(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20241203BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241203BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20241203BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J29/38 204
G03G21/00 388
B41J29/00 Z
H04N1/00 E
(21)【出願番号】P 2020197576
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-185739(JP,A)
【文献】特開2020-044754(JP,A)
【文献】特開2012-045902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
B41J 2/01 - 2/215
G03G 21/00
H04N 1/00
G06F 3/09 - 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記コントローラは、前記契約解除指示を受け付けたときに、
前記本体メモリに記憶されている前記画像形成装置の状態を示すステータス情報が前記画像形成装置が故障していることを表しているか、または、
前記契約解除指示とともに受け付けられた前記ステータス情報が、前記画像形成装置が故障していることを表しているか、
を判定する第1判定処理をさらに実行し、
前記コントローラは、
前記第1判定処理において、前記画像形成装置が故障している、と判定した場合に、前記更新処理において、
前記第2状態情報を、他の画像形成装置での一時的な使用可を示
すように更新する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記契約解除指示を受け付けたときに、
前記契約解除指示とともに受け付けられた前記契約を解除する目的を示す目的情報が、前記契約を締結する画像形成装置を他の画像形成装置へ変更することを表しているか、を判定する第4判定処理をさらに実行し、
前記コントローラは、
前記第4判定処理において、前記契約を解除する目的が前記変更することである、と判定した場合に、前記更新処理において、
前記第2状態情報を、他の画像形成装置での一
時的な使用可を示すように更新する、請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
画像形成装置を制御する制御方法であって、
前記画像形成装置は、
本体筐体と、
本体メモリと、
印刷材を収容可能であり前記本体筐体に装着された消耗品であって、消耗品メモリを備える消耗品と、
コントローラと、
を備える画像形成装置であって、
前記消耗品メモリおよび前記本体メモリの少なくともいずれか一方は、前記消耗品が、新品であること、または、前記画像形成装置でのみ使用できる旧品であることを示す第1状態情報を記憶し、
前記消耗品メモリは、他の画像形成装置での一時的な使用の可否を示す第2状態情報を記憶し、
前記制御方法は、
前記コントローラが、前記消耗品メモリまたは前記本体メモリに記憶されている前記第1状態情報が新品を示している場合に、前記第1状態情報を前記旧品に書き換えて、前記消耗品が他の画像形成装置で使用されることを禁止する禁止ステップと、
前記コントローラが、契約が締結された前記画像形成装置の契約を解除する契約解除指示を受け付けた場合に、前記第2状態情報を、他の画像形成装置での一時的な使用可を示すように更新する更新ステップとを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置を利用するユーザに対して定額印刷サービスが広く提供されている。定額印刷サービスは、サブスクリプションサービスとも呼ばれ、画像形成装置ごとに加入できるサービスである。例えば、定額印刷サービスの利用に関する契約が締結された契約機である画像形成装置において、予め定められた期間中、予め設定された枚数までなら、一定の利用料金で印刷が許可されるというものである。
【0003】
一般に、定額印刷サービスの利用にあたっては、契約が締結された画像形成装置において、定額印刷サービス専用の契約消耗品を使用するように、サービス提供事業者が指定することが多い。この場合、契約機における契約消耗品の使用が適正であることを保証する仕組みが必要である。
【0004】
契約消耗品の適正な使用を保証するために、例えば、特許文献1には、契約消耗品か、サービスの加入に関係なく使用できる通常の消耗品かを区別する技術が開示されている。また、契約消耗品が特定の契約機において使用されるように、契約消耗品と契約機とを対応付けて管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開2018/0131831号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ユーザは、様々な事情により契約機を変更することができる。従来、契約機の変更は、以下の手順で完了していた。例えば、第1に、新しい画像形成装置(以下、新装置)がユーザの元に納入される。第2に、新装置について契約手続が締結される。第3に、契約締結に基づいてサービス提供事業者が新装置のための専用消耗品をユーザに供給する。つまり、ユーザは、新装置による定額印刷サービスをすぐには利用できず、新装置を購入してから新装置のための専用消耗品が手元に届くまでの期間待たなければならず不便であるという問題があった。
【0007】
本開示は、契約機を変更するときに一時的にサービスが利用できなくなる期間を短縮または無くすことにより、ユーザの利便性を向上させる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様の画像形成装置は、本体筐体と、本体メモリと、印刷材を収容可能であり前記本体筐体に装着された消耗品であって、消耗品メモリを備える消耗品と、コントローラと、を備える画像形成装置であって、前記消耗品メモリおよび前記本体メモリの少なくともいずれか一方は、前記消耗品が、新品であること、または、前記画像形成装置でのみ使用できる旧品であることを示す第1状態情報を記憶し、前記消耗品メモリは、他の画像形成装置での一時的な使用の可否を示す第2状態情報を記憶し、前記コントローラは、前記消耗品メモリまたは前記本体メモリに記憶されている前記第1状態情報が新品を示している場合に、前記第1状態情報を前記旧品に書き換えて、前記消耗品が他の画像形成装置で使用されることを禁止する禁止処理と、契約が締結された前記画像形成装置の契約を解除する契約解除指示を受け付けた場合に、前記第2状態情報を、他の画像形成装置での一時的な使用可を示すように更新する更新処理と、を実行する。
【0009】
第2態様は、第1態様の画像形成装置であって、前記コントローラは、前記契約解除指示を受け付けたときに、前記本体メモリに記憶されている前記画像形成装置の状態を示すステータス情報が前記画像形成装置が故障していることを表しているか、または、前記契約解除指示とともに受け付けられた前記ステータス情報が、前記画像形成装置が故障していることを表しているか、を判定する第1判定処理をさらに実行し、前記コントローラは、前記第1判定処理において、前記画像形成装置が故障している、と判定した場合に、前記更新処理において、前記第1状態情報を前記第2状態情報に更新する。
【0010】
第3態様は、第1態様または第2態様の画像形成装置であって、前記コントローラは、前記消耗品の残量が所定量以下であるかを判定する第2判定処理を、さらに実行し、前記コントローラは、前記第2判定処理において、前記消耗品の残量が所定量以下であると判定した場合に、前記更新処理を実行しない。
【0011】
第4態様は、第1態様または第2態様の画像形成装置であって、前記コントローラは、前記消耗品の残量が所定量以下であるかを判定する第2判定処理を、さらに実行し、前記コントローラは、前記第2判定処理において、前記消耗品の残量が所定量以上であると判定した場合に、前記更新処理を実行する。
【0012】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの画像形成装置であって、前記第2状態情報は、前記画像形成装置の識別情報を含み、前記コントローラは、前記更新処理において、前記消耗品メモリから前記識別情報を削除することにより、前記第2状態情報を前記使用可へと更新する。
【0013】
第6態様は、第1態様から第4態様のいずれか1つの画像形成装置であって、前記コントローラは、前記更新処理において、前記消耗品メモリに、他の画像形成装置での一時的な使用を許可することを示す情報を記憶することにより、前記第2状態情報を前記使用可へと更新する。
