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特許7596789エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料用成形材料および繊維強化複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料用成形材料および繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/58 20060101AFI20241203BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20241203BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20241203BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C08G18/58
C08G18/79 070
C08G59/40
C08J5/24 CFC
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020567631
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044789
(87)【国際公開番号】W WO2021112111
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2019219271
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 徳多
(72)【発明者】
【氏名】高本 達也
(72)【発明者】
【氏名】富岡 伸之
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-083697(JP,A)
【文献】特開2011-190295(JP,A)
【文献】特開2011-111570(JP,A)
【文献】特開2016-056262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/58
C08G 18/79
C08G 59/40
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(D)を全て含み、エポキシ樹脂組成物の総質量100質量%中の成分(A)の含有量が50質量%以上95質量%以下であり、成分(C)の含有量Wcと成分(D)の含有量Wdとの比率Wc/Wdが0.1以上10以下であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):硬化剤
成分(C):N=C=Nの化学構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物
成分(D):連続する二重結合、脂環式構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物を除く、ポリイソシアネート化合物
【請求項2】
成分(C)の30℃における粘度が10mPa・s以上1000mPa・s以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
成分(C)が分子中に以下の化学構造を有する、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
=C=N
【請求項4】
成分(C)が直鎖構造である、請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
成分(D)が、1分子中にイソシアネート基を3個以上10個以下有するポリイソシアネート化合物である、請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
成分(C)と成分(D)のいずれもが芳香族イソシアネート化合物である、請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
さらに以下の成分(E)を含む、請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
成分(E):4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾール化合物、およびホスフィン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物
【請求項8】
反応開始温度が5℃以上80℃以下である、請求項1~7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
40℃で24時間保持して得られる樹脂増粘物の30℃における粘度が、100Pa・s以上30000Pa・s以下であり、かつ前記樹脂増粘物の130℃における粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下である、請求項1~8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
成分(A)が30℃で液状の水酸基含有エポキシ樹脂である、請求項1~9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
成分(B)がジシアンジアミドまたはその誘導体である、請求項1~10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物、および強化繊維を含む、繊維強化複合材料用成形材料。
【請求項13】
前記強化繊維が炭素繊維である、請求項12に記載の繊維強化複合材料用成形材料。
【請求項14】
