(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】印刷装置及びヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20241203BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2020219521
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 周平
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032715(JP,A)
【文献】特開2014-076657(JP,A)
【文献】特開2016-193553(JP,A)
【文献】特開2014-104644(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145743(WO,A1)
【文献】特開2002-137388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ
、
前記第1個別電極に印加される第1電圧波形の傾きが負となる第1時間と、前記第2個別電極に印加される第2電圧波形の傾きが正となる第2時間とが、少なくとも一部重なるように、前記制御回路は前記周期を遅延させる
印刷装置。
【請求項2】
前記第1時間の開始時点と、前記第2時間の開始時点とが同じになるように、前記制御回路は前記周期を遅延させる
請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ、
前記共通電極、第1個別電極及び第2個別電極が配置された圧電体を備え、
前記制御回路は、
前記ノズルから液体を吐出するフラッシング処理、及び、前記第1個別電極又は第2個別電極と、前記共通電極と、前記圧電体とによって構成されたコンデンサの静電容量を検出する静電容量検出処理を実行し、
前記静電容量検出処理の前に前記フラッシング処理を実行する場合、前記周期を遅延させる
印刷装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記フラッシング処理の後に、前記静電容量検出処理を実行しない場合、前記制御回路は、前記フラッシング処理にて前記周期を遅延させない
請求項
3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ、
前記共通電極、第1個別電極及び第2個別電極が配置された圧電体と、
前記制御回路と異なる制御部とを備え、
前記制御部は、
ノズルから液体を吐出させるフラッシング処理、及び、前記第1個別電極又は第2個別電極と、前記共通電極と、前記圧電体とによって構成されたコンデンサの静電容量を検出する静電容量検出処理を実行し、
前記静電容量検出処理の前に前記フラッシング処理を実行する場合、前記制御回路に前記周期を遅延させる
印刷装置。
【請求項6】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ、
前記共通電極、第1個別電極及び第2個別電極が配置された圧電体と、
前記制御回路と異なる制御部とを備え、
前記制御回路は、前記第1個別電極又は第2個別電極と、前記共通電極と、前記圧電体とによって構成されたコンデンサの静電容量を検出する静電容量検出処理を実行し、
前記制御部は、ノズルから液体を吐出させるフラッシング処理を実行し、
前記制御部が前記静電容量検出処理の前に前記フラッシング処理を実行する場合、前記制御回路は前記周期を遅延させる
印刷装置。
【請求項7】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ、
前記共通電極は、
帯状の第1電極と、
前記第1電極に交差する方向に前記第1電極から延びる、帯状の第2電極であって、上下方向において、前記第1ノズル列と重なる位置に配置される第2電極と、
前記第1電極に交差する方向に前記第1電極から延びる、帯状の第3電極であって、前記上下方向において、前記第2ノズル列と重なる位置に配置される第3電極と、
前記第1電極と同じ電位であり、前記第1電極に交差する方向において、前記第1電極から離れた位置に配置される帯状の第4電極と、
を有し、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列は、前記第1電極と前記第4電極との間に配置され、
前記第1電極の幅は、前記第2電極の幅と前記第3電極の幅との総和よりも短い
印刷装置。
【請求項8】
印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、
該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、
前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、
前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、
制御回路と
を備え、
前記制御回路は、
ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、
前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させ、
前記共通電極とは異なる電圧が印加される第2共通電極を備える
印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ノズルから液体を吐出して印刷する印刷装置及びヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
2個の共通電極層と、1個の個別電極層と、圧電素子と、振動板とを有するアクチュエータを備え、該アクチュエータの振動によって、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドが提案されている。共通電極層は、ノズル列に直角な方向に延びた帯状の第1部分と、該第1部分から直角に延びた複数の第2部分とを有する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力がアクチュエータに供給され、アクチュエータが振動する。このとき、複数の第2部分から第1部分に向けて電流が流れる。第1部分には電流が集中し、第1部分は高温になりやすい。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、共通電極の発熱を抑制することができる印刷装置及びヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る印刷装置は、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、前記第1ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第1個別電極と、前記第2ノズル列のノズルに対応し、電圧が印加される第2個別電極と、制御回路とを備え、前記制御回路は、ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させる。
【0007】
本開示の一実施形態に係るヘッドは、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第1ノズル列と、印加電圧によって液体を吐出する少なくとも一つのノズルを有する第2ノズル列とを有するノズルプレートと、該第1ノズル列及び第2ノズル列に亘って配置された共通電極と、前記第1ノズル列のノズルに対応し、周期的に電圧が印加される第1個別電極と、前記第2ノズル列のノズルに対応し、周期的に電圧が印加される第2個別電極と、制御回路とを備え、前記制御回路は、ノズルから液体を吐出させるための駆動波形を、所定の駆動周期で入力させ、前記第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る印刷装置及びヘッドにあっては、ノズルから液体を吐出させるための駆動波形が所定の駆動周期で入力される。制御回路は、第1個別電極に電圧を印加する周期に対して、前記第2個別電極に電圧を印加する周期を、前記駆動周期よりも短い時間、遅延させて、共通電極に流れる電流を相殺させて、共通電極の発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る印刷装置を略示する平面図である。
【
図2】サブタンク及びインクジェットヘッド間のインクの流れを説明する説明図である。
【
図3】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
【
図6】本流電極と、アクチュエータとの略示回路図である。
【
図7】アクチュエータを同時に駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形、第1電流波形~第6電流波形、及び総電流を示すタイミングチャートである。
【
図8】アクチュエータをΔtずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形及び第1電流波形~第6電流波形を示すタイミングチャートである。
【
図9】アクチュエータをΔtずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電流波形~第6電流波形及び総電流を示すタイミングチャートである。
【
図10】アクチュエータをΔTずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形、第1電流波形~第6電流波形、及び総電流を示すタイミングチャートである。
【
図11】制御装置による印刷処理を説明するフローチャートである。
【
図12】実施の形態2に係るインクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
【
図14】共通電極及び第2共通電極の略示平面図である。
【
図15】本流電極と、アクチュエータとの略示回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下本発明を、実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて、説明する。
