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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】立体物印刷装置および立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20241203BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241203BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241203BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20241203BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20241203BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20241203BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241203BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241203BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B41J2/01 109
B05C11/10
B05B12/00 A
B05B13/04
B05D1/02 B
B05D1/26 Z
B05D7/00 K
B25J9/06 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020179514
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070443
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】望月 建寿
(72)【発明者】
【氏名】須貝 圭吾
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024408(JP,A)
【文献】特開2013-220409(JP,A)
【文献】特開2015-188886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B41J 2/01
B05C 11/10
B05B 12/00
B05B 13/04
B05D 1/02
B05D 1/26
B05D 7/00
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを移動させるロボットであって、前記ワークに対する前記液体吐出
ヘッドの相対的な位置を変化させる前記ロボットと、を有し、
前記ロボットは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上
の自然数である)の関節を有し、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作を実行する場合、
前記ロボットは、前記液体吐出ヘッドを移動経路に沿って移動させ、
前記N個の関節のうち前記印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個(ただし、M
は、Nより小さい自然数である)であり、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作を実行する場合、
前記N個の関節のうち前記非印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個よりも多く
、かつ、N個以下である、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を有
し、
前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上
の自然数である)の関節を有し、
前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作を実行する場合、前記N個の関節のうち
前記印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数
である)であり、
前記N個の関節は、
第1回動軸まわりに回動する第1関節と、
第2回動軸まわりに回動する第2関節と、
第3回動軸まわりに回動する第3関節と、を有し、
前記印刷動作の実行中において、前記第1関節および前記第3関節のそれぞれが回動し
、かつ、前記第2関節が回動せず、
前記印刷動作の開始タイミングにおいて、前記第1回動軸と前記第3回動軸とのなす角
度は、前記第1回動軸と前記第2回動軸とのなす角度よりも小さい、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項3】
前記第2回動軸は、前記N個の関節の回動軸のうち、前記第1回動軸とのなす角度が最
も大きい回動軸である、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記第1回動軸および前記第3回動軸は、互いに平行である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記N個の関節は、第4回動軸まわりに回動する第4関節をさらに有し、
前記印刷動作の開始タイミングにおいて、前記第1回動軸と前記第3回動軸と前記第4
回動軸とが互いに平行であり、
前記印刷動作の実行中において、前記第1関節と前記第3関節と前記第4関節とのそれ
ぞれが回動する、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドは、ノズル列軸に沿って並ぶ複数のノズルを有しており、
前記印刷動作の実行中において、前記第1回動軸および前記ノズル列軸が互いに平行で
ある、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記印刷動作は、
前記M個の関節を回動させつつ前記ワークの第1領域に対して印刷を行う第1印刷動作
と、
前記M個の関節を回動させつつ前記ワークの前記第1領域とは異なる第2領域に印刷を
行う第2印刷動作と、を含み、
前記移動機構は、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間の期間中に、前記ワーク
と前記液体吐出ヘッドとの相対的な位置を前記第1印刷動作および前記第2印刷動作の実
行中とは異なる方向に移動させる可動部を有する、
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを移動させるロボットであって、前記ワークに対する前記液体吐出
ヘッドの相対的な位置を変化させる前記ロボットと、を有し、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行する立体物印刷装置であ
って、
前記ロボットは、前記印刷動作において、前記液体吐出ヘッドを移動経路に沿って移動
させ、
前記ロボットは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能な複数の関節を有し、
前記複数の関節は、
前記印刷動作および前記非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する第1関節と、
前記印刷動作の実行中に回動せず、かつ、前記非印刷動作の実行中に回動する第2関節
と、を含む、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項9】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を有
し、
前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、
前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行する立体物印刷装置であ
って、
前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能な複数の関節を有し、
