(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
B23B 51/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B23B51/00 S
(21)【出願番号】P 2020182757
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 正治
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-100414(JP,U)
【文献】特開昭59-081010(JP,A)
【文献】特開昭59-161208(JP,A)
【文献】米国特許第06267542(US,B1)
【文献】米国特許第04671710(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00、02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転させられるドリル本体を備え、
前記ドリル本体には、
先端側を向き被削材に対向する先端面と、
前記先端面から後端側に延びる切屑排出溝と、
前記切屑排出溝の回転方向前方を向く前方壁面と前記先端面との交差稜線に位置する主切刃と、
前記切屑排出溝の回転方向後方を向く後方壁面と前記先端面との間に位置するシンニング部と、が設けられ、
前記シンニング部は、
前記先端面に繋がり後端側に向かうに従い回転方向後方側に傾斜するシンニング壁面と、
前記主切刃の径方向内端から径方向内側に延びるシンニング切刃と、
前記シンニング切刃と前記シンニング壁面との間を繋ぎ回転方向前方側を向くシンニングすくい面と、を有し、
軸方向から見て、前記シンニング切刃の延びる方向に沿って前記中心軸から径方向外側に向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と直交し前記中心軸から径方向外側に向かう方向を第2方向とし、
前記シンニング部は、前記第1方向および前記第2方向において前記中心軸を越えて形成され
、
前記シンニング切刃は、
径方向内側の領域に位置する内側シンニング刃と、
径方向外側の領域に位置する外側シンニング刃と、を有し、
前記内側シンニング刃は、径方向外側に向かうに従い先端側に傾斜し、
前記外側シンニング刃は、径方向外側に向かうに従い後端側に傾斜する、
ドリル。
【請求項2】
一対の前記切屑排出溝、一対の前記主切刃、および一対の前記シンニング部が設けられる2枚刃のドリルであり、
側方から見て一対の前記シンニング切刃
の前記内側シンニング刃同士は、前記中心軸を中心にV字状に交差しV字状切刃を構成する、
請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
前記V字状切刃の開口径は、前記ドリル本体の直径の30%以下である、請求項2に記載のドリル。
【請求項4】
前記V字状切刃の開口径は、前記ドリル本体の直径の5%以上15%以下である、請求項3に記載のドリル。
【請求項5】
前記V字状切刃において、一対の前記シンニング切刃
の前記内側シンニング刃のなす角度が、10°以上70°以下である、
請求項2~4の何れか一項に記載のドリル。
【請求項6】
前記V字状切刃において、一対の前記シンニング切刃
の前記内側シンニング刃のなす角度が、45°以上65°以下である、
請求項5に記載のドリル。
【請求項7】
前記V字状切刃を構成する一対の前記シンニング切刃
の前記内側シンニング刃同士の前記第2方向における距離は、2mm以下である、
請求項2~6の何れか一項に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ドリル本体の先端部に、シンニングが施されたドリルが知られている(例えば、特許文献1)。このようなドリルでは、ドリルの心厚を十分に確保してドリルの剛性を保ちつつ、シンニングを行うことでチゼルエッジを短くして切削抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、切刃のすくい角は、ドリルの中心に近づくほど小さく、チゼルエッジの部分では負のすくい角となる。このため、ドリルは、中心近傍において被削材を押しつぶしなら切削を行うこととなり、切削時のスラスト力が増大する要因となっていた。