(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】画像読取装置、および、画像読取方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20241203BHJP
H04N 1/191 20060101ALI20241203BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H04N1/407
H04N1/191
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2020198914
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】中山 博登
【審査官】橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-148050(JP,A)
【文献】特開2016-163168(JP,A)
【文献】特開2008-311963(JP,A)
【文献】特開平10-257263(JP,A)
【文献】特開平02-295364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04- 1/207
H04N 1/40- 1/409
G06T 1/00
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿から画像データを読み取る画像読取部と、
前記読み取った画像データを記憶する記憶部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
読取可能領域の先端から読取開始位置までの
間に存在するマージンの副走査方向の長さが所定値未満である場合に、前記読み取った画像データを地色補正せずに、前記読み取った画像データを前記記憶部に記憶させ、
前記
マージンの副走査方向の長さが前記所定値以上である場合に、前記読み取った画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記読み取った画像データを傾き補正し、
前記
マージンの副走査方向の長さが前記所定値未満である場合に、前記読み取った画像データを傾き補正した結果が正常であったときに、前記傾き補正した画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記読み取った画像データの、基準方向に対する傾き角度が所定角度以下である場合に、前記読み取った画像データを傾き補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記画像データは、前記画像読取部が読み取った値であって、前記値が小さいほど濃度が高く、前記値が大きいほど濃度が低い、
前記読み取った画像データにおける読取開始位置の
画像データの濃度の値が基準値より小さいときに、当該読み取った画像データを地色補正する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記読取開始位置において読み取られた画像データの値の平均値を前記地色の濃度値として前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像読取部のモードが地色補正に適さない場合、前記読み取った画像データを地色補正しない
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
原稿から画像データを読み取って、読み取った画像データを記憶部に記憶させる画像読取方法であって、
読取可能領域の先端から読取開始位置までの
間に存在するマージンの副走査方向の長さが所定値未満である否かを判定するステップと、
前記
マージンの副走査方向の長さが所定値未満であると判定した場合に、前記読み取った画像データを地色補正せずに、前記読み取った画像データを前記記憶部に記憶させるステップと、
前記
マージンの副走査方向の長さが前記所定値以上であると判定した場合に、前記読み取った画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させるステップと、
を含むことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、および、画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文字や絵、写真等の原稿を読み取り、デジタルの画像データに変換する画像読取装置が知られている。この種の画像読取装置において、原稿が白紙ではなく、下地色がついた色紙である場合に、画像データに対し、下地色の影響を除去するために地色補正処理を施すものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の画像読取装置は、初めに、ユーザ設定の余白を考慮しながら、原稿の先端から1ライン分の画素値を読み取り、その画素値を用いて、地色補正値を算出する。