図1は、印刷装置を略示する平面図、
図2は、サブタンク及びインクジェットヘッド間のインクの流れを説明する説明図である。以下の説明では、
図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また
図1の表側が上側に対応し、裏側が下側に対応し、上下も使用する。
【0011】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、四つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ10等を備える。
【0012】
プラテン2の上側には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動される。
【0013】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下側に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよい。
【0014】
サブタンク7及び四つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、一又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0015】
サブタンク7の内部には、四つのインク室19が形成されている。四つのインク室19には、四つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0016】
四つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下側において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、複数のノズル80が形成されている。
図2に示すように、一つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、一つのインク室19に接続されている。すなわち、四つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、四つのインク室19にそれぞれ接続されている。
【0017】
インクジェットヘッド8の上面には、インク供給口83と、インク排出口84とが設けられている。インク供給口83及びインク排出口84は、チューブ等を介してインク室19に接続されている。インク供給口83及びインク室19の間には、循環ポンプ10が介装されている。
【0018】
循環ポンプ10は、例えばチューブをロータでしごくことによって、チューブ内の液体を押し出すチューブポンプである。循環ポンプ10は、インク室19のインクをインクジェットヘッド8に送り込む。
【0019】
循環ポンプ10によってインク室19から送出されたインクは、インク供給口83を通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口84を通って、インク室19に戻る。インクは、インク室19及びインクジェットヘッド8の間を循環する。なお循環ポンプ10に代えて、他の循環の為の動力源、例えばサブタンク7内に圧縮空気を送り込み、インクをインクジェットヘッド8に送り込む装置を使用してもよい。四つのインクジェットヘッド8は、キャリッジと共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0020】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流側(後側)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流側(前側)に配置されている。二つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。二つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU、不揮発性メモリ、RAM、又はロジック回路(例えばFPGA)等を備える。制御装置50は、外部装置100から印刷ジョブを受信し、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。
【0021】
図3は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、複数の圧力室81を備える。複数の圧力室81は、複数の圧力室列を構成する。圧力室81の上側には振動板82が形成されている。振動板82の上側には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83と振動板82との間に共通電極84が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と共通電極84とは圧電体83を挟んで上下に対向する。各圧力室81の下部にノズルプレート87が設けられている。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81の下側に配置されている。複数のノズル80は、第1ノズル列80a及び第2ノズル列80b(