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたもので、スラスト力の低減を図ることができるドリルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の一実施態様のドリルは、中心軸回りに回転させられるドリル本体を備え、前記ドリル本体には、先端側を向き被削材に対向する先端面と、前記先端面から後端側に延びる切屑排出溝と、前記切屑排出溝の回転方向前方を向く前方壁面と前記先端面との交差稜線に位置する主切刃と、前記切屑排出溝の回転方向後方を向く後方壁面と前記先端面との間に位置するシンニング部と、が設けられ、前記シンニング部は、前記先端面に繋がり後端側に向かうに従い回転方向後方側に傾斜するシンニング壁面と、前記主切刃の径方向内端から径方向内側に延びるシンニング切刃と、前記シンニング切刃と前記シンニング壁面との間を繋ぎ回転方向前方側を向くシンニングすくい面と、を有し、軸方向から見て、前記シンニング切刃の延びる方向に沿って前記中心軸から径方向外側に向かう方向を第1方向とし、前記第1方向と直交し前記中心軸から径方向外側に向かう方向を第2方向とし、前記シンニング部は、前記第1方向および前記第2方向において前記中心軸を越えて形成され、前記シンニング切刃は、径方向内側の領域に位置する内側シンニング刃と、径方向外側の領域に位置する外側シンニング刃と、を有し、前記内側シンニング刃は、径方向外側に向かうに従い先端側に傾斜し、前記外側シンニング刃は、径方向外側に向かうに従い後端側に傾斜する。
【0007】
上述の構成によれば、シンニング部は、シンニング切刃が延びる方向である第1方向において中心軸を越えて形成される。このため、ドリル本体の先端面の中央部に、チゼル部が形成されない。一般的なドリルでは、チゼル部において、被削材を押しつぶして切削加工を行うため、スラスト力が大きくなる。これに対して、上述の構成によれば、チゼル部を設けることがなく、先端面の中央部においても切刃が形成されるためドリルが被削材を押しつぶすことがない。これにより、切削時のスラスト力を低減することができる。さらに、シンニング切刃が、先端面の中央部まで形成されるために、先端面の中央部における被削材の溶着を抑制できる。
【0008】
上述のドリルにおいて、一対の前記切屑排出溝、一対の前記主切刃、および一対の前記シンニング部が設けられる2枚刃のドリルであり、側方から見て一対の前記シンニング切刃同士は、中心軸を中心にV字状に交差しV字状切刃を構成する構成としてもよい。
【0009】
上述の構成によれば、2枚刃のドリルとすることで、ドリル本体の剛性を十分に確保しつつ安定的な切削を行うことができる。さらに、一対のシンニング切刃の回転軌跡が、中心軸において互いに交差するため、中心軸において確実に切削を行うことができる。また、上述の構成によれば、シンニング部が、シンニング切刃と直交する第2方向において中心軸を越えて形成されるため、一対のシンニング切刃同士が第2方向において互いに離間する。これによって、それぞれのシンニング切刃の剛性を、中心軸の近傍においても十分に確保することができる。
【0010】
上述のドリルにおいて、前記V字状切刃の開口径は、ドリル本体の直径の30%以下である構成としてもよい。
【0011】
上述の構成によれば、V字状切刃の径方向外側に連なる切刃の長さを、ドリル本体の直径に対して、概ね70%以上とすることができる。これにより、主切刃の全長を十分に長くすることができる。主切刃は、V字状切刃と比較して、剛性が十分に高い。上述の構成によれば、中心軸から十分に離れた周速が速い領域において、高剛性の主切刃で切削を行うことができ、刃先の損傷の発生を抑制できる。
【0012】
上述のドリルにおいて、前記V字状切刃の開口径は、ドリル本体の直径の5%以上15%以下である構成としてもよい。
【0013】
上述の構成によれば、主切刃の長さを十分に確保しつつ中心軸の近傍においてシンニング切刃を十分に長く確保することができる。これにより、切刃全体として、剛性確保とスラスト力低減効果とのバランスが良いドリルを提供できる。
【0014】
上述のドリルにおいて、前記V字状切刃において、2つの前記シンニング切刃のなす角度が、10°以上70°以下である構成としてもよい。
【0015】
上述の構成によれば、一対のシンニング切刃のなす角度を10°以上とすることで、シンニング切刃の先端が鋭利になりすぎることがなく、先端近傍におけるシンニング切刃の強度を確保できる。結果的にシンニング切刃の損傷を抑制できる。また、一対のシンニング切刃のなす角度を大きくすることは、シンニング部のシンニング角を寝かせることを意味する。このため、一対のシンニング切刃のなす角度を大きくしすぎると、シンニングすくい面を十分な広さ確保できないという問題が生じる。上述の構成によれば、一対のシンニング切刃のなす角度を70°以下とすることで、シンニングすくい面を十分に広く確保することができる。これにより、シンニング切刃で生成した切屑を、詰まりを生じることなく切屑排出溝に誘導して排出することができる。
【0016】
