(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ソーナーシステム、方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/52 20060101AFI20241203BHJP
G01S 3/808 20060101ALI20241203BHJP
G01S 15/08 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01S7/52 U
G01S7/52 V
G01S3/808
G01S15/08
(21)【出願番号】P 2020185624
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 達也
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011117592(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02770344(EP,A1)
【文献】国際公開第2015/023189(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105116372(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0016218(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0195626(US,A1)
【文献】特開昭55-121164(JP,A)
【文献】特開昭57-160077(JP,A)
【文献】特開平11-038125(JP,A)
【文献】特開平10-210589(JP,A)
【文献】特開2008-261727(JP,A)
【文献】特開平11-202042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーナーシステムの受信処理装置であって、
えい航用のケーブルで連結されアレイを構成する複数の受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する、ことを特徴とする受信処理装置。
【請求項2】
前記アレイを構成する複数の前記受信素子について、隣り合う2つの受信素子の組の各々について、前記音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、
前記音波の音源の位置座標と、
隣り合う2つの受信素子の各組ごとの、
前記到来方位、受信素子間の距離、前記音源までの距離、及び、
真北を基準とした前記ケーブル
の正横方位と、
に基づき、
各受信素子の位置座標を算出する、ことを特徴とする請求項1記載の受信処理装置。
【請求項3】
前記各受信素子及び前記音源の位置座標を、前記各受信素子及び前記音源を2次元平面上に射影した2次元座標上で算出し、前記アレイの形状を2次元平面上で推定する、ことを特徴とする請求項2記載の受信処理装置。
【請求項4】
アレイを構成する複数の受信素子と、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の受信処理装置と、
音波を送信する送信装置と、
前記送信装置に対して送信波形と送信時刻を与える制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記受信処理装置に対して少なくとも前記音波の送信時刻を与え、
前記受信処理装置は、前記音波の送信時刻と前記受信素子での前記音波の受信時刻から前記音波の音源までの距離を求める、ことを特徴とするソーナーシステム。
【請求項5】
前記アレイを構成する前記複数の受信素子は、
前記送信装置からの直接波、
目標からの反射波、
前記目標からのトランジェント信号のうちのいずれかを受信し、
前記受信処理装置は、前記アレイを構成する前記複数の受信素子の受信データから、前記アレイの形状を推定する、ことを特徴とする請求項4記載のソーナーシステム。
【請求項6】
前記受信素子は、円筒型受感部を備え、プラットフォームから
前記ケーブルでえい航される、ことを特徴とする請求項4又は5記載のソーナーシステム。
【請求項7】
えい航ソーナーシステムにおける複数の受信素子からなるアレイの形状を推定する方法であって、
前記受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する、ことを特徴とするアレイ形状推定方法。
【請求項8】
えい航用のケーブルで連結され前記アレイを構成する
複数の前記受信素子について、隣り合う2つの受信素子の組の各々について、前記音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、
前記音波の音源の位置座標と、隣り合う2つの受信素子の各組ごとの前記到来方位、受信素子間の距離、前記音源までの距離、
真北を基準とした前記ケーブル
の正横方位とに基づき、各受信素子の位置座標を算出する、ことを特徴とする請求項7記載のアレイ形状推定方法。
【請求項9】
えい航ソーナーシステムにおける複数の受信素子からなるアレイの形状を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する、プログラム。
【請求項10】
えい航用のケーブルで連結され前記アレイを構成する
複数の前記受信素子について、隣り合う2つの受信素子の組ごとに前記音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、
前記音波の音源の位置座標と、隣り合う2つの受信素子の各組ごとの前記到来方位、受信素子間の距離、前記音源までの距離、
真北を基準とした前記ケーブル
