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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B60L15/20 J ZHV
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020211827
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098341
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 唯
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-264628(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054148(WO,A1)
【文献】特開2007-161032(JP,A)
【文献】特開2012-046037(JP,A)
【文献】特開2017-022870(JP,A)
【文献】特開2010-259294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0016985(US,A1)
【文献】特表2022-528178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L15/20
B60W10/00-10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を駆動する第1モータと後輪を駆動するための第2モータとを有する電動車両の駆動を制御する車両駆動制御方法であって、
前記電動車両に対する目標駆動力に基づいて、前記第1モータに対する前輪駆動力指令値と前記第2モータに対する後輪駆動力指令値とを算出する指令値算出ステップと、
実ピッチ角モデルを用いて、前記前輪駆動力指令値と前記後輪駆動力指令値とに基づいて、実ピッチ角を算出する実ピッチ角算出ステップと、
規範ピッチ角モデルを用いて、前記前輪駆動力指令値と前記後輪駆動力指令値とに基づいて、規範ピッチ角を算出する規範ピッチ角算出ステップと、
前記実ピッチ角と前記規範ピッチ角の差分に基づいて、前記実ピッチ角が前記規範ピッチ角に一致するように、前後駆動力移動量を算出する前後駆動力移動量算出ステップと、
前記前後駆動力移動量に基づいて前記前輪駆動力指令値及び前記後輪駆動力指令値を補正することにより、前記第1モータ及び前記第2モータへそれぞれ入力される前輪実駆動力指令値及び後輪実駆動力指令値を算出する実駆動指令値算出ステップと、を備える、
電動車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の制御方法であって、
前記規範ピッチ角算出ステップにおいて、前記規範ピッチ角は、定常状態において前記実ピッチ角と同一となるように決定される、
電動車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動車両の制御方法であって、
前記規範ピッチ角算出ステップ及び/又は前記実ピッチ角算出ステップでは、
前記電動車両に生じる駆動力反力、慣性力、及びサスペンションの作動状態を考慮して予め定められた瞬間回転角に基づいて、前記電動車両に作用するピッチ振動をもたらす上下力が算出され、
前記上下力に基づいて前記規範ピッチ角及び/又は前記実ピッチ角が決定される、
電動車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の電動車両の制御方法であって、
前記実駆動指令値算出ステップにおいて、前記前後駆動力移動量の正負を前記後輪から前記前輪に移動させる駆動力の正負と一致させ、
前記前輪実駆動力指令値を、前記前輪駆動力指令値に前記前後駆動力移動量を加算した値として算出し、
前記後輪実駆動力指令値を、前記後輪駆動力指令値から前記前後駆動力移動量を減算した値として算出する、
電動車両の制御方法。
【請求項5】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の電動車両の制御方法であって、
前記前後駆動力移動量算出ステップにおいて、前記前後駆動力移動量は、前記前輪実駆動力指令値及び前記後輪実駆動力指令値の符号が相互に同一となる範囲でとり得る値に制限される、
電動車両の制御方法。
【請求項6】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の電動車両の制御方法であって、
前記実駆動指令値算出ステップは、前記前輪駆動力指令値及び前記後輪駆動力指令値から前記前輪実駆動力指令値及び前記後輪実駆動力指令値までの、前後輪それぞれの動特性に応じて位相差を調整する位相調整フィルタ処理を含む、
