(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ポリエチレン多層基材、印刷基材、積層体及び包装材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241203BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020182789
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲一
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-523266(JP,A)
【文献】特開2020-055159(JP,A)
【文献】特開2009-248973(JP,A)
【文献】特表2015-536847(JP,A)
【文献】特開平7-96589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.925g/cm
3
を超えて0.945g/cm
3
以下の中密度ポリエチレンを含有する第1の層と、
密度が0.945g/cm
3
を超えて0.965g/cm
3
以下の高密度ポリエチレンを含有する第2の層と、
前記中密度ポリエチレン及び
前記高密度ポリエチレンを含有する第3の層
(但し、キャビティ化剤を含むポリエチレン樹脂層を除く)と、
前記高密度ポリエチレンを含有する第4の層と、
前記中密度ポリエチレンを含有する第5の層と
を、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる、ポリエチレン多層基材。
【請求項2】
前記第3の層における、前記中密度ポリエチレンと前記高密度ポリエチレンとの質量比(中密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン)が、0.25以上4以下である、請求項1に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項3】
前記第1の層における前記中密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、
前記第2の層における前記高密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、
前記第3の層における前記中密度ポリエチレン及び前記高密度ポリエチレンの合計含有割合が、80質量%以上であり、
前記第4の層における前記高密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、
前記第5の層における前記中密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上である、
請求項1又は2に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項4】
前記多層基材における、前記第1~第5の層から選ばれる任意の互いに隣接する層を層(1)及び層(2)と記載する場合に、前記層(1)を構成するポリエチレンの密度と、前記層(2)を構成するポリエチレンの密度との差の絶対値が、0.030g/cm
3以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材と、
前記多層基材上に形成された印刷層と
を備える印刷基材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材と、
ヒートシール層と
を備える積層体。
【請求項7】
前記ヒートシール層が、ポリエチレンを含有する、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記多層基材上に印刷層をさらに備える、請求項6又は7に記載の積層体。
【請求項9】
前記多層基材と前記ヒートシール層との間に、バリア層をさらに備える、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記バリア層が、蒸着層である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記多層基材と前記バリア層との間に、接着層をさらに備える、請求項9又は10に記載の積層体。
【請求項12】
前記多層基材と前記ヒートシール層との間に、接着層をさらに備える、請求項6~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
包装材料用途に用いられる、請求項6~12のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材、請求項5に記載の印刷基材、又は請求項6~13のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエチレン多層基材、印刷基材、積層体及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料などは、樹脂材料から構成される樹脂フィルムを用いて製造されている。包装材料は、例えば、基材と、ヒートシール層とを備える。例えば、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムは、柔軟性及び透明性を有すると共に、ヒートシール性に優れることから、包装材料におけるヒートシール層として広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ポリエチレンは、他の熱可塑性樹脂と比較して、比較的低温で軟化する樹脂であるため、包装材料の基材として使用するとヒートシート加工する際に変形したり場合によっては溶融したりすることがある。また、ポリエチレンフィルムは、他の熱可塑性樹脂フィルムと比較して、強度が不充分であることがある。このため、包装材料の基材としては、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の強度及び耐熱性に優れる樹脂フィルムを使用するのが一般的である。例えば、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の基材とポリエチレンフィルムとを積層し、ポリエチレンフィルム側が包装袋の内側になるようにしてヒートシールすることにより製袋することが行われている(例えば、特許文献2の背景技術参照)。
【0004】
ところで、近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせて得られた積層体では、樹脂の種類ごとに分離することが難しく、リサイクルに適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-202519号公報
【文献】特開2017-031233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本開示者らは、ポリエチレンから構成される樹脂フィルムの強度及び耐熱性を延伸処理により向上できることを見出し、基材として、ポリエチレンを含有する層を複数備え、延伸処理されてなるポリエチレン多層基材を用いることを検討した。
ところで包装材料などに使用される基材には、通常、文字及び図形等の画像がインキを用いて印刷される。しかしながら、本開示者らのさらなる検討によれば、ポリエチレン多層基材は、インキ密着性が充分ではない場合があることがわかった。
【0007】
また、ポリエチレン多層基材は、印刷時等において熱が付加されることがあることから、耐熱性に優れることが好ましい。また、ポリエチレン多層基材において、前駆体である積層物を延伸処理することにより透明性、強度及び耐熱性等の物性を向上できるが、積層物の延伸性を向上できれば、ポリエチレン多層基材の製造性を向上でき、例えば物性の調整が容易となる。
【0008】
本開示の一つの課題は、インキ密着性と、耐熱性及び製造性のバランスとに優れるポリエチレン多層基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のポリエチレン多層基材は、
