63が前記進出位置まで進出したときに位置固定ピン65によりその進出位置で上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して固定してジブマスト26を前記張設形態に保持できる。
【0172】
また、当該第2実施形態では、ジブマスト26は、上側マスト部材63が前記進出位置を越えて下側マスト部材62から進出するのを阻止する進出止め部67を有するため、上側マスト部材63を下側マスト部材62から進出させてその上側マスト部材63が前記進出位置に達したときにその上側マスト部材63の進出を進出止め部67によって止めることができる。このため、上側マスト部材63を下側マスト部材62から進出させすぎて上側マスト部材63が誤って下側マスト部材62から離脱するのを防ぐことができる。
【0173】
(第3実施形態)
次に、図10図14を参照して、本発明の第3実施形態によるクレーン100の構成について説明する。
【0174】
当該第3実施形態によるクレーン100は、ジブマスト26の構成が前記第1実施形態によるクレーン100と異なっており、当該第3実施形態におけるジブマスト26は、屈伸することで張設形態と弛緩許容形態の一方から他方へ移行できるように構成されている。
【0175】
具体的に、当該第3実施形態では、ジブマスト26は、下側マスト部材62と、上側マスト部材63と、軸ピン70と、姿勢固定ピン71と、を有する。
【0176】
下側マスト部材62は、ジブ基端部17に対してジブ6の回動軸(ジブ基端部17の回動軸)と平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。下側マスト部材62は、直線的に延びる部材であり、その一端部である下側部材基端部72と、その下側部材基端部72と反対側の端部である下側部材先端部73と、を有する。
【0177】
下側部材基端部72は、支持ピン9を介してジブ基端部17のマスト基端部支持部21aに取り付けられ、ジブ6の回動軸と平行な軸回り(支持ピン9回り)に回動可能となっている。この下側部材基端部72が、ジブマスト基端部36になっている。
【0178】
下側部材先端部73は、下側部材基端部72の回動軸と平行な方向において間隔をあけて配置された一対の側板部74(図14参照)を有する。各側板部74には、その側板部74を貫通する軸ピン挿通孔76及び固定ピン挿通孔77が設けられている。軸ピン挿通孔76と固定ピン挿通孔77は、下側マスト部材62の軸方向(下側マスト部材62の延び方向)に間隔をあけて配置されている。
【0179】
上側マスト部材63は、図10図12に示すように、下側マスト部材62の下側部材先端部73に対して下側部材基端部72の回動軸と平行な軸回り、すなわちジブ6の回動軸と平行な軸回りに回動可能に接続されている。上側マスト部材63は、直線的に延びる部材であり、その一端部である上側部材基端部80と、その上側部材基端部80と反対側の端部である上側部材先端部81と、を有する。当該上側マスト部材63のうちの上側部材基端部80が、下側部材先端部73に対して下側部材基端部72の回動軸と平行な軸回りに回動可能に取り付けられている。
【0180】
具体的に、上側部材基端部80には、当該上側部材基端部80を貫通する軸ピン挿通孔83が設けられている。上側部材基端部80は、下側部材先端部73の一対の側板部74間に配置されている。上側部材基端部80は、当該上側部材基端部80の軸ピン挿通孔83と一対の側板部74の各々の軸ピン挿通孔76とに軸ピン70が挿通されることによって下側部材先端部73に対して取り付けられている。軸ピン70は、下側部材基端部72の回動軸と平行に延びるように配置され、上側部材基端部80は、この軸ピン70を中心として下側部材先端部73に対して回動可能となっている。このように上側部材基端部80が下側部材先端部73に対して回動可能となっていることにより、上側マスト部材63は、図10及び図12に示すように下側マスト部材62の延長線上でその下側マスト部材62と同方向に延びる伸長姿勢と、図11に示すように下側マスト部材62に対して屈曲する屈曲姿勢と、を取り得るようになっている。
【0181】
また、当該第3実施形態では、上側マスト部材63が下側マスト部材62に対して前記伸長姿勢を取ったときにその姿勢で姿勢固定ピン71により固定されるようになっている。姿勢固定ピン71は、本発明における姿勢固定部材の一例である。具体的に、上側部材基端部80には、上側マスト部材63の軸方向(上側マスト部材63の延び方向)に沿って前記軸ピン挿通孔83から間隔をあけた位置で当該上側部材基端部80を貫通する固定ピン挿通孔84が設けられている。上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取ったときには、上側部材基端部80に設けられた固定ピン挿通孔84の位置と下側部材先端部73の各側板部74に設けられた固定ピン挿通孔77の位置とが一致する。この状態で、姿勢固定ピン71が上側部材基端部80の固定ピン挿通孔84と下側部材先端部73の各側板部74の固定ピン挿通孔77とに挿嵌され、それによって下側マスト部材62に対する上側マスト部材63の回動方向の動きが拘束される、すなわち上側マスト部材63が前記伸長姿勢で固定されるようになっている。