【0014】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか1つの画像形成装置であって、前記コントローラは、前記消耗品メモリに、前記新品を示す第1状態情報または前記使用可を示す前記第2状態情報が記憶されている場合に、前記印刷の実行を許可する許可処理と、前記消耗品メモリに、前記新品を示す第1状態情報または前記使用可を示す前記第2状態情報が記憶されている場合に、他の画像形成装置での使用不可を示す前記第2状態情報に書き換える書換処理とを実行する。
【0015】
第8態様は、第7態様の画像形成装置であって、前記消耗品メモリは、前記第1状態情報を記憶するための第1領域と、前記第2状態情報を記憶するための第2領域とを、含み、前記コントローラは、前記第1領域に記憶されている前記第1状態情報が前記新品であることを示す場合に、新品装着時特有の処理である新品管理処理を実行し、前記第1領域に記憶されている前記第1状態情報が前記旧品であることを示す場合に、前記新品管理処理を実行しない。
【0016】
第9態様は、第5態様または第6態様の画像形成装置であって、前記コントローラは、前記消耗品が装着されたときに、前記画像形成装置に対して契約が締結された契約モードであるか否かを判定する第3判定処理をさらに実行し、前記コントローラは、前記第3判定処理において前記画像形成装置が前記契約モードでないと判定した場合に、前記画像形成装置を前記契約モードに移行させるための操作を促す移行支援処理をさらに実行し、前記画像形成装置が前記契約モードに移行した後、前記許可処理を実行する。
【0017】
第10態様は、第9態様の画像形成装置であって、前記本体メモリは、前記画像形成装置が契約モードである否かを示すモード情報を記憶し、前記コントローラは、前記第3判定処理において、前記本体メモリに記憶されている前記モード情報が前記契約モードを示す場合に、前記画像形成装置が契約モードであると判定し、前記本体メモリに記憶されている前記モード情報が前記契約モードでないことを意味する非契約モードを示す場合に、前記画像形成装置が契約モードでないと判定する。
【0018】
第11態様は、第1態様から第10態様のいずれか1つの画像形成装置であって、前記コントローラは、前記契約解除指示を受け付けたときに、前記契約解除指示とともに受け付けられた前記契約を解除する目的を示す目的情報が、前記契約を締結する画像形成装置を他の画像形成装置へ変更することを表しているか、を判定する第4判定処理をさらに実行し、前記コントローラは、前記第4判定処理において、前記契約を解除する目的が前記変更することである、と判定した場合に、前記更新処理において、前記第1状態情報を前記第2状態情報に更新する。
【0019】
上記の課題を解決するために、本開示の第12態様の制御方法は、画像形成装置を制御する制御方法であって、前記画像形成装置は、本体筐体と、本体メモリと、印刷材を収容可能であり前記本体筐体に装着された消耗品であって、消耗品メモリを備える消耗品と、コントローラと、を備える画像形成装置であって、前記消耗品メモリおよび前記本体メモリの少なくともいずれか一方は、前記消耗品が、新品であること、または、前記画像形成装置でのみ使用できる旧品であることを示す第1状態情報を記憶し、前記消耗品メモリは、他の画像形成装置での一時的な使用の可否を示す第2状態情報を記憶し、前記制御方法は、前記コントローラが、前記消耗品メモリまたは前記本体メモリに記憶されている前記第1状態情報が新品を示している場合に、前記第1状態情報を前記旧品に書き換えて、前記消耗品が他の画像形成装置で使用されることを禁止する禁止ステップと、前記コントローラが、契約が締結された前記画像形成装置の契約を解除する契約解除指示を受け付けた場合に、前記第2状態情報を、他の画像形成装置での一時的な使用可を示すように更新する更新ステップとを含む。
【0020】
本開示の各態様に係る画像形成装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記画像形成装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記画像形成装置をコンピュータにて実現させる画像形成装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0021】
第1態様の画像形成装置によれば、契約解除指示を受け付けた場合、現行の契約機である画像形成装置(以下、旧装置)は、装着されている消耗品の消耗品メモリに記憶されている第1状態情報を、旧装置に代えて契約機となる予定の他の画像形成装置(以下、新装置)での一時的な使用が許可された第2状態情報に書き換える。これにより、消耗品は、旧装置でのみ使用可能な状態から新装置などの他の画像形成装置で使用できる状態に遷移する。
【0022】
ユーザは、旧装置で使用していた手元の消耗品を使って、すぐに、新装置にて印刷を開始することができる。このため、一時的にサービスが利用できなくなる期間を短縮または無くすことができ、結果として、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0023】
画像形成装置が故障すると、ユーザは、画像形成装置を新しく変更して、できるだけ早く印刷を再開したいと望む可能性が高い。また、変更後の新装置として、これまで使用していた同一機種の画像形成装置、つまり、消耗品について互換性を有する装置を選択する可能性が高い。第2態様の画像形成装置によれば、このような場合に、旧装置において使用されていた消耗品を、新装置において引き続き使用可能とすることにより、上述のようなユーザの要望に応えて、ユーザを待たせることなく、印刷サービスを再開させることができる。
【0024】
第3態様の画像形成装置によれば、印刷材の残量が少なくて継続使用に適さない消耗品を、他の画像形成装置で使用できる仮新品の状態にすることを回避する。消耗品の取り換え作業が無駄に増えることを抑えてユーザの利便性を向上させる。
【0025】
第4態様の画像形成装置によれば、印刷材の残量が所定量以上あって、継続使用に適している消耗品について、他の画像形成装置で使用できる仮新品の状態にすることができる。したがって、ユーザは、十分な期間、旧装置を継続使用することができる。これにより、一時的にサービスが利用できなくなる期間を短縮または無くすことができ、結果として、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0026】
第5態様の画像形成装置によれば、消耗品メモリに記憶されている識別情報は、更新処理において、消耗品メモリから削除される。これにより、識別情報に対応する画像形成装置でのみ使用可能であった消耗品は、他の画像形成装置で使用できる仮新品の状態に遷移する。ユーザは、旧装置で使用していた手元にある仮新品状態の消耗品を使って、すぐに、新装置にて印刷を開始することができる。このため、一時的にサービスが利用できなくなる期間を短縮または無くすことができ、結果として、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0027】
第6態様の画像形成装置によれば、更新処理において、消耗品メモリに、他の画像形成装置での一時的な使用を許可することを示す情報が記憶される。これにより、旧装置でのみ使用可能であった消耗品は、他の画像形成装置で使用できる仮新品の状態に遷移する。ユーザは、旧装置で使用していた手元にある仮新品状態の消耗品を使って、すぐに、新装置にて印刷を開始することができる。このため、一時的にサービスが利用できなくなる期間を短縮または無くすことができ、結果として、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0028】
第7態様の画像形成装置によれば、仮新品状態の消耗品は、新装置でのみ使用可能な消耗品へと状態が遷移する。これにより、消耗品の適正な使用が保証される。
【0029】
第8態様の画像形成装置によれば、仮新品の消耗品を新品とは区別することができ、新品管理処理などの、新品の消耗品に対する特有の処理を適切に実行することができる。
【0030】
第9態様の画像形成装置によれば、ユーザが手続の順番を誤った場合でも、ユーザに対して正しい手続を案内することができる。
【0031】
第10態様の画像形成装置によれば、適正な手順に即して、契約機の変更を行うことができる。
【0032】
旧装置の解約の目的が、契約機を新装置に変更することでない場合には、旧装置で使用されていた消耗品を他の画像形成装置で使用できるようにしてしまうと、契約が締結されていない画像形成装置において、上述の消耗品が不適切に使用される可能性がある。第11態様の画像形成装置によれば、契約機の変更を目的としない場合には、消耗品が他の画像形成装置で使用することが許可されないので、上述のような不適切な使用を回避することができる。
【0033】
第12態様の方法によれば、第1態様の画像形成装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本開示の実施形態における画像形成システムの概要を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態における画像形成装置の構造の概要を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態における画像形成装置、インクカートリッジおよびサーバの要部構成を示すブロック図である。
