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特許7596781回生ブレーキの制御方法およびロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】回生ブレーキの制御方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020216424
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101984
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】清澤 勇貴
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-061562(JP,A)
【文献】特開2018-051693(JP,A)
【文献】特開昭63-283498(JP,A)
【文献】特開2010-131657(JP,A)
【文献】特開2017-024137(JP,A)
【文献】特開2017-053304(JP,A)
【文献】特開2018-133975(JP,A)
【文献】特開2020-162193(JP,A)
【文献】米国特許第09973134(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102018200513(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第106444853(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/12-19/00
B30B 15/10
F03D 3/06
G05D 3/12
H02J 7/00
H02P 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
電力の供給を受けて出力軸の回転出力を生成し、前記出力軸への回転力の供給を受けて電力を生成する駆動部と、
前記回転出力により動かされる可動部と、
前記出力軸の角度位置を検出する検出部と、
電気抵抗を有し前記駆動部に接続される抵抗機器と、
前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフすることができるスイッチと、の1以上の組み合わせと、
前記ロボットシステムを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
電力の供給がない前記駆動部を対象とする第1制動制御であって、
前記検出部の出力に基づいて前記駆動部の前記回転出力の速度を算出し、
前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度と、前記回転出力の前記速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、前記スイッチに前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフさせる、第1制動制御を実行することができ
前記抵抗機器の少なくとも一部として、前記駆動部が生成する電力を蓄える蓄電部を備え、
前記制御部は、前記駆動部への電力の供給が遮断された場合に、前記蓄電部から電力の供給を受けて動作することができ、
前記1以上の前記組み合わせは、複数の前記組み合わせであり、
前記ロボットシステムは、複数の前記組み合わせに含まれる複数の前記駆動部を互いに接続する接続回路を備え、
前記制御部は、
前記複数の前記組み合わせのうち1以上の前記組み合わせについて、前記第1制動制御を実行することができ、
前記複数の前記組み合わせのうち他の1以上の前記組み合わせについて、電力が供給されている前記駆動部を対象とする第2制動制御であって、前記接続回路で、前記第1制動制御で生成された電力を利用して、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度に応じた大きさの、前記回転出力とは逆向きの回転力を生じさせるように前記駆動部を制御する、第2制動制御を実行することができる、ロボットシステム。
【請求項2】
請求項に記載のロボットシステムであって、
前記駆動部が生成する電力を前記ロボットシステムが備える電子機器に供給する回生電力回路と、
前記回生電力回路に設けられ、前記電子機器に供給される電力の電圧をあらかじめ定められた値以下に制御することができる機器保護部と、を備える、ロボットシステム。
【請求項3】
ロボットシステムにおける回生ブレーキの制御方法であって、
前記ロボットシステムは、
電力の供給を受けて出力軸の回転出力を生成し、前記出力軸への回転力の供給を受けて電力を生成する駆動部と、
前記回転出力により動かされる可動部と、
前記出力軸の角度位置を検出する検出部と、
電気抵抗を有し前記駆動部に接続される抵抗機器と、
前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフすることができるスイッチと、の1以上の組み合わせを備え、
前記制御方法は、
電力の供給がない前記駆動部を対象とする第1制動制御を実行する工程であって、
前記検出部の出力に基づいて前記回転出力の速度を算出し、
前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度と、前記回転出力の前記速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、前記スイッチに前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフさせる、工程を備え
前記ロボットシステムは、
前記ロボットシステムを制御する制御部と、
前記抵抗機器の少なくとも一部としての蓄電部であって、前記駆動部が生成する電力を蓄える蓄電部と、を備え、
前記制御方法は、
前記駆動部への電力の供給が遮断された場合に、前記蓄電部から電力の供給を受けて前記制御部が前記ロボットシステムを制御する工程を備え、
前記1以上の前記組み合わせは、複数の前記組み合わせであり、
前記ロボットシステムは、複数の前記組み合わせに含まれる複数の前記駆動部を互いに接続する接続回路を備え、
前記制御方法は、
前記複数の前記組み合わせのうち1以上の前記組み合わせについて、前記第1制動制御を実行し、
前記複数の前記組み合わせのうち他の1以上の前記組み合わせについて、電力が供給されている前記駆動部を対象とする第2制動制御であって、前記接続回路で、前記第1制動制御で生成された電力を利用して、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度に応じた大きさの、前記回転出力とは逆向きの回転力を生じさせるように前記駆動部を制御する、第2制動制御を実行する、
