(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】スイッチング制御回路、力率改善回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H02M7/12 P
(21)【出願番号】P 2020209089
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆二
(72)【発明者】
【氏名】荒海 竜之介
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/030640(WO,A1)
【文献】特開2012-010574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を整流する整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタに流れるインダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて、前記インダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記インダクタ電流のピーク値の波形を前記整流電圧の波形と相似とするための前記ピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、
前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて、前記整流電圧の推定値を推定する推定回路と、
を備え
、
前記目標値出力回路は、
前記出力電圧と、前記推定値とに基づいて前記目標値を出力する、
スイッチング制御回路。
【請求項2】
請求項
1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記推定回路は、
前記トランジスタがオフされる期間の前記駆動信号を積分する積分回路である、
スイッチング制御回路。
【請求項3】
請求項
1又は請求項
2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧に基づいて、前記推定値のリップル成分を除去する除去回路を更に備える、
スイッチング制御回路。
【請求項4】
請求項
3に記載のスイッチング制御回路であって、
前記除去回路は、
前記推定回路の出力と、前記出力電圧とを乗算して、前記リップル成分を除去する乗算器である、
スイッチング制御回路。
【請求項5】
請求項
3に記載のスイッチング制御回路であって、
前記除去回路は、
前記推定回路の出力と、前記出力電圧とを加算して、前記リップル成分を除去する加算器である、
スイッチング制御回路。
【請求項6】
請求項1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記駆動信号出力回路は、
前記インダクタ電流が前記所定値より小さくなり、所定期間が経過すると前記トランジスタをオンする遅延回路を更に備える、
スイッチング制御回路。
【請求項7】
請求項
6に記載のスイッチング制御回路であって、
前記推定回路は、
前記駆動信号に応じて変化する期間であり、前記トランジスタがオンされる第1期間と、前記トランジスタがオフされてから前記インダクタ電流が前記所定値より小さくなるまでの第2期間と、前記出力電圧とに基づいて前記推定値を推定す
る、
スイッチング制御回路。
【請求項8】
交流電圧から出力電圧を生成する力率改善回路であって、
前記交流電圧を整流する整流回路と、
前記整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタと、
前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタと、
前記インダクタ電流と、前記出力電圧と、に基づいて、前記トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、
を備え、
前記スイッチング制御回路は、
前記インダクタ電流のピーク値の波形を前記整流電圧の波形と相似とするための前記ピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、
前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて、前記整流電圧の推定値を推定する推定回路と、
を含み、
前記目標値出力回路は、
前記出力電圧と、前記推定値とに基づいて前記目標値を出力する、
力率改善回路。
【請求項9】
請求項
8に記載の力率改善回路であって、
前記力率改善回路は、臨界モード又は不連続モードで動作する、力率改善回路。
【請求項10】
交流電圧を整流する整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタに流れるインダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて、前記インダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、
前記インダクタ電流のピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、
前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、
前記駆動信号に基づいて、前記整流電圧の推定値を推定する推定回路と、
を備え、
前記目標値は前記交流電圧と周期が同一で位相が揃っており振幅が比例関係であり、
前記目標値出力回路は、
前記出力電圧と、前記推定値とに基づいて前記目標値を出力する、
スイッチング制御回路。
【請求項11】
請求項1
0に記載のスイッチング制御回路であって、
前記推定回路は、
前記トランジスタがオフされる期間の前記駆動信号を積分する積分回路である、
スイッチング制御回路。
【請求項12】
請求項1
0又は請求項1