【
図4】カートリッジメモリのデータ構造を示す図である。
【
図5】変更前の画像形成装置が実行する、変更前処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】変更後の画像形成装置が実行する、変更後処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態について
図1~
図6を参照しつつ説明する。本実施形態では、一例として、画像形成装置がインクジェットプリンタである場合について説明する。しかしながら、画像形成装置1は、インクジェットプリンタ以外のプリンタであってもよい。例えば、画像形成装置1は、レーザープリンタであってもよい。
【0036】
<画像形成システムの概要>
図1は、本開示の実施形態における画像形成システム100の概要を示す図である。画像形成システム100では、事業者とユーザとの間で締結された契約に基づいて、事業者からユーザの画像形成装置1に対し、印刷サービスが提供される。以下では、契約に基づいて提供される定額印刷サービスを契約サービスと称する。そして、提供された契約サービスを利用して画像形成装置1が実行する印刷を、契約と無関係に実行される通常の印刷と区別して、契約印刷と称する。契約と無関係に実行される通常の印刷は、以下では、通常印刷と称する。
【0037】
図1に示すように、画像形成システム100は、複数の画像形成装置1と、サーバ8と、ユーザ端末9とを含んで構成される。ユーザが利用する画像形成装置1は、契約サービスを利用して印刷を実行する装置である。事業者が利用するサーバ8は、契約が締結されて、契約サービスの利用が許可された画像形成装置1を管理するための装置である。以下では、契約が締結されて、契約サービスの利用が許可された画像形成装置1を契約機と称する。ユーザが利用するユーザ端末9は、サーバ8と通信して、契約の締結、解除、および、その他の手続を実行するための装置である。ユーザ端末9としては、例えば、PC(Personal Computer)、スマートフォン等、標準的な通信機能を備えた情報処理端末が採用され得る。画像形成システム100を構成する各装置は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、互いに通信することができる。
【0038】
図1に示す複数の画像形成装置は、同一のユーザによって購入された画像形成装置1を表している。しかし、画像形成システム100は、図示されていないが、他のユーザによって購入されたさらに他の画像形成装置を含んで構成されていてもよい。
【0039】
複数の画像形成装置1のそれぞれは、ユーザが事業者と契約することによって、契約専用の消耗品または交換品を使用することができる画像形成装置である。契約は、一例として、契約サービスを提供する事業者と、ユーザとの間で、契約サービスの利用期間、利用料金、上限枚数などが取り決められた上で、事業者がユーザに契約サービスを提供することを双方が了承することである。すなわち、本実施形態の画像形成装置1は、契約サービスの契約が締結された後、該契約の内容に基づく印刷である契約印刷を実行することが可能になる画像形成装置である。
【0040】
画像形成システム100では、事業者からユーザに提供される契約サービスにおいて、下記(1)および(2)のタイミングは異なっていてもよい。
【0041】
(1)サーバ8が、画像形成装置1を契約が締結された契約機として認識するタイミング
(2)サーバ8が、画像形成装置1において契約サービスの利用が開始されたとみなすタイミング
すなわち、契約サービスにおいて、サーバ8が画像形成装置1を「契約機ではあるが、まだ契約サービスの利用は開始されていない」と認識することがあってもよい。
【0042】
なお、(1)の「サーバ8が画像形成装置1を契約機として認識する」ことは、画像形成装置1が、契約が締結されていないことを意味する非契約モードから、契約が締結されたことを意味する契約モードへと状態を移行させたことをトリガに実行されてもよい。
【0043】
また、(2)において「契約サービスの利用が開始されたとみなす」ことは、あくまで、「契約サービスの利用が某日時より開始された」ということをサーバ8が認識したことを意味する。したがって、サーバ8が契約サービスの利用が開始されたとみなすタイミングは、画像形成装置1が実際に契約印刷を実行したタイミングと一致しなくてもよい。
【0044】
以下では、特段の記載が無い限り、契約サービスは有料のサービスであることとする。そして、(1)のタイミングは、サーバ8が画像形成装置1を契約機として認識したタイミングであって、課金開始のトリガとはならず、(2)のタイミングが、課金開始のタイミングであるとする。
【0045】
他の例では、上述の(1)のタイミングと(2)のタイミングとはほぼ同時であってもよい。一例として、契約サービス専用であって、契約印刷に使用されるインクカートリッジが装着されたことをトリガとして、上述の(1)および(2)が起こってもよい。以下では、契約印刷に使用される契約サービス専用のインクカートリッジを契約カートリッジと称する。例えば、画像形成装置1は、装着された契約カートリッジのカートリッジメモリから所定の情報を読み出し、所定の情報をサーバ8に送信する。所定の情報を画像形成装置1から受信したサーバ8は、画像形成装置1を契約機として認識するとともに、画像形成装置1において契約サービスの利用が開始されたとみなす。
【0046】
本実施形態では一例として、画像形成装置1が、インク(印刷材)を吐出することによって、データを印刷用紙に印刷するインクジェットプリンタである場合について説明する。画像形成装置1の本体筐体には、1つ以上のインクカートリッジが装着される。本実施形態では、一例として、画像形成装置1には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(BK)の4色のインクカートリッジがそれぞれ装着されるものとする。なお、画像形成装置1には、図示されていないが、液晶ディスプレイやランプなどの表示部と、ボタンなどの入力部とが設けられていてもよい。また、液晶ディスプレイは、タッチパネルと一体に構成されることにより、入力部として機能するように構成されてもよい。
【0047】
図1に示す例では、一方の画像形成装置1は、契約が締結された現行の契約機を示し、他方の画像形成装置1は、現行の契約機である画像形成装置1に代えて、新たに契約が締結される予定の他の画像形成装置1を示す。以下では、契約が締結された契約機を、現行の画像形成装置1から他の画像形成装置1に変更することを「契約機の変更」と称する。そして、現行の契約機である画像形成装置1を「変更前の画像形成装置1」と称する。また、新たに契約が締結される予定の他の画像形成装置1または上述の変更前の画像形成装置1に代えて新たに契約が締結された他の画像形成装置1を「変更後の画像形成装置1」と称する。変更前の画像形成装置1か、変更後の画像形成装置1かを特に区別する必要がなく、両方の画像形成装置1に共通して当てはまる事項を説明する場合には、単に、画像形成装置1と記載する。
【0048】
<画像形成装置1の全体構成>
図2は、本実施形態の画像形成装置1の構造の概要を示す図である。便宜上、以降の説明では、
図2の上側を画像形成装置1の上側、
図2の下側を画像形成装置1の下側とし、
図2の左側を画像形成装置1の後側、
図2の右側を画像形成装置1の前側とする。
【0049】
画像形成装置1は、インクを吐出することによって、データを印刷用紙Pに印刷するインクジェットプリンタである。画像形成装置1の本体筐体には、1つ以上のインクカートリッジが装着される。なお、
図2に示す部材の他にも、画像形成装置1には、液晶ディスプレイやランプなどの表示部と、ボタンなどの入力部とが設けられていてもよい。また、液晶ディスプレイは、タッチパネルと一体に構成されることにより、入力部として機能するように構成されてもよい。
【0050】
図2の例では、画像形成装置1は、給紙トレイ20、給紙部2、搬送ローラ70、記録部3、排出ローラ72、及び排出トレイ30を備えている。画像形成装置1の前面には、開口が形成されている。開口には、給紙トレイ20が、前後方向に移動可能に配置されている。給紙トレイ20には、積層された複数の印刷用紙Pが収容される。印刷用紙Pは、例えば所定の大きさの用紙である。印刷用紙Pは、紙媒体に限られない。例えば、印刷用紙PはOHPシートのような樹脂素材であってもよい。
【0051】
給紙部2は、給紙ローラ21と、給紙アーム22と、軸23とを有する。給紙部2は、給紙ローラ21の正回転によって、給紙トレイ20に収容された印刷用紙Pを搬送路Rへ給送する。給紙ローラ21は、給紙アーム22の先端部に回転可能に設けられている。給紙アーム22は、画像形成装置1のフレームに支持された軸23に回動可能に設けられている。給紙アーム22は、自重又はバネ等による弾性力によって、給紙トレイ20へ向けて回動付勢されている。画像形成装置1に設けられたモータ(図示せず)の逆回転による駆動力が給紙ローラ21に伝達されることで、給紙ローラ21が正回転する。