の正横方位とに基づき、各受信素子の位置座標を算出する処理を前記コンピュータに実行させる、請求項9記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信処理装置、ソーナーシステム、方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーナーは、音波を用いて水中の物体の位置を特定する装置であり、音波を受信する受信素子を複数並べたアレイを備え、水中の音響情報を得る。受信素子は、受信した音波を電気信号に変換する。えい航式ソーナーでは、船舶等のプラットフォームが、受信素子を複数並べたアレイをケーブルでえい航する。ケーブルおよびアレイは、プラットフォームの移動や海流などから外力を受け変形する。この変形は予測が難しい。このため、プラットフォームから見たアレイの正確な位置の推定を困難としている。このようなアレイの位置誤差は信号処理などに影響を及ぼし、ソーナー自体の性能に悪影響を及ぼす。
【0003】
例えば特許文献1には、ラインアレイの受波器の位置にコンパスを設定し、各コンパスの出力と、既知である受波器間の間隔とを用いて、各受波器の座標を求め、ラインアレイが変形した場合の形状を求めている。このように、ジャイロコンパスなどのセンサを、アレイを構成する複数の受波器に複数付けることで、プラットフォームから見たアレイの位置の推定精度を高めている。しかし、アレイを構成する受波器の数だけ、センサ(コンパス)が必要となる。えい航式ソーナーでは、受波器は多数配列されるため、多数のセンサ(コンパス)をアレイに内蔵する必要があり、製造コスト等の点で実用性に欠けたものとなる。この問題に対して、特許文献2には、えい航ケーブルにコンパスを備え、信号処理装置は、えい航ケーブルを通じてコンパスからコンパス方位情報(コンパス方位)と、ラインアレイの各受波器から受波信号とを受け取り、これらコンパス方位及び受波信号を用いて整相処理を行ない、整相出力を用いて目標の存在や方位等(例えば、方位、深度、傾斜度など)を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-261727号公報
【文献】特開2011-158391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、えい航式ソーナーは、水中にあるアレイの形状が正確に把握できないため、信号処理などにおいて誤差を発生させる要因となり、ソーナーの性能に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであって、その目的は、コンパス等のセンサによらずに、えい航式アレイの形状を推定可能な装置、方法、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの側面によれば、ソーナーシステムの受信処理装置は、アレイを構成する複数の受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する。
【0008】
本発明の一つの側面によれば、えい航ソーナーシステムにおける複数の受信素子からなるアレイの形状を推定する方法であって、
前記受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、
前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する、アレイ形状推定方法が提供される。
【0009】
本発明の一つの側面によれば、えい航ソーナーシステムにおける複数の受信素子からなるアレイの形状を推定する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記受信素子の互いに異なる複数の組み合わせの各々について、音波の受信データから前記音波の到来方位を計算し、前記到来方位と、前記音波の到来時間に基づき、前記アレイの形状を推定する、プログラムが提供される。さらに、本発明によれば、上記プログラムを記憶したコンピュータ可読型記録媒体((例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、又は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM))等の半導体ストレージ、HDD(Hard Disk Drive)、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc))が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コンパス等のセンサによらずに、えい航式アレイの形状を推定可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の構成を模式的に例示する図である。
【
図2】本発明の実施形態を模式的に例示する図である。
【
図3】本発明の実施形態の構成を模式的に例示する図である。
【
図7】本発明の実施形態の構成を模式的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について説明する。本発明によれば、えい航式ソーナーにおけるアレイの各受信素子で受信した音響信号に基づき、信号処理などの数値演算によりアレイの形状の推定を実現している。ここでは、えい航式ソーナーとして、えい航用のケーブルに複数の受信素子(受波器)が数珠つなぎ(線状)に並んだアレイ(ラインアレイ)を想定する。えい航式ソーナーと送信装置を備えた艦船等のプラットフォームにおいて、アレイの受信素子の受信データから、該アレイの形状を推定する。すなわち、ラインアレイ上に並んだ複数の受信素子がある音源から発せられた音響信号(音波)を受信したとき、隣り合う受信素子対の受信信号から位相差を計算し、該受信素子対の中間点から見た音源の方位を計算する。この音源方位の計算を、ラインアレイの隣り合う受信素子対間で行うことで、ラインアレイから見た音源の方位線を複数本引くことができる。音源の位置が既知の場合、該音源から見たラインアレイの形状を推定することできる。