電動車両の制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項の何れか一項に記載の電動車両の制御方法であって、
前記電動車両の駆動力伝達系の振動を抑制するねじり振動抑制制御ステップをさらに備える、
電動車両の制御方法。
【請求項8】
前輪を駆動する第1モータと後輪を駆動するための第2モータとを有する電動車両の駆動を制御する電動車両の制御装置であって、
前記電動車両に対する目標駆動力に基づいて、前記第1モータに対する前輪駆動力指令値と前記第2モータに対する後輪駆動力指令値とを算出し、
実ピッチ角モデルを用いて、前記前輪駆動力指令値と前記後輪駆動力指令値とに基づいて、実ピッチ角を算出し、
規範ピッチ角モデルを用いて、前記前輪駆動力指令値と前記後輪駆動力指令値とに基づいて、規範ピッチ角を算出し、
前記実ピッチ角と前記規範ピッチ角の差分に基づいて、前記実ピッチ角が前記規範ピッチ角に一致するように、前後駆動力移動量を算出し、
前記前後駆動力移動量に基づいて前記前輪駆動力指令値及び前記後輪駆動力指令値を補正することにより、前記第1モータ及び前記第2モータへそれぞれ入力される前輪実駆動力指令値及び後輪実駆動力指令値を算出する、
電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両におけるピッチング運動に起因した車体振動を抑制する車両の制御装置が知られている(特許文献1参照)。この制御装置では、ピッチング運動の中心から所定の距離離れた位置における力学的な変動を推定する。そして、推定された変動に応じて、モータの出力トルクに対するフィルタリング処理を実行することによって、車体振動が抑制されるようにトルク指令値を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-240258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の制御装置では、モータの出力トルクに対して、所定の周波数領域のゲインを小さくするフィルタリング処理が行われる。このため、駆動力指令値が上位コントローラからの駆動力指令値とは異なるトルク応答となり、所望の加速度が得られない。このように、車体振動を抑制しつつ所望の加速度を得ることができない場合があった。
【0005】
本発明は、車体振動を抑制するととともに所望の加速度を得ることができる電動車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この態様によれば、前輪を駆動する第1モータと後輪を駆動するための第2モータとを有する電動車両の駆動を制御する車両駆動制御方法であって、電動車両に対する目標駆動力に基づいて、第1モータに対する前輪駆動力指令値と第2モータに対する後輪駆動力指令値とを算出する指令値算出ステップと、実ピッチ角モデルを用いて、前輪駆動力指令値と後輪駆動力指令値とに基づいて、実ピッチ角を算出する実ピッチ角算出ステップと、規範ピッチ角モデルを用いて、前輪駆動力指令値と後輪駆動力指令値とに基づいて、規範ピッチ角を算出する規範ピッチ角算出ステップと、実ピッチ角と規範ピッチ角の差分に基づいて、実ピッチ角が規範ピッチ角に一致するように、前後駆動力移動量を算出する前後駆動力移動量算出ステップと、前後駆動力移動量に基づいて前輪駆動力指令値及び後輪駆動力指令値を補正することにより、第1モータ及び第2モータへそれぞれ入力される前輪実駆動力指令値及び後輪実駆動力指令値を算出する実駆動指令値算出ステップと、を備える、電動車両の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、車体振動を抑制するととともに所望の加速度を得ることができる電動車両の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る制御装置全体の機能構成の一例を示す図である。
図2図2は、本実施形態の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本実施形態のアクセル開度と出力トルクとの関係の一例を示す図である。
図4図4は、本実施形態の駆動力分配処理の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態の車両の運動のモデリングの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態の車両のピッチ制御演算の一例を示す図である。
図7図7は、本実施形態の規範ピッチ角モデルを示す図である。
図8図8は、本実施形態の実ピッチ角モデルを示す図である。
図9図9は、本実施形態の駆動力移動量の逆モデル演算の一例を示す図である。
図10図10は、本実施形態の駆動力移動量制限器の一例を示す図である。
