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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷データ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/36 20060101AFI20241203BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J2/36 Z
B41J2/32 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020218945
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103992
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】南 明
(72)【発明者】
【氏名】西原 佳佑
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245757(JP,A)
【文献】特開2002-293035(JP,A)
【文献】特開2010-221499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315-2/38
2/42 -2/425
2/475-2/48
2/52 -2/525
3/01 -3/54
3/62 -5/52
21/00 -21/18
29/00 -29/70
B41M 5/28 -5/34
5/40 -5/48
G06F 3/09 -3/12
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過性を有する基材と、
前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、
前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層と
を有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、
前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向が、前記厚さ方向の一方側から目視する方向であるか、前記厚さ方向の他方側から目視する方向であるかを検出する検出手段と
を備え、
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記感熱層に形成される前記画像の色を、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じた色で発色させる前記印刷データを生成することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記画像データに基づき前記感熱層に形成する前記画像の位置を、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じた位置にて形成させる前記印刷データを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記検出手段は、さらに、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出し、
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向及び前記厚み関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成すること
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記検出手段は、さらに、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出し、
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向及び前記屈折率関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成すること
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体の少なくとも2層の前記感熱層の夫々に対して前記画像を形成する前記画像データに基づいて、前記印刷データを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層における個々の発色のタイミングが、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じたタイミングとなる前記印刷データを生成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じ、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層における個々の発色のタイミングを夫々入れ替えた前記印刷データを生成することを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記多層感熱印刷媒体は、
前記第二感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第二温度よりも高い所定の第三温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第三色に発色する第三感熱層を有すること
を特徴とする請求項1からのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、
前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、
前記印刷装置は、前記感熱層に形成された画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向が、前記厚さ方向の一方側から目視する方向であるか、前記厚さ方向の他方側から目視する方向であるかを検出する検出手段をさらに備えており、
前記印刷装置の前記検出手段から前記目視方向を取得する取得ステップと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記取得ステップにおいて取得された前記目視方向に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成する生成ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラム。
【請求項11】
可視光透過性を有する基材と、
前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、
前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層と
を有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、
前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出する検出手段と
を備え、
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記厚み関連情報に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項12】
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、
前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、
前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出する検出ステップと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記検出ステップにおいて検出された前記厚み関連情報に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成する生成ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラム。
【請求項13】
可視光透過性を有する基材と、
前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、
前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層と
を有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、
前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出する検出手段と
を備え、
前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記屈折率関連情報に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項14】
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、
前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、
前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出する検出ステップと、
個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記検出ステップにおいて検出された前記屈折率関連情報に応じて、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成する生成ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発色の異なる複数の感熱層を基材上に形成した多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置がある。例えば特許文献1に記載のプリント装置は、基材上に、第3画像形成層、第2スペーサ層、第2画像形成層、第1スペーサ層、第1画像形成層、保護層を順に形成したプリント媒体に印刷する。画像形成層に形成された画像は、保護層側から観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明性を有する基材を用い、画像形成層に形成された画像を基材側から目視した場合、保護層側から目視した画像の色味とは異なる色味の画像として観察される場合があった。
【0005】
本発明は、目視方向、基材の情報等に応じて発色状態が異なる画像を形成する印刷データを生成できる印刷装置及び印刷データ生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様によれば、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、前記感熱層に形成された前記画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向が、前記厚さ方向の一方側から目視する方向であるか、前記厚さ方向の他方側から目視する方向であるかを検出する検出手段とを備え、前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0007】