図5参照)を含む複数のノズル列を構成する。ノズル列は圧力室列に沿って延びる。共通電極84は第1ノズル列80a及び第2ノズル列80bに亘って背馳されている。
【0022】
共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続される。個別電極85は、スイッチ制御部67に接続される。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体81が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81からインクが吐出される。
【0023】
図4は、印刷装置1のブロック図である。印刷装置1は、AC電源61に接続されるAC/DCコンバータ62を備える。AC/DCコンバータ62は交流電圧を直流電圧に変換し、DC/DCコンバータ63に出力する。DC/DCコンバータ63は電圧を変更し、スイッチ制御部(SW制御部)67に出力する。
【0024】
スイッチ制御部67は、複数の第nスイッチ67(n)(n=1、2、・・・)と、スイッチ67aとを備える。第nスイッチ67(n)及び検出用スイッチ67aは、例えばアナログスイッチICによって構成される。各第nスイッチ67(n)の一端及び検出用スイッチ67aの一端は、共通バスを介して個別電極85に接続される。
【0025】
複数の第nスイッチ67(n)の他端は、複数の第n波形生成部66(n)(n=1、2、・・・)にそれぞれ接続される。即ち、第1スイッチ67(1)は第1波形生成部66(1)に接続され、第2スイッチ67(2)は第2波形生成部66(2)に接続され、第nスイッチ67(n)は第n波形生成部66(n)に接続される。
【0026】
検出用スイッチ67aの他端は、検出回路65に接続される。検出回路65は、アクチュエータ88の静電容量、換言すれば、共通電極84、個別電極85、及び圧電体83によって構成されたコンデンサの静電容量を検出する。印刷装置1は制御回路64を備える。制御回路64は、CPU、不揮発性メモリ、RAM、又はロジック回路(例えばFPGA)等を備える。制御回路64は、スイッチ制御部67に、第nスイッチ67(n)及び検出量スイッチ67aの接続又は切断を行わせる。制御回路64は、各第n波形生成部66(n)に駆動波形を出力させる。各第n波形生成部66(n)は、それぞれ異なる波形を出力する。制御回路64は検出回路65に前記静電容量を検出させる。
【0027】
アクチュエータ88を駆動させる場合について説明する。例えば、第1波形生成部66(1)が生成する駆動波形によって、アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路64は、スイッチ制御部67に、第1スイッチ67(1)のみを接続させ、第1波形生成部66(1)からアクチュエータ88に駆動波形を出力させる。このとき、全ての他のスイッチ、即ち、第2スイッチ67(2)、第3スイッチ67(3)、・・・、第nスイッチ67(n)、及び検出用スイッチ67aは切断されている。なお、第2波形生成部66(2)、第3波形生成部66(3)、・・・、又は第n波形生成部66(n)が生成する駆動波形によって、アクチュエータ88を駆動させる場合も同様に処理する。
【0028】
前記静電容量の検出を行う場合について説明する。制御回路64は、スイッチ制御部67に、検出用スイッチ67aのみを接続させる。検出回路65は、例えば前記静電容量に充電及び放電を行い、静電容量を測定する。このとき、全ての第nスイッチ67(n)、即ち、第1スイッチ67(1)、第2スイッチ67(2)、・・・、第nスイッチ67(n)は切断されている。
【0029】
図5は、共通電極84の略示平面図である。
図5において、X方向はノズル列に平行な方向を示し、Y方向はノズル列に交差する方向を示す。共通電極84は2個の本流電極90、90を備える。2個の本流電極90、90はX方向に離れている。本流電極90は帯状をなし、Y方向に延びる。各本流電極90の一端部はCOM電極に接続される。各本流電極90の他端部は連結部93を介して連結される。
【0030】
本流電極90には、複数の支流電極91が接続される。支流電極91は帯状をなし、X方向に延びる。複数の支流電極91はY方向に略等間隔を空けて並ぶ。即ち、共通電極84は櫛歯状をなす。本実施例においては、一例として、一つの本流電極90に6個の支流電極91が接続されているが、支流電極91の数は6個に限定されない。以下、6個の支流電極91を、それぞれ、第1支流電極91(1)、第2支流電極91(2)、第3支流電極91(3)、第4支流電極91(4)、第5支流電極91(5)、第6支流電極91(6)とも称する。第1支流電極91(1)~第6支流電極91(6)は、本流電極90の他端部(連結部93に最も近い部分)から本流電極90の一端部(COM電極に最も近い部分)に向けて、順に並ぶ。
【0031】
支流電極91の下側に圧力室列が並び、該圧力室の下側にノズル列が並ぶ。
