(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】樹脂積層体、包装材料及び樹脂積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/10 20060101AFI20241203BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241203BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20241203BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/32 Z
B32B29/00
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020198573
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】河向 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 一行
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-188812(JP,A)
【文献】特表2017-532404(JP,A)
【文献】特開2014-133337(JP,A)
【文献】特開2015-205719(JP,A)
【文献】特開2004-002773(JP,A)
【文献】特開2019-043145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/10
B32B 27/32
B32B 29/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の少なくとも一方の面側に設けられる混合樹脂層とを有し、
前記混合樹脂層は、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを含有し、
前記ポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリエチレンであり、
前記バイオマス樹脂は、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸及びポリアミド11からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記バイオマス樹脂の含有量は前記混合樹脂層の全質量に対して10~49質量%であり、
ヒートシール温度を140℃として前記混合樹脂層同士を重ねてヒートシールした場合には、シール強度が7.0N/15mm未満であり、かつヒートシール温度を170℃として前記混合樹脂層同士を重ねてヒートシールした場合には、シール強度が7.0N/15mm以上である、樹脂積層体。
【請求項2】
前記混合樹脂層において、前記ポリオレフィン樹脂と前記バイオマス樹脂は略均一に混合されている、請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の樹脂積層体を備える包装材料。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の樹脂積層体の製造方法であって、
ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを溶融混合し、樹脂ブレンドを得る工程と、
前記樹脂ブレンドを、塗工法もしくは溶融押出法により、紙基材上に展開する工程と、を含む、樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂ブレンドを得る工程における溶融温度が180~330℃である、請求項
4に記載の樹脂積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体、包装材料及び樹脂積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の形態の包装容器が開発されている。例えば、食品用の包装容器としては、容器内に食品等を充填した後に容器の開口部に蓋材をヒートシールしてなる包装容器が知られている。このような包装容器を構成する材質には、プラスチック製の容器や蓋材が多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリブチレンサクシネートを主成分とする樹脂組成物による樹脂層、ポリエチレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物による樹脂層、および、ポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物による樹脂層をその順で共押出した3層共押出積層フィルムが開示されており、ポリ乳酸樹脂を主成分とする樹脂組成物による樹脂層をシール層としたイージーピールシーラントが開示されている。また、特許文献2には、基材と、ポリオレフィン樹脂と、加水分解性熱可塑性樹脂と、相溶化剤とを混合した樹脂ブレンドよりなる樹脂層を備えるシーラントフィルムが開示されている。なお、特許文献2では、シーラント層に貼りあわせる基材として、PET、NY、OPPなど樹脂フィルムが挙げられている。
【0004】
近年は、環境保全の観点から、このような包装容器についても脱プラスチックの要求が高まっている。このため、包装容器の一部をプラスチック製の容器から紙製の容器に変更することが検討されている。例えば、特許文献3には、紙基材と、該紙基材の少なくとも片面にバイオマス樹脂を含む合成樹脂層を有する積層体において、合成樹脂層がバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物である積層体が開示されており、この積層体は紙カップや紙絞りトレーなどの紙容器に加工されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-320060号公報