第一態様の生成手段は、感熱層に画像を形成する際に、目視方向に応じて発色状態が異なる画像を形成できる印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、例えば、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した画像の色味と、厚さ方向の一方側から目視した場合の画像の色味とが近似する画像を感熱層に形成することができる。故に印刷装置は、例えば、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0008】
第一態様の前記生成手段は、前記感熱層に形成される前記画像の色を、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じた色で発色させる前記印刷データを生成してもよい。感熱層に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、目視方向によって色味に差異が生ずる場合がある。発熱素子を駆動するエネルギーの印加パターンには、目視方向によって異なる色であるが、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する色を、夫々発色させる印加パターンが設けられる。生成手段は、検出手段の検出結果に応じた印加パターンを用いる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成する画像を、厚さ方向の一方側から目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0009】
第一態様の前記生成手段は、前記画像データに基づき前記感熱層に形成する前記画像の位置を、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じた位置にて形成させる前記印刷データを生成してもよい。感熱層に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材の厚みや屈折率の影響により、位置がずれて観察されることで、色味に差異が生ずる場合がある。発熱素子を駆動するエネルギーの印加パターンには、同じ色を発色させるパターンであるが、エネルギー印加のタイミングを夫々異ならせた印加パターンが設けられる。生成手段は、検出手段の検出結果に応じた印加パターンを用いる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成する画像を、厚さ方向の一方側から目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0010】
第一態様の前記検出手段は、さらに、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出し、前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向及び前記厚み関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成してもよい。感熱層に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材の厚みの影響により、色味に差異が生ずる場合がある。生成手段は、検出手段が検出した基材の厚み関連情報に応じて画像の発色状態が異なる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成する画像を、厚さ方向の一方側から目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0011】
第一態様の前記検出手段は、さらに、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出し、前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向及び前記屈折率関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成してもよい。感熱層に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材の屈折率の影響により、位置がずれて観察されることで、色味に差異が生ずる場合がある。生成手段は、検出手段が検出した基材の屈折率関連情報に応じて画像の発色状態が異なる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成する画像を、厚さ方向の一方側から目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0012】
第一態様の前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体の少なくとも2層の前記感熱層の夫々に対して前記画像を形成する前記画像データに基づいて、前記印刷データを生成してもよい。生成手段は、2層以上の感熱層の夫々に画像を形成するため、駆動手段が発熱素子を駆動するエネルギーの印加パターンを各感熱層に応じたパターンに制御した印刷データを生成することができる。すなわち印刷装置は、例えば、発色対象の2つの感熱層に印加するエネルギーの大きさや順序を異ならせて発色させることで、各感熱層の発色サイズを制御し、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0013】
第一態様の前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層における個々の発色のタイミングが、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じたタイミングとなる前記印刷データを生成してもよい。厚さ方向の一方側から目視する形態の多層感熱印刷媒体に形成する画像は、複数の感熱層のうち厚さ方向の一方側にある感熱層ほど、感熱層に形成する色の発色サイズが大きい。このように形成された画像を厚さ方向の他方側から目視した場合、手前側に位置する感熱層に形成された色の発色サイズが小さくなるので、画像の色味に差が生じやすい。生成手段は、発色対象の感熱層の夫々にエネルギーを印加するタイミングを制御した印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、発色対象の感熱層ごとに異なる順序で発色させることができる。印刷装置は、各感熱層の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0014】
第一態様の前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じ、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層における個々の発色のタイミングを夫々入れ替えた前記印刷データを生成してもよい。生成手段は、複数の感熱層における発色のタイミングを夫々入れ替えることで、より容易に、感熱層ごとに発色のタイミングが異なる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、発色対象の感熱層ごとに異なる順序で発色させることができる。印刷装置は、各感熱層の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0015】
第一態様の前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、少なくとも1層の前記感熱層における発色面積が、前記検出手段によって検出された前記目視方向に応じて異なる面積となる前記印刷データを生成してもよい。生成手段は、複数の感熱層のうち少なくとも1層の感熱層における発色面積が他と異なる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、各感熱層の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0016】
第一態様の前記生成手段は、前記多層感熱印刷媒体が有する複数の前記感熱層のうち、前記目視方向において遠い側となる前記感熱層における発色面積が、前記目視方向において近い側となる前記感熱層における発色面積よりも相対的に大きくなる前記印刷データを生成してもよい。生成手段は、複数の感熱層のうち、目視方向において遠い側となる感熱層における発色面積が、目視方向において近い側となる感熱層における発色面積よりも、相対的に大きくなる印刷データを生成することができる。故に印刷装置は、各感熱層の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0017】
第一態様の前記多層感熱印刷媒体は、前記第二感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第二温度よりも高い所定の第三温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第三色に発色する第三感熱層を有してもよい。生成手段は、3層の感熱層を有する多層感熱印刷媒体に対しても同様に、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した画像の色味が、厚さ方向の一方側から目視した場合の画像の色味に近似する印刷データを生成する。故に印刷装置は、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0018】
本発明の第二態様によれば、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、前記印刷装置は、前記感熱層に形成された画像を目視する場合における前記多層感熱印刷媒体の目視方向が、前記厚さ方向の一方側から目視する方向であるか、前記厚さ方向の他方側から目視する方向であるかを検出する検出手段をさらに備えており、前記印刷装置の前記検出手段から前記目視方向を取得する取得ステップと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記取得ステップにおいて取得された前記目視方向に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成する生成ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラムが提供される。
【0019】
第二態様のコンピュータは、印刷装置が感熱層に画像を形成する際に、目視方向に応じて発色状態が異なる画像を形成できるようにする印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、例えば、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した画像の色味が、厚さ方向の一方側から目視した場合の画像の色味に近似する画像を感熱層に形成することができる。故に印刷装置は、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0020】