前記複数の関節は、
前記印刷動作および前記非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する第1関節と、
前記印刷動作の実行中に回動せず、かつ、前記非印刷動作の実行中に回動する第2関節
と、
3関節と、を含み
前記第1関節が第1回動軸まわりに回動し、
前記第2関節が第2回動軸まわりに回動し、
前記第3関節が第3回動軸まわりに回動し、
前記印刷動作の実行中において、前記第1関節および前記第3関節のそれぞれが回動し
、かつ、前記第2関節が回動せず、
前記印刷動作の開始タイミングにおいて、前記第1回動軸と前記第3回動軸とのなす角
度は、前記第1回動軸と前記第2回動軸とのなす角度よりも小さい、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項10】
前記第2回動軸は、前記複数の関節の回動軸のうち、前記第1回動軸とのなす角度が最
も大きい回動軸である、
ことを特徴とする請求項9に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第1回動軸および前記第3回動軸は、互いに平行である、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記複数の関節は、第4回動軸まわりに回動する第4関節をさらに有し、
前記印刷動作の開始タイミングにおいて、前記第1回動軸と前記第3回動軸と前記第4
回動軸とが互いに平行であり、
前記印刷動作の実行中において、前記第1関節と前記第3関節と前記第4関節とのそれ
ぞれが回動する、
ことを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記液体吐出ヘッドは、ノズル列軸に沿って並ぶ複数のノズルを有しており、
前記印刷動作の実行中において、前記第1回動軸および前記ノズル列軸が互いに平行で
ある、
ことを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記印刷動作は、
記ワークの第1領域に対して印刷を行う第1印刷動作と、
記ワークの前記第1領域とは異なる第2領域に印刷を行う第2印刷動作と、を含み、
前記移動機構は、前記第1印刷動作と前記第2印刷動作との間の期間中に、前記ワーク
と前記液体吐出ヘッドとの相対的な位置を前記第1印刷動作および前記第2印刷動作の実
行中とは異なる方向に移動させる可動部を有する、
ことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを移動させるロボットであって、前記ワークに対する前記液体吐出
ヘッドの相対的な位置を変化させる前記ロボットと、を用いて前記ワークに対して印刷を
行う立体物印刷方法であって、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、
前記ロボットが前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行し、
前記ロボットは、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上
の自然数である)の関節を有し、
前記印刷動作を実行する場合、
前記ロボットは、前記液体吐出ヘッドを移動経路に沿って移動させ、
記N個の関節のうち前記印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個(ただし、
Mは、Nより小さい自然数である)であり、
前記非印刷動作を実行する場合、
前記N個の関節のうち前記非印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個よりも多
く、かつ、N個以下である、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項16】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用
いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、
前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ
、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行し、
前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能な複数の関節を有し、
前記複数の関節は、
前記印刷動作および前記非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する第1関節と、
前記印刷動作の実行中に回動せず、かつ、前記非印刷動作の実行中に回動する第2関節
と、
第3関節と、を含み、
前記第1関節が第1回動軸まわりに回動し、
前記第2関節が第2回動軸まわりに回動し、
前記第3関節が第3回動軸まわりに回動し、
前記印刷動作の実行中において、前記第1関節および前記第3関節のそれぞれが回動し
、かつ、前記第2関節が回動せず、
前記印刷動作の開始タイミングにおいて、前記第1回動軸と前記第3回動軸とのなす角
度は、前記第1回動軸と前記第2回動軸とのなす角度よりも小さい、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置および立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のシステムは、複数の可動ジョイント部材からなる多軸のロボットと、ロボットに配置される印刷ヘッドと、を有し、車両の湾曲した表面に対して印刷ヘッドからインク滴を噴射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-520011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、印刷中に、ロボットの有する複数の可動ジョイント部材のすべてを動作させる。このため、特許文献1に記載の装置では、各可動ジョイント部材の動作誤差が重畳することにより、印刷ヘッドの理想的な移動経路に対する実際の移動経路のずれが大きくなってしまい、この結果、印刷画質の低下を招くという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を有し、前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の関節を有し、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作を実行する場合、前記N個の関節のうち前記印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)である。
【0006】
本発明に係る立体物印刷装置の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を有し、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行する立体物印刷装置であって、前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能な複数の関節を有し、前記複数の関節は、前記印刷動作および前記非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する第1関節と、前記印刷動作の実行中に回動せず、かつ、前記非印刷動作の実行中に回動する第2関節と、を含む。
【0007】
本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の関節を有し、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作を実行する場合、前記N個の関節のうち前記印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)である。
【0008】