図11図11は、本実施形態の電動車両の各出力値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して各実施形態について説明する。
【0010】
[全体構成]
図1は、第1の実施形態に係る電動車両の制御装置を備えた電動車両(以下、単に「車両」と称する)の全体構成を示す図である。本実施形態の車両1は、電気自動車、ハイブリッド自動車、又は燃料電池自動車など、駆動力の一部に電動モータの動力を利用する車両である。また、本実施形態の車両1は、いわゆる4WDの車両1である。
【0011】
車両1は、フロント駆動システム2と、リア駆動システム3と、バッテリ4と、モータコントローラ5と、を備える。車両1は、フロント駆動システム2とリア駆動システム3とがモータコントローラ5に対して電気的及び機械的に対称に構成されている。
【0012】
フロント駆動システム2は、フロントモータ10と、フロントインバータ20と、フロント減速機30と、前輪14と、を備える。フロント駆動システム2は、モータコントローラ5によって制御される。フロントモータ10は、フロントインバータ20におけるスイッチング動作に応じて、フロント減速機30への駆動トルク(回生トルクを含む)を生成する。前輪14は、フロント減速機30からの出力駆動トルクに応じて回転する。
【0013】
リア駆動システム3は、リアモータ12と、リアインバータ22と、リア減速機32と、後輪16と、を備える。リア駆動システム3は、モータコントローラ5によって制御される。リアモータ12は、リアインバータ22におけるスイッチング動作に応じて、リア減速機32への駆動トルク(回生トルクを含む)を生成する。後輪16は、モータコントローラ5の制御されるリア減速機32からの出力駆動トルクに応じて回転する。
【0014】
バッテリ4は、フロントインバータ20とリアインバータ22とに電力を供給する。図示を省略するが、バッテリ4からの直流電圧Vdc[V]は、直流電源ラインに備え付けられた電圧センサ、またはバッテリコントローラより送信される電源電圧値により求められる。
【0015】
モータコントローラ5は、フロントモータ10及びリアモータ12を制御する。モータコントローラ5には、車速V、アクセル開度θ、フロントモータ10のフロント回転子位相αf、リアモータ12のリア回転子位相αr、フロントモータ10の電流ifu,ifv,ifw及びリアモータ12の電流iru,irv,irw等の車両状態を示す信号がデジタル信号として入力される。なお、電気角としてのフロント回転子位相αfはフロント回転センサ11によって検出され、リア回転子位相αrはリア回転センサ13によって検出される。
【0016】
車速V[km/h]は、メータやブレーキコントローラ等の他のコントローラより通信により取得されるか、又はモータ回転角速度ωmにタイヤ動半径Rを乗算し、ファイナルギアのギア比で除算することにより車両速度v[m/s]を求め、[m/s]から[km/h]への単位変換係数(3600/1000)を施すことで求められる。
【0017】
アクセル開度θ[%]は、アクセル開度センサにより取得されるか、又は車両コントローラや他のコントローラによって通信により取得されてもよい。アクセル開度θについては後述する。
【0018】
モータコントローラ5は、上記の入力信号に基づいて、フロントモータ10及びリアモータ12を制御するためのPWM信号を生成する。また、モータコントローラ5は、このPWM信号に基づいて、フロントインバータ20及びリアインバータ22の駆動信号を生成する。
【0019】
フロントインバータ20及びリアインバータ22は、モータコントローラ5からの駆動信号を入力として、バッテリ4から供給される直流電流を交流電流に変換し、フロントモータ10及びリアモータ12の各々へ電流を出力する。フロントインバータ20からの電流値ifはフロント電流センサ26によって検出され、リアインバータ22からの電流値irはリア電流センサ28によって検出される。
【0020】
なお、フロントモータ10の電流ifu,ifv,ifwはフロント電流センサ26により取得され、またリアモータ12の電流iru,irv,irwはリア電流センサ28により取得される。この三相の電流値の合計は0になるため、例えば電流ifwは、電流ifu,ifvの値から求められてもよい。
【0021】
また、モータ回転角速度Nm[rpm]は、回転子角速度ω(電気角)を電動モータの極対数で除算し、電動モータの機械的な角速度であるモータ回転角速度ωm[rad/s]を求めた後、[rad/s]から[rpm]への単位変換係数(60/2π)を乗算することにより求められる。なお、回転子角速度ω(電気角)[rad/s]は、回転子位相α(電気角)の微分値として求められる。
【0022】
[全体制御]
次に、図2を参照して、モータコントローラ5による車両1の全体の制御方法について説明する。