【0052】
搬送路Rは、ガイド部材51、ガイド部材52、記録部3、ガイド部材53、及びガイド部材54等によって形成される空間である。
【0053】
搬送方向における記録部3よりも上流側には、搬送ローラ70が配置されている。搬送ローラ70の下部と向かい合うように、ピンチローラ71が配置されている。搬送ローラ70は、画像形成装置1が有するモータの動力で回転する。ピンチローラ71は、搬送ローラ70の回転に伴って回転する。搬送ローラ70及びピンチローラ71が正回転することにより、印刷用紙Pは、搬送ローラ70及びピンチローラ71に挟持された状態で、搬送路Rの画像記録位置Xまで搬送される。画像記録位置Xは、記録ヘッド32により印刷用紙Pへの画像の記録が行われる位置である。画像形成装置1のモータの正回転による駆動力が搬送ローラ70に伝達されると、搬送ローラ70は正回転する。また、モータの逆回転による駆動力が搬送ローラ70に伝達されると、搬送ローラ70は逆回転する。なお、画像形成装置1に設けられたモータの正回転は第1方向への回転に相当し、モータの逆回転は第2方向への回転に相当する。
【0054】
記録部3は、搬送路Rの搬送ローラ70と排出ローラ72との間に配置される。記録部3は、キャリッジ31と、記録ヘッド32と、複数のノズル33と、プラテン34とを有する。また、ノズル33は、それぞれインクカートリッジ4と接続されている。なお、ノズル33およびインクカートリッジ4の個数は特に限定されない。
【0055】
インクカートリッジ4は、カートリッジ筐体を有する。カートリッジ筐体は、画像形成装置1の本体筐体に装着可能である。インクカートリッジ4は、画像形成を行うために使用される材料として、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインクを収容する。インクは、印刷の度に消費される消耗品である。
【0056】
キャリッジ31は、搬送方向に対して直交する方向、即ち、印刷用紙Pの幅方向に往復移動する。印刷用紙Pへの画像記録において、画像形成装置1は、記録処理として、印刷用紙Pの搬送が停止している状態でキャリッジ31を印刷用紙Pの幅方向に移動させながら、記録ヘッド32のノズル33からインクを吐出させることで、1行分の画像を印刷用紙Pに記録させる。また、画像形成装置1は、改行処理として、搬送ローラ70及び排出ローラ72を駆動させて印刷用紙Pを所定の改行量だけ搬送する。画像形成装置1は、この記録処理と改行処理とを繰り返す。
【0057】
図2に示すように、キャリッジ31には、記録ヘッド32が搭載されている。記録ヘッド32の下面には、複数のノズル33が設けられている。記録ヘッド32はノズル33からインク滴を吐出する。プラテン34は、印刷用紙Pが載置される矩形板状の部材である。プラテン34に支持された印刷用紙Pに対して、キャリッジ31が移動する過程において、記録ヘッド32がインク滴を選択的に吐出することによって、印刷用紙Pに画像が記録される。
【0058】
搬送方向における記録部3よりも下流側には、排出ローラ72が配置されている。排出ローラ72の上部と対向する位置には、拍車73が配置されている。排出ローラ72は、画像形成装置1に設けられたモータによって駆動される。拍車73は、排出ローラ72の回転に伴って回転する。排出ローラ72及び拍車73が正回転することにより、印刷用紙Pは、排出ローラ72及び拍車73に挟まれて、排出トレイ30へ排出される。
【0059】
給紙トレイ20の上方には、排出トレイ30が配置されている。排出トレイ30は、排出ローラ72によって排出された印刷用紙Pを支持する。
【0060】
<画像形成装置1、インクカートリッジ4、およびサーバ8の内部構成>
図3は、本実施形態における画像形成装置1、インクカートリッジ4、およびサーバ8の要部構成を示すブロック図である。
【0061】
(インクカートリッジ4)
インクカートリッジ4は、カートリッジメモリ42(消耗品メモリ)を有する。カートリッジメモリ42は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。カートリッジメモリ42は例えば、フラッシュROM(Read Only Memory)またはEEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable ROM)である。
【0062】
カートリッジメモリ42は、インクカートリッジ4に関する情報を記憶するために、1つ以上の記憶領域、例えば、第1領域~第5領域を有している。カートリッジメモリ42のデータ構造については、
図4を参照して詳細に説明する。
【0063】
画像形成装置1の本体筐体は、コネクタ101を有する。インクカートリッジ4が画像形成装置1の本体筐体に装着されると、コネクタ101がカートリッジメモリ42と電気的に接続される。これにより、画像形成装置1のコントローラ61は、インクカートリッジ4のカートリッジメモリ42と通信可能になる。
【0064】
(画像形成装置1)
画像形成装置1はコントローラ61と、本体メモリ62と、通信部63とを有する。コントローラ61は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)を有する。コントローラ61は、画像形成装置1の本体筐体に設けられた、本体メモリ62および通信部63と電気的に接続されている。コントローラ61は、種々の動作を実行することによって、画像形成装置1に印刷に関連する各種処理を行わせる。
【0065】
なお、コントローラ61は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備えてもよい。この場合、本体メモリ62に、画像形成装置の制御方法を実現する制御プログラムが保存され、プロセッサが制御プログラムにしたがって動作することによって、コントローラ61が画像形成装置1に各種処理を行わせてもよい。
【0066】
また、コントローラ61は、制御プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な、本体メモリ62などの記録媒体を備えていてもよい。当該記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを利用してもよい。また、制御プログラムは、当該制御プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、制御プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0067】
画像形成装置1にインクカートリッジ4が装着されると、
図3に示すように、インクカートリッジ4は、コントローラ61と電気的に接続される。これにより、コントローラ61は、カートリッジメモリ42からの情報の読出処理と、カートリッジメモリ42への情報の書込処理(書き換え処理を含む)とを実行することが可能となる。
【0068】
本体メモリ62は、情報の読み出しおよび書き込みが可能なメモリである。本体メモリ62は、例えばフラッシュROMまたはEEPROM(登録商標)である。本体メモリ62は、1つ以上の記憶領域を有し、各領域には、一例として、以下の各種情報が記憶されている。
【0069】
カートリッジ情報621は、画像形成装置1に装着される各色のインクカートリッジ4に関する情報である。具体的には、カートリッジ情報621は、それぞれのカートリッジメモリ42から読み出されるインクカートリッジ4に関連する情報を、インクカートリッジ4ごとに対応付けた情報を含む。インクカートリッジ4に関連する情報は、一例として、図示のように、カートリッジID、カートリッジ種別およびインク残量情報などである。本実施形態では、さらに、インクカートリッジ4に関連する情報として、インクカートリッジ4の状態を表す、第1状態情報および第2状態情報が含まれる。カートリッジ情報621のデータ構造の詳細については、
図4を参照して後述する。
【0070】
本実施形態では、カートリッジメモリ42から読み出されたカートリッジ情報621は、コントローラ61が、インクカートリッジ4の状態を正確に判定するために参照される。コントローラ61は、インクカートリッジ4の状態を正確に把握することにより、契約機の変更のタイミングで、インクカートリッジ4に対して適切な処理を行うことが可能となる。さらに、本実施形態では、カートリッジ情報621は、画像形成装置1におけるインクカートリッジ4の装着状況に応じて、コントローラ61が契約モードへの移行の適否を判定するために参照されてもよい。契約モードとは、画像形成装置1の動作モードの1つであり、画像形成装置1が画像形成システム100上で、契約に基づく契約印刷を実行する資格を有する契約機であると認識される動作モードである。
【0071】
装置ID622は、画像形成装置1を識別するための識別情報である。装置ID622とは、例えば画像形成装置のシリアルナンバーである。