本発明に係る立体物印刷方法の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する印刷動作と、前記移動機構が前記ワークに対して前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させつつ、前記液体吐出ヘッドが液体を吐出しない非印刷動作と、を実行し、前記移動機構は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能な複数の関節を有し、前記複数の関節は、前記印刷動作および前記非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する第1関節と、前記印刷動作の実行中に回動せず、かつ、前記非印刷動作の実行中に回動する第2関節と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態における液体吐出ユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
図5】第1実施形態におけるワークに対する液体吐出ヘッドの移動経路を説明するための図である。
図6】印刷動作を説明するための模式図である。
図7】印刷動作の実行中に駆動する関節の数が6個である場合の各関節の動作量の経時的変化を示す図である。
図8】印刷動作の実行中に駆動する関節の数が3個である場合の各関節の動作量の経時的変化を示す図である。
図9】液体吐出ヘッドの走査方向での位置と理想経路からのずれ量との関係を示すグラフである。
図10】第2実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す上面図である。
図11】第2実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図12】第2実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
図13】第1印刷動作および第2印刷動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0012】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のワークWおよび基台210が設置される空間に設定されるベース座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置100は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0014】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。図1に示す例では、ワークWは、長軸AXまわりの長球状をなすラグビーボールであり、面WFは、曲率の一定でない曲面である。本実施形態では、ワークWは、長軸AXがX軸に平行となるように配置される。なお、ワークWは、ラグビーボールに限定されない。ここで、ワークWの形状または大きさ等の態様は、図1に示す例に限定されず、任意である。例えば、ワークWの表面は、平面、段差面または凹凸面等の面を有してもよい。また、ワークWの設置姿勢も、図1に示す例に限定されず、任意である。
【0015】
図1に示す例では、立体物印刷装置100は、垂直多関節ロボットを用いるインクジェットプリンターである。具体的には、図1に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200と液体吐出ユニット300と液体供給ユニット400とコントローラー600とを有する。以下、まず、図1に示す立体物印刷装置100の各部を順次簡単に説明する。
【0016】
ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ユニット300の位置および姿勢を変化させる移動機構である。図1に示す例では、ロボット200は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。具体的には、ロボット200は、基台210とアーム220とを有する。
【0017】
基台210は、アーム220を支持する台である。図1に示す例では、基台210は、Z1方向を向く床面等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基台210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0018】
アーム220は、基台210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム220は、アーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0019】
アーム221は、基台210に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節部230_1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節部230_2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節部230_3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節部230_4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節部230_5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節部230_6を介して連結される。なお、以下では、関節部230_1~230_6のそれぞれを関節部230という場合がある。
【0020】
ここで、関節部230_1~230_6のそれぞれは、「関節」の一例である。図1に示す例では、関節部230の数Nが6個である。また、関節部230_1が「第2関節」の一例であり、回動軸O1が「第2回動軸」の一例である。関節部230_2が「第1関節」の一例であり、回動軸O2が「第1回動軸」の一例である。関節部230_3が「第4関節」の一例であり、回動軸O3が「第4回動軸」の一例である。関節部230_5が「第3関節」の一例であり、回動軸O5が「第3回動軸」の一例である。
【0021】
関節部230_1~230_6のそれぞれは、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。図1では図示しないが、関節部230_1~230_6のそれぞれには、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、当該駆動機構の集合体は、後述の図2に示すアーム駆動機構240に相当する。また、当該エンコーダーは、後述の図2等に示すエンコーダー241に相当する。
【0022】
回動軸O1は、基台210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。回動軸O2は、回動軸O1に対して垂直な軸である。回動軸O3は、回動軸O2に対して平行な軸である。回動軸O4は、回動軸O3に対して垂直な軸である。回動軸O5は、回動軸O4に対して垂直な軸である。回動軸O6は、回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0023】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0024】
以上のアーム220の先端、すなわち、アーム226には、エンドエフェクターとして、液体吐出ユニット300が装着される。
【0025】
液体吐出ユニット300は、液体の一例であるインクをワークWに向けて吐出する液体吐出ヘッド310を有する機器である。本実施形態では、液体吐出ユニット300は、液体吐出ヘッド310のほか、液体吐出ヘッド310に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整弁320と、ワークWとの間の距離を計測するセンサー330と、を有する。これらは、ともにアーム226に固定されるので、互いの位置および姿勢の関係が固定される。
【0026】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよい。
【0027】