【0182】
また、当該第3実施形態では、ロープ連結部24が上側マスト部材63の上側部材先端部81に取り付けられている。当該第3実施形態では、上側部材先端部81がジブマスト先端部37になっている。
【0183】
ジブマスト26は、下側マスト部材62がジブ基端部17からその背後へ延びる姿勢を取るとともにその下側マスト部材62に対して上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取った状態でロープ連結部24を前記張設位置に配置し、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取るとともにその下側マスト部材62に対して上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取った状態でロープ連結部24を前記弛緩許容位置に配置する。すなわち、当該第3実施形態では、ジブマスト26の前記張設形態は、下側マスト部材62がジブ基端部17からその背後へ延びるとともに上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取った状態であり、ジブマスト26の前記弛緩許容形態は、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取るとともに上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取った状態である。
【0184】
また、当該第3実施形態では、ジブマスト26は、上側マスト部材63が下側マスト部材62に対して前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動するのを阻止する回動阻止部86(図13参照)をさらに有する。この回動阻止部86は、下側マスト部材62の下側部材先端部73の一対の側板部74間に架設されている。上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取った状態では、上側部材基端部80が下側マスト部材62と同方向に延びる状態で下側部材先端部73の一対の側板部74間に配置される。この状態において、回動阻止部86は、上側マスト部材63が前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動しようとする場合に上側部材基端部80が軸ピン70回りに移動する方向と反対方向からその上側部材基端部80に当接してその上側部材基端部80の移動を阻止し、それによって、上側マスト部材63が前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動するのを阻止する。
【0185】
また、当該第3実施形態では、ジブ姿勢保持装置8は、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取るとともに上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取るときにジブ6に対する下側マスト部材62の姿勢を保持するとともに下側マスト部材62に対する上側マスト部材63の姿勢を保持する保持具88を有する。この保持具88は、下側保持具89と、上側保持具90とを含む。
【0186】
下側保持具89は、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取ったときにその傾斜姿勢からジブ6に近づく向きに回動するのを阻止するように下側マスト部材62とジブ6との間に介装されるものである。具体的に、この下側保持具89は、棒状の部材であり、前記傾斜姿勢の下側マスト部材62とジブ6との間に介装される際、下側マスト部材62及びジブ6の軸方向に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該下側保持具89の長手方向の一端部が下側マスト部材62に接続されるとともに、当該下側保持具89の一端部と反対側の端部である他端部がジブ6に接続される。下側保持具89の一端部は、下側マスト部材62に対して着脱可能となっている。下側マスト部材62を前記傾斜姿勢から起立方向に回動させるとき及び倒伏方向に回動させるときには、下側マスト部材62に対する下側保持具89の接続が外され、下側保持具89は下側マスト部材62の回動を阻害しない位置に配置される。
【0187】