本発明の第三態様によれば、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出する検出手段とを備え、前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記厚み関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0021】
第三態様の生成手段は、感熱層に画像を形成する際に、厚み関連情報に応じて発色状態が異なる画像を形成できる印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した際に、基材の厚みによらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0022】
本発明の第四態様によれば、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の厚みに関連する厚み関連情報を検出する検出ステップと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記検出ステップにおいて検出された前記厚み関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成する生成ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラムが提供される。
【0023】
第四態様のコンピュータは、印刷装置が感熱層に画像を形成する際に、厚み関連情報に応じて発色状態が異なる画像を形成できるようにする印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した際に、基材の厚みによらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0024】
本発明の第五態様によれば、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に印刷する印刷装置であって、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応した印刷データを生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記印刷データに基づいて、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段と、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出する検出手段とを備え、前記生成手段は、前記検出手段によって検出された前記屈折率関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成することを特徴とする印刷装置が提供される。
【0025】
第五態様の生成手段は、感熱層に画像を形成する際に、屈折率関連情報に応じて発色状態が異なる画像を形成できる印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した際に、基材の屈折率によらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【0026】
本発明の第六態様によれば、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドの前記発熱素子を駆動する駆動手段とを備えた印刷装置で印刷を行う印刷データを生成する印刷データ生成プログラムであって、前記印刷データは、可視光透過性を有する基材と、前記基材の厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、所定の第一温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第一色に発色する第一感熱層と、前記第一感熱層のさらに前記厚さ方向の一方側に設けられ、可視光透過性を有する感熱層であって、前記第一温度よりも高い所定の第二温度以上の温度に加熱されることで元の状態よりも可視光透過性の低い第二色に発色する第二感熱層とを有する多層感熱印刷媒体に前記印刷装置が印刷するのに用いられるデータであり、前記多層感熱印刷媒体の前記基材の屈折率に関連する屈折率関連情報を検出する検出ステップと、個々の画素領域に対応する画像データに基づいて、前記感熱層に画像を形成するための前記発熱素子に対応し、且つ、前記検出ステップにおいて検出された前記屈折率関連情報に応じて、前記感熱層に形成される前記画像の発色状態が異なる前記印刷データを生成する生成ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする印刷データ生成プログラムが提供される。
【0027】
第六態様のコンピュータは、印刷装置が感熱層に画像を形成する際に、屈折率関連情報に応じて発色状態が異なる画像を形成できるようにする印刷データを生成することができる。これにより、印刷装置は、厚さ方向の他方側から基材を介して目視した際に、基材の屈折率によらずほぼ同等の色味を有する画像を多層感熱印刷媒体に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】サーマルプリンタ1の斜視図である。
図2】テープカセット30及び装着部8の斜視図である。
図3】テープカセット30が装着された装着部8の平面図である。
図4】感熱テープ4、粘着テープ7、及びテープ9を示す斜視図である。
図5】サーマルプリンタ1による印刷の流れを説明する平面図である。
図6】サーマルプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
図7】発熱体11の通電パターンの一例を示すタイミングチャートである。
図8】各色の発色における温度と感熱層42の深さとの関係を示すグラフである。
図9】R1の通電パターンによる発色における温度と感熱層42の深さとの関係を示すグラフである。
図10】R2の通電パターンによる発色における温度と感熱層42の深さとの関係を示すグラフである。
図11】テープ作成処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、制御等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0030】
以下説明は、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、及び下側を夫々サーマルプリンタ1の前側、後側、右側、左側、上側、及び下側とする。図2の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、及び下側は、夫々、テープカセット30の前側、後側、右側、左側、上側、及び下側である。図3は、理解を容易にする為、装着部8にテープカセット30が装着された状態を、上ケース312を取り除いて示す。
【0031】
本実施形態のサーマルプリンタ1(図1参照)は、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットが使用可能な汎用のテープ印字装置である。なお、レセプタタイプは、片面に粘着層を介して剥離紙を付着した感熱紙テープが収納された種類のテープカセットである。ラミネートタイプは、両面粘着テープと感熱紙テープとが収納された種類のテープカセットである。以下の説明において、サーマルプリンタ1は、一例として、ラミネートタイプのテープカセット30(図2参照)を使用する。サーマルプリンタ1は、感熱テープ4に文字、図形、記号等を印刷できる。サーマルプリンタ1は、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7を貼り合わせることで、テープ9を作成する。
【0032】
サーマルプリンタ1の外観構成を説明する。図1に示すように、サーマルプリンタ1は本体カバー2を備える。本体カバー2は箱状である。本体カバー2の上面前部にはキーボード3が設けられる。ユーザはキーボード3を操作することで各種情報をサーマルプリンタ1に入力する。キーボード3の後側にはディスプレイ5が設けられる。ディスプレイ5は入力された各種情報を表示可能である。
【0033】
ディスプレイ5の後側にはカセットカバー6が設けられる。カセットカバー6は後述の装着部8(図2参照)を上側から開閉可能に覆う。ユーザはテープカセット30(図2参照)の交換時にカセットカバー6を開閉する。本体カバー2の左面後部には排出スリット(図示略)が設けられる。排出スリットはテープ9をサーマルプリンタ1の外部に排出する。
【0034】
サーマルプリンタ1の内部構成を説明する。図2に示すように、カセットカバー6(図1参照)の下側には装着部8が設けられる。装着部8はテープカセット30に対応した形状で本体カバー2の上面から下方に凹む。装着部8にはテープカセット30が着脱可能に装着される。装着部8は、キャビティ811と縁支持部812を有する。キャビティ811は、テープカセット30が装着された場合に後述するカセットケース31の底面の形状と略対応するように凹設され、平面状の底面を有する。縁支持部812は、キャビティ811の外縁から水平に延びる平面部である。縁支持部812は、テープカセット30が装着部8に装着された場合、カセットケース31の周縁の下面を支持する。
【0035】
装着部8の前部にはヘッドホルダ19が設けられる。ヘッドホルダ19は板状であり、上下左右に延びる。ヘッドホルダ19の前面191にはサーマルヘッド10が設けられる。サーマルヘッド10は複数の発熱体11を備える。複数の発熱体11は上下方向に一列に並ぶ。サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で後述の開口部341から露出した感熱テープ4を、複数の発熱体11によって加熱する。
【0036】
ヘッドホルダ19の左斜め後方には後述の感熱テープ4及び粘着テープ7を搬送するための駆動軸18が設けられる。駆動軸18は装着部8の底面から上方に延び、搬送モータ95(図6参照)によって回転駆動される。
【0037】
装着部8内の後部において、縁支持部812には、5つの媒体検出スイッチ310が設けられる。媒体検出スイッチ310はピン状で、夫々バネにより付勢され、縁支持部812の上面よりも上方に突出した状態に維持される。テープカセット30が装着部8に装着された場合、媒体検出スイッチ310は、テープカセット30の媒体指標部900(図3参照)によって選択的に下方へ押圧される。媒体検出スイッチ310は、上方から押圧されていない場合にはオフ状態になり、下方へ向けて押圧された場合にはオン状態になる。サーマルプリンタ1は、媒体検出スイッチ310のオン・オフの組合せに基づいて、テープカセット30のテープ9の種類を検出する。テープ9の種類及び媒体指標部900の詳細な説明は後述する。
【0038】
