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特許7596732振動デバイス及び振動デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】振動デバイス及び振動デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/02 20060101AFI20241203BHJP
   H03H 9/24 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H03H3/02 B
H03H9/24 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020190123
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079131
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】黒川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】寺平 成希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克也
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-241382(JP,A)
【文献】特開2014-192736(JP,A)
【文献】特開2018-101829(JP,A)
【文献】特開2020-036063(JP,A)
【文献】特開2018-201185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 3/007-3/06
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿った第1面を有する基部と
前記基部の前記第1面側に前記第1面と間隔を有して配置され、前記第1方向に沿っ
て延伸し、かつ、前記第1面に対向する側とは反対側に第2面を有している振動腕と、
前記基部の前記第1面に設けられ、前記振動腕の前記第1方向における一方の端と連
結している支持部と、
を有する振動デバイスの製造方法であって、
結晶シリコンからなる平板状のシリコン基板を準備する工程と、
ドライエッチングにより、前記シリコン基板の一方の面に開口を有し、所定の間隔を
有して並ぶ少なくとも2つの有底の長溝を形成する工程と、
ウェットエッチングにより、前記長溝の側面をエッチングして、前記シリコン基板の
厚さ方向における前記一方の面と前記長溝の底面との間で2つの前記長溝を連通させて
前記一方の面の2つの前記開口で挟まれた部分を前記第2面とする前記振動腕を形成する
工程と、を有する、
振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記長溝の前記側面は、前記シリコン基板の(110)面であり、
前記長溝の前記底面は、前記シリコン基板の(100)面である、
請求項1に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記振動腕は、前記振動腕の幅方向において前記第2面の両端に接続している2つの
面を有し、
前記2つの側面は、前記第2面から離れるにしたがって漸近している、
請求項1又は請求項2に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記2つの側面は、前記シリコン基板の(111)面である、
請求項3に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記振動腕の断面は、前記第1方向からの断面視で、台形形状である、
請求項3又は請求項4に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記所定の間隔をw、前記長溝の深さをd1としたとき、
0.354×d1×2>w
を満たしている、
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記長溝の幅をL、前記シリコン基板の厚さをtとしたとき、
d1+0.706×L<t
を満たしている、
請求項6に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記シリコン基板の前記一方の面において前記振動腕の前記第2面となる部分に圧電
膜を形成する工程を更に有する、
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の振動デバイスの製造方法。
【請求項9】
第1方向に沿った第1面を有する基部と
前記基部の前記第1面側に前記第1面と間隔を有して配置され、前記第1方向に沿っ
て延伸している振動腕と、
前記基部の前記第1面に設けられ、前記振動腕の前記第1方向における一方の端と連
結している支持部と、
前記振動腕の前記第1面に対向する面とは反対側の面である第2面に配置された圧電
膜と、を有し、
前記振動腕、前記基部、および、前記支持部は、単結晶シリコンからなるシリコン基
で構成され
前記振動腕は、前記振動腕の幅方向において前記第2面の両端に接続している2つの
側面を有し、
前記2つの側面は、前記第2面から離れるにしたがって漸近している、
振動デバイス。
【請求項10】
前記振動腕は、前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って並んだ第1振動腕と