図5には、第1支流電極91(1)の下側に第1ノズル列80aが配置され、第2支流電極91(2)の下側に第2ノズル列80bが配置された状態が示されている。なお
図5における記載は省略するが、第3支流電極91(3)~第6支流電極91(6)の下側にも、それぞれ、第3ノズル列80c~第6ノズル列80f(
図6参照)が配置されている。各ノズル列は2個の本流電極90、90の間に配置されている。
【0032】
本流電極90のX方向の幅をd1とし、支流電極91のY方向の幅をd2とすると、d1は、複数の支流電極91の幅d2の総和よりも短い。例えば、d1は1000μmであり、d2は600μmであり、支流電極91は12個である。
【0033】
例えば、
図5に示すように、本流電極90における、第1支流電極91(1)と第2支流電極91(2)との間の領域を第1領域90(1)とし、第2支流電極91(2)と第2支流電極91(3)との間の領域を第2領域90(2)とし、第3支流電極91(3)と第4支流電極91(4)との間の領域を第3領域90(3)とし、第4支流電極91(4)と第5支流電極91(5)との間の領域を第4領域90(4)とし、第5支流電極91(5)と第6支流電極91(6)との間の領域を第5領域とし、第6支流電極91(6)と本流電極90の一端部(COM電極に最も近い部分)との間の領域を第6領域90(6)とする。また第1領域90(1)~第6領域90(6)の抵抗を、それぞれ、第1抵抗r1~第6抵抗をr6とする。
【0034】
図6は、本流電極90と、アクチュエータ88a~88fとの略示回路図である。
図6において、第1ノズル列80aの各ノズル80のアクチュエータ88を、代表的に一つのアクチュエータ88aとして表記している。第2ノズル列80b~第6ノズル列80fについても、同様に、一つのアクチュエータ88b~88fとして表記している。
【0035】
図7は、アクチュエータ88a~88fを同時に駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形、第1電流波形~第6電流波形、及び総電流を示すタイミングチャートである。
図7において、第1電圧波形~第6電圧波形は、アクチュエータ88a~88fに印加される電圧波形を示し、第1電流波形~第6電流波形は、第1支流電極91(1)~第6支流電極91(6)に流れる電流波形を示し、総電流は、本流電極90に流れる電流量を示す。ここで、第1電圧波形~第6電圧波形は同じ形状の波形である。
【0036】
図7に示すように、アクチュエータ88a~88fの個別電極85に、第1電圧波形~第6電圧波形が同じタイミングで入力した場合、第1支流電極91(1)~第6支流電極91(6)にも、同じタイミングで電流が流れ、
図5の矢印にて示すように、第1抵抗r1~第6抵抗r6に電流が流れる。詳細には、第1支流電極91(1)に流れた電流が第1抵抗r1に流れ、第1支流電極91(1)及び第2支流電極91(2)に流れた電流が第2抵抗r2に流れ、第1支流電極91(1)~第3支流電極91(3)に流れた電流が第3抵抗r3に流れ、第1支流電極91(1)~第4支流電極91(4)に流れた電流が第4抵抗r4に流れ、第1支流電極91(1)~第5支流電極91(5)に流れた電流が第5抵抗r5に流れ、第1支流電極91(1)~第6支流電極91(6)に流れた電流が第6抵抗r6に流れる。第6抵抗r6に流れる電流量は総電流に対応する。第1電流波形~第6電流波形において、立ち上がり時点及び立ち下がり時点が同じなので、本流電極90において、第1支流電極91(1)~第6支流電極91(6)に流れた電流は、COM電極に向かうに従って順次加算される。そのため、本流電極90には各支流電極91に比べて大きい電流が流れ、本流電極90の発熱量は大きくなりやすい。
【0037】
図8は、アクチュエータ88a~88fをΔtずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形及び第1電流波形~第6電流波形を示すタイミングチャート、
図9は、アクチュエータ88a~88fをΔtずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電流波形~第6電流波形及び総電流を示すタイミングチャートである。
図8において、Sは第1電圧波形~第6電圧波形の駆動周期であり、Δtは駆動周期Sよりも短い。
アクチュエータ88aの個別電極85を第1個別電極85aとし、アクチュエータ88bの個別電極85を第2個別電極85bとした場合(
図3参照)、第2個別電極85bに電圧を印加する周期は、第1個別電極85aに電圧を印加する周期よりも、Δt遅延する。
【0038】
ここで、電流波形のパルス幅を2Δtとし、第1電流波形の立ち上がり時点をt1とし、第2電流波形の立ち上がり時点をt2とし、第3電流波形の立ち上がり時点且つ第1電流波形の立ち下がり時点をt3とし、第4電流波形の立ち上がり時点且つ第2電流波形の立ち下がり時点をt4とし、第5電流波形の立ち上がり時点且つ第3電流波形の立ち下がり時点をt5とし、第6電流波形の立ち上がり時点且つ第4電流波形の立ち下がり時点をt6とし、第5電流波形の立ち下がり時点をt7とし、第6電流波形の立ち下がり時点をt8としている。
【0039】