請求項12または13に記載の繊維強化複合材料用成形材料が硬化されてなる繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空・宇宙用部材、自動車用部材等の繊維強化複合材料に好適に用いられるエポキシ樹脂組成物、およびそれを用いた繊維強化複合材料用成形材料ならびに繊維強化複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料は、その高い比強度・比弾性率を利用して、航空機や自動車の構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などのスポーツ用途・一般産業用途などに利用されてきた。強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維およびボロン繊維などが用いられる。また、マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂のいずれも用いられるが、耐熱性や生産性の観点から、熱硬化性樹脂が用いられることが多い。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂およびシアネート樹脂などが用いられる。中でも樹脂と強化繊維との接着性や寸法安定性、および得られる複合材料の強度や剛性といった力学特性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0003】
繊推強化複合材料の製造には、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング(RTM)法、プリプレグやトウプレグ、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコンパウンド(SMC)等の繊維強化複合材料用成形材料のプレス成形法等の方法が用いられる。これらの繊維強化複合材料用成形材料は強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させることにより製造される。BMCやSMCはさらに常温放置あるいは加熱処理によって樹脂組成物を増粘することにより製造される。かかる増粘技術としては、熱可塑性粒子あるいは熱可塑性樹脂をエポキシ樹脂に溶解あるいは膨潤させる技術や、エポキシ基とアミンや酸無水物とを反応させ架橋構造を形成させる技術、そしてイソシアネートと水酸基を反応させ系中でポリウレタンを形成させる技術が知られている。
【0004】
このような現状に対し、水酸基源として水酸基含有ビニルエステルと、事前に調製した低分子量ジオールと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。また、水酸基源として液状のビスフェノールA型エポキシとポリメリックMDIを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。さらに、事前に調製したポリエーテルポリオールとTDIとの反応で得られるウレタンプレポリマーを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-78445号公報
【文献】特願2010-517848号公報
【文献】特開2017-82128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの増粘技術を用いたエポキシ樹脂において、強化繊維への含浸性の観点から30℃での樹脂粘度が低い方が好ましい。一方で、増粘後の樹脂粘度は静置時に繊維から樹脂が漏れ出さないように十分な粘度を有していることが好ましい。また、樹脂の粘度が季節の気温に応じて変化し、特に冬場の0から10℃では樹脂の粘度が上昇し、賦形時に増粘後の樹脂を折り曲げた際に破断する場合がある。そのため、季節変動によらず良好な賦形性を維持するためには、増粘後の樹脂が低温でも十分に柔軟であることが必要である。
【0007】
さらに、上記のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる繊維強化複合材料用成形材料において、成形時には良好な流動性が要求される。また、上記の繊維強化複合材料用成形材料を用いて得られる繊維強化複合材料において、脱型時には形状が変形しないように十分な耐熱性や曲げ強度が必要である。
【0008】
前述の特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物によれば、脂肪族である低分子量ジオールからなるウレタンプレポリマーは30℃での粘度が高く、配合によって繊維強化複合材料の耐熱性が低下するものであった。この耐熱性低下を抑制するため、高粘度の水酸基含有ビニルエステルを多量に配合する必要があった。そのため、得られるエポキシ樹脂組成物の粘度は高く、強化繊維への含浸性が不十分であった。また、樹脂増粘物の10℃での粘度が高く、低温条件下での賦形性が不十分であった。得られる繊維強化複合材料の曲げ強度も低いものであった。
【0009】
前述の特許文献2に記載のエポキシ樹脂組成物によれば、ポリメリックMDIは1分子中にイソシアネート基を3個以上有しているため、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性には優れるものの、樹脂増粘物の10℃での粘度が高く、低温条件下での賦形性は不十分であった。そのため、得られる繊維強化複合材料用成形材料の賦形性が不十分であり、さらに成形時の流動性も不十分であった。
【0010】
前述の特許文献3に記載のエポキシ樹脂組成物によれば、事前に調製したポリエーテルポリオールとTDIとの反応で得られるウレタンプレポリマーは脂肪族からなる分子骨格が柔軟であり、得られるエポキシ樹脂組成物の樹脂増粘物の10℃での粘度が低いものの、硬化物の耐熱性が不十分であった。さらに、高分子量のウレタンプレポリマーを配合しているために、エポキシ樹脂組成物の樹脂粘度が高く、強化繊維への含浸性が不十分であった。さらに、得られる繊維強化複合材料の曲げ強度も低いものであった。
【0011】
このように、従来技術では、強化繊維への良好な含浸性を維持しつつ、繊維強化複合材料用成形材料の低温条件下での優れた賦形性を発現し、さらに得られた繊維強化複合材料の耐熱性および曲げ強度を発現することができる技術は存在しなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、強化繊維への含浸性に優れ、増粘後の低温条件下での賦形性に優れ、硬化後の耐熱性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供すること、さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、取扱時の賦形性とプレス成形時の流動性に優れる繊維強化複合材料用成形材料を提供すること、さらには、かかる繊維強化複合材料用成形材料を用いることで、耐熱性と曲げ強度に優れる繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため、本発明のエポキシ樹脂組成物は次の構成を有する。すなわち、