1に記載のスイッチング制御回路であって、
前記出力電圧に基づいて、前記推定値のリップル成分を除去する除去回路を更に備える、
スイッチング制御回路。
【請求項13】
請求項1
2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記除去回路は、
前記推定回路の出力と、前記出力電圧とを乗算して、前記リップル成分を除去する乗算器である、
スイッチング制御回路。
【請求項14】
請求項1
2に記載のスイッチング制御回路であって、
前記除去回路は、
前記推定回路の出力と、前記出力電圧とを加算して、前記リップル成分を除去する加算器である、
スイッチング制御回路。
【請求項15】
請求項1
0に記載のスイッチング制御回路であって、
前記駆動信号出力回路は、
前記インダクタ電流が前記所定値より小さくなり、所定期間が経過すると前記トランジスタをオンする遅延回路を更に備える、
スイッチング制御回路。
【請求項16】
請求項1
5に記載のスイッチング制御回路であって、
前記推定回路は、
前記駆動信号に応じて変化する期間であり、前記トランジスタがオンされる第1期間と、前記トランジスタがオフされてから前記インダクタ電流が前記所定値より小さくなるまでの第2期間と、前記出力電圧とに基づいて前記推定値を推定す
る、
スイッチング制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング制御回路及び力率改善回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流電圧の波形と、入力電流の波形とを相似にして力率を改善するスイッチング制御回路がある(例えば、特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-104218号公報
【文献】特開2020-014325号公報
【文献】特開2018-064410号公報
【文献】特開2017-085865号公報
【文献】特開2012-222864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイッチング制御回路には、オン時間が一定となるようトランジスタを制御し、臨界モードで電源回路を動作させるものがある。このようなスイッチング制御回路を用いた場合、電源回路のダイオードやインダクタによる影響により力率が悪化することがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、力率を改善できるスイッチング制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する本発明にかかるスイッチング制御回路の第1の態様は、交流電圧を整流する整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタに流れるインダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて、前記インダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記インダクタ電流のピーク値の波形を前記整流電圧の波形と相似とするための前記ピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、を備える。
【0007】
前述した課題を解決する本発明にかかる力率改善回路は、交流電圧から出力電圧を生成する力率改善回路であって、前記交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタと、前記インダクタに流れるインダクタ電流を制御するトランジスタと、前記インダクタ電流と、前記出力電圧と、に基づいて、前記トランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路と、を備え、前記スイッチング制御回路は、前記インダクタ電流のピーク値の波形を前記整流電圧の波形と相似とするための前記ピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、を含む。
【0008】
前述した課題を解決する本発明にかかるスイッチング制御回路の第2の態様は、交流電圧を整流する整流回路からの整流電圧が印加されるインダクタに流れるインダクタ電流と、前記交流電圧から生成される出力電圧と、に基づいて、前記インダクタ電流を制御するトランジスタのスイッチングを制御するスイッチング制御回路であって、前記インダクタ電流のピーク値の目標値を出力する目標値出力回路と、前記インダクタ電流が所定値より小さくなると前記トランジスタをオンし、前記インダクタ電流の前記ピーク値が前記目標値になると前記トランジスタをオフする駆動信号を出力する駆動信号出力回路と、を備え、前記目標値は前記交流電圧と周期が同一で位相が揃っており振幅が比例関係である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、力率を改善できるスイッチング制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】AC-DCコンバータ10の一例を示す図である。
【
図3】スイッチング制御回路42aの構成を示す図である。
【
図4】推定値Vr_estを推定する方法を説明するための図である。
【
図5】出力電圧Voutのリップル成分の発生原理を説明する図である。
【
図6】出力電圧Voutとパルス幅との関係を説明する図である。
【
図7】スイッチング制御回路42bの構成を示す図である。
【
図8】整流電圧Vrecの推定方法及びインダクタンス値Lの算出方法を説明するための図である。
【
図9】スイッチング制御回路42cの構成を示す図である。
【
図10】スイッチング制御回路42dの構成を示す図である。
【
図11】AC-DCコンバータ12の一例を示す図である。
【
図12】力率改善IC25bの構成を示す図である。
【