【文献】特開2013-234224号公報
【文献】特開2008-188812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本体容器と蓋材から構成される包装容器においては、ヒートシール性を有する蓋材が本体容器の開口部に貼合されることで密閉される。この場合、蓋材は、ヒートシール性を有し、優れた密閉性を発揮することが求められる。一方で、蓋材には易開封性が求められる場合もある。例えば、複数種の食品が区分けされて充填されている場合などにおいては、蓋材と本体容器が強固に密着し易開封性が求められない部分と、蓋材に易開封性が求められる部分が混在する場合もあり、近年多様化する包装材料には多様な機能が求められている。また、ヒートシール性を有する樹脂積層体を用いて、内容物を袋状に包装する(ピロー包装)場合にも、易開封性と難開封性の両方が求められる場合がある。
【0007】
そこで本発明者らは、ヒートシール条件をコントロールすることによって、易開封性(イージーピール性)と難開封性(完全ピール性)のいずれかが発現される二段ヒートシール性を有する包装材料を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、紙基材と、混合樹脂層とを有する樹脂積層体において、混合樹脂層を構成する樹脂種を選別し、各樹脂種の配合比率を所定の範囲内とすることにより、易開封性(イージーピール性)と難開封性(完全ピール性)のいずれかが発現される二段ヒートシール性を発揮し得る包装材料が得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面側に設けられる混合樹脂層とを有し、
混合樹脂層は、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを含有し、
バイオマス樹脂の含有量は混合樹脂層の全質量に対して10~49質量%であり、
ヒートシール性を有する、樹脂積層体。
[2] 混合樹脂層において、ポリオレフィン樹脂とバイオマス樹脂は略均一に混合されている、[1]に記載の樹脂積層体。
[3] バイオマス樹脂は、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート及びポリヒドロキシアルカン酸からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の樹脂積層体。
[4] ポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリオレフィン樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂積層体。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の樹脂積層体を備える包装材料。
[6] [1]~[4]のいずれかに記載の樹脂積層体の製造方法であって、
ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを溶融混合し、樹脂ブレンドを得る工程と、
樹脂ブレンドを、塗工法もしくは溶融押出法により、紙基材上に展開する工程と、を含む、樹脂積層体の製造方法。
[7] 樹脂ブレンドを得る工程における溶融温度が180~330℃である、[6]に記載の樹脂積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、易開封性(イージーピール性)と難開封性(完全ピール性)のいずれかが発現される二段ヒートシール性を発揮し得る樹脂積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の樹脂積層体の構成を説明する断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の樹脂積層体の他の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(樹脂積層体)
本発明は、紙基材と、紙基材の少なくとも一方の面側に設けられる混合樹脂層とを有し、かつヒートシール性を有する樹脂積層体に関する。ここで、混合樹脂層は、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを含有し、バイオマス樹脂の含有量は混合樹脂層の全質量に対して10~49質量%である。
【0014】
図1は、本実施形態の樹脂積層体の構成を説明する断面図である。
図1に示されるように、樹脂積層体100は、紙基材10と混合樹脂層20を有する。紙基材10と混合樹脂層20の間には、後述するような任意層が設けられてもよいが、紙基材10に直接接するように混合樹脂層20が設けられていてもよい。
【0015】
本発明の樹脂積層体は、上記構成を有するため二段ヒートシール性を発揮することができる。本明細書において、二段ヒートシール性とは、ヒートシール条件によって、易開封性(イージーピール性)と難開封性(完全ピール性)のいずれかが発揮される性質を言う。すなわち、二段ヒートシール性を有する樹脂積層体を用いてヒートシールを行う場合、ヒートシール条件により、イージーピール性と完全ピール性を使い分けることができる。例えば、二段ヒートシール性を有する樹脂積層体を用いてヒートシールする際に、ヒートシール温度を低くした場合には、イージーピール性が発揮され、ヒートシール温度を高くした場合には、完全ピール性が発揮される。また、二段ヒートシール性を有する樹脂積層体を用いてヒートシールを行う場合、一部分においてイージーピール性が発揮されるようにヒートシールを行い、他部分において完全ピール性が発揮されるようにヒートシールを行うこともできる。例えば、複数種の食品が区分けされて充填されている容器に対してヒートシールする行う場合、第1の区分け箇所においてイージーピール性が発揮されるようにヒートシールを行い、第2の区分け箇所において完全ピール性が発揮されるようにヒートシールを行うこともできる。