【0013】
図1を参照して、本発明の一実施形態のソーナーシステム100を説明する。
図1において、送受信制御装置101、送信装置102、受信処理装置103は、艦船等のプラットフォームに配置される。アレイ(ラインアレイ)105を構成する複数(N個)の受信素子104は不図示のケーブルでえい航され、受信処理装置103に電気的に接続される。
【0014】
送信装置102は、送受信制御装置101から供給される送信信号(電気信号)を音響信号(音波)に変換して送出する。
【0015】
各受信素子104は、音波を受信し該音波を電気信号に変換し、受信処理装置103にデータを送る。なお、各受信素子104では、音波を変換した電気信号を不図示のアナログデジタル変換器でデジタル信号データに変換し、不図示のケーブルの伝送線路を介して受信処理装置103に送信するようにしてもよい。受信処理装置103では、各受信素子104から送信されたデータが、いずれの受信素子104からのものであるか判別可能に構成されている。
【0016】
送受信制御装置101は、送信装置102から送信する送信信号波形や送信時間などの情報(データ)を、送信装置102と受信処理装置103に送る。
【0017】
受信処理装置103は、送受信制御装置101と、各受信素子104から送信されたデータに対して演算処理を行うことで、アレイ105の形状を推定する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態のシステムを説明する図である。
図1の送受信制御装置101、送信装置102、受信処理装置103を備えた艦船110は、艦尾側から、複数の受信素子104(N個の受信素子104
1~104
N)がケーブル106で連結されたアレイ105(「えい航アレイ」ともいう)をえい航する。艦船110の船底側の送信装置102から送信された音波は、アレイ105の複数の受信素子104で受信される。受信素子104は、円筒型受感部を備えた円筒型ハイドロフォンで構成される。アレイ105の複数の受信素子104は、艦船110内の受信処理装置103とケーブル106を介して電気的に接続される。
【0019】
図3は、
図1の受信処理装置103で実行される処理(機能)を説明する図である。受信データ1031は、各受信素子104で受信した音響信号(音波)をデジタル信号に変換したデータを含む。また、各受信素子104からの受信データ1031は各受信素子104で当該音響信号(音波)を受信した時刻情報を含むようにしてもよい。
【0020】
方位計算処理1032は、隣り合う受信素子104対からの受信データ1031の組から、受信した音波の周波数と、受信素子間の距離を用いて、音波の到来方位を計算する。
【0021】
図4は、方位計算処理1032を説明する図である。
図4における到来方位θ
iは、隣り合うi番目と(i+1)番目の受信素子104間の距離:d
i、音波の周波数:f、音速:C、隣り合うi番目と(i+1)番目の受信素子104間の位相差αを用いて、次式(1)で求められる。sin
-1は逆正弦関数である。
【0022】
【0023】
ただし、式(1)の解は、受信素子間距離diが、音波の波長:C/fより大きい場合、すなわち、di>C/fの場合に、-π<θi<πとなり、到来方位を求めることができない領域が存在する。
【0024】
音源である送信装置102が、このような波長の音波を用いる場合は、位相差αの代わりに、
…(2)
を用いて式(1)を解くようにしてもよい。このとき、到来方位は(2n+1)個求まるが、同じ方位から到来する複数の波長の音波に対して同様の計算をすることで、真の到来方位を求めることができる。
【0025】
方位計算処理1032を、隣り合う受信素子104からの受信データ1031に対して行うことで、
図5に示すように、音波の到来方位線を複数本引くことができる。すなわち、隣り合う受信素子間の中心の各々における、音源である送信装置102に対する方位(到来方位線)が求まる。
図5から、音源(送信装置102)の位置座標が、到来方位線(到来方位と、隣り合う受信素子間の中心と音源との間の距離)と、隣り合う受信素子間距離d
iから、隣り合う受信素子の位置が求まる。
【0026】
形状推定処理1033は、受信データ1031から算出した音波の到来時間(受信素子104での音波の受信時刻)や方位計算処理1032での方位の結果などを用いることで、アレイの形状を推定する。送受信制御装置101からの音波の送信時刻と到来時間から、該受信素子104と音源との間の距離が求まる。具体的には、例えば、
図6に示すような変数に対して、以下の式(3)~(6)を用いて、隣り合うi番目と(i+1)番目の受信素子104の座標を求める。
【0027】
図6において、受信素子座標(x
i, y
i)、(x
i+1, y
i+1)は、隣り合うi番目と(i+1)番目の受信素子(
図2の受信素子104
i、104
i+1(i=1,…,N-1))の2次元位置座標、(x
0, y
0)は音源(送信装置102)の2次元位置座標である。なお、
図6において、横方向はx座標(x軸)、縦方向はy座標(y軸)である。本実施形態では、受信素子104、音源の各座標は、例えば海面に平行な2次元平面への射影座標としている。これは、アレイ105の受信素子104は、例えば中性浮力ケーブル等を用いて海面に平行となるように設計されており、2次元平面で扱っても誤差は小さいためである。すなわち、Z軸座標(深度)の値は同一としても、アレイ形状の推定誤差は小さい。したがって、形状推定処理1033で推定されるアレイの形状は、2次元平面上に射影された形状となる。
【0028】
図6において、d
iは、隣り合う受信素子104
i、104
i+1間の距離(受信素子間距離)(既知)である。音源距離l