【0023】
ステップS201において、モータコントローラ5は、以下で説明する各種処理の演算に必要な信号を、センサ入力又は他のコントローラからの通信を介して取得する。
【0024】
ステップS202において、モータコントローラ5は、基本目標駆動力演算処理を実行する。モータコントローラ5は、アクセル開度θおよび車速Vに基づいて、図3に示されるアクセル開度-駆動力テーブルを参照することにより、目標駆動力指令値F*を設定する。図3に示されるように、アクセル開度θに応じて、モータ回転数とモータトルクとの関係が定まる。すなわち、図3は、車両に対して要求される駆動力を実現するように定められた基本的な駆動力の指令値を示している。
【0025】
そして、図4に示す前後駆動力分配器401により、図示しない上位コントローラからの目標駆動力指令値F*の前後駆動力の分配比Kfを0~1の間で設定する。目標駆動力指令値F*に対してKfを乗算することにより、前輪14の駆動力に対する前輪駆動力指令値Ff*を設定する。目標駆動力指令値F*に対して(1-Kf)を乗算することにより、後輪16の後輪駆動力指令値Fr*を設定する。
【0026】
ステップS203において、モータコントローラ5は、ピッチ角振動抑制処理を実行する。特に、モータコントローラ5は、このピッチ角振動抑制処理において、前輪駆動力指令値Ff*と後輪駆動力指令値Fr*を入力として、前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*を算出する。ピッチ角振動抑制処理の詳細については後述する。
【0027】
ステップS204において、モータコントローラ5は、ねじり振動抑制処理を実行する。モータコントローラ5は、前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*を、ギア比とタイヤ半径からモータトルク相当へ換算した、第1の前後モータトルク指令値Tmf1*,Tmr1*と、前後のモータ回転角速度ωmf,ωmrを入力し、前後トルク指令値である、ねじり振動抑制処理後指令値Tmf2*,Tmr2*を算出する。当該ねじり振動抑制処理後指令値Tmf2*,Tmr2*は、駆動軸トルクの応答を犠牲にすることなく、ドライブシャフトのねじり振動などの駆動力伝達系振動を抑制する。なお、ドライブシャフトが無い車両や、メカニカルでねじり振動を抑制している場合には、ステップS204のねじり振動抑制処理は省略されてもよい。
【0028】
ステップS205において、モータコントローラ5は、前後それぞれの電流指令値算出処理を実行する。モータコントローラ5は、テーブルを参照して、ステップS204で算出した、ねじり振動抑制処理後指令値Tmf2*,Tmr2*と、モータ回転角速度ωmf,ωmrと、直流電圧Vdcとから、前後のdq軸電流目標値id*,iq*を求める。
【0029】
ステップS206において、モータコントローラ5は、電流制御演算処理を実行する。前後それぞれの電流制御において、モータコントローラ5は、まず三相電流値iu、iv、iwと電動モータの回転子位相αからdq軸電流id、iqを演算する。次に、モータコントローラ5は、ステップS205で算出したdq軸電流目標値id*,iq*とdq軸電流id,iqとの偏差からdq軸電圧指令値vd,vqを演算する。なお、dq軸電圧指令値vd,vqの演算には非干渉制御を加えてもよい。そして、モータコントローラ5は、dq軸電圧指令値vd,vqと電動モータの回転子位相αとから三相電圧指令値vu,vv,vwを演算する。モータコントローラ5は、この三相電圧指令値vu,vv,vwと直流電圧Vdcから、PWM信号のデューティ比tu[%],tv[%],tw[%]を演算する。
【0030】
このように、モータコントローラ5は、上記ステップS201からステップS206の処理によって算出されたPWM信号を用いて、フロントインバータ20とリアインバータ22とのスイッチング素子を開閉制御する。これにより、フロントモータ10とリアモータ12とは、それぞれのトルク指令値で指示された所望のトルクで駆動する。
【0031】
[ピッチ角振動抑制処理]
次に、ステップS203において実行されるピッチ角振動抑制処理について説明する。
【0032】
まず、前後輪にそれぞれ駆動モータを有している車両1の運動方程式の一例について説明する。この運動方程式に基づいて、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の入力から、ピッチ角λの出力までの伝達特性を求める。車体のバネ上を剛体と仮定すると、図5に示されるように、駆動力反力、慣性力、及びサスペンションの作動状態を表す瞬間回転角θf,rによる上下力が、加減速時に車体のばね上に作用する。
【0033】
なお、以下で説明する運動方程式に用いられるパラメータは以下のとおりである。
重心高[m]
タイヤ動半径[m]