アクチュエータ88a~88fの駆動タイミングをΔtずつ遅延させた場合、時点t1における総電流は、第1支流電極91(1)に流れる電流であり、時点t2における電流量は、第1支流電極91(1)及び第2支流電極91(2)に流れる電流であり、時点t3における総電流は、第2支流電極91(2)及び第3支流電極91(3)に流れる電流であり、時点t4における総電流は、第3支流電極91(3)及び第4支流電極91(4)に流れる電流であり、時点t5における総電流は、第4支流電極91(4)及び第5支流電極91(5)に流れる電流であり、時点t6における総電流は、第5支流電極91(3)及び第6支流電極91(6)に流れる電流であり、時点t7における総電流は、第6支流電極91(6)に流れる電流である。時点t8において、本流電極90に電流は流れない。このように、アクチュエータ88a~88fを同時に駆動させる場合に比べて、アクチュエータ88a~88fの駆動タイミングをΔtずつ遅延させた場合には、総電流量の実効値を小さくすることができる。
【0040】
図10は、アクチュエータ88a~88fをΔTずつ遅延させて駆動させる場合における、第1電圧波形~第6電圧波形、第1電流波形~第6電流波形、及び総電流を示すタイミングチャートである。ここで、ΔTは、第1電圧波形~第6電圧波形の駆動周期Sよりも短い。即ち、第2個別電極85bに電圧を印加する周期は、第1個別電極85aに電圧を印加する周期よりも、ΔT遅延する。
【0041】
ΔTずつ遅延させることによって、第1電圧波形の立ち下がり開始時点k1と、第2電圧波形の立ち上がり開始時点k1とが同じになり、第1電圧波形の立ち下がり終了時点k2と、第2電圧波形の立ち上がり終了時点k2とが同じになる。即ち、第1電圧波形の傾きが負となる第1時間と、第2電圧波形の傾きが正となる第2時間とが同じになるように重なる。
【0042】
同様に、第2電圧波形の立ち下がり開始時点と、第3電圧波形の立ち上がり開始時点とが同じになり、第2電圧波形の立ち下がり終了時点と、第3電圧波形の立ち上がり終了時点とが同じになる。第3電圧波形の立ち下がり開始時点と、第4電圧波形の立ち上がり開始時点とが同じになり、第3電圧波形の立ち下がり終了時点と、第4電圧波形の立ち上がり終了時点とが同じになる。第4電圧波形の立ち下がり開始時点と、第5電圧波形の立ち上がり開始時点とが同じになり、第4電圧波形の立ち下がり終了時点と、第5電圧波形の立ち上がり終了時点とが同じになる。第5電圧波形の立ち下がり開始時点と、第6電圧波形の立ち上がり開始時点とが同じになり、第5電圧波形の立ち下がり終了時点と、第6電圧波形の立ち上がり終了時点とが同じになる。
なお前記第1時間及び第2時間の少なくとも一部が重なるように、ΔTを設定してもよい。
【0043】
図10に示すように、アクチュエータ88aが駆動を開始した場合、第1電圧波形の立ち上がりによって、第1電流波形が生成される、即ち、第1支流電極91(1)に電流が流れる。次に、アクチュエータ88bが駆動を開始した場合、第2電圧波形が立ち上がるが、同時に第1電圧波形が立ち下がるので、第1電流波形及び第2電流波形は相殺される。次に、アクチュエータ88cが駆動を開始した場合、第3電圧波形が立ち上がるが、同時に第2電圧波形が立ち下がるので、第2電流波形及び第3電流波形は相殺される。次に、アクチュエータ88dが駆動を開始した場合、第4電圧波形が立ち上がるが、同時に第3電圧波形が立ち下がるので、第3電流波形及び第4電流波形は相殺される。次に、アクチュエータ88eが駆動を開始した場合、第5電圧波形が立ち上がるが、同時に第4電圧波形が立ち下がるので、第4電流波形及び第5電流波形は相殺される。次に、アクチュエータ88fが駆動を開始した場合、第6電圧波形が立ち上がるが、同時に第5電圧波形が立ち下がるので、第5電流波形及び第6電流波形は相殺される。次に、アクチュエータ88aが駆動を開始した場合、第1電圧波形が立ち上がるが、同時に第6電圧波形が立ち下がるので、第6電流波形及び第1電流波形は相殺される。
【0044】
これらが繰り返され、本流電極90には、最初の第1電圧波形の立ち上がりによって生成された第1電流波形のみが流れる。そのため本流電極90に流れる総電流量は抑制される。
【0045】
図11は、制御装置50による印刷処理を説明するフローチャートである。制御装置50は外部装置100から印刷ジョブを受信したか否か判定する(S1)。印刷ジョブを受信していない場合(S1:NO)、制御装置50はステップS1に処理を戻す。印刷ジョブを受信した場合(S1:YES)、制御装置50はフラッシング処理を実行する(S2)。フラッシング処理は、印刷目的以外でノズル80からインクを吐出する処理である。このとき、制御装置50は制御回路64に遅延実行指令を出力し、制御回路64はアクチュエータ88a~88fを、上述したようにΔt又はΔTずつ遅延させて駆動させる。
【0046】