中密度ポリエチレンを含有する第1の層と、
高密度ポリエチレンを含有する第2の層と、
中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する第3の層と、
高密度ポリエチレンを含有する第4の層と、
中密度ポリエチレンを含有する第5の層と
を、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、インキ密着性と、耐熱性及び製造性のバランスとに優れるポリエチレン多層基材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示のポリエチレン多層基材の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図2】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図3】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【
図4】本開示の積層体の一実施形態を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示において使用する用語を説明する。
「ポリエチレン」とは、エチレン由来の構成単位の含有割合が、全繰返し構成単位中、50モル%以上の重合体をいう。該重合体において、エチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。上記含有割合は、核磁気共鳴法(NMR法)により測定する。
【0013】
高密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.945g/cm3を超える。高密度ポリエチレンの密度の上限は、例えば0.965g/cm3である。
中密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.925g/cm3を超えて0.945g/cm3以下である。
低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3を超えて0.925g/cm3以下である。
超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.900g/cm3以下である。超低密度ポリエチレンの密度の下限は、例えば0.860g/cm3である。
ポリエチレンの密度は、JIS K7112(1999)に準拠して測定する。
【0014】
[ポリエチレン多層基材]
本開示のポリエチレン多層基材10は、
図1に示すように、
中密度ポリエチレンを含有する第1の層12と、
高密度ポリエチレンを含有する第2の層18と、
中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する第3の層20と、
高密度ポリエチレンを含有する第4の層22と、
中密度ポリエチレンを含有する第5の層14と
を、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる。
以下、上記ポリエチレン多層基材を単に「多層基材」ともいう。
【0015】
一実施形態において、多層基材の一方側の表面層が第1の層であり、多層基材の他方側の表面層が第5の層である。多層基材は、第1~第5の層間に他の層を備えてもよいが、一実施形態において、多層基材は、第1~第5の層のみからなる。
【0016】
本開示において、ポリエチレンとしては、例えば、エチレンの単独重合体、及びエチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。他のモノマーとしては、例えば、炭素数3~20のα-オレフィン、酢酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン及び6-メチル-1-ヘプテンが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。
【0017】
上記共重合体としては、例えば、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種との共重合体、並びに、エチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種との共重合体が挙げられる。
【0018】
密度又は分岐が異なるポリエチレンは、重合方法を適宜選択することによって得ることができる。例えば、重合触媒として、チーグラー・ナッタ触媒などのマルチサイト触媒、又はメタロセン触媒などのシングルサイト触媒を用いて、気相重合、スラリー重合、溶液重合及び高圧イオン重合のいずれかの方法により、1段又は2段以上の多段で重合を行うことが好ましい。
【0019】
シングルサイト触媒とは、均一な活性種を形成しうる触媒であり、通常、メタロセン系遷移金属化合物又は非メタロセン系遷移金属化合物と活性化用助触媒とを接触させることにより、調製される。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、活性点の構造が均一であるため、高分子量かつ均一度の高い構造を有する重合体を得ることができるため好ましい。
【0020】
シングルサイト触媒としては、メタロセン触媒が好ましい。メタロセン触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒と、必要により有機金属化合物と、必要により担体とを含む触媒である。
【0021】
遷移金属化合物における遷移金属としては、例えば、ジルコニウム、チタン及びハフニウムが挙げられ、ジルコニウム及びハフニウムが好ましい。
【0022】
遷移金属化合物におけるシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、又は置換シクロペンタジエニル基である。置換シクロペンタジエニル基は、例えば、炭素数1~30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、及びハロシリル基から選択される少なくとも1種の置換基を有する。置換シクロペンタジエニル基は、1つ又は2つ以上の置換基を有し、置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、又はこれらの水添体を形成していてもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環が、さらに置換基を有していてもよい。
【0023】
遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を通常は2つ有する。各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は、架橋基により互いに結合していることが好ましい。架橋基としては、例えば、炭素数1~4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基などの置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基などの置換ゲルミレン基が挙げられる。これらの中でも、置換シリレン基が好ましい。
【0024】
助触媒とは、周期表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効に機能させえる成分、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させえる成分をいう。助触媒としては、例えば、ベンゼン可溶のアルミノキサン又はベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有又は非含有のカチオンと非配位性アニオンとからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、及びフルオロ基を含有するフェノキシ化合物が挙げられる。