第2振動腕とを有し、
前記基部は、前記第1面に凹部を含み、
前記第1振動腕の幅をW、前記第1振動腕と前記第2振動腕との距離をL、前記振動
腕の前記第2面から前記第1面の前記凹部の底部までの距離をd2としたとき、
(W/0.708)+0.706×L<d2
を満たしている、
請求項9に記載の振動デバイス。
【請求項11】
前記振動腕の断面は、前記振動腕の延伸する方向からの断面視で、台形形状である、
請求項9又は請求項10に記載の振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス及び振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン半導体層上に圧電薄膜を含む励振部が構成されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造の振動子が知られている。例えば下記の特許文献1には、複数の振動腕の各一端が基部に接続されている振動子が開示されている。この振動子は、SOI(Silicon on Insulator)基板を用い、振動腕となる表面シリコン層上に、2層の酸化ケイ素層を積層し、酸化ケイ素層上に励振部が設けられている構造を有している。そして、表面シリコン層の厚みと、第1の酸化ケイ素層の厚みと、第2の酸化ケイ素層の厚みと、の比を所定条件にすることで、周波数温度係数TCF(Temperature Coefficient of Frequency)を小さくし、良好な周波数温度特性を有する振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-101829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の振動子は、高価なSOI基板を用いて製造しているので、振動子の低価格化が難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
振動デバイスの製造方法は、表面に凹部が設けられた第1面を有する基部と、前記第1面から前記第1面の法線方向に突出した支持部と、前記支持部から前記第1面と間隙を有して前記第1面に沿って延伸している振動腕と、を有する振動デバイスの製造方法であって、平板状の単結晶のシリコン基板を準備する工程と、ドライエッチングにより、前記シリコン基板の一方の面である第2面に、所定の間隔を有して並ぶ少なくとも2つの有底の長溝を形成する工程と、ウェットエッチングにより、前記長溝の側面をエッチングして、前記シリコン基板の厚さ方向における前記第2面と前記長溝の底面との間で2つの前記長溝を連通させて前記振動腕を形成する工程と、を有する。
【0006】
振動デバイスは、表面に凹部が設けられた第1面を有する基部と、前記第1面から前記第1面の法線方向に突出した支持部と、前記支持部から前記第1面と間隙を有して前記第1面に沿って延伸している振動腕と、前記振動腕の前記第1面に対向する面とは反対側の面である第2面に配置された圧電膜と、を有し、前記振動腕は、単結晶のシリコン基板からなり、前記振動腕は、前記振動腕の幅方向において前記第2面の両端に接続している2つの側面を有し、前記2つの側面は、前記第2面から離れるにしたがって漸近している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る振動デバイスの概略構成を示す平面図。
図2図1のA-A線での断面図。
図3図1のB-B線での断面図。
図4】シリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図5】シリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図6】長溝を有するシリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図7】長溝を有するシリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図8】本実施形態に係る振動デバイスに用いたシリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図9】本実施形態に係る振動デバイスに用いたシリコン基板のエッチング特性を説明する断面図。
図10】振動デバイスの製造方法を示すフローチャート図。
図11】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図12】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図13】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図14】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図15】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図16】振動デバイスの製造方法を示す断面図。
図17】第2実施形態に係る振動デバイスの概略構成を示す平面図。
図18図17のC-C線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
1.1.振動デバイス
先ず、第1実施形態に係る振動デバイス1について、3つの振動腕を有する3脚音叉振動子を一例として挙げ、図1図2、及び図3を参照して説明する。