その後、特許文献1の画像読取装置は、その1ライン分の領域よりも原稿の他端側の残りの領域を読み取り、その読み取った領域の画素値を、先に算出した地色補正値により地色補正する。これにより、特許文献1の画像読取装置は、原稿の読取に要する時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の画像読取装置において、余白なしが設定された状態で原稿の先端ぎりぎりを読み取った場合、原稿外の領域、エッジ、影等を読み取るおそれがある。原稿外の領域等を読み取った場合、原稿の先端から1ライン分の領域の画素値を用いると、当該画素値が原稿外の領域等のものであるので、当該原稿の地色を正しく認識できないという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、地色補正を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明の画像読取装置は、原稿から画像データを読み取る画像読取部と、前記読み取った画像データを記憶する記憶部と、制御部と、を備えている。前記制御部は、読取可能領域の先端から読取開始位置までの長さである余白が所定値未満である場合に、前記読み取った画像データを地色補正せずに、前記読み取った画像データを前記記憶部に記憶させ、前記余白が前記所定値以上である場合に、前記読み取った画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させる。
【0008】
余白が所定値未満である場合、機械系、原稿の置き方、搬送時の誤差等により地色を誤って認識する可能性がある。上記によれば、余白が所定値未満である場合に地色補正を行わないので、誤って認識した可能性のある地色を用いて読み取った画像データを地色補正するのを防ぐことができる。それゆえ、上記によれば、地色補正を適切に行うことができる。
【0009】
また、画像読取装置は、前記制御部が、前記読み取った画像データを傾き補正し、前記余白が前記所定値未満である場合に、前記読み取った画像データを傾き補正した結果が正常であったときに、前記傾き補正した画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させてもよい。
【0010】
余白が所定値未満の場合であっても、傾き補正が正常に行われることにより、読み取った画像データの先端が本来の原稿の状態になるので、正しく地色補正することができるという効果がある。
【0011】
また、画像読取装置は、前記制御部が、前記読み取った画像データの、基準方向に対する傾き角度が所定角度以下である場合に、前記読み取った画像データを傾き補正してもよい。
【0012】
傾き補正の対象となる画像データの傾きを制限することにより、過度に傾いている画像データを傾き補正の対象から除外するので、正しく傾き補正することができるという効果がある。
【0013】
また、画像読取装置は、前記制御部が、前記読み取った画像データにおける読取開始位置の地色の濃度値が基準値以上であるときに、当該読み取った画像データを地色補正してもよい。
【0014】
地色補正の対象となる画像データの地色の濃度値を制限することにより、濃度の高い地色を地色補正の対象から除外するので、正しく地色補正することができるという効果がある。
【0015】
また、画像読取装置は、前記制御部が、前記読取開始位置において読み取られた画像データの値の平均値を前記地色の濃度値として前記記憶部に記憶させてもよい。
【0016】
読取開始位置における画像データの値の平均値により地色の濃度値を特定するので、地色の濃度値を画像読取の早い段階に求めることができ、読み取った画像データ1ラインごとに地色補正することができるという効果がある。
【0017】
また、画像読取装置は、前記制御部が、前記画像読取部のモードが地色補正に適さない場合、前記読み取った画像データを地色補正しないこととしてもよい。
【0018】
画像読取部のモードに応じて地色補正するか否かを判定するので、地色補正に適さない画像データを地色補正するのを防ぐことができる。
【0019】
さらに、本発明の画像読取方法は、原稿から画像データを読み取って、読み取った画像データを記憶部に記憶させる画像読取方法であって、読取可能領域の先端から読取開始位置までの長さである余白が所定値未満である否かを判定するステップと、前記余白が所定値未満であると判定した場合に、前記読み取った画像データを地色補正せずに、前記読み取った画像データを前記記憶部に記憶させるステップと、前記余白が前記所定値以上であると判定した場合に、前記読み取った画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データを前記記憶部に記憶させるステップと、を含む。
【0020】
上記によれば、余白が所定値未満である場合に地色補正を行わない。その結果、機械系、原稿の置き方、搬送時の誤差等により誤って認識した可能性のある地色を用いて、読み取った画像データを地色補正するのを防ぐことができる。
【0021】