【0025】
必要により使用される有機金属化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、及び有機亜鉛化合物が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0026】
遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。担体としては、無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイトなどのイオン交換性層状珪酸塩、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
ポリエチレンを得るための原料として、化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンを用いてもよい。バイオマス由来のポリエチレンは、カーボニュートラルな材料であるため、多層基材を用いて製造される包装材料の環境負荷を低減できる。バイオマス由来のポリエチレンは、例えば、特開2013-177531号公報に記載されている方法により製造できる。市販されているバイオマス由来のポリエチレン(例えば、ブラスケム社から市販されているグリーンPE)を使用してもよい。
【0028】
メカニカルリサイクルによりリサイクルされたポリエチレンを使用してもよい。メカニカルリサイクルとは、一般的に、回収されたポリエチレンフィルムなどを粉砕し、アルカリ洗浄してフィルム表面の汚れ、異物を除去した後、高温・減圧下で一定時間乾燥してフィルム内部に留まっている汚染物質を拡散させ除染を行い、ポリエチレンからなるフィルムの汚れを取り除き、再びポリエチレンに戻す方法である。
本開示の多層基材に含まれるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下、より好ましくは0.3g/10分以上30g/10分以下である。本開示において、MFRは、ASTM D1238に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0029】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられる。
以下、多層基材を構成する各層について説明する。
【0030】
<第1の層及び第5の層>
第1の層は、1種又は2種以上の中密度ポリエチレンを含有する。
第5の層は、1種又は2種以上の中密度ポリエチレンを含有する。
基材に画像を印刷する際には、通常、前処理として、コロナ放電処理などの表面処理が基材に対してなされる。中密度ポリエチレンを含有する層は、ポリエチレンとして高密度ポリエチレンのみを含有する層に比べて、表面処理に対する耐久性が高い傾向にある。このため、中密度ポリエチレンを含有する層は、表面処理後の印刷時におけるインキ密着性に優れる。また、中密度ポリエチレンを含有する層は、印刷時及びヒートシール時に必要な耐熱性も有する。また、中密度ポリエチレンを含有する層は、多層基材の前駆体である積層物の延伸性の向上に寄与する。
【0031】
第1の層に含まれる中密度ポリエチレンと、第5の層に含まれる中密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
【0032】
第1の層及び第5の層は、それぞれ独立に、中密度ポリエチレンとともに、中密度ポリエチレン以外の他のポリエチレンをさらに含有してもよい。中密度ポリエチレン以外の他のポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられる。第1の層は、多層基材のインキ密着性及び前駆体である積層物の延伸性をより向上できるという観点から、ポリエチレンとして中密度ポリエチレンのみを含有することが好ましい。第5の層は、多層基材のインキ密着性及び前駆体である積層物の延伸性をより向上できるという観点から、ポリエチレンとして中密度ポリエチレンのみを含有することが好ましい。
【0033】
第1の層における中密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材のインキ密着性及び前駆体である積層物の延伸性をより向上できる。
第5の層における中密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材のインキ密着性及び前駆体である積層物の延伸性をより向上できる。
【0034】
第1の層及び第5の層のそれぞれの厚さは、それぞれ独立に、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1μm以上5μm以下である。これにより、多層基材のインキ密着性及び耐熱性をより向上できる。
【0035】
第1の層及び第5の層のそれぞれの厚さは、第2の層、第3の層及び第4の層(以下、第2~第4の層をまとめて「多層中間層」ともいう)の合計厚さよりも小さいことが好ましい。第1の層及び第5の層のそれぞれの厚さと、多層中間層の合計厚さとの比(第1の層又は第5の層/多層中間層)は、好ましくは0.05以上0.8以下、より好ましくは0.1以上0.7以下、さらに好ましくは0.1以上0.4以下である。これにより、多層基材の剛性、強度及び耐熱性をより向上できる。
【0036】
<第2の層及び第4の層>
第2の層は、1種又は2種以上の高密度ポリエチレンを含有する。
第4の層は、1種又は2種以上の高密度ポリエチレンを含有する。
第2の層及び第4の層は、それぞれ、多層基材の耐熱性及び剛性の向上に寄与する。
【0037】
第2の層に含まれる高密度ポリエチレンと、第4の層に含まれる高密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよく、多層基材を容易に製造できるという観点から、同一であることが好ましい。
【0038】
第2の層及び第4の層は、それぞれ独立に、高密度ポリエチレンとともに、高密度ポリエチレン以外の他のポリエチレンをさらに含有してもよい。高密度ポリエチレン以外の他のポリエチレンとしては、例えば、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられる。第2の層は、多層基材の耐熱性をより向上できるという観点から、ポリエチレンとして高密度ポリエチレンのみを含有することが好ましい。第4の層は、多層基材の耐熱性をより向上できるという観点から、ポリエチレンとして高密度ポリエチレンのみを含有することが好ましい。
【0039】
第2の層における高密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材の耐熱性をより向上できる。
第4の層における高密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材の耐熱性をより向上できる。
【0040】
第2の層及び第4の層のそれぞれの厚さは、それぞれ独立に、好ましくは0.5μm以上15μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下、さらに好ましくは1μm以上8μm以下である。これにより、多層基材の耐熱性をより向上できる。
【0041】
<第3の層>
第3の層は、1種又は2種以上の中密度ポリエチレンと、1種又は2種以上の高密度ポリエチレンとを含有する。第3の層は、多層基材の前駆体である積層物の延伸性の向上、及び多層基材の耐熱性の向上に寄与する。
【0042】
第3の層に含まれる中密度ポリエチレンと、第1の層及び第5の層に含まれる中密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよい。第3の層に含まれる高密度ポリエチレンと、第2の層及び第4の層に含まれる高密度ポリエチレンとは、同一であっても異なってもよい。
【0043】