図3に示すように、駆動軸18の左側には切断機構16が設けられる。切断機構16は切断モータ96(図6参照)の駆動によりテープ9を切断する。ヘッドホルダ19の前側にはプラテンホルダ12が設けられる。プラテンホルダ12はアーム状であり、支持軸121によって上下方向の軸周りに揺動可能に支持される。支持軸121はプラテンホルダ12の右端に設けられる。
【0039】
プラテンホルダ12の先端側にはプラテンローラ15と可動ローラ14とが共に回転可能に支持される。プラテンローラ15はプラテンホルダ12の揺動に伴ってサーマルヘッド10に相対して接離可能である。可動ローラ14はプラテンローラ15の左側に設けられ、プラテンホルダ12の揺動に伴って後述の搬送ローラ33に相対して接離可能である。
【0040】
本実施形態では、カセットカバー6が開放されると、プラテンホルダ12が待機位置(図3の点線で図示する位置)に向けて移動し、カセットカバー6が閉鎖されると、プラテンホルダ12が印刷位置(図3の実線で図示する位置)に向けて移動するように構成される。待機位置では、プラテンホルダ12が装着部8から離れる方向に移動する。このため、ユーザはテープカセット30を装着部8に着脱できる。
【0041】
印刷位置では、プラテンホルダ12が装着部8に近付く方向に移動する。このため、装着部8にテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15が感熱テープ4をサーマルヘッド10に押圧し、可動ローラ14が感熱テープ4と粘着テープ7とを重ね合わせて搬送ローラ33に押圧する。
【0042】
プラテンローラ15は搬送モータ95(図6参照)によって駆動軸18と共に回転駆動される。なお、本実施形態では搬送による感熱テープ4の弛みを抑制するため、プラテンローラ15の回転速度が駆動軸18(搬送ローラ33)の回転速度よりも小さくなるように、プラテンローラ15及び駆動軸18が複数のギア(図示略)を介して搬送モータ95に連結される。
【0043】
テープカセット30の構成を説明する。図2に示すように、テープカセット30はカセットケース31を有する。カセットケース31は略直方体状であり、下ケース311と上ケース312とが組み合わされることで構成される。
【0044】
カセットケース31の前面301にはアーム部34が設けられる。アーム部34はカセットケース31の右前部から左前方に延びる。アーム部34の左端には開口部341が設けられる。開口部341は上下方向に延びるスリット状に形成され、後述の第一供給ロール40(図3参照)から引き出された感熱テープ4をカセットケース31の内部から外部に排出する。これにより、感熱テープ4の一部がカセットケース31の外部に露出する。
【0045】
アーム部34の後側にはヘッド挿入部39が形成される。ヘッド挿入部39はカセットケース31を上下方向に貫通する。ヘッド挿入部39の左前部は前方に開口する。以下、この開口を「ヘッド開口391」という。ヘッド開口391は開口部341よりも感熱テープ4の搬送方向下流(左側)に位置する。ヘッド挿入部39には装着部8にテープカセット30が装着された状態でヘッドホルダ19が挿入される。
【0046】
ヘッド挿入部39の左側には搬送ローラ33が設けられる。搬送ローラ33は搬送方向(左右方向)において開口部341と後述のガイド部38との間に位置する。搬送ローラ33は筒状であり、上下方向に延びる。搬送ローラ33の前端部はカセットケース31から前方に露出する。搬送ローラ33は感熱テープ4と粘着テープ7とが重ね合わされた状態で粘着テープ7を支持する。搬送ローラ33は支持孔35によって回転可能に支持される。支持孔35はカセットケース31を上下方向に貫通する。搬送ローラ33の内側には装着部8にテープカセット30が装着された状態で駆動軸18(図3参照)が挿入される。搬送ローラ33は駆動軸18による回転駆動によって回転し、感熱テープ4及び粘着テープ7を搬送する。
【0047】
カセットケース31の左前角部にはガイド部38が設けられる。ガイド部38は開口部341よりも搬送方向下流(左側)、詳細には搬送ローラ33よりも搬送方向下流に位置する。ガイド部38は上下方向に延びるスリット状に形成される。テープ9は搬送ローラ33を経て搬送されると、ガイド部38の内側を通過する。このとき、ガイド部38はテープ9を幅方向両側から支持する。これにより、テープ9の姿勢が保持された状態でテープ9がカセットケース31から排出される。つまり、ガイド部38はテープ9をカセットケース31の外部へとガイドする。
【0048】
図3に示すように、カセットケース31の内部には第一供給ロール40と第二供給ロール70とが収容される。第一供給ロール40は感熱テープ4の供給源であり、カセットケース31内の右後部に設けられる。第一供給ロール40は、感熱テープ4が第一テープスプール21の回転中心から離れる方向に向かって平面視で時計回り方向に第一テープスプール21に巻回されることで構成される。詳細には、感熱テープ4は後述の基材41(図4(A)参照)に対して複数の感熱層42(図4(A)参照)が内側になるように巻回される。第一テープスプール21は支持孔36によって回転可能に支持される。支持孔36はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0049】
第二供給ロール70は粘着テープ7の供給源であり、カセットケース31内の左後部、つまり第一供給ロール40の左側に設けられる。第二供給ロール70は、粘着テープ7が第二テープスプール22の回転中心から離れる方向に向かって平面視で反時計回り方向に第二テープスプール22に巻回されることで構成される。詳細には、粘着テープ7は後述の第一粘着層73(図4(B)参照)が第二粘着層74(剥離紙75、図4(B)参照)に対して内側になるように巻回される。第二テープスプール22は支持孔37によって回転可能に支持される。支持孔37はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0050】
媒体指標部900は少なくとも一つの孔部である。媒体指標部900は、カセットケース31の下ケース311後部の底壁において、テープカセット30が装着部8に装着された場合に、媒体検出スイッチ310に対応する位置に形成される。媒体指標部900の孔部の個数と形成位置は、テープカセット30に収容されるテープ9の種類に応じて異なる。テープカセット30が装着部8に装着された場合、孔部の形成位置に対応する媒体検出スイッチ310は押圧されずオフ状態になり、孔部の非形成位置に対応する媒体検出スイッチ310は押圧されてオン状態になる。よってサーマルプリンタ1は、媒体検出スイッチ310によって媒体指標部900の孔部の個数と形成位置を検出し、テープ9の種類を特定する。
【0051】
感熱テープ4の構成を説明する。以下説明は、図4の上側及び下側を夫々各テープの上側及び下側とする。図4(A)に示すように、感熱テープ4は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には感熱テープ4は、基材41、複数の感熱層42、複数の遮熱層43、オーバーコート層44(以下、総称して「感熱テープ4の各層」ともいう。)を有する。本実施形態では複数の感熱層42は第一感熱層421と第二感熱層422と第三感熱層423とを含む。複数の遮熱層43は第一遮熱層431と第二遮熱層432とを含む。
【0052】
基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、及びオーバーコート層44は、この順で感熱テープ4の下側から順に感熱テープ4の厚み方向(図4(A)の上下方向)に並んで積層される。つまり、オーバーコート層44は複数の感熱層42に対して基材41とは反対側、詳細には感熱テープ4の上面に設けられる。
【0053】
基材41は樹脂フィルムであり、詳細には無発泡樹脂フィルムであり、より詳細には無発泡ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。つまり、基材41の内部には気泡が含まれていない。
【0054】
複数の感熱層42の各層は、各層に応じた発色温度に加熱されることで、各層に応じた色を発色する。複数の感熱層42には例えば特開2008-6830号公報に記載の薬品が用いられる。
【0055】
第一感熱層421は第一遮熱層431の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第一感熱層421は第一温度以上に加熱された場合に元の状態よりも可視透過性の低い第一色に発色する。本実施形態では第一色はシアン(以下、「C」と略記する。)である。
【0056】
第二感熱層422は第二遮熱層432の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第二感熱層422は第二温度以上に加熱された場合に元の状態よりも可視透過性の低い第二色に発色する。第二温度は第一温度よりも高い。本実施形態では第二色はマゼンタ(以下、「M」と略記する。)である。
【0057】
第三感熱層423は第二遮熱層432の上面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第三感熱層423は第三温度以上に加熱された場合に元の状態よりも可視透過性の低い第三色に発色する。第三温度は第二温度よりも高い。本実施形態では第三色はイエロー(以下、「Y」と略記する。)である。
【0058】
複数の遮熱層43はシート状である。複数の遮熱層43の熱伝導性は低いので、複数の遮熱層43は熱伝導に対して抵抗として作用する。従って、複数の遮熱層43の夫々の内部には熱が伝わる方向に温度勾配が生じる。後述するようにサーマルヘッド10が感熱テープ4を図4の上側から加熱した場合には、各遮熱層43の下面の温度は、各遮熱層43の上面の温度よりも低くなる。これにより、各遮熱層43は、各遮熱層43の上下両側に隣接する2つの感熱層42の温度に、遮熱層43の熱伝導性に応じて所望の差をつけることができる。
【0059】
詳細には、第二遮熱層432は第二感熱層422の温度を第三感熱層423の温度よりも低くすることができる。第一遮熱層431は第一感熱層421の温度を第二感熱層422の温度よりも低くすることができる。このように、感熱テープ4は遮熱層43の作用によって、第一感熱層421の温度を第一温度以上の高い温度且つ第二温度よりも低い温度に、第二感熱層422の温度を第二温度以上の高い温度且つ第三温度よりも低い温度に、第三感熱層423の温度を第三温度以上の高い温度に、夫々意図的に制御することが可能となる。
【0060】
オーバーコート層44は第三感熱層423の上面にコーティングされることで膜状に形成され、黄色の可視光(例えば波長が約580nmの光)よりも青色(例えば波長が約470nmの光)の可視光を多く透過させる。つまり、オーバーコート層44の黄色の可視光透過率はオーバーコート層44の青色の可視光透過率よりも低い。オーバーコート層44は基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の上面側)から複数の感熱層42を保護する。
【0061】