前輪中心から重心位置までの距離[m]
後輪中心から重心位置までの距離[m]
フロント、リアばね係数[N/m]
フロント、リアダンパ係数[N/(m/s)]
重心回りのピッチ慣性モーメント[kg/m2]
ピッチ角[rad]
フロント、リアの瞬間回転角[rad]
【0034】
上記各変数を用いてピッチングモーメントMλは、次の式(1)のように表される。なお、瞬間回転角θf,rはストローク時の変化が微小であるものとして固定値とする。
【0035】
【数1】
【0036】
よって、ピッチ回転中心回りの運動方程式は、式(2)及び式(3)のように表される。
【0037】
【数2】
【0038】
【数3】
【0039】
上記式(2)をラプラス変換することにより、伝達関数としての式(4)が得られる。
【0040】
【数4】
【0041】
このように、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の入力から、ピッチ角λの出力までの伝達特性は、上記式(4)のように2次系の応答で表される。
【0042】
続いて、ピッチ角振動抑制処理について説明する。本実施形態では、総駆動力指令値(前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の総和)を一定に保ちながら、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の各々に対して、前後駆動力移動量Fd*を加減算する。なお、前後駆動力移動量Fd*の符号を後輪16から前輪14に移動させる駆動力の符号と一致させる。すなわち、後輪16から前輪14に駆動力(トルク)を移動させる場合には、前後駆動力移動量Fd*が正の値となる。一方、前輪14から後輪16に駆動力を移動させる場合には、前後駆動力移動量Fd*が負の値となる。したがって、本実施形態では、前輪駆動力指令値Ff*に前後駆動力移動量Fd*を加算して後輪駆動力指令値Fr*から前後駆動力移動量Fd*を減算することを前提として、ピッチ角λの動特性を任意の規範応答となるように導出する。まず、前提条件と導出したピッチ角モデルとから、前後駆動力移動量Fd*を適用した場合の実ピッチ角応答は、次の式(5)のように表される。
【0043】
【数5】
【0044】
規範ピッチ角応答は定常特性が実ピッチ角応答と等しく、オーバーシュートの無い動特性となるように、次の式(6)のように設定する。次の式(6)は、上記式(4)の減衰係数ζが1となる場合、すなわち車体振動が最も低減する状態を示す伝達関数である。
【0045】
【数6】
【0046】
そして、上記式(5)及び式(6)を連立し、λ=λ*となるように前後駆動力移動量Fdについて解くと、次の式(7)が得られる。
【0047】
【数7】
【0048】
式(7)を変形すると、式(8)が得られる。
【0049】
【数8】
【0050】
このように、式(8)に示されるように、ピッチ角振動を抑制するための制御として、ピッチ角の実応答(実ピッチ角応答)Gpλ(s)と規範応答Grλ(s)の差分と、前後駆動力移動量Fdからピッチ角の逆モデルによって表すことができる。
【0051】
[機能構成]
次に、上記のように導出された伝達特性を用いて、前輪駆動力指令値Ff*,後輪駆動力指令値Fr*に対するピッチ角振動抑制処理の機能構成について説明する。
【0052】
図7に示される規範ピッチ角モデル算出部901は、前輪駆動力指令値Ff*,後輪駆動力指令値Fr*を入力とし、上記の式(6)の規範ピッチ角モデルGrλ(s)によるフィルタ処理を行い、規範ピッチ角応答を算出する。なお、今回の規範ピッチ角λ*は、式(6)を用いて算出したが、変化率リミッタ等を用いた、任意の規範ピッチ角応答としても良い。
【0053】
図8に示される実ピッチ角モデル算出部902は、前輪駆動力指令値Ff*,後輪駆動力指令値Fr*を入力とし、上記の式(4)のピッチ角実モデル(実ピッチ角応答)Gpλ(s)によるフィルタ処理を行い、ピッチ角実応答の推定値としての実ピッチ角λ^を算出する。なお、今回の実ピッチ角λ^は、上記の式(4)を用いて推定したが、ピッチレートセンサ等のピッチレート実応答を計測した計測値を用いても良い。
【0054】
図9に示される前後駆動力移動量算出部903は、規範ピッチ角λと実ピッチ角λ^との差分を入力として、上記の式(4)から導き出される前後駆動力移動量Fd*からピッチ角の逆モデルを用いたフィルタリング処理を行う。これにより、ピッチ角実応答が規範ピッチ角応答へ一致するような前後駆動力移動量Fd*が算出される。
【0055】
図10に示される駆動力移動量制限器904は、前輪駆動力指令値Ff*、後輪駆動力指令値Fr*、及び前後駆動力移動量算出部903で算出された前後駆動力移動量Fd*を入力として、当該前後駆動力移動量Fd*に基づく後輪16の駆動力の移動量(変化量)の制限値である制限駆動力移動量Fdl*を算出する。