工程を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回生ブレーキの制御方法およびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットにおいて、電磁ブレーキによる機械的な制動に加えて、ロボットを駆動するモーターによる回生制動を行う技術が存在する。モーターを発電機として機能させた場合の制動力は、そのときのモーターの回転速度に応じて定まる。特許文献1の技術においては、非常停止動作において速度指令がゼロになるタイミングで、回生制動とサーボ電源オフとを実行する。このような処理を行うことにより、目標位置からの行き過ぎ量を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-24137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1においては、サーボモーターが通常の回転速度で動作していた場合に、回生制動の制動力を制御する方法については、言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、電力の供給を受けて出力軸の回転出力を生成し、前記出力軸への回転力の供給を受けて電力を生成する駆動部と、前記回転出力により動かされる可動部と、前記出力軸の角度位置を検出する検出部と、電気抵抗を有し前記駆動部に接続される抵抗機器と、前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフすることができるスイッチと、の1以上の組み合わせと、前記ロボットシステムを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、電力の供給がない前記駆動部を対象とする第1制動制御であって、前記検出部の出力に基づいて前記駆動部の前記回転出力の速度を算出し、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度と、前記回転出力の前記速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、前記スイッチに前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフさせる、第1制動制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係るロボットシステム50の全体構成を示す説明図である。
図2】モーターユニット1の構成を示す説明図である。
図3】モーター11に接続される電気的構成を示すブロック図である。
図4】制御装置52の主要な機能部を示すブロック図である。
図5】ロボット51の動作を停止させる停止指示があった場合の制御装置52の処理を示すフローチャートである。
図6】制御装置52が回生ブレーキをオンとする時間およびオフとする時間を表すグラフである。
図7図6にしたがって、回生ブレーキのオンとオフが繰り返された場合の、モーター11に接続される電気抵抗の大きさを示すグラフである。
図8図6にしたがって、回生ブレーキのオンとオフが繰り返された場合の、モーター11による制動力の大きさを示すグラフである。
図9】ステップS460における制御装置52の主要な機能部の関係を示すブロック図である。
図10】第2実施形態のロボットシステム50bにおいて、モーター11に接続される電気的構成を示すブロック図である。
図11】第2実施形態において、ロボット51の動作を停止させる場合の制御装置52の処理を示すフローチャートである。
図12】瞬間停電が発生した場合の出力軸12のモーター角速度の大きさと、速度指令が表す角速度の大きさと、を時系列的に表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、本実施形態に係るロボットシステム50の全体構成を示す説明図である。ロボットシステム50は、ロボット51と、制御装置52と、を備える。
【0008】
ロボット51は、いわゆる垂直多関節ロボットである。ロボット51は、基台53と、アーム要素54,55,56,57,58,59とを備える。図1には示していないが、ロボット51は、さらに、インバーター83と、抵抗器84と、スイッチ86と、を備える。
【0009】
基台53は、ロボット51を構成する他の部材を支持している。基台53を床に固定することで、ロボット51が床の上に設置される。
【0010】
アーム要素54は、一方の端において、基台53に支持されている。アーム要素54は、設置面に略垂直な回転軸54aを中心に、基台53に対して所定の角度範囲で回転することができる。アーム要素55の他端は、アーム要素55に接続されている。アーム要素55は、一方の端において、アーム要素54に接続されている。アーム要素55は、回転軸54aと垂直な回転軸55aを中心に、アーム要素54に対して所定の角度範囲で回転可能である。アーム要素55の他端は、アーム要素56に接続されている。アーム要素56は、一方の端において、アーム要素55に接続されている。アーム要素56は、回転軸55aと略平行な回転軸56aを中心に、アーム要素55に対して所定の角度範囲で回転可能である。アーム要素56の他端は、アーム要素57に接続されている。
【0011】
アーム要素57は、一方の端において、アーム要素56に接続されている。アーム要素57は、回転軸56aと垂直な回転軸57aを中心に、アーム要素56に対して所定の角度範囲で回転可能である。アーム要素57の他端は、アーム要素58に接続されている。アーム要素58は、一方の端において、アーム要素57に接続されている。アーム要素58は、回転軸57aと垂直な回転軸58aを中心に、アーム要素57に対して所定の角度範囲で回転可能である。アーム要素58の他端は、アーム要素59に接続されている。
【0012】
アーム要素59は、一方の端において、アーム要素58に接続されている。アーム要素59は、回転軸58aと垂直な回転軸59aを中心に、アーム要素58に対して所定の角度範囲で回転可能である。アーム要素59の他端には、エンドエフェクターが取り付けられる。エンドエフェクターは、ロボット51による作業の対象物であるワークを保持することができる。ロボット51の制御点は、たとえば、アーム要素59の回転軸59a上であってアーム要素59から所定の距離にある位置に設定される。なお、技術の理解を容易にするために、図1において、エンドエフェクターの表示を省略している。
【0013】
アーム要素54と基台53との接続部分は、ねじり関節を構成している。アーム要素55とアーム要素54との接続部分は、曲げ関節を構成している。アーム要素56とアーム要素55との接続部分は、曲げ関節を構成している。アーム要素57とアーム要素56との接続部分は、ねじり関節を構成している。アーム要素58とアーム要素57との接続部分は、曲げ関節を構成している。アーム要素59とアーム要素58との接続部分は、ねじり関節を構成している。回転軸58a,56a,55aは、互いに平行である。
【0014】