第3の層は、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンとともに、これらのポリエチレン以外の他のポリエチレンをさらに含有してもよい。中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン以外の他のポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン)、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられる。第3の層は、多層基材の耐熱性及び前駆体である積層物の延伸性をより向上できるという観点から、ポリエチレンとして中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンのみを含有することが好ましい。
【0044】
第3の層における、中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの質量比(中密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン)は、好ましくは0.25以上4以下、より好ましくは0.4以上2.4以下である。これにより、耐熱性及び延伸性のバランスをより向上できる。
第3の層における、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、耐熱性及び延伸性のバランスをより向上できる。
【0045】
第3の層の厚さは、好ましくは1μm以上50μm以下、より好ましくは2μm以上40μm以下、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。これにより、耐熱性及び延伸性のバランスをより向上できる。
【0046】
第2の層及び第4の層の合計厚さと、第3の層の厚さとの比(第2の層及び第4の層の合計厚さ/第3の層の厚さ)は、好ましくは0.1以上10以下、より好ましくは0.2以上5以下、さらに好ましくは0.5以上2以下である。これにより、多層基材の剛性、強度及び耐熱性をより向上できる。
【0047】
多層基材を構成する第1~第5の層は、それぞれ独立に、添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料及び改質用樹脂が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、本開示の多層基材において、第1の層におけるポリエチレンの密度よりも第2の層におけるポリエチレンの密度の方が高く、第2の層におけるポリエチレンの密度よりも第3の層におけるポリエチレンの密度の方が低く、第3の層におけるポリエチレンの密度よりも第4の層におけるポリエチレンの密度の方が高く、第4の層におけるポリエチレンの密度よりも第5の層におけるポリエチレンの密度の方が低い。このような構成を有する多層基材は、インキ密着性と、耐熱性及び製造性(前駆体である積層物の延伸性)のバランスとにより優れる。
【0049】
一つの層中に、密度が異なるポリエチレンが複数種(n種;nは2以上の整数)含まれる場合は、下記式(1)に従い計算された平均密度Davを、当該層を構成するポリエチレンの密度とする。
【0050】
Dav = ΣWi×Di …(1)
式(1)中、Σは、iについて1~nまでWi×Diの和を取ることを意味し、nは2以上の整数であり、Wiはi番目のポリエチレンの質量分率を示し、Diはi番目のポリエチレンの密度(g/cm3)を示す。
【0051】
多層基材における、第1~第5の層から選ばれる任意の互いに隣接する層を層(1)及び層(2)と記載する場合に、層(1)を構成するポリエチレンの密度と、層(2)を構成するポリエチレンの密度との差の絶対値は、好ましくは0.030g/cm3以下であり、より好ましくは0.025g/cm3以下、さらに好ましくは0.020g/cm3以下である。以下、この要件を「密度差要件」ともいう。すなわち、多層基材に含まれる、第1~第5の層から選ばれる厚さ方向に隣接するいずれの組(例えば、第1の層と第2の層との組、第2の層と第3の層との組、第3の層と第4の層との組、第4の層と第5の層との組)も、上記密度差要件を満たすことが好ましい。
なお、以下では密度差を記載するときは、いずれも差の絶対値を意味する。
【0052】
上記密度差要件を満たす多層基材は、第1~第5の層における各層間の密度差が上述のとおり小さい。したがって、上記密度差要件を満たす多層基材は、高い層間強度を示す。
【0053】
<多層基材の製造方法>
本開示の多層基材は、例えば、インフレーション法又はTダイ法により、複数のポリエチレン材料を製膜して積層物を形成し、得られた積層物を延伸することにより製造できる。延伸処理により、多層基材の透明性、剛性、強度及び耐熱性を向上でき、該多層基材を例えば包装材料の基材として好適に使用できる。
【0054】
多層基材は、例えば、中密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレンを含有する層とを、厚さ方向にこの順に備える積層物(前駆体)を、延伸処理して得られる。
【0055】
具体的には、外側から、中密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレンを含有する層とを、チューブ状に共押出して製膜し、積層物を製造できる。あるいは、外側から、中密度ポリエチレンを含有する層と、高密度ポリエチレンを含有する層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層とをチューブ状に共押出し、次いで、対向する中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する層同士をゴムロールなどにより圧着することによって、積層物を製造できる。このような方法により積層物を製造することにより、欠陥品数を顕著に低減でき、生産効率を向上できる。
【0056】
Tダイ法により積層物を製造する場合、各層を構成するポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは3g/10分以上20g/10分以下である。
【0057】
インフレーション法により積層物を製造する場合、各層を構成するポリエチレンのMFRは、製膜性、及び多層基材の加工適性という観点から、好ましくは0.5g/10分以上5g/10分以下である。
【0058】
本開示の多層基材は、例えば、上述した積層物を延伸して得られる。なお、インフレーション製膜機において、積層物の延伸も合わせて行うことができる。これにより、多層基材を製造できることから、生産効率をより向上できる。
【0059】
本開示の多層基材は、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもよい。多層基材は、一実施形態において、一軸延伸フィルムであり、より具体的には、長手方向(MD)に延伸処理された一軸延伸フィルムである。
【0060】
多層基材の長手方向(MD)の延伸倍率は、一実施形態において、2倍以上10倍以下が好ましく、3倍以上7倍以下がより好ましい。多層基材の横手方向(TD)の延伸倍率は、一実施形態において、2倍以上10倍以下が好ましく、3倍以上7倍以下がより好ましい。
【0061】
延伸倍率が2倍以上であると、例えば、多層基材の剛性、強度及び耐熱性を向上でき、多層基材へのインキ密着性を向上でき、また、多層基材の透明性を向上できる。延伸倍率が10倍以下であると、積層物を良好に延伸できる。
【0062】
多層基材のヘイズ値は、好ましくは25%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。ヘイズ値は小さいほど好ましいが、一実施形態において、その下限値は0.1%又は1%であってもよい。多層基材のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定する。
【0063】
多層基材におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、多層基材のリサイクル性を向上できる。