上述のドリルにおいて、前記V字状切刃において、一対の前記シンニング切刃のなす角度が、45°以上65°以下である構成としてもよい。
【0017】
上述の構成によれば、上述のシンニング切刃のなす角度に関わる上述の効果をより顕著に得ることができる。
【0018】
上述のドリルにおいて、前記V字状切刃を構成する一対の前記シンニング切刃同士の前記第2方向における距離は、2mm以下である構成としてもよい。
【0019】
上述の構成によれば、シンニング切刃同士の距離を2mm以下とすることで、中心軸と対向する領域の被削材を、シンニング切刃によって確実に加工することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スラスト力の低減を図ることができるドリルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実施形態のドリルの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII方向から見た一実施形態のドリルの側面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII方向から見た一実施形態のドリルの側面図である。
【
図5】
図5は、比較例1-1および比較例1-2のドリルの正面図である。
【
図6】
図6は、比較例2-1および比較例2-2のドリルの正面図である。
【
図7】
図7は、比較例3-1および比較例3-2のドリルの正面図である。
【
図8】
図8は、検証試験1におけるスラスト力の測定結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、検証試験1におけるトルクの測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、穴あけ加工を行った後の比較例1-1のドリルの撮像写真である。
【
図11】
図11は、穴あけ加工を行った後の比較例2-1のドリルの撮像写真である。
【
図12】
図12は、穴あけ加工を行った後の比較例3-1のドリルの撮像写真である。
【
図13】
図13は、穴あけ加工を行った後の実施例1のドリルの撮像写真である。
【
図14】
図14は、検証試験2におけるスラスト力の測定結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、検証試験2におけるトルクの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態のドリル10について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のドリル10の正面図である。
図2は、
図1のII方向から見たドリル10の側面図である。
図3は、
図1のIII方向から見たドリル10の側面図である。
図4は、
図1の部分拡大図である。
【0023】
本実施形態のドリル10は、例えば、アルミニウム合金などの被削材に穴あけ加工を行う際に使用される。本実施形態の例では、ドリル10は、ソリッドドリルである。
【0024】
図1~
図3に示すように、本実施形態のドリル10は、略円柱状のドリル本体1を備える。ドリル本体1は、中心軸Oを有する。ドリル本体1は、中心軸Oに沿う方向の一端側に刃部が設けられ、他端側に図示しないシャンク部が設けられる。ドリル本体1のシャンク部は、例えば工作機械の主軸やボール盤等に着脱可能に装着される。
【0025】
ドリル本体1は、被削材に対して中心軸O回りの周方向のうち回転方向Tに回転させられ、軸方向の先端側へ送り出されて、刃部により被削材に切り込んで穴あけ加工を行う。すなわち、ドリル本体1は、先端面1aを被削材に対向させ中心軸O周りに回転することで穿孔を行う。
【0026】
ドリル本体1の中心軸Oに沿う方向(中心軸Oが延びる方向)を軸方向と呼ぶ。軸方向のうち、ドリル本体1のシャンク部から刃部へ向かう方向を先端側と呼び、刃部からシャンク部へ向かう方向を後端側と呼ぶ。
中心軸Oと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに接近する方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。また、周方向のうち、穴あけ加工時にドリル本体1が回転する方向を回転方向前方側と呼び、その反対側を回転方向後方側と呼ぶ。
【0027】
図1に示すように、ドリル本体1には、先端面1aと、切屑排出溝2と、主切刃4と、シンニング部5と、が設けられる。先端面1aは、先端側を向き被削材に対向する。切屑排出溝2は、先端面1aから後端側に延びる。主切刃4は、切屑排出溝2の回転方向前方を向く前方壁面2aと先端面1aとの交差稜線に位置する。シンニング部5は、切屑排出溝2の回転方向後方を向く後方壁面2bと先端面1aとの間に位置する。
