(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】熱電変換材料用組成物
(51)【国際特許分類】
H10N 10/855 20230101AFI20241203BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20241203BHJP
【FI】
H10N10/855
H10N10/857
(21)【出願番号】P 2020184189
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉内 啓輔
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/009285(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/101457(WO,A1)
【文献】特表2015-531813(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159685(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/012370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/855
H10N 10/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物(A)、導電材料(B)及び水以外の溶剤(C)を含む
熱電変換材料用組成物であって、導電材料(B)/(粘土鉱物(A)+導電材料(B))より算出される質量比が、0.2以上0.99以下である熱電変換材料用組成物。
【請求項2】
更に、水酸基、アミド基またはカルボキシル基のいずれかを有する樹脂(D)を含むことを特徴とする請求項1記載の熱電変換材料用組成物。
【請求項3】
水以外の溶剤(C)の溶解度パラメータが、18以上25以下であることを特徴とする請求項1または2記載の熱電変換材料用組成物。
【請求項4】
導電材料(A)が、カーボンナノチューブを含む、請求項1~
3いずれか記載の熱電変換材料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換できる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換素子は、熱を電力に変換する素子であり、半導体や金属の組合せによって構成される。代表的な熱電変換素子としては、p型半導体単独、n型半導体単独、又はp型半導体とn型半導体との組合せ、に分類される。熱電変換素子では、半導体の両端に温度差が生じるように熱を加えると起電力が生じるゼーベック効果を利用する。より大きな電位差を得るために、熱電変換素子では、一般的に、材料としてp型半導体とn型半導体とを組合せて使用する。
【0003】
また、熱電変換素子は、多数の素子を板状、又は円筒状に組合せてなる熱電モジュールとして使用される。熱エネルギーを直接電力に変換することが出来、例えば、体温で作動する腕時計、地上用発電及び人工衛星用発電における電源として利用できる。熱電変換素子の性能は、熱電変換材料の性能、及びモジュールの耐久性等に依存する。
【0004】
非特許文献1に記載されているとおり、熱電変換材料の性能を表す指標として、無次元熱電性能指数(ZT)が用いられる。また、熱電変換材料の性能を表す指標として、パワーファクターPF(=S2・σ)を用いる場合もある。
上記無次元熱電性能指数「ZT」は、下式(1)により表される。
ZT=(S2・σ・T)/κ ・・・式(1)
ここで、Sはゼーベック係数(V/K)、σは導電率(S・m)、Tは絶対温度(K)、及びκは熱伝導率(W/(m・K))である。熱伝導率κは下式(2)で表される。
κ=α・ρ・C ・・・式(2)
ここで、αは熱拡散率(m2/s)、ρは密度(kg/m3)、及びCは比熱容量(J/(kg・K))である。
つまり、熱電変換の性能(以下、熱電特性とも称す)を向上させるには、ゼーベック係数又は導電率を向上させ、その一方で熱伝導率を低下させることが重要である。
【0005】
これに対し、従来の無機材料に代えて、有機材料を用いた熱電変換素子に関する検討が進められている。有機材料は、優れた成形性を有し、かつ無機材料よりも優れた可撓性を有するため、それ自身が分解しない温度範囲での汎用性が高い。また、印刷や塗工の技術等を容易に活用できるため、製造エネルギーや製造コストの面でも無機材料より有利である。
【0006】
特に印刷や塗工が可能であるということは、熱勾配方向に対して熱電変換材料の集積化を容易に行えることを意味するため、このような材料を使用することで、小さな面積から高い電力を取り出すことができる効率の良い熱電変換素子の作製が可能となる。
【0007】
例えば、特許文献1には、カーボンナノチューブ(CNT)、有機低分子化合物及び低分子界面活性剤を用いて熱電変換素子を作成している。しかし導電材料と溶剤との親和性が低いため、熱電変換層の作成に使用した分散体ではフィルムに印刷後、カーボンナノチューブと溶媒が分離して濡れ広がってしまうため、熱電変換層を小さな面積に集積化させることが難しく、効率的に電力を取り出すことができない。また、特許文献2では、有機色素骨格を高分子分散剤に結合させ、カーボンナノチューブ(CNT)と共に含有させることで、CNT分散性が良く塗工方法に適し、且つ優れた熱起電力を示す熱電変換材料が記載されている。しかしこの発明では、十分な熱電変換性能は得られず、更なる改良が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2018/159685号
【文献】国際公開第2015/050113号
【非特許文献】
【0009】