各アーム要素の接続部分、すなわちロボット51の関節には、それぞれモーターユニット1が設けられている。モーターユニット1が備えるモーター11の出力軸12の回転出力により、アーム要素54,55,56,57,58,59が動かされる。アーム要素54,55,56,57,58,59が動かされることにより、関節を介して互いに接続されている二つのアーム要素の相対角度が変わる。その結果、アーム要素59に取り付けられたエンドエフェクターが、3次元空間の任意の位置に任意の姿勢で配される。モーターユニット1の構成については、後に説明する。
【0015】
制御装置52は、ロボットシステム50を制御する。制御装置52は、ケーブルにより、ロボット51と通信可能に接続されている。制御装置52は、プロセッサーであるCPUと、RAMと、ROMと、を備えている。RAMは、メインメモリーと、補助記憶装置とを含む。制御装置52のCPUは、補助記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムをメインメモリーにロードして実行することによって、ロボットを動作させる。
【0016】
制御装置52は、ロボット51の制御点の制御について、PTP制御(Point To Point control)と、CP制御(Continuous Path control)と、を行うことができる。PTP制御は、目標とする位置と姿勢のみを指定され、目標とする位置に至るまでの動作経路を指定されない制御である。CP制御は、動作経路に沿って、位置と姿勢を指定される制御である。
【0017】
図2は、モーターユニット1の構成を示す説明図である。モーターユニット1は、モーター11と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、プーリー31と、モータープレート3とを備えている。
【0018】
モータープレート3は、モーターユニット1をロボット51に固定するための部材である。モータープレート3には、モーター11と電磁ブレーキ21とが固定されている。モータープレート3は、軸孔3aを備えている。
【0019】
モーター11は、出力軸12を備えている。モーター11は、電力の供給を受けて出力軸12の回転出力を生成する。また、モーター11は、出力軸12への回転力の供給を受けて電力を生成する。モーター11は、モータープレート3に固定されている。出力軸12は、モータープレート3の軸孔3aを貫通している。
【0020】
プーリー31は、減速機を介して、モーター11の出力軸12に接続されている。プーリー31は、モーター11の出力軸12によって回転される。プーリー31の回転は、ベルトを介してアーム要素に伝えられ、アーム要素を動かす。また、プーリー31は、プーリー31が接続されているモーター11に電力が供給されていない状態において、アーム要素の動きに起因する回転力を伝達され、その回転力を出力軸12に供給する。その結果、モーター11は、発電機として機能する。
【0021】
エンコーダー15は、モーター11の出力軸12の角度位置を検出する。エンコーダー15は、モーター11に対してモータープレート3とは逆の側において、モーター11に固定されている。
【0022】
電磁ブレーキ21は、モータープレート3に対してモーター11とは逆の側において、モータープレート3に固定されている。電磁ブレーキ21は、電磁ブレーキ21に電力が供給されていない状態において、静止している出力軸12を回転不能に保持する。具体的には、電磁ブレーキ21は、出力軸12に接続された部材に対して、バネによる弾性力で、可動部材を押圧することにより、可動部材とその部材との間の摩擦力によって、出力軸12を回転不能に保持する。電磁ブレーキ21は、電磁ブレーキ21に電力が供給されている状態において、出力軸12を回転可能にする。具体的には、電磁ブレーキ21は、電力を供給されることにより、バネによる弾性力に抗して、出力軸12に接続された部材から可動部材を離す。その結果、出力軸12は回転可能となる。
【0023】
図3は、モーター11に接続される電気的構成を示すブロック図である。インバーター83は、モーター11と商用電源81に接続されている。インバーター83は、商用電源81から供給される交流電力の周波数および電圧を変換して、モーター11に供給する。ロボット51においては、一つの関節を駆動する一つのモーター11に対して、一つのインバーター83が設けられている。
【0024】
抵抗器84は、電気抵抗を有する。抵抗器84は、電力を供給されて発熱する。抵抗器84は、スイッチ86を介して、モーター11に接続されている。スイッチ86は、抵抗器84とモーター11との接続をオンおよびオフする。
【0025】
一つの関節Jnに対応して、モーター11と、そのモーター11の回転出力により動かされるアーム要素と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、スイッチ86と、の一つの組み合わせが設けられている(図2および図3参照)。すなわち、ロボットシステム50においては、モーター11と、そのモーター11の回転出力により動かされるアーム要素と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、スイッチ86と、の6個の組み合わせが設けられている。図3において、一つの関節Jnに対応する構成を、破線で囲って示す。
【0026】
ロボットシステム50において、6個の関節Jnに対応する6組のモーター11およびインバーター83は、互いに並列に商用電源81に接続されている。
【0027】
ロボットシステム50において、6個の関節Jnに対応する6組のモーター11、およびスイッチ86は、互いに並列に抵抗器84に接続されている。すなわち、6個の関節Jnに対応する、モーター11と、アーム要素と、エンコーダー15と、スイッチ86と、の6個の組み合わせが、一つの抵抗器84を共有している(図2および図3参照)。機能上は、一つの関節Jnに対応して、モーター11と、スイッチ86と、インバーター83と、抵抗器84と、の一つの組み合わせが、設けられている、と把握することができる。
【0028】
図4は、制御装置52の主要な機能部を示すブロック図である。制御装置52は、動作指令部40と、電磁ブレーキ制御部45と、回生ブレーキ制御部46と、を備える。
【0029】
動作指令部40は、位置指令を受け取って、位置指令に応じてモーター11の動作を制御する。動作指令部40は、位置制御器41と、速度制御器42と、電流制御器43と、モータードライバー44と、を備える。
【0030】
位置制御器41は、位置制御器41に入力される位置指令と、エンコーダー15から入力される出力軸12の角度位置との差分を基に、速度指令を生成する。
【0031】
速度制御器42は、位置制御器41から入力される速度指令と、モーター11の回転出力の速度であるモーター角速度と、に応じて、出力軸12の目標回転速度を算出し、その目標回転速度に応じた電流指令を生成する。モーター角速度は、エンコーダー15の出力に基づいてされる。より具体的には、モーター角速度は、エンコーダー15によって検出された出力軸12の角度位置を微分することによって得られる。