【0028】
切屑排出溝2は、ドリル本体1の外周において、先端側から後端側に向かって螺旋状に延びる。切屑排出溝2は、ドリル本体1の先端面1aに開口する。切屑排出溝2は、先端面1aから軸方向の後端側へ向かうにしたがい回転方向Tとは反対方向に向けてねじれている。
【0029】
本実施形態において、ドリル本体1の外周には、一対の切屑排出溝2が形成されている。これにともなって、主切刃4およびシンニング部5などについても、それぞれ、ドリル本体1に、2つずつ形成されている。すなわち、本実施形態のドリル10は、2枚刃のドリルである。しかしながら、ドリルは、単刃、3枚刃、4枚刃などであってもよい。一対の切屑排出溝2は、中心軸Oに関して回転対称位置となるように、ドリル本体1の外周において周方向に等ピッチで配置されている。切屑排出溝2は、溝の内周が凹曲面状をなしている。
【0030】
図示を省略するが、切屑排出溝2は、例えばドリル本体1の軸方向の中央部付近から後端側に位置する領域において、径方向外側へ向けてドリル本体1の外周面に切れ上がっている。そしてドリル本体1において、軸方向に沿う切屑排出溝2が位置する範囲が刃部とされ、この範囲よりも後端側の範囲がシャンク部とされる。
【0031】
ドリル本体1の外周のうち、周方向に隣り合う切屑排出溝2同士の間には、ランド部15が設けられる。ランド部15は、切屑排出溝2の前方壁面2aに隣接配置されたマージン部11を有する。マージン部11は、主切刃4の最外径と略等しい仮想円上に位置する。マージン部11は、切屑排出溝2が螺旋状に延びるのにともなって、軸方向の先端から後端側へ向かうに従い螺旋状に延びる。切屑排出溝2の前方壁面2aとマージン部11との交差稜線部のうち、少なくとも軸方向の先端部には、リーディングエッジ(外周刃)が形成される。
【0032】
先端面1aは、主切刃4に対し回転方向後方側に隣接配置された第1先端逃げ面6と、第1先端逃げ面6に対し回転方向後方側に隣接配置された第2先端逃げ面7と、を有する。
【0033】
第1先端逃げ面6は、主切刃4から回転方向後方側に向かうにしたがい徐々に軸方向の後端側へ向けて傾斜している。第2先端逃げ面7は、第1先端逃げ面6から回転方向後方側に向かうにしたがい徐々に軸方向の後端側へ向けて傾斜しており、第1先端逃げ面6よりも大きな逃げ角を有している。つまり、第2先端逃げ面7におけるドリル周方向に沿う単位長さあたりの軸方向への変位量(逃げ角に相当する傾き)は、第1先端逃げ面6における前記変位量よりも大きい。
【0034】
図1に示すように、ドリル本体1を軸方向の先端から後端側へ向けて見たドリル正面視において、第1先端逃げ面6は、径方向に延びる帯状(径方向に長い略四角形状)をなしており、第2先端逃げ面7は、扇形状をなしている。
本実施形態の例では、先端面1aが、互いに異なる2つの傾斜面(第1先端逃げ面6および第2先端逃げ面7)を有しているが、これに限定されない。先端面1aは、単一の傾斜面により形成されていてもよく、あるいは、ドリル周方向に並ぶ3つ以上の傾斜面を備えていてもよい。
【0035】
特に図示しないが、ドリル本体1には、クーラント孔が形成されていてもよい。クーラント孔は、ドリル本体1の内部を延びる。クーラント孔は、ドリル本体1の内部を切屑排出溝2に沿うようにねじれて延びる。クーラント孔は、ドリル本体1の先端面1aまたは切屑排出溝2に開口する。クーラント孔内には、例えば工作機械の主軸等を通して、クーラント(エア、セミドライ、切削油等)が供給される。クーラントは、クーラント孔を通して、ドリル本体1の刃部および被削材の加工部位に向けて噴出する。
【0036】
主切刃4は、切屑排出溝2の前方壁面2aにおける先端部と、先端面1aにおける第1先端逃げ面6と、の交差稜線に形成されている。主切刃4は、径方向外側へ向かうにしたがい軸方向の後端側へ向けて延びる。主切刃4は、回転方向後方側に凹む凹曲線状に形成される。
【0037】
図2に示すように、主切刃4の主切刃すくい面21は、前方壁面2aの先端部の近傍に設けられる。主切刃すくい面21は、主切刃4と繋がる。主切刃すくい面21は、主切刃4から軸方向の後端側に延びる。主切刃すくい面21の径方向内側には、後述するシンニングすくい面5cが配置される。一方で、主切刃4の逃げ面である第1先端逃げ面6および第2先端逃げ面7は、先端面1aのうち主切刃4の回転方向後方側に配置される。第1先端逃げ面6および第2先端逃げ面7は、主切刃4から回転方向後方側に向かってこの順で並ぶ。
【0038】
主切刃4の径方向内側の端部には、シンニング切刃5bが連なる。主切刃4とシンニング切刃5bとは、切刃9を構成する。すなわち、切刃9は、主切刃4と、主切刃4の径方向内側に位置するシンニング切刃5bと、を有する。