尚、説明の便宜上、以降における図10を除く各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸の矢印側を「プラス側」、矢印と反対側を「マイナス側」、Z方向のプラス側を「上」、Z方向のマイナス側を「下」とも言う。
【0009】
振動デバイス1は、図1図2、及び図3に示すように、基部20と、支持部22と、3つの振動腕24と、温度特性調整膜12と、圧電駆動部30と、を有している。また、基部20、支持部22、及び3つの振動腕24は、単結晶のシリコン基板10から形成されている。
【0010】
基部20は、表面に複数の凹部21が設けられた第1面20aを有している。支持部22は、基部20の第1面20aから第1面20aの法線方向であるZ方向プラス側に突出している。3つの振動腕24は、基部20の第1面20aと間隙を有し、支持部22から第1面20aに沿って、Y方向プラス側にそれぞれ延伸している。
また、Z方向からの平面視で、3つの振動腕24を囲む枠部23が設けられており、枠部23は、支持部22と基部20とに連結している。
【0011】
3つの振動腕24は、それぞれ振動腕24の幅方向であるX方向において第2面20bの両端に接続している2つの側面25を有し、2つの側面25は、第2面20bから離れるにしたがって漸近している。つまり、振動腕24の延伸する方向であるY方向からの断面視で、三角形状に形成されている。また、3つの振動腕24は、Z方向からの平面視で、X方向に配列されると共に、X軸とY軸とで特定されるXY平面に沿ったシリコン基板10の一方の面である第2面20bに、X方向プラス側から第1振動腕24a、第2振動腕24b、第3振動腕24cの順に配置されている。
【0012】
温度特性調整膜12は、3つの振動腕24の第2面20b上に配置され、振動腕24の厚みと、温度特性調整膜12の厚みと、の比を所定条件にすることで、周波数温度係数TCF(Temperature Coefficient of Frequency)を小さくし、良好な周波数温度特性を有する振動デバイス1を構成することができる。尚、温度特性調整膜12は、酸化ケイ素(SiO2)膜である。また、シリコン基板10の第2面20bと温度特性調整膜12との間には、シリコン基板10をエッチング加工する際にエッチングしない領域を保護する酸化膜10aが配置されている。尚、この酸化膜10aは、シリコン基板10を熱酸化して生成する酸化ケイ素膜である。
【0013】
圧電駆動部30は、振動腕24の第1面20aに対向する面とは反対側の面である第2面20bに配置されている。尚、振動腕24の第2面20bと圧電駆動部30との間には、酸化膜10aと温度特性調整膜12とが配置されている。
圧電駆動部30は、振動腕24の第2面20b側に設けられている第1電極31と、圧電膜32と、第2電極33と、を備えた積層構造となっている。
【0014】
複数の配線34は、隣り合う振動腕24を逆相で振動させるように、第1電極31及び第2電極33に電気的に接続されている。また、複数の配線34は、電極パッド35と電気的に接続されている。具体的には、第1振動腕24aの第1電極31は、第2振動腕24bの第2電極33と第3振動腕24cの第1電極31とに配線34を介して電気的に接続され、第1振動腕24aの第2電極33は、第2振動腕24bの第1電極31と第3振動腕24cの第2電極33とに配線34を介して電気的に接続されている。2つの電極パッド35間に外部から電圧を印加することにより、隣り合う振動腕24を逆相で振動させることができる。
【0015】
なお、これらを構成する材料としては、例えば、圧電膜32は、窒化アルミニウム(AlN)等で構成され、第1電極31及び第2電極33は、窒化チタン(TiN)等で構成され、複数の配線34及び電極パッド35は、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等で構成されている。
【0016】
2つの電極パッド35を介して、第1電極31と第2電極33との間に電圧が印加されると、それによって圧電膜32が伸縮して振動腕24が振動する。振動腕24は、圧電駆動部30によって、第2面20bと直交するZ方向に屈曲振動、所謂、第2面20bに沿わない方向に変位する面外振動をする。
【0017】
以上で述べたように、本実施形態の振動デバイス1は、安価な単結晶のシリコン基板10で形成されているため、低価格の振動デバイス1を得ることができる。
【0018】
1.2.エッチング特性
次に、振動デバイス1の製造方法に関わるシリコン基板10のエッチング特性について、図4図9を参照して説明する。
【0019】
一般的に、アルカリ性水溶液(KOH、TMAH)を用いた単結晶シリコンのウェットエッチングでは、結晶面方位によってエッチング速度が異なり、(100)面や(110)面と比較して(111)面は、ほとんどエッチングされないので、異方性加工となる。
【0020】
図4に示すように、面方位(100)で、オリフラ(110)の単結晶のシリコン基板10において、エッチング保護膜となる酸化膜10aにフォトリソグラフィー技術で開口部40を設け、ウェットエッチングを行うと、図5に示すように、(100)面となす角度θが54.7度の(111)面が析出し、最終的には、2つの(111)面が接することで、エッチングが停止し、それ以上深くエッチングすることができない。
尚、開口部40の長さをLとすると、エッチング深さdは、(1)式で計算できる。
d=(L/2)×tan54.7=0.706×L (1)
【0021】