上記の画像読取装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記録媒体も、新規で有用である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、地色補正を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るスキャナ3のモードを示す表である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るマージンと、原稿の読取との関係を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る地色補正の処理を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る画像読取処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態1に係る地色補正フラグの設定処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態1に係る補正係数の算出処理を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態2に係る傾き補正の処理概要を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る地色補正の判定概要を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態2に係る画像読取処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態2に係る画像読取処理を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態2に係る地色補正フラグの設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、
図1~7を用いて、詳細に説明する。
【0025】
(複合機1の構成)
図1は、本実施形態に係る複合機1のハードウェア構成を示すブロック図である。複合機1は、画像読取装置の一例である。
図1に示すように、複合機1は、プリンタ2、スキャナ3、CPU21、ROM22、RAM23、EEPROM(登録商標)24、ASIC26を備え、これらはバスライン25を介してお互いに接続されている。
【0026】
プリンタ2は、スキャナ3で読み取られた画像データ、外部から入力された画像データ等に基づいて、記録用紙上に画像を記録する。スキャナ3は、原稿から画像データを読み取る。詳細には、スキャナ3は、画像読取部の一例としての読取部33(
図3参照)を備えている。読取部33は、CIS(Contact Image Sensor)であり、光源、および、受光部を有している。読取部33の光源は、読取ガラス32に載置された原稿5に対して光を照射する。読取部33の受光部は、原稿5によって反射された光を受光することによって、原稿を読み取る。操作パネル4は、プリンタ2、スキャナ3等を操作するためのものである。なお、本発明の実施形態は、FBS(Flat Bed Scanner)およびADF(Auto Document Feeder)の両方に適用可能である。
【0027】
制御部の一例としてのCPU21は、ROM22、RAM23等に記憶される固定値、プログラム、複合機1が備えている各機能の制御等にしたがって、バスライン25により接続された各部を制御するものである。ROM22は、複合機1で実行される各種の制御プログラムを記憶する書換不能なメモリである。
【0028】
記憶部の一例としてのRAM23は、各種のデータを記憶するための書換可能なメモリである。RAM23は、地色補正値メモリ231および画像メモリ232を含む。地色補正値メモリ231は、スキャナ3により読み取った画素値を地色補正する際に用いられる地色補正値を記憶するメモリである。画像メモリ232は、スキャナ3が原稿から読み取った画像データを記憶するメモリである。
【0029】
CPU21は、読取可能領域の一例としての読取ガラス32の先端から読取開始位置までの長さである余白が所定値未満である場合に、読み取った画像データを地色補正せずに、読み取った画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。CPU21は、余白が所定値以上である場合に、読み取った画像データを地色補正して、当該地色補正した画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。詳細は、後述する。
【0030】
(スキャナ3のモード)
図2は、本実施形態に係るスキャナ3のモードを示す表である。複合機1は、操作パネル4においてユーザ操作により設定された、スキャナ3の読取部33のモードに応じて、地色補正を行うか、行わないかを決定する。
【0031】