また、下側保持具89は、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢からジブ6へ近づく向きに回動するのを阻止するためだけではなく、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するためのストッパとしても用いられる。すなわち、下側保持具89は、図12に示すように、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにジブマスト基端部36(支持ピン9)を中心としてジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するようにジブマスト26とジブ6との間に介装可能に構成されている。下側保持具89が起立姿勢のジブマスト26とジブ6との間に介装される際、下側保持具89は起立姿勢のジブマスト26及びジブ6の軸方向に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該下側保持具89の一端部がジブマスト26の下側マスト部材62に接続されるとともに、当該下側保持具89の他端部がジブ6に接続される。この場合も、下側保持具89の一端部は下側マスト部材62に対して着脱可能となっているとともに、下側保持具89の他端部はジブ6に対して着脱可能となっている。
【0188】
上側保持具90は、上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取ったときにその屈曲姿勢から下側マスト部材62に近づく向きに回動するのを阻止するように上側マスト部材63と下側マスト部材62との間に介装されるものである。具体的に、この上側保持具90は、棒状の部材であり、前記屈曲姿勢の上側マスト部材63と前記傾斜姿勢の下側マスト部材62との間に介装される際、上側マスト部材63及び下側マスト部材62の両方に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該上側保持具90の長手方向の一端部が上側マスト部材63に接続されるとともに、当該上側保持具90の一端部と反対側の端部である他端部が下側マスト部材62に接続される。上側保持具90の一端部は上側マスト部材63に対して着脱可能となっているとともに、上側保持具90の他端部は下側マスト部材62に対して着脱可能となっている。上側マスト部材63を前記屈曲姿勢から回動させるときには、上側保持具90は上側マスト部材63及び下側マスト部材62から取り外されるようになっている。
【0189】
また、上側保持具90は、上側マスト部材63が前記屈曲姿勢から下側マスト部材62に近づく向きに回動するのを阻止するためだけではなく、ジブマスト26が前記起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するためのジブマストバックストップとしても用いられる。すなわち、上側保持具90は、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにジブマスト基端部36(支持ピン9)を中心としてジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するようにジブマスト26とブーム先端部15との間に介装可能に構成されている。上側保持具90が起立姿勢のジブマスト26とブーム先端部15との間に介装される際、上側保持具90は起立姿勢のジブマスト26及びブーム5の軸方向に対して交差する方向に延びる姿勢で配置され、当該上側保持具90の一端部がジブマスト26の下側マスト部材62に接続されるとともに、当該上側保持具90の他端部がブーム先端部15に接続される。この場合も、上側保持具90の一端部は下側マスト部材62に対して着脱可能となっているとともに、上側保持具90の他端部はブーム先端部15に対して着脱可能となっている。
【0190】
また、当該第3実施形態では、ジブマスト26は、図10に示すように、その格納形態において、下側マスト部材62がマスト基端部支持部21aからジブ先端部18側へ向かってジブ6の軸方向に沿って延びるとともに上側マスト部材63がその下側マスト部材62の延長線上で同方向に延びるように倒伏した姿勢を取る。当該第3実施形態におけるマスト基端部支持部21aは、前記第1実施形態における起立時基端部支持部21と同様に構成されている。
【0191】
当該第3実施形態における格納用保持部34は、前記のように倒伏したジブマスト26を保持し、そのジブマスト26のうちの上側マスト部材63を保持する。この格納用保持部34は、前記第1及び第2実施形態における格納用保持部34よりもジブ先端部18寄りの位置でジブ6の背面6b上に設けられている。この格納用保持部34のこれ以外の構成は、前記第1実施形態における格納用保持部34と同様である。なお、当該第3実施形態では、前記第2実施形態と同様、ジブ姿勢保持装置8は、マスト基端部支持部21aでジブマスト基端部36を支持するための支持ピン9とは別に、格納用保持部34でジブマスト26を保持するための保持ピン68を有している。
【0192】
当該第3実施形態によるクレーン100の以上の構成以外の構成は、前記第1実施形態によるクレーン100と同様である。
【0193】
次に、当該第3実施形態によるクレーン100の組立方法について説明する。
【0194】