図13】スイッチング制御回路45の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
=====本実施形態=====
図1は、本発明の一実施形態であるAC-DCコンバータ10の構成の一例を示す図である。AC-DCコンバータ10は、商用電源の交流電圧Vacから目的レベルの出力電圧Voutを生成する昇圧チョッパー型の電源回路である。なお、AC-DCコンバータ10は、負荷11に出力電圧Voutを印加して電力を供給し、電流Iloadを流す。また、詳細は後述するがAC-DCコンバータ10は、臨界モード又は不連続モードで動作する力率改善回路として動作する。ここで、「臨界モード」とは、後述するインダクタ電流ILがゼロになった時点でスイッチングをオンにするモードである。また、「不連続モード」とは、インダクタ電流ILが断続的に流れるモード、つまり、インダクタ電流ILがスイッチング周期内で毎回ゼロになる期間がある断続モードである。
【0012】
AC-DCコンバータ10は、全波整流回路20、コンデンサ21,27、インダクタ22、NMOSトランジスタ23、抵抗24,28,29、力率改善IC25、及びダイオード26を含んで構成される。
【0013】
全波整流回路20は、入力される所定の交流電圧Vacを全波整流し、入力電圧Vrecとして、コンデンサ21及びインダクタ22に印加する。なお、交流電圧Vacは、例えば、実効値が140~240V、周波数が50~60Hzの電圧である。なお、以下、本実施形態では、基本的に電圧は基準点(
図1中のGND)に対する電位差であるが、交流電圧Vacは、端子間電圧を示す。
【0014】
コンデンサ21は、入力電圧Vrecを平滑化し、コンデンサ27は、インダクタ22、NMOSトランジスタ23、及びダイオード26とともに昇圧チョッパー回路を構成する。このため、コンデンサ27の充電電圧が直流の出力電圧Voutとなる。なお、ダイオード26に流れる電流を電流Idとし、コンデンサ27に流れる電流を充電電流Icとする。
【0015】
NMOSトランジスタ23は、AC-DCコンバータ10の負荷11への電力を制御するためのスイッチング素子である。なお、本実施形態では、NMOSトランジスタ23は、N型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであることとしたが、例えば、バイポーラトランジスタ等であっても良い。また、NMOSトランジスタ23のゲート電極は、力率改善IC25の端子OUTに接続されている。
【0016】
抵抗24は、NMOSトランジスタ23がオンする際に、インダクタ22に流れるインダクタ電流ILを検出するための抵抗であり、一端は、NMOSトランジスタ23のソース電極に接続され、他端は、力率改善IC25の端子CSに接続される。
【0017】
力率改善IC25は、AC-DCコンバータ10の力率を改善しつつ、出力電圧Voutのレベルが目的レベル(例えば、400V)となるよう、NMOSトランジスタ23のスイッチングを制御する集積回路である。具体的には、力率改善IC25は、インダクタ電流IL、及び出力電圧Voutに基づいて、NMOSトランジスタ23を駆動する。力率改善IC25の詳細については後述するが、力率改善IC25には、端子CS,FB,OUTが設けられている。なお、本実施形態では、力率改善IC25の端子CS等以外の他の端子は便宜上、省略されている。
【0018】
抵抗28,29は、出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成し、NMOSトランジスタ23をスイッチングする際に用いられる帰還電圧Vfbを生成する。なお、抵抗28,29が接続されるノードに生成される帰還電圧Vfbは、端子FBに印加される。
【0019】
<<<力率改善IC25について>>>
==力率改善IC25aの構成==
図2は、力率改善IC25の一実施形態である力率改善IC25aの構成を示す図である。力率改善IC25aは、ADコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)40,41、スイッチング制御回路42、バッファ回路43を含んで構成される。
【0020】
ADコンバータ40は、帰還電圧Vfbをデジタル値に変換し、ADコンバータ41は、抵抗24で検出され、レベルシフト回路(不図示)により極性が反転された、インダクタ電流ILを示す電圧を、デジタル値に変換する。なお、本実施形態では、デジタル値に変換された帰還電圧Vfbを、便宜上、帰還電圧Vfbと称する。同様に、スイッチング制御回路42において処理されるデジタル値に変換されたインダクタ電流ILを示す信号も、便宜上、インダクタ電流ILと称する。
【0021】
スイッチング制御回路42は、帰還電圧Vfb、インダクタ電流ILに基づいて、駆動信号Sdrvを出力する。
【0022】
バッファ回路43は、駆動信号Sdrvを増幅し、NMOSトランジスタ23を駆動するための電圧Vdrを出力する。
【0023】
==スイッチング制御回路42a==
図3は、スイッチング制御回路42の一実施形態であるスイッチング制御回路42aの構成を示す図である。スイッチング制御回路42aは、帰還電圧Vfb、インダクタ電流ILに基づいて、駆動信号Sdrvを出力する。
【0024】
スイッチング制御回路42aは、目標値出力回路50a、駆動信号出力回路51a、ローパスフィルタ(LPF)52、及び乗算器53を含んで構成される。
【0025】
目標値出力回路50aは、インダクタ電流ILのピーク値の波形を整流電圧Vrecの波形と相似とするための目標値ILtargetを出力する。
【0026】
具体的には、目標値出力回路50aは、帰還電圧Vfbが上昇し、目的レベルの出力電圧Voutの基準となる基準電圧VREF0より高くなると低い目標値ILtargetを出力する。一方、目標値出力回路50aは、帰還電圧Vfbが低下し、基準電圧VREF0より低くなると高い目標値ILtargetを出力する。
【0027】
目標値出力回路50aは、減算器60、電圧調整器(AVR)61、及び乗算器62を含んで構成される。