【0072】
モード情報623は、画像形成装置1の動作モードを示す情報である。本実施形態では、一例として、「契約モード」と、「非契約モード」との2種類のモードが定義される。「契約モード」は、画像形成装置1が画像形成システム100上で、契約が締結された契約機として動作することを意味する。「非契約モード」は、画像形成装置1が契約機ではなく、契約が締結されていない通常の画像形成装置として動作することを意味する。
【0073】
画像形成装置1の出荷時において、本体メモリ62には、デフォルトで非契約モードに対応する値を示すモード情報623が記憶されている。サーバ8は、契約を結んだユーザの画像形成装置1に、契約モードに移行することを指示する契約移行指示を含んだリクエストを送信する。コントローラ61は、サーバ8からのリクエストにしたがって、モード情報623を、非契約モードから契約モードへと変更する。本実施形態では、一例として、このようにコントローラ61が、モード情報623の値を、非契約モードから契約モードへと変更することを、「契約モードへの移行」と呼ぶ。
【0074】
他の実施形態では、モード情報623は、画像形成装置1が契約モードであるか非契約モードであるかを表すとともに、画像形成装置1が契約モードである場合には、さらに、画像形成装置1が契約モード下の非課金状態であるか、課金状態であるかを示してもよい。すなわち、モード情報623は、画像形成装置1が、(1)非契約モード、(2)契約モードの非課金状態、および、(3)契約モードの課金状態の3つの状態のうちいずれの状態にあるのかを示す情報として本体メモリ62に記憶されていてもよい。
【0075】
「契約モードの非課金状態」とは、画像形成装置1が契約モードではあるが、契約サービスの利用は開始されていない状態を示す。例えば、前述のように、サーバ8が、画像形成装置1を契約機として認識するタイミングと、サーバ8が、画像形成装置1で契約サービスが利用開始されたとみなすタイミングとが異なっている場合、この「契約モードの非課金状態」という状態が生じ得る。
【0076】
一方、「契約モードの課金状態」とは、画像形成装置1が契約モードであり、かつ、契約サービスの利用が開始されている状態を示す。
【0077】
ステータス情報624は、画像形成装置1の状態を表す情報である。本実施形態では、一例として、ステータス情報624は、画像形成装置1が、正常であるか、異常であるかを示す異常フラグとともに、異常である場合には、その異常の内容を示すエラー情報を含んでいてもよい。コントローラ61は、ステータス情報624を参照することにより、画像形成装置1に故障が発生しているか否かを判定することができる。
【0078】
第1枚数カウンタ625は、画像形成装置1における印刷枚数の累計である。第2枚数カウンタ626は、画像形成装置1において契約サービスを利用して印刷した印刷物の枚数を示す。第2枚数カウンタ626は、画像形成装置1が非契約モードから契約モードに移行する度に0にカウントリセットされてもよいし、今まで画像形成装置1において契約サービスを利用して印刷した印刷物の枚数の累計であってもよい。以降、特段の記載がない限り、第2枚数カウンタ626の値は、今まで契約印刷として印刷した枚数の累計であることとする。
【0079】
交換回数カウンタ627は、契約カートリッジが新品に交換された回数を示す。コントローラ61は、新品のインクカートリッジ4が画像形成装置1の本体筐体に装着されたとき、交換回数カウンタ627の交換回数を1つインクリメントする。
【0080】
本体メモリ62は、上述した情報の他に、例えば、画像形成装置1における累計印刷枚数を記憶するための領域を有していてもよい。
【0081】
通信部63は、例えばインターネットなどの通信ネットワークを介して、画像形成装置1とサーバ8との通信を行う。通信部63は、サーバ8から受信したリクエストをコントローラ61に出力する。ここで、「リクエスト」とは、契約関連処理において、サーバ8から送信される各種の要求、指示、問合せなどを指す。通信部63は、コントローラ61が、上述のリクエストに応答して演算し、出力した結果を、「レスポンス」としてサーバ8に返信する。本実施形態では、通信部63によるレスポンスの返信は省略されてもよい。例えば、リクエストが、画像形成装置1内の各種の設定を変更する指示である場合、コントローラ61は指示にしたがって画像形成装置1内の各種の設定を変更する。しかし、設定が変更された旨の通知を通信部63を介してサーバ8に返信することは省略されてもよい。
【0082】
(サーバ8)
サーバ8は、サーバ通信部83と、サーバメモリ82と、サーバ制御部81(制御部)を備えている。サーバ通信部83は、サーバ8と画像形成装置1との通信を行う通信インタフェースである。サーバ通信部83は、サーバ制御部81から入力されたリクエストを画像形成装置1に送信する。サーバ通信部83は、送信したリクエストに応じて画像形成装置1から送られてきたレスポンスを受信し、サーバ制御部81に出力する。
【0083】
また、サーバ通信部83は、画像形成装置1のユーザが操作するユーザ端末9と通信ネットワークを介して通信し、ユーザ端末9との間で情報を送受信する。本実施形態では、サーバ通信部83は、ユーザ端末との間で、契約締結のために必要な各種情報を送受信する。具体的には、サーバ通信部83は、ユーザ端末9から契約締結を要求する契約要求メッセージを受信してもよい。この契約要求メッセージには、画像形成装置1を識別する装置ID622が含まれ得る。この契約要求メッセージに応答して、サーバ制御部81が契約関連処理を実行した後、サーバ通信部83は、画像形成装置1を契約機として認識した旨の通知を、ユーザ端末9に送信してもよい。
【0084】
サーバメモリ82は、サーバ8の動作に必要なデータを記憶する記憶装置である。サーバメモリ82は、画像形成システム100において提供される契約サービスに加入する画像形成装置1ごとに装置情報を記憶する。装置情報は、例えば、装置ID、契約フラグ、契約上限枚数、画像形成装置1の型番、製造年月日等を含んでいてもよい。
【0085】
装置ID622は、サーバ8が画像形成装置1を一意に識別するための識別情報である。契約フラグは、画像形成装置1が契約モードに移行したか否か、すなわち、契約機として認識済みであるか否かを示す情報である。契約上限枚数は、画像形成装置1が、契約で定められた所定の期間において契約印刷可能な上限の枚数を示す。
【0086】
サーバ制御部81は、サーバ8を統括的に制御するCPUである。サーバ制御部81は所定のタイミングで、画像形成装置1にリクエストを作成し、作成したリクエストをサーバ通信部83に出力する。本実施形態では、リクエストは、例えば、契約モードへの移行を画像形成装置1に対して指示する契約移行指示を含む。サーバ制御部81は、ユーザ端末9から送信された契約要求メッセージが受信されたことをトリガとして、サーバ通信部83を制御し、ユーザが希望する画像形成装置1に対して、上述の契約移行指示を送信する。
【0087】
また、サーバ制御部81は、サーバ通信部83を介して画像形成装置1から受信したレスポンスに基づいて、サーバメモリ82に装置情報を新規に記憶させたり、既に記憶されている装置情報を更新したりする。より詳細には例えば、サーバ通信部83がユーザ端末9から、新規に契約締結を希望する画像形成装置1に関して契約要求メッセージを受信すると、サーバ制御部81は、その画像形成装置1の装置情報をサーバメモリ82に新規に登録する。このとき、サーバ制御部81は、契約フラグの初期値として「未確認」を意味する値に設定する。契約フラグ「未確認」とは、ユーザと事象者との間で契約は締結されたが、契約印刷を実行する予定の画像形成装置1が契約モードに移行したことを、サーバ8自身がまだ確認していない状態を意味する。そして、サーバ制御部81は、画像形成装置1との通信を介して、画像形成装置1が契約モードに移行した旨を確認した場合に、該画像形成装置1の契約フラグを「確認済」を意味する値に更新する。この処理に基づいて、画像形成装置1は、サーバ8を含む画像形成システム100上で、契約機として認識される。
【0088】
<データ構造>
図4は、インクカートリッジ4のカートリッジメモリ42のデータ構造を示す図である。カートリッジメモリ42は、一例として、少なくとも第1領域から第5領域までの5つの記憶領域を有する。
【0089】
第1領域は、第1状態情報を記憶するための記憶領域である。第1状態情報は、インクカートリッジ4が新品であるか旧品であるかを示す情報であり、一例として、第1状態情報は、新品フラグ431である。例えば、新品フラグ431の「1」の値は、インクカートリッジ4が新品であることを意味し、新品フラグ431の「0」の値は、インクカートリッジ4が旧品であることを意味してもよい。
【0090】
第2領域は、第2状態情報を記憶するための記憶領域である。第2状態情報は、インクカートリッジ4の他の画像形成装置での一時的な使用の可否を示す情報であり、一例として、第2状態情報は、装置ID432である。例えば、第2状態情報に装置ID432が含まれている場合には、該第2状態情報は、他の画像形成装置での一時的な使用について「使用不可」を意味してもよい。第2状態情報に装置ID432が含まれていない場合には、該第2状態情報は、他の画像形成装置での一時的な使用について「使用可」を意味してもよい。以下では、旧品でありながら他の画像形成装置での一時的な使用が許可された契約カートリッジの状態を「仮新品」と称する。
