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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ICRリレー搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/04 20060101AFI20241203BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20241203BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60K5/04 E
F02N11/08 W
F02N11/08 X
F02B77/00 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020190967
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080030
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】木下 敬太
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037906(WO,A1)
【文献】特開2017-189013(JP,A)
【文献】特開平08-118967(JP,A)
【文献】実開昭56-105432(JP,U)
【文献】特開2004-301011(JP,A)
【文献】特開2015-042510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12、 7/00- 8/00
F02B 77/00
F02N 11/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置きエンジンにおける車両前方側の側面に、オルタネータ、エアコンコンプレッサ、ウォータポンプ、オイルポンプ、燃料ポンプ、パワステポンプ、及びスタータモータのうち少なくとも3つの補機とICRリレーとが搭載され、
前記ICRリレーは、車両前後方向視において前記補器のうち3つの補機の最も車両前方側に位置する部分である前端点同士を結んでできる三角形の内部に位置しており、かつ、前記三角形を含む平面よりも車両後方側に位置している、ICRリレー搭載構造。
【請求項2】
前記3つの補機は、前記エンジンを始動するための前記スタータモータを含み、
前記スタータモータは、前記ICRリレーとケーブルを介して電気的に接続されている、請求項1に記載のICRリレー搭載構造。
【請求項3】
前記エンジンに接続されたラジエータホースが、前記ICRリレー及び前記ケーブルの少なくともいずか一方よりも車両前方側に配設され、かつ、前記ICRリレー及び前記ケーブルの少なくともいずか一方と車両前後方向視で重複するように配設されている、請求項2に記載のICRリレー搭載構造。
【請求項4】
前記ICRリレーは、前記エンジンのシリンダブロックの側面にブラケットを介して取り付けられており、
前記ブラケットは、前記シリンダブロックの側面に突設されたフランジまたはリブの近傍において前記側面に締結されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のICRリレー搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICR(Inrush Current Reduction)リレー搭載構造に関し、特に、横置きエンジンを備えた車両におけるICRリレーの搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ICRリレーは、バッテリとスタータモータとの間の電源経路に設けられ、例えばアイドリングストップ後のエンジン再始動時において、スタータモータへの突入電流を抑制する役割を果たす。特許文献1は、関連する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5218496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ICRリレーは、切り替わる際に作動音や振動を発生する(以下、作動音及び振動を「音振」と称することもある)。車室内の音環境向上の観点からは、この音振の車体への伝達を抑制することが望ましい。その方法としては、例えば、車体に弾性支持された重量物であるエンジンの側面にICRリレーを搭載する方法がある。
【0005】