【0032】
電流制御器43は、速度制御器42から入力される電流指令と、モータードライバー44から入力されるモーター11の駆動電流との差分に対し、比例制御および積分制御を行い、電流指令に応じた電流がモーター11に供給されるようにモータードライバー44を制御する。
【0033】
モータードライバー44は、構成要素としてインバーター83およびスイッチ86を含む(図3参照)。モータードライバー44は、モーター11に電流を供給して、モーター11を駆動する。モータードライバー44は、モーター11に電流を供給しない状態において、モーター11への抵抗器84の接続をオンおよびオフする。
【0034】
電磁ブレーキ制御部45は、動作指令部40から入力される電磁ブレーキ実行指令に応じて、電磁ブレーキ21を作動させる(図4の下段参照)。電磁ブレーキ21によって、モーター11の出力軸12は、回転不能に保持される。
【0035】
回生ブレーキ制御部46は、位置制御器41から入力される速度指令と、モーター角速度とに応じて、電力を供給されず出力軸12への回転力の供給を受けているモーター11について、モータードライバー44を介して、回生ブレーキの制動力を制御する(図4の上段右部参照)。
【0036】
図5は、ロボット51の動作を停止させる停止指示があった場合の制御装置52の処理を示すフローチャートである。図5の処理により、回生ブレーキの制御方法が実現される。停止指示は、たとえば、非常停止ボタンが押されることにより、発行される。
【0037】
ステップS100において、制御装置52は、停止指示を受信する。
【0038】
ステップS200において、制御装置52は、エンコーダー15の出力に基づいて、モーター11の回転出力の速度であるモーター角速度を算出する。モーター角速度は、エンコーダー15によって検出された出力軸12の角度位置を微分することによって得られる。
【0039】
ステップS300において、制御装置52は、各関節のモーター11について、現在のモーター角速度から、モーター11に接続されている機器が損傷しない減速度で減速するように、モーター11の目標減速度、目標角速度、および目標角度位置を決定する。目標減速度は、その関節から先のロボット51のアームの質量、ロボット51が保持しているワークの質量、エンドエフェクターの質量などに基づいて、モーター11に接続された減速機などが破損しない数値に設定される。目標角速度および目標角度位置は、設定された目標減速度に基づいて設定される。
【0040】
たとえば、CP制御において指定された動作経路上に制御点がある状態でロボット51の動作を停止させるためには、指定された動作経路に沿って制御点が減速しつつ移動するように、各関節のモーター11の目標減速度、目標角速度、および目標角度位置が決定される。その結果、各関節のモーター11は、それぞれ独自の減速度で減速される。
【0041】
ステップS400において、制御装置52は、モーター11を停止させる停止処理を実行する。より具体的には、ステップS400において、ロボット51の各モーター11について、回生ブレーキが実行される。
【0042】
ステップS410において、制御装置52は、モーター11への電力の供給を停止する。
【0043】
ステップS420~S460において、制御装置52は、モーター11についてステップS300で定められた目標減速度と、モーター11の回転出力の速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、スイッチ86に抵抗器84とモーター11との接続をオンおよびオフさせる。
【0044】
ステップS420において、制御装置52は、エンコーダー15の出力に基づいて、モーター11の回転出力の速度であるモーター角速度を算出する。モーター角速度は、エンコーダー15によって検出された出力軸12の角度位置を微分することによって得られる。
【0045】
ステップS440において、制御装置52は、ステップS300で定められた目標減速度と、ステップS420で得られたモーター角速度と、に基づいて、目標減速度を実現するように、次に回生ブレーキをオンとする時間および回生ブレーキをオフとする時間を算出する。
【0046】
ステップS460において、制御装置52は、ステップS230で得られたタイミングで、スイッチ86に抵抗器84とモーター11との接続をオンおよびオフさせる(図3参照)。
【0047】
ステップS480において、制御装置52は、モーター角速度が、0を含む所定の範囲内になったか否かを判定する。モーター角速度が0を含む所定の範囲内になった場合には、処理はステップS600に進む。モーター角速度が0を含む所定の範囲内になっていない場合には、処理はステップS420に戻る。その結果、モーター角速度が0近傍になるまで、回生ブレーキのオンとオフが繰り返される。
【0048】
図6は、制御装置52が回生ブレーキをオンとする時間およびオフとする時間を表すグラフである。図6の例において、当初は、単位時間あたりの回生ブレーキをオンとする時間の割合が、大きく設定され、その後、単位時間あたりの回生ブレーキをオンとする時間の割合が、小さくなっていることが分かる。モーター角速度が一定であるという前提のもとでは、高い制動力を発揮させる場合には、単位時間あたりの回生ブレーキをオンとする時間の割合が、大きく設定される。低い制動力を発揮させる場合には、単位時間あたりの回生ブレーキをオンとする時間の割合が、小さく設定される。
【0049】
図7は、図6にしたがって、回生ブレーキのオンとオフが繰り返された場合の、モーター11に接続される電気抵抗の大きさを示すグラフである。抵抗器84の電気抵抗は一定である(図3参照)。このため、図7のグラフは、図6のグラフの相似形である。
【0050】
図8は、図6にしたがって、回生ブレーキのオンとオフが繰り返された場合の、モーター11による制動力の大きさを示すグラフである。回生ブレーキがオンのときの制動力は、モーター角速度が低いほど、小さい。また、モーター11に抵抗器84が接続されてから制動力が発生するまでの間、およびモーター11と抵抗器84の接続が遮断されてから制動力が完全になくなるまでの間には、時間遅れが生じる。その結果、図6にしたがって、回生ブレーキのオンとオフが繰り返された場合の、モーター11による制動力の大きさは、図8に示すようになる。図8の例において、当初は、制動力が大きく、その後、制動力が小さくなっていることが分かる。このように制動力を制御することにより、モーター11をスムーズに停止させることができる。
【0051】
図5のステップS420~S460の処理を行うことにより、回生制動によって、目標減速度に沿ってアーム要素54,55,56,57,58,59を減速させることができる。その結果、モーター11に接続されている減速機などの機器が回生制動によって破損する事態を防止することができる。また、本実施形態の構成によれば、電流制御を行って回生ブレーキの制動力を制御する態様に比べて、簡易な構成で回生ブレーキの制動力を制御することができる。