図2に示すように、「操作」が「スキャン」であり、「読取モード」が「モノクロ」または「グレー」であるモードの場合、複合機1は、地色補正を行う。「操作」が「コピー」であり、「読取モード」が「モノクロ」であり、「原稿種別」が「Text」であるモードの場合、複合機1は、地色補正を行う。一方、「操作」が「コピー」であり、「読取モード」が「モノクロ」であり、「原稿種別」が「Photo」であるモードの場合、複合機1は、地色補正を行わない。さらに、「操作」が「ファックス」であり、「読取モード」が「モノクロ」であるモードの場合、複合機1は、地色補正を行う。
【0032】
(マージンM、および、原稿5の読取)
図3は、本実施形態に係るマージンMと、原稿5の読取との関係を示す図である。スキャナ3は、白黒テープ31、読取ガラス32、および、読取部33を備えている。白黒テープ31は、白色の部分と、黒色の部分とからなる。そして、白黒テープ31は、読取部33のスキャン方向、すなわち、図の上側から下側への方向に向かって、白色から黒色に変化する箇所を白黒境界位置P1として有する。読取ガラス32は、その上面に原稿5が載せられ、原稿5の読取面が接する透明なガラスである。
【0033】
読取部33は、原稿5から画像データを読み取る。読取部33は、読取ガラス32の下面を移動しながら、読取ガラス32の上面に接する、原稿5の読取面を読み取る。CPU21は、ユーザ設定のマージンMに応じて、白黒テープ31の白黒境界位置P1を通過してからの読取開始位置までの距離を決定する。マージンMは、読取ガラス32の先端から読取開始位置までの長さであり、余白とも呼ばれる。そして、読取部33は、白黒境界位置P1から当該距離だけ移動した位置を読取開始位置として、原稿5からの画像データの読取を開始する。
【0034】
図3に示すように、例えば、マージンMが0mmである場合、読取開始位置はP2、すなわち、読取ガラス32の先端になる。その場合、読取終了位置は原稿5の後端になり、その結果、読取範囲RR2の副走査方向の長さは、原稿5の副走査方向の長さLと一致する。一方、マージンMが3mmである場合、読取開始位置はP3、すなわち、読取ガラス32の先端から3mm後になる。その場合、読取終了位置は原稿5の後端から3mm手前になり、その結果、読取範囲RR3の副走査方向の長さは、原稿5の長さLから6mmを引いた長さとなる。
【0035】
(地色補正)
図4は、本実施形態に係る地色補正の処理を示す図である。CPU21は、スキャナ3の読取部33が原稿5から読み取った画像データRDにおける、読取部33の読取開始位置における主走査方向の1ライン分の地色の濃度値に応じて、読み取った画像データRDを地色補正するか否かを決定する。
【0036】
図4において、横軸は主走査方向の1ライン分の画素PXの位置を示し、縦軸は当該画素PXの画像データRDを示す。画像データRDは、8ビット(0~255)のデータであり、読取部33が原稿5を読み取った値がAD変換されたものである。画像データRDは、値が小さいほど濃度が高く、値が大きいほど濃度が低いことを示している。
【0037】
図4のV1は、画像データRDが(1)である場合の地色濃度値である。地色濃度値V1は、画像データRDの値を平均した値である。
【0038】
CPU21は、主走査方向の1ライン分の地色濃度値V1が、基準値である閾値THより小さいときに、読み取った画像データRDを地色補正しない。
【0039】
一方、
図4のV2は、画像データRDが(2)である場合の地色濃度値である。地色濃度値V2は、画像データRDの値を平均した値である。CPU21は、主走査方向の1ライン分の地色濃度値V2が閾値TH以上であるときに、読み取った画像データRDを地色補正する。その際、CPU21は、地色濃度値V2から補正係数を算出した上で、当該補正係数を用いて、画像データRDの残りの領域を地色補正する。
【0040】
(画像読取処理)
図5~7は、本実施形態に係る複合機1の処理を示すフローチャートである。
図5は、CPU21による画像読取処理を示す。以下、ステップ番号の順序に従って、説明する。
【0041】
(ステップS501)
まず、CPU21は、地色補正フラグFを真または偽に設定する。具体的には、CPU21は、地色補正フラグFを真としての値1、または、偽としての値0に設定する。そして、CPU21は、地色補正フラグFの値1または値0をRAM23に記憶させる。地色補正フラグFに設定された真は地色補正をすることを示し、偽は地色補正をしないことを示す。地色補正フラグFは、ステップS506およびS508においてCPU21に参照される。設定の詳細については、
図6を参照して別途説明する。
【0042】
(ステップS502)
次に、CPU21は、読取開始位置を設定する。詳細には、
図3に示したように、CPU21は、白黒境界位置P1から読取ガラス32の先端までの長さに、操作パネル4においてユーザ操作により設定されたマージンMを加算した値を読取開始位置として設定する。
【0043】
(ステップS503)