ところが、横置きエンジンの場合は、車両後方側の側面にICRリレーを搭載すると、ICRリレーから放射された作動音が車室内に侵入することで、車室内の静粛性が低下してしまう。一方、車両前方側の側面にICRリレーを搭載すると、車両前面衝突時、エンジンよりも車両前方側に位置する部品または部材とICRリレーとの接触により、ICRリレーを損傷する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、横置きエンジンを備えた車両にICRリレーを搭載する場合において、車室内の静粛性を高めつつ、車両前面衝突による損傷からICRリレーを保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかるICRリレー搭載構造では、横置きエンジンにおける車両前方側の側面に、少なくとも3つの補機とICRリレーとが搭載されている。ICRリレーは、車両前後方向視において前記少なくとも3つの補機の前端点同士を結んでできる三角形の内部に位置しており、かつ、前記三角形を含む平面よりも車両後方側に位置している。
【発明の効果】
【0008】
上記ICRリレー搭載構造によれば、車室内の静粛性を高めつつ、車両前面衝突による損傷からICRリレーを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るICRリレー搭載構造を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るICRリレー搭載構造を示す前面図である。
図3】実施形態に係るICRリレー搭載構造を周辺部品とともに示す斜視図である。
図4】実施形態に係るICRリレー搭載構造の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態にかかるICRリレー搭載構造S(以下、搭載構造Sと称する)について、図面を参照して説明する。各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方をそれぞれ示し、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方をそれぞれ示す。以下の説明では、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1乃至図4に示すように、実施形態にかかる搭載構造Sは、車両を駆動する内燃機関であるエンジン1と、補機であるオルタネータ2、エアコンコンプレッサ3、及びスタータモータ4と、ICRリレー5とを備えている。エンジン1は、クランクシャフトが車幅方向と平行になるように配置された横置きエンジンである。
【0012】
エンジン1は、図2に示すように、シリンダブロック6と、シリンダブロック6の上面に固定されたシリンダヘッド7と、シリンダブロック6の下面に固定されたオイルパン8とから主に構成されている。
【0013】
オイルパン8は、アッパーオイルパン8と、ロアオイルパン8とを備える。ロアオイルパン8は、アッパーオイルパン8の底部に設けられた開口を下方から覆うようにアッパーオイルパン8に取り付けられている。アッパーオイルパン8の上端部には、フランジFが形成されており、当該フランジFとシリンダブロック6の下端部に形成されたフランジFとが、図示しないボルト等の締結具によって締結されている。
【0014】
エンジン1の車両左方側の端部には、トランスミッションTMが結合されている。トランスミッションTMの上方には、図1及び図3に示すように、エアクリーナACが配設されている。エアクリーナACの下流側には、パイプを介してスロットルボディSBが接続され、スロットルボディSBの下流側には、吸気マニホールドIMが接続されている。吸気マニホールドIMの下流側端部は、シリンダヘッド7に接続されている。
【0015】
エンジン1よりも車両前方側には、図3に示すように、ラジエータRDや、その背面側に設けられた図示しないラジエータファンなどが配設されている。ラジエータRDは、ラジエータコアRcと、その上方及び下方に各々設けられた上部タンクT及び下部タンクTとを備えている。ラジエータRDは、図示しないラジエータコアサポートにより、その周縁部を支持されている。ラジエータコアサポートの上端部には、エアインテークダクトDの先端部が締結固定されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、シリンダブロック6の車両前方側の側面には、シリンダブロック6のウォータジャケットに連通する冷却液入口9が形成されている。冷却液入口9には、ラジエータホース10の一端が接続されている。ラジエータホース10の他端は、ラジエータRDの下部タンクTに接続されている。ラジエータホース10は、電気絶縁性を有するゴムなどから構成されている。
【0017】