図1では図示しないが、液体吐出ヘッド310は、圧電素子と、インクを収容するキャビティと、当該キャビティに連通するノズルと、有する。ここで、当該圧電素子は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。このような液体吐出ヘッド310は、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、当該圧電素子は、後述の図2に示す圧電素子311に相当する。また、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0028】
圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、液体吐出ヘッド310のノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0029】
センサー330は、液体吐出ヘッド310とワークWとの間の距離を計測する光学式の変位センサーである。なお、センサー330は、必要に応じて設ければよく、省略してもよい。また、図1に示す例では、液体吐出ユニット300が有する液体吐出ヘッド310および圧力調整弁320のそれぞれの数が1個であるが、当該数は、図1に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁320の設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基台210に対して固定の位置でもよい。
【0030】
液体供給ユニット400は、インクを液体吐出ヘッド310に供給するための機構である。液体供給ユニット400は、液体貯留部410と供給流路420とを有する。
【0031】
液体貯留部410は、インクを貯留する容器である。液体貯留部410は、例えば、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックである。
【0032】
図1に示す例では、液体貯留部410は、常に液体吐出ヘッド310よりもZ1方向に位置するように、壁、天井または柱等に固定される。すなわち、液体貯留部410は、液体吐出ヘッド310の移動領域よりも鉛直方向での上方に位置する。このため、ポンプ等の機構を用いなくても、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の加圧力でインクを供給することができる。
【0033】
なお、液体貯留部410の設置場所は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給することができればよく、液体吐出ヘッド310よりも鉛直方向での下方に位置してもよい。この場合、例えば、ポンプを用いて、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給すればよい。
【0034】
供給流路420は、液体貯留部410から液体吐出ヘッド310にインクを供給する流路である。供給流路420の途中には、圧力調整弁320が設けられる。このため、液体吐出ヘッド310と液体貯留部410との位置関係が変化しても、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力の変動を低減することができる。
【0035】
供給流路420は、例えば、管体の内部空間で構成される。ここで、供給流路420に用いる管体は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されており、可撓性を有する。このように、可撓性を有する管体を用いて供給流路420を構成することにより、液体貯留部410と圧力調整弁320との相対的な位置関係の変化が許容される。したがって、液体貯留部410の位置および姿勢を固定したまま、液体吐出ヘッド310の位置または姿勢が変化しても、液体貯留部410から圧力調整弁320へインクを供給することができる。
【0036】
なお、供給流路420の一部が可撓性を有しない部材で構成されてもよい。また、供給流路420の一部は、インクを複数箇所に分配する分配流路を有する構成でもよいし、液体吐出ヘッド310または圧力調整弁320と一体で構成されてもよい。
【0037】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御するロボットコントローラーである。図1では図示しないが、コントローラー600には、液体吐出ユニット300における吐出動作を制御する制御モジュールが電気的に接続される。コントローラー600および当該制御モジュールには、コンピューターが通信可能に接続される。なお、当該制御モジュールは、後述の図2に示す制御モジュール500に相当する。当該コンピューターは、後述の図2に示すコンピューター700に相当する。
【0038】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、立体物印刷装置100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。また、図2では、エンコーダー241_1~241_6を含むアーム駆動機構240が示される。アーム駆動機構240は、関節部230_1~230_6を動作させる前述の駆動機構の集合体である。エンコーダー241_1~241_6は、関節部230_1~230_6に対応して設けられ、エンコーダー241_1~241_6の回転角度等の動作量を計測する。なお、以下では、エンコーダー241_1~241_6のそれぞれをエンコーダー241という場合がある。
【0039】
図2に示すように、立体物印刷装置100は、前述のロボット200と液体吐出ユニット300とコントローラー600のほか、制御モジュール500とコンピューター700とを有する。なお、以下に述べる電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、制御モジュール500またはコントローラー600の機能の一部または全部は、コントローラー600に接続されるコンピューター700により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー600に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0040】
コントローラー600は、ロボット200の駆動を制御する機能と、液体吐出ヘッド310の吐出動作をロボット200の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。コントローラー600は、記憶回路610と処理回路620とを有する。
【0041】
記憶回路610は、処理回路620が実行する各種プログラムと、処理回路620が処理する各種データと、を記憶する。記憶回路610は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路610の一部または全部は、処理回路620に含まれてもよい。
【0042】
記憶回路610には、経路情報Daが記憶される。経路情報Daは、液体吐出ヘッド310の移動すべき経路を示す情報である。具体的には、経路情報Daは、前述のツール座標系の原点を示すツールセンターポイントの移動すべき経路を示す情報を含む。経路情報Daは、例えば、ベース座標系の座標値を用いて表される。経路情報Daは、ワークWの位置および形状を示すワーク情報に基づいて決められる。当該ワーク情報は、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データ等の情報を前述のベース座標系に対応付けることにより得られる。以上の経路情報Daは、コンピューター700から記憶回路610に入力される。
【0043】
処理回路620は、経路情報Daに基づいて関節部230_1~230_6の動作を制御するとともに、信号D3を生成する。具体的には、処理回路620は、経路情報Daを各関節部230_1~230_6の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路620は、各関節部230_1~230_6の実際の回転角度および回転速度等の動作量が前述の演算結果となるように、ロボット200のアーム駆動機構240に含まれるエンコーダー241_1~241_6からの出力D1_1~D1_6に基づいて、制御信号Sk_1~Sk_6を出力する。制御信号Sk_1~Sk_6は、関節部230_1~230_6に対応しており、対応する関節部230に設けられるモーターの駆動を制御する。なお、出力D1_1~D1_6は、エンコーダー241_1~241_6に対応する。以下では、出力D1_1~D1_6のそれぞれを出力D1という場合がある。