【0064】
積層物又は多層基材には、表面処理が施されていることが好ましい。これにより、多層基材の表面層と、多層基材に積層される層との密着性を向上できる。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス及び窒素ガスなどのガスを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的処理;並びに化学薬品を用いた酸化処理などの化学的処理が挙げられる。
【0065】
積層物又は多層基材の表面には、従来公知のアンカーコート剤を用いて、アンカーコート層を形成してもよい。
【0066】
多層基材の総厚さは、好ましくは10μm以上60μm以下、より好ましくは15μm以上50μm以下である。多層基材の厚さが10μm以上であると、多層基材の剛性及び強度を向上できる。多層基材の厚さが60μm以下であると、多層基材の加工適性を向上できる。
【0067】
[印刷基材]
本開示の印刷基材は、本開示のポリエチレン多層基材と、該多層基材上に形成された印刷層とを備える。印刷層は、例えば、多層基材における第1の層又は第5の層に形成される。多層基材はインキ密着性に優れることから、良好な画像を形成できる。
【0068】
印刷層は、例えば、画像を含む。画像としては、例えば、文字、図形、記号及びこれらの組合せが挙げられる。印刷層の形成方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びフレキソ印刷法が挙げられる。一実施形態において、環境負荷低減という観点から、フレキソ印刷法が好ましい。また、環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のインキを用いて多層基材の表面に印刷層を形成してもよい。
【0069】
[積層体]
本開示の積層体30は、
図2に示すように、本開示のポリエチレン多層基材10と、ヒートシール層32とを備える。多層基材10において、第2の層18、第3の層20及び第4の層22をまとめて、多層中間層16と記載した。
【0070】
一実施形態において、積層体30は、多層基材10上に図示せぬ印刷層をさらに備える。印刷層は、通常、多層基材におけるヒートシール層が設けられる表面層上、例えば上述した第1の層上、に形成されている。
【0071】
一実施形態において、
図3に示すように、積層体30は、多層基材10とヒートシール層32との間に、バリア層34及び接着層36を備える。
一実施形態において、
図4に示すように、積層体30は、多層基材10とヒートシール層32との間に、接着層36を備える。
【0072】
本開示の積層体において、ポリエチレンの含有割合は、好ましくは90質量%以上である。これにより、積層体のリサイクル性を向上できる。なお、積層体におけるポリエチレンの含有割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の含有量の和に対する、ポリエチレンの含有量の割合を意味する。
【0073】
<ヒートシール層>
ヒートシール層は、ポリエチレンにより構成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、充分な剛性、強度及び耐熱性を有し、かつリサイクル性に優れた、包装材料用の積層体が得られる。
【0074】
以下、上記リサイクル性について説明する。
他の熱可塑性樹脂フィルムと比較して、ポリエチレンフィルムは、耐熱性が劣るため、包装材料の基材として使用するとヒートシート時に変形することがあった。また、ポリエチレンフィルムは、剛性が劣るため、印刷適性が低く、その表面に鮮明な画像を形成することができなかった。また、ポリエチレンフィルムは、高い強度を有しておらず、包装材料の外層として要求される耐久性を満たすことができなかった。そのため、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の剛性、強度及び耐熱性に優れる樹脂フィルム(基材)と、ポリエチレンフィルム(ヒートシール層)とをラミネートすることで積層体を得て、該積層体のポリエチレンフィルム側が内側となるように、積層体端部をヒートシールすることにより包装材料が製造されている。
【0075】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、包装材料をリサイクルして使用することが試みられている。しかしながら、上記のような異種の樹脂フィルムを貼り合わせて積層体を製造した場合、樹脂フィルム同士を分離することが難しい。このため、このような積層体はリサイクルに適していない。
【0076】
これに対して、本開示のポリエチレン多層基材は、上述のとおり延伸処理されており、また特有の層構成を備えていることから、従来のポリエチレンフィルムに比べて、剛性、強度及び耐熱性に優れ、またインキ密着性に優れる。したがって、本開示のポリエチレン多層基材は例えば包装材料の基材として使用でき、該多層基材の表面に、鮮明な画像を形成できる。
【0077】
また、本開示の積層体は、一実施形態において、本開示のポリエチレン多層基材と、ポリエチレンを含有するヒートシール層(以下「ヒートシール性ポリエチレン層」ともいう)とを備える。一実施形態において、多層基材の少なくとも一方の面に印刷層(画像)が形成されている。画像の経時的な劣化を防止できることから、多層基材におけるヒートシール性ポリエチレン層が設けられる側に印刷層が形成されていることが好ましい。
【0078】
本開示のポリエチレン多層基材と、ヒートシール性ポリエチレン層とを備える上記積層体において、該積層体に含まれる樹脂層は、一実施形態においていずれもポリエチレン層であり、該積層体は、ポリエステルフィルム及びナイロンフィルム等の異種の樹脂フィルムを備えない。また、ポリエチレン多層基材が包装材料の外層フィルムとして要求される剛性、強度及び耐熱性を満たし、ヒートシール性ポリエチレン層が包装化を可能とする。このため、上記積層体は、リサイクル性が求められる包装材料を構成する材料として適している。
【0079】
一実施形態において、本開示の積層体は、必要に応じて印刷層が形成された上記多層基材と、ポリエチレンにより構成されたヒートシール層とのみからなる。これにより、本開示の積層体は、各樹脂層が同一材料であるポリエチレンにより構成されることから、リサイクル性を特に向上できる。
【0080】
ヒートシール層は、通常、延伸されていない層である。例えば、未延伸ポリエチレンフィルムを必要に応じて接着層を介して多層基材等の上に積層するか、或いはポリエチレンを含む樹脂材料を多層基材等の上に溶融押出しすることにより、ヒートシール層を形成できる。接着層としては、例えば、後述する接着層が挙げられる。
【0081】
ヒートシール層を構成するポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが挙げられ、ヒートシール性という観点から、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンが好ましい。環境負荷低減という観点から、バイオマス由来のポリエチレン又はリサイクルされたポリエチレンを用いてもよい。
【0082】
ヒートシール層におけるポリエチレンの含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。これにより、積層体のリサイクル性を向上できる。
ヒートシール層は、上記添加剤を1種又は2種以上含有してもよい。
【0083】
ヒートシール層は、1層であっても、2層以上であってもよい。一実施形態において、ヒートシール層の層数は、1層以上3層以下である。
ヒートシール層の厚さは、例えば、10μm以上300μm以下である。
ヒートシール層の厚さは、ヒートシール層の強度及び積層体の加工適性という観点から、本開示の積層体により例えば製造される包装材料に充填される内容物の質量に応じ適宜変更することが好ましい。
【0084】