図1乃至図4に示すように、シリンダブロック6の車両前方側の側面のうち車両右方側の端部には、オルタネータ2が搭載されている。オルタネータ2は、エンジン1により駆動されて発電する交流発電機である。オルタネータ2は、例えば鉛蓄電池である図外のバッテリに、ケーブルを介して接続されている。バッテリは、オルタネータ2で発電された電力により充電される。
【0018】
エアコンコンプレッサ3は、シリンダブロック6の車両前方側の側面のうち車両右方側の端部であって、オルタネータ2の搭載位置より低い位置に搭載されている。エアコンコンプレッサ3は、エンジン1により駆動されて、図外の車両用空調装置の冷媒を圧縮する圧縮機である。
【0019】
図2に示すように、オルタネータ2の回転軸の端部には、オルタネータプーリ2pが設けられ、エアコンコンプレッサ3の回転軸の端部には、コンプレッサプーリ3pが設けられている。図示しないクランクシャフトの端部(本実施形態では車両右方側の端部)には、クランクシャフトプーリが設けられている。オルタネータプーリ2p、コンプレッサプーリ3p、及びクランクシャフトプーリには、Vリブドベルトなどの伝動ベルトVが巻き掛けられている。これにより、クランクシャフトの回転駆動力が、各プーリと伝動ベルトVとを介して、オルタネータ2と、エアコンコンプレッサ3とに伝達されるようになっている。
【0020】
図1乃至図4に示すように、シリンダブロック6の車両前方側の側面のうち車両左方側の端部には、スタータモータ4が搭載されている。スタータモータ4は、オルタネータ2の搭載位置より低く、エアコンコンプレッサ3よりも高い位置に配置されている。スタータモータ4は、バッテリから給電されてエンジン1を始動する装置であり、クランクシャフトに連結された図示しないリングギアを駆動することで、クランクシャフトに対して始動トルクを与える。
【0021】
このように、本実施形態にかかる搭載構造Sでは、3つの補機2,3,4とICRリレー5とが、エンジン1の車両前方側の側面に搭載されている。なお、「補機」とは、エンジン1の周辺に設けられて、エンジン1で駆動される機器、或いは、エンジン1を作動させるために必要な機能を発揮する機器を言う。前者(エンジン周辺に設けられてエンジンに駆動される機器)には、オルタネータ2、エアコンコンプレッサ3のほか、ウォータポンプ、オイルポンプ、燃料ポンプ、パワステポンプなどが含まれる。後者(エンジン周辺に設けられてエンジンを作動させるために必要な機能を発揮する機器)には、スタータモータ4などが含まれる。
【0022】
ここで、図2に示すように、オルタネータ2の最も車両前方側に位置する部分2fを構成する点を第1前端点P1と定める。同様に、エアコンコンプレッサ3及びスタータモータ4の各々のうち最も車両前方側に位置する部分3f,4fを構成する点を、それぞれ第2前端点P2及び第3前端点P3と定める。搭載構造Sでは、車両前後方向視において、第1前端点P1、第2前端点P2及び第3前端点P3を結んでできる三角形Aの内部に、ICRリレー5が位置している。なお、三角形Aの内部に位置するとは、車両前後方向視においてICRリレー5の全体が三角形Aの内部に含まれる場合に限らず、ICRリレー5の一部と三角形Aとが重複する場合を含む。また、ICRリレー5は、図4に示すように、三角形Aを含む平面よりも車両後方側に位置している。
【0023】
ICRリレー5は、図外のバッテリとスタータモータ4との間の電源経路に設けられ、エンジン1の始動時、或いは、アイドリングストップ後のエンジン1の再始動時において、スタータモータ4への突入電流を抑制する役割を果たす。図2に示すように、ICRリレー5は、リレー本体51と、リレー本体51から突出した図示しない2つの端子と、2つの端子を覆う樹脂製の端子カバー52とを備える。リレー本体51は、2つの端子間で互いに並列に接続された、抵抗体と、抵抗体を短絡させる短絡リレーとを備えている。2つの端子のうち一方は、スタータモータ4と、他方は、図外のバッテリと、それぞれケーブル11を介して電気的に接続されている。ケーブル11の車両前方側には、図3に示すように、ラジエータホース10が配設されている。ラジエータホース10は、ケーブル11と車両前後方向視で重複するように配設されている。
【0024】
ICRリレー5は、図2に示すように、シリンダブロック6の側面にブラケット53を介して取り付けられている。ブラケット53は、シリンダブロック6の側面に突設されたフランジFの近傍において側面に締結されている。
【0025】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0026】