次に制御装置50は、静電容量検出処理を実行する(S3)。制御装置50は制御回路64に検出実行指令を出力し、制御回路64は、検出回路65に、個別電極85、共通電極84、及び圧電体83によって構成されたコンデンサの静電容量を検出させる。次に制御装置50は、1印刷タスクを実行する(S4)。印刷タスクは、印刷ジョブを構成する単位である。具体的には、インクジェットヘッド8が右又は左に記録用紙200の左右幅分移動する間に行う液体吐出処理である。次に制御装置50は、1印刷タスクが完了したか否か判定する(S5)。1印刷タスクが完了していない場合(S5:NO)、ステップS5に処理を戻す。1印刷タスクが完了した場合(S5:YES)、制御装置50は、印刷ジョブが完了したか否か判定する(S6)。
【0047】
印刷ジョブが完了した場合(S6:YES)、制御装置50は印刷処理を終了する。印刷ジョブが完了していない場合(S6:NO)、制御装置50は静電容量検出処理を行うタイミングであるか否か判定する(S7)。静電容量検出処理は、インクジェットヘッド8の温度を検出する為に、定期的に実行される。静電容量検出処理を行うタイミングである場合(S7:YES)、制御装置50はフラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S8)。フラッシング処理はノズル80のメンテナンスの為に、定期的に実行される。フラッシング処理を行うタイミングである場合(S8:YES)、制御装置50は、フラッシング処理を実行する(S9)。ステップS9において、制御装置50は制御回路64に遅延実行指令を出力し、制御回路64はアクチュエータ88a~88fを、上述したようにΔt又はΔTずつ遅延させて駆動させる。制御装置50は制御回路67に静電容量検出処理を実行させ(S10)、ステップS4に処理を戻す。ステップS10において、制御回路67は静電容量検出処理を実行する。
【0048】
ステップS8において、フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S8:NO)、即ち、静電容量検出処理を行うタイミングであるが、フラッシング処理を行うタイミングでない場合、制御装置50は制御回路67に静電容量検出処理を実行させ(S15)、ステップS4に処理を戻す。ステップS15において、制御回路67は静電容量検出処理を実行する。
【0049】
ステップS7において、静電容量検出処理を行うタイミングでない場合(S7:NO)、制御装置50はフラッシング処理を行うタイミングであるか否か判定する(S11)。フラッシング処理を行うタイミングである場合(S11:YES)、制御装置50はフラッシング処理を実行し(S12)、ステップS4に処理を戻す。ステップS12において、制御装置50は制御回路64に遅延実行指令を出力してもよいし、しなくてもよい。
【0050】
ステップS11において、フラッシング処理を行うタイミングでない場合(S11:NO)、制御装置50は、非吐出フラッシング処理を実行するタイミングであるか否か判定する(S13)。非吐出フラッシング処理は、液体の吐出を行わずに、ノズル80の乾燥を防止する為の処理であり、詳細には、圧電体83を僅かに変形させて、液体の表面(メニスカス)を揺らす処理である。非吐出フラッシング処理は定期的に実行される。非吐出フラッシング処理を実行するタイミングである場合(S13:YES)、制御装置50は非吐出フラッシング処理を実行し(S14)、ステップS4に処理を戻す。ステップS14において、制御装置50は制御回路64に非吐出フラッシング処理を実行する指令を出力し、制御回路64は、第n波形生成部66(n)に非吐出フラッシング処理に対応した駆動波形を生成させて個別電極85に供給させる。また制御装置50は制御回路64に遅延実行指令を出力し、制御回路64はアクチュエータ88a~88fを、上述したようにΔt又はΔTずつ遅延させて駆動させる。非吐出フラッシング処理を実行するタイミングでない場合(S13:NO)、制御装置50は、ステップS4に処理を戻す。
【0051】
なお制御装置50は制御回路64を介して静電容量検出処理を実行しているが、制御装置50がスイッチ制御回路67及び検出回路65を直接制御し、静電容量検出処理を実行してもよい。
【0052】
実施の形態1にあっては、ノズルから液体を吐出させるための駆動波形が所定の駆動周期Sで入力される。制御回路64は、第1個別電極85aに電圧を印加する周期に対して、第2個別電極85bに電圧を印加する周期を、駆動周期Sよりも短い時間Δt遅延させて、共通電極84に流れる電流を相殺させて、共通電極84の発熱を抑制することができる。
【0053】
また第1電圧波形の傾きが負となる第1時間と、第2電圧波形の傾きが正となる第2時間とが少なくとも一部重なるように、制御回路64は前記周期を遅延させるので、第1支流電極91(1)に流れる電流と、第2支流電極91(2)に流れる電流が少なくても一部相殺される。
【0054】
また前記第1時間の開始時点k1と、前記第2時間の開始時点k2とが同じになるように、制御回路64は前記周期を遅延させるので、第1支流電極91(1)に流れる電流と、第2支流電極91(2)に流れる電流を相殺しやすい。
【0055】
また制御回路64は、静電容量検出処理の前にフラッシング処理を実行する場合、前記周期を遅延させる。そのため、フラッシング処理による共通電極84の温度上昇を抑制し、共通電極84の温度上昇が静電容量検出処理に与える影響を抑制することができる。
【0056】