【0016】
なお、本明細書においては、樹脂積層体を例えば被着体にヒートシールした場合、シール強度が7.0N/15mm未満であればイージーピール性があると判定でき、シール強度が7.0N/15mm以上であれば完全シール性があると判定できる。
【0017】
また、本発明の樹脂積層体は、防湿性にも優れており、例えば、食品や医薬品等を密閉する用途にも適している。本明細書においては、樹脂積層体の防湿性は、樹脂積層体の透湿度によって評価することができる。より具体的には、樹脂積層体を透湿度測定装置にセットし、40℃相対湿度90%の条件下で透湿度を測定する。40℃相対湿度90%の条件下における樹脂積層体の透湿度は50g/m2/24hr以下であることが好ましく、40g/m2/24hr以下であることがより好ましく、30g/m2/24hrであることがさらに好ましい。
【0018】
さらに、本発明の樹脂積層体は、バイオマス度が高く、温室効果ガスの削減にも寄与する。このような樹脂積層体は、環境への負荷が低減された包装材料となり得る。なお、バイオマス度は、ASTM D 6866「Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of NaturalRange Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis(放射性炭素と同位体比率重量分析を用いた自然領域の材料のバイオベース率の決定試験法)」に準拠してバイオマスカーボン測定試験を行うことにより算出できる。また、バイオマス度は文献値等を参照してもよい。
【0019】
また、本発明の樹脂積層体は紙基材を備えるため生分解性にも優れている。さらに、混合樹脂層に生分解性を有するバイオマス樹脂を配合することでより優れた生分解性を発揮することも可能となる。
【0020】
樹脂積層体の全体の厚みは20~300μmであることが好ましい。樹脂積層体の厚みを上記範囲内とすることにより、強度と柔軟性のバランスを保つことができ、包装用途に好適である。また、樹脂積層体の引張強度は2N/15mm以上であることが好ましく、4N/15mm以上であることがより好ましく、、6N/15mm以上であることがさらに好ましい。樹脂積層体の引張強度を上記範囲内とすることにより、包装時の破断等を抑制することができる。
【0021】
(紙基材)
紙基材はパルプを含有する。本実施形態において用いることができるパルプとしては、木材パルプ、綿、麻、古紙パルプ、非木材パルプ等を挙げることができる。中でも、木材パルプを用いることが好ましく、木材パルプとしては、針葉樹由来パルプ(NKP)と広葉樹由来パルプ(LKP)等を挙げることができる。非木材パルプとしては、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。本実施形態で用いる紙基材は、パルプを90質量%以上含有するものである。紙基材としては、具体的には、上質紙、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙、クラフト紙等を用いることができる。
【0022】
中でも、パルプは、針葉樹由来パルプ(NKP)であることが好ましい。パルプに針葉樹由来パルプ(NKP)を用いることで、紙基材の強度を効果的に高めることができる。また、紙基材に印刷を施す場合などには、印刷適性を高めるために広葉樹由来パルプ(LKP)を併用してもよい。
【0023】
パルプのフリーネスは300mlcsf~600mlcsfであることが好ましい。パルプのフリーネスはJIS P 8121-2:2 パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法で規定されるカナディアンスタンダードフリーネスである。パルプのフリーネスを上記範囲内とすることにより、紙基材の強度を効果的に高めることができる。
【0024】
紙基材の坪量は、特に限定されるものではないが、15g/m2以上であることが好ましく、20g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、紙基材の坪量は、200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以下であることがさらに好ましい。なお、紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。紙基材の坪量を上記範囲内とすることにより、樹脂積層体の強度と柔軟性のバランスを保つことができる。これにより、樹脂積層体に二段ヒートシール性を付与しやすくなる。
【0025】
紙基材の厚みは、厚みは20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。また、紙基材の厚みは250μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、
150μm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
紙基材の引裂強度や破裂強度、耐水性、湿潤強度などは、包装する用途に応じて適宜調整することができる。例えば、パルプ種、フリーネス、坪量、内添剤(紙力増強剤や湿潤紙力増強材、ロジンサイズ、アルケルケテンダイマー、ASAなど)などを用いることで適宜調整することができる。
【0027】
紙基材は、パルプの他に任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、例えば、内添サイズ剤、外添サイズ剤、硫酸バンド、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、定着剤、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤等を含んでいてもよい。
【0028】
(混合樹脂層)