【0028】
減算器60は、基準電圧VREF0から帰還電圧Vfbを減算し、基準電圧VREF0と、帰還電圧Vfbとの誤差E1を算出する。
【0029】
電圧調整器61は、帰還電圧Vfbのレベルを基準電圧VREF0のレベルに一致させるための指令電圧VAを、誤差E1に応じて出力する。なお、減算器60及び電圧調整器61は、例えば、誤差E1を増幅、積分等する、いわゆる誤差増幅回路に相当する。
【0030】
乗算器62は、後述する乗算器53からの、整流電圧Vrecの推定値Vr_estと、指令電圧VAとを乗算し、乗算結果を、インダクタ電流ILの目標値ILtargetとして出力する。つまり、乗算器62は、出力電圧Voutの変動に基づいて変動する指令電圧VAに推定値Vr_estの成分を乗算し、目標値ILtargetを出力する。
【0031】
結果として、目標値出力回路50aは、出力電圧Voutの上昇又は低下に伴い、出力電圧Voutを目的レベルに維持すべくインダクタ電流ILの目標値ILtargetを低下又は上昇させて出力し、インダクタ電流ILを制御する。
【0032】
これにより、インダクタ電流ILの平均値ILmeanの波形が整流電圧Vrecの波形と相似となり、スイッチング制御回路42は、力率を改善する。すなわち入力電流Iacの波形も、交流電圧Vacの波形と相似となり、AC-DCコンバータ10の力率は改善される。なお、目標値出力回路50aは、目標値ILtargetとして、目標値ILtargetを示す基準電圧を出力する。よって目標値ILtargetは整流電圧Vrecと位相が揃っており、周期が同じであり、振幅は比例関係となる。
【0033】
駆動信号出力回路51aは、インダクタ電流ILに基づいてNMOSトランジスタ23をオンオフする駆動信号Sdrvを出力する回路である。具体的には、駆動信号出力回路51aは、インダクタ電流ILが所定値より小さくなるとNMOSトランジスタ23をオンし、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetになるとNMOSトランジスタ23をオフする駆動信号Sdrvを出力する。
【0034】
駆動信号出力回路51aは、比較器(CMP)70,72、及びSRフリップフロップ71を含んで構成される。
【0035】
比較器70は、インダクタ電流ILが所定値より小さくなることを検出する。具体的には、比較器70は、インダクタ電流ILが所定値(例えば、ほぼゼロ)になると、ハイレベル(以下、“H”レベルとする。)の信号S0を出力する。一方、比較器70は、インダクタ電流ILが所定値とならない場合、ローレベル(以下、“L”レベルとする。)の信号S0を出力する。なお、「インダクタ電流ILが所定値となると」とは、「インダクタ電流ILが所定値となった後」をも含む。
【0036】
SRフリップフロップ71は、比較器70,72からの信号S0,S1に基づいて駆動信号Sdrvを出力する。具体的には、SRフリップフロップ71は、比較器70が“H”レベルの信号S0を出力すると、“H”レベルの駆動信号Sdrvを出力し、後述する比較器72が“H”レベルの信号S1を出力すると、“L”レベルの駆動信号Sdrvを出力する。
【0037】
一方、比較器70,72が共に“L”レベルの信号S0,S1を出力する場合、SRフリップフロップ71は、駆動信号Sdrvの論理レベルを遷移させない。なお、駆動信号Sdrvが“H”レベルである場合、NMOSトランジスタ23はオンされ、駆動信号Sdrvが“L”レベルである場合、NMOSトランジスタ23はオフされる。
【0038】
比較器72は、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetになることを検出する。具体的には、比較器72は、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetになると、“H”レベルの信号S1を出力する。一方、比較器72は、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetより小さい場合、“L”レベルの信号S1を出力する。
【0039】
以上から、駆動信号出力回路51aは、AC-DCコンバータ10が臨界モードで動作するよう駆動信号Sdrvを出力する。
【0040】
ローパスフィルタ(LPF)52は、駆動信号Sdrvとは反対の論理レベルを有する信号S2に基づいて、NMOSトランジスタ23がオフされる期間の駆動信号Sdrvを積分し、オフ電圧Voffを出力する。なお、本実施形態では、後述する乗算器53からの推定値Vr_estを乗算器62に入力しているが、LPF52からのオフ電圧Voffを乗算器62に入力してもよい。すなわち、オフ電圧Voffも整流電圧Vrecの推定値として使用することができる。
【0041】
乗算器53は、オフ電圧Voffと、帰還電圧Vfbとを乗算し、オフ電圧Voffのリップル成分を除去した推定値Vr_estを出力する。なお、乗算器53でオフ電圧Voffのリップル成分を除去できる理由については後述する。また、LPF52は、「推定回路」又は「積分回路」に相当し、乗算器53は、「除去回路」に相当する。
【0042】
<<<推定値Vr_estの推定方法>>>
図4は、推定値Vr_estを推定する方法を説明するための図である。ここで、インダクタ電流ILは実線で示され、目標値ILtargetは破線で示され、インダクタ電流ILの平均値ILmeanは2点鎖線で示されている。また、信号S2は駆動信号Sdrvの論理レベルと反対の論理レベルを有し、SRフリップフロップ71の反転出力から出力される信号である。
【0043】
そのため、信号S2が“L”レベルとなる期間は、NMOSトランジスタ23がオンするオン期間Tonであり、信号S2が“H”レベルとなる期間は、NMOSトランジスタ23がオフするオフ期間Toffである。
【0044】