当該第3実施形態による組立方法では、前記第1実施形態と同様に、ブーム5が旋回体2に取り付けられるとともに、ブーム先端部15にジブ6が取り付けられ、その状態で、図10に示すように、ブーム5及びジブ6が地面に沿って倒伏した姿勢で配置される。この状態では、下側マスト部材62がジブ6の軸方向に沿ってマスト基端部支持部21aからジブ先端部18側へ延びるとともに上側マスト部材63が下側マスト部材62の延長線上で同方向に延びる伸長姿勢を取った状態でジブマスト26が倒伏して格納形態になっており、その格納形態のジブマスト26が、格納用保持部34及び保持ピン68によって保持されている。このとき、上側マスト部材63は、下側マスト部材62に対して前記伸長姿勢で姿勢固定ピン71により固定されている。
【0195】
この状態から、姿勢固定ピン71を下側マスト部材62及び上側マスト部材63から取り外して下側マスト部材62に対する上側マスト部材63の姿勢の固定を解除する。また、保持ピン68を格納用保持部34から取り外す。その後、図略の補助クレーンにより、上側部材先端部81(ジブマスト先端部37)を吊り上げるとともにブーム先端部15へ接近させてロープ連結部24を前記弛緩許容位置へ移動させる。これにより、上側マスト部材63が軸ピン70を中心として後方へ回動するとともに、下側マスト部材62が支持ピン9を中心として起立方向に回動し、図11に示すように、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取るとともに上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取る。
【0196】
その後、下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で下側保持具89によって固定するとともに、上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で上側保持具90によって固定する。具体的には、ジブ6の背面6bに沿って倒伏した姿勢でジブ6に固定されていた下側保持具89を起こしてその下側保持具89の先端部を下側マスト部材62に接続することによりその下側保持具89をジブ6の背面6bと前記傾斜姿勢の下側マスト部材62との間に介装するとともに、上側保持具90を上側マスト部材63と下側マスト部材62との間に介装する。
【0197】
その後、前記第1実施形態の場合と同様にして、ジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aにジブ側支持ロープ22の一端部を連結するとともにロープ連結部24にジブ側支持ロープ22の他端部を連結してジブ側ロープ連結箇所18aとロープ連結部24との間にジブ側支持ロープ22を架設し、ブーム側ロープ連結箇所12にブーム側支持ロープ23の一端部を連結するとともにロープ連結部24にブーム側支持ロープ23の他端部を連結してブーム側ロープ連結箇所12とロープ連結部24との間にブーム側支持ロープ23を架設する。
【0198】
次に、補助クレーンによって上側部材先端部81を吊った状態で、下側マスト部材62に対する下側保持具89の先端部の接続を解除するとともに、上側保持具90を上側マスト部材63及び下側マスト部材62から取り外す。その後、補助クレーンによって上側部材先端部81を前記弛緩許容位置から上昇させる。これにより、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢から支持ピン9を中心としてさらに起立方向に回動するとともに、上側マスト部材63が前記屈曲姿勢から軸ピン70を中心として前方へ回動する。そして、図12に示すように、下側マスト部材62がマスト基端部支持部21aからジブ基端部17の背後(上方)へ延びるとともに上側マスト部材63が下側マスト部材62の延長線上で下側マスト部材62と同方向に延びる伸長姿勢を取るまで上側部材先端部81を上昇させる。その後、姿勢固定ピン71を上側部材基端部80の固定ピン挿通孔84と下側部材先端部73の各側板部74の固定ピン挿通孔77とに挿嵌する。これにより、上側マスト部材63が下側マスト部材62に対して前記伸長姿勢で固定される。この状態で、ロープ連結部24に連結されたジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23が緩く張った状態になる。
【0199】
その後、前記第1実施形態の場合と同様に、ジブ先端部18の下からジブ先端部支持台102を取り除いてジブ先端部18を地面に接地させるとともに、ジブ6がブーム5に対して前記所定の前傾姿勢になるまでブーム5を上向きに回動させる。すなわち、ジブ側支持ロープ22がロープ連結部24とジブ側ロープ連結箇所18aとの間で直線的に張った状態になり且つブーム側支持ロープ23がロープ連結部24とブーム側ロープ連結箇所12との間で直線的に張った状態になるまでブーム5を上向きに回動させる。これにより、ジブマスト26が前記起立姿勢(前記張設形態)になり、ロープ連結部24が前記張設位置に配置される。当該第3実施形態におけるブーム5、ジブ6、ジブマスト26、ロープ連結部24、ジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23のこの状態は、前記第1実施形態の図5に示された状態と同様である。