【0056】
例えば、前後駆動力移動量Fd*が正の値をとるとき、すなわち後輪16から前輪14へ駆動力を移動させる場合、前後駆動力移動量Fd*を後輪16の有する駆動力よりも小さくすることが望ましい。なぜなら、前後駆動力移動量Fd*を後輪16の有する駆動力以上とすると、前輪14に正の駆動力を作用させる(力行駆動させる)一方、後輪16に負の駆動力を与える(回生駆動させる)状況が生じ得るからである。そして、このような状況が生じると、車両1の揺り返しの発生や車両1への負荷が高まるなどして所望の運転を実現することができないことが考えられる。したがって、駆動力移動量制限器904は、後輪16の有する駆動力の範囲内で、後輪16から前輪14へ移動可能な限度に前後駆動力移動量Fd*を制限するための演算を行う。
【0057】
具体的には、駆動力移動量制限器904は、前段において、後輪駆動力指令値Fr*と前後駆動力移動量Fd*(正の値)の小さい方の値を演算する。なお、後段において当該値と前輪駆動力指令値Ff*の符号反転値(負の値)との内の大きい方の値を制限駆動力移動量Fdl*として求めるが、負の値との比較となるため必ず前段の出力値が選択されることになる。結果として、前後駆動力移動量Fd*は、前輪駆動力指令値Ff*よりも小さい値に制限され、駆動力移動量制限器904は、制限された前後駆動力移動量Fd*に応じた指令値として、制限駆動力移動量Fdl*を出力する。
【0058】
一方で、前後駆動力移動量Fd*が負の値をとるとき、すなわち前輪14から後輪16へ駆動力を移動させる場合には、前後駆動力移動量Fd*(負の値)の絶対値が前輪14の有する駆動力(負の値)の絶対値よりも小さくすることが望ましい。具体的に、駆動力移動量制限器904は、前段において、前後駆動力移動量Fd*(負の値)と後輪駆動力指令値Fr*(正の値)との内小さい方の値を選択して出力する。なお、前段では、負の値である前後駆動力移動量Fd*が必ず選択されることとなる。そして、駆動力移動量制限器904は、後段において、前後駆動力移動量Fd*(負の値)と前輪駆動力指令値Ff*の符号反転値(負の値)との内の大きい方の値を選択する。言い換えると、後段では、前輪14の有する駆動力と前後駆動力移動量Fd*の絶対値とを比較して絶対値の小さい方が出力される。つまり、前後駆動力移動量Fd*は、前輪14の有する駆動力以下の移動量に制限される。
【0059】
これにより、駆動力移動量制限器904は、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の符号を同一に保持するような、制限駆動力移動量Fdl*を出力する。なお、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の符号が相互に正(力行駆動)となる場合について説明した。しかしながら、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の符号が相互に負(回生駆動)となるように制限駆動力移動量Fdl*を求める構成を採用しても良い。
【0060】
図6に戻り、前後輪位相調整部905には、前輪駆動力指令値Ff*に制限駆動力移動量Fdl*を加算した値(制限後の前輪駆動力指令値Ff*)、及び後輪駆動力指令値Fr*から制限駆動力移動量Fdl*を減算した値(制限後の後輪駆動力指令値Fr*)を入力として、電気的な構成に起因する、前輪14と後輪16との間での駆動力の伝達の位相差を調整する。具体的には、前後輪位相調整部905は、制限後の前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*に対して、制振制御を含めたフロントモータトルク指令値からフロントモータ回転数への伝達特性Grとリアモータトルク指令値からリアモータ回転数への伝達特性Grrにより構成されるフィルタを施して、前輪実駆動力指令値Fλf*を算出する。なお、後輪実駆動力指令値Fλr*としては、上述の制限後の後輪駆動力指令値Fr*がそのまま出力される。
【0061】
[車両の動作]
本実施形態の制御方法を適用した車両1の動作について説明する。図11において、前後駆動輪にてそれぞれ独立したモータを有した電動4WD車両において、ドライバが停車状態からアクセルを急瞬に踏み込み、目標トルク指令値をステップで増加させたとき、車両が加速するシーンでのフロントモータ10の駆動トルク指令値、リアモータ12の駆動トルク指令値、ピッチ角、ピッチレート、及び前後加速度の波形が示されている。
【0062】
比較例では時刻t1~t2にかけて、ピッチ角のオーバーシュートは抑制できているが、フロントモータ10のトルク指令値及びリアモータ12のトルク指令値が、ドライバの意図する前後加速度を実現出来ないことがわかる。これは、トルク指令値がピッチ角の特性を考慮したフィルタによって制限されることによるものである。