以下の成分(A)~(D)を全て含み、エポキシ樹脂組成物の総質量100質量%中の成分(A)の含有量が30質量%以上95質量%以下であり、成分(C)の含有量Wcと成分(D)の含有量Wdとの比率Wc/Wdが0.01以上10以下であるエポキシ樹脂組成物。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):硬化剤
成分(C):連続する二重結合、脂環式構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物
成分(D):成分(C)を除く、ポリイソシアネート化合物
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強化繊維への含浸性に優れ、増粘後の低温条件下での賦形性および硬化後の耐熱性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供すること、さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、取扱時の賦形性とプレス成形時の流動性に優れる繊維強化複合材料用成形材料を提供すること、さらには、かかる繊維強化複合材料用成形材料を用いることで、耐熱性と力学特性に優れる繊維強化複合材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、説明する。まず、本発明にかかるエポキシ樹脂組成物について説明する。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下の成分(A)~(D)を全て含み、エポキシ樹脂組成物の総質量100質量%中の成分(A)の含有量が30質量%以上95質量%以下であり、成分(C)の含有量Wcと成分(D)の含有量Wdとの比率Wc/Wdが0.01以上10以下である。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):硬化剤
成分(C):連続する二重結合、脂環式構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物
成分(D):成分(C)を除く、ポリイソシアネート化合物。
【0017】
本発明における成分(A)のエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1つ以上含む化合物であれば特に限定されない。成分(A)の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、あるいはこれらを変性したエポキシ樹脂等が挙げられる。さらに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンやトリス(グリシジルオキシメタン)のようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びこれらを変性したエポキシ樹脂やこれらのエポキシ樹脂をブロム化したブロム化エポキシ樹脂、脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定はされない。脂肪族アルコールとしては、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、2-エチルヘキサノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。成分(A)として、これらエポキシ樹脂を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(A)が30℃で液状の水酸基含有エポキシ樹脂であることが好ましい。かかるエポキシ樹脂であることにより、低温条件下での賦形性がより良好で優れた流動特性を示す繊維強化複合材料用成形材料が得られやすくなる。
【0019】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”825、“jER(登録商標)”826、“jER(登録商標)”827、“jER(登録商標)”828、“jER(登録商標)”834、“jER(登録商標)”1001、“jER(登録商標)”1002、“jER(登録商標)”1003、“jER(登録商標)”1004、“jER(登録商標)”1004AF、“jER(登録商標)”1007、“jER(登録商標)”1009(以上三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン(登録商標)”850(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YD-128(新日鐵住金化学(株)製)、“DER(登録商標)”-331、“DER(登録商標)”-332(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
【0020】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”806、“jER(登録商標)”807、“jER(登録商標)”1750、“jER(登録商標)”4004P、“jER(登録商標)”4007P、“jER(登録商標)”4009P(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン(登録商標)”830(DIC(株)製)、“エポトート(登録商標)”YDF-170、“エポトート(登録商標)”YDF2001、“エポトート(登録商標)”YDF2004(以上、新日鉄住金化学(株))などが挙げられる。また、アルキル置換体であるテトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、“エポトート(登録商標)”YSLV-80XY(新日鉄住金化学(株))などが挙げられる。
【0021】
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、“エピクロン(登録商標)”EXA-1515(DIC(株)製)などが挙げられる。