続いて、CPU21は、スキャナ3に読取部33の移動または原稿5の搬送を行わせる。すなわち、画像読取機構がFBSである場合、CPU21は、スキャナ3に読取部33の移動開始を指示する。一方、画像読取機構がADFである場合、CPU21は、スキャナ3に原稿5の搬送開始を指示する。これにより、スキャナ3は、読取部33の移動または原稿5の搬送を開始する。
【0044】
(ステップS504)
CPU21は、スキャナ3から読取部33または原稿5が読取開始位置に到達した旨の通知を受けたか否かを判定する。当該通知を受けた場合(ステップS504にてYES)、CPU21は、ステップS505の処理を実行する。一方、当該通知を受けていない場合(ステップS504にてNO)、CPU21は、ステップS504の判定を繰り返す。
【0045】
(ステップS505)
CPU21は、スキャナ3に画像データの読取開始を指示する。これにより、スキャナ3は、画像データの読取を開始する。なお、ステップS506~ステップS510の処理は、スキャナ3が読み取った画像データの1ラインごとに行われる。
【0046】
(ステップS506)
CPU21は、スキャナ3が読み取った画像データが1ライン目であり、かつ、地色補正フラグFが真であるか否かを判定する。画像データが1ライン目であり、かつ、地色補正フラグFが真である場合(ステップS506にてYES)、CPU21は、ステップS507の処理を実行する。一方、上記に該当しない場合、すなわち、読み取った画像データが1ライン目でない、または、地色補正フラグFが偽である場合(ステップS506にてNO)、CPU21は、ステップS508の判定を実行する。なお、読み取った画像データが1ライン目でないとは、2ライン目以降であることを示す。
【0047】
(ステップS507)
CPU21は、補正係数ACを算出し、当該補正係数ACをRAM23に記憶させる。算出の詳細については、
図7を参照して別途説明する。
【0048】
(ステップS508)
CPU21は、地色補正フラグFが真であるか否かを判定する。地色補正フラグFが真である場合(ステップS508にてYES)、CPU21は、ステップS509の処理を実行する。地色補正フラグFが真でない、すなわち、偽である場合(ステップS508にてNO)、CPU21は、ステップS510の処理を実行する。
【0049】
(ステップS509)
CPU21は、読み取った画像データを補正係数ACにより地色補正して、地色補正した画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0050】
(ステップS510)
CPU21は、読み取った画像データを地色補正せずに、そのままRAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0051】
(ステップS511)
CPU21は、画像データの読取が終了したか否かを判定する。読取が終了した場合(ステップS511にてYES)、CPU21は、画像読取処理を終了する。読取が終了していない場合(ステップS511にてNO)、CPU21は、ステップS506の判定を実行する。
【0052】
(地色補正フラグFの設定処理)
図6は、CPU21による地色補正フラグFの設定処理を示す。以下、ステップ番号の順序に従って、説明する。
【0053】
(ステップS601)
まず、CPU21は、スキャナ3のモードが地色補正に適するモードであるか否かを判定する。地色補正に適するモードである場合(ステップS601にてYES)、CPU21は、ステップS602の処理を実行する。地色補正に適するモードでない場合(ステップS601にてNO)、CPU21は、ステップS607の処理を実行する。
【0054】
(ステップS602)
CPU21は、画素PXの濃度値に対する閾値THを初期化して、当該閾値THをRAM23に記憶させる。閾値THは、
図4に示したように、地色補正を行うか否かを判定するための値である。
【0055】
(ステップS603)
CPU21は、マージンMが所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、例えば、1.0mm等である。マージンMが所定値以上である場合(ステップS603にてYES)、CPU21は、ステップS604の処理を実行する。マージンMが所定値未満である場合(ステップS603にてNO)、CPU21は、ステップS605の処理を実行する。
【0056】
(ステップS604)
CPU21は、地色補正フラグFに真を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0057】
(ステップS605)
CPU21は、地色補正フラグFに真を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。
【0058】
(ステップS606)
CPU21は、閾値THに濃度の最大値を設定して、当該閾値THをRAM23に記憶させる。この閾値THの設定により、
図7に示す補正係数の算出処理において、地色補正フラグFが偽に設定されることになる。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0059】
(ステップS607)