【0044】
また、処理回路620は、エンコーダー241_1~241_6のうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路620は、エンコーダー241_1~241_6のうちの1つのエンコーダー241からの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0045】
以上の処理回路620は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路620は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0046】
制御モジュール500は、コントローラー600から出力される信号D3とコンピューター700からの印刷データとに基づいて、液体吐出ヘッド310の吐出動作を制御する回路である。制御モジュール500は、タイミング信号生成回路510と電源回路520と制御回路530と駆動信号生成回路540とを有する。
【0047】
タイミング信号生成回路510は、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路510は、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0048】
電源回路520は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、立体物印刷装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路520は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ユニット300に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路540に供給される。
【0049】
制御回路530は、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路540に入力され、それ以外の信号は、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される。
【0050】
制御信号SIは、液体吐出ヘッド310が有する圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、圧電素子311に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定する。この指定により、例えば、圧電素子311に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、圧電素子311の駆動タイミングを規定することにより、ノズルからのインクの吐出タイミングを規定する。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。以上の信号のうち、液体吐出ユニット300のスイッチ回路340に入力される信号については、後に詳述する。
【0051】
以上の制御回路530は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、制御回路530は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0052】
駆動信号生成回路540は、液体吐出ヘッド310が有する各圧電素子311を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路540は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路540では、当該DA変換回路が制御回路530からの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路520からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、スイッチ回路340を介して、駆動信号生成回路540から圧電素子311に供給される。スイッチ回路340は、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0053】
コンピューター700は、コントローラー600に経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール500に印刷データ等の情報を供給する機能と、を有する。また、本実施形態のコンピューター700は、前述のセンサー330に電気的に接続されており、センサー330からの信号D2に基づいて、経路情報Daを補正するための情報をコントローラー600に供給する。
【0054】
1-3.液体吐出ユニット
図3は、第1実施形態における液体吐出ユニット300の概略構成を示す斜視図である。
【0055】
以下の説明は、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、a軸に沿う一方向をa1方向といい、a1方向と反対の方向をa2方向という。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向をb1方向およびb2方向という。また、c軸に沿って互いに反対の方向をc1方向およびc2方向という。
【0056】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のロボット200の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0057】
液体吐出ユニット300は、前述のように、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とを有する。これらは、図3中の二点鎖線で示される支持体350に支持される。
【0058】
支持体350は、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、図3では、支持体350が扁平な箱状をなすが、支持体350の形状は、特に限定されず、任意である。
【0059】
以上の支持体350は、前述のアーム220の先端、すなわちアーム226に装着される。このため、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320とセンサー330とのそれぞれは、アーム226に固定される。
【0060】
図3に示す例では、圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310に対してc1方向に位置する。センサー330は、液体吐出ヘッド310に対してa2方向に位置する。
【0061】
供給流路420は、圧力調整弁320により上流流路421と下流流路422とに区分される。すなわち、供給流路420は、液体貯留部410と圧力調整弁320とを連通させる上流流路421と、圧力調整弁320と液体吐出ヘッド310とを連通させる下流流路422と、を有する。図3に示す例では、供給流路420の下流流路422の一部が流路部材422aで構成される。流路部材422aは、圧力調整弁320からのインクを液体吐出ヘッド310の複数箇所に分配する流路を有する。流路部材422aは、例えば、樹脂材料で構成される複数の基板の積層体であり、各基板には、インクの流路のための溝または孔が適宜に設けられる。
【0062】
液体吐出ヘッド310は、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。図3に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列Laと第2ノズル列Lbとに区分される。第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのそれぞれは、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、液体吐出ヘッド310における第1ノズル列Laの各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列Lbの各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0063】