【文献】梶川武信著「熱電変換技術ハンドブック(初版)」エヌ・ティー・エス出版、p.19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ゼーベック係数と導電性との両立を達成し、高いパワーファクターを示す熱電変換材料を作成可能な、高い塗工適性を有する熱電変換材料用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、粘土鉱物(A)、導電材料(B)及び水以外の溶剤(C)を含むことを特徴とする熱電変換材料用組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、更に、水酸基、アミド基またはカルボキシル基のいずれかを有する樹脂(D)を含む上記熱電変換材料用組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、水以外の溶剤(C)の溶解度パラメータが、18以上25以下である上記熱電変換材料用組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、導電材料(B)/(粘土鉱物(A)+導電材料(B))より算出される質量比が、0.2以上0.99以下である上記熱電変換材料用組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、導電材料(A)が、カーボンナノチューブを含む上記熱電変換材料用組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ゼーベック係数と導電性との両立を達成し、高いパワーファクターを示す熱電変換材料を作成可能な、高い塗工適性を有する熱電変換材料用組成物を提供することができる。また、当該組成物を用いて、優れた熱電性能を発揮する熱電変換材料及び熱電変換素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<熱電変換材料用組成物>
本発明の熱電変換材料用組成物は、粘土鉱物(A)、導電材料(B)、溶剤(C)を含むことを特徴とする。このような特定の組み合わせにより、高いゼーベック係数と導電性とを両立し、高いパワーファクターを示す熱電変換材料を作成可能となり、高い塗工適性を示すことができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<粘土鉱物(A)>
粘土鉱物(A)は、塗工適性向上に寄与するものである。熱電変換材料用組成物は導電材料と溶剤の親和性が悪い場合、塗工工程で分離が進み、溶剤が当初塗工した領域から染み出してしまう現象が起こる(以下液離れと呼ぶ)。粘土鉱物(A)を適量加えることにより、導電材料と溶剤の分離を抑え、液離れを抑制させることができる。熱電変換により高い電圧を取り出すためには、熱電変換材料を熱勾配方向に対して並行に多数集積化させ、熱電変換材料同士の間隔はなるべく狭くする必要がある。粘土鉱物(A)の添加により、このような液離れの発生を抑制することで、塗工時に熱電変換材料用組成物が隣の熱電変換材料を侵すことを防ぎ、熱電変換材料同士を狭い間隔で塗工することができ、容易に高電圧を取り出すことができるようになる。
【0019】
粘土鉱物(A)は、通常は電荷を帯びており、正電荷でも負電荷でも構わないが、負電荷を有するものが好ましい。
また、粘土鉱物(A)としては、層状珪酸塩鉱物としてカオリナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイト、イライトが、棒状珪酸塩鉱物としてセピオライト、アタパルジャイト、アロフェン、イモゴライトなどが挙げられる。これらのうち、ベントナイトが特に好ましい。
【0020】
粘土鉱物(A)の嵩密度は、100~500g/Lであることが望ましい。100g/L以上であることで、導電性を損なうことなく塗工適性を発現させることができる。また、500g/L以下であることで、十分に液離れを抑制し、塗工適性を得ることができる。本明細書において、粘土鉱物(A)の嵩密度は、以下の方法に基づいて算出した値である。
【0021】
<嵩密度の算出>
容積25cm3で内径20mmの金属製円筒容器に粘土鉱物(A)を過剰量投入し、容器から飛び出している剥離体を金属板ですり切り、粘土鉱物の質量を測定した。この質量を容器の容積で除することで、嵩密度を算出した。
【0022】
<導電材料(B)>
導電材料(B)は、導電性を持つ炭素材料、金属材料、導電性高分子であれば特に制限されず、例えば、炭素材料としては、黒鉛、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェンナノプレート、グラフェン等が挙げられ、金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ゲルマニウム、ガリウム及び白金等の金属粉、並びにZnSe、CdS、InP、GaN、SiC、SiGeこれらの合金、並びにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、上記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられ、導電性高分子としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸から成る複合物(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等が挙げられる。使用する導電材料の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
導電材料(B)の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。
【0024】
ゼーベック係数と導電率との両立の観点で、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェンナノプレート及びグラフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはカーボンナノチューブであり、特に好ましくは単層カーボンナノチューブである。
【0025】