CPU21は、地色補正フラグFに偽を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。すなわち、CPU21は、読み取った画像データを地色補正しない。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0060】
(補正係数ACの算出処理)
図7は、CPU21による補正係数ACの算出処理を示す。以下、ステップ番号の順序に従って、説明する。
【0061】
(ステップS701)
まず、CPU21は、スキャナ3から画像データの1ライン目の地色濃度値Vを取得する。画像データの1ライン目は、読み取った画像データにおける読取開始位置の画素データを含む。地色濃度値Vは、1ライン目の画像データを平均した値である。CPU21は、画像データの1ライン目の中央に位置する画像データの値の平均値を地色濃度値VとしてRAM23に記憶させてもよい。
【0062】
(ステップS702)
次に、CPU21は、地色濃度値Vが閾値TH以上であるか否かを判定する。地色濃度値Vが閾値TH以上である場合(ステップS702にてYES)、CPU21は、読み取った画像データを地色補正するために、ステップS703の処理を実行する。地色濃度値Vが閾値TH未満である場合(ステップS702にてNO)、CPU21は、ステップS704の処理を実行する。
【0063】
画像データRDは、8ビット(0~255)のAD変換された値であり、値が小さいほど濃度が高く、値が大きいほど濃度が低いことを示している。
【0064】
画像データRDの値が閾値以上、すなわち、画像データRDの濃度の値が閾値より小さい場合は、CPU21は、読み取った画像データRDに対して地色補正を行う。
【0065】
画像データRDの値が閾値未満、すなわち、画像データRDの濃度の値が閾値以上の場合は、CPU21は、読み取った画像データRDに対して地色補正を行わない。
【0066】
(ステップS703)
CPU21は、地色補正に用いる補正係数ACを算出する。そして、CPU21は、補正係数ACの算出処理を終了する。
【0067】
(ステップS704)
CPU21は、地色補正フラグFに偽を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。そして、CPU21は、補正係数ACの算出処理を終了する。
【0068】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。また、実施形態1で詳細に説明した事項は、簡単な説明だけ行う。
【0069】
図8は、本実施形態に係る傾き補正の処理概要を示す模式図である。
図8右図に示すように、原稿5が読取ガラス32に対して傾いていると、読み取った画像データの1ライン目LN1が原稿5ではないので、1ライン目LN1を用いても正しく地色補正することはできない。
【0070】
そこで、
図8左図に示すように、読み取った画像データを傾き補正することにより、傾き補正した画像データの1ライン目LN1では、原稿5ではないデータが本来の原稿5のデータに置き換わる。これにより、傾き補正した画像データの1ライン目LN1を用いることにより、正しく地色補正することができる。
【0071】
図9は、本実施形態に係る地色補正の判定概要を示すフローチャートである。
【0072】
(ステップS901)
まず、CPU21は、現在の設定モードが地色補正するモードであるか否かを判定する。地色補正するモードである場合(ステップS901にてYES)、CPU21は、読み取った画像データを傾き補正し、ステップS902の判定を実行する。地色補正するモードでない場合(ステップS901にてNO)、CPU21は、ステップS905の処理を実行する。
【0073】
(ステップS902)
CPU21は、マージンMが所定値以上であるか否かを判定する。所定値は、例えば、1.0mm等である。マージンMが所定値以上である場合(ステップS902にてYES)、CPU21は、ステップS904の処理を実行する。マージンMが所定値未満である場合(ステップS902にてNO)、CPU21は、ステップS903の判定を実行する。
【0074】
(ステップS903)
CPU21は、読み取った画像データを傾き補正した結果が正常であったか否かを判定する。傾き補正した結果が正常であった場合(ステップS903にてYES)、CPU21は、ステップS904の処理を実行する。傾き補正した結果が正常でなかった場合(ステップS903にてNO)、CPU21は、ステップS905の処理を実行する。
【0075】
(ステップS904)
CPU21は、読み取った画像データを地色補正して、地色補正した画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0076】
(ステップS905)
CPU21は、読み取った画像データを地色補正しない。
【0077】
図10~12は、本実施形態に係る複合機1の処理を示すフローチャートである。
図10、11は、CPU21による画像読取処理を示す。以下、ステップ番号の順序に従って、説明する。なお、