またフラッシング処理の後に、静電容量検出処理を実行しない場合、制御回路64は、フラッシング処理にて前記周期を遅延させないことができる。前記周期を遅延させないことによって、フラッシング処理に要する時間を短縮させることができる。
【0057】
制御装置50がフラッシング処理及び静電容量検出処理を実行する場合に、制御回路64は前記周期を遅延させて、共通電極84の発熱量を抑制することができる。
【0058】
制御装置50がフラッシング処理を実行する場合に、制御回路64は前記周期を遅延させて、共通電極84の発熱量を抑制することができる。
【0059】
制御回路64は、非吐出フラッシング処理を実行する場合に前記周期を遅延させて、共通電極84の発熱量を抑制することができる。
【0060】
本流電極90のX方向の幅d1は、複数の支流電極91の幅d2の総和よりも短い。幅d1を大きくすると、インクジェットヘッド8のX方向寸法が大きくなる。幅d1の大きさを抑制することによって、インクジェットヘッド8のX方向寸法が大きくなることを抑制し、X方向における小型化を図ることができる。なお実施の形態1において、共通電極84は櫛歯状をなすが、板状に構成してもよい。
【0061】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0062】
図12は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。圧電体83の内部に第2共通電極86が設けられている。第2共通電極86は各圧力室81の上側に配置されている。第2共通電極86は個別電極85と対向し、共通電極84とは対向しない。共通電極84は、個別電極85と対向し、第2共通電極86とは対向しない位置に配置されている。振動板82、圧電体83、共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成する。
【0063】
図13は、印刷装置1のブロック図である。AC/DCコンバータ62は交流電圧を直流電圧に変換し、DC/DCコンバータ63及び第2DC/DCコンバータ68に出力する。第2DC/DCコンバータ68は電圧をVCOM電圧に変更する。VCOM電圧はCOM電圧よりも高い。第2DC/DCコンバータ68は第2共通電極86に接続され、第2共通電極86にVCOM電圧を印加する。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。
【0064】
図14は、共通電極84及び第2共通電極86の略示平面図である。
図14において、第1ノズル列80a及び第2ノズル列80bの記載を省略する。第2共通電極86は1個の本流電極94と、複数の支流電極とを備える。本流電極94は帯状をなし、Y方向に延びる。本流電極94は、X方向において、共通電極84の本流電極90に対向するように、本流電極90から離れた位置に配置されている。本流電極94の一端部はVCOM電極に接続される。各支流電極95は帯状をなし、本流電極94からX方向に延びる。複数の支流電極95は、複数の支流電極91と交互になるように、Y方向に略等間隔を空けて並ぶ。
【0065】
本実施例においては、一例として、一つの本流電極94に6個の支流電極95が接続されている。支流電極95の数は6個に限定されない。以下、6個の支流電極95を、それぞれ、第1支流電極95(1)~第6支流電極95(6)と称する。第1支流電極95(1)~第6支流電極95(6)は、本流電極94の他端部(VCOM電極から最も遠い部分)から本流電極95の一端部(VCOM電極に最も近い部分)に向けて、順に並ぶ。
【0066】
例えば、
図14に示すように、本流電極94において、第1支流電極95(1)~第6支流電極95(6)の間の各領域を、第1領域94(1)~第5領域94(5)とし、第6支流電極95(6)と本流電極94の一端部との間の領域を、第6領域94(6)とする。また第1領域94(1)~第6領域94(6)の抵抗を、それぞれ、第7抵抗r7~第12抵抗をr12とする。
【0067】
図15は、本流電極90、94と、アクチュエータ88a~88fとの略示回路図である。アクチュエータ88a~88fの個別電極85に、第1電圧波形~第6電圧波形が入力し、
図14の矢印にて示すように、第1支流電極95(1)~第6支流電極95(6)に電流が流れ、第7抵抗r7~第12抵抗r12に電流が流れる。
【0068】
第7抵抗r7~第12抵抗r12は、第1抵抗r1~第6抵抗r6に対応する。そのため、実施の形態1と同様に、アクチュエータ88a~88fをΔt又はΔTずつ遅延させて駆動させることによって、第2共通電極86に流れる電流を相殺させて、第2共通電極86の発熱を抑制することができる。即ち、共通電極84及び第2共通電極86の両者の発熱を抑制することができる。
【0069】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 印刷装置
8 インクジェットヘッド
50 制御装置(制御部)
64 制御回路
80a 第1ノズル列
80b 第2ノズル列
83 圧電体
84 共通電極
85a 第1個別電極
85b 第2個別電極
86 第2共通電極
90、94 本流電極(第1電極、第4電極)
91、95 支流電極(第2電極、第3電極)