ただし、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbのうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列Laにおける複数のノズルNと第2ノズル列Lbにおける複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0064】
1-4.立体物印刷装置の動作および立体物印刷方法
図4は、第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、前述の立体物印刷装置100を用いて行われる。立体物印刷装置100は、図4に示すように、非印刷動作を行うステップS110と、印刷動作を行うステップS120と、非印刷動作を行うステップS130と、をこの順で実行する。
【0065】
ステップS110の非印刷動作は、印刷動作の前にロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる動作である。当該非印刷動作では、液体吐出ヘッド310がインクを吐出しない。当該非印刷動作は、例えば、ロボット200が液体吐出ヘッド310を印刷開始位置に移動させるとともに回動軸O2と回動軸O3と回動軸O5とを互いに平行な状態とする動作等の準備動作を含む。当該非印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節部230のすべてを動作させることが可能であり、印刷動作よりも多い数の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。
【0066】
ステップS120の印刷動作は、ロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、液体吐出ヘッド310がインクを吐出する動作である。当該印刷動作では、非印刷動作よりも少ない数の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。このため、非印刷動作に比べて、液体吐出ヘッド310の理想的な経路に対する実際の移動経路のずれが低減される。本実施形態の当該印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節部230のうち3個の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。当該印刷動作については、後に詳述する。
【0067】
ステップS130の非印刷動作は、印刷動作の後にロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる動作である。当該非印刷動作では、液体吐出ヘッド310がインクを吐出しない。当該非印刷動作は、例えば、ロボット200が液体吐出ヘッド310を印刷終了位置から他の位置に移動させる動作等の動作を含む。当該非印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節部230のすべてを動作させることが可能であり、印刷動作よりも多い数の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。
【0068】
図5は、第1実施形態におけるワークWに対する液体吐出ヘッド310の移動経路RUを説明するための図である。図5では、長軸AXがX軸に平行となるように配置されたワークWの面WFに対して印刷する場合が例示される。ここで、ワークWは、ロボット200よりもX2方向の位置に載置される。
【0069】
印刷動作では、図5に示すように、ロボット200が液体吐出ヘッド310を移動経路RUに沿って移動させる。移動経路RUは、位置PSから位置PEまでの面WFに沿う経路である。移動経路RUは、Z2方向にみてX軸に沿って延びる直線状をなす。
【0070】
印刷動作では、ロボット200は、6個の関節部230のうち3個の関節部230を動作させる。図5に示す例では、ロボット200は、印刷動作の実行中において、関節部230_2と関節部230_3と関節部230_5とのそれぞれの回動軸をY軸に平行な状態とし、これらの関節部を動作させる。このように、3個の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310を移動経路RUに沿って移動させることができる。
【0071】
印刷動作の実行中において、ロボット200は、液体吐出ユニット300に設定されるツール座標系のb軸と、ベース座標系のY軸と、が互いに平行な状態保たれるように6個の関節部230のうち3個の関節部230を動作させる。つまり、印刷動作の実行中において、ロボット200は、第1ノズル列Laおよび第2ノズル列Lbが、動作させる3個の関節部230と平行な状態を保つ。換言すれば、印刷動作の実行中において、ロボット200は、回動軸がY軸と平行でない関節部230である関節部230_1と関節部230_4と関節部230_6とを動作させない。
【0072】
なお、本実施形態の印刷動作は、回動軸O2と回動軸O3と回動軸O5とを互いに平行な状態とするが、これに限定されず、例えば、回動軸O2と回動軸O3と回動軸O6とを互いに平行な状態としてもよい。この場合、関節部230_2と関節部230_3と関節部230_6との動作により液体吐出ヘッド310を移動経路RUに沿って移動させる。この場合、アーム226に対するヘッドユニット300の固定方向を図5の例とは異ならせる必要がある。例えば、ノズル列が沿うb軸と、回転軸O6とが互いに平行になるように、ヘッドユニット300をアーム226に対して固定することで、移動経路RUでのワークWに対する印刷動作が可能となる。
【0073】
図6は、印刷動作を説明するための模式図である。図6では、移動経路RUの一部における液体吐出ヘッド310の状態が模式的に示される。また、図6では、実線で示されるタイミングよりも前の所定のタイミングにおける液体吐出ヘッド310が二点鎖線で示される。図6に示すように、印刷動作において、液体吐出ヘッド310と面WFとの間の距離L1は、所定範囲内に維持される。また、印刷動作において、液体吐出ヘッド310が一定の姿勢で面WFに対向する。図6に示す例では、ノズル面Fが面WFに平行となるように対向する。なお、印刷動作の実行中、ノズル面Fが面WFに対してY軸まわりに傾斜してもよいし、その傾斜角度が変化してもよい。
【0074】
図7は、印刷動作の実行中に駆動する関節部230の数が6個である場合の各関節部230の動作量の経時的変化を示す図である。図8は、印刷動作の実行中に駆動する関節部230の数が3個である場合の各関節部230の動作量の経時的変化を示す図である。ここで、図7中および図8中、「J1動作量」は、関節部230_1の回動量を示す。同様に、図7中および図8中、「J2~J6動作量」は、関節部230_2~230_6の回動量を示す。
【0075】
本実施形態では、図8に示すように、ロボット200は、印刷動作の実行中において、関節部230_2と関節部230_3と関節部230_5との3個の関節部230を動作させる。一方、関節部230_1と関節部230_4と関節部230_4との他の3個の関節部230は動作させない。なお、図7および図8に示す各動作量は、一例であり、これに限定されない。
【0076】
なお、図8はワークWの配置を図5と同様に配置した場合における関節部230の回動量を示す。一方、図7はワークWの配置を図5とは異ならせて配置した場合における関節部230回動量を示す。例えば、ワークWを長軸AXがY軸に平行となるように配置し、Z2方向にみて移動経路RUがY軸に沿って延びる直線状をなすように移動経路RUを設定した場合、関節部230は図7に示すような回動量となる。
【0077】