【0052】
図9は、ステップS460における制御装置52の主要な機能部の関係を示すブロック図である。図5のステップS420~S460の処理は、具体的には、制御装置52において、以下のように行われる。制御装置52は、図5のステップS300で算出された目標角度位置に従って位置指令を生成する。位置制御器41は、入力された位置指令と、エンコーダー15から入力される出力軸12の角度位置との差分を基に、速度指令を生成し、回生ブレーキ制御部46に入力する。
【0053】
回生ブレーキ制御部46は、位置制御器41から入力される速度指令と、モーター角速度とに応じて、次に回生ブレーキをオンとする時間および回生ブレーキをオフとする時間を算出する。そして、その算出結果に応じて、モータードライバー44を制御する。モータードライバー44は、回生ブレーキ制御部46からの指示に応じてスイッチ86をオンおよびオフする(図3参照)。
【0054】
図5のステップS410において、モーター11への電力の供給は停止されている。このため、図5のステップS420~S460の処理においては、回生ブレーキ制御部46は、モーター11に供給される電流の制御は行わない。図5のステップS420~S460の処理においては、速度制御器42および電流制御器43は機能しない。
【0055】
図5のステップS600において、電磁ブレーキ制御部45は、電磁ブレーキ21を作動させる(図9の下段参照)。その結果、電磁ブレーキ21によって、モーター11の出力軸12は、回転不能に保持される。
【0056】
第1実施形態におけるモーター11を「駆動部」とも呼ぶ。アーム要素54,55,56,57,58,59を「可動部」とも呼ぶ。エンコーダー15を「検出部」とも呼ぶ。抵抗器84を「抵抗機器」とも呼ぶ。制御装置52を「制御部」とも呼ぶ。電力の供給がないモーター11について行われるステップS400の処理を「第1制動制御」とも呼ぶ。
【0057】
B.第2実施形態:
第2実施形態のロボットシステム50bは、抵抗機器として、抵抗器84に代えて2次電池84bを有する。第2実施形態のロボットシステム50bは、第2コンバーター85を有する。さらに、第2実施形態のロボットシステム50bにおいては、ロボット51を停止させる際の制御装置52の処理が、第1実施形態のロボットシステム50とは異なる。第2実施形態のロボットシステム50bの他の点は、第1実施形態のロボットシステム50と同じである。
【0058】
図10は、第2実施形態のロボットシステム50bにおいて、モーター11に接続される電気的構成を示すブロック図である。第2実施形態のロボットシステム50bは、第1コンバーター82と、電子機器87と、機器保護部88と、2次電池84bと、第2コンバーター85と、を有する。
【0059】
電子機器87は、ロボットシステム50bが備える構成であって、直流の電力を供給されて動作する機器である。電子機器87は、制御装置52を含む(図1参照)。
【0060】
第1コンバーター82は、商用電源81と機器保護部88とに接続されている。第1コンバーター82は、商用電源81から供給される交流電力を直流電力に変換し、機器保護部88を経由して電子機器87に供給する。
【0061】
2次電池84bは、機器保護部88に対して、第1コンバーター82と並列に接続されている。2次電池84bは、第2コンバーター85に接続されている。2次電池84bは、第2コンバーター85を介して、モーター11が生成する電力を蓄える。2次電池84bは、機器保護部88を介して、電子機器87に電力を供給する。2次電池84bは、具体的には、リチウムイオン電池である。
【0062】
第2コンバーター85は、2次電池84bに接続されている。第2コンバーター85には、スイッチ86を介して、モーター11およびインバーター83が、並列に接続されている。第2コンバーター85は、モーター11が生成する交流電力を直流電力に変換し、2次電池84bに供給する。
【0063】
モーター11が生成する電力を電子機器87に供給する回路を、回生電力回路Crと呼ぶ。回生電力回路Crには、スイッチ86、第2コンバーター85、2次電池84b、および機器保護部88が設けられている。
【0064】
機器保護部88は、電子機器87に接続されている。機器保護部88には、第1コンバーター82および2次電池84bが、並列に接続されている。機器保護部88は、第1コンバーター82または2次電池84bから電子機器87に供給される電力の電圧をあらかじめ定められた値以下に制御する。機器保護部88は、具体的にはポリスイッチである。
【0065】
このような構成とすることにより、電子機器87を過電圧によって損傷させることなく、モーター11が生成する電力を2次電池84bを介して活用することができる。
【0066】
第1実施形態においては説明を省略したが、第1実施形態のロボットシステム50においても、第1コンバーター82、機器保護部88、および電子機器87は設けられている。
【0067】
一つの関節Jnに対応して、モーター11と、そのモーター11の回転出力により動かされるアーム要素と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、スイッチ86と、第2コンバーター85と、インバーター83と、の一つの組み合わせが設けられている(図2および図10参照)。すなわち、ロボットシステム50bにおいては、モーター11と、そのモーター11の回転出力により動かされるアーム要素と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、スイッチ86と、第2コンバーター85と、インバーター83と、の6個の組み合わせが設けられている。図10において、一つの関節Jnに対応する構成を、破線で囲って示す。
【0068】
ロボットシステム50bにおいて、6個の関節Jnに対応する6組のモーター11、スイッチ86、および第2コンバーター85は、互いに並列に2次電池84bに接続されている。すなわち、6個の関節Jnに対応する、モーター11と、アーム要素と、エンコーダー15と、スイッチ86と、第2コンバーター85と、の6個の組み合わせが、一つの2次電池84bを共有している(図2および図10参照)。すなわち、ロボットシステム50bは、2次電池84bを介して6個のモーター11を互いに接続する接続回路Ccを備える。機能上は、一つの関節Jnに対応して、モーター11と、スイッチ86と、インバーター83と、第2コンバーター85と、2次電池84bと、の一つの組み合わせが、設けられている、と把握することができる。
【0069】
電子機器87としての制御装置52は、たとえば、停電のために、モーター11への電力の供給が遮断された場合にも、2次電池84bから電力の供給を受けて動作することができる(図10の上段右部参照)。このような構成とすることにより、モーター11が動作できなくなった後にも、制御装置52は、2次電池84bに蓄えられた電気エネルギーを利用して、第1制動制御を実行することができる(図5のS400および図11のS400参照)。このため、回転出力を生成していたモーター11は、減速機等のモーター11に接続された機器を破損させることなく、制御装置52によって適切に停止される。