図10のフローチャートは、ステップS1001~S1010を含む。
図11のフローチャートは、ステップS1011~S1019を含む。
【0078】
(ステップS1001)
まず、CPU21は、地色補正フラグFに真または偽を設定する。そして、CPU21は、地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。設定の詳細については、
図12を参照して別途説明する。
【0079】
(ステップS1002)
続いて、CPU21は、スキャナ3に読取部33の移動または原稿5の搬送を行わせる。
【0080】
(ステップS1003)
CPU21は、スキャナ3から読取部33または原稿5が読取開始位置に到達した旨の通知を受けたか否かを判定する。当該通知を受けた場合(ステップS1003にてYES)、CPU21は、スキャナ3に画像データの読取開始を指示した上で、ステップS1004の判定を実行する。一方、当該通知を受けていない場合(ステップS504にてNO)、CPU21は、ステップS1003の判定を繰り返す。
【0081】
(ステップS1004)
CPU21は、読み取った画像データを傾き補正するか否かを判定する。例えば、読み取った画像データの、基準方向に対する傾き角度が所定角度以下である場合に、CPU21は、読み取った画像データを傾き補正すると判定する。所定角度は、例えば、6度等である。傾き補正すると判定した場合(ステップS1004にてYES)、CPU21は、ステップS1005の処理を実行する。一方、傾き補正しないと判定した場合(ステップS1004にてNO)、CPU21は、ステップS1009の処理を実行する。
【0082】
(ステップS1005)
CPU21は、読み取った画像データにおける原稿5の先端を検出する。詳細には、CPU21は、原稿5の幅および傾きを検出する。
【0083】
(ステップS1006)
CPU21は、原稿5の先端の検出結果をRAM23に記憶させる。CPU21は、傾き角度を検出した場合、傾き補正値に当該傾き角度を設定して、当該傾き補正値をRAM23に記憶させる。
【0084】
(ステップS1007)
CPU21は、原稿5の先端の検出結果が成功か否かを判定する。検出結果が成功だった場合(ステップS1007にてYES)、CPU21は、ステップS1008の処理を実行する。検出結果が失敗だった場合(ステップS1007にてNO)、CPU21は、ステップS1009の処理を実行する。
【0085】
(ステップS1008)
CPU21は、地色補正フラグFに真または偽を設定する。そして、CPU21は、地色補正フラグFをRAM23に再度記憶させる。これは、地色補正フラグFの更新に相当する。設定の詳細については、
図12を参照して別途説明する。
【0086】
(ステップS1009)
CPU21は、傾き補正値に0度を設定して、当該傾き補正値をRAM23に記憶させる。
【0087】
(ステップS1010)
CPU21は、読み取った画像データを傾き補正した後、その傾き補正した画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。ただし、傾き補正値が0度である場合、CPU21は、読み取った画像データを傾き補正せずに、RAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0088】
(ステップS1011)
CPU21は、スキャナ3が読み取った画像データが1ライン目であり、かつ、地色補正フラグFが真であるか否かを判定する。画像データが1ライン目であり、かつ、地色補正フラグFが真である場合(ステップS1011にてYES)、CPU21は、ステップS1012の処理を実行する。一方、上記に該当しない場合、すなわち、読み取った画像データが1ライン目でない、または、地色補正フラグFが偽である場合(ステップS1011にてNO)、CPU21は、ステップS1016の判定を実行する。
【0089】
(ステップS1012)
CPU21は、スキャナ3から画像データの1ライン目の地色濃度値を取得し、地色補正に用いる補正係数ACを算出する。
【0090】
(ステップS1013)
CPU21は、地色濃度値Vが閾値TH以上であるか否かを判定する。地色濃度値Vが閾値TH以上である場合(ステップS1013にてYES)、CPU21は、ステップS1014の処理を実行する。地色濃度値Vが閾値TH未満である場合(ステップS1013にてNO)、CPU21は、ステップS1015の処理を実行する。
【0091】
(ステップS1014)
CPU21は、画像データを補正係数ACにより地色補正する。して、地色補正した画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0092】
(ステップS1015)
CPU21は、地色補正フラグFに偽を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。
【0093】
(ステップS1016)
