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特許7596731状態変化追跡装置、X線撮影システム、検査対象物の状態変化追跡方法、及び検査対象物の寿命推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】状態変化追跡装置、X線撮影システム、検査対象物の状態変化追跡方法、及び検査対象物の寿命推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/041 20180101AFI20241203BHJP
【FI】
G01N23/041
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020189980
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079043
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】有本 直
(72)【発明者】
【氏名】太田 生馬
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100860(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159469(WO,A1)
【文献】特開2019-207156(JP,A)
【文献】百生敦ら,“高分子ブレンド相分離 in situ 位相CT計測”,Photon Factory Activity Report 2014 #32(2015) B,2015年,インターネット<URL:http://pfwww.kek.jp/acr/2014pdf/part_b/pf14b0245.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/84-21/958
G01N 29/00-29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定環境下におかれた検査対象物をX線タルボ撮影装置によって経時的に撮影した複数の再構成画像により、前記検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する状態変化追跡部を、備え
前記状態変化追跡部は、
経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出する、
状態変化追跡装置。
【請求項2】
前記状態変化追跡部は、
前記特定環境下に前記検査対象物が置かれた経過時間に対して、前記特徴量をプロットして検量線を作成する、
請求項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項3】
前記X線タルボ撮影装置によって撮影された前記検査対象物の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定する寿命推定部を、更に備え、
前記寿命推定部は、
新たな検査対象物の再構成画像から特徴量を抽出し、前記状態変化追跡部により生成された前記検量線に当該特徴量を外挿し、当該新たな検査対象物の寿命を推定する、
請求項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項4】
経時的に撮影された検査対象物の前記複数の再構成画像を位置合わせする位置合わせ部を更に備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項5】
複数撮影された前記再構成画像における検査対象物の形状及び/又は被写体を取得し、取得した前記形状及び/又は前記被写体に基づいて、前記再構成画像の傾き、位置、大きさを補正する補正部を更に備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項6】
前記特定環境とは、特定の化学物質にさらされている環境である、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項7】
前記特定環境とは、応力を受けている環境である、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項8】
前記特定環境とは、加熱または冷却されている環境である、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項9】
前記検査対象物は、樹脂を主成分として含有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項10】
前記再構成画像は、吸収画像、微分位相画像、及び小角散乱画像を含み、タルボ効果によって生成されるタルボ画像である、
請求項1からのいずれか1項に記載の状態変化追跡装置。
【請求項11】
特定環境下におかれた検査対象物をX線タルボ撮影装置によって経時的に撮影した複数の再構成画像により、前記検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する状態変化追跡部を、備え
前記状態変化追跡部は、
経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出する、
X線撮影システム。
【請求項12】
X線タルボ撮影装置によって経時的に撮影された検査対象物の複数の再構成画像を生成するステップと、
状態変化追跡部が前記複数の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡するステップと、
前記状態変化追跡部が、経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出するステップと、を含む、
検査対象物の状態変化追跡方法。
【請求項13】
X線タルボ撮影装置によって撮影された検査対象物の複数の再構成画像を生成するステップと、
状態変化追跡部が、前記複数の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡するステップと、
前記状態変化追跡部が、経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出するステップと、
前記状態変化追跡部が、特定環境下に前記検査対象物が置かれた経過時間に対して、前記特徴量をプロットして検量線を作成するステップと、
寿命推定部が、前記複数の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定するステップと、
前記寿命推定部が、新たな検査対象物の再構成画像から特徴量を抽出し、前記状態変化追跡部により生成された前記検量線に当該特徴量を外挿し、当該新たな検査対象物の寿命を推定するステップと、を含む、