【0022】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては“jER(登録商標)”152、“jER(登録商標)”154(以上、三菱ケミカル(株)製)、“エピクロン(登録商標)”N-740、“エピクロン(登録商標)”N-770、“エピクロン(登録商標)”N-775(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。
【0023】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、“エピクロン(登録商標)”N-660、“エピクロン(登録商標)”N-665、“エピクロン(登録商標)”N-670、“エピクロン(登録商標)”N-673、“エピクロン(登録商標)”N-695(以上、DIC(株)製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0024】
脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルの市販品としては、“デナコール(登録商標)”EX-321、“デナコール(登録商標)”EX-313、“デナコール(登録商標)”EX-314、“デナコール(登録商標)”EX-411、“デナコール(登録商標)”EX-412、“デナコール(登録商標)”EX-512、“デナコール(登録商標)”EX-521、“デナコール(登録商標)”EX-612、デナコール(登録商標)”EX-614、“デナコール(登録商標)”EX-614B(以上、ナガセケムテックス(株)製)、“エピオール(登録商標)”G-100(日油(株)製)、SR-GLG、SR-DGE、SR-TMP、SR-SEP、SR-4GL(以上、阪本薬品工業(株)製)などが挙げられる。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の総質量100質量%中の成分(A)の含有量は30質量%以上95質量%以下である。成分(A)の含有量が30質量%以上の場合は、十分な耐熱性が発現できる。また、成分(A)の含有量が95質量%以下であれば十分な曲げ強度向上の効果が得られる。成分(A)の含有量は、50質量%以上90質量%以下であることが、より好ましい。
【0026】
本発明における成分(B)の硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させ得るものである限り、特に限定されるものではないが、アミン系、フェノール系、酸無水物系、メルカプタン系、イミダゾール類、3級アミン、有機リン化合物、ウレア化合物、アンモニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられる。アミン系の硬化剤は、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、脂肪族アミン、アミノ安息香酸エステル類、チオ尿素付加アミン、ヒドラジドなどを例示できる。フェノール系の硬化剤は、ビスフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物などを例示できる。酸無水物系の硬化剤は、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、カルボン酸無水物などを例示できる。メルカプタン系の硬化剤は、ポリメルカプタン、ポリスルフィド樹脂などを例示できる。例示したものの中でも、アミン系硬化剤が好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(B)がジシアンジアミドまたはその誘導体であることが特に好ましい。ジシアンジアミドは、樹脂硬化物に高い曲げ強度や耐熱性を与えやすい。また、エポキシ樹脂組成物の保存安定性に優れやすい。また、ジシアンジアミドの誘導体とは、ジシアンジアミドと各種化合物を結合させて得られる化合物を意味し、ジシアンジアミドと同様に、樹脂硬化物に高い曲げ強度や耐熱性を与えやすい点で優れており、エポキシ樹脂組成物の保存安定性にも優れる。ジシアンジアミドの誘導体としては、例えばジシアンジアミドと、エポキシ樹脂やビニル化合物、アクリル化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド等の各種化合物を結合させたものなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジシアンジアミドと併用してもよい。ジシアンジアミドの市販品としては、“jERキュア(登録商標)”DICY7、DICY15(以上、三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0028】
本発明における成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、8質量部以上50質量部以下である。成分(B)の含有量が1質量部以上の場合は十分な硬化性向上の効果が得られやすくなる。また、成分(B)の含有量が50質量部以下の場合は、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上しやすくなる。
【0029】
本発明における成分(C)は、連続する二重結合構造、脂環式構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物あれば特に限定されない。ここで、連続する二重結合構造とは、例えば、アレン構造やカルボジイミド構造、アジ構造等が挙げられる。脂環式構造とは、脂肪鎖からなる環状の化学構造であり、例えば、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が挙げられる。複素環構造とは、環の中に少なくとも2種類の異なる元素を含む環状の化学構造であり、例えば、ウレトジオン環、イソシアヌレート環、ウレトンイミン環等が挙げられる。成分(C)がこれらの連続する二重結合構造、脂環式構造または複素環構造を有する場合は、活性水素またはエポキシ基との反応性の高い官能基あるいは剛直性の高い構造であるため、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物が高い耐熱性を発現する。
【0030】