【0200】
その後、ジブマスト26を前記起立姿勢で固定する。具体的には、下側保持具89をジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装してジブマスト26の前方への回動(ジブ6に沿う向きへの回動)を阻止するとともに、ブーム先端部15とジブマスト26との間に上側保持具90を介装してジブマスト26の後方への回動(ジブ6に沿う向きと反対向きへの回動)を阻止し、それによってジブマスト26を前記起立姿勢で固定する。この際の下側保持具89の介装方法は前記第1実施形態におけるマスト姿勢保持部材28の介装方法と同様であり、上側保持具90の介装方法は前記第1実施形態におけるジブマストバックストップ29の介装方法と同様である。
【0201】
当該第3実施形態によるクレーン100の組立方法のこれ以降の工程は、前記第1実施形態によるクレーン100の組立方法と同様である。ただし、前記第1実施形態では、起立姿勢のジブマスト26がジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するためにマスト姿勢保持部材28をジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装したが、当該第3実施形態では、下側保持具89を前記マスト姿勢保持部材28と同様にジブ6の背面6bとジブマスト26との間に介装する。また、前記第1実施形態では、起立姿勢のジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するためにジブマストバックストップ29をブーム先端部15とジブマスト26との間に介装したが、当該第3実施形態では、上側保持具90を前記ジブマストバックストップ29と同様にブーム先端部15とジブマスト26との間に介装する。
【0202】
また、当該第3実施形態によるクレーン100の分解方法は、以上に説明した組立方法と逆の手順により実施される。その手順の中で、この第3実施形態によるクレーン100の分解方法では、前記張設形態にあるジブマスト26を前記弛緩許容形態へ移行させるときに、マスト基端部支持部21aからその背後へ延びる姿勢にある下側マスト部材62を前記傾斜姿勢へ移行させるとともに、前記伸長姿勢にある上側マスト部材63を前記屈曲姿勢へ移行させる。この際、具体的には、補助クレーンで上側部材先端部81を吊って支持しながら、前記起立姿勢にあるジブマスト26とジブ6の背面6bとの間に介装された下側保持具89を取り外すとともにそのジブマスト26とブーム先端部15との間に介装された上側保持具90を取り外してジブマスト26の前記起立姿勢での固定を解除する。
【0203】
その後、姿勢固定ピン71を上側部材基端部80の固定ピン挿通孔84と下側部材先端部73の各側板部74の固定ピン挿通孔77から抜き出して上側マスト部材63の前記伸長姿勢での固定を解除する。その後、補助クレーンで上側部材先端部81を吊りながら降下させることで、上側マスト部材63を前記伸長姿勢から軸ピン70を中心として後方へ回動させるとともに下側マスト部材62を支持ピン9を中心として前方へ回動させる。これにより、上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取るとともに下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取り、ジブマスト26は前記弛緩許容形態になる。
【0204】
そして、この状態で下側保持具89をジブ6の背面6bと前記傾斜姿勢の下側マスト部材62との間に介装するとともに上側保持具90を上側マスト部材63と下側マスト部材62との間に介装し、それによって、下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で固定するとともに上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で固定する。
【0205】
以上のようにしてジブマスト26を前記弛緩許容形態に移行させることで、ロープ連結部24は前記弛緩許容位置に配置される。そして、この弛緩許容位置に配置されたロープ連結部24からジブ側支持ロープ22の他端部及びブーム側支持ロープ23の他端部を取り外し、また、ジブマスト26が前記弛緩許容形態を取った状態でジブ先端部18のジブ側ロープ連結箇所18aからジブ側支持ロープ22の一端部を取り外すとともにブーム側ロープ連結箇所12からブーム側支持ロープ23の一端部を取り外す。
【0206】
当該第3実施形態では、ジブマスト26を屈伸させることでロープ連結部24を前記張設位置と前記弛緩許容位置の一方から他方へ移動させることができるため、ジブ側支持ロープ22を架設する作業及び架設されたジブ側支持ロープ22を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できるとともに、ブーム側支持ロープ23を架設する作業及び架設されたブーム側支持ロープ23を取り外す作業にかかる作業者の負担を軽減できるという前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0207】