(1)車両前面衝突(前突)時は、車体前部に車両前方から荷重が入力されることによって、エンジン1よりも車両前方側に配置されたラジエータRD等の部品または部材が、車両後方へ移動して、エンジン1の側面に搭載された部品と接触する。
【0027】
搭載構造Sによれば、ICRリレー5が、車両前後方向視において3つの補機2,3,4の前端点P1,P2,P3同士を結んでできる三角形Aの内部に位置し、かつ、三角形Aを含む平面よりも車両後方側に位置している。このため、前突時、車両後方へ移動してきた部品または部材は、ICRリレー5よりも先に3つの補機2,3,4と接触する。そして、この補機2,3,4との接触・干渉により、当該部品または部材の更なる車両後方への移動(三角形Aの内部領域への進入)が阻止される。即ち、搭載構造Sによれば、ICRリレー5全体が三角形Aの外部に配置された場合よりも、車両後方へ移動してきた部品または部材がICRリレー5に接触しにくくなる。これにより、車両前突による損傷からICRリレー5を保護することができる。なお、例えばオルタネータ2に第1前端点P1が複数存在する場合は、その各々に対して別々の三角形Aが定義され得るが、そのようにして定義される複数の三角形Aのいずれかの内部にICRリレー5が位置していれば、上記の効果を発揮できる。第2前端点P2が複数存在する場合や、第3前端点P3が複数存在する場合も同様である。
【0028】
(2)搭載構造Sでは、車両前方側の側面に搭載された3つの補機に、スタータモータ4が含まれている。そのため、当該3つの補機にスタータモータ4が含まれない場合と比較して、ICRリレー5とスタータモータ4とを電気的に接続するケーブル11の長さを短くすることができる。
【0029】
(3)搭載構造Sでは、エンジン1に接続されたラジエータホース10が、ケーブル11の車両前方側に車両前後方向視でケーブル11と重複するように搭載されている。そのため、前突時、車両後方へ移動してきた部品または部材がケーブル11に接触しようとした場合でも、ラジエータホース10が、当該部品または部材とケーブル11との間に介在してケーブル11を保護する。具体的には、ラジエータホース10が、後退してきた部品または部材からケーブル11に入力される荷重を緩衝しつつ、当該部品または部材とケーブル11との間の電気的絶縁をより確実に保持する。
【0030】
なお、ラジエータホース10は、ICRリレー5の車両前方側に車両前後方向視でICRリレー5と重複するように、または、ICRリレー5及びケーブル11の両方と重複するように搭載されてもよい。このようにすることで、ラジエータホース10が、後退してきた部品または部材からICRリレー5に入力される荷重を緩衝しつつ、当該部品または部材とICRリレー5との間の電気的絶縁をより確実に保持することができる。
【0031】
(4)搭載構造Sでは、ICRリレー5は、シリンダブロック6の側面にブラケット53を介して取り付けられており、ブラケット53は、シリンダブロック6の側面に突設されたフランジFの近傍において側面に締結されている。シリンダブロック6のフランジFの近傍は、エンジン1の側面の他の部分よりも剛性が高いため、ブラケット53を他の部分に締結した場合よりもICRリレー5の支持剛性を高めることができる。
【0032】
なお、シリンダブロック6の側面にリブが突設されている場合は、当該リブの近傍にブラケット53を締結してもよい。この場合も同様にICRリレー5の支持剛性を高めることができる。
【0033】
上記実施形態は、発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【0034】
上記実施形態では、エンジン1の側面に搭載された3つの補機の例として、オルタネータ2、エアコンコンプレッサ3及びスタータモータ4を示したが、補機の種類は、特に限定されず、上述した各種補機のいずれか(例えばパワステポンプ等)を含んでもよい。
【0035】
また、エンジン1の車両前方側の側面に搭載される補機の個数は、4つ以上であってもよい。この場合、ICRリレー5は、4つ以上の補機のうち任意に選択された3つの補機の前端点同士を結んでできる三角形Aのいずれかの内部に位置するように配置すればよい。
【0036】
上記実施形態では、車両を駆動するエンジン1を例にとって説明したが、発電専用エンジンを備えた電気自動車等にICRリレー5を搭載する場合においても、本発明を採用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
S ICRリレー搭載構造
1 エンジン
10 ラジエータホース
F フランジ
2 オルタネータ(補機)
3 エアコンコンプレッサ(補機)
4 スタータモータ(補機)
5 ICRリレー
53 ブラケット
11 ケーブル
P1~P3 第1~第3前端点(前端点)
A 三角形
図1
図2
図3
図4