検査対象物の寿命推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態変化追跡装置、X線撮影システム、検査対象物の状態変化追跡方法、及び検査対象物の寿命推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波をステンレスの溶接部に照射し、微小欠陥から反射される反射信号を解析することにより、溶接部の推定寿命を導出する余寿命評価方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的に、特許文献1の請求項1には、「高クロム鋼で形成された溶接部に生じる微小欠陥に基づいて、前記溶接部の余寿命を評価する余寿命評価方法であって、超音波が照射された前記溶接部に生じた微小欠陥から反射される反射信号を解析して解析信号を取得する解析信号取得工程と、取得した前記解析信号から、前記解析信号と前記微小欠陥の個数密度との相関関係を示す第1相関データに基づいて、前記微小欠陥の推定個数密度を導出する微小欠陥個数密度推定工程と、前記推定個数密度から、前記微小欠陥の個数密度と前記溶接部の余寿命との相関関係を示す第2相関データに基づいて、前記溶接部の推定余寿命を導出する余寿命推定工程と、を備えたことを特徴とする余寿命評価方法。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-11521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、検査対象物であるサンプルの寿命を推定する場合、サンプルを加速試験環境等に置いて、実際に限界状態に達するまで試験を実施することで、寿命に関する知見を得ている。この場合、検査対象物が限界状態に達するまで加速試験を実施するため、当該試験が終了するまで、相当な時間を要する。
【0006】
また、一般的な寿命推定方法では、主として、人間の感覚(視覚、触覚など)による官能評価により検査対象物を評価する。そのため、評価者の主観的な判断によりバラつきが生じやすく、精度が低くなってしまう。また、人間による官能評価は定性的であり、検査対象物が限界に達するまでの途中経過が判らないという問題もある。
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明では、状態変化追跡装置、X線撮影システム、検査対象物の状態変化追跡方法、及び検査対象物の寿命推定方法において、寿命推定のための試験時間を短くすると共に、寿命推定の指標を定量化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記の目的は、下記の手段によって達成される。
(1)特定環境下におかれた検査対象物をX線タルボ撮影装置によって経時的に撮影した複数の再構成画像により、前記検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する状態変化追跡部を、備え
前記状態変化追跡部は、
経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出する、
状態変化追跡装置。
【0010】
(2)前記状態変化追跡部は、
前記特定環境下に前記検査対象物が置かれた経過時間に対して、前記特徴量をプロットして検量線を作成する、
(1)に記載の状態変化追跡装置。
【0011】
(3)前記X線タルボ撮影装置によって撮影された前記検査対象物の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定する寿命推定部を、更に備え、
前記寿命推定部は、
新たな検査対象物の再構成画像から特徴量を抽出し、前記状態変化追跡部により生成された前記検量線に当該特徴量を外挿し、当該新たな検査対象物の寿命を推定する、
(2)に記載の状態変化追跡装置。
【0012】
(4)経時的に撮影された検査対象物の前記複数の再構成画像を位置合わせする位置合わせ部を更に備える、
(1)から(3)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0013】
(5)複数撮影された前記再構成画像における検査対象物の形状及び/又は被写体を取得し、取得した前記形状及び/又は前記被写体に基づいて、前記再構成画像の傾き、位置、大きさを補正する補正部を更に備える、
(1)から(4)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0014】
(6)前記特定環境とは、特定の化学物質にさらされている環境である、
(1)から(5)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0015】
(7)前記特定環境とは、応力を受けている環境である、
(1)から(5)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0016】
(8)前記特定環境とは、加熱または冷却されている環境である、
(1)から(5)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0017】
(9)前記検査対象物は、樹脂を主成分として含有する、
(1)から(8)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0018】
(10)前記再構成画像は、吸収画像、微分位相画像、及び小角散乱画像を含み、タルボ効果によって生成されるタルボ画像である、
(1)から(9)のいずれか1つに記載の状態変化追跡装置。
【0019】
(11)特定環境下におかれた検査対象物をX線タルボ撮影装置によって経時的に撮影した複数の再構成画像により、前記検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する状態変化追跡部を、備え、
前記状態変化追跡部は、
経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出する、
X線撮影システム。
【0020】
(12)X線タルボ撮影装置によって経時的に撮影された検査対象物の複数の再構成画像を生成するステップと、
状態変化追跡部が前記複数の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡するステップと、
前記状態変化追跡部が、経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出するステップと、を含む、
検査対象物の状態変化追跡方法。
【0021】
(13)X線タルボ撮影装置によって撮影された検査対象物の複数の再構成画像を生成するステップと、
状態変化追跡部が、前記複数の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡するステップと、
前記状態変化追跡部が、経時的に撮影された前記複数の再構成画像を用いて、前記検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する前記再構成画像の特徴量を抽出して、前記検査対象物の寿命に対応する前記特徴量の閾値を導出するステップと、
前記状態変化追跡部が、特定環境下に前記検査対象物が置かれた経過時間に対して、前記特徴量をプロットして検量線を作成するステップと、
寿命推定部が前記再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定するステップと、
前記寿命推定部が、新たな検査対象物の再構成画像から特徴量を抽出し、前記状態変化追跡部により生成された前記検量線に当該特徴量を外挿し、当該新たな検査対象物の寿命を推定するステップと、を含む、
検査対象物の寿命推定方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、寿命推定のための試験時間を短くすると共に、寿命推定の指標を定量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態に係るX線撮影システムの構成を示すブロック図である。
図2】X線タルボ撮影装置の全体構成を表す概略図である。
図3】本実施形態に係るX線撮影システムのタルボ干渉計の原理を示す説明図である。
図4】X線タルボ撮影装置の第1格子、及び第2格子を示す説明図である。