一方、図6に示すように、酸化膜10aに長さがLの開口部40を有するシリコン基板10をドライエッチングで垂直加工し、底面41bまでの長さがd1の有底の長溝41を形成すると、底面41bが(100)面となり、側面41aが(110)面となる。この状態でウェットエッチングを行うと、図7に示すように、長溝41の底面41bは、Z方向マイナス側に向かうエッチングによって、図5と同様に、(100)面となす角度θが54.7度の(111)面が析出し、2つの(111)面が接することで、エッチングが停止する。また、長溝41の2つの側面41aもX方向プラス側又はマイナス側に向かうエッチングによって、(100)面となす角度θが54.7度の(111)面が析出し、2つの(111)面が接することで、エッチングが停止する。
【0022】
尚、側面41aのエッチング深さSは、(2)式で計算できる。
S=d1/(2×tan54.7)=0.354×d1 (2)
従って、隣り合う2つの長溝41の間隔をwとすると、隣り合う2つの長溝41がエッチングにより連通する条件は、w/2<Sであるため、(2)式から、(3)式が導き出される。
0.354×d1×2>w (3)
また、(100)面を有する底面41bのエッチング深さの計算は(1)式と同じなので、シリコン基板10のZ方向のエッチング深さd2は、(4)式で計算できる。
d2=d1+0.706×L (4)
そのため、tの厚さを有するシリコン基板10がエッチングにより厚み方向に貫通しない条件としては、(4)式から、(5)式が導き出される。
d1+0.706×L<t (5)
【0023】
このようなエッチングメカニズムを用いて、図8に示すように、所定の間隔Wを有し、開口部40の長さLで、底面41bまでの長さがd1の複数の長溝41をドライエッチングで加工したシリコン基板10をウェットエッチングする。その結果、隣り合う長溝41の側面41aがエッチングされ、シリコン基板10の第2面20bと長溝41の底面41bとの間で連通し、図9に示すように、Y方向からの断面視で、三角形状の断面を有する振動腕24が形成され、振動腕24の下方に空洞である内部空間27が形成される。
【0024】
また、図9において、第1振動腕24aの幅をW、第1振動腕24aと第2振動腕24bとの距離をL、振動腕24の第2面20bから第1面20aの凹部21までの距離をd2とし、W、L、及びd2で、隣り合う2つの長溝41がエッチングにより連通する条件を表すと、以下の(6)式となる。
(W/0.708)+0.706×L<d2 (6)
【0025】
1.3.振動デバイスの製造方法
次に、第1実施形態に係る振動デバイス1の製造方法について、図10図16を参照して説明する。
本実施形態の振動デバイス1の製造方法は、図10に示すように、基板準備工程、酸化膜形成工程、圧電駆動部形成工程、保護膜形成工程、長溝形成工程、振動腕形成工程、保護膜除去工程を含む。
【0026】
1.3.1 基板準備工程
先ず、ステップS101において、平板状の単結晶のシリコン基板10を準備する。
【0027】
1.3.2 酸化膜形成工程
ステップS102において、図11に示すように、シリコン基板10を熱酸化して、シリコン基板の一方の面である第2面20bに、シリコン基板10をエッチング加工する際にエッチングしない領域を保護する酸化ケイ素(SiO2)膜の酸化膜10aを形成する。
【0028】
1.3.3 圧電駆動部形成工程
ステップS103において、酸化膜10a上に酸化ケイ素膜である温度特性調整膜12をスパッタリング法又はCVD法で成膜し、酸化膜10a及び温度特性調整膜12をフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により振動デバイス1の形状をパターニングする。その後、温度特性調整膜12上に圧電駆動部30となる第1電極31、圧電膜32、第2電極33をこの順で成膜及びパターニングを行い、図12に示すように、圧電駆動部30を形成する。尚、酸化膜10aも温度特性調整機能を有するので、酸化膜10aが温度特性調整膜12を兼ねることで温度特性調整膜12を省略しても良く、その場合は酸化膜10a上に圧電駆動部30を形成する。
圧電駆動部30の形成方法の詳細は、先ず、窒化チタン(TiN)等の第1電極31をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により圧電駆動部30の形状をパターニングする。次に、酸素ガスによるアッシング処理を行い、窒化チタンの表面を非晶質な窒化酸化チタン(TiON)とする。次に、窒化酸化チタン(TiON)膜上に窒化アルミニウム(AlN)等の圧電膜32をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により圧電駆動部30の形状をパターニングする。従って、圧電駆動部形成工程には、第2面20bにおいて振動腕24が形成される面上に圧電膜32を形成する工程が含まれる。その後、圧電膜32上に窒化チタン等の第2電極33をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により圧電駆動部30の形状をパターニングする。
【0029】
1.3.4 保護膜形成工程
ステップS104において、図13に示すように、シリコン基板10をエッチングするアルカリ水溶液(KOH、TMAH)から圧電駆動部30の圧電膜32を保護するために、酸化ケイ素膜である保護膜36をスパッタリング法又はCVD法で圧電駆動部30の側壁にも成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により振動デバイス1の形状をパターニングする。