【0070】
図11は、第2実施形態において、ロボット51の動作を停止させる場合の制御装置52の処理を示すフローチャートである。図11の処理は、以下の場合に、実行される。(i)ロボットシステム50bに商用電源81から電力が供給されている場合。(ii)ロボットシステム50bに商用電源81から電力が供給されていないが、各関節のモーター11を停止させるまでの間、各関節のモーター11に駆動電力を供給できるだけの電気エネルギーが、2次電池84bに蓄えられている場合。ロボットシステム50bに商用電源81から電力が供給されず、かつ、各関節のモーター11を停止させるまでの間、各関節のモーター11に駆動電力を供給できるだけの電気エネルギーが、2次電池84bに蓄えられていない場合の処理については、後に説明する。
【0071】
図11のステップS100~S300の処理は、図5のステップS100~S300の処理と同じである。
【0072】
第2実施形態においては、6個の関節に対応する、モーター11と、そのモーター11の回転出力により動かされるアーム要素と、エンコーダー15と、電磁ブレーキ21と、スイッチ86と、の6個の組み合わせのうち、一部の関節に対応する組み合わせについて、第1制動制御(図5のS400、および図11のS400参照)が実行されることができる。そして、他の一部の関節に対応する組み合わせについて、第2制動制御(図11のS500参照)が実行されることができる。
【0073】
具体的には、ステップS300で得られた目標減速度の絶対値が閾値よりも0に近い関節のモーター11については、ステップS300の処理の後、ステップS400の処理が実行される。目標減速度の絶対値が閾値以上の関節のモーター11については、ステップS300の処理の後、ステップS500の処理が実行される。目標減速度の絶対値が閾値よりも0に近い1以上の関節をまとめて「関節J1」と呼ぶ。目標減速度の絶対値が閾値以上の1以上の関節を、まとめて「関節J2」と呼ぶ。目標減速度の閾値は、回生ブレーキによって実現できる減速度の上限、またはその上限に1未満の係数を掛けた値とすることができる。
【0074】
図11のステップS400の処理は、図5のステップS400の処理と同じである。ただし、ステップS400の処理の結果得られたモーター11の回生による電力は、2次電池84bを経由して、ステップS500の処理が実行されるモーター11に供給される。
【0075】
ステップS500においては、回生ブレーキ制御部46は、対象とする関節J2のモーター11について、電力の供給を停止しない(図5のS410参照)。対象とするモーター11への電力の供給は、商用電源81または2次電池84bから行われる(図10の下段左部および中段中央部参照)。2次電池84bには、関節J1のモーター11から回生電力が供給されている。その結果、第2制動制御は、接続回路Ccを経由して、第1制動制御で生成された電力を利用して、行われることができる。
【0076】
回生ブレーキ制御部46は、関節J2のモーター11についてステップS300で定められた目標減速度に応じた大きさの、それまで回転出力とは逆向きの回転力を生じさせるように、モーター11を制御する。逆向きの回転力は、ステップS100で定められた目標減速度を実現するように、時系列的に決定される。制御装置52における処理は、第1実施形態において図4を使用して説明した処理と同様である。ステップS500において、モーター角速度が0になったら、処理はステップS600に進む。
【0077】
電力が供給されているモーター11について行われるステップS500の処理を、「第2制動制御」とも呼ぶ。
【0078】
このような処理を行うことにより、ステップS400の第1制動制御とステップS500の第2制動制御とによって6個の関節のモーター11をそれぞれ適切に制御して、ロボットのアーム要素54,55,56,57,58,59を適切に減速させることができる。より具体的には、目標減速度が大きい関節J2については、それまで回転出力とは逆向きの回転力を生じさせて、目標減速度に沿った減速を行わせることができる。また、関節J1のモーター11の第1制動制御によって得られたエネルギーを他の関節J2のモーター11の第2制動制御に使用できる。このため、ロボットシステム50bのエネルギー効率を高めることができる。
【0079】
図11のステップS600の処理は、図5のステップS600の処理と同じである。
【0080】
一方、ロボットシステム50bに商用電源81から電力が供給されず、かつ、各関節のモーター11を停止させるまでの間、各関節のモーター11に駆動電力を供給できるだけの電気エネルギーが、2次電池84bに蓄えられていない場合は、図11の処理は行われない。その場合には、ステップS410以外の図5の処理が行われる。その場合に実行される図5の各工程は、モーター11への電力の供給が遮断された場合に、2次電池84bから電力の供給を受けて制御装置52がロボットシステム50bを制御する工程である。
【0081】
図12は、瞬間停電が発生した場合の出力軸12のモーター角速度の大きさと、速度指令が表す角速度の大きさと、を時系列的に表したグラフである。図12において、横軸は時間である。時刻t0において停電が発生し、時刻t1において、電力の供給が回復したものとする。時刻t0から時刻t1までの経過時間は300~400ミリ秒である。
【0082】
図12において、本来の速度指令が表す角速度の大きさを、一点鎖線のグラフG0で示す。本来の速度指令が表す角速度の大きさは、一定値V0である。出力軸12の実際のモーター角速度の大きさを、実線のグラフG1で示す。修正後の速度指令が表す角速度の大きさを、二点鎖線のグラフG0rで示す。修正後の速度指令が表す角速度のグラフG0rと、出力軸12の実際のモーター角速度のグラフG1とは、一致する。しかし、技術の理解を容易にするため、図12においては、グラフG0rとグラフG1とをずらして表示している。
【0083】
ロボット51の制御点の制御についてPTP制御が行われているときに、瞬間停電が発生した場合には、制御装置52は以下の処理を行う。
【0084】
停電が発生した場合には、電子機器87としての制御装置52は、前述のように、2次電池84bから電力の供給を受けて動作する。一方、各関節のモーター11は、電力の供給が絶たれるため、駆動力を失う。その結果、出力軸12のモーター角速度G1は時刻t0以降、V0から低下する。
【0085】
たとえば、ロボット51が他の構造物に接触して動作を阻害され、出力軸12のモーター角速度が低下した場合には、ロボットシステム50bにおいて、以下の処理が行われる。すなわち、出力軸12のモーター角速度と本来の速度指令が表す角速度V0との差が閾値以上になった場合には、「エラー停止」の処理が行われ、ロボット51の動作が停止される。その結果、ロボット51または他の構造物の損傷が低減または防止される。その後、復帰処理が行われる。