図5】状態変化追跡装置における特徴量データのデータベースを生成する処理を示したフローチャートである。
図6】状態変化追跡装置のCPUの状態変化追跡部が、経過時間と相関する特徴量を抽出する概念を示した説明図である。
図7】状態変化追跡装置のCPUの状態変化追跡部が、検査対象物の寿命に対応する特徴量の閾値を推定するための検量線のグラフを示す説明図である。
図8】状態変化追跡装置のCPUの寿命推定部が、検査対象物の寿命を推定する処理を示したフローチャートである。
図9】状態変化追跡装置のCPUの寿命推定部が、新たな検査対象物の寿命を推定した検量線のグラフを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は、適宜、省略する。
【0025】
[全体構成]
図1は、本実施の形態に係るX線撮影システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係るX線撮影システム100は、X線タルボ撮影装置1、コントローラ19、画像処理装置2、及び状態変化追跡装置20を備えて構成されている。X線タルボ撮影装置1は、コントローラ19とバスを介して、画像処理装置2、及び状態変化追跡装置20に、通信可能に接続されている。
【0026】
なお、本実施形態では、X線撮影システム100は、状態変化追跡装置20において、後述するX線タルボ撮影装置1で撮影されたタルボ画像(再構成画像)を取得し、タルボ画像の信号強度又は信号分布(再構成画像の特徴量)を抽出できればよいため、X線タルボ撮影装置1を必須の構成要素としていない。
【0027】
<X線タルボ撮影装置について>
図2は、X線タルボ撮影装置1の全体構成を表す概略図である。X線タルボ撮影装置1は、X線発生装置11、線源格子12、被写体台13、第1格子14、第2格子15、X線検出器16、支柱17、及び基台部18を備えて構成されている。
【0028】
本実施形態のX線タルボ撮影装置1は、線源格子12を備えるタルボ・ロー干渉計を用いた構成が採用されている。線源格子12は、マルチ格子、マルチスリット、及びG0格子を備えて構成されている。なお、X線タルボ撮影装置1は、例えば、線源格子12を備えず、第1格子(G1格子ともいう。)14と第2格子(G2格子ともいう。)15のみを備えるタルボ干渉計を用いた構成を採用することもできる。
【0029】
X線タルボ撮影装置1は、被写体台13に対して所定位置にある被写体Hのモアレ画像Mo(図3参照)を縞走査法の原理に基づく方法で撮影する。そして、画像処理装置2は、撮影されたモアレ画像Moをフーリエ変換法で解析することにより、少なくとも3種類の画像(二次元画像)を再構成する。
【0030】
ここで、縞走査法とは、複数の格子のうちの1つを格子のスリット周期の1/M(Mは、正の整数、吸収画像は、M>2、微分位相画像と小角散乱画像は、M>3)ずつスリット周期方向に移動させ、M回撮影したモアレ画像Moを用いて再構成を行うことにより、高精細の再構成画像を得る方法である。
【0031】
また、フーリエ変換法は、画像処理装置2において、モアレ画像Moをフーリエ変換し、微分位相画像等の画像を再構成して生成する方法である。
【0032】
ここで、まず、タルボ干渉計及びタルボ・ロー干渉計に共通する原理について、図3を用いて説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係るX線撮影システム100のタルボ干渉計の原理を示す説明図である。なお、図3では、タルボ干渉計の場合が示されているが、タルボ・ロー干渉計の場合も基本的に同様に説明される。
【0034】
図3におけるz方向は、図2のX線タルボ撮影装置1における鉛直方向に対応し、図3におけるx、y方向は、図2のX線タルボ撮影装置1における水平方向(前後、左右方向)に対応する。
【0035】
図4は、本実施形態のX線タルボ撮影装置1の線源格子12、第1格子14、及び第2格子15を示す説明図である。
【0036】
図4に示すように、線源格子12、第1格子14及び第2格子15には、X線の照射方向であるz方向と直交するx方向に、所定の周期dで複数のスリットSが配列されて形成されている。このようなスリットSの配列は、一次元格子とされており、また、x方向及びy方向にスリットSが配列されて形成されたものは二次元格子とされている。
【0037】
タルボ・ロー干渉計の場合には、線源格子12(図2参照)がX線の照射方向であるz方向と直交するx方向に、所定の周期dで複数のスリットSが配列されて形成される。
【0038】
なお、図4では、本実施形態の線源格子12、第1格子14、第2格子15について、一例として、一次元格子が採用されているが、二次元格子が採用されてもよい。
【0039】
また、図3に示すように、X線発生装置11のX線源11a(図示せず)から照射されたX線が第1格子14を透過すると、透過したX線は、z方向に一定の間隔で像を結ぶ。この像を自己像(格子像等ともいう。)といい、このように自己像がz方向に一定の間隔をおいて形成される現象をタルボ効果という。
【0040】
すなわち、タルボ効果とは、図4に示すように一定の周期dでスリットSが設けられた第1格子14を可干渉性(コヒーレント)の光が透過すると、光の進行方向に一定の間隔でその自己像を結ぶ現象をいう。
【0041】
なお、タルボ・ロー干渉計の場合、X線発生装置11のX線源11a(図示せず)から照射されたX線は、線源格子12(図2参照)で多光源化され、第1格子14を透過する。
【0042】
ここで、本実施の形態では、タルボ効果によって生成される画像をタルボ画像という。上述したように、吸収画像、微分位相画像及び小角散乱画像は、モアレ画像Moを再構成した再構成画像であり、また、上述したタルボ効果によって生成されるタルボ画像である。なお、タルボ効果は、タルボ干渉計によるタルボ効果のみならず、タルボ・ロー干渉計によるタルボ効果およびロー効果(G0格子に起因して得られる)を合わせた効果も兼ねて含む語として用いる。
【0043】
また、図3に示すように、第1格子14の自己像が像を結ぶ位置に、第1格子14と同様にスリットSが設けられた第2格子15を配置する。その際、第2格子15のスリットSの延在方向(すなわち図3ではx軸方向)が、第1格子14のスリットSの延在方向に対して略平行になるように配置すると、第2格子15上でモアレ画像Moが得られる。
【0044】
なお、図3では、モアレ画像Moを第2格子15上に記載すると、モアレ縞とスリットSとが混在し、視覚的に分かりにくくなるため、便宜的にモアレ画像Moを第2格子15から離して記載している。しかし、実際は、第2格子15上及びその下流側にモアレ画像Moが形成される。このモアレ画像Moは、第2格子15の直下に配置されるX線検出器16により撮影される。
【0045】
また、図2及び図3に示すように、X線発生装置11のX線源11a(図3では図示せず)と第1格子14との間に被写体Hが存在すると、被写体HによってX線の位相がずれるため、モアレ画像Moのモアレ縞が被写体Hの辺縁を境界に乱れる。一方、図示を省略するが、X線発生装置11のX線源11aと第1格子14との間に被写体Hが存在しなければ、モアレ縞のみのモアレ画像Moが現れる。
【0046】
このように、タルボ干渉計及びタルボ・ロー干渉計は、X線の位相のずれによりモアレ画像Moのモアレ縞が被写体Hの辺縁を境界に乱れる原理を利用して、タルボ画像を生成する。
【0047】