感熱テープ4は全体として感熱テープ4の厚み方向に可視光透過性を有する。つまり、感熱テープ4の各層はいずれも可視光透過性を有する。基材41の可視光透過率(%)は、複数の感熱層42、複数の遮熱層43、及びオーバーコート層44の少なくともいずれかの可視光透過率と同じでもよいし、いずれの可視光透過率とも異なっていてもよい。感熱テープ4の各層の可視光透過率は例えば90%以上であり、好ましくは99%以上であり、より好ましくは99.9%以上である。感熱テープ4の各層の可視光透過性は、感熱テープ4の各層の可視光透過率が90%未満であったとしても、少なくとも感熱層42での発色を、基材41を介してユーザが視認できる程度であればよい。感熱テープ4の各層はいずれも透明又は半透明であり、好ましくは透明である。
【0062】
基材41の屈折率は第一遮熱層431の屈折率よりも高く、詳細には複数の遮熱層43のいずれの屈折率よりも高い。
【0063】
なお、図4(A)では理解を容易にするため、感熱テープ4の各層の厚み及び各層の厚みの大小関係を模式的に示しており、実際の各層の厚み及び各層の厚みの大小関係は図4(A)とは異なる場合がある(図4(B)、図5も同様)。例えばオーバーコート層44の厚みは複数の感熱層42の各層の厚みよりも大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。
【0064】
粘着テープ7の構成を説明する。図4(B)に示すように、粘着テープ7は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には粘着テープ7は両面粘着テープ71と剥離紙75とを備える。両面粘着テープ71は白色であり、シート72と第一粘着層73と第二粘着層74とを有する。シート72は白色である。なお、図4(B)ではシート72(両面粘着テープ71)が白色であることを、斜線を用いて図示する(図4(B)、図5(B)も同様)。本実施形態ではシート72の可視光透過率は感熱テープ4の各層のいずれの可視光透過率よりも低い。
【0065】
第一粘着層73はシート72の下面に設けられる。第二粘着層74はシート72の上面に設けられる。つまり、両面粘着テープ71はシート72の上下両面に粘着剤が塗布されることで構成される。
【0066】
剥離紙75は第二粘着層74を介して両面粘着テープ71に貼り合わされる。剥離紙75には切れ目76が設けられる。切れ目76は粘着テープ7の長手方向に延び、剥離紙75を短手方向に2つに分断する。なお、切れ目76は両面粘着テープ71の一部にも入り込んでいるが、第一粘着層73には達していない。つまり、シート72は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。換言すれば、両面粘着テープ71は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。
【0067】
テープ9の構成を説明する。図4(C)に示すように、テープ9は、印刷された感熱テープ4の上面に粘着テープ7の下面が貼り合わされることで構成される。このため、テープ9では、基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、オーバーコート層44、第一粘着層73、シート72、第二粘着層74、及び剥離紙75が、この順で厚み方向に並んで積層される。
【0068】
ユーザはテープ9を基材41側(つまり、テープ9の下面側)から見る(目視方向Y1参照)。感熱テープ4が全体として可視光透過性を有するので、テープ9を基材41側からユーザが見ると、複数の感熱層42の各層の発色(つまり、印刷された画像)を、基材41を介して見ることができ、且つ粘着テープ7が背景として見える。本実施形態では両面粘着テープ71が白色なので、テープ9を基材41側からユーザが見ると、背景が白色に見える。ユーザは例えば剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離して所定の壁、台紙等に貼り付けて、テープ9を使用できる。
【0069】
なお、粘着テープ7側(つまり、テープ9の上面側)からでは、剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離したとしても、両面粘着テープ71の方が複数の感熱層42よりも手前にあるので、ユーザは複数の感熱層42の発色(つまり、印刷された画像)を見ることができない。
【0070】
感熱テープ4及び粘着テープ7の搬送経路を説明する。図3に示すように、感熱テープ4は第一供給ロール40の右端から下方に引き出され、カセットケース31の右前角部で左方に曲がる。感熱テープ4はアーム部34の内部を通過し、開口部341からカセットケース31の外部へ出る。
【0071】
ヘッド開口391では、図5(A)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側(感熱テープ4の上面側)がサーマルヘッド10に対向し、感熱テープ4の基材41側(感熱テープ4の下面側)がプラテンローラ15に対向する。つまり、サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で複数の感熱層42に対して基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の後側)に位置する。このため、ヘッド開口391において感熱テープ4は基材41とは反対側からサーマルヘッド10によって加熱される(印刷方向Y2参照)。
【0072】
図3に示すように、感熱テープ4はヘッド開口391を経由して搬送ローラ33と可動ローラ14との間を通過する。このとき、図5(B)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側が搬送ローラ33に対向し、感熱テープ4の基材41側が可動ローラ14に対向する。
【0073】
粘着テープ7は第二供給ロール70の左端から下方に引き出される。粘着テープ7は搬送ローラ33の外周のうち右前部に接触しながら左方に曲がる。このとき、図5(B)に示すように、粘着テープ7の剥離紙75側(粘着テープ7の上面側)が搬送ローラ33に対向し、粘着テープ7の両面粘着テープ71側(粘着テープ7の下面側)が可動ローラ14に対向する。このため、搬送ローラ33は、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から粘着テープ7が感熱テープ4に重ね合わされた状態で、粘着テープ7に対して感熱テープ4とは反対側から粘着テープ7を支持する。
【0074】
可動ローラ14は、感熱テープ4と粘着テープ7とが重ね合わされた状態で、搬送ローラ33との間で挟んで感熱テープ4と粘着テープ7とを貼り合わせる。これにより、テープ9が作成される。図3に示すように、テープ9はガイド部38の内側を通過してテープカセット30の外部に排出される。テープ9は切断機構16へと搬送されて、切断機構16により切断される。切断されたテープ9は本体カバー2の排出スリットからサーマルプリンタ1の外部へと排出される。
【0075】
サーマルプリンタ1の電気的構成を説明する。図6に示すように、サーマルプリンタ1はCPU91を備える。CPU91はサーマルプリンタ1を制御し、プロセッサとして機能する。CPU91には、フラッシュメモリ92、ROM93、RAM94、通信部97、媒体検出スイッチ310、キーボード3、ディスプレイ5、サーマルヘッド10、搬送モータ95、及び切断モータ96が電気的に接続する。
【0076】
フラッシュメモリ92はCPU91によって実行されるプログラム、カセット情報等を記憶する。ROM93は各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータを記憶する。RAM94は、印刷するもとの画像であり個々の画素領域に対応する画像データ、画像を形成するため画像データに基づいて生成される印刷データ等、種々の一時データを記憶する。通信部97は、外部端末100と接続して通信を行う。通信部97は、例えば公知のUSBインタフェース、有線又は無線LANインタフェース等である。例えばCPU91は、印刷対象の画像データを外部端末100から受信し、RAM94に記憶することができる。外部端末100は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末、メモリカード読み取り装置等である。
【0077】
感熱層42の発色について説明する。前述したように、第一感熱層421、第二感熱層422、第三感熱層423は、夫々第一温度以上、第二温度以上、第三温度以上に加熱された場合に、各々、シアン、マゼンタ、イエローに発色する。サーマルプリンタ1のCPU91は、後述するテープ作成処理(図11参照)で、通電パターンテーブル(図示略)に基づいて、感熱層42に形成する個々のドットに対する通電パターンを設定した印刷データを生成する。通電パターンは、感熱層42を各ドットの色に対応する温度に加熱するため、発熱体11に通電するタイミング及び通電時間を設定したものである。発熱体11は、通電によって発熱し、非通電状態では放熱する。感熱層42は印刷時に、発熱体11に近い側から順に、第三感熱層423、第二感熱層422、第一感熱層421が配置される。感熱層42の各層間に配置される遮熱層43は、熱伝導性が低い。故に発熱体11が感熱層42を加熱したとき、第三感熱層423、第二感熱層422、第一感熱層421の間において、第三感熱層423側が高く第一感熱層421側が低くなる温度勾配が生ずる。
【0078】
通電パターンテーブルは、図7のタイミングチャートに示す、色と通電タイミング及び通電時間との関係を、通電パターンとして対応付けたテーブルであり、ROM93に記憶される。イエロー(Y)の通電パターンは、T0に通電が開始(ON)されてからT5に通電が停止(OFF)されるまで、通電状態を継続する。図8の温度と感熱層42の深さとの関係を示すグラフにおいて点線で示すように、発熱体11が付与する熱によって、感熱層42の浅い部分(発熱体11に近い部分)では第三温度以上となるので、第三感熱層423がイエローに発色する。発熱体11が付与する熱は、第二遮熱層432を介して第二感熱層422に到達するため、層が深くなるにつれて温度が低下する。第二感熱層422の温度は第二温度未満となるため、第二感熱層422は発色しない。発熱体11が付与する熱は、さらに第一遮熱層431を介して第一感熱層421に到達するが、第一感熱層421は第一温度未満となり、発色しない。通電は、そのまま継続すると感熱層42全体の温度が上昇していくが、第二感熱層422が第二温度以上になる前のT5に終了する。故に感熱層42は、Yの通電パターンに従う通電によって、第三感熱層423のイエローのみが発色される。
【0079】
図7に示すように、マゼンタ(M)の通電パターンでは、T0に通電が開始されてからT5より前のT2に通電が停止され、以後、T0~T2より短い時間の通電が一定間隔をあけて3回繰り返される。図8のグラフにおいて一点鎖線で示すように、通電開始当初のT0~T2に発熱体11から付与される熱では、感熱層42の浅い部分の温度は、第三温度以上に達しない。その後に短期間の通電が繰り返されることによって、発熱体11から付与される熱は感熱層42の中間部分に伝わる。第二感熱層422はYの通電パターンによる通電時よりも高温の第二温度以上第三温度未満となり、マゼンタに発色する。通電は、感熱層42の深い部分に伝わる前に終了する。第一感熱層421は第一温度未満に維持され発色しない。故に、感熱層42は、Mの通電パターンに従う通電によって、第二感熱層422のマゼンタのみが発色される。
【0080】