導電材料(B)としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛工業所社製のBF-3AK、FBF、BF-15AK、CBR、CPB-6S、CPB-3、96L、96L-3、K-3、SC-120、SC-60、HLP、CP-150、SB-1、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、K-5、AP-2000、AP-6、300F、150Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のG-4AK、G-6S、G-3G-150、G-30、G-80、G-50、SMF、EMF、SFF、SFF-80B、SS-100、BSP-15AK、BSP-100AK、WF-15C、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられる。市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.5,EC1.5-P、楠本化成社製のTUBALL、ゼオンナノテクノロジー社製のZEONANO等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube7000、FloTube2000、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T、200Pが挙げられる。これらは特に限定されず、単独、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
導電材料(B)/(粘土鉱物(A)+導電材料(B))より算出される質量比が、0.2以上0.99以下であることが好ましい。上記範囲であることにより、導電性を損なうことなく、十分な熱電変換性能を発現させることができる。
【0027】
<溶剤(C)>
溶剤(C)は、25℃で液状の水でない物質を示す。溶媒を加え、粘土材料(A)と導電材料(B)とを混合し分散体化することで、塗工性を向上させることができる。導電材料の安定性向上や酸化抑制のため、溶剤(C)は、その溶解度パラメータが18以上25以下であることが好ましい。
【0028】
溶剤(C)としては、例えば、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、2-プロパノールなどのアルコール系溶剤、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、トルエンなどの芳香族溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどのアミン系溶剤が挙げられる。
【0029】
熱電変換材料用組成物の質量のうち、溶媒(C)の質量は50%以上99.9%以下であることが好ましく、80%以上99.9%以下であることが更に好ましい。
【0030】
<樹脂(D)>
本発明の熱電変換材料用組成物は、更に樹脂(D)を含んでいても良い。樹脂(D)は、水酸基、アミド基またはカルボキシル基のいずれかを有する樹脂を指す。上記官能基を有することで、粘土材料と相互作用させることができ、より液離れを抑制し、塗工適性を高めることができる。
【0031】
樹脂(D)としては、例えば、ポリビニルアルコールなどのビニル系樹脂、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸などのアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0032】
樹脂(D)の質量平均分子量は、10,000~200,000であることが好ましい。質量平均分子量は、10,000以上であることで粘度材料との相互作用を高めることができ、200,000以下であることで増粘による塗工適性の悪化を抑えることができる。
【0033】
<その他成分>
本発明の熱電変換材料用組成物は、その特性を向上させる観点から、必要に応じて、その他成分を含んでよい。その他成分としては、有機半導体等が挙げられる。
【0034】
<有機半導体>
有機半導体は、最高被占軌道のエネルギー準位(HOMO)の値が-7.0eV以上-5.0eV以下であることが好ましく、公知の有機半導体から選択することができる。有機半導体を加えることで、熱励起により有機半導体内に生じたキャリア(正孔または電子)を導電材料(B)へと移動させ、導電材料(B)内に発生するキャリア密度の勾配を強めることで、効率的に熱電変換を行うことができる。
【0035】
有機半導体としては、例えば、ペリレン誘導体やジケトピロロピロール誘導体、チアゾロチアゾール誘導体などが挙げられる。
【0036】
<熱電変換素子>
熱電変換素子は、上記熱電変換材料用組成物から溶剤を取り除き、電極を設置することで得ることができる。例えば、基材に熱電変換材料用組成物を塗工し、オーブンで乾燥することで溶媒を除去し、得られた膜の2か所の端部を金スパッタで金を付着させることで作成することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実験例により、本発明をより具体的に説明する。なお、例中、特に断りのない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0038】
<熱電変換材料用組成物の製造>
[実施例1]
導電材料(B)としてTUBALL(楠本化成社製単層カーボンナノチューブ、SWCNTと略記する)0.4部、化学式1の構造を有する有機半導体DPP0.2部、粘土鉱物(A)としてGARAMITE-1958(ビックケミー・ジャパン株式会社)0.1部、溶剤(C)としてN-メチル-2-ピロリドン(溶解度パラメータ:22.9、NMPと略記する)79.2部をそれぞれ秤量して混合した。更にジルコニアビーズ(φ1.25mm)を140部加え、スキャンデックスで2時間振とう後、ろ過してジルコニアビーズを取り除き、熱電変換材料用組成物1を得た。
【0039】
【0040】
[実施例2~6、10~14および比較例1、2]
熱電変換材料用組成物を構成する材料の種類を表1に示す材料に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物2~6、10~14、22、23をそれぞれ得た。ただし、熱電変換材料用組成物22では、GARAMITE-1958を配合せずに製造した。