iは、隣り合う受信素子104
i、104
i+1の中心からの音源(
図1の送信装置102)までの距離である。音源距離l
iは、受信素子104
i、104
i+1でそれぞれ求めた音源(
図1の送信装置102)までの距離(算出済み)を算術平均した値としてもよい。隣り合う受信素子104
i、104
i+1に関するケーブル正横方位φ
iは、真北からの真方位である。到来方位θ
iは、隣り合う受信素子104
i、104
i+1の中心における音波の到来方位(算出済み)である。
図6から、次式(3)~(6)が成立することがわかる。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
隣り合う受信素子104i、104i+1(i=1,..,N-1)に関するケーブル正横方位φi(i=1,..,N-1)が既知の場合、上式(3)~(6)から、隣り合う受信素子104i、104i+1の位置座標(xi, yi)、(xi+1, yi+1)が求まる。
【0034】
一方、隣り合う1番目と2番目の受信素子1041、1042に関するケーブル正横方位φ1が既知であるが、隣り合う受信素子104i、104i+1(i=2,..,N-1)に関するケーブル正横方位φiが未知の場合、例えば次式(7)、(8)から、まず1番目の受信素子1041の位置座標(x1, y1)を求める。
【0035】
【0036】
【0037】
そして、1番目の受信素子1041の位置座標(x1, y1)から、上式(5)、(6)の漸化式を用いて2番目の受信素子1042の位置座標(x2, y2)が求まる。
【0038】
隣り合う2番目と3番目の受信素子1042、1043に関するケーブル正横方位φ2は、φ2と2番目の受信素子1042の位置座標(x2, y2)と音源座標(x0, y0)と受信素子間距離d2及び音源距離l2の間で成り立つ関係式(逆三角関数)を用いてφ2を求め、式(5)、(6)より、3番目の受信素子1043の位置座標(x3, y3)を再帰的に求めるようにしてもよい。ケーブル正横方位φi(i=3,..,N-1)についても、上記と同様に、φiとi番目の受信素子の位置座標(xi,yi)と音源座標(x0,y0)と受信素子間距離di及び音源距離liで成り立つ関係式(逆三角関数の関係式)を用いてφiを求め、式’5)、(6)から(i+1)番目の受信素子104i+1の位置座標(xi+1,yi+1)を再帰的に求めるようにしてもよい。
【0039】
本実施形態によれば、えい航式ソーナーシステムにおいて、送信装置(音源)から送信した音響信号(音波)のアレイでの受信信号から該音響信号の到来方位を求め、到来方位と、音源距離、音源の位置座標に基づき、演算処理によってアレイを構成する複数の受信素子の位置座標を算出している。このため、アレイの受信素子にジャイロなどのセンサ等をつけることなく、アレイの形状を推定することができる。
【0040】
図7は、本発明の実施形態を説明する図であり、
図1の受信処理装置103をコンピュータ装置200に実装した場合の構成を説明する図である。
図7を参照すると、コンピュータ装置200は、プロセッサ201と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の半導体メモリ等(あるいは、HDD(Hard Disk Drive)等であってもよい)の記憶装置202と、表示装置203と、
図1の送受信制御装置101や受信素子104に接続するインタフェース204を備えている。プロセッサ201はDSP(Digital Signal Processor)であってもよい。記憶装置202に格納されたプログラムを実行することで、プロセッサ201は、
図3の受信処理装置103の処理を実行する。
【0041】
なお、
図2では、艦船からえい航されるラインアレイの例を示したが、本実施形態は、複数の受信素子の相対位置を推定したい場合に広く用いることができる。
【0042】
また、
図3では、説明の簡易化のため、方位計算処理1032は、隣接する2つの受信素子104の受信データ1031を用いているが、方位計算処理1032で用いる受信データは、必ずしも隣接していなくてもよいことは勿論である。例えば方位計算処理1032は、3つ以上の受信データ1031から計算してもよい。
【0043】
方位計算処理1032について、受信素子間距離dが音波の波長より大きい場合に、複数の波長の音波を用いる処理について説明したが、ビーム中心の近い二つのビームを作り、その位相差から、到来方位を求めるなどの処理を用いることもできる。
【0044】
本実施形態において、アレイ105の受信素子104で受信する音波は、
図2に例示したような、送信装置102からの直接波だけでなく、例えば、目標からの反射波など時間情報の含まれる音波であってもよい。目標が発する音の中には、エンジン等を発生源として定常的に発生する音と、船の操舵時等に短い時間だけ発生する音がある。短い時間だけ発生する過渡音はトランジェント信号と呼ばれる。アレイ105の受信素子104で受信する音波は、目標からのトランジェント信号であってもよい。
【0045】
なお、上記の特許文献1、2の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施の形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ乃至選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
100 ソーナーシステム
101 送受信制御装置
102 送信装置
103 受信処理装置
104、1041~104N 受信素子
105 ラインアレイ
106 ケーブル
110 艦船
200 コンピュータ装置
201 プロセッサ
202 記憶装置
203 表示装置
204 インタフェース
1031 受信データ
1032 方位計算処理
1033 形状推定処理