【0086】
本実施形態においては、制御装置52は、商用電源81からの電力の供給が絶たれた場合には、上記の処理に代えて以下の処理を行う。すなわち、制御装置52は、速度指令をグラフG0で表される内容からグラフG0rで表される内容に修正する。すなわち、制御装置52は、時刻t0から時刻t1までの速度指令の内容を、出力軸12の実際のモーター角速度G1と一致させる。この処理は、時刻t0の後、繰り返しの処理によって、時刻t1まで行われる。その結果、時刻t0から時刻t1まで間の、出力軸12のモーター角速度と修正後の速度指令が表す角速度との差は、0となる。
【0087】
そして、制御装置52は、電力の供給が回復した時刻t1以降の速度指令の内容を、以下のように修正する。すなわち、時刻t1における出力軸12の実際のモーター角速度G1から、増大させ、時刻t2において、本来の速度指令が表す角速度の大きさV0となるよう、速度指令が修正される。このような処理を行うことにより、ロボット51は、瞬間停電が発生した場合にも、エラー停止することなく、動作を継続することができる。
【0088】
第2実施形態における2次電池84bを「蓄電部」または「抵抗機器」とも呼ぶ。
【0089】
C.他の実施形態:
C1.他の実施形態1:
(1)上記第1実施形態においては、6個の関節Jnに対応する、モーター11と、アーム要素と、エンコーダー15と、スイッチ86と、の6個の組み合わせが、一つの抵抗器84を共有している(図2および図3参照)。また、上記第2実施形態においては、6個の関節Jnに対応する、モーター11と、アーム要素と、エンコーダー15と、スイッチ86と、第2コンバーター85と、の6個の組み合わせが、一つの2次電池84bを共有している(図2および図10参照)。しかし、抵抗機器は、それぞれの組み合わせに対して一つずつ設けられてもよい。たとえば、各関節に対応して、抵抗機器として、キャパシタが設けられてもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、ロボットシステム50,50bにおいて、関節Jnに対応する、モーター11と、アーム要素と、エンコーダー15と、スイッチ86と、の6個の組み合わせが、設けられている。しかし、それらの組み合わせは、1個でもよく、3個、4個など、他の数だけ設けられていてもよい。ただし、それらの組み合わせは、複数組設けられることが好ましい。
【0091】
(2)上記第2実施形態のロボットシステム50bは、抵抗機器として、抵抗器84に代えて2次電池84bを有する(図3および図10参照)。しかし、ロボットシステムは、抵抗機器として、抵抗器と蓄電池の両方を備えてもよい。また、蓄電池は、ニッケル水素電池でもよく、キャパシタでもよい。
【0092】
(3)上記実施形態においては、モーター11に接続されている機器が損傷しない減速度で減速するように、モーター11の目標減速度が決定される(図5のS300、および図11のS300参照)。しかし、たとえば、本開示の技術をAMR(Autonomous Mobile Robot:自律移動ロボット)に適用する場合には、AMRが転倒しない値に、目標減速度が設定されることができる。
【0093】
(4)出力軸12の角度位置の検出は、角度位置の変化量の検出によって行われてもよい。また、出力軸12の絶対的な角度位置が検出できる検出部を適用することもできる。
【0094】
(5)上記第1実施形態において、モーター角速度は、図5のステップS200,S420で行われるものとして説明した。しかし、モーター角速度が、常に取得されている態様としてもよい。
【0095】
(6)上記実施形態においては、ステップS420~S460の繰り返しの処理によって、回生ブレーキをオンとするタイミングおよびオフとするタイミングが時系列的に決定される(図5および図6参照)。しかし、モーター角速度が0になるまでの、回生ブレーキをオンとするタイミングおよびオフとするタイミングは、繰り返しの処理によらず、あらかじめ計算によって定めることもできる。また、モーター11への電力の供給の停止は、第1制動制御内ではなく、第1制動制御以外で行われてもよい(図5のS410参照)。
【0096】
(7)上記第2実施形態において、電子機器87は、制御装置52を含む(図1参照)。この電子機器87は、他の機器を含んでもよい。
【0097】
(8)上記第2実施形態においては、機器保護部88は、具体的にはポリスイッチである。しかし、機器保護部88は、DC/DCコンバーターなど、他の構成とすることもできる。たとえば、機器保護部88は、電子機器に供給される電力の電圧が閾値以上になった場合に、追加の抵抗機器を備える他の回路を電子機器と直列に接続し、電子機器にかかる電圧を低減する構成とすることもできる。
【0098】
(9)上記第2実施形態においては、目標減速度に応じて第1制動制御または第2制動制御が行われる(図11参照)。しかし、第1制動制御を行う対象と、第2制動制御を行う対象とは、モーターの角速度など、他のパラメーターによって分けられてもよい。
【0099】
C2.他の実施形態2:
上記第2実施形態においては、ロボットシステム50bは、2次電池84bを備える。そして、電子機器87としての制御装置52は、2次電池84bから電力の供給を受けて動作することができる(図10の上段右部参照)。しかし、第1実施形態のように、ロボットシステムは、2次電池84bを備えない態様とすることもできる(図3参照)。
【0100】
C3.他の実施形態3:
上記第2実施形態においては、一部の関節について第1制動制御が実行され、他の一部の関節について第2制動制御が実行される(図11のS400,S500参照)。しかし、第1実施形態のように、第2制動制御が実行されない態様とすることもできる。
【0101】
C4.他の実施形態4:
上記第2実施形態においては、回生電力回路Crに、機器保護部88が設けられている。しかし、第1実施形態の様に、回生電力回路Crを備えない態様とすることもできる。
【0102】
D.さらに他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0103】
(1)本開示の一形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、電力の供給を受けて出力軸の回転出力を生成し、前記出力軸への回転力の供給を受けて電力を生成する駆動部と、前記回転出力により動かされる可動部と、前記出力軸の角度位置を検出する検出部と、電気抵抗を有し前記駆動部に接続される抵抗機器と、前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフすることができるスイッチと、の1以上の組み合わせと、前記ロボットシステムを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、電力の供給がない前記駆動部を対象とする第1制動制御であって、前記検出部の出力に基づいて前記駆動部の前記回転出力の速度を算出し、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度と、前記回転出力の前記速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、前記スイッチに前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフさせる、第1制動制御を実行することができる。