成分(C)のジイソシアネート化合物は、例えば、連続する二重結合構造を有するジイソシアネート化合物として、ジイソシアネート化合物のカルボジイミドで変性した化合物が挙げられ、このジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、アラルキルジイソシアネート、これらの混合物を挙げることができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、1-メトキシベンゼン-2,4-ジイソシアネート(MBDI)、メタキシレンジイソシアネート(MXDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12-ジイソシアネートドデカン(DDI)、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-ビス(8-イソシアナートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルケトン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
脂環式構造を有するジイソシアネート化合物としては、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-ビス(8-イソシアナートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。
【0032】
複素環構造を有するジイソシアネート化合物としては、例えば、ジイソシアネート化合物の2量体や3量体が挙げられ、このジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、アラルキルジイソシアネート、これらの混合物を挙げることができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、1-メトキシベンゼン-2,4-ジイソシアネート(MBDI)、メタキシレンジイソシアネート(MXDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12-ジイソシアネートドデカン(DDI)、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-ビス(8-イソシアナートオクチル)-1,3-ジオクチルシクロブタン(OCDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルケトン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。成分(C)として、これらのジイソシアネート化合物を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0033】
成分(C)の市販品としては、連続する二重結合構造を有するジイソシアネートとして、“ミリオネート(登録商標)”MTL、“コスモネート(登録商標)”LL、“コスモネート(登録商標)”LK、“コスモネート(登録商標)”LT、“コスモネート(登録商標)”LI(以上、三井化学(株)製)、“ルプラネート(登録商標)”MM-103(BASF INOAC ポリウレタン(株)製)等が挙げられる。また、脂環式構造を有するジイソシアネート化合物として、“デスモジュール(登録商標)”I、“デスモジュール(登録商標)”W(以上、住化コベストロウレタン(株)製)“タケネート(登録商標)”600、“NBID(登録商標)”ノルボルナンジシソシアネート(以上、三井化学(株)製)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート(異性体混合物)(東京化成工業(株)製)等が挙げられる。複素環構造を有するジイソシアネート化合物として、“デスモジュール(登録商標)”N3400(住化コベストロウレタン(株)製)等が挙げられる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)が分子中に以下の化学構造を有することが好ましい。
【0035】
C=C=C または N=C=N。
【0036】
上記化学構造において、=は二重結合、―は共有結合を示し、Cは炭素原子、Nは窒素原子である。かかる化学構造を有することにより、成分(C)は骨格の剛直性に優れ、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)が直鎖構造であることがより好ましい。ここで、直鎖構造とは炭素原子が枝分かれせずに連なっている構造である。成分(C)が直鎖構造であることにより、低温条件下にてより優れた賦形性を有することができる。
【0038】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)が芳香族イソシアネート化合物であることもより好ましい。成分(C)が芳香族イソシアネート化合物であることにより、より優れた硬化物の耐熱性が得られやすくなる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)の30℃における粘度が10mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上600mPa・s以下であることがより好ましく、10mPa・s以上300mPa・s以下であることがさらに好ましい。ここで、粘度は、E型粘度計で測定される。30℃における粘度を10mPa・s以上とした場合は、樹脂含浸時の粘度が低くなりすぎず、それにより樹脂が強化繊維外部へ流れ出ることなく、均一に強化繊維基材に含浸しやすく、30℃における粘度を1000mPa・s以下とした場合は強化繊維への含浸性が優れ、それにより高品位な繊維強化複合材料が得られる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成分(D)として、成分(C)を除く、ポリイソシアネート化合物を含む。
【0041】