【0041】
[実施例15]
GARAMITE-1958(ビックケミー・ジャパン株式会社)の配合量を0.01部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物7を得た。
【0042】
[実施例16]
GARAMITE-1958(ビックケミー・ジャパン株式会社)の配合量を0.4部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物8を得た。
【0043】
[実施例17]
GARAMITE-1958(ビックケミー・ジャパン株式会社)の配合量を1.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物9を得た。
[実施例18]
実施例1の配合物に、更に、ポリビニルアルコール500,完全けん化型(富士フイルム和光純薬株式会社)を0.1部加えた以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物18を得た。
[実施例19]
実施例1の配合物に、更に、ポリビニルアルコール500,完全けん化型(富士フイルム和光純薬株式会社)を0.05部加えた以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物19を得た。
[実施例20]
実施例1の配合物に、更に、POLYACRYLAMIDE AVERAGE MN 40,000(メルク株式会社)を0.1部加えた以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物20を得た。
[実施例21]
実施例1の配合物に、更に、ポリアクリル酸 25,000(富士フイルム和光純薬株式会社)を0.1部加えた以外は、実施例1と同様にして、熱電変換材料用組成物21を得た。
【0044】
<液離れ性の評価>
得られた熱電変換材料用組成物1~23を、シート状基材である厚さ50μmのポリイミドフィルム上に武蔵エンジニアリング株式会社製SuperΣC
M-V2とゲージが30Gであるシリンジ針を用いて、線幅2um、長さ5cmの細線状に塗工した。塗工後10分後の液離れの割合を、以下の基準に基づいて評価した。
液離れの割合=(液離れによる溶剤が広がった線幅)/(塗工した部分の線幅)-1
◎:液離れの割合が20%未満(非常に良好)
○:液離れの割合が20%以上50%未満(良好)
△:液離れの割合が50%以上100%未満(実用可能)
×:液離れの割合が100%以上(実用不可)
【0045】
<熱電変換特性と導電率の評価>
得られた熱電変換材料用組成物1~23を、シート状基材である厚さ50μmのポリイミドフィルム上にアプリケータを用いて塗布した後、130℃で30分間加熱乾燥して、ポリイミドフィルム上に、膜厚5μmの熱電変換膜を有する積層体を得た。得られた熱電変換膜(以下、塗膜ともいう)を有する積層体について、以下のとおり導電率、ゼーベック係数及びパワーファクター(PF)を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
(導電率)
得られた積層体を2.5cm×5cmに切り取り、JIS-K7194に準じて、ロレスタGX MCP-T700(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子法で導電率を測定した。
【0047】
(ゼーベック係数)
得られた積層体を3mm×10mmに切り取り、アドバンス理工株式会社製のZEM-3LWを用いて、80℃におけるゼーベック係数(μW/K)を測定した。
【0048】
(パワーファクター(PF))
得られた導電率及びゼーベック係数を用いて、80℃におけるPF(=S2・σ)を算出し、以下の基準に従って評価した。
◎:PFが20μW/(mK2)以上である(非常に良好)
○:PFが10μW/(mK2)以上、20μW/(mK2)未満である(良好)
△:PFが2.5μW/(mK2)以上、10μW/(mK2)未満である(実用可能)
×:PFが2.5μW/(mK2)未満である(実用不可)
【0049】
表1中の材料の詳細は以下の通りである。
<粘土鉱物(A)>
CLAYTONE-APA:ビックケミー・ジャパン株式会社製ベントナイト 嵩高さ590g/l
GARAMITE-7305:ビックケミー・ジャパン株式会社製ベントナイト 嵩高さ130g/l
GARAMITE-1958:ビックケミー・ジャパン株式会社製ベントナイト 嵩高さ130g/l
エスベンNE:株式会社ホージュン製ベントナイト 嵩高さ250g/l
エスベンNEZ:株式会社ホージュン製ベントナイト 嵩高さ250g/l
PANGEL B40:TOLSA社製セピオライト 嵩高さ200g/l
【0050】
<導電材料(B)>
SWCNT:楠本化成社製単層カーボンナノチューブ「TUBALL」
MWCNT:Knano社製 多層カーボンナノチューブ「100P」
GNP:XGSciences社製グラフェンナノプレートレット「xGNP-M-5」
KB:ライオン社製 ケッチェンブラック 「EC-300J」
黒鉛:日本黒鉛社製 黒鉛「CPB」
PEDOT/PSS:Heraeus社製 「Clevios PH1000」
【0051】
<樹脂(D)>
PVA:富士フイルム和光純薬株式会社ポリビニルアルコール500, 完全けん化型
PAAm:メルク株式会社製POLYACRYLAMIDE AVERAGE MN 40,000
PAA:富士フイルム和光純薬株式会社:ポリアクリル酸 25,000
【0052】
表1に示すように、本発明の熱電変換材料用組成物は、比較例の熱電変換材料用組成物に比べて優れた塗工適性を有し、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を作成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の実施形態である熱電変換材料用組成物は、優れた塗工適性を有し、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を提供することができる。
【0054】