【0030】
1.3.5 長溝形成工程
ステップS105において、図14に示すように、シリコン基板10の一方の面である第2面20bに、所定の間隔を有して並ぶ少なくとも2つの有底の長溝41を形成する。尚、本実施形態では、3つの振動腕24を形成するために、4つの長溝41を形成している。また、本工程をより詳細に説明すると、酸化膜10a、温度特性調整膜12、及び保護膜36から露出した領域のシリコン基板10をドライエッチングし、所望の深さを有する長溝41を含む溝を形成する。尚、本実施形態では、振動デバイス1の形状において、振動腕24と振動腕24との間の溝を特に長溝41と称して説明している。
【0031】
尚、ステップS105において、形成した長溝41の側面41aは、シリコン基板10の(110)面であり、底面41bは、シリコン基板10の(100)面である。
【0032】
1.3.6 振動腕形成工程
ステップS106において、ウェットエッチングにより、長溝41の側面41aをエッチングして、シリコン基板10の厚さ方向であるZ方向における第2面20bと長溝41の底面41bとの間で2つの長溝41を連通させて振動腕24を形成する。より詳細には、長溝41を含む溝をアルカリ水溶液(KOH、TMAH)でウェットエッチングし、2つの長溝41の側面41aを連通させ、振動腕24の下方に空洞を形成する。エッチング途中では、図15に示すように、長溝41の側面41aと底面41bがエッチングされ、図7で説明した(100)面となす角度θが54.7度の(111)面が析出する。析出した(111)面が接するまでエッチングすると、図16に示すように、振動腕24の下方に内部空間27が形成され、Y方向からの断面が三角形状である振動腕24が形成される。
【0033】
尚、ステップS106において、形成した振動腕24は、第2面20bの両端に接続している2つの側面25を有し、2つの側面25は、第2面20bから離れるにしたがって漸近している。また、2つの側面25は、シリコン基板10の(111)面である。
【0034】
1.3.7 保護膜除去工程
ステップS107において、保護膜36をフッ酸(HF)により除去することで、図3に示すような、振動腕24の下方に内部空間27を有し、振動腕24のY方向からの断面が三角形状である振動デバイス1を得ることができる。
【0035】
以上で述べたように、本実施形態の振動デバイス1の製造方法は、安価な単結晶のシリコン基板10をエッチング加工して製造することができるため、低価格の振動デバイス1を得ることができる。
【0036】
尚、本実施形態では、3つの振動腕24を形成するために、4つの長溝41を形成しているがこれに限定することはなく、所定の間隔を有して並ぶ少なくとも2つ以上の有底の長溝41を形成し、振動デバイス1を形成しても構わない。
【0037】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る振動デバイス1aについて、図17及び図18を参照して説明する。尚、第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
第2実施形態の振動デバイス1aは、図17及び図18に示すように、第1実施形態の振動デバイス1と比較して、振動腕51の断面形状と第1面50aの形状が異なっている。
【0039】
振動デバイス1aは、図17に示すように、Z方向からの平面視で、第1実施形態の振動デバイス1と同じである。しかし、図18に示すように、Y方向からの断面視で、振動腕51の断面が台形形状であり、第1振動腕51a、第2振動腕51b、及び第3振動腕51cの断面形状は同じである。また、基部50において、2つの凹部21で形成される第2面20b側の突出部が台形形状であり、台形の上辺が振動腕51と一定の間隙を有する第1面50aとなる。
【0040】
本実施形態の振動デバイス1aの製造方法としては、上述した振動腕形成工程において、2つの長溝41の側面41a同士が貫通した後に、所望の時間ウェットエッチングを継続することで、振動腕51の断面を台形形状に形成することができる。これは、振動腕51の側面25を構成する(111)面同士が接する部分において、長時間エッチングを行うことで、(100)面が析出するためである。従って、振動腕51の第2面20bと反対側の面と第1面50aとは、(100)面となる。尚、「台形形状」とは、上辺と下辺とが各々直線で且つ平行な場合の他、技術常識的に見て直線又は平行と同一視できる程度の範囲内において直線又は平行から若干ずれている場合も含む。
【0041】
このような構成とすれば、第1実施形態の振動デバイス1と同様の効果を得ることができる。また、振動腕51のZ方向の剛性が弱くなり、第2面20bと直交するZ方向に変位する屈曲振動を振動し易くすることができ、安定な振動を有する振動デバイス1aを得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1,1a…振動デバイス、10…シリコン基板、10a…酸化膜、20…基部、20a…第1面、20b…第2面、21…凹部、22…支持部、23…枠部、24…振動腕、24a…第1振動腕、24b…第2振動腕、24c…第3振動腕、25…側面、27…内部空間、30…圧電駆動部、31…第1電極、32…圧電膜、33…第2電極、34…配線、35…電極パッド、36…保護膜、40…開口部、41…長溝、41a…側面、41b…底面。
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