【0063】
本実施形態では、総駆動力の低下を抑制するように前後駆動力の差分によってピッチ角を制御している。このため、時刻t1~t2にかけて比較例と比較してドライバの意図した前後加速度を実現しながら、ピッチ角のオーバーシュートを低減することができる。このように、ドライバの意図した加速を実現しながらも、加速時のピッチによる揺り返し感を抑制することができる。
【0064】
本実施形態の作用効果について説明する。
【0065】
本実施形態の電動車両の制御方法は、前輪14を駆動するフロントモータ(第1モータ)10と後輪16を駆動するためのリアモータ(第2モータ)12とを有する電動車両の駆動を制御する車両駆動制御方法であって、電動車両に対する目標駆動力に基づいて、第1モータに対する前輪駆動力指令値Ff*と第2モータに対する後輪駆動力指令値Fr*とを算出する指令値算出ステップと、算出した前輪駆動力指令値Ff*と後輪駆動力指令値Fr*とに基づいて、車体に発生する振動の程度を示す実ピッチ角応答を推定する実ピッチ角応答算出ステップと、実ピッチ角応答に基づいて、振動の程度を低下させる駆動力の分配比Kfとなるように前輪14と後輪16との間で移動させるべき駆動力として定まる前後駆動力移動量Fdを算出する前後駆動力移動量算出ステップと、前後駆動力移動量Fdに基づいて前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*を補正することにより、第1モータ及び第2モータへそれぞれ入力される前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*を算出する実駆動力算出ステップと、を備える。
【0066】
本実施形態によれば、車両1の総駆動力が、前輪14と後輪16との間で振動が低減されるように分配されることとなる。したがって、総駆動力を減少させずに所望の車両出力を維持しつつ、車両1の振動のうち特にピッチ方向における振動が抑制される。
【0067】
また、本実施形態の電動車両の制御方法は、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*に基づいて、振動の程度が実ピッチ角応答よりも低い規範ピッチ角応答を算出する規範ピッチ角算出ステップをさらに備え、前後駆動力算出ステップにおいて、前後駆動力移動量Fd*は、規範ピッチ角応答と実ピッチ角応答とを比較することにより算出される。
【0068】
本実施形態によれば、前後駆動力移動量Fd*が、あらかじめ実験などによって定められた、振動が低減するような規範ピッチ角応答との比較に基づいて決定される。このため、車両1の振動をより正確に低減するような前後駆動力移動量Fdを決定することができる。
【0069】
また、本実施形態の電動車両の制御方法は、前後駆動力算出ステップにおいて、規範ピッチ角応答と実ピッチ角応答の差分を算出し、前後駆動力移動量Fd*を、実ピッチ角応答から前後駆動力移動量Fd*までの伝達特性を用いて当該差分を打ち消すように算出する。
【0070】
本実施形態によれば、車両1の適切な振動の程度の指標として、あらかじめ実験などにより定められた振動を低減するような規範ピッチ角応答及び実ピッチ角応答の差分を求める。そして、上記伝達特性を用いて当該差分を「0」にするように前後駆動力移動量Fdを算出するので、車両1の振動をより高精度に評価した上でこれを適切に除去し得る前後駆動力移動量Fd*が得られる。このため、総駆動力を一定に保ちつつ、より正確に車両1の振動を低減することができる。
【0071】
また、本実施形態の電動車両の制御方法は、規範ピッチ角算出ステップにおいて、規範ピッチ角応答は、定常状態において実ピッチ角応答と同一となるように決定される。
【0072】
本実施形態によれば、車両1が一定加速度状態に維持され(総駆動力が変化せず)、ピッチ運動(ピッチ角)の変動が実質的に無視できる程度に小さい定常状態において、規範ピッチ角応答が実ピッチ角応答と一致するように設計されている。これにより、定常状態においては、規範ピッチ角応答と実ピッチ角応答との差分に基づく前後駆動力移動量Fd*が「0」と算出されて補正前の基本的な分配比Kfが維持される。すなわち、実質的に車体振動が発生しないと考えられるシーンにおいては、実質的にピッチ角振動抑制処理を実行せずに、本来求められている基本的な分配比Kfを維持することができる。
【0073】
また、本実施形態の電動車両の制御方法は、規範ピッチ角算出ステップ及び/又は実ピッチ角応答算出ステップでは、車両に生じる駆動力反力、慣性力、及びサスペンションの作動状態を考慮して予め定められた瞬間回転角θf,θrに基づいて、車両に作用するピッチ振動をもたらす上下力(ピッチングモーメントMλ)が算出される。そして、この上下力に基づいて規範ピッチ角応答(規範ピッチ角λ)及び/又は実ピッチ角応答(実ピッチ角λ^)が決定される(規範ピッチ角モデル算出部901及び/又は実ピッチ角モデル算出部902)。