まず、オン期間Ton及びオフ期間Toffについて説明する。インダクタ電流ILが所定値となると、SRフリップフロップ71は“H”レベルの駆動信号Sdrvを出力し、オン期間Tonが始まる。そして、インダクタ電流ILが目標値ILtargetとなると、SRフリップフロップ71は“L”レベルの駆動信号Sdrvを出力し、オフ期間Toffが始まる。その後、インダクタ電流ILが所定値となると、SRフリップフロップ71は“H”レベルの信号駆動信号Sdrvを出力し、オン期間Tonが再度始まる。以後、この動作が連続する。
【0045】
このとき、インダクタ22のインダクタンス値をLとすると、目標値ILtarget、インダクタンス値L、整流電圧Vrec、オン期間Ton、オフ期間Toff、及び出力電圧Voutの間には以下の関係が成立する。
【0046】
ILtarget=Vrec/L×Ton=(Vout-Vrec)/L×Toff ・・・(1)
式(1)より、オン期間Tonと、オン期間Ton及びオフ期間Toffを足したスイッチング周期とは、以下の式で表される。
【0047】
Ton=(Vout-Vrec)/Vrec×Toff ・・・(2)
Ton+Toff=Vout/Vrec×Toff ・・・(3)
したがって、式(2)及び(3)より、Toff/(Ton+Toff)で表されるオフデューティαは以下の式で表される。
【0048】
α=Vrec/Vout ・・・(4)
また、α<1であり、かつAC-DCコンバータ10において整流電圧Vrecは出力電圧Voutより小さいため、本実施形態において式(4)は常に成立する。
【0049】
また、式(4)は、出力電圧Voutが一定であるとすると、オフデューティαが整流電圧Vrecの交流成分を有していることを表している。したがって、オフデューティαを求めることができれば、整流電圧Vrecの推定値Vr_estを推定することができる。
【0050】
また、オフデューティαは、LPF52で信号S2を平滑化又は積分したオフ電圧Voffとして求められ、オフ電圧Voffは整流電圧Vrecの推定値となる。しかしながら、出力電圧Voutは、後述するように交流電圧Vacの交流成分に基づくリップル成分を有するため、オフ電圧Voffもリップル成分を含む。
【0051】
そこで、乗算器53は、出力電圧Voutのリップル成分を有する帰還電圧Vfbと、オフ電圧Voffとを乗算してオフ電圧Voffのリップル成分を除去し、推定値Vr_estとして出力する。そして、目標値出力回路50aは、リップル成分が除去された推定値Vr_estに基づいて目標値ILtargetを出力する。
【0052】
<<<出力電圧Voutのリップル成分>>>
図5は、出力電圧Voutのリップル成分の発生原理を説明する図である。なお、Vac/Iacのうち実線で示されているのが交流電圧Vacであり、一点鎖線で示されているのが入力電流Iacである。
【0053】
まず、交流電圧Vacの振幅をVとし、入力電流Iacの振幅をIとすると、交流電圧Vac、入力電流Iac、及び入力電力Pacは、以下のようにあらわされる。
【0054】
Vac=Vsinθ ・・・(5)
Iac=Isinθ ・・・(6)
Pac=Vac×Iac=VIsin2θ
=VI/2-VI/2×cos2θ ・・・(7)
AC-DCコンバータ10のダイオード26に流れる電流を電流Idとすると、出力電圧Voutを用いて、電流Idは以下のようにあらわされる。
【0055】
Id=Pac/Vout
=VI/2/Vout-VI/2/Vout×cos2θ ・・・(8)
ここで、式(8)の第1項を直流分、すなわち負荷電流Iloadとすると、充電電流Icは、以下のようにあらわされる。
【0056】
Ic=-VI/2/Vout×cos2θ ・・・(9)
出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutは、電流Icを積分し、コンデンサ27の容量値Cで除算したものであり、以下のようにあらわされる。
【0057】
ΔVout=-VI/4/Vout/C×sin2θ ・・・(10)
したがって、リップル成分ΔVoutは、交流電圧Vacの2倍の周波数で変動し、その振幅は、容量値Cに反比例する。
【0058】
<<<出力電圧Voutとパルス幅との関係>>>
図6は、出力電圧Voutとパルス幅との関係を説明する図である。なお、交流電圧Vac、入力電流Iac及び出力電圧Voutの関係は
図5と同様である。また、インダクタ22と、NMOSトランジスタ23の接続点の電圧を電圧Vswとする。また、電圧Vswは、NMOSトランジスタ23がオンする際、接地電圧となり、NMOSトランジスタ23がオフする際、出力電圧Voutに応じた電圧となる。
【0059】
また、式(1)より、目標値ILtargetは、以下のようにあらわされる。
【0060】
ILtarget=(Vout-Vrec)/L×Toff ・・・(11)
式(11)を変形すると、オフ期間Toffは以下のようにあらわされる。
【0061】
Toff=ILtarget×L/(Vout-Vrec) ・・・(12)
ここで、あるスイッチング周期において、目標値ILtargetと、整流電圧Vrecが所定値になっているとすると、式(12)より、出力電圧Voutが高いほど、オフ期間Toffは短くなる。したがって、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを考慮すると、電圧Vswのパルス幅は、
図6に示すように変化する。
【0062】
また、インダクタ電流ILが目標値ILtargetによって一定範囲に収まっている場合、整流電圧Vrecは、電圧Vswの平均値とほぼ等しくなる。なぜなら、整流電圧Vrecが電圧Vswの平均値より高い場合、インダクタ電流ILは際限なく増加し、逆に小さい場合、インダクタ電流ILは流れなくなるからである。
【0063】
すなわち、本実施形態において、インダクタ電流ILが目標値ILtargetによって制限されながら流れていることを考慮すると、整流電圧Vrecは、電圧Vswの平均値とほぼ等しいといえる。また、整流電圧Vrec、すなわち電圧Vswの平均値は、電圧Vswのパルス幅と、出力電圧Voutの積に比例する。
【0064】