図7に示すように、シアン(C)の通電パターンでは、T1に通電が開始されてから、Mの通電パターンにおける繰り返しの通電よりも短い時間の通電が、一定間隔をあけて17回繰り返される。個々の通電間隔はMの通電パターンよりも長い。図8のグラフにおいて実線で示すように、Mの通電パターンよりも短い極小時間の通電が複数回繰り返されることによって、発熱体11から付与される熱は、感熱層42の浅い部分から中間部分における温度上昇が小さい状態で、感熱層42の全体に伝わっていく。そして極小時間の繰り返しの通電が終了する前には、第三感熱層423は第二温度以上第三温度未満となり、第二感熱層422と第一感熱層421は第一温度以上第二温度未満となる。故に、感熱層42は、Cの通電パターンに従う通電によって、第一感熱層421のシアンのみが発色される。
【0081】
感熱層42は、3つの層のうちの2つ以上の層で発色することで、混合色を発色することができる。感熱層42は、YとMの混合色であるレッド(以下、「R」と略記する。)、CとYの混合色であるグリーン(以下、「G」と略記する。)、CとMの混合色であるブルー(以下、「B」と略記する。)、CとMとYの混合色であるブラック(以下、「K」と略記する。)を発色する。
【0082】
図7に示すように、レッド(R1)の通電パターンでは、T0に通電が開始されてから、Mの通電パターンにおける初回の通電時間T0~T2よりも長い、T0~T3時間の通電が行われる。図9のグラフにおいて点線で示すように、通電開始当初、感熱層42の浅い部分での温度上昇は、Yの通電パターンよりも小さいが、Mの通電パターンよりも大きくなる。第三感熱層423は第三温度以上となり、イエローに発色する。その後、Mの通電パターンにおける繰り返しの通電と同じ短時間の通電が、一定間隔をあけて5回繰り返される(図7参照)。このため、図9のグラフにおいて実線で示すように、感熱層42の中間部分や深い部分の温度が次第に上昇する。よって第二感熱層422は第二温度以上第三温度未満となり、マゼンタに発色する。通電は、感熱層42の深い部分の温度が上昇する前に終了する。よって第一感熱層421は第一温度未満に維持され発色しない。このように、感熱層42は、第三感熱層423においてイエローが発色した後で、第二感熱層422においてマゼンタが発色し、混合色としてレッドを示す。
【0083】
図7に示す、レッド(R2)の通電パターンは、感熱層42におけるイエローとマゼンタの発色の順番が、R1の通電パターンとは逆順になるように設定したものである。T0に通電が開始されてから、Mの通電パターンと同じT2に初回の通電が停止され、以後、一定間隔をあけて短時間の通電が7回繰り返される。図10のグラフにおいて点線で示すように、短時間の繰り返しの通電が3回行われた時点で、感熱層42全体の温度は、Mの通電パターンと同様の状態を示す。この時点で、第二感熱層422がマゼンタに発色する。以後も短時間の繰り返しの通電が継続されるので、図10のグラフにおいて実線で示すように、感熱層42の中間部分や深い部分の温度が次第に上昇する。よって第三感熱層423は第三温度以上となり、イエローに発色する。通電は、感熱層42の深い部分の温度が上昇する前に終了する。よって第一感熱層421は第一温度未満に維持され発色しない。このように、感熱層42は、第二感熱層422においてマゼンタが発色した後で、第三感熱層423においてイエローが発色し、混合色としてレッドを示す。
【0084】
レッド(R2+)の通電パターンは、R2の通電パターンにおける短時間の通電の繰り返し回数を1回分増やしたパターンである。第三感熱層423が第三温度以上に加熱される時間が増えるので、R2+の通電パターンで加熱された感熱層42は、イエローのドットの発色面積を大きくすることができる。同様に、レッド(R2-)の通電パターンは、R2の通電パターンにおける短時間の通電の繰り返し回数を1回分減らしたパターンである。第三感熱層423が第三温度以上に加熱される時間が減るので、R2-の通電パターンで加熱された感熱層42は、イエローのドットの発色面積を小さくすることができる。なお、図示しないが、例えば、R2の通電パターンにおける短時間の通電の1回あたりの通電時間を増減することでも同様に、イエローのドットの発色面積を増減することが可能である。
【0085】
図7に示す、レッド(R3)の通電パターン及びレッド(R4)の通電パターンは、夫々、R1の通電パターン及びR2の通電パターンの通電開始のタイミングを、T0よりも遅らせたT4に設定したものである。サーマルプリンタ1は、感熱テープ4を搬送しながら発熱体11に通電し、感熱層42にドットを形成する。R3又はR4の通電パターンを用いてドットを形成する場合、R1又はR2の通電パターンを用いてドットを形成した場合のドットの形成位置に対し、T0~T4間に感熱テープ4が搬送方向に搬送された分、搬送方向にずれた位置に、ドットが形成される。周囲に形成される他のドットとの位置関係がずれることによって、R3又はR4の通電パターンを用いて形成したドットは、R1又はR2の通電パターンで形成したドットとは色味を異ならせることができる。
【0086】
図7に示すグリーン(G)の通電パターンでは、Yの通電パターンと同様にT0~T5に通電が維持されることによって、第三感熱層423がイエローに発色する。その後、T0~T5よりも長い時間が経過するT6までの間、発熱体11への通電はなされない。感熱層42の浅い部分では、T5~T6の間に温度が下がる。感熱層42の中間部分や深い部分にはT5~T6の間に熱が伝わり温度が上昇する。そしてT6から、Cの通電パターンと同じ極小時間の通電が、一定間隔をあけて8回繰り返される。感熱層42全体の温度は、Cの通電パターンによる温度変化を表すグラフと略同様の状態(図示略)となる。極小時間の繰り返しの通電が終了する前には、第三感熱層423は第二温度以上第三温度未満となり、第二感熱層422と第一感熱層421は第一温度以上第二温度未満となって、第一感熱層421においてシアンが発色する。このように、感熱層42は、第三感熱層423のイエローと、第一感熱層421のシアンが発色し、混合色としてグリーンを示す。
【0087】
ブルー(B1)の通電パターンでは、Mの通電パターンにおける一定間隔ごとの短時間の通電がT0より開始され、6回繰り返される。感熱層42は、短時間の通電によって浅い部分における急な温度上昇が抑えられつつ、全体の温度が上昇する。よって第二感熱層422において、マゼンタが発色する。短時間の繰り返し通電以降は、極小時間の通電が12回繰り返される。感熱層42は、極小時間の通電によって浅い部分における温度上昇がさらに抑えられつつ、全体の温度が上昇する。図示しないが、温度変化を表すグラフは、例えば、図8におけるCの通電パターン(実線)によるグラフが、全体的に、温度の高い方にシフトした状態となる。極小時間の繰り返しの通電が終了する前には、第二感熱層422と第三感熱層423は第二温度以上第三温度未満となり、第一感熱層421は第一温度以上となって、第一感熱層421においてシアンが発色する。このように、感熱層42は、第二感熱層422でマゼンタが発色した後、第一感熱層421でシアンが発色し、混合色としてブルーを示す。
【0088】
ブルー(B2)の通電パターンでは、一定間隔ごと短時間の通電がT0より2回繰り返され、その後、極小時間の通電が12回繰り返される。感熱層42は、極小時間の通電によって浅い部分における温度上昇がさらに抑えられつつ、全体の温度が上昇する。図示しないが、温度変化を表すグラフは、例えば、図8におけるCの通電パターン(実線)によるグラフが、時間の経過とともに徐々に、温度の高い方にシフトしていく状態となる。よって、第一感熱層421は、第二感熱層422が第二温度未満のうちに第一温度以上となり、シアンが発色する。極小時間の12回の通電後、再度、一定間隔ごとの短時間の通電が4回繰り返される。個の通電により、感熱層42は、特に、浅い部分から中間部分にかけて、温度が上昇する。短時間の繰り返しの通電が終了する前には、第三感熱層423は第三温度未満であるが、第二感熱層422は第二温度以上第三温度未満となり、マゼンタが発色する。このように、感熱層42は、第一感熱層421でシアンが発色した後、第二感熱層422でマゼンタが発色し、混合色としてブルーを示す。
【0089】
ブラック(K1)の通電パターンでは、R1の通電パターンと同様の継続的な通電がT0~T3に行われてから、一定間隔ごとの短時間の通電が4回繰り返され、その後、極小時間の通電が11回繰り返される。よって、R1の通電パターンと同様に、第三感熱層423においてイエローが発色した後で、第二感熱層422においてマゼンタが発色する。さらに、極小時間の通電が繰り返されることによって感熱層42全体の温度が上昇し、第一感熱層421においてシアンが発色する。このように、感熱層42は、イエロー、マゼンタ、シアンの順に発色し、混合色としてブラックを示す。
【0090】
ブラック(K2)の通電パターンでは、R2の通電パターンと同様の継続的な通電がT0~T2に行われてから、一定間隔ごとの短時間の通電が7回繰り返され、その後、極小時間の通電が9回繰り返される。よって、R2の通電パターンと同様に、第二感熱層422においてマゼンタが発色した後で、第三感熱層423においてイエローが発色する。さらに、極小時間の通電が繰り返されることによって感熱層42全体の温度が上昇し、第一感熱層421においてシアンが発色する。このように、感熱層42は、マゼンタ、イエロー、シアンの順に発色し、混合色としてブラックを示す。
【0091】
通電パターンは上記以外にも設けてもよく、例えばブラックの通電パターンとしてシアンが最初に発色するパターンや、R3,R4以外にも通電開始時期をT0よりも遅らせたパターンを設けてもよい。
【0092】
サーマルプリンタ1によるテープ作成処理の概要について説明する。前述したように、サーマルプリンタ1は、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットを使用することができる。レセプタタイプの場合、テープカセットには、基材の感熱層が設けられた側とは反対側の面に、予め粘着層が設けられ、剥離紙が付着された状態の感熱テープが用いられる。よって、レセプタタイプのテープの場合、ユーザが印刷された画像を目視する方向は、基材に対し感熱層の設けられた側、すなわち、印刷方向Y2(図5参照)となる。熱源(発熱体11)から感熱テープ4に入力された熱は、発熱体11からの距離が遠くなるに従って(すなわち感熱層42の深さが深くなるに従って)拡散する。このため、発熱体11が発熱した場合、第三感熱層423、第二感熱層422、第一感熱層421の順に、各層の発色範囲は小さくなりやすい。加えて、例えば、R1の通電パターンでレセプタタイプのテープにレッドのドットが形成される場合、感熱層42は、第三感熱層423においてイエローが発色した後、第三感熱層423が第三温度以上のまま、第二感熱層422が第二温度以上となってマゼンタが発色する。故に、イエローのドットは、加熱時間がマゼンタよりも長くなり、マゼンタのドットよりも大きく形成される。このようにして形成されたレッドのドットを印刷方向Y2から見た場合、ユーザは、発色範囲がイエローよりも小さいマゼンタを、イエローが覆うようにして見えるため、マゼンタの発色範囲の輪郭がぼやけ、全体的に均一なレッドのドットに見える。一方、ラミネートタイプのテープ9の場合、ユーザが印刷された画像を目視する目視方向Y1は、感熱層42に対して基材41側である。発色範囲の小さいマゼンタが、発色範囲の大きいイエローよりも手前側にあるため、ユーザは、マゼンタの発色範囲の輪郭がはっきりし、周囲をイエローで囲まれたレッドのドットに見える。