図9は、液体吐出ヘッド310の走査方向での位置と理想経路からのずれ量との関係を示すグラフである。図9中の横軸「走査方向での位置」は、液体吐出ヘッド310のX軸に沿う方向での位置である。図9中の縦軸「理想経路からのずれ量」は、液体吐出ヘッド310のY軸に沿う方向での位置である。つまり、「理想経路からのずれ量」は移動経路RUで液体吐出ヘッド310を移動する際における、液体吐出ヘッド310の意図しない蛇行である。ここで、図9中の縦軸の数値がゼロであることは、液体吐出ヘッド310が理想経路上に位置することを示す。
【0078】
図9中の実線で示すように3個の関節部230を動作させる場合、図9中の破線で示すように6個の関節部230を動作させる場合に比べて、液体吐出ヘッド310の理想経路に対する実際の移動経路のずれが低減される。
【0079】
以上のように、立体物印刷装置100は、液体吐出ヘッド310と、「移動機構」の一例であるロボット200と、を有する。液体吐出ヘッド310は、立体的なワークWに対して、「液体」の一例であるインクを吐出する。ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる。ロボット200は、互いに異なる回動軸まわりに回動可能なN個(ただし、Nは、2以上の自然数である)の「関節」の一例である関節部230を有する。本実施形態では、Nが6である。このように、ロボット200は、複数の関節部230を有する。
【0080】
立体物印刷装置100は、ロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、液体吐出ヘッド310がインクを吐出する印刷動作を実行する場合、N個の関節部230のうち印刷動作の実行中に回動する関節部230の数は、M個(ただし、Mは、Nより小さい自然数である)である。このように、印刷動作の実行中に回動する関節部230の数をN個より少ないM個とすることにより、印刷動作の実行中に回動する関節部230の数がN個である構成に比べて、関節部230の動作誤差の影響が小さくなるので、液体吐出ヘッド310の理想的な移動経路に対する実際の移動経路のずれを低減することができる。この結果、印刷画質を高めることができる。
【0081】
一方、立体物印刷装置100は、ロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、液体吐出ヘッド310がインクを吐出しない非印刷動作を実行する場合、N個の関節のうち非印刷動作の実行中に回動する関節の数は、M個よりも多く、かつ、N個以下である。本実施形態では、ロボット200の有する複数の関節部230は、印刷動作および非印刷動作のそれぞれの実行中に回動する「第1関節」の一例である関節部230_2と、印刷動作の実行中に回動せず、かつ、非印刷動作の実行中に回動する「第2関節」の一例である関節部230_1と、を含む。
【0082】
このように、非印刷動作の実行中に回動する関節部230の数をM個よりも多くすることにより、非印刷動作の実行中に回動する関節部230の数がM個である構成に比べて、非印刷動作におけるロボット200の動作の自由度が増す。このため、関節部230の数がM個である構成に比べて、非印刷動作での利便性等を高めることができる。
【0083】
本実施形態では、前述のように、N個の関節部230は、「第1関節」の一例である関節部230_2と、「第2関節」の一例である関節部230_1と、「第3関節」の一例である関節部230_5と、を有する。関節部230_2は、「第1回動軸」の一例である回動軸O2まわりに回動する。関節部230_1は、「第2回動軸」の一例である回動軸O1まわりに回動する。関節部230_5は、「第3回動軸」の一例である回動軸O5まわりに回動する。
【0084】
立体物印刷装置100では、印刷動作の実行中において、関節部230_2および関節部230_5のそれぞれが回動し、かつ、関節部230_1が回動せず、印刷動作の開始タイミングにおいて、回動軸O2と回動軸O5とのなす角度は、回動軸O2と回動軸O1とのなす角度よりも小さい。本実施形態では、回動軸O2および回動軸O5が互いに平行であり、これらの回動軸のなす角度は、0°である。また、本実施形態では、回動軸O2および回動軸O1が互いに直交しており、これらの回動軸のなす角度は、90°である。
【0085】
前述のように、回動軸O1は、N個の関節部230の回動軸のうち、回動軸O2とのなす角度が最も大きい回動軸である。ここで、「回動軸O2とのなす角度が最も大きい」とは、90°に最も近いことを意味する。
【0086】
また、前述のように、回動軸O2および回動軸O5は、互いに平行である。このため、関節部230_2および関節部230_5を動作させることにより、回動軸O2または回動軸O5に垂直な方向にみて液体吐出ヘッド310を直線的に移動させることができる。つまり、ロボット200は、X軸とZ軸とによって形成される仮想的な平面に対して、液体吐出ヘッド310を平行に移動することができる。
【0087】
前述のように、N個の関節部230は、「第4関節」の一例である関節部230_3を有する。関節部230_3は、「第4回動軸」の一例である回動軸O3まわりに回動する。立体物印刷装置100では、印刷動作の開始タイミングにおいて、回動軸O2と回動軸O5と回動軸O3とが互いに平行であり、印刷動作の実行中において、関節部230_2と関節部230_5と関節部230_3とのそれぞれが回動する。このため、関節部230_2と関節部230_5と関節部230_3とを動作させることにより、ワークWの形状によらず、液体吐出ヘッド310とワークWの表面との間の距離を所望の範囲内に維持しつつ、回動軸O2または回動軸O5に垂直な方向にみて液体吐出ヘッド310を直線的に移動させることができる。
【0088】
前述のように、液体吐出ヘッド310は、「ノズル列軸」の一例であるb軸に沿って並ぶ複数のノズルNを有する。立体物印刷装置100では、印刷動作の実行中において、回動軸O2およびb軸が互いに平行である。このため、回動軸O2まわりに関節部230_2を動作させて、回動軸O2と直交する方向に液体吐出ヘッド310を走査することで、b軸に沿う複数のノズルNの幅にわたる範囲の印刷を行うことができる。
【0089】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0090】
図10は、第2実施形態に係る立体物印刷装置100Aの概略を示す上面図である。立体物印刷装置100Aは、可動部800を追加した以外は、前述の第1実施形態の立体物印刷装置100と同様である。本実施形態のワークWは、直方体であり、Z1方向を法線とする面WFを有する。
【0091】
可動部800は、ロボット200の動作とは別途の動作により、ワークWに対して液体吐出ヘッド310を相対的に移動させる機構である。図10に示す例では、可動部800は、ワークWをX軸に沿う方向に移動させる直動機構である。具体的には、可動部800は、1対のレール810とテーブル820と駆動機構830とを有する。1対のレール810は、互いに平行に配置され、X軸に沿う方向に延びる部材である。テーブル820は、1対のレール810に対して直動軸受等を介してX軸に沿って移動可能に取り付けられる。駆動機構830は、1対のレール810に対してテーブル820をX軸に沿って移動させる直動モーター等の機構である。なお、図示しないが、駆動機構830には、1対のレール810に対するテーブル820のX軸に沿う方向での位置を検出するエンコーダーが設けられる。
【0092】
以上の構成の可動部800は、ワークWの面WFの第1領域RP1に対して液体吐出ヘッド310が対向する第1状態から、ワークWの面WFの第1領域RP1とは異なる第2領域RP2に対して液体吐出ヘッド310が対向する第2状態まで、ワークWを移動させる。当該第1状態では、ロボット200が液体吐出ヘッド310を第1移動経路RU_1に沿って移動させつつ、液体吐出ヘッド310が第1領域RP1に向けてインクを吐出する第1印刷動作が実行される。当該第2状態では、ロボット200が液体吐出ヘッド310を第2移動経路RU_2に沿って移動させつつ、液体吐出ヘッド310が第2領域RP2に向けてインクを吐出する第2印刷動作が実行される。
【0093】
図11は、第2実施形態に係る立体物印刷装置100Aの電気的な構成を示すブロック図である。図11に示すように、可動部800は、コンピューター700に電気的に接続される。コンピューター700は、第1印刷動作と第2印刷動作との間の期間に、ワークWを移動させる。
【0094】