この原理に基づいて、本実施形態のX線タルボ撮影装置1は、図2に示すように、第2のカバーユニット130内において、第1格子14の自己像が像を結ぶ位置に、第2格子15が配置されている。また、上述したように、第2格子15とX線検出器16(図2参照)とが離れるとモアレ画像Moがぼやけるため(図3参照)、本実施形態では、X線検出器16は、第2格子15の直下に配置されている。また、本実施形態では、第2格子15を、シンチレーター又はアモルファスセレンなどの発光材料で構成し、第2格子15とX線検出器16とを一体化させてもよい。
【0048】
第2のカバーユニット130は、人又は及び物が、第1格子14、第2格子15、又はX線検出器16にぶつかったり又は触れたりしないようにするとともに、X線検出器16を防護するために設けられる。
【0049】
ここで、X線検出器16は、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が、二次元状(マトリクス状)に配置され、変換素子により生成された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。そして、本実施形態では、X線検出器16は、第2格子15上に形成されるX線の像である上記のモアレ画像Moを変換素子ごとの画像信号として撮影する。なお、X線検出器16の画素サイズは、例えば、10~300(μm)であり、さらに好ましくは50~200(μm)である。
【0050】
X線検出器16には、FPD(Flat Panel Detector)を用いることができる。FPDは、検出されたX線を、光電変換素子を介して電気信号に変換する間接変換型と、検出されたX線を直接的に電気信号に変換する直接変換型とがあり、何れの変換型を用いてもよい。
【0051】
間接変換型は、CsIやGd2O2S等のシンチレータプレートの下に、光電変換素子がTFT(薄膜トランジスタ)とともに2次元状に配置されて各画素を構成する。X線検出器16に入射したX線がシンチレータプレートに吸収されると、シンチレータプレートが発光する。この発光した光により、各光電変換素子に電荷が蓄積され、蓄積された電荷は画像信号として読み出される。
【0052】
直接変換型は、アモルファスセレンの熱蒸着により、100~1000(μm)の膜圧のアモルファスセレン膜がガラス上に形成され、2次元状に配置されたTFTのアレイ上にアモルファスセレン膜と電極が蒸着される。アモルファスセレン膜がX線を吸収するとき、電子正孔対の形で物質内に電圧が遊離され、電極間の電圧信号がTFTにより読み取られる。なお、X線検出器16は、CCD(Charge Coupled Device)、又はX線カメラの撮影手段を使用してもよい。
【0053】
また、X線タルボ撮影装置1は、縞走査法を用いてモアレ画像Moを、複数枚撮影するようになっている。すなわち、X線タルボ撮影装置1は、第1格子14と第2格子15との相対位置を、図2の位置から、図3におけるx軸方向(すなわち、スリットSの延在方向(y軸方向)に直交する方向)にずらしながら、モアレ画像Moを複数枚撮影する。そして、X線タルボ撮影装置1は、撮影した複数枚分のモアレ画像Moの画像信号を画像処理装置2に送信する。
【0054】
このように、X線タルボ撮影装置1は、縞走査法によりモアレ画像Moを複数枚撮影するために、第1格子14をx軸方向に所定量ずつ移動させている。なお、X線タルボ撮影装置1は、第1格子14を移動させる代わりに、第2格子15を移動させてもよく、又は、第1格子14と第2格子15の両方を移動させてもよい。
【0055】
また、X線タルボ撮影装置1は、第1格子14と第2格子15との相対位置を固定したままモアレ画像Moを1枚だけ撮影し、画像処理装置2は、その撮影された1枚のモアレ画像Moに対し、フーリエ変換法を用いて解析し、吸収画像、微分位相画像及び小角散乱画像を再構成してもよい。X線タルボ撮影装置1は、モアレ画像Moを1枚撮影した場合、その1枚のモアレ画像Moの画像信号を画像処理装置2に送信する。
【0056】
次に、X線タルボ撮影装置1における他の部分の構成について説明する。本実施形態のX線タルボ撮影装置1は、いわゆる縦型であり、X線発生装置11、線源格子12、被写体台13、第1格子14、第2格子15及びX線検出器16が、この順序で重力方向であるz方向に配置されている。すなわち、本実施形態では、z方向がX線発生装置11からのX線の照射方向になっている。
【0057】
X線発生装置11(図2参照)は、X線源11aとして、例えば、医療現場で広く一般に用いられているクーリッジX線源又は回転陽極X線源を備えている。また、それ以外のX線源を用いることも可能である。X線発生装置11は、焦点からX線をコーンビーム状に照射する。つまり、図2に示すように、z方向と一致するX線照射軸Caを中心軸として、X線発生装置11から離れるほどX線が広がるように照射される。このX線発生装置11によって照射される範囲を、X線照射範囲という。
【0058】
また、本実施形態では、X線発生装置11の下方に、線源格子12が設けられている。ここで、X線源11aの陽極の回転により生じるX線発生装置11の振動が線源格子12に伝わらないようにするために、本実施形態では、線源格子12は、基台部18の固定部材12aに取り付けられている。
【0059】
また、本実施形態では、X線発生装置11の振動が支柱17のX線タルボ撮影装置1の他の部分に伝播しないようにするために、X線発生装置11と支柱17との間に緩衝部材17aが設けられている。これにより、X線発生装置11の振動は、支柱17に伝播することが抑制されている。
【0060】
なお、本実施形態では、固定部材12aには、線源格子12の他、線源格子12を透過したX線の線質を変えるためのろ過フィルター(付加フィルターともいう。)112、照射されるX線の照射野を絞るための照射野絞り113、X線を照射する前にX線の代わりに可視光を被写体に照射して位置合わせを行うための照射野ランプ114が取り付けられている。
【0061】
線源格子12、ろ過フィルター112、及び照射野絞り113は、必ずしもこの順番に設けられる必要はない。また、本実施形態では、線源格子12の周囲には、それらを保護するための第1のカバーユニット120が配置されている。
【0062】
被写体台13は、被写体Hが載置される台である。被写体台13は、被写体Hをz軸回りに回転させる回転ステージとして機能する。上述した縞走査法を用いてモアレ画像Moを複数枚撮影する場合、X線タルボ撮影装置1は、被写体台13を異なる角度に回転させつつ、モアレ画像Moを複数枚撮影する。
【0063】
<被写体について>
図2及び図3に示す本実施形態における被写体Hは、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス等の単体もしくは複合素材が含まれる。複合素材とは、2つ以上の異なる材料を一体的に組み合わせた材料を表し、少なくとも2つの材料が相として存在するものを表す。
【0064】
このような複合素材として、例えば、炭素繊維やガラス繊維を強化繊維として用いたCFRP(Carbon-Fiber-Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスチック)、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics:炭素繊維強化熱可塑性プラスチック)、GFRP(Glass-Fiber-Reinforced Plastics:ガラス繊維強化プラスチック)に代表されるFRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)、セラミックス繊維を強化材とするCMC(Ceramic Matrix Composites:セラミック基複合材料)等が知られている。
【0065】