【0093】
故に、目視方向がY2となるラミネートタイプの感熱テープ4に印刷する場合、サーマルプリンタ1は、R2の通電パターンでレッドのドットを形成する。R2の通電パターンでは、感熱層42は、第二感熱層422においてマゼンタが発色した後、第二感熱層422が第二温度以上のまま、第三感熱層423が第三温度以上となってイエローが発色する。故に、マゼンタのドットは、加熱時間がイエローよりも長くなり、イエローのドットよりも大きく形成される。このようにして形成されたレッドのドットを目視方向Y1から見た場合、ユーザは、発色範囲がマゼンタよりも小さいイエローを、マゼンタが覆うようにして見えるため、イエローの発色範囲の輪郭がぼやけ、全体的に均一なレッドのドットに見える。これにより、R1の通電パターンで形成したレッドのドットを印刷方向Y2から見る場合と、R2の通電パターンで形成したレッドのドットを目視方向Y1から見る場合とで、ユーザは、どちらのレッドのドットも、ほぼ同等の色味として視認することができる。故に、後述するテープ作成処理では、作成したテープをユーザが見る方向に応じて、ドット形成における発熱体11の通電パターンを設定する。
【0094】
また、ラミネートタイプの感熱テープ4では、基材41は可視透光性を有する。R1の通電パターンで形成されたレッドのドットを目視方向Y1から見る場合において、目視方向Y1に対して少し斜めに見た場合、基材41の屈折率や厚み、比率(例えば、感熱テープ4の厚みに対する基材41の厚みの割合)等の影響により、マゼンタの発色範囲の周囲にあるイエローの部分が、より大きく見えてしまう現象が生ずる。故に、目視方向Y1から見る場合に、サーマルプリンタ1は、R2の通電パターンでレッドのドットを形成し、手前側に位置するマゼンタがイエローを覆った状態で、レッドのドットをユーザが視認できるようにする。イエローの発色範囲の輪郭がぼやけることで、ユーザが基材41を介してみた場合でも、イエローの発色範囲の周囲にあるマゼンタの部分は、より大きく見えても目立ちにくい。
【0095】
サーマルプリンタ1によるテープ作成処理を説明する。ユーザはキーボード3を操作することで印刷開始指示をサーマルプリンタ1に入力する。CPU91は印刷開始指示を取得すると、フラッシュメモリ92からプログラムを読み出してテープ作成処理を実行する。テープ作成処理ではサーマルプリンタ1による印刷動作が制御されて、テープ9が作成される。
【0096】
図11に示すように、CPU91はユーザによって指定された画像を示す画像データを取得する(S1)。画像データは、図示しない編集プログラムの実行により、ユーザがキーボード3を用いて作成し、フラッシュメモリ92に記憶したデータである。ユーザはキーボード3を介してテープ9に形成される画像をあらかじめ指定する。テープ9に形成される画像とは、ユーザがテープ9を目視方向Y1から見た場合に視認可能な画像である。なお、画像データは、外部端末100からあらかじめ読み込み、フラッシュメモリ92に記憶したデータであってもよい。
【0097】
CPU91は、目視方向を取得する(S2)。テープカセット30の媒体指標部900は、テープカセット30の収容するテープ9の種類に応じて、あらかじめ、孔の個数と形成位置が設定されている。CPU91は、媒体検出スイッチ310の検出結果に基づいて、フラッシュメモリ92に記憶するカセット情報に基づき、テープ9の種類を取得する(S2)。なお、カセット情報は、媒体指標部900のパターンと、テープの種類とを対応付けるテーブルである。また、テープの種類には、目視方向の情報、厚み関連情報、屈折率関連情報等が含まれる。目視方向の情報は、テープ9が、ラミネートタイプ等、目視方向Y1からユーザが視認する形態のテープであるか、レセプタタイプ等、印刷方向Y2からユーザが視認する形態のテープであるかを示す情報である。厚み関連情報は、基材41の厚みを示す情報である。厚み関連情報は、実寸に基づく情報であってもよいし、大・中・小など、通電パターンテーブルで分類される種類に応じて厚みを段階分けした情報であってもよい。また、厚み関連情報は、基材41の厚みと、感熱テープ4、又は感熱テープ4を構成する各層の厚みとの比率を示す情報であってもよい。屈折率関連情報は、基材41の屈折率を示す情報である。基材41の屈折率関連情報は、実測値に基づく情報であってもよいし、大・中・小など、通電パターンテーブルで分類される種類に応じて屈折率を段階分けした情報であってもよい。あるいは、基材41の種類(材質)を示す情報であってもよい。
【0098】
テープ9が印刷方向Y2からユーザが視認する形態のテープである場合(S3:NO)、処理はS11へ移行する。テープ9が目視方向Y1からユーザが視認する形態のテープである場合(S3:YES)、CPU91は取得された画像データを鏡像反転させることで、鏡像反転画像を示す画像データを作成する(S4)。鏡像反転は、印刷方向Y2から画像を見て感熱テープ4の短手方向の中心を通り、且つ長手方向に平行な線を対称軸として、画像の表示内容を対称移動させることをいう。処理はS11へ移行する。
【0099】
CPU91は、印刷色変換処理を行う(S11)。印刷色変換処理は、画像データの各画素の色を、サーマルプリンタ1で発色させるドットの色に変換する処理である。サーマルプリンタ1は、感熱層42に、シアン、マゼンタ、イエローの各色を発色させ、さらに混合色として、レッド、グリーン、ブルー、ブラックの各色を表現することができる。CPU91は、画像データの各画素の色を分解し、上記の各色で表現するための色変換を行う。
【0100】
CPU91は、感熱層42の発色に影響する各種パラメータを取得する(S12)。パラメータは、例えば環境温度、サーマルヘッド10の温度等である。CPU91は、発熱体11への通電を制御するコマンドの生成において、パラメータに応じて通電パターンを補正する。また、S2で取得したテープの種類から、テープ9がラミネートタイプである場合に、基材41の厚み、比率、又は屈折率に関する情報を、カセット情報よりパラメータとして取得する。
【0101】
CPU91は、通電パターンテーブル(図示略)に基づいて、S11で色変換を行った各ドットの通電パターンを決定する(S13)。なお、本実施形態では、説明の簡略化のため、レセプタタイプでR1,B1,K1の通電パターンが使用され、ラミネートタイプでR2,B2,K2の通電パターンが使用されるものとする。また、ラミネートタイプの場合、S12で取得した基材41の厚み、比率、又は屈折率に関する情報に基づいて、あらかじめ設定した所定値より基材41の厚み、比率、屈折率等が大きい場合に、R4の通電パターンが使用されるものとする。なお、厚み、比率、屈折率の情報は、いずれか1つの情報に基づく通電パターンが使用されてもよいし、2以上の情報の組み合わせに基づく通電パターンが使用されてもよい。例えば、基材41の厚みが所定値より大きい場合、又は屈折率が所定値より大きい場合にR4の通電パターンが使用され、基材41の厚みが所定値以下、且つ屈折率が所定値以下の場合には、R2の通電パターンが使用されてもよい。また、CPU91は、R2+又はR2-の通電パターン、あるいはR2の通電パターンにおける短時間繰り返し通電の通電時間を増減した通電パターン(図示略)をパラメータに応じて用い、形成されるドットの発色面積を変更することで、色ずれを抑制してもよい。
【0102】
CPU91は、所定のフォーマットに従って、各ドットの通電パターンと、S12で取得したパラメータとに基づき、各ドットに対応する発熱体11への通電を制御するコマンドを作成し、印刷データを生成する(S14)。
【0103】
CPU91は、印刷データを他のプログラムによって実行される印刷処理に対して出力し、テープ9に印刷する。他のプログラムでは、CPU91は搬送モータ95を制御して駆動軸18を回転駆動する。これにより、搬送ローラ33と可動ローラ14との協働によって、第一供給ロール40から感熱テープ4が引き出され、且つ第二供給ロール70から粘着テープ7が引き出される。
【0104】
CPU91は搬送モータ95を制御しながらサーマルヘッド10を制御する。詳細には、CPU91は感熱テープ4を搬送しながら、印刷データの各コマンドを実行し、複数の発熱体11を選択的に発熱させる。感熱テープ4は複数の感熱層42に対して基材41とは反対側からサーマルヘッド10によって加熱される。これにより、感熱層42が発色してドットが形成され、画像データに基づく画像が感熱テープ4に印刷される(S21)。
【0105】
テープ9が搬送される過程で、搬送ローラ33と可動ローラ14との間で、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から、印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされる。これにより、テープ9が作成される。CPU91は切断モータ96を制御することで切断機構16によってテープ9を切断する(S22)。CPU91はテープ作成処理を終了する。
【0106】
以上説明したように、CPU91、感熱層42に画像を形成する際に、目視方向に応じた通電パターンを用いることで、目視方向によって発色状態が異なる画像を形成できる印刷データを生成することができる。これにより、サーマルプリンタ1は、例えば、基材41側から基材41を介して感熱層42を目視した画像の色味と、基材41を介さない感熱層42側から目視した場合の画像の色味とが近似する画像を感熱層42に形成することができる。故にサーマルプリンタ1は、例えば、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する画像を感熱テープ4に印刷することができる。
【0107】
感熱層42に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、目視方向によって色味に差異が生ずる場合がある。発熱体11への通電パターンには、目視方向によって異なる色であるが、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する色を、夫々発色させる通電パターン(例えばR1とR2の通電パターン)が設けられる。CPU91は、目視方向の検出結果に応じた通電パターンを用いる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、ラミネートタイプ等、基材41を介して感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像を、レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0108】
感熱層42に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材41の厚みや屈折率の影響により、位置がずれて観察されることで、色味に差異が生ずる場合がある。発熱体11への通電パターンには、同じ色を発色させるパターンであるが、通電のタイミングを夫々異ならせた通電パターン(例えばR2とR4の通電パターン)が設けられる。CPU91は、目視方向の検出結果に応じた通電パターンを用いる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、ラミネートタイプ等、基材41を介して感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像を、レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0109】