【0074】
これにより、予め決定された瞬間回転角θf,θrを用いるので、サスペンションに取付けられた振動検出センサなどから振動を取得する場合と比較して、遅れなく規範ピッチ角応答及び/又は実ピッチ角応答を得ることができる。特に、本実施形態の瞬間回転角θf,θrは、一例として、ストローク時の変化が微小であるものとみなして固定値となっている。このため、車両の動作状態に応じた瞬間回転角θf,θrの演算を省略することができ、より簡易に規範ピッチ角応答及び/又は実ピッチ角応答を求めることができる。また、当該規範ピッチ角応答は、実験などによって導出された瞬間回転角θf,θrに基づいて定められているため、車両1の実際の挙動を考慮した高精度な規範ピッチ角λを演算することができる。
【0075】
また、本実施形態の電動車両の制御方法は、実駆動力算出ステップにおいて、前後駆動力移動量Fd*の正負を後輪16から前輪14に移動させる駆動力の正負と一致させ、前輪実駆動力指令値Fλf*を、前輪駆動力指令値Ff*に前後駆動力移動量Fd*を加算した値として算出する。また、後輪実駆動力指令値Fλr*を、後輪駆動力指令値Fr*から前後駆動力移動量Fd*を減算した値として算出する。
【0076】
これによれば、モータコントローラ5からの前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*による駆動力の総量が、前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*の総量と等しくなるように前輪14と後輪16の駆動力の分配比Kfを調節することのできる、すなわち車両1を所望の加速度で駆動しつつ車体振動を抑制することのできるより具体的な制御ロジックが実現される。
【0077】
前後駆動力移動量算出ステップ(駆動力移動量制限器904)において、前後駆動力移動量Fd*は、前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*の符号が相互に同一となる範囲でとり得る値としての制限駆動力移動量Fdl*に制限される。
【0078】
本実施形態によれば、前輪14と後輪16との間で駆動力が移動しても、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*の符号を保持することができる。これにより、前輪駆動力指令値Ff*又は後輪駆動力指令値Fr*の符号が意図せず反転することによって生じる振動を抑制することができる。さらに、符号が反転するような過度な指令値の変動による車両1への電気的及び機械的な負荷並びに燃費性能の低下を抑制することもできる。
【0079】
実駆動力指令値算出ステップは、前輪駆動力指令値Ff*及び後輪駆動力指令値Fr*から前輪実駆動力指令値Fλf*及び後輪実駆動力指令値Fλr*までの、前後輪それぞれの動特性に応じて位相差を調整する位相調整フィルタ処理(前後輪位相調整部905)を含む。
【0080】
例えば、前後輪の動特性としての前後の位相差を抑制することができるので、確実に駆動力が一定となる状態を保持することができる。具体的には、複数の駆動モータを備える車両1においては、前後輪実駆動トルクまでの動特性や位相が異なる場合、規範応答通りのピッチ角実応答を実現することができない。前輪14及び後輪16の各々から実駆動力までの応答が異なる場合であっても、位相調整フィルタを適用することで、狙いどおりの実駆動力を達成することができるとともに、規範ピッチ角応答と一致したピッチ角実応答を実現できる。これにより、より正確に車両1の振動を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態の制御方法は、車両1の駆動力伝達系の振動を抑制するための、ねじり振動抑制制御ステップをさらに備える。
【0082】
本実施形態によれば、駆動軸トルクの応答を犠牲にすることなく、駆動力伝達系振動、例えば、ドライブシャフトのねじり振動などを抑制することができる。車両1におけるピッチ方向の振動に加えてねじり振動も適切に抑制することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0084】
例えば、本実施例では力行駆動時について説明したが、回生駆動時も同様に、総制駆動力の低下を抑止するよう前後制駆動力の差分によってピッチ角を制御することで、ドライバの意図した減速を実現しながらも、減速時の揺り返し感を抑制することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
10 フロントモータ
12 リアモータ
Fd* 前後駆動力移動量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11