例えば、包装材料が小袋である場合、ヒートシール層の厚さは、好ましくは20μm以上60μm以下である。この場合、例えば1g以上200g以下の内容物が小袋内に良好に充填される。
例えば、包装材料がスタンドパウチである場合、ヒートシール層の厚さは、好ましくは50μm以上200μm以下である。この場合、例えば50g以上2000g以下の内容物がスタンドパウチ内に良好に充填される。
【0085】
<バリア層>
一実施形態において、本開示の積層体は、多層基材とヒートシール層との間に、バリア層を備える。これにより、積層体のガスバリア性、具体的には、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上できる。バリア層は、多層基材の表面に形成してもよいし、ヒートシール層の表面に形成してもよい。また、多層基材とヒートシール層との間にバリア層を接着剤等を介して設けてもよい。
【0086】
一実施形態において、バリア層は、蒸着層である。蒸着層としては、例えば、アルミニウムなどの金属、並びに酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム及び酸化バリウムなどの無機酸化物から構成される。これらの中でも、アルミニウム蒸着層が好ましい。
【0087】
バリア層の厚さは、好ましくは1nm以上150nm以下、より好ましくは5nm以上60nm以下、さらに好ましくは10nm以上40nm以下である。バリア層の厚さを1nm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。バリア層の厚さを150nm以下とすることにより、バリア層におけるクラックの発生を抑制できると共に、積層体のリサイクル性を向上できる。
【0088】
バリア層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法などの物理気相成長法(PVD法);並びにプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法及び光化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。バリア層は、物理気相成長法及び化学気相成長法の両者を併用して形成される、異種の無機酸化物のバリア層を2層以上含む複合膜であってもよい。
【0089】
蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。導入される酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス及び窒素ガスなどの不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。多層基材の搬送速度は、例えば、10~800m/min程度である。
【0090】
バリア層の表面には、上述した表面処理が施されていることが好ましい。これにより、バリア層と、隣接する層との密着性を向上できる。
【0091】
蒸着層が酸化アルミニウム及び酸化珪素などの無機酸化物から構成される場合は、蒸着層の表面にバリアコート層を設けて、蒸着層及びバリアコート層を備えるバリア層としてもよい。
【0092】
一実施形態において、バリアコート層は、ガスバリア性樹脂から構成される。ガスバリア性樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ナイロン6、ナイロン6,6及びポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などのポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、並びに(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
【0093】
バリアコート層の厚さは、好ましくは0.01μm以上10μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下である。バリアコート層の厚さを0.01μm以上とすることにより、ガスバリア性をより向上できる。バリアコート層の厚さを10μm以下とすることにより、積層体の加工適性を向上できる。また、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用可能な積層体とすることができる。
【0094】
バリアコート層は、例えば、ガスバリア性樹脂などの材料を水又は適当な有機溶剤に溶解又は分散させ、得られた塗布液を塗布、乾燥することにより形成できる。
【0095】
他の実施形態において、バリアコート層は、金属アルコキシドと水溶性高分子との混合物を、ゾルゲル法触媒、水及び有機溶剤などの存在下で、ゾルゲル法によって重縮合して得られる金属アルコキシドの加水分解物又は金属アルコキシドの加水分解縮合物などを含む組成物から形成されるガスバリア性塗布膜である。
このようなバリアコート層を蒸着層上に設けることにより、蒸着層におけるクラックの発生を効果的に防止できる。
【0096】
一実施形態において、金属アルコキシドは、下記一般式で表される。
R1
nM(OR2)m
上記式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数1~8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す。
【0097】
R1及びR2で表される有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基及びi-ブチル基などのアルキル基が挙げられる。金属原子Mとしては、例えば、珪素、ジルコニウム、チタン及びアルミニウムが挙げられる。
【0098】
上記一般式を満たす金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)、テトラプロポキシシラン(Si(OC3H7)4)、及びテトラブトキシシラン(Si(OC4H9)4)が挙げられる。
【0099】
上記金属アルコキシドと共に、シランカップリング剤を使用することが好ましい。シランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。
【0100】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましく、酸素バリア性、水蒸気バリア性、耐水性及び耐候性という観点から、これらを併用することが好ましい。
【0101】
ゾルゲル法触媒としては、酸又はアミン系化合物が好適である。
【0102】
上記組成物は、さらに酸を含んでいてもよい。酸は、ゾルゲル法触媒、主として金属アルコキシド及びシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。酸としては、例えば、硫酸、塩酸及び硝酸などの鉱酸、並びに酢酸及び酒石酸などの有機酸が挙げられる。
【0103】
上記組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn-ブタノールが挙げられる。
【0104】
ガスバリア性塗布膜の厚さは、好ましくは0.01μm以上100μm以下、より好ましくは0.1μm以上50μm以下である。これにより、ガスバリア性をより向上できる。ガスバリア性塗布膜の厚さを0.01μm以上とすることにより、積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を向上でき、また、蒸着層におけるクラックの発生を防止できる。ガスバリア性塗布膜の厚さを100μm以下とすることにより、モノマテリアル包装容器の作製に好適に使用可能な積層体とすることができる。
【0105】
ガスバリア性塗布膜は、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコート及びアプリケータなどの従来公知の手段により、上記材料を含む組成物を塗布し、その組成物をゾルゲル法により重縮合することにより形成させることができる。
【0106】