感熱層42に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材41の厚みの影響により、色味に差異が生ずる場合がある。CPU91は、テープの種類に基づいて得られる基材41の厚みに関する情報に応じ、画像の発色状態が異なる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、ラミネートタイプ等、基材41を介して感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像を、レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0110】
感熱層42に形成した画像は、2層以上の色を重ね合わせて形成した場合、基材41の屈折率の影響により、位置がずれて観察されることで、色味に差異が生ずる場合がある。CPU91は、テープの種類に基づいて得られる基材41の屈折率に関する情報に応じて画像の発色状態が異なる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、ラミネートタイプ等、基材41を介して感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像を、レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成した画像の色味とほぼ同等の色味に形成することができる。
【0111】
CPU91は、2層以上の感熱層42の夫々に画像を形成するため、発熱体11の通電パターンを感熱層42に応じたパターンに制御した印刷データを生成することができる。すなわちサーマルプリンタ1は、例えば、発色対象の2つの感熱層42に印加するエネルギーの大きさや順序を、通電パターンを変更することにより異ならせて発色させることで、各感熱層42の発色サイズ(ドットの大きさ)を制御し、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0112】
レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像は、感熱層42の深さが浅い側ほど(第三感熱層423、第二感熱層422、第一感熱層421の順に)、感熱層に形成する色の発色サイズ(ドットの大きさ)が大きい。このように形成された画像を基材41側から目視した場合、手前側に位置する感熱層42に形成された色の発色サイズが小さくなるので、画像の色味に差が生じやすい。CPU91は、発色対象の感熱層42の夫々にエネルギーを印加するタイミングを制御した印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、発色対象の感熱層42ごとに異なる順序で発色させることができる。サーマルプリンタ1は、各感熱層42の発色サイズ(ドットの大きさ)を制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0113】
CPU91は、例えばR2,B2,K2の通電パターンを用いることで、複数の感熱層42における発色のタイミングを夫々入れ替えることで、より容易に、感熱層42ごとに発色のタイミングが異なる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、発色対象の感熱層42ごとに異なる順序で発色させることができる。サーマルプリンタ1は、各感熱層42の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0114】
CPU91は、例えばR2+,R2-の通電パターンを用いることで、複数の感熱層42のうち少なくとも1層の感熱層42における発色面積が他と異なる印刷データを生成することができる。より具体的に、CPU91は、複数の感熱層42のうち、目視方向において遠い側となる感熱層42における発色面積が、目視方向において近い側となる感熱層42における発色面積よりも、相対的に大きくなる印刷データを生成することができる。故にサーマルプリンタ1は、各感熱層42の発色サイズを制御して、フリンジや重なり合う色むらを減少させることができる。
【0115】
本実施形態のCPU91は、3層の感熱層42を有する感熱テープ4に対し、ラミネートタイプ等、基材41を介して感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成する画像を、レセプタタイプ等、基材41を介さずに感熱層42を目視する形態の感熱テープ4に形成した画像とほぼ同等の色味となる印刷データを生成する。故にサーマルプリンタ1は、目視方向によらずほぼ同等の色味を有する画像を感熱テープ4に印刷することができる。
【0116】
上記実施形態において、シアン、マゼンタ、イエローは夫々、本発明の「第一色」、「第二色」、「第三色」の一例である。テープ9は、本発明の「多層感熱印刷媒体」の一例である。発熱体11は、本発明の「発熱素子」の一例である。S14の処理を行うCPU91は、本発明の「生成手段」の一例である。S21の処理を行うCPU91は、本発明の「駆動手段」の一例である。S2,S12の処理で、目視方向、厚み、比率、屈折率等に関する情報を取得するCPU91は、本発明の「検出手段」の一例である。サーマルプリンタ1は、本発明の「印刷装置」の一例である。
【0117】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば基材41は発泡PETフィルムでもよい。基材41は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMMA)、ポリブテン(PB)、ポリブタジエン(BDR)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ナイロン(NY)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、発泡ポリスチレン(FS/EPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、普通セロハン(PT)、防湿セロハン(MST)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ビニロン(VL)、ポリウレタン(PU)、及びトリアセチルセルロース(TAC)等の樹脂フィルムであってもよい。この場合、基材41は発泡樹脂フィルムでもよいし、無発泡樹脂フィルムでもよい。また、基材41は、用途に応じた程度の可視光透過性があれば、金属箔(アルミニウム箔、銅箔)、真空蒸着フィルム(VM)等であってもよいし、半透明紙、和紙、上質紙、無塵紙、グラシン紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、ラミネート紙(ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙等)、合成紙、クラフト紙等の各種紙でもよい。基材41は、不織布、ガラスクロス等でもよい。レセプタタイプの場合の基材41は、可視光透過性を有さなくてもよい。
【0118】
例えば、通電パターンテーブルは、上記したC,M,Y,R1~R4,G,B1,B2,K1,K2の通電パターンに限らず、より細分化することで、より多くのパターンを有してもよい。感熱層42は2層で構成されてもよいし、4層以上で構成されてもよい。また、各層の色はC,M,Yに限らず、R,G,B,K、その他の色等であってもよい。また、濃さの異なる同一色を各層の色としてもよい。なお、感熱層42を4層で構成した場合、4色目はKが好ましい。
【0119】
CPU91の代わりにマイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等がプロセッサとして用いられてもよい。テープ作成処理は複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。非一時的な記憶媒体は情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。プログラムは例えばネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(すなわち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ92に記憶されてもよい。この場合、プログラムはサーバに備えられたハードディスクドライブ等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。なお、上述した変形例は矛盾が生じない限り、互いに組み合わされてもよい。
【0120】
テープ作成処理のS2~S3で、CPU91は、媒体検出スイッチ310の検出結果から、フラッシュメモリ92に記憶するカセット情報に基づき、テープ9の種類を取得し、目視方向を判断した。目視方向の情報は、例えば、テープカセット30を装着部8に装着する際に、ユーザがキーボード3で入力してもよい。
【0121】
テープ作成処理のS11~S14の処理を行うプログラムは、プリンタドライバとして外部端末100にインストールされ、実行されてもよい。この場合、外部端末100は、サーマルプリンタ1から目視方向等の情報を取得した上でS11~S14の処理を実行し、生成した印刷データをサーマルプリンタ1に送信して印刷を実行させるとよい。また、上記変形例のようにユーザが目視方向の情報を入力する場合、ユーザは、外部端末100のキーボード、マウス等を用い、目視方向の情報を入力してもよい。
【0122】
また、外部端末100は、目視方向Y1の場合の印刷データと、印刷方向Y2の場合の印刷データを生成し、サーマルプリンタ1に送信してもよい。この場合、サーマルプリンタ1は、目視方向の判断結果に基づき目視方向に対応する印刷データを選択し、テープ9に印刷してもよい。また、外部端末100は、常時、印刷方向Y2の場合の印刷データを生成し、サーマルプリンタ1に送信してもよい。この場合、サーマルプリンタ1は、目視方向の判断結果がY1であった場合に、印刷データに含まれるコマンドにおいて、R1,B1,K1の通電パターンが記述された部分を、R2,B2,K2の通電パターンで記述し直す処理を行って、テープ9に印刷してもよい。
【0123】
S12の処理では、CPU91は基材41の厚み、比率、屈折率等に関する情報を取得したが、これらの情報は取得しなくてもよい。この場合、S13の処理では、基材41の厚み、比率、屈折率等に関する情報に応じた通電パターンの決定はしなくてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 サーマルプリンタ
4 感熱テープ
7 粘着テープ
9 テープ
10 サーマルヘッド
11 発熱体
41 基材
42 感熱層
91 CPU
421 第一感熱層
422 第二感熱層
423 第三感熱層
Y1 目視方向
Y2 印刷方向
図1
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図11