成分(D)の例としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、1-メトキシベンゼン-2,4-ジイソシアネート(MBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシレンジイソシアネート(MXDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、1,12-ジイソシアネートドデカン(DDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルケトン-4,4’-ジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、これらをメチレン基等で連結した構造を有するもの等が挙げられる。なお、これらのポリイソシアネート化合物等を単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(D)が、1分子中にイソシアネート基を3個以上10個以下有するポリイソシアネート化合物であることがより好ましい。1分子中にイソシアネート基を3個以上有することにより、得られるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料用成形材料の流動性が向上するため好ましい。また、1分子中にイソシアネート基を10個以下有することにより、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物に高い耐熱性が発現するため好ましい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(D)が芳香族イソシアネート化合物であることが好ましい。成分(D)が芳香族イソシアネート化合物であることにより、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物がより高い耐熱性を発現しやすくなる。
【0044】
成分(D)の市販品としては、 “デュラネート(登録商標)”D101、“デュラネート(登録商標)”D201(以上、旭化成(株)製)、“ルプラネート(登録商標)”MS、“ルプラネート(登録商標)”MI、“ルプラネート(登録商標)”M20S、“ルプラネート(登録商標)”M11S、“ルプラネート(登録商標)”M5S、 “ルプラネート(登録商標)”T-80、“ルプラネート(登録商標)”MP-102、“ルプラネート(登録商標)”MB-301(以上、BASF INOAC ポリウレタン(株)製)、 HDI、“ミリオネート(登録商標)”MR-100、“ミリオネート(登録商標)”MR-200、“ミリオネート(登録商標)”MR-400、“コロネート(登録商標)”T-80、“コロネート(登録商標)”T-65、“コロネート(登録商標)”T-100(以上、東ソー(株)製)、“コスモネート(登録商標)”PH、“コスモネート(登録商標)”T-80、“タケネート(登録商標)”500(以上、三井化学(株)製)、“スミジュール(登録商標)”N3300(住化コベストロウレタン(株)製)等が挙げられる。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)の含有量Wcと成分(D)の含有量Wdとの比率Wc/Wdは0.01以上10以下である。Wc/Wdが0.01以上の場合、得られるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料用成形材料がより高い流動性を発現する。また、Wc/Wdが10以下の場合、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物がより高い耐熱性を発現しやすくなる。Wc/Wdは0.1以上10以下であることが好ましい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、成分(C)と成分(D)のいずれもが芳香族イソシアネート化合物であることがより好ましい。成分(C)と成分(D)のいずれもが芳香族イソシアネート化合物であることにより、より高い硬化物の耐熱性が得られやすくなる。
【0047】
本発明における成分(C)および成分(D)のイソシアネート基量の合計は、成分(A)の水酸基量に対して、0.8当量以上1.8当量以下であることが好ましい。より好ましくは1.0当量以上1.7当量以下である。成分(A)の水酸基量に対して、成分(C)および成分(D)のイソシアネート基量の合計が0.8当量以上である場合は樹脂増粘物の粘度が向上しやすくなるため好ましい。また、1.8当量以下である場合は、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物により高い耐熱性が発現するため、好ましい。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに以下の成分(E)を含むことが好ましい。
成分(E):4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾール化合物、およびホスフィン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物。
【0049】
成分(E)の例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩、アリルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ジアリルジフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムクロライド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムヨーダイド等のホスホニウム塩、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。また、これらの成分(E)は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも4級アンモニウム塩及び/又は、ホスフィン化合物は、硬化時間を大きく短縮できるため、成分(E)として好ましい。
【0050】