以下、ガスバリア性塗布膜の形成方法の一実施形態について以下に説明する。
まず、金属アルコキシド、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、水、有機溶剤及び必要に応じてシランカップリング剤などを混合し、組成物を調製する。該組成物中では次第に重縮合反応が進行する。
【0107】
次いで、蒸着層上に、上記従来公知の手段により、上記組成物を塗布、乾燥する。この乾燥により、金属アルコキシド及び水溶性高分子(上記組成物がシランカップリング剤を含む場合は、シランカップリング剤も)の重縮合反応がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。最後に、加熱することにより、ガスバリア性塗布膜を形成できる。
【0108】
<接着層>
一実施形態において、本開示の積層体は、任意の層間(例えば、多層基材とバリア層との間、バリア層とヒートシール層との間、又は多層基材とヒートシール層との間)に、接着層を備える。これにより、積層体に含まれる層間の密着性を向上できる。
【0109】
接着層は、接着剤を1種又は2種以上含有する。接着剤としては、例えば、1液硬化型の接着剤、2液硬化型の接着剤、及び非硬化型の接着剤が挙げられる。
【0110】
接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよく、環境負荷の観点から、無溶剤型の接着剤が好ましい。無溶剤型の接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤及びウレタン系接着剤が挙げられる。これらの中でも、2液硬化型のウレタン系接着剤が好ましい。溶剤型の接着剤としては、例えば、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤が挙げられる。
【0111】
アルミニウム蒸着層等のバリア層と隣接する接着層の場合は、ポリエステルポリオール、イソシアネート化合物及びリン酸変性化合物を含有する樹脂組成物の硬化物により、該接着層を構成することが好ましい。接着層をこのような構成とすることにより、本開示の積層体の酸素バリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。
【0112】
接着層の厚さは、接着層の接着性及び積層体の加工適性という観点から、好ましくは0.5μm以上6μm以下、より好ましくは0.8μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上4.5μm以下である。
【0113】
接着層は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法及びトランスファーロールコート法などの方法により、多層基材等の上に接着剤を塗布及び乾燥することにより形成できる。
【0114】
[用途]
本開示のポリエチレン多層基材、印刷基材及び積層体は、包装袋などの包装材料用途に好適に使用できる。本開示の包装材料は、本開示のポリエチレン多層基材、印刷基材又は積層体を備える。
【0115】
例えば、上記積層体を、多層基材が外側、ヒートシール層が内側に位置するように二つ折にして重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装材料を製造できる。また、複数の上記積層体をヒートシール層が対向するように重ね合わせて、その端部等をヒートシールすることにより、包装材料を製造できる。包装材料の全部が上記積層体で構成されていてもよく、包装材料の一部が上記積層体で構成されていてもよい。
【0116】
包装材料におけるヒートシールの形態としては、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、及びガゼット型が挙げられる。また、自立性包装用袋(スタンドパウチ)も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、及び超音波シールが挙げられる。
【0117】
例えば、胴部及び底部を備えるスタンドパウチは、以下のようにして製造できる。まず、1つ又は複数の上記積層体を、ヒートシール層が内側となるように筒状にしてヒートシールすることにより胴部を形成する。次いで、更なる上記積層体を、ヒートシール層が外側となるようにV字状に折る。V字状の積層体を胴部の一端に挟み込み、ヒートシールすることにより底部を形成する。
【0118】
スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていてもよく、底部のみが上記積層体により形成されていてもよく、胴部及び底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。
【0119】
包装材料に充填される内容物としては、例えば、液体、粉体及びゲル体が挙げられ、食品であっても、非食品であってもよい。包装材料中に内容物を充填した後、包装材料の開口をヒートシールすることにより、包装体が得られる。
【0120】
本開示は、例えば以下の[1]~[14]に関する。
[1]中密度ポリエチレンを含有する第1の層と、高密度ポリエチレンを含有する第2の層と、中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する第3の層と、高密度ポリエチレンを含有する第4の層と、中密度ポリエチレンを含有する第5の層とを、厚さ方向にこの順に備え、延伸処理されてなる、ポリエチレン多層基材。
[2]第3の層における、中密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの質量比(中密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン)が、0.25以上4以下である、上記[1]に記載のポリエチレン多層基材。
[3]第1の層における中密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、第2の層における高密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、第3の層における中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンの合計含有割合が、80質量%以上であり、第4の層における高密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上であり、第5の層における中密度ポリエチレンの含有割合が、80質量%以上である、上記[1]又は[2]に記載のポリエチレン多層基材。
[4]多層基材における、第1~第5の層から選ばれる任意の互いに隣接する層を層(1)及び層(2)と記載する場合に、層(1)を構成するポリエチレンの密度と、層(2)を構成するポリエチレンの密度との差の絶対値が、0.030g/cm3以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材。
[5]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材と、多層基材上に形成された印刷層とを備える印刷基材。
[6]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材と、ヒートシール層とを備える積層体。
[7]ヒートシール層が、ポリエチレンを含有する、上記[6]に記載の積層体。
[8]多層基材上に印刷層をさらに備える、上記[6]又は[7]に記載の積層体。
[9]多層基材とヒートシール層との間に、バリア層をさらに備える、上記[6]~[8]のいずれか一項に記載の積層体。
[10]バリア層が、蒸着層である、上記[9]に記載の積層体。
[11]多層基材とバリア層との間に、接着層をさらに備える、上記[9]又は[10]に記載の積層体。
[12]多層基材とヒートシール層との間に、接着層をさらに備える、上記[6]~[8]のいずれか一項に記載の積層体。