図12は、第2実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、前述の立体物印刷装置100Aを用いて行われる。立体物印刷装置100Aは、図12に示すように、非印刷動作を行うステップS210と、印刷動作を行うステップS220と、非印刷動作を行うステップS230と、をこの順で実行する。
【0095】
ステップS210の非印刷動作は、印刷動作の前にロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる動作である。当該非印刷動作では、液体吐出ヘッド310がインクを吐出しない。当該非印刷動作は、例えば、ロボット200が液体吐出ヘッド310を第1印刷動作の印刷開始位置に移動させるとともに回動軸O2と回動軸O3と回動軸O5とを互いに平行な状態とする動作等の準備動作を含む。当該非印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節部230のすべてを動作させることが可能であり、印刷動作よりも多い数の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。
【0096】
ステップS220の印刷動作は、ロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させつつ、液体吐出ヘッド310がインクを吐出する動作である。当該印刷動作は、第1印刷動作を行うステップS221と、可動部800を駆動するステップS222と、第2印刷動作を行うステップS223と、をこの順で実行する。当該第1印刷動作および当該第2印刷動作のそれぞれでは、前述の第1実施形態の印刷動作と同様、ロボット200の有する6個の関節部230のうち3個の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。このため、非印刷動作に比べて、液体吐出ヘッド310の理想的な経路に対する実際の移動経路のずれが低減される。ステップS222については、後述の図13に基づいて説明する。
【0097】
ステップS230の非印刷動作は、印刷動作の後にロボット200がワークWに対して液体吐出ヘッド310の相対的な位置を変化させる動作である。当該非印刷動作では、液体吐出ヘッド310がインクを吐出しない。当該非印刷動作は、例えば、ロボット200が液体吐出ヘッド310を第2印刷動作の印刷終了位置から他の位置に移動させる動作等の動作を含む。当該非印刷動作では、ロボット200の有する6個の関節部230のすべてを動作させることが可能であり、印刷動作よりも多い数の関節部230の動作により液体吐出ヘッド310の移動が行われる。他の位置の例としては、液体吐出ヘッド310のメンテナンスを行うメンテナンスユニット(不図示)が設けられた位置などが挙げられる。
【0098】
図13は、第1印刷動作および第2印刷動作を説明するための模式図である。図13では、第1印刷動作の実行中の可動部800および液体吐出ヘッド310が示される。可動部800は、第1印刷動作と第2印刷動作との間の期間中に、ワークWを、実線で示す位置から二点鎖線で示す位置にX軸に沿う方向DTに移動させる。この移動の距離Lは、第1領域RP1と第2領域RP2との位置関係に応じて決められる。図13に示す例では、第1領域RP1と第2領域RP2との一部同士が重なる。このため、距離Lは、X軸に沿う第1領域RP1または第2領域RP2の幅よりも、この重なり分短い長さである。なお、第1領域RP1と第2領域RP2とが重ならなくてもよい。
【0099】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、印刷品質を向上させることができる。また、本実施形態では、ステップS220で実行される印刷動作は、前述のように、ステップS221で実行される第1印刷動作と、ステップS223で実行される第2印刷動作と、を含む。第1印刷動作は、M個の関節部230を回動させつつワークWの第1領域RP1に対して印刷を行う。第2印刷動作は、M個の関節部230を回動させつつワークWの第1領域RP1とは異なる第2領域RP2に印刷を行う。ロボット200は、可動部800を有する。可動部800は、第1印刷動作と第2印刷動作との間の期間中に、ワークWと液体吐出ヘッド310との相対的な位置を第1印刷動作および第2印刷動作の実行中とは異なる方向に移動させる。本実施形態では、当該方向がX1方向である。このように、可動部800が複数の関節部230によらずにワークWに対して液体吐出ヘッド310を相対的に移動させることにより、複数の関節部230の動作を変更せずに第1領域RP1および第2領域RP2のそれぞれに印刷を行うことができる。
【0100】
なお、本実施形態では、可動部800とロボット200の基台210との位置関係が固定である構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、リニアアクチュエーターで構成される可動部を液体吐出ヘッド310とロボット200のアーム220の先端との間に設けることによっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0102】
3-1.変形例1
前述の形態では、印刷動作の実行中に、3個の関節部230を動作させる構成が例示されるが、これに限定されず、印刷動作の実行中に動作する関節部230の数が非印刷動作の実行中よりも少なければよい。ただし、ワークWの形状が限定されない点で、前述の形態のように、互いに回動軸の平行な3個の関節部230を動作させることが好ましい。なお、当該3個の関節部230の回動軸は、Z軸に直交する場合に限定されず、任意である。
【0103】
3-2.変形例2
前述の形態では、移動機構として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。移動機構は、ワークに対して液体吐出ヘッドの相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させることが可能であればよい。したがって、移動機構は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットアームは、回動機構で構成される関節部に加えて、伸縮機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と非印刷動作での移動機構の動作の自由度とのバランスの観点から、移動機構は、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。
【0104】
3-3.変形例3
前述の形態では、ロボットアームの先端に対する液体吐出ヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構により液体吐出ヘッドを把持することにより、ロボットアームの先端に対して液体吐出ヘッドを固定してもよい。
【0105】
3-4.変形例4
前述の形態では、液体吐出ヘッドを移動させる構成の移動機構が例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、液体吐出ヘッドの位置が固定されており、移動機構がワークを移動させ、液体吐出ヘッドに対してワーク相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0106】
3-5.変形例5
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0107】
3-6.変形例6
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0108】
100…立体物印刷装置、100A…立体物印刷装置、200…ロボット(移動機構)、230…関節部(関節)、230_1…関節部(第2関節)、230_2…関節部(第1関節)、230_3…関節部(第4関節)、230_4…関節部、230_5…関節部(第3関節)、230_6…関節部、310…液体吐出ヘッド、800…可動部、N…ノズル、O1…回動軸(第2回動軸)、O2…回動軸(第1回動軸)、O3…回動軸(第4回動軸)、O4…回動軸、O5…回動軸(第3回動軸)、O6…回動軸、RP1…第1領域、RP2…第2領域、RU…移動経路、RU_1…第1移動経路、RU_2…第2移動経路、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13