【0091】
他の例では、第2状態情報は、仮新品フラグである。例えば、仮新品フラグの「1」の値は、インクカートリッジ4が、他の画像形成装置での一時的な使用が許可された仮新品状態であることを意味してもよい。仮新品フラグの「0」の値は、インクカートリッジ4が、他の画像形成装置での使用が禁止された状態であることを意味してもよい。
【0092】
第3領域には、カートリッジID421が記憶されていてもよい。カートリッジID421は、例えば、個々のインクカートリッジ4を識別するための固有のシリアルナンバーである。カートリッジID421は、インクカートリッジ4のインクの色、型番、製造メーカおよび製造ロットなどを示す情報を含んでいてもよい。
【0093】
第4領域には、カートリッジ種別422が記憶されていてもよい。カートリッジ種別422は、インクカートリッジ4の種別を示す情報である。本実施形態では、インクカートリッジ4の種別として、少なくとも、「契約」および「市販」の2種類が設定され得る。
【0094】
種別「契約」が第4領域に設定されているインクカートリッジ4は、契約サービス専用のインクカートリッジである。以下では、この種別のインクカートリッジを、契約カートリッジと称する。画像形成装置1は、契約カートリッジを装着している間、契約印刷を実行することができる。契約カートリッジは、事業者から、画像形成装置1について契約を結んだユーザに対して供給される。
【0095】
種別「市販」が第4領域に設定されているインクカートリッジ4は、家電量販店または通販サイトなどから購入可能な市販のインクカートリッジである。以下では、この種別のインクカートリッジを、市販カートリッジと称する。市販カートリッジは、画像形成装置1のメーカによって製造された、いわゆる純正品であってもよいし、メーカ以外の第3者パーティによって製造された、いわゆるサード品であってもよい。
【0096】
第5領域には、インク残量情報423が記憶されていてもよい。インク残量情報423は、インクカートリッジ4のインクの残量を示す情報である。インク残量は、一例として、満杯から空までの複数の段階に対応する値で構成され、該値が第5領域に記憶されている。インク残量の各段階は、上述の値に基づいて、「FULL」~「EMPTY」などのように言葉でユーザに通知されてもよいし、「100%」~「0%」などの数値でユーザに通知されてもよいし、これらを組み合わせた表現によってユーザに通知されてもよい。
【0097】
<処理フロー>
(変更前処理)
図5は、変更前の画像形成装置1が実行する、契約機の変更前処理の流れを示すフローチャートである。なお、前提として、契約解除指示を受信する前は、契約機としての画像形成装置1は、新品の契約カートリッジが装着されたとき、該契約カートリッジを画像形成装置1以外の他の画像形成装置1で使用することを禁止する禁止処理(禁止ステップ)を実行しているものとする。一例として、禁止処理において、コントローラ61は、装着された契約カートリッジのカートリッジメモリ42において第1領域に記憶されている新品フラグ431を「1」から「0」に倒して旧品を示すように更新する。そして、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第2領域に画像形成装置1の装置ID432を書き込む。
【0098】
その後、
図5に示される一連の処理は、例えば、コントローラ61が、画像形成装置1に対して締結された契約を解除する指示である契約解除指示をサーバ8から受信したときに開始される。
【0099】
ステップS101では、コントローラ61は、サーバ8から契約解除指示を受信したか否かを判定する。コントローラ61は、契約解除指示を受信したと判定した場合、S101のYESからS102に処理を進める。
【0100】
ステップS102では、コントローラ61は、画像形成装置1が故障しているか否かを判定する第1判定処理を実行する。一例として、コントローラ61は、第1判定処理において、本体メモリ62に記憶されているステータス情報624が画像形成装置1に故障が発生していることを表している場合に、画像形成装置1が故障していると判定する。判定される故障としては、画像形成装置1を交換せざるを得ないような故障、例えば、復旧ができないような印刷機能の故障が想定されている。他の例として、コントローラ61は、サーバ8から契約解除指示とともに送信された、画像形成装置1のステータス情報が故障を表している場合に、画像形成装置1が故障していると判定してもよい。コントローラ61は、画像形成装置1が故障していると判定した場合、S102のYESからS103に処理を進める。一方、コントローラ61は、画像形成装置1が故障していないと判定した場合、S102のNOからS106に処理を進める。
【0101】
他の例では、ステップS102において、コントローラ61は、第1判定処理に加えて、または、第1判定処理に代えて、契約を解除する目的が、契約機を変更することであるか否かを判定する第4判定処理を実行してもよい。一例として、コントローラ61は、第4判定処理において、サーバ8から契約解除指示とともに送信された契約を解除する目的を示す目的情報を参照する。コントローラ61は、目的情報に基づいて、契約解除の目的が、契約を締結する画像形成装置を他の画像形成装置へ変更することである、と判定した場合に、S102のYESからS103に処理を進める。一方、コントローラ61は、契約解除の目的が契約機の変更でない、と判定した場合、S102のNOからS106に処理を進める。
【0102】
ステップS103では、コントローラ61は、装着されているインクカートリッジ4の種類を判別する。具体的には、コントローラ61は、装着されているインクカートリッジ4それぞれのカートリッジメモリ42の第4領域から、カートリッジ種別422を読み出す。そして、コントローラ61は、カートリッジ種別422が、「契約」を示しているか、「市販」を示しているかに応じてインクカートリッジ4の種別を判別する。コントローラ61は、装着されているインクカートリッジ4が契約カートリッジであると判別した場合に、S103のYESからS104に処理を進める。一方、コントローラ61は、インクカートリッジ4が市販カートリッジであると判別した場合に、S103のNOからS106に処理を進める。
【0103】
ステップS104では、コントローラ61は、契約カートリッジのインク残量が所定量以上か所定量未満かを判定する第2判定処理を実行する。具体的には、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第5領域に記憶されているインク残量情報423を読み出し、インク残量情報423が示すインク残量を、所定量を示す閾値と比較する。コントローラ61は、契約カートリッジのインク残量が所定量未満であると判定した場合、S104のYESからS106に処理を進める。すなわち、コントローラ61は、後述するS105の更新処理を実行しない。一方、コントローラ61は、契約カートリッジのインク残量が所定量以上であると判定した場合、S104のNOからS105に処理を進める。すなわち、コントローラ61は、後述するS105の更新処理を実行する。
【0104】
あるいは、コントローラ61は、S104では、契約カートリッジのインク残量が所定量より多いか、所定量以下かを判定してもよい。コントローラ61は、契約カートリッジのインク残量が所定量以下であると判定した場合、S104のYESからS106に処理を進める。すなわち、コントローラ61は、後述するS105の更新処理を実行しない。一方、コントローラ61は、契約カートリッジのインク残量が所定量以下であると判定しなかった場合、つまり、インク残量が所定量より多いと判定した場合、S104のNOからS105に処理を進める。
【0105】
ステップS105では、コントローラ61は、装着されている契約カートリッジを仮新品状態に遷移させる更新処理(更新ステップ)を実行する。具体的には、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第2領域に記憶されている、他の画像形成装置での一時的な使用の可否を示す第2状態情報を、「使用可」を示すように更新する。より詳細には、例えば、コントローラ61は、更新処理において、カートリッジメモリ42の第2領域から装置ID432を削除することにより、第2状態情報を「使用可」へと更新してもよい。他の例では、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第2領域において、仮新品フラグを立てる、例えば、値を「0」から「1」に更新することにより、第2状態情報を「使用可」へと更新してもよい。
【0106】
画像形成装置1においてインクカートリッジ4が複数装着されている場合、コントローラ61は、S103~S105の各処理を、インクカートリッジ4ごとに繰り返して実行する。