CPU21は、地色補正フラグFが真であるか否かを判定する。地色補正フラグFが真である場合(ステップS1016にてYES)、CPU21は、ステップS1014の処理を実行する。地色補正フラグFが真でない、すなわち、偽である場合(ステップS1016にてNO)、CPU21は、ステップS1017の処理を実行する。
【0094】
(ステップS1017)
CPU21は、画像データをRAM23の画像メモリ232に記憶させる。
【0095】
(ステップS1018)
CPU21は、画像データの読取が終了したか否かを判定する。読取が終了した場合(ステップS1018にてYES)、CPU21は、ステップS1019の判定を実行する。読取が終了していない場合(ステップS1018にてNO)、CPU21は、ステップS1010の処理を実行する。
【0096】
(ステップS1019)
CPU21は、次の原稿があるか否かを判定する。次の原稿がある場合(ステップS1019にてYES)、CPU21は、ステップS1002の判定を実行する。次の原稿がない場合(ステップS1019にてNO)、CPU21は、画像読取処理を終了する。
【0097】
図12は、CPU21による地色補正フラグFの設定処理を示す。以下、ステップ番号の順序に従って、説明する。
【0098】
(ステップS1201)
まず、CPU21は、スキャナ3のモードが地色補正に適するモードであるか否かを判定する。地色補正に適するモードである場合(ステップS1201にてYES)、CPU21は、ステップS1202の処理を実行する。地色補正に適するモードでない場合(ステップS1201にてNO)、CPU21は、ステップS1207の処理を実行する。
【0099】
(ステップS1202)
CPU21は、画素PXの濃度値に対する閾値THを初期化して、当該閾値THをRAM23に記憶させる。閾値THは、
図4に示したように、地色補正を行うか否かを判定するための値である。
【0100】
(ステップS1203)
CPU21は、マージンMが所定値以上であるか否かを判定する。マージンMが所定値以上である場合(ステップS1203にてYES)、CPU21は、ステップS1205の処理を実行する。マージンMが所定値未満である場合(ステップS1203にてNO)、CPU21は、ステップS1204の判定を実行する。
【0101】
(ステップS1204)
CPU21は、傾き補正結果が成功か、失敗か、未実施かを判定する。傾き補正結果が成功だった場合(ステップS1204の「成功」)、CPU21は、ステップS1205の処理を実行する。傾き補正結果が失敗だった場合(ステップS1204の「失敗」)、CPU21は、ステップS1206の処理を実行する。傾き補正結果が未実施だった場合(ステップS1204の「未実施」)、CPU21は、ステップS1207の処理を実行する。
【0102】
(ステップS1205)
CPU21は、地色補正フラグFに真を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0103】
(ステップS1206)
CPU21は、地色補正フラグFに真を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。次に、CPU21は、閾値THに地色濃度の最大値を設定して、当該閾値THをRAM23に記憶させる。この閾値THの設定により、
図11に示すステップS1015の処理において、地色補正フラグFが偽に設定されることになる。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0104】
(ステップS1207)
CPU21は、地色補正フラグFに偽を設定して、当該地色補正フラグFをRAM23に記憶させる。そして、CPU21は、地色補正フラグFの設定処理を終了する。
【0105】
〔その他の実施形態〕
なお、実施形態1、2では、CPU21が、原稿から読み取った画像データの1ライン目から地色を求めた上で、その地色を用いて地色補正を行うが、画像データ全体を用いてもよい。例えば、CPU21は、原稿から画像データを読み終わった後で、画像データ全体における画素の濃度分布、すなわち、ヒストグラムを求めて、画素数が最も多い濃度値を地色濃度値としてもよい。
【0106】
〔ソフトウェアによる実現例〕
複合機1の制御ブロックであるCPU21は、集積回路であるICチップ等に形成された論理回路であるハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0107】
後者の場合、複合機1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体、すなわち、通信ネットワークや放送波等を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0108】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1 複合機(画像読取装置)
3 スキャナ
5 原稿
21 CPU(制御部)
23 RAM(記憶部)
32 読取ガラス(読取可能領域)
33 読取部(画像読取部)
M マージン(余白)