加えて、当該第3実施形態では、ジブマスト基端部36がマスト基端部支持部21aに取り付けられた状態のままでジブマスト26に格納形態と弛緩許容形態と張設形態とを取らせることができるので、ジブマスト26をこれらの形態間で移行させるときにマスト基端部支持部21aに対するジブマスト基端部36の着脱が不要である。このため、当該第3実施形態では、作業者の負担をより軽減できる。また、当該第3実施形態では、このようにジブマスト基端部36がマスト基端部支持部21aに取り付けられた状態のままでジブマスト26に格納形態と弛緩許容形態と張設形態とを取らせることができることから、前記第2実施形態と同様、前記第1実施形態で設けられたガイド部33を要しない。このため、起伏部材3を軽量化できる。
【0208】
また、当該第3実施形態では、上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取ったときに姿勢固定ピン71によりその伸長姿勢で上側マスト部材63を下側マスト部材62に対して固定できる。このため、上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取ってジブマスト26が起立した前記張設形態になったときにそのジブマスト26の張設形態を安定して保持できる。
【0209】
また、当該第3実施形態では、ジブマスト26は、上側マスト部材63が前記伸長姿勢を越えて前記屈曲姿勢と反対側へ回動するのを阻止する回動阻止部86を有するため、クレーン100の分解時にブーム5及びジブ6が倒伏した状態で上側マスト部材63が前記伸長姿勢を取っていてジブマスト26がジブ基端部17から上方へ延びる起立姿勢を取っている状態から、上側マスト部材63の先端部である上側部材先端部81を補助クレーンで吊りながら降下させるときに上側マスト部材63が前記屈曲姿勢と反対向きに回動するのを回動阻止部86によって阻止できる。このため、上側部材先端部81を降下させるときに本来意図している向きに上側マスト部材63を回動させて前記屈曲姿勢を取らせることができるとともに、上側マスト部材63が反対向きに回動して当該上側マスト部材63と下側マスト部材62とが図11の状態と反対向きに屈曲することにより下側マスト部材62がブーム先端部15に干渉するのを防ぐことができる。
【0210】
また、当該第3実施形態では、下側保持具89により下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で保持できるとともに上側保持具90により上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で保持できるため、補助クレーンによって上側マスト部材63を吊るだけでその上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で保持するとともに下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で保持する場合に比べて上側マスト部材63をより安定的に前記屈曲姿勢で保持できるとともに下側マスト部材62をより安定的に前記傾斜姿勢で保持できる。このため、ロープ連結部24をより安定的に前記弛緩許容位置で保持でき、そのロープ連結部24に対するジブ側支持ロープ22及びブーム側支持ロープ23の連結作業を行いやすくすることができる。
【0211】
また、当該第3実施形態では、前記下側保持具89は、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するようにそのジブマスト26とジブ6との間に介装可能に構成されているとともに、前記上側保持具90は、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するようにジブマスト26とブーム先端部15との間に介装可能に構成されている。よって、下側保持具89を、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取ったときにその傾斜姿勢からジブ6に近づく向きに回動するのを阻止するためのみならず、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きに回動するのを阻止するストッパとしても用いることができ、また、上側保持具90を、上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取ったときにその屈曲姿勢から下側マスト部材62に近づく向きに回動するのを阻止するためのみならず、ジブマスト26が起立姿勢を取ったときにそのジブマスト26がジブ6に沿う向きと反対向きに回動するのを阻止するジブマストバックストップとしても用いることができる。このため、下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で保持するとともに上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で保持し、ジブマスト26を起立姿勢で保持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーンの製造コストを削減できる。