そして、電圧Vswのパルス幅は、SRフリップフロップ71からの信号S2のパルス幅と同様である。また、先に説明したように信号S2を平滑化又は積分するLPF52からのオフ電圧Voffは、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutが負となると、高くなり、逆に出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutが正となると、低くなる。
【0065】
したがって、乗算器53によって、出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbと、オフ電圧Voffとが乗算された推定値Vr_estは、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutが除去された電圧となる。
【0066】
==スイッチング制御回路42b==
図7は、スイッチング制御回路42の一実施形態であるスイッチング制御回路42bの構成を示す図である。なお、
図7において
図3と同一の参照符号が付された対象は、
図3と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0067】
スイッチング制御回路42bは、NMOSトランジスタ23がオフした後にインダクタ22及び寄生容量との間で生じる疑似共振を利用しNMOSトランジスタ23のスイッチング損失を低減させるようNMOSトランジスタをオンする。具体的には、インダクタ電流ILが所定値となった後、所定期間経過し、NMOSトランジスタ23のドレイン・ソース間電圧である電圧Vswが疑似共振により低下すると、スイッチング制御回路42bは、NMOSトランジスタ23をオンする。
【0068】
スイッチング制御回路42bは、目標値出力回路50a、駆動信号出力回路51b、推定回路54を含んで構成される。
【0069】
駆動信号出力回路51bは、比較器(CMP)70,72、SRフリップフロップ71、遅延回路73を含んで構成される。
【0070】
遅延回路73は、インダクタ電流ILが所定値より小さくなり、所定期間が経過するとNMOSトランジスタ23をオンする。具体的には、遅延回路73は、SRフリップフロップ71がNMOSトランジスタ23をオンするため“H”レベルの信号S3を出力した後、所定期間経過後NMOSトランジスタ23をオンするための“H”レベルの駆動信号Sdrvを出力する。
【0071】
推定回路54は、駆動信号出力回路51bからの信号、インダクタ電流IL、帰還電圧Vfbに基づいて、整流電圧Vrefの推定値Vr_estを推定する。具体的には、推定回路54は、オン期間Ton、立下り期間Tfを計算し、インダクタ電流IL、帰還電圧Vfbと共に推定値Vr_estを推定する。推定回路54は、カウンタ80,81、演算器82を含んで構成される。
【0072】
カウンタ80は、遅延回路73から出力される駆動信号Sdrvが“H”レベルとなる期間をオン期間Tonとして計算する。
【0073】
カウンタ81は、信号S0,S2に基づいてインダクタ電流ILが目標値ILtargetとなってから所定値となるまでの期間を立下り期間Tfとして計算する。
【0074】
演算器82は、オン期間Ton、立下り期間Tf、インダクタ電流IL、帰還電圧Vfbに基づいて推定値Vr_estを推定する。なお、演算器82が推定値Vr_estを推定する方法については後述する。また、オン期間Tonは、「第1期間」に相当し、立下り期間Tfは、「第2期間」に相当する。
【0075】
<<<推定値Vr_estを推定する方法>>>
図8は、電圧Vrecの推定方法及びインダクタンス値Lの算出方法を説明するための図である。
【0076】
図8を見ると理解されるように、スイッチング制御回路42bの場合、AC-DCコンバータ10は、不連続モードのように動作し、インダクタ電流ILが一時的にほぼゼロとなる期間が生じる。このため、
図4で説明した式(4)は成立しない。しかしながら、立下り期間Tfをオフ期間Toffの代わりに用いると、式(1)の関係は以下のようになる。
【0077】
ILtarget=Vrec/L×Ton=(Vout-Vrec)/L×Tf ・・・(13)
式(13)より、オン期間Tonと、オン期間Ton及び立下り期間Tfを足した周期とは、以下のようにあらわされる。
【0078】
Ton=(Vout-Vrec)/Vrec×Tf ・・・(14)
Ton+Tf=Vout/Vrec×Tf ・・・(15)
したがって、整流電圧Vrecは以下のようにあらわされる。
【0079】
Vrec=Vout×Tf/(Ton+Tf) ・・・(16)
ただし、立下り期間Tfは、目標値ILtargetが小さい場合小さくなる。そのため、立下り期間Tfを精度よく計算することは難しい。
【0080】
一方、インダクタ22のインダクタンス値Lを用いると、整流電圧Vrecは、以下のようにあらわされる。
【0081】
Vrec=L×ILtarget/Ton ・・・(17)
この場合、インダクタンス値Lは、以下のようにあらわされる。
【0082】
L=Vout/ILtarget×Ton×Tf/(Ton+Tf) ・・・(18)
したがって、インダクタンス値Lの変化がほぼ無視できる場合、目標値ILtargetが大きい際に比較的大きくなる立下り期間Tfを計算して式(18)より、インダクタンス値Lを計算する。また、計算されたインダクタンス値Lを式(17)に用いれば、精度よく計算するのが難しい立下り期間Tfを計算しなくとも整流電圧Vrecを推定することができる。
【0083】
==スイッチング制御回路42c==
図9は、スイッチング制御回路42の一実施形態であるスイッチング制御回路42cの構成を示す図である。なお、
図9において
図3と同一の参照符号が付された対象は、
図3と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0084】
スイッチング制御回路42cは、スイッチング制御回路42aの乗算器53を加算器55にした実施形態である。