複合素材は、例えば、宇宙・航空機関係、自動車、船舶、つり竿の他、電気・電子・家電部品、パラボラアンテナ、浴槽、床材、屋根材等を始め、様々な製品等の構成部材として用いられる。
【0066】
また、広義には、例えば、合板のように複数種類の木材からなる複合素材も含まれる。その他、例えば、MMC(Metal Matrix Composites:金属基複合材料)コンクリート、鉄筋コンクリート等のように、繊維を含まずに構成された複合材料も含まれてもよい。
【0067】
複合素材に用いられる樹脂は、例えば、汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチックであるが、特にこれらに限定されない。例えば、強度などの所定の特性を付加するために、マイクロサイズやナノサイズの構造を持つフィラーが樹脂に添加された樹脂複合素材として用いられ、プラスチック成型加工した組成物も含まれる。フィラーには、有機材料、無機材料、磁性材料、金属材料が含まれる。
【0068】
例えば、プラスチック成型加工品に強度や剛性を求められる場合、樹脂として、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、POM(ポリアセタール)、PA(ポリアミド)などが使用され、フィラーとしては、GF(ガラス繊維)、アラミド繊維、マイカ(雲母)などが添加された複合材料が用いられる。また、プラスチック成型加工品が薄物である場合、液晶ポリマーが使用され、GFが添加された複合素材が用いられることがある。また、プラスチック成型加工品がプラマグである場合、樹脂としてナイロンが使用され、フィラーとしてストロンチウムフェライト、サマリウムコバルトなどが添加された複合素材が用いられる。
【0069】
このように、被写体Hである検査対象物は、樹脂を主成分として含有していてもよい。
【0070】
<コントローラについて>
図1に示すコントローラ19は、本実施形態では、CPU(Central Processing Unit)(図示せず)、ROM(Read Only Memory)(図示せず)、RAM(Random Access Memory)(図示せず)、入出力インターフェース(図示せず)等がバスに接続された汎用のコンピュータで構成されている。なお、コントローラ19は、本実施形態のような汎用のコンピュータではなく、専用の制御装置として構成されてもよい。また、コントローラ19は、操作部を含む入力手段(図示せず)、出力手段(図示せず)、記憶手段(図示せず)、通信手段(図示せず)等の適宜の手段や装置が設けられている。なお、出力手段には、X線タルボ撮影装置1の各種操作を行うために必要な情報、又は/及び生成された再構成画像を表示する表示部(図示せず)が含まれる。
【0071】
コントローラ19は、X線タルボ撮影装置1に対する全般的な制御を行うようになっている。すなわち、コントローラ19は、X線発生装置11に接続されており、X線源11aの管電圧、管電流、照射時間等を設定する。また、コントローラ19は、X線検出器16と外部の画像処理装置2等との信号やデータの送受信を中継するように構成することもできる。
【0072】
すなわち、コントローラ19は、被写体Hの再構成画像の生成に必要な1枚又は複数のモアレ画像Moを取得するための一連の撮影を行わせる制御部として機能する。
【0073】
<画像処理装置について>
図1に示す画像処理装置2は、X線タルボ撮影装置1から送信された、1枚又は複数枚のモアレ画像Moの画像信号を受信し、受信したモアレ画像Moに基づいて、吸収画像、微分位相画像及び小角散乱画像を再構成(すなわち、画像再構成)する。
【0074】
画像処理装置2は、画像処理として、モアレ画像Moをフーリエ変換法で解析することで、少なくとも3種類の画像(二次元画像)を再構成する。すなわち、画像処理装置2は、モアレ画像Moにおけるモアレ縞の平均成分を画像化した吸収画像(通常のX線の吸収画像と同一の画像である。)、モアレ縞の位相情報を画像化した微分位相画像、及びモアレ縞のVisibility(鮮明度)を画像化した小角散乱画像の3種類の再構成画像を生成する。なお、これらの3種類の再構成画像をさらに再合成し、多くの種類の再構成画像を生成することもできる。
【0075】
画像処理装置2は、X線タルボ撮影装置1から送信された1枚又は複数枚のモアレ画像Moを再構成した後、再構成画像を状態変化追跡装置20に送信する。
【0076】
<状態変化追跡装置について>
図1に示す状態変化追跡装置20は、例えば、汎用のコンピュータ(制御PC)で構成される。なお、状態変化追跡装置20は、これに限定されるものではなく、状態変化追跡装置20の機能の一部を図示しないネットワーク上に設け、通信によりデータを授受することで各処理を実行できるようにしてもよい。また、本実施形態は、下記に示す状態変化追跡装置20の機能を、画像処理装置2又はコントローラ19に設けてもよい。
【0077】
図1に示すように、本実施形態に係る状態変化追跡装置20は、CPU21、RAM22、記憶部23、入力部24、外部データ入力部25、表示部26、及び通信部27を備えて構成されている。
【0078】
CPU21は、記憶部23に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAM22に展開し、展開されたプログラムを実行することにより、各機能部を具現化する。具体的には、CPU21は、プログラムを実行することにより、画像取得部211、寿命推定部212、状態変化追跡部213、補正部214、及び位置合わせ部215を具現化する。
【0079】
画像取得部211は、X線タルボ撮影装置1によって撮影された検査対象物の再構成画像を取得する。なお、再構成画像は、吸収画像、微分位相画像、及び小角散乱画像を含み、タルボ効果によって生成されるタルボ画像のことである。以下、再構成画像は、タルボ画像のことをいう。状態変化追跡装置20は、特定環境下におかれた検査対象物の内部構造の変化をタルボ画像によって読み取ることができ、その情報を解析することで寿命を推定する。
【0080】
寿命推定部212は、X線タルボ撮影装置1によって撮影された検査対象物の再構成画像を画像取得部211によって取得し、この再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定する。この場合、寿命推定部212は、X線タルボ撮影装置1によって新たに撮影された検査対象物の再構成画像から特徴量を抽出し、状態変化追跡部213により生成された検量線にこの特徴量を外挿し、当該新たな検査対象物の寿命を推定する。
【0081】
状態変化追跡部213は、特定環境下におかれた検査対象物をX線タルボ撮影装置1によって経時的に撮影した複数の再構成画像により、検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する。更に状態変化追跡部213は、経時的に撮影された複数の再構成画像を用いて、検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する再構成画像の特徴量を抽出して、検査対象物の寿命に対応する特徴量の閾値を導出する。
【0082】
ここで、検査対象物の状態変化とは、例えば、クラック、ボイド等の欠陥の発生や成長、ヒケ、歪み、反り等の変形、樹脂流動、繊維配向などの変化等が該当する。より詳細には、例えば、クラックについては、状態変化追跡部213は、長さ、幅、深さ、本数等の変化を検査対象物の状態変化として追跡する。また、ボイドについては、状態変化追跡部213は、サイズ、個数等の変化を検査対象物の状態変化として追跡する。なお、クラックやボイド等の状態変化は、一例であり、これらに限定されるものではない。