このような態様とすれば、回生制動によって、目標減速度に沿って可動部を減速させることができる。
【0104】
(2)上記形態のロボットシステムにおいて、前記抵抗機器の少なくとも一部として、前記駆動部が生成する電力を蓄える蓄電部を備え、前記制御部は、前記駆動部への電力の供給が遮断された場合に、前記蓄電部から電力の供給を受けて動作することができる、態様とすることができる。
このような態様とすれば、駆動部が動作できなくなった後にも、制御部は、蓄電部に蓄えられたエネルギーを利用して、第1制動制御を実行することができる。このため、駆動部は適切に停止される。
【0105】
(3)上記形態のロボットシステムにおいて、前記1以上の前記組み合わせは、複数の前記組み合わせであり、前記ロボットシステムは、複数の前記組み合わせに含まれる複数の前記駆動部を互いに接続する接続回路を備え、前記制御部は、前記複数の前記組み合わせのうち1以上の前記組み合わせについて、前記第1制動制御を実行することができ、前記複数の前記組み合わせのうち他の1以上の前記組み合わせについて、電力が供給されている前記駆動部を対象とする第2制動制御であって、前記接続回路で、前記第1制動制御で生成された電力を利用して、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度に応じた大きさの、前記回転出力とは逆向きの回転力を生じさせるように前記駆動部を制御する、第2制動制御を実行することができる、態様とすることができる。
このような態様とすれば、第1制動制御と第2制動制御によって複数の駆動部をそれぞれ適切に制御して、ロボットの複数の可動部を適切に減速させることができる。また、ある駆動部の第1制動制御によって得られたエネルギーを他の駆動部の第2制動制御に使用できるため、ロボットシステムのエネルギー効率を高めることができる。
【0106】
(4)上記形態のロボットシステムにおいて、前記駆動部が生成する電力を前記ロボットシステムが備える電子機器に供給する回生電力回路と、前記回生電力回路に設けられ、前記電子機器に供給される電力の電圧をあらかじめ定められた値以下に制御することができる機器保護部と、を備える、態様とすることができる。
このような態様とすれば、電子機器を損傷させることなく、駆動部が生成する電力を活用することができる。
【0107】
(5)本開示の他の形態によれば、ボットシステムにおける回生ブレーキの制御方法が提供される。前記ロボットシステムは、電力の供給を受けて出力軸の回転出力を生成し、前記出力軸への回転力の供給を受けて電力を生成する駆動部と、前記回転出力により動かされる可動部と、前記出力軸の角度位置を検出する検出部と、電気抵抗を有し前記駆動部に接続される抵抗機器と、前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフすることができるスイッチと、の1以上の組み合わせを備える。前記制御方法は、電力の供給がない前記駆動部を対象とする第1制動制御を実行する工程であって、前記検出部の出力に基づいて前記回転出力の速度を算出し、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度と、前記回転出力の前記速度と、に応じて時系列的に定められるタイミングで、前記スイッチに前記抵抗機器と前記駆動部との接続をオンおよびオフさせる、工程を備える。
【0108】
(6)上記形態の制御方法において、前記ロボットシステムは、前記ロボットシステムを制御する制御部と、前記抵抗機器の少なくとも一部としての蓄電部であって、前記駆動部が生成する電力を蓄える蓄電部と、を備え、前記制御方法は、前記駆動部への電力の供給が遮断された場合に、前記蓄電部から電力の供給を受けて前記制御部が前記ロボットシステムを制御する工程を備える、態様とすることができる。
【0109】
(7)上記形態の制御方法において、前記1以上の前記組み合わせは、複数の前記組み合わせであり、前記ロボットシステムは、複数の前記組み合わせに含まれる複数の前記駆動部を互いに接続する接続回路を備え、前記制御方法は、前記複数の前記組み合わせのうち1以上の前記組み合わせについて、前記第1制動制御を実行し、前記複数の前記組み合わせのうち他の1以上の前記組み合わせについて、電力が供給されている前記駆動部を対象とする第2制動制御であって、前記接続回路で、前記第1制動制御で生成された電力を利用して、前記駆動部についてあらかじめ定められた目標減速度に応じた大きさの、前記回転出力とは逆向きの回転力を生じさせるように前記駆動部を制御する、第2制動制御を実行する、工程を備える、態様とすることができる。
【0110】
本開示は、回生ブレーキの制御方法やロボットシステム以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、ロボットの制御方法やロボットの運転方法、それらの制御方法を実現するコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0111】
1…モーターユニット、3…モータープレート、3a…軸孔、11…モーター、12…出力軸、15…エンコーダー、21…電磁ブレーキ、31…プーリー、40…動作指令部、41…位置制御器、42…速度制御器、43…電流制御器、44…モータードライバー、45…電磁ブレーキ制御部、46…回生ブレーキ制御部、50…ロボットシステム、50b…ロボットシステム、51…ロボット、52…制御装置、53…基台、54…アーム要素、54a…回転軸、55…アーム要素、55a…回転軸、56…アーム要素、56a…回転軸、57…アーム要素、57a…回転軸、58…アーム要素、58a…回転軸、59…アーム要素、59a…回転軸、81…商用電源、82…第1コンバーター、83…インバーター、84…抵抗器、84b…2次電池、85…第2コンバーター、86…スイッチ、87…電子機器、88…機器保護部、Cr…回生電力回路、G0…速度指令が表す角速度の大きさを示すグラフ、G0r…修正後の速度指令が表す角速度の大きさを示すグラフ、G1…出力軸12の実際のモーター角速度の大きさを示すグラフ、J1…関節、J2…関節、Jn…関節、V0…角速度の値、t0…瞬間停電の開始時刻、t1…瞬間停電の終了時刻、t2…角速度がV0に回復する時刻
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12