図6の説明から明らかなように、出力電圧Voutと、オフ電圧Voffとは、逆方向に変化する。したがって、帰還電圧Vfbと、オフ電圧Voffとを、加算器55によって加算した推定値Vr_estは、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを含まない。そのため、加算器55は、LPF52の出力であるオン電圧Vonと、出力電圧Voutとを加算して、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去する。なお、加算器55は、「除去回路」に相当する。
【0085】
==スイッチング制御回路42d==
図10は、スイッチング制御回路42の一実施形態であるスイッチング制御回路42dの構成を示す図である。なお、
図10において
図3と同一の参照符号が付された対象は、
図3と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0086】
スイッチング制御回路42dは、LPF56及び減算器57を用いてオフ電圧Voffを出力する点で、スイッチング制御回路42aとは異なる。具体的には、LPF56は、駆動信号Sdrvを平滑化又は積分し、オン電圧Vonを出力し、減算器57は、電源回路(不図示)からの内部電源Vdd(スイッチング制御回路42dの電源電圧となる。)からオン電圧Vonを減算し、オフ電圧Voffを出力する。なお、LPF56及び減算器57は、「推定回路」又は「積分回路」に相当する。
【0087】
===変形例===
<<<AC-DCコンバータ12>>>
図11は、本発明の一実施形態であるAC-DCコンバータ12の構成の一例を示す図である。なお、
図11において
図1と同一の参照符号が付された対象は、
図1と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0088】
AC-DCコンバータ12は、整流電圧Vrecを分圧して電圧Vrとして出力する分圧回路を構成する抵抗30,31を有する。なお、力率改善IC25bは、電圧Vrが印加される端子Aを更に備える。
【0089】
==力率改善IC25bの構成==
図12は、力率改善IC25の一実施形態である力率改善IC25bの構成を示す図である。なお、
図12において
図2と同一の参照符号が付された対象は、
図2と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0090】
力率改善IC25bは、ADコンバータ(ADC:Analog-to-Digital Converter)40,41,44、スイッチング制御回路45、バッファ回路43を含んで構成される。ADコンバータ44は、電圧Vrをデジタル値に変換する。スイッチング制御回路45は、帰還電圧Vfb、インダクタ電流IL、及び電圧Vrに基づいて、駆動信号Sdrvを出力する。
【0091】
==スイッチング制御回路45==
図13は、スイッチング制御回路45の構成を示す図である。なお、
図13において
図3と同一の参照符号が付された対象は、
図3と同一である。そのため、同一の対象についての詳細な説明は省略する。
【0092】
スイッチング制御回路45は、目標値出力回路50bが推定値Vr_estではなく、電圧Vrに基づいて目標値ILtargetを出力する点で、スイッチング制御回路42aとは異なる。
【0093】
===まとめ===
以上、本実施形態のAC-DCコンバータ10,12について説明した。スイッチング制御回路42,45は、目標値出力回路50a,50b、駆動信号出力回路51aを含む。目標値出力回路50a,50bは、出力電圧Voutと、推定値Vr_est又は電圧Vrとに基づいて目標値ILtargetを出力する。また、駆動信号出力回路51aは、インダクタ電流ILが所定値より小さくなるとNMOSトランジスタ23をオンし、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetになるとNMOSトランジスタ23をオフする駆動信号を出力する。これにより、スイッチング制御回路42,45は、オン時間一定でNMOSトランジスタ23を制御するのではなく、出力電圧Voutに応じて目標値ILtargetを決め、目標値ILtargetに応じてオン時間を決定する。これにより、スイッチング制御回路42,45は、AC-DCコンバータ10,12のダイオード又はインダクタなどの影響を受けることなく、力率を改善することができる。したがって、力率を改善するスイッチング制御回路を提供することができる。
【0094】
また、スイッチング制御回路42a等は、駆動信号Sdrvに基づいて推定値Vr_estを推定する推定回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42a等は、整流電圧Vrecの分圧電圧Vrを得るための分圧回路を用いることなく、力率を改善できる。そして、分圧回路を用いないことにより、待機時等において定常電流が分圧回路に流れることがない。そのため、待機時のAC-DCコンバータ10の電力損失が低減する。
【0095】
また、スイッチング制御回路42a等は、推定回路として、オフ電圧Voffを出力するLPF52を備える。これにより、簡単な回路で整流電圧Vrecの推定値となるオフ電圧Voffを求めることができる。
【0096】
また、スイッチング制御回路42a等は、LPF52からのオフ電圧Voffに含まれるリップル成分ΔVoutを除去する乗算器53又は加算器55を備える。これにより、リップル成分ΔVoutの影響を除去した推定値Vr_estが目標値出力回路50a等に出力される。
【0097】
また、スイッチング制御回路42a等は、除去回路として、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去する乗算器53を更に備える。これにより、オフ電圧Voffに含まれる出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去することができる。