【0083】
また、状態変化追跡部213は、特定環境下に検査対象物が置かれた経過時間に対して、特徴量をプロットして検量線を作成する。なお、再構成画像の特徴量は、例えば、後述する、タルボ画像の信号強度や信号強度分布などが該当する。
【0084】
ここで、特定環境下とは、例えば、特定の化学物質にさらされている環境、応力を受けている環境、加熱または冷却されている環境、などが挙げられる。
【0085】
なお、応力を受けている環境としては、例えば、検査対象物が引張り、圧縮、あるいは剪断応力などの外部応力を受けている環境や、残留応力などの内部応力を受けている環境が該当する。また、アニールなどの処理によって応力が緩和されている環境等もこれに含まれる。
【0086】
補正部214は、複数撮影された再構成画像における検査対象物の形状及び/又は被写体を取得し、取得した形状及び/又は被写体に基づいて、再構成画像の傾き、位置、大きさを補正する。
【0087】
位置合わせ部215は、経時的に撮影された検査対象物の複数の再構成画像を位置合わせする。
【0088】
RAM22は、CPU21により実行制御される各種処理において、記憶部23から読み出され、CPU21で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。
【0089】
記憶部23は、データベース23a,23bを備えて構成されている。記憶部23は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリにより構成される。記憶部23には、各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0090】
データベース23aは、状態変化追跡部213によって再構成画像から抽出した各位置の特徴量を、経過時間又は経過日数相当に関連付けた実測値(特徴量データという。)と、この実測値を直線に近似した検量線を格納するデータベースである。これにより、状態変化追跡部213は、検査対象物にクラックが発生した際に、このデータベース23aを参照し、経過時間と相関する特徴量を抽出し、検査対象物の寿命に対応する閾値を導出できる。検査対象物の寿命に対応する閾値は、抽出した特徴量に係る検量線をクラックが発生した経過時間まで外挿して導出する。なお、特徴量の閾値の導出は、図7を用いて後述する。なお、データベース23aには、経過時間と相関する特徴量に係る再構成画像の位置と、この特徴量に係る検量線の傾きも格納される。
【0091】
データベース23bは、新たな検査対象物の当該位置の特徴量に基づいて、新たな検査対象物に対する検量線を生成したデータ(検量線データという。)を格納するデータベースである。これにより、寿命推定部212は、新たな検査対象物の所定位置の特徴量の検量線を閾値に達するまで外挿することにより、新たな検査対象物の寿命までの経過時間又は経過日数相当を推定できる。なお、寿命の推定は、図9を用いて後述する。
【0092】
入力部24は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成される。入力部24は、キーボードで押下操作されたキーの押下信号やマウスによる操作信号を、入力信号としてCPU21に出力する。CPU21は、入力部24からの操作信号に基づいて、各種処理を実行する。
【0093】
外部データ入力部25は、外部装置(コントローラ19を含む)から取得したデータを状態変化追跡装置20に入力するためのものである。外部データ入力部25は、例えば、外部装置との有線又は無線によるデータ送受信を可能とするUSB(Universal Serial Bus:登録商標)ポート、Bluetooth(登録商標)、外部装置に相当する記録媒体からデータを読み込むドライブなど、様々なものを採用することができる。
【0094】
表示部26は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニターを備えて構成されている。表示部26は、CPU21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。例えば、表示部26は、画像処理装置2から受信した再構成画像を表示する。また、表示部26として、タッチパネルを採用する場合、表示部26は、入力部24としての機能も併せ持つ。
【0095】
通信部27は、通信インターフェースを備えており、ネットワーク上の外部装置、例えば、画像処理装置2と通信する。また、通信部27は、上述した外部データ入力部25と共用されるものとしてもよい。
【0096】
[特徴量データのデータベースの生成処理]
次に、上記の構成からなる状態変化追跡装置20の特徴量データのデータベース23aを生成する処理について、図1を参照しながら、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0097】
図5は、状態変化追跡装置20における特徴量データのデータベース23aを生成する処理を示したフローチャートである。なお、本実施形態では、検査対象物(被写体H)は、特定の化学物質にさらされている環境、応力を受けている環境、加熱または冷却されている環境などの特定環境下に置かれている。
【0098】
まず、状態変化追跡装置20のCPU21の画像取得部211は、X線タルボ撮影装置1によって定期的に撮影された検査対象物(被写体H)の再構成画像を、通信部27を介して、画像処理装置2から取得し、更に経過時間を取得する(ステップS001)。経過時間とは、この検査対象物が特定環境下に置かれてから、X線タルボ撮影装置1が検査対象物を撮影した時点までに経過した時間のことをいう。なお、画像取得部211は、定期的に撮影された検査対象物の複数の再構成画像を、1枚ずつ取得するものとする。
【0099】
次に、CPU21の位置合わせ部215は、定期的に撮影された検査対象物の再構成画像を位置合わせする(ステップS003)。なお、画像取得部211は、1枚目の再構成画像については、位置合わせを実行する必要がない。画像取得部211は、2枚目以降の再構成画像について、例えば、1枚目の再構成画像を基準として、2枚目以降の再構成画像を位置合わせする。
【0100】
CPU21の補正部214は、撮影された再構成画像における検査対象物の形状及び/又は被写体を取得し、1枚目に取得した形状及び/又は被写体に基づいて、2枚目以降の再構成画像の傾き、位置、大きさを補正する(ステップS005)。なお、補正部214は、1枚目の再構成画像については、補正をする必要がない。補正部214は、2枚目以降の再構成画像の形状及び/又は被写体について、例えば、1枚目の再構成画像の形状及び/又は被写体を基準として、2枚目以降の再構成画像の形状及び/又は被写体を補正する。これにより、検査対象物の各位置を、再構成画像の各位置に合わせることができる。
【0101】
次に、CPU21の状態変化追跡部213は、特定環境下の検査対象物を定期的に撮影した複数の再構成画像とその経過時間により、検査対象物の状態変化を非破壊にて追跡する。状態変化追跡部213は、経時的に撮影された複数の再構成画像とその経過時間を用いて、再構成画像の各位置の特徴量を抽出する(ステップS007)。
【0102】
状態変化追跡部213は、まず、1枚目の再構成画像の各位置の特徴量を抽出する。状態変化追跡部213は、1枚目の再構成画像の各位置の特徴量をデータベース23aに格納する。状態変化追跡部213は、2枚目以降の再構成画像の各位置の特徴量を、順次、データベース23aに格納する。
【0103】