【0107】
ステップS106では、コントローラ61は、S101で受信した契約解除指示にしたがって、画像形成装置1について、契約解除処理を実行する。一例として、コントローラ61は、契約解除処理において、画像形成装置1を、契約モードから非契約モードへと戻してもよい。具体的には、コントローラ61は、本体メモリ62に記憶されているモード情報623を、契約モードに対応する値から非契約モードに対応する値へと更新してもよい。そして、コントローラ61は、サーバ8に対して、契約解除を了承し、非契約モードへの遷移が完了した旨を通知するメッセージを返信してもよい。
【0108】
(変更後処理)
図6は、変更後の画像形成装置1が実行する、契約機の変更後処理の流れを示すフローチャートである。変更後の画像形成装置1は、上述した変更前の画像形成装置1とは別の装置IDを持つ、他の画像形成装置である。しかし、変更後の画像形成装置1のコントローラ61は、変更前の画像形成装置1と同様に、
図5に基づいて説明された変更前処理を実行する機能を備えていてもよい。
【0109】
図6に示される一連の処理は、例えば、コントローラ61が、画像形成装置1にカートリッジが装着されたことを検知したときに開始される。
【0110】
ステップS201では、コントローラ61は、本体筐体にインクカートリッジ4が装着されたか否かを判定する。コントローラ61は、インクカートリッジ4が装着されたと判定した場合、S201のYESからS202に処理を進める。
【0111】
ステップS202では、コントローラ61は、画像形成装置1が契約モードに移行済みであるか否かを判定する第3判定処理を実行する。
【0112】
一例として、契約モードに移行する処理は、サーバ8から送信される契約移行指示に応じて、コントローラ61によって実行される。具体的には、コントローラ61は、サーバ8から契約移行指示を受信すると、本体メモリ62に記憶されているモード情報623を、非契約モードに対応する値から、契約モードに対応する値へと更新する。モード情報623が契約モードを示すように更新されることにより、画像形成装置1は、契約モードへの移行を完了させる。コントローラ61は、契約移行指示にしたがって契約モードに移行したことをサーバ8に通知してもよい。
【0113】
上述の構成では、コントローラ61は、第3判定処理において、本体メモリ62に記憶されているモード情報623に基づいて、画像形成装置1が契約モードに移行済みであるか否かを判定する。コントローラ61は、モード情報623が契約モードを示しており、これに基づいて画像形成装置1が契約モードに移行済みである判定した場合、S202のYESからS203へと処理を進める。一方、コントローラ61は、モード情報623が非契約モードを示しており、これに基づいて画像形成装置1が契約モードに移行していないと判定した場合、S202のNOからS210へと処理を進める。
【0114】
ステップS203では、コントローラ61は、装着されたインクカートリッジ4が、契約カートリッジであって新品および仮新品のいずれかの状態であるか、あるいは、それ以外であるかを判定する。一例として、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第4領域に記憶されているカートリッジ種別422に基づいて、装着されたインクカートリッジ4が契約カートリッジであるか、市販カートリッジであるか判定する。そして、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第1領域に記憶されている新品フラグ431を参照し、新品フラグ431が新品を示している場合に、インクカートリッジ4が新品であると判定する。また、コントローラ61は、新品フラグ431が旧品を示しており、カートリッジメモリ42の第2領域に装置ID432が記憶されていない場合に、インクカートリッジ4が仮新品であると判定する。あるいは、コントローラ61は、第2領域に記憶されている仮新品フラグが仮新品を示している場合に、インクカートリッジ4が仮新品であると判定してもよい。コントローラ61は、装着されたインクカートリッジ4が新品または仮新品の状態であると判定した場合、S203のYESからS204へ処理を進める。一方、コントローラ61は、装着されたインクカートリッジ4が契約カートリッジの新品でも仮新品でもない、つまり、市販カートリッジであるか、または、契約カートリッジであっても他の画像形成装置でしか印刷できない旧品であると判定し得る。この場合、コントローラ61は、S203のNOからS209へと処理を進める。
【0115】
ステップS204では、コントローラ61は、装着されたインクカートリッジ4に対して、他の画像形成装置での使用を不可にするための書換処理を実行する。一例として、書換処理において、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第2領域に、画像形成装置1の装置ID432を記憶する。これにより、装置ID432に示される画像形成装置1以外の他の画像形成装置でインクカートリッジ4を使用することが禁止される。あるいは、コントローラ61は、第2領域において、仮新品フラグを落として、一時的に許可されていた他の画像形成装置での使用を再び禁止してもよい。
【0116】
ステップS205では、コントローラ61は、装着された契約カートリッジが新品であるか、仮新品であるかを判定する。一例として、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第1領域に、新品を示す新品フラグ431が記憶されている場合に、契約カートリッジが新品であると判定する。一方、コントローラ61は、第1領域に、旧品を示す新品フラグ431が記憶されていて、かつ、第2領域に、画像形成装置1以外の他の画像形成装置の装置ID432が記憶されている場合に、仮新品であると判定する。他の例では、コントローラ61は、新品フラグ431が「1」の値である場合に、契約カートリッジが新品であると判定し、新品フラグ431が「0」、仮新品フラグが「1」の値である場合に、契約カートリッジが仮新品であると判定してもよい。コントローラ61は、装着された契約カートリッジが新品であると判定した場合、S205のNOからS206へと処理を進める。一方、コントローラ61は、契約カートリッジが仮新品であると判定した場合、S205のYESからS208へと処理を進める。すなわち、コントローラ61は、装着された契約カートリッジが新品である場合、後述するS206およびS207に示すような、新品装着時に特有の処理である新品管理処理を実行する。一方、コントローラ61は、装着された契約カートリッジが旧品であって仮新品である場合、上述の新品管理処理を実行しない。
【0117】
ステップS206では、コントローラ61は、新品管理処理として、装着された契約カートリッジの新品フラグを落とす。具体的には、コントローラ61は、カートリッジメモリ42の第1領域に記憶されている新品フラグ431の値を「1」から「0」に更新する。
【0118】
ステップS207では、コントローラ61は、新品管理処理として、契約カートリッジが新品に交換された回数をカウントアップする。一例として、本体メモリ62には、契約カートリッジの交換回数を管理するための交換回数カウンタ627が記憶されている。コントローラ61は、S206において、例えば、交換回数カウンタ627の交換回数を1つインクリメントする。
【0119】
ステップS208では、コントローラ61は、画像形成装置1に対して契約印刷の実行を許可する許可処理を実行する。許可処理において、コントローラ61は、契約印刷の実行を許可した旨をサーバ8に通知してもよい。通知をトリガにして、サーバ8は、画像形成装置1において契約サービスの利用が開始されたとみなすことができ、課金を開始することができる。
【0120】
なお、S204の書換処理は、S203のYES以降の任意のタイミングで実行され得る。例えば、S204の書換処理は、S208の許可処理の後に実行されてもよい。
【0121】
ステップS209では、コントローラ61は、画像形成装置1に対して契約印刷の実行を許可しない。つまり、コントローラ61は、他の画像形成装置でのみ使用可能である旧品の契約カートリッジが画像形成装置1の契約印刷に使用されることを禁止することができる。S209では、サーバ8は、画像形成装置1に対して「契約機ではあるが、まだ契約サービスの利用は開始されていない」との認識を維持し、課金を開始しない。なお、コントローラ61は、旧品の契約カートリッジではなく、市販カートリッジが装着されている場合には、契約印刷は許可しないが、通常印刷を許可してもよい。
【0122】
ステップS210では、画像形成装置1は非契約モードである。S210では、コントローラ61は、S203と同様に、装着されたインクカートリッジ4が、契約カートリッジであって新品および仮新品のいずれかの状態であるか、あるいは、それ以外であるかを判定する。コントローラ61は、装着されたインクカートリッジ4が、新品または仮新品の契約カートリッジであると判定した場合、S210のYESからS211へと処理を進める。一方、コントローラ61は、インクカートリッジ4が、画像形成装置1では使えない旧品の契約カートリッジまたは市販カートリッジであると判定した場合、S210のNOからS213へと処理を進める。