本発明における成分(E)は、成分(A)100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下含むことが好ましい。成分(A)100質量部に対して、成分(E)が1質量部以上の場合は、十分な硬化性向上の効果が得られるため好ましく、15質量部以下の場合は、耐熱性の低下を招くことなく、十分な硬化性向上の効果が得られるために好ましい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、調製直後にE型粘度計で測定した30℃における粘度が0.01Pa・s以上5Pa・s以下であることが好ましく、0.01Pa・s以上2Pa・s以下であることがより好ましい。30℃における粘度が5Pa・s以下であることにより、強化繊維への含浸性が優れやすい。また、30℃における粘度が0.01Pa・s以上であることにより、樹脂含浸時の粘度が低くなりすぎず、樹脂が外部へ流れ出にくく、均一に強化繊維に含浸しやすい。なお、調製直後とは、各成分を混合し、1分間攪拌した時点を指す。また、調製直後の粘度とは、各成分を混合し、1分間攪拌後のエポキシ樹脂組成物の粘度を測定したものをいう。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、反応開始温度が5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下、20℃以上50℃以下であることがより好ましい。反応開始温度が5℃以上であれば、調製直後の急激な増粘を抑制しやすくなる。また、80℃以下であれば、高温による副次的な反応を抑制しやすくなり、より優れた賦形性を発現する。ここで、反応開始温度は、調製直後に示差式熱量計を用いて後述の方法により測定される。
【0053】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、40℃で24時間保持して得られる樹脂増粘物の30℃における粘度が100Pa・s以上30000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以上10000Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以上5000Pa・s以下であることがさらに好ましい。樹脂増粘物の30℃における粘度が100Pa・s以上であれば、エポキシ樹脂組成物を用いた成形材料としたときの樹脂垂れを抑制しやすくなる。また、30000Pa・s以下であれば、エポキシ樹脂組成物を用いた成形材料が低温でも破断することなく賦形しやすくなる。
【0054】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物は、樹脂増粘物の130℃における粘度が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以上100Pa・s以下であることがより好ましい。樹脂増粘物の130℃における粘度が1Pa・s以上であれば、エポキシ樹脂組成物を用いた成形材料をプレス成形するときに、樹脂リッチ部が形成されにくい。また、100Pa・s以下であれば、エポキシ樹脂組成物を用いた成形材料をプレス成形するときに、複雑な形状であっても基材が端部まで欠肉することなく成形できる。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して得られる繊維強化複合材料の耐熱性は、エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のガラス転移温度に依存する。高い耐熱性を有した繊維強化複合材料を得るためには、例えば140℃の温度下で2時間加熱し完全硬化してなる樹脂硬化物のガラス転移温度が120℃以上250℃以下の範囲にあることが好ましく、130℃以上220℃以下であればさらに好ましい。ガラス転移温度が120℃以上であれば、エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物に高い耐熱性が付与される。ガラス転移温度が250℃以下であれば、エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の3次元架橋構造の架橋密度が高くなりすぎず、高い力学特性が発現される。ここで、エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いた測定により求められる。すなわち、樹脂硬化板から切り出した矩形の試験片を用いて、昇温下DMA測定を行い、得られた貯蔵弾性率G’の変曲点の温度をTgとする。測定条件は、実施例に記したとおりである。
【0056】
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の力学特性は、エポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物の力学特性に依存する。高い力学特性を有した繊維強化複合材料を得るためには、例えば140℃の温度下で2時間加熱し完全硬化してなる樹脂硬化物の曲げ強度が110MPa以上、より好ましくは120MPa以上であることが好ましい。樹脂硬化物の曲げ強度が110MPa以上であれば、本発明におけるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料が外部から強力な応力を受ける環境下あっても、破断したり変形したりすることない優れた部材として使用可能となる。
【0057】
本発明の繊維強化複合材料用成形材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物、および強化繊維を含む。本発明の繊維強化複合材料用成形材料は、本発明のエポキシ樹脂、および強化繊維からなることが好ましい。
【0058】
本発明の繊維強化複合材料用成形材料としては、強化繊維の種類や長さ、強化繊維と樹脂の含有比率等は、特に限定されない。
【0059】
強化繊維の形態として、連続するものを使用する場合は、例えば、一方向に引き揃えられた長繊維、単一のトウ、織物、ニットおよび組紐などの繊維構造物が例示される。強化繊維の平均繊維径は3μm以上12μm以下、強化繊維質量分率が40%以下90%以下の範囲にあるものが好適に使用される。強化繊維質量分率が40%以上であれば、得られる繊維強化複合材料の質量が過大とならず、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点を十分に発揮しやすくなる。また、強化繊維質量分率が90%以下であれば、エポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸性に優れやすくなる。かかる連続繊維を用いて得られる繊維強化複合材料としては、プリプレグやトウプレグ等が例示される。
【0060】