ここで、再構成画像の各位置の特徴量とは、例えば、タルボ画像の各位置の信号強度や信号強度分布などが挙げられる。タルボ画像の各位置の信号強度とは、再構成画像(小角散乱画像、又は微分位相画像)の各画素における信号値の大小を意味する。また、タルボ画像の信号強度分布とは、ある領域にける信号強度のバラツキの程度を意味し、例えば、標準偏差などの統計量によって示すことが出来る。なお、タルボ画像の各位置の信号強度や信号強度分布は、特徴量の一例であり、特徴量は、これらに限定されるものではない。
【0104】
また、状態変化追跡部213は、抽出した再構成画像の各位置の特徴量を示すタルボ画像の信号強度又は信号分布をグラフの縦軸に、再構成画像の撮影時の経過時間を横軸にプロットし、最小二乗法などを用いて検量線を作成する(ステップS009)。すなわち、状態変化追跡部213は、特定環境下に検査対象物が置かれた経過時間に対して、再構成画像の各位置の特徴量を示すタルボ画像の信号強度又は信号分布をプロットし、これを最小二乗法などで直線に近似したグラフを作成する。
【0105】
状態変化追跡部213は、検査対象物を次に撮影するまでの間に、検査対象物のクラックの発生により検査対象物が限界に達したか否かを判定する。状態変化追跡部213は、検査対象物にクラックが発生した場合(ステップS011のYes)、ステップS013に進む。一方、検査対象物にクラックが発生していない場合(ステップS011のNo)、状態変化追跡部213は、ステップS001に戻る。そして、CPU21の画像取得部211は、次の再構成画像と経過時間とを取得し、2枚目以降の再構成画像に対してステップS003からステップS011までの処理を繰り返す。
【0106】
すなわち、状態変化追跡部213は、次に取得した再構成画像から、タルボ画像の信号強度又は信号分布を抽出し、タルボ画像の信号強度又は信号分布をグラフの縦軸に、経過時間をグラフの横軸にプロットして、最小二乗法などで直線に近似することにより、検査対象物にクラックが発生する直前までの検量線を作成する。
【0107】
ステップS013では、状態変化追跡部213は、クラック発生時点の経過時間と各特徴量の検量線から、経過時間と相関する特徴量を抽出する。樹脂部品にクラックが発生した場合、タルボ画像のクラック発生位置に相当する領域には、経過時間と相関する信号強度の変化又は信号分布の変化が発生している。そのため、状態変化追跡部213は、特徴量に変化が発生している位置を特定し、この位置に係る特徴量を抽出する。
【0108】
図6は、状態変化追跡装置20のCPU21の状態変化追跡部213が、経過時間と相関する特徴量を抽出する概念を示した説明図である。ステップS013において、状態変化追跡部213は、例えば、時間t0から順次、24時間(1日相当)刻みで、特定環境下におかれてから、経過時間t1,t2,・・・,t6まで、タルボ画像の信号強度(特徴量の一例)を抽出する。なお、図6では、図示しない経過時間t7において、クラックが発生するものとする。
【0109】
図6に示す外観は、ある樹脂部品の外観の画像(通常のX線の吸収画像)を示しており、タルボ画像は、同一の樹脂部品の対応する微分位相画像あるいは小角散乱画像を示している。図6に示すように、例えば、樹脂部品の外観の画像(通常のX線の吸収画像)には、経過時間t1,t2,・・・,t6と時間が経過しても、変化は何も表れていない。
【0110】
これに対して、タルボ画像には、地点P1では経過時間t1からt6まで経過しても、変化は何も表れていないが、地点P2では、経過時間t2からt6まで経過することで、経過時間と相関する信号強度の変化が発生している。
【0111】
すなわち、タルボ画像の地点P2において、経過時間t2では、信号強度の変化が発生しており、さらに経過時間t6では、クラックが発生する直前の信号強度の変化を示している。
【0112】
このように、樹脂部品にクラックが発生する場合、タルボ画像のクラック発生位置に相当する領域に、経過時間と相関する信号強度の変化又は信号分布の変化が発生する。このため、状態変化追跡部213は、タルボ画像の特徴量に変化が発生している位置を特定し(例えば、タルボ画像の地点P2)、この位置に係る特徴量を抽出する。
【0113】
図5に戻り、ステップS015において、状態変化追跡部213は、クラック発生時点の経過時間まで、ステップS13で抽出した特徴量の検量線を算出し、この検量線を外挿して、検査対象物の寿命に対応する特徴量を導出して閾値として決定し、データベース23aの生成処理を終了する。
【0114】
図7は、状態変化追跡装置20のCPU21の状態変化追跡部213が、検査対象物の寿命に対応する特徴量の閾値を推定するための検量線のグラフを示す説明図である。
【0115】
図7に示す検量線のグラフは、グラフの横軸に経過時間を示し、グラフの縦軸にタルボ画像の所定位置の特徴量(例えば、タルボ画像の所定位置(図6の地点P2)の信号強度)を示している。図7では、CPU21の状態変化追跡部213は、時間t0から順次、24時間(1日相当)刻みで、特定環境下におかれてから、経過時間t1,t2,・・・,t6まで、タルボ画像の信号強度(特徴量の一例)を抽出して丸印でプロットし、更にクラックが発生した寿命の経過時間t7を記入している。状態変化追跡部213は、タルボ画像の各位置の特徴量について、このグラフを作成して検量線を導出し、この検量線の傾きに基づいて、経過時間との相関性が高い特徴量を抽出する。
【0116】
ここで、特定環境下におかれてからの経過時間t7では、タルボ画像の地点P2(図6)においてクラックが発生している。タルボ画像のクラック発生位置の近傍の信号強度は、経過時間に相関して変化していることが多い。そのため、タルボ画像のクラック発生位置の近傍が、所定位置となる(例えば、図6の地点P2)。
【0117】
状態変化追跡部213は、この所定位置の特徴量の検量線を外挿して、経過時間t7でクラックが発生した時点のタルボ画像の当該所定位置の信号強度(再構成画像の特徴量)を推定して閾値Thに設定する。
【0118】
これにより、以降の検査対象物のタルボ画像の当該位置の信号強度(再構成画像の特徴量)がこの閾値Thに到達するときは、この検査対象物の寿命であると推定できる。
【0119】
このように、状態変化追跡部213は、定期的に複数撮影された複数の再構成画像を用いて、検査対象物が寿命に至るまで連続的に変化する再構成画像の各位置の特徴量を抽出する。
【0120】
これにより、状態変化追跡部213は、検査対象物の寿命に対応する特徴量の閾値を導出するためのデータベース23aを生成できる。
【0121】
なお、検査対象物ごとに再構成画像の特徴が異なり、また、特定環境下の違い、具体的には、特定の化学物質にさらされている環境、応力を受けている環境、加熱または冷却されている環境の違いによっても再構成画像の特徴が異なることが想定される。そのため、状態変化追跡部213は、検査対象物ごとにそれぞれ検量線を作成するとともに、特定環境ごとにそれぞれ検量線を作成することが望ましい。
【0122】
[検査対象物の寿命推定処理]
次に、上記の構成からなる寿命推定部212が、検査対象物(被写体H)の寿命を推定する処理について、図1を参照しながら、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0123】
図8は、寿命推定部212が、検査対象物(被写体H)の寿命を推定する処理を示したフローチャートである。なお、本実施形態では、検査対象物は、例えば、特定の化学物質にさらされている環境、応力を受けている環境、加熱または冷却されている環境、などの特定環境下に置かれているものとする。
【0124】
まず、状態変化追跡装置20のCPU21の画像取得部211は、X線タルボ撮影装置1によって撮影された新たな検査対象物の再構成画像を、通信部27を介して、画像処理装置2から取得する(ステップS101)。