[13]包装材料用途に用いられる、上記[6]~[12]のいずれか一項に記載の積層体。
[14]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリエチレン多層基材、上記[5]に記載の印刷基材、又は上記[6]~[13]のいずれか一項に記載の積層体を備える、包装材料。
【実施例】
【0121】
本開示の多層基材について実施例を元にさらに具体的に説明するが、本開示の多層基材は実施例によって限定されるものではない。以下、「質量部」は単に「部」と記載する。
【0122】
以下の実施例及び比較例で用いるポリエチレンについて記載する。
・中密度ポリエチレン(以下「MDPE」と記載する):
商品名Elite5538G
密度:0.941g/cm3、融点:129℃、MFR:1.3g/10分、
Dowchemical社製
・高密度ポリエチレン(以下「HDPE」と記載する):
商品名Elite5960G
密度:0.960g/cm3、融点:134℃、MFR:0.8g/10分、
Dowchemical社製
・直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と記載する):
商品名Elite5400G
密度:0.916g/cm3、融点:123℃、MFR:1.3g/10分、
Dowchemical社製
・ブレンドポリエチレンA
50部のMDPEと、50部のHDPEとを混合して、平均密度0.951g/cm3のブレンドポリエチレンA(以下「ブレンドPE(A)」と記載する)を得た。
【0123】
[参考例1及び実施例1]
【0124】
MDPE、HDPE及びブレンドPE(A)を、インフレーション成形法により、MDPE層(15μm)/HDPE層(22.5μm)/ブレンドPE(A)層(50μm)/HDPE層(22.5μm)/MDPE層(15μm)の層厚さ比で5層共押出しを行いチューブ状に製膜し、総厚さ125μmのポリエチレンフィルムを得て、チューブ状のフィルムをニップ箇所で折りたたみ、2枚重ねにした。括弧内の数値は層の厚さを示す。
上記で作製したポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に5倍の延伸倍率で延伸し、さらに、片方の面のMDPE層(表面層)にコロナ放電処理を行った後、端部をスリットし、2枚に分けて、厚さ25μmの延伸多層基材(実施例1)を得た。また、上記で作製したポリエチレンフィルムの片方の面のMDPE層(表面層)にコロナ放電処理を行った(参考例1)。
【0125】
[比較例1]
層構成を表1に記載したとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンフィルム及び延伸多層基材を得た。
【0126】
[延伸性評価]
延伸性を以下の基準で評価した。
AA:延伸時に基材(ポリエチレンフィルム)の破断が生じず、安定して延伸できた。
BB:延伸時に基材(ポリエチレンフィルム)の破断が生じ、
安定して延伸できなかった。
【0127】
[インキ密着評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材、並びに参考例において得られたポリエチレンフィルムのコロナ放電処理面側に、油性グラビアインキ(DICグラフィックス(株)製、商品名:フィナート)を用いて、グラビア印刷法により、画像を形成した。延伸多層基材及びポリエチレンフィルム上に形成された画像を目視により観察し、以下の評価基準に基づいて、評価した。
【0128】
(評価基準)
AA:延伸多層基材又はポリエチレンフィルムの画像形成面側にセロテープ(登録商標)を貼り、剥がした際に、延伸多層基材又はポリエチレンフィルムへのインキ密着が良好で、セロテープ(登録商標)へのインキ剥離が発生しなかった。
BB:延伸多層基材又はポリエチレンフィルムの画像形成面側にセロテープ(登録商標)を貼り、剥がした際に、延伸多層基材又はポリエチレンフィルムへのインキ密着が弱く、セロテープ(登録商標)へのインキ剥離が発生した。
【0129】
[層間剥離評価]
第一の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP2520、密度:0.925g/cm3、融点:122℃)と、第二の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP1520、密度:0.913g/cm3、融点:116℃)とを、インフレーション成形法により、多層押出製膜し、厚さ20μmの第一の直鎖状低密度ポリエチレン層と、厚さ20μmの第二の直鎖状低密度ポリエチレン層とを備える未延伸ポリエチレンフィルムを作製した。この未延伸ポリエチレンフィルムを、以下に説明するとおりヒートシール層として用いた。
【0130】
上記で作製した未延伸ポリエチレンフィルム(ヒートシール層)の第一の直鎖状低密度ポリエチレン層側と、実施例及び比較例において得られた延伸多層基材、又は参考例において得られたポリエチレンフィルムとを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント社製、Ru-77T/H-7)を介してドライラミネートし、積層体を得た。
【0131】
上記で作製した積層体を、10cm×10cmにカットしてサンプル片を3つずつ作製した。各サンプル片のヒートシール層側が内側になるように二つ折りにし、ヒートシールテスターを用いて、温度140℃、圧力1kgf/cm2、1秒の条件にて1cm×10cmの領域をヒートシールした。
【0132】
ヒートシール後のサンプル片を15mm幅で短冊状に切り、ヒートシールしなかった両端部を引張試験機に把持し、速度300mm/分、荷重レンジ50Nの条件にて引張試験を実施し、延伸多層基材又はポリエチレンフィルムの層間剥離発生の有無を確認した。
AA:引張試験時に延伸多層基材又はポリエチレンフィルムの層間剥離が
発生しなかった。
BB:引張試験時に延伸多層基材又はポリエチレンフィルムの層間剥離が発生した。
【0133】
[耐熱性評価]
耐熱性を以下の基準で評価した。
AA:印刷時、ドライラミネート時及び上記で作製した積層体のヒートシール時に基材(延伸多層基材又はポリエチレンフィルム)の収縮が無く、目的物を綺麗に製造できた。
BB:印刷時、ドライラミネート時及び上記で作製した積層体のヒートシール時に基材(延伸多層基材又はポリエチレンフィルム)の収縮が発生し、目的物を綺麗に製造できなかった。
【0134】
[ヘイズ評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材、並びに参考例において得られたポリエチレンフィルムのヘイズ値を、JIS K7136に準拠し測定した。
【0135】
[剛性評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材、並びに参考例において得られたポリエチレンフィルムを、10mm幅の試験片に切断し、ループスティフネス測定試験器(東洋精機製作所製、商品名:ループスティフネステスタ)により、試験片の剛性を測定した。ループの長さは、60mmとした。
【0136】
[強度評価]
実施例及び比較例において得られた延伸多層基材、並びに参考例において得られたポリエチレンフィルムから、10mm幅のダンベル型試験片を切り出した。上記試験片のMD方向の引張強度を、引張試験機(オリエンテック社製、RTC-1310A)により測定した。チャック間距離は10mm、引張速度は300mm/分とした。
以上の評価結果を表1に示す。
【0137】
【符号の説明】
【0138】
10:ポリエチレン多層基材
12:中密度ポリエチレンを含有する第1の層
14:中密度ポリエチレンを含有する第5の層
16:第2の層、第3の層及び第4の層からなる多層中間層
18:高密度ポリエチレンを含有する第2の層
20:中密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンを含有する第3の層
22:高密度ポリエチレンを含有する第4の層
30:積層体
32:ヒートシール層
34:バリア層
36:接着層