混合樹脂層は、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを含有する。混合樹脂層において、ポリオレフィン樹脂とバイオマス樹脂は略均一に混合されていることが好ましい。本明細書においては、混合樹脂層において任意の10点における樹脂比率を算出した場合、任意の10点における樹脂比率に5質量%以上の差が生じていない場合に、ポリオレフィン樹脂とバイオマス樹脂は略均一に混合されていると判定することができる。なお、樹脂比率は赤外性分光法や電子顕微鏡観察などで決定される。
【0029】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンやエチレン由来の構造単位が50モル%以上の共重合ポリオレフィン樹脂を挙げることができる。また、ポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリオレフィン樹脂であってもよい。植物由来ポリオレフィン樹脂は、例えば、以下のようにして得ることができる。まず、とうもろこしやジャガイモなどのデンプンや植物由来のセルロースを糖化後にアルコールに変換し、アルコールからエチレンを合成(植物由来のエチレン)する。さらに植物由来のエチレンからプロピレンを合成し(植物由来のプロピレン)、これらの植物由来のエチレンや植物由来のプロピレンなどのモノマーからポリマーを合成することで、植物由来のポリオレフィン樹脂が得られる。この場合、樹脂積層体のバイオマス度がより高めるため、好ましい。なお、植物由来ポリオレフィン樹脂としては、植物由来のポリエチレン樹脂、植物由来のポリプロピレン樹脂等を挙げることできる。
【0030】
バイオマス樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸、微生物産生ポリエステル、酢酸セルロース、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド1012等を挙げることができる。中でも、バイオマス樹脂はポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸及びポリアミド11からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリ乳酸であることが特に好ましい。バイオマス樹脂は生分解性を有する樹脂であることが特に好ましい。
【0031】
バイオマス樹脂の含有量は混合樹脂層の全質量に対して10~49質量%である。バイオマス樹脂の含有量は混合樹脂層の全質量に対して10質量%以上であればよく、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、バイオマス樹脂の含有量は混合樹脂層の全質量に対して49質量%以下であればよく、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。混合樹脂層におけるバイオマス樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、樹脂積層体のバイオマス度を高めつつ、樹脂積層体の防湿性をより効果的に高めることができる。また、混合樹脂層におけるバイオマス樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、樹脂積層体は二段ヒートシール性を発揮することができる。例えば、樹脂積層体を用いてヒートシールを行う際には、ヒートシール条件により、イージーピール性と完全ピール性を使い分けることができたり、部分的にイージーピール性と完全ピール性を使い分けることも可能となる。
【0032】
混合樹脂層は、ポリオレフィン樹脂とバイオマス樹脂に加えて、さらに任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては例えば、相溶化剤を挙げることができる。相溶化剤としては、例えば、水添スチレンブタジエンラバー(HSBR)、スチレンエチレンブチ レンオレフィン結晶ブロックポリマー(SEBC)、オレフィン結晶エチレンブチレンオ レフィンブロックポリマー、スチレンエチレンブチレンスチレンブロックポリマー、ヤシパーム油から合成されるポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリシジルメタクリレート、主鎖がポリオレフィンもしくはポリカーボネート、側差がビニル系ポリマーのグラフトコポリマー等を挙げることができる。なお、市販の相溶化剤としては、例えば、太陽化学製のチラバゾール、日油製のモディパー、住友化学製のボンドファースト等を挙げることができる。混合樹脂層が相溶化剤を含む場合、相溶化剤の含有量は、混合樹脂層の全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、相溶化剤の含有量は、混合樹脂層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。混合樹脂層が相溶化剤を含むことにより、ポリオレフィン樹脂とバイオマス樹脂の均一分散性がより高まり、ヒートシール特性に優れかつ防湿性に優れた樹脂積層体が得られやすくなる。
【0033】
混合樹脂層の坪量は、特に限定されるものではないが5g/m2以上であることが好ましく、8g/m2以上であることがより好ましく、12g/m2以上であることがさらに好ましい。また、混合樹脂層の坪量は、40g/m2以下であることが好ましく、35g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以下であることがさらに好ましい。なお、混合樹脂層の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。混合樹脂層の坪量を上記範囲内とすることにより、樹脂積層体に二段ヒートシール性を付与しやすくなる。また、混合樹脂層の坪量を上記範囲内とすることにより、樹脂積層体はより優れた防湿性を発揮しやすくなる。