【0125】
次に、CPU21の位置合わせ部215は、経時的に撮影された検査対象物の複数の再構成画像を、図5で示した特徴量データの生成処理時の1枚目の再構成画像を基準として位置合わせする(ステップS103)。
【0126】
なお、検査対象物の寿命推定処理では、再構成画像の撮影枚数は、少なくとも1枚あれば寿命を推定でき、また、複数枚あることが望ましい。また、経時的に撮影された複数の再構成画像は、定期的に撮影される必要はなく、任意の経過時間に撮影されてもよい。
【0127】
CPU21の補正部214は、複数撮影された再構成画像における検査対象物の形状及び/又は被写体を取得し、特徴量データの生成処理時の1枚目の再構成画像で取得した形状及び/又は被写体に基づいて、寿命推定処理の再構成画像の傾き、位置、大きさを補正する(ステップS105)。
【0128】
CPU21の寿命推定部212は、新たな検査対象物の再構成画像から、所定位置の特徴量を抽出する。この所定位置は、図5に示す特徴量データの生成処理によって抽出されたものであり、この検査対象物において、クラックが発生しやすい位置である(例えば、図6のタルボ画像の地点P2)。
【0129】
寿命推定部212は、データベース23aに格納された検量線の傾きを、この所定位置の特徴量に適用して、検量線を外挿し、この検量線が閾値に達するまでの時間から当該新たな検査対象物の寿命を推定する(ステップS107)。
【0130】
これにより、寿命推定部212は、特定環境下におかれてから、初期段階で限界(例えばクラック発生)に達するまでの期間を予測できる。また、タルボ画像の特徴量の変化に基づいて寿命を推定しているので、寿命推定の指標を定量化できる。
【0131】
寿命推定部212は、例えば、新たな検査対象物である1枚のタルボ画像(再構成画像)から信号強度を抽出した場合、データベース23aを参照し、新たな検査対象物の所定位置の特徴量の新たな検量線(検量線データ)を作成する。
【0132】
このように、寿命推定部212は、新たな検査対象物であるタルボ画像の所定位置の信号強度から、所定位置の特徴量に係る新たな検量線を作成し、この検量線を外挿して、所定位置の特徴量の閾値に到達するまでの経過時間又は経過日数相当を寿命として推定する。そして、寿命推定部212は、作成した新たな検量線データをデータベース23bに格納する。
【0133】
ステップS107において、寿命推定部212は、新たな検査対象物の寿命である経過時間又は経過日数相当を推定すると、寿命推定処理を終了する。
【0134】
図9は、状態変化追跡装置20のCPU21の寿命推定部212が、新たな検査対象物の寿命を推定した検量線のグラフを示す説明図である。
【0135】
図9に示す検量線のグラフは、グラフの横軸に経過時間を示し、グラフの縦軸に、タルボ画像の信号強度(タルボ画像の特徴量)を示している。図9では、例えば、新たな検査対象物であるタルボ画像の信号強度が1つの場合、寿命推定部212は、データベース23aを参照し、タルボ画像の信号強度F1から、その新たな検査対象物の特徴量の閾値Thに到達するまでの新たな検量線を作成する。
【0136】
これにより、寿命推定部212は、新たな検査対象物であるタルボ画像の信号強度F1から、その新たな検査対象物が特定環境下におかれてから、特徴量が閾値Thに到達するまでの経過時間t、すなわち新たな検査対象物の寿命を導出できる。これにより、寿命推定のための試験時間を短くすることができる。
【0137】
また、例えば、所定時間(所定日数)後に、この新たな検査対象物タルボ画像を再び撮影した場合、寿命推定部212は、タルボ画像の信号強度F1,F2の変位と、データベース23aとに基づいて、その新たな検査対象物の特徴量の閾値Thに到達するまでの新たな検量線を作成する。
【0138】
これにより、寿命推定部212は、新たな検査対象物であるタルボ画像の信号強度F2から、その新たな検査対象物が特定環境下におかれてから、特徴量の閾値Thに到達するまでの経過時間t、すなわち新たな検査対象物の寿命をより高精度に導出できる。
【0139】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、本実施形態に係るX線撮影システム100の状態変化追跡装置20のCPU21は、X線タルボ撮影装置によって撮影された検査対象物の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の寿命を推定する寿命推定部212を、備えて構成されている。
【0140】
寿命推定部212は、検査対象物の再構成画像から、タルボ画像の所定位置の信号強度又は信号分布(再構成画像の特徴量)を抽出し、この所定位置に係る信号強度又は信号分布に対応する検量線を作成できるので、当該検査対象物の寿命を短時間に推定できる。
【0141】
特に、本実施形態に係る状態変化追跡装置20の寿命推定部212は、検査対象物に対して、少なくとも1枚の再構成画像があれば、新しい検査対象物の検量線を作成できるので、特定環境下におかれてから、初期段階で限界(例えばクラック発生)に達する期間を予測でき、寿命推定のための試験時間を短縮できる。
【0142】
また、時間をあけて撮影した2枚以上の再構成画像がある場合には、タルボ画像の信号強度又は信号分布(再構成画像の特徴量)の変位と、データベース23aとに基づいて、より精度の高い検量線を作成できるので、より高精度に寿命を推定できる。
【0143】
さらに、再構成画像の信号強度又は信号分布などのような定量化された指標に基づいて寿命を推定しているので、人間の官能評価(定性評価)に比べて、客観的かつ高精度に検査対象物(被写体H)の寿命を推定できる。
【0144】
また、状態変化追跡装置20の寿命推定部212は、検査対象物ごとの特徴量(例えば、タルボ画像の信号強度又は信号分布)から、当該検査対象物の寿命を推定する。タルボ画像には、検査対象物の内部構造の変化が撮影されているので、検査対象物が限界に達するまでの途中経過を明確にすることができる。
【0145】
なお、本実施形態に係る状態変化追跡装置20のCPU21の寿命推定部212は、検査対象物の寿命として、クラックに限定されず、ボイド、ウェルド、微小クラック、繊維配向など、幅広く寿命の予測に適用できる。
【0146】
また、本実施形態に係る状態変化追跡装置20は、CPU21において、画像取得部211、寿命推定部212、状態変化追跡部213、補正部214、及び位置合わせ部215を備えて構成され、各処理を実行していたが、各処理の実行は、これに限定されるものではない。
【0147】
例えば、画像処理装置2は、画像取得部211、寿命推定部212、補正部214、及び位置合わせ部215の機能を備えて構成され、状態変化追跡装置20は、状態変化追跡部213の機能のみを備えて構成されてもよい。この場合、状態変化追跡部213は、例えば、手動により再構成画像から特徴量(タルボ画像の信号強度又は信号分布)を抽出して、手動により特徴量をプロットしてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1 X線タルボ撮影装置
2 画像処理装置
19 コントローラ
20 状態変化追跡装置
21 CPU
22 RAM
23 記憶部
23a,23b データベース
24 入力部
25 外部データ入力部
26 表示部
27 通信部
100 X線撮影システム
211 画像取得部
212 寿命推定部
213 状態変化追跡部
214 補正部
215 位置合わせ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9