【0039】
図1に示すように、シンニング部5は、シンニング壁面5aと、シンニング切刃5bと、シンニングすくい面5cと、シンニング前端縁5dと、を有する。シンニング部5は、ドリル本体1における切屑排出溝2の先端部を切り欠くように形成される。
【0040】
シンニング壁面5aおよびシンニングすくい面5cは、シンニングを行うことで形成される研磨面である。一方で、シンニング切刃5bおよびシンニング前端縁5dは、シンニングによって形成される研磨面と先端面1aとの境界稜線に位置するエッジ部である。
【0041】
本実施形態のドリル本体1には、一対のシンニング部5が設けられる。一対のシンニング部5は、中心軸Oを中心として互いに回転対称に形成される。以下の説明において、一対のシンニング部5を互いに区別する場合、一方を第1のシンニング部5Aと呼び、他方を第2のシンニング部5Bと呼ぶ。
【0042】
シンニング壁面5aは、先端面1aに繋がり後端側に向かうに従い回転方向後方側に傾斜する平面である。シンニング壁面5aは、軸方向の先端側および回転方向後方側を向く。シンニング壁面5aは、先端面1aと、当該先端面1aの回転方向後方側に隣り合う切屑排出溝2の後方壁面2bと、の間に形成される。
【0043】
シンニング壁面5aは、先端面1a(第1先端逃げ面6および第2先端逃げ面7)よりも大きな逃げ角を有する。したがって、シンニング壁面5aにおけるドリル周方向に沿う単位長さあたりの軸方向への変位量(逃げ角に相当する傾き)は、先端面1aにおける前記変位量よりも大きい。
【0044】
シンニング前端縁5dは、シンニング壁面5aに対して、回転方向前方側に配置される。シンニング前端縁5dは、シンニング壁面5aと先端面1aとの境界稜線に位置する。シンニング前端縁5dは、シンニング壁面5aと第1先端逃げ面6との境界稜線に位置する径方向内側の領域と、シンニング壁面5aと第2先端逃げ面7との境界稜線の位置する径方向外側の領域と、を有する。以下の説明において、単にシンニング前端縁5dというとき、上述の境界稜線の径方向内側の領域を意味するものとする。
【0045】
図2に示すように、シンニングすくい面5cは、シンニング切刃5bとシンニング壁面5aとの間を繋ぎ回転方向前方側を向く面である。シンニングすくい面5cは、四角形状である。シンニングすくい面5cの径方向外側には、主切刃すくい面21が配置される。
【0046】
図4に示すように、シンニング切刃5bは、主切刃4の径方向内端から径方向内側に延びる。シンニング切刃5bは、直線状に延びる。シンニング切刃5bは、径方向内側の領域に位置する内側シンニング刃51と、径方向外側の領域に位置する外側シンニング刃52と、を有する。
【0047】
第1のシンニング部5Aと第2のシンニング部5Bとは、中心軸Oを挟んで互いに隣接して配置される。第1のシンニング部5Aの内側シンニング刃51は、第1のシンニング部5Aのシンニングすくい面5cと第2のシンニング部5Bのシンニング壁面5aとの交差稜線に位置する。同様に、第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51は、第2のシンニング部5Bのシンニングすくい面5cと、第1のシンニング部5Aのシンニング壁面5aとの交差稜線に位置する。
【0048】
一方で、第1のシンニング部5Aの外側シンニング刃52は、当該外側シンニング刃52に連なる主切刃4の第1先端逃げ面6と第1のシンニング部5Aのシンニングすくい面5cとの交差稜線に位置する。同様に、第2のシンニング部5Bの外側シンニング刃52は、当該外側シンニング刃52に連なる主切刃4の第1先端逃げ面6と第2のシンニング部5Bのシンニングすくい面5cとの交差稜線に位置する。
【0049】
内側シンニング刃51は、中心軸Oに対して回転方向後方側に配置される。したがって、第1のシンニング部5Aの内側シンニング刃51と、第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51とは、第2方向D2において距離hの若干の隙間を介して互いに離間して配置される。
【0050】
第1のシンニング部5Aの内側シンニング刃51と、第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51との間には、シンニング交差稜線5sが設けられる。シンニング交差稜線5sは、第1のシンニング部5Aのシンニング壁面5aと第2のシンニング部5Bのシンニング壁面5aとの交差稜線に位置する。
【0051】