【0098】
また、スイッチング制御回路42a等は、除去回路として、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去する加算器55を更に備える。これにより、オフ電圧Voffに含まれる出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去することができる。
【0099】
また、スイッチング制御回路42bは、インダクタ電流ILが所定値より小さくなり、所定期間が経過するとNMOSトランジスタ23をオンする遅延回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42bは、NMOSトランジスタ23のスイッチング損失を低減することができる。
【0100】
また、スイッチング制御回路42bは、オン期間Tonと、立下り期間Tfと、出力電圧Voutと基づいて、整流電圧Vrecの推定値Vr_estを推定する推定回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42bは、整流電圧Vrecの分圧電圧Vrを得るための分圧回路を用いることなく、力率を改善できる。そして、分圧回路を用いないことにより、待機時等において定常電流が分圧回路に流れることがない。そのため、待機時のAC-DCコンバータ10の電力損失が低減する。
【0101】
また、スイッチング制御回路42,45は、目標値出力回路50a,50b、駆動信号出力回路51aを含む。目標値出力回路50a,50bは、出力電圧Voutと、推定値Vr_est又は電圧Vrとに基づいて目標値ILtargetを出力する。また、駆動信号出力回路51aは、インダクタ電流ILが所定値より小さくなるとNMOSトランジスタ23をオンし、インダクタ電流ILのピーク値が目標値ILtargetになるとNMOSトランジスタ23をオフする駆動信号を出力する。そして、目標値ILtargetは交流電圧Vacと周期が同一で位相が揃っており振幅が比例関係である。これにより、スイッチング制御回路42,45は、オン時間一定でNMOSトランジスタ23を制御するのではなく、出力電圧Voutに応じて目標値ILtargetを決め、目標値ILtargetに応じてオン時間を決定する。これにより、スイッチング制御回路42,45は、AC-DCコンバータ10,12のダイオード又はインダクタなどの影響を受けることなく、力率を改善することができる。
【0102】
また、スイッチング制御回路42a等は、駆動信号Sdrvに基づいて推定値Vr_estを推定する推定回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42a等は、整流電圧Vrecの分圧電圧Vrを得るための分圧回路を用いることなく、力率を改善できる。そして、分圧回路を用いないことにより、待機時等において定常電流が分圧回路に流れることがない。そのため、待機時のAC-DCコンバータ10の電力損失が低減する。
【0103】
また、スイッチング制御回路42a等は、推定回路として、オフ電圧Voffを出力するLPF52を備える。これにより、簡単な回路で整流電圧Vrecの推定値となるオフ電圧Voffを求めることができる。
【0104】
また、スイッチング制御回路42a等は、LPF52からのオフ電圧Voffに含まれるリップル成分ΔVoutを除去する乗算器53又は加算器55を備える。これにより、リップル成分ΔVoutの影響を除去した推定値Vr_estが目標値出力回路50a等に出力される。
【0105】
また、スイッチング制御回路42a等は、除去回路として、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去する乗算器53を更に備える。これにより、オフ電圧Voffに含まれる出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去することができる。
【0106】
また、スイッチング制御回路42a等は、除去回路として、出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去する加算器55を更に備える。これにより、オフ電圧Voffに含まれる出力電圧Voutのリップル成分ΔVoutを除去することができる。
【0107】
また、スイッチング制御回路42bは、インダクタ電流ILが所定値より小さくなり、所定期間が経過するとNMOSトランジスタ23をオンする遅延回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42bは、NMOSトランジスタ23のスイッチング損失を低減することができる。
【0108】
また、スイッチング制御回路42bは、オン期間Tonと、立下り期間Tfと、出力電圧Voutと基づいて、整流電圧Vrecの推定値Vr_estを推定する推定回路を更に備える。これにより、スイッチング制御回路42bは、整流電圧Vrecの分圧電圧Vrを得るための分圧回路を用いることなく、力率を改善できる。そして、分圧回路を用いないことにより、待機時等において定常電流が分圧回路に流れることがない。そのため、待機時のAC-DCコンバータ10の電力損失が低減する。
【0109】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0110】
10,12 AC-DCコンバータ
11 負荷
20 全波整流回路
21,27 コンデンサ
22 インダクタ
23 NMOSトランジスタ
24,28,29,30,31 抵抗
26 ダイオード
40,41,44 ADコンバータ
42,42a,42b,42c,42d,45 スイッチング制御回路
43 バッファ回路
50a,50b 目標値出力回路
51a,51b 駆動信号出力回路
52,56 ローパスフィルタ
53,62 乗算器
54 推定回路
55 加算器
57,60 減算器
61 電圧調整器
70,72 比較器
71 SRフリップフロップ
73 遅延回路
80,81 カウンタ
82 演算器