強化繊維の形態として、不連続繊維を使用する場合は、例えば不織布、マットなどの繊維構造物が例示され、強化繊維の繊維長は5mm以上100mm以下、平均繊維径は3μm以上12μm以下、強化繊維質量分率が40%以上90%以下の範囲にあるものが好適に使用される。強化繊維質量分率が40%以上であれば、得られる繊維強化複合材料の質量が過大とならず、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点を十分に発揮しやすくなる。また、強化繊維質量分率が90%以下であれば、エポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸性に優れやすくなる。かかる不連続繊維を用いて得られる繊維強化複合材料用成形材料としては、BMCやSMC等が例示される。これらのうち、生産性や成形体の形状自由度といった観点で、特にSMCが好適に用いられる。
【0061】
かかる不連続繊維の束状集合体の形態としては、特に限定されることはなく、各種技術が適用可能である。前記束状集合体は、その強化繊維の配列方向に直角な方向の幅が最大となる面において、前記強化繊維の配列方向に対して、前記束状集合体中の強化繊維の両側の端部の配列が形成する辺がとる鋭角の角度を、それぞれ角度aおよび角度bとすると、角度aおよび角度bのそれぞれが2°以上30°以下であることが好ましい。束状集合体中の強化繊維の端部の配列が形成する辺の強化繊維の配列方向に対する角度aおよび角度bは、小さいほど、束状集合体と樹脂の均質性が高いSMCとなるため、これを用いて成形される繊維強化複合材料において表面品位及び強度向上の効果が大きい。角度aおよび角度bが30°以下の場合、その効果が著しい。しかし、一方において、角度aおよび角度bは、小さくなるほど、束状集合体自体の取り扱い性は、低下する。また、強化繊維の配列方向と切断する刃との角度が小さければ小さいほど、切断工程における安定性が低下する。そのため、角度aおよび角度bは2°以上であることが好ましい。角度aおよび角度bは、3°以上25°以下であることがより好ましい。繊維強化複合材料の表面品位および強度向上効果と束状集合体の製造工程におけるプロセス性と兼ね合いから、角度aおよび角度bは、5°以上15°以下であることがさらに好ましい。
【0062】
不連続の強化繊維の束状集合体を製造するための連続強化繊維束の切断手段としては、例えば、ギロチンカッター、ロービングカッター等のロータリーカッターがある。連続強化繊維束は、連続強化繊維束の長手方向と切断手段に装備されている切断刃の方向とが相対的に斜行する状態において、切断手段に挿入され、切断される。
【0063】
本発明の繊維強化複合材料用成形材料を製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維の形態に合った方法により強化繊維に含浸させた後、室温~80℃程度の温度に数時間~数日間保持することにより、樹脂組成物の粘度上昇が飽和した半硬化状態とすることで、本発明の繊維強化複合材料用成形材料を得ることができる。ここで、樹脂組成物の粘度上昇が飽和した半硬化状態とすることを樹脂増粘物という。本発明の評価においては、エポキシ樹脂組成物を40℃で24時間保持することにより樹脂組成物の粘度上昇を飽和させ半硬化状態とする増粘条件を採るものとする。
【0064】
強化繊維としては特に限定されないが、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が例示される。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わない。より軽量で、より耐久性の高い成形品が得られやすい点から、強化繊維が炭素繊維や黒鉛繊維であることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においても、優れた比弾性率と比強度が得られやすい点から、強化繊維が炭素繊維であることが好ましい。
【0065】
炭素繊維としては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性の点から、高くとも400GPaの引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られやすいことから、引張強度が4.4GPa以上6.5GPa以下の炭素繊維であることが好ましい。また、引張伸度が1.7%以上2.3%以下の炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPaであり、引張強度が少なくとも4.4GPaであり、引張伸度が少なくとも1.7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
【0066】
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G-24K、“トレカ(登録商標)”T800S-24K、“トレカ(登録商標)”T700G-24K、“トレカ(登録商標)”T300-3K、および“トレカ(登録商標)”T700S-12K(以上、東レ(株)製)等が例示される
本発明にかかるエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の製造方法としては、特に限定されるものではないが、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング(RTM)法、プリプレグのオートクレーブ成形法、さらには、プリプレグやトウプレグ、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコンパウンド(SMC)等の繊維強化複合材料用成形材料のプレス成形法が好適に用いられる。
【0067】
本発明の繊維強化複合材料は、本発明の繊維強化複合材料用成形材料が硬化されてなる。このような繊維強化複合材料において、特に航空機分野および自動車分野で用いられる繊維強化複合材料の場合には、高い耐熱性や曲げ強度等の力学特性等が要求される。本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度を通常、120℃以上250℃以下、エポキシ樹脂硬化物の曲げ強度を110MPa以上とすることができるため、耐熱性および力学特性に優れる。また、本発明の繊維強化複合材料用成形材料は、プレス成形時に樹脂のみが先行して流動することなく、成形温度によらず優れた流動性を発