【0034】
混合樹脂層の厚みは、5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。また、混合樹脂層の厚みは40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
混合樹脂層に含まれる他の任意成分としては、着色剤、紫外線吸収剤、光散乱剤、防腐剤、吸湿剤、酸化防止剤、填料等を挙げることができる。
【0036】
混合樹脂層は溶融押出法により形成される層であることが好ましい。すなわち、混合樹脂層は溶融混練樹脂層であることが好ましい。また、混合樹脂層は単層でもよく、2層以上が積層された層構造であってもよい。例えば、混合樹脂層は、樹脂比率や任意成分の比率を変えた混合樹脂層を2層以上積層してなる層であってもよい。
【0037】
(任意層)
樹脂積層体は、紙基材と混合樹脂層に加えて、さらに任意層を有するものであってもよい。例えば、樹脂積層体は、紙基材の少なくとも一方の面側に単一樹脂層を有するものであってもよい。この場合、樹脂積層体は、紙基材/単一樹脂層/混合樹脂層の順に積層された積層体であることが好ましい。なお、単一樹脂層は、ポリオレフィン樹脂層であることが好ましく、単一樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンやエチレン由来の構造単位が50モル%以上の共重合ポリオレフィン樹脂を挙げることができる。また、単一樹脂層を構成するポリオレフィン樹脂は、植物由来ポリオレフィン樹脂であってもよい。
【0038】
図2は、樹脂積層体100が単一樹脂層30を含む場合の構成を説明する断面図である。
図2に示されるように樹脂積層体100は、紙基材10、単一樹脂層30及び混合樹脂層20をこの順で有してもよい。なお、単一樹脂層30は紙基材10の両面に設けられてもよい。
【0039】
樹脂積層体が有する他の任意層としては、例えば、無機層、アンカー層、接着剤層、印刷層、加飾層、遮光層等を挙げることができる。
【0040】
(樹脂積層体の製造方法)
本発明は、上述した樹脂積層体の製造方法に関するものでもある。樹脂積層体の製造方法は、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを溶融混合し、樹脂ブレンドを得る工程と、樹脂ブレンドを、塗工法もしくは溶融押出法により、紙基材上に展開する工程とを少なくとも含む。中でも、樹脂ブレンドを紙基材上に展開する工程では溶融押出法を用いることが好ましい。
【0041】
樹脂ブレンドを得る工程では、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂とを溶融混合する。この際の溶融温度は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。また、溶融温度は、330℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
なお、樹脂ブレンドを得る工程の前には、ポリオレフィン樹脂と、バイオマス樹脂をドライブレンドする工程を設けてもよい。ドライブレンド工程では、ポリオレフィン樹脂のペレットと、バイオマス樹脂のペレットを混合することが好ましい。
【0043】
樹脂ブレンドを紙基材上に展開する工程の後には、紙基材と混合樹脂層の接着性を高めるために、加圧冷却する工程が設けられることが好ましい。この際の冷却温度は、80℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
【0044】
また、樹脂積層体の製造方法においては、樹脂ブレンドを紙基材上に展開する工程の前に、紙基材上に他の層を形成する工程を設けてもよく、紙基材に表面処理を施す工程を設けてもよい。
【0045】
(用途)
本発明の樹脂積層体は、ヒートシール性を有する樹脂積層体であるため、シーラントフィルム(ヒートシールフィルム)として用いることができる。また、本発明は、上述した樹脂積層体を備える包装材料に関するものであってもよい。包装材料は、上述した樹脂積層体からなるものであってもよく、上述した樹脂積層体にさらに他の層を積層してなるものであってもよい。また、包装材料は上述した樹脂積層体を成形加工してなるものであってもよい。
【0046】
また、本発明の樹脂積層体は、袋状成形に用いられる包装材料に関するものであってもよい。例えば、樹脂積層体を用いて、内容物を袋状に包装する(ピロー包装)や、内容物をキャラメル包装してもよい。また、樹脂積層体を用いて、四方シールや三方シールすることで内容物を包装してもよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下において、実施例1~7はそれぞれ、参考例1~7と読み替えるものとする。
【0048】
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE)であるノバテックLD LC520(日本ポリエチレン製、MFR3.6g/10min(JIS K 6922-2 温度190℃ 荷重2.16kg)、密度0.923g/cm3、融点111℃)のペレットを75質量部と、バイオマス樹脂としてポリ乳酸であるLuminiy PLA L-175(Total Corbion PLA製、MFR4.5g/10min(温度190℃ 荷重2.16kg)、密度1.25g/cm3、融点170℃、バイオマス度100%)のペレットを25質量部を、ドライブレンドした後に、二軸溶融混装置で混練し、混合ペレットを得た。混練温度は220℃で行った。得られた混合ペレットを、単軸押出機とTダイを備えた装置に供給し、厚さが20μmになるようにフィルム状に300℃で溶融押出した後に、紙基材(王子マテリア製 未晒クラフト紙 坪量70g/m2)に積層しクーリングロール(温度20℃)にニップロールで圧をかけて樹脂積層体を得た。
【0049】