【0123】
ステップS211では、コントローラ61は、画像形成装置1を契約モードへと移行させるための操作をユーザに促すための移行支援処理を実行する。一例として、コントローラ61は、画像形成装置1の表示部またはユーザ端末9の表示部に、契約締結のための各種手続を実行するようにメッセージを表示させてもよい。さらに、コントローラ61は、契約締結のための各種手続を実行するためのサイトのリンク情報を上述の各表示部に表示させるなどして、画像形成装置1を契約モードに移行させるようにユーザの入力支援を行ってもよい。
【0124】
ステップS212では、コントローラ61は、印刷を禁止する。つまり、コントローラ61は、画像形成装置1が契約モードに移行しておらず、したがって、サーバ8に契約機として認識されていない状況での契約印刷を禁止する。加えて、コントローラ61は、契約カートリッジが装着された状態での通常印刷も禁止する。
【0125】
ステップ213では、コントローラ61は、契約カートリッジが1本も装着されておらず、市販カートリッジが装着されている状況での通常印刷を許可する。なお、コントローラ61は、他の画像形成装置でしか使用できない旧品の契約カートリッジが1本でも装着されている場合には、通常印刷も契約印刷も禁止する。
【0126】
〔変形例〕
画像形成装置1は、インクカートリッジまたはトナーカートリッジなどの消耗品を用いて印刷を実行する機能と通信機能とを備えている装置であればいずれでもよい。例えば、画像形成装置1は、インクジェットプリンタ、レーザープリンタであってもよい。あるいは、画像形成装置1は、スキャナまたはファクシミリなどの他の機能を併せて備えるMFP(Multi Function Printer)であってもよい。
【0127】
画像形成装置1がレーザープリンタである場合、画像形成装置1には、インクカートリッジ4ではなく、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジが装着される。なお、画像形成装置1に装着されるドラムカートリッジおよびトナーカートリッジの個数は、特に限定されない。ドラムカートリッジとトナーカートリッジの構成は特に限定されない。
【0128】
例えば、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジは、それぞれ独立したカートリッジであってもよい。そして、ドラムカートリッジにトナーカートリッジを装着することにより、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジが一体となる構成であってもよい。トナーカートリッジは、トナーカートリッジがドラムカートリッジに装着された状態で、ドラムカートリッジと共に、画像形成装置1の本体筐体へと装着される。
【0129】
ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジがそれぞれ独立したカートリッジである場合、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジの構成は、以下の3種類のいずれかであり得る。
【0130】
第1の構成例としては、ドラムカートリッジはカートリッジ筐体を備え、カートリッジ筐体には、感光体ドラム、ドラムメモリ、および現像ローラが設けられてよい。トナーカートリッジは、カートリッジ筐体を備え、カートリッジ筐体にはトナーメモリが設けられていてもよい。トナーカートリッジのカートリッジ筐体はトナーを収容する。現像ローラの外周面は、ドラムカートリッジの内部で感光体ドラムの外周面と接触する。これにより、感光体ドラムの表面に現像剤(すなわち、トナー)が塗布される。塗布されたトナーが転写ベルトによって用紙に転写されることで、印刷ジョブが示すデータが印刷される。
【0131】
第2の構成例として、ドラムカートリッジのカートリッジ筐体は、感光体ドラムおよびドラムメモリを備えていてもよい。そして、トナーカートリッジのカートリッジ筐体には、現像ローラが設けられていてもよい。現像ローラの外周面は、ドラムカートリッジの内部で感光体ドラムの外周面と接触する。
【0132】
第3の構成例としては、画像形成装置1に、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジとは別に、現像ローラを有する現像カートリッジを装着してもよい。この場合、ドラムカートリッジは、カートリッジ筐体と、感光体ドラムと、ドラムメモリと、を有する。トナーカートリッジは、カートリッジ筐体およびトナーメモリを有する。トナーカートリッジのカートリッジ筐体はトナーを収容する。第3の構成例では、ドラムカートリッジ、トナーカートリッジ、および現像カートリッジの3つの部品が本体筐体に装着される。
【0133】
ドラムメモリには、例えば、ドラムIDと、ドラム種別情報と、ドラム寿命情報とが記憶されている。なお、ドラムIDおよびドラム寿命情報は、本開示において必須の情報ではない。ドラム種別情報は、ドラムカートリッジが契約専用のドラムカートリッジであるか、通常のドラムカートリッジであるかを示す情報である。
【0134】
トナーメモリには、例えば、トナーIDと、トナー種別情報と、トナー寿命情報とが記憶されている。なお、トナーIDおよびトナー寿命情報は、本開示において必須の情報ではない。トナー種別情報は、トナーカートリッジが契約専用のトナーカートリッジであるか、通常のトナーカートリッジであるかを示す情報である。
【0135】
画像形成装置1がレーザープリンタである場合、本体メモリ62は、インク情報ではなく、ドラム情報およびトナー情報を記憶している。ドラム情報は、ドラムカートリッジそれぞれのドラムメモリから読み出されるドラムIDと、ドラム種別情報と、ドラム寿命情報とをそれぞれ対応付けた情報である。トナー情報は、トナーカートリッジそれぞれのトナーメモリから読み出されるトナーIDと、トナー種別情報と、トナー寿命情報とをそれぞれ対応付けた情報である。
【0136】
すなわち、ドラムカートリッジおよびトナーカートリッジは一体に構成された一体型カートリッジであってもよい。一体型カートリッジは、カートリッジ筐体と、感光体ドラムと、メモリと、現像ローラと、を有する。現像ローラの外周面は、一体型カートリッジの内部で感光体ドラムの外周面と接触する。一体型カートリッジのカートリッジ筐体は、トナーを収容する。一体型カートリッジのメモリには、前述したドラムメモリおよびトナーメモリに記憶されている各種情報が記憶されている。
【0137】
画像形成装置1がレーザープリンタである場合においても、上述の実施形態で参照したフローチャートに示されている処理の流れが適用され得る。具体的には、画像形成装置1がレーザープリンタである場合、上述の実施形態で説明された契約カートリッジを、インクカートリッジ4からドラムカートリッジおよびトナーカートリッジ(または、一体型カートリッジ)に読みかえればよい。
【0138】
なお、画像形成装置1がレーザープリンタである場合、一体型カートリッジのカートリッジメモリ42の第5領域には、インク残量情報423に代えて、ドラム寿命情報およびトナー寿命情報が記憶される。一体型でない場合には、ドラムカートリッジのカートリッジメモリ42の第5領域には、ドラム寿命情報が、トナーカートリッジのカートリッジメモリ42の第5領域には、トナー寿命情報が、それぞれ記憶される。
【0139】
本変形例に係る画像形成装置1も、上述の実施形態1に係る画像形成装置1と同様の効果を奏する。
【0140】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像形成装置1およびサーバ8の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0141】
後者の場合、画像形成装置1およびサーバ8は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本開示の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本開示の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0142】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1 画像形成装置、4 インクカートリッジ(消耗品、契約消耗品)、8 サーバ、9 ユーザ端末、42 カートリッジメモリ(消耗品メモリ)、61 コントローラ、62 本体メモリ、63 通信部、100 画像形成システム、421 カートリッジID、422 カートリッジ種別、423 インク残量情報、431 新品フラグ(第1状態情報)、432 装置ID(第2状態情報)、621 カートリッジ情報、623 モード情報、624 ステータス情報、627 交換回数カウンタ