【0212】
(変形例)
本発明によるクレーンは、前記のような構成のものに必ずしも限定されない。本発明によるクレーンの構成として、例えば以下のような構成を採用可能である。
【0213】
(1)前記第1実施形態では、ジブマスト26が弛緩許容倒伏姿勢を取ったときにそのジブマスト26とジブ6との間へのマスト姿勢保持部材28の介装によるジブマスト26の姿勢の保持を行ったが、このマスト姿勢保持部材28によるジブマスト26の姿勢の保持は必ずしも行わなくてもよい。この場合、ジブマスト先端部37を補助クレーンで吊ることのみによってジブマスト26を弛緩許容倒伏姿勢で保持すればよい。
(2)また、前記第1実施形態において、ジブ側支持ロープ22とブーム側支持ロープ23を架設する作業を行うときにジブマスト26に取らせる姿勢は、前記格納時倒伏姿勢と同じ姿勢であってもよい。この場合、前記第1実施形態におけるジブマスト26の格納時倒伏姿勢と同じ姿勢が本発明におけるジブマストの弛緩許容倒伏姿勢に相当し、前記第1実施形態においてジブマスト26が格納時倒伏姿勢を取ったときにロープ連結部24が配置される位置が本発明におけるロープ連結部の弛緩許容位置に相当する。そして、この場合には、前記第1実施形態で行われるロープ連結部24をブーム本体11の背面11b近傍の高さの前記弛緩許容位置で保持する作業及びジブマスト26をジブ6の軸方向に対して傾斜した前記弛緩許容倒伏姿勢で保持する作業を省略することができる。具体的には、補助クレーンによってジブマスト先端部37を吊り上げてロープ連結部24をブーム本体11の背面11b近傍の高さの弛緩許容位置で保持する作業、及び、ジブマスト26をジブ6の軸方向に対して傾斜した弛緩許容倒伏姿勢で保持するためにジブマスト26とジブ6との間にマスト姿勢保持部材28を介装する作業を省略することができる。
【0214】
(3)また、前記第1実施形態において、ジブマスト基端部36を案内するガイド部33はレール状のものであってもよい。この場合、ジブマスト基端部36は二股に分かれたクレビスになっていて、そのクレビスの二股に分かれた部分の間にレール状のガイド部33が嵌合するようになっていればよい。ガイド部33がこのようにレール状のものであれば、左右方向におけるガイド部33の幅を小さくすることができるため、ガイド部33の重量を低減できる。
【0215】
(4)また、前記第1実施形態において、倒伏時基端部保持部27は上述したような円弧状のものに必ずしも限定されない。具体的には、倒伏時基端部保持部27は、ジブマスト26を起立姿勢から倒伏させていくときに前方へ移動するジブマスト基端部36に対してジブマスト26が倒伏姿勢となる所定の位置で当接してそれ以上の前方への移動を阻止するストッパとして機能するとともにそのジブマスト基端部36の回動を許容するような形状のものであればよく、ガイド部33からその背後に突出する様々な形態の突起部が倒伏時基端部保持部27として採用され得る。また、倒伏時基端部保持部27は、ガイド部33と一体的に形成されたもの、もしくは、ガイド部33と別体に形成されていてガイド部33に取り付けられたものであってもよい。
【0216】
(5)また、前記第1実施形態において、ジブマスト26を倒伏姿勢から起立姿勢へ移行させていくときに後方へ移動するジブマスト基端部36に対してジブマスト基端部36の貫通孔と起立時基端部支持部21の貫通孔とが一致する位置で当接してジブマスト基端部36のそれ以上の後方への移動を阻止するストッパがガイド部33のうちジブ基端部17側の端部に設けられていてもよい。この構成によれば、ジブマスト基端部36の貫通孔と起立時基端部支持部21の貫通孔との位置合わせが容易になり、それらの貫通孔へ支持ピン9を挿入してジブマスト基端部36を起立時基端部支持部21に取り付ける作業を容易化できる。このストッパは、前記第1実施形態における倒伏時基端部保持部27のように、クレビスからなるジブマスト基端部36を受ける円弧状のものであってもよいし、ガイド部33からその背後に突出する様々な形態の突起部であってもよい。
【0217】
(6)前記第2実施形態では、縮んだ状態のジブマスト26を起立させて弛緩許容形態を取らせた後、その弛緩許容形態のジブマスト26が前方へ回動するのを阻止するためにそのジブマスト26とジブ6との間に前側回動ストッパ28aを介装したが、この前側回動ストッパ28aの介装は、ジブマスト26が伸長した状態で起立姿勢を取り、張設形態となった後に行ってもよい。すなわち、張設形態となったジブマスト26とブーム先端部15との間にジブマストバックストップ29を介装するのと同じ段階で前側回動ストッパ28aをジブマスト26とジブ6との間に介装してもよい。
【0218】