図2に示すように、内側シンニング刃51は、径方向外側に向かうに従い先端側に傾斜する。一方で、外側シンニング刃52は、径方向外側に向かうに従い後端側に傾斜する。このため、シンニング切刃5bは、内側シンニング刃51と外側シンニング刃52との境界部において先端側に突出する。ここで、シンニング切刃5bにおいて、内側シンニング刃51と外側シンニング刃52との境界部をシンニング切刃先端部5pと呼ぶ。シンニング切刃先端部5pは、シンニング前端縁5dに連なる。
【0052】
第1のシンニング部5Aの内側シンニング刃51と、第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51とは、側方から見て、V字状に交差する。第1のシンニング部5Aおよび第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51同士は、ともに回転方向前方側を向く。したがって、第1のシンニング部5Aおよび第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51は、軸方向から見て、中心軸Oを中心として互いに反対側を向く。
【0053】
第1のシンニング部5Aおよび第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51は、中心軸を中心にV字状に交差するV字状切刃53を構成する。V字状切刃53は、第1のシンニング部5Aの内側シンニング刃51と第2のシンニング部5Bの内側シンニング刃51とを有する。V字状切刃53は、第1のシンニング部5Aのシンニング切刃先端部5pと第2のシンニング部5Bのシンニング切刃先端部5pとを繋ぐ領域に形成される。
【0054】
図4に示すように、軸方向から見て、シンニング切刃5bの延びる方向に沿って中心軸Oから径方向外側に向かう方向を第1方向D1とする。また、軸方向から見て、第1方向D1と直交し中心軸Oから径方向外側に向かう方向を第2方向D2とする。
シンニング部5は、軸方向から見て、第1方向D1および第2方向D2において砥石をドリル本体1に接触させ研磨することで形成される。
【0055】
本実施形態では、シンニング部5は、第1方向D1および第2方向D2において中心軸Oを越えて形成される。このため、第1のシンニング部5Aおよび第2のシンニング部5Bの各シンニング壁面5aは、第1方向D1および第2方向D2において、中心軸Oを越えて形成され、中心軸O上で互いに交差し、シンニング交差稜線5sを形成する。
【0056】
図4を基に第1のシンニング部5Aについて説明する。
図4において、第1方向D1の正の方向は、中心軸Oに対し第1のシンニング部5Aのシンニング切刃5bが延びる方向である。また、
図4において、第2方向D2の正の方向は、中心軸Oに対して第1のシンニング部5Aのシンニング壁面5aが延びる方向である。
【0057】
第1のシンニング部5Aのシンニング切刃5bは、第2方向D2において負の領域に配置される。また、第1のシンニング部5Aのシンニング前端縁5dは、第1方向D1において負の領域に配置される。
【0058】
本実施形態によれば、シンニング部5が、第1方向D1において中心軸Oを越えて形成される。このため、ドリル本体1の先端面1aの中央部に、チゼル部が形成されない。一般的なドリルでは、チゼル部において、被削材を押しつぶして切削加工を行うため、スラスト力が大きくなる。これに対して、本実施形態によれば、チゼル部を設けることがなく、先端面1aの中央部においても切刃(シンニング切刃5b)が形成されるため、ドリル10が被削材を押しつぶすことがない。これにより、切削時のスラスト力を低減することができる。
【0059】
また、一般的なドリルなドリルでは、先端面の中央においてチゼル部が被削材を押しつぶすことで、チゼル部に被削材が溶着する。これに対し、本実施形態によれば、シンニング切刃5bが、先端面1aの中央部まで形成されるため、先端面1aの中央部における被削材の溶着を抑制できる。
【0060】
本実施形態のドリル10は、一対の切屑排出溝2、一対の主切刃4、および一対のシンニング部5が設けられる2枚刃のドリルである。このため、ドリル本体1の剛性を十分に確保しつつ安定的な切削を行うことができる。また、側方から見て、一対のシンニング切刃5b同士は、中心軸Oを中心にV字状に交差しV字状切刃53を構成する。このため、一対のシンニング切刃5bの回転軌跡が、中心軸Oにおいて互いに交差するため、中心軸O上において確実に切削を行うことができる。
【0061】
本実施形態のシンニング部5は、シンニング切刃5bと直交する第2方向D2において中心軸Oを越えて形成される。このため、一対のシンニング切刃5b同士は、第2方向D2において若干離間する。これによって、それぞれのシンニング切刃5bの剛性を、中心軸Oの近傍においても十分に確保することができ、シンニング切刃5bの損傷の損傷を抑制できる。
【0062】