(実施例2)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を90質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0050】
(実施例3)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を80質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0051】
(実施例4)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を65質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を35質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0052】
(実施例5)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を55質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を45質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0053】
(実施例6)
Luminiy PLA L-175の代わりに、ポリブチレンサクシネート樹脂であるBioPBS F791(三菱ケミカル製、MFR5g/10min(温度190℃ 荷重2.16kg)、密度1.26g/cm3、融点115℃、バイオマス度50%)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0054】
(実施例7)
Luminiy PLA L-175の代わりに、ポリヒドロキシアルカンであるセミクリスタリンPHA(CJ BIO製、MFR10g/10min(温度190℃ 荷重2.16kg)、密度1.23g/cm3、融点119℃、バイオマス度100%)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0055】
(実施例8)
ノバテックLD LC520の代わりに、植物由来ポリエチレン(バイオPE)であるSBC818(Braskem製、MFR8g/10min(温度190℃ 荷重2.16kg)、密度0.916g/cm3、融点108℃、バイオマス度95%)を用いた以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0056】
(比較例1)
ノバテックLD LC520のペレットを、単軸押出機とTダイを備えた装置に供給し、厚さが20μmになるようにフィルム状に溶融押出すると同時に紙基材(王子マテリア製 未晒クラフト紙 坪量70g/m2)に積層し、クーリングロール(温度20℃)にニップロールで圧をかけて樹脂積層体を得た。
【0057】
(比較例2)
Luminiy PLA L-175のペレットを、単軸押出機とTダイを備えた装置に供給し、厚さが20μmになるようにフィルム状に溶融押出すると同時に紙基材(王子マテリア製 未晒クラフト紙 坪量70g/m2)に積層し、クーリングロール(温度20℃)にニップロールで圧をかけて樹脂積層体を得た。
【0058】
(比較例3)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を95質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を5質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0059】
(比較例4)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を40質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を60質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0060】
(比較例5)
ノバテックLD LC520のペレットの配合量を25質量部に変更し、Luminiy PLA L-175のペレットの配合量を75質量部に変更した以外は実施例1と同様にして樹脂積層体を得た。
【0061】
(評価)
<透湿度>
実施例及び比較例で得られた樹脂積層体を透湿度測定装置(LYSSY社製、L80-4000)にセットし、40℃相対湿度90%の条件下で透湿度を測定した。
【0062】
<ヒートシール強度>
実施例及び比較例で得られた樹脂積層体の樹脂層同士を重ねてをヒートシールテスター(テスター産業製、TP701B)にセットし、シール温度を140℃又は170℃として貼合した。貼合時の条件は、0.55MPaで1秒間とした。その後、得られた貼合品を幅15mmに切断し、テンシロンを用いてT字ピール強度を測定し、このT字ピール強度をヒートシール強度とした。なお、表1において、シール強度が7.0N/15mm未満であればイージーピール性(樹脂層界面での剥がれ)があり、シール強度が7.0N/15mm以上であれば完全シール性(紙基材が材破)があると評価した。
【0063】
<バイオマス度>
バイオマス度は、全樹脂に対するバイオマス度であり、それぞれのバイオマス樹脂のバイオマス度から算出した。
【0064】
【0065】
実施例で得られた樹脂積層体においては、ヒートシール温度が140℃の場合には、シール強度が7.0N/15mm未満であるためイージーピール性が発揮され、ヒートシール温度が170℃の場合にはシール強度が7.0N/15mm以上であるため完全ピール性が発揮されていた。このように、実施例で得られた樹脂積層体は、二段ヒートシール性(ヒートシール条件により、イージーピール性と完全ピール性を使い分けることができる性質)を有していた。また、実施例で得られた樹脂積層体はバイオマス度が高く、防湿性にも優れていた。
【符号の説明】
【0066】
10 紙基材
20 混合樹脂層
30 単一樹脂層
100 樹脂積層体