(7)また、前記第2実施形態では、上側マスト部材63が下側マスト部材62の内側に挿入されているが、逆に、下側マスト部材62が上側マスト部材63の内側に挿入されていてもよい。そして、その下側マスト部材62が上側マスト部材63の内側に挿入された状態で上側マスト部材63が下側マスト部材62に対してその下側マスト部材62の軸方向に沿って進退可能となっていればよい。
【0219】
(8)また、前記第3実施形態では、下側マスト部材62が前記傾斜姿勢を取るとともに上側マスト部材63が前記屈曲姿勢を取ったときに、その下側マスト部材62とジブ6との間への下側保持具89の介装による下側マスト部材62の姿勢の保持及び上側マスト部材63と下側マスト部材62との間への上側保持具90の介装による上側マスト部材63の姿勢の保持を行ったが、この下側保持具89による下側マスト部材62の姿勢の保持及び上側保持具90による上側マスト部材63の姿勢の保持は必ずしも行わなくてもよい。この場合、上側部材先端部81を補助クレーンで吊ることのみによって上側マスト部材63を前記屈曲姿勢で保持するとともに下側マスト部材62を前記傾斜姿勢で保持すればよい。
【0220】
(9)また、本発明においてジブマストが取り付けられる取付対象部は、ジブ基端部に限らず、ブーム先端部であってもよい。
【0221】
(10)また、起立時基端部支持部21は、ジブマスト26が格納時倒伏姿勢(格納形態)を取るときにそのジブマスト26の先端部に設けられたロープ連結部24と結合可能に構成され、そのジブマスト26を格納時倒伏姿勢で保持可能に構成されてもよい。この構成によれば、起立時基端部支持部21をジブマスト26が前記起立姿勢を取るときにジブマスト基端部36を支持するためのみならず、ジブマスト26が前記格納時倒伏姿勢を取るときにその姿勢でジブマスト26を保持するためにも用いることができる。このため、ジブマスト26を前記起立姿勢で支持するとともに前記格納時倒伏姿勢で保持するために必要となる部材点数を削減でき、クレーン100の製造コストを削減できる。
【0222】
(11)前記第1実施形態では、クレーン100の分解時に、ブーム5及びジブ6が図5に示される姿勢の状態でジブマスト26を起立姿勢から倒伏させたが、このジブマスト26の姿勢の移行を、図2図4に示されるようにブーム5及びジブ6が地面に沿うように倒伏した状態で行ってもよい。
【0223】
具体的には、クレーン100の分解時に、ブーム5及びジブ6が図5に示される状態からさらにブーム5を倒伏させて、図4に示されるようにブーム5及びジブ6を地面に沿うように倒伏した状態にし、その状態で、ジブマスト先端部37を補助クレーンで吊って支持しながら図3に示されるように弛緩許容位置へ移動させてジブマスト26を弛緩許容倒伏姿勢へ移行させる。このとき、作業者がジブマスト26のうちジブマスト基端部36近傍の部分を倒伏時基端部保持部27へ向かって押してジブマスト26が倒れるのを補助したり、ジブマスト先端部37を吊っている補助クレーンによりジブマスト26が弛緩許容倒伏姿勢へ向かって倒伏するようにジブマスト26の姿勢を導いたりすることによって、ジブマスト26を起立姿勢から弛緩許容倒伏姿勢へ移行させやすくする。
【0224】
なお、前記第1実施形態において、ガイド部33は、図2図4に示されるようにブーム5及びジブ6が地面に沿うように倒伏した状態(ブーム5の軸方向及びジブ6の軸方向が地面と平行となるようにブーム5及びジブ6が倒伏した状態)において前下がりに傾斜するような姿勢でジブ6に取り付けられていてもよい。この場合には、ブーム5及びジブ6が地面に沿うように倒伏した状態でジブマスト26を起立姿勢から倒伏させるときに、ジブマスト26の自重によりジブマスト基端部36を起立時基端部支持部21からガイド部33の傾斜に沿って倒伏時基端部保持部27へ自然に移動させることができる。
【0225】
(12)ブーム起伏装置40は、ブームマスト47の代わりに公知のガントリを有するものであってもよい。この場合、ブーム起伏装置40の起伏ウインチは、ガントリに搭載されてもよい。
【0226】
(13)主巻ウインチ42は、ブーム5(ブーム本体11)のうち最もブーム基端部14寄りのセクションであるいわゆる下部ブームに搭載されていてもよい。また、補巻ウインチ44も、下部ブームに搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0227】
2 旋回体(クレーン本体)
5 ブーム
6 ジブ
8 ジブ姿勢保持装置
12 ブーム側ロープ連結箇所(ロープ連結箇所)
14 ブーム基端部
15 ブーム先端部
17 ジブ基端部
18 ジブ先端部
21 起立時基端部支持部
22 ジブ側支持ロープ
23 ブーム側支持ロープ
24 ロープ連結部
26 ジブマスト
27 倒伏時基端部保持部
28 マスト姿勢保持部材
33 ガイド部
62 下側マスト部材
63 上側マスト部材
65 位置固定ピン(位置固定部材)
67 進出止め部
71 姿勢固定ピン(姿勢固定部材)
86 回動阻止部
88 保持具
89 下側保持具
90 上側保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14