V字状切刃53を構成する一対のシンニング切刃5b同士の距離h(より具体的には、一対の内側シンニング刃51同士の距離)は、2mm以下であることが好ましい。シンニング切刃5b同士を2mm以下とすることで、中心軸Oと対向する領域の被削材を、シンニング切刃5bによって確実に加工することができる。なお、シンニング切刃5b同士の距離hは、0.1mm以上0.3mm以下であることがより好ましい。距離hを0.1mm以上とすることで、一対のシンニング切刃5bを確実に離間させてそれぞれの剛性を確保できる。また、距離hを0.3mm以下とすることで、切削時のドリル10の1回転当たりの送り量を大きくした場合であっても、一対のシンニング切刃5bによって中心軸O上の被削材を確実に切削できる。
【0063】
図3に、V字状切刃53の開口径d、ドリル本体1の直径D、およびV字状切刃53における一対のシンニング切刃5bのなす角度φを図示する。なお
図3の矢視方向(
図1に示す方向III)は、第2方向D2と一致する。本明細書において、角度φは、中心部食い付き角とも呼ばれる。
【0064】
本実施形態において、V字状切刃53の開口径dは、ドリル本体1の直径Dの30%以下であることが好ましい。V字状切刃53の開口部の回転軌跡の直径を意味する。また、V字状切刃53の開口径dとは、第1のシンニング部5Aおよび第2のシンニング部5Bのシンニング切刃先端部5p同士の距離でもある。
【0065】
ドリル本体1の直径Dの30%以下とすることで、V字状切刃53の径方向外側に連なる切刃(外側シンニング刃52および主切刃4)の長さを、ドリル本体1の直径Dに対して、概ね70%以上とすることができる。これにより、主切刃4の全長を十分に長くすることができる。主切刃4は、V字状切刃53と比較して、剛性が十分に高い。上述の構成によれば、中心軸Oから十分に離れた周速が速い領域においては、高剛性の主切刃4で切削を行うことができ、刃先の損傷の発生を抑制できる。
【0066】
V字状切刃53の開口径dは、ドリル本体1の直径Dの5%以上15%以下であることがより好ましい。V字状切刃53の開口径dを、ドリル本体1の直径Dの5%以上15%以下とすることで、主切刃4の長さを十分に確保しつつ中心軸Oの近傍においてシンニング切刃5bを径方向に十分に長く確保することができる。これにより、切刃全体として、剛性向上とスラスト力低減のバランスが良いドリルを提供できる。
【0067】
V字状切刃53において、一対のシンニング切刃5b(より具体的には、一対の内側シンニング刃51)のなす角度(中心部食い付き角)φが、10°以上70°以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態によれば、中心部食い付き角φを10°以上とすることで、シンニング切刃5bの先端(シンニング切刃先端部5p)が鋭利になりすぎることがない。このため、シンニング切刃先端部5pの近傍におけるシンニング切刃5bの強度を確保でき、シンニング切刃5bの損傷を抑制できる。このような効果は、一対のシンニング切刃5bのなす角度を45°以上とする場合に、より顕著に得ることができる。
【0069】
中心部食い付き角φを大きくすることは、シンニング部5のシンニング角を寝かせることを意味する。中心部食い付き角φを大きくしすぎると、シンニングすくい面5cを十分な広さ確保できないという問題が生じる。本実施形態によれば、中心部食い付き角φを70°以下とすることで、シンニングすくい面5cを十分に広く確保することができる。これにより、シンニング切刃5bで生成した切屑を、詰まりを生じることなく切屑排出溝2に誘導して排出することができる。このような効果は、一対のシンニング切刃5bのなす角度を65°以下とする場合に、より顕著に得ることができる。
【実施例】
【0070】
次に、上述の実施形態に係るドリル10の効果について、実施例および比較例を基に具体的に検証する。
【0071】
(実施例)
上述の実施形態に係るドリル10の実施例1として、ドリル本体1の直径が9mmのものと、実施例2としてドリル本体1の直径が12mmのものと、を用意した。
なお、実施例1のV字状切刃53の開口径dは、0.9mm(すなわち、ドリル本体1の直径Dに対し10%)と、されており、中心部食い付き角φは、70°とされ、V字状切刃53を構成する一対のシンニング切刃5b同士の距離hは、0.2mmとされている。一方で、実施例2のV字状切刃53の開口径dは、1.2mm(すなわち、ドリル本体1の直径Dに対し10%)と、されており、中心部食い付き角φは、70°とされ、V字状切刃53を構成する一対のシンニング切刃5b同士の距離hは、0.2mmとされている。
【0072】
(比較例)
図5に正面図を示すXシンニングと呼ばれるシンニングが施されたドリル10Xであって、ドリル本体1の直径が9mmの比較例1-1と、ドリル本体1の直径が12mmの比較例1-2と、を用意した。
図6に正面図を示すZシンニングと呼ばれるシンニングが施されたドリル10Zであって、ドリル本体1の直径が9mmの比較例2-1と、ドリル本体1の直径が12mmの比較例2-2と、を用意した。
図7に正面図を示すYクロスシンニングと呼ばれるシンニングが施されたドリル10Yであって、ドリル本体1の直径が9mmの比較例3-1と、ドリル本体1の直径が12mmの比較例3-2と、を用意した。
【0073】
(検証試験1)
検証試験1として、上述の実施例および比較例のサンプルのうち、ドリル本体1の直径が9mmのものを比較する検証試験を行う。
【0074】
表1、表2に示すように、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、および実施例1のサンプルを条件1~条件5の切削条件で被削材(アルミダイキャスト材ADC12)の穴あけ加工を行い、加工時のスラスト力とトルクを測定した。スラスト力およびトルクの測定結果を、
図8、
図9にまとめて示す。
【0075】
【0076】
【0077】
図9に示すように、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、および実施例1のドリルの切削時のトルクは、切削条件毎にほぼ同等の値となった。このことから、実施例1のドリルは、従来公知の他種のドリルと比較して、切削抵抗の増大が見られないことが確認できた。
【0078】
図8に示すように、実施例1のドリルのスラスト力は、各切削条件において比較例より小さくなっていることが確認できた。このことから、実施例1のドリルは、従来公知のドリルと比較して、スラスト力低減に一定の効果があることが確認された。
【0079】
図10~
図13は、上述した加工試験後の各サンプルのドリルを正面から見た撮像写真である。
図10は比較例1-1を示し、
図11は比較例2-1のドリルを示し、
図12は比較例3-1のドリルを示し、
図13は実施例1のドリルを示す。
【0080】
図13の実施例1のドリルは、比較例の他のドリルと比較して、中心部近傍の溶着量が抑制されていることが確認できた。これは、実施例1のドリルは、先端面の中央部にシンニング切刃が設けられているため、被削材を中心軸の近傍でも切削することができるためであると考えられる。
【0081】
(検証試験2)
検証試験2として、上述の実施例および比較例のサンプルのうち、ドリル本体1の直径が12mmのものを比較する検証試験を行う。
【0082】
表3、表4に示すように、比較例1-2、比較例2-2、比較例3-2、および実施例2のサンプルを条件6~条件10の切削条件で被削材(アルミダイキャスト材ADC12)の穴あけ加工を行い、加工時のスラスト力とトルクを測定した。スラスト力およびトルクの測定結果を、
図14、
図15にまとめて示す。
【0083】
【0084】
【0085】
直径が12mmのドリルを用いた検証試験2においても、検証試験1と同様の結果が得られた。すなわち、実施例2のドリルを用いることで、切削抵抗の増大を抑制しつつ、スラスト力を低減させることができる点について、確認された。
【0086】
以上に、本発明の実施形態およびその実施例を説明したが、実施形態における構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0087】
例えば、前述の実施形態では、切屑排出溝2がねじれ溝である例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、切屑排出溝2は、中心軸Oと平行に延びてもよい。また、前述の実施形態で説明したドリル10は、2枚刃のツイストドリルであるが、これに限定されない。ドリル10は、3枚刃以上のドリルであってもよい。
【0088】
また、前述の実施形態で説明したドリル10は、ソリッドドリルであり、ドリル本体1がソリッドドリルの全体を構成する。ただしこれに限らず、例えば、ドリル本体1が、ソリッドドリルの少なくとも先端部であってもよい。この場合、ドリル本体1は、図示しないシャンク部の先端部に、ロウ付け等により一体に接合される。
また、ドリル本体1が、刃先交換式ドリルのドリルヘッドであってもよい。この場合、ドリル本体1は、刃先交換式ドリルのホルダの先端部に、着脱可能に装着される。
【符号の説明】
【0089】
1…ドリル本体
1a…先端面
2…切屑排出溝
2a…前方壁面
2b…後方壁面
4…主切刃
5…シンニング部
5a…シンニング壁面
5b…シンニング切刃
5c…シンニングすくい面
10,10X,10Y,10Z…ドリル
53…V字状切刃
d…開口径
D…直径
D1…第1方向
D2…第2方向
O…中心軸
T…回転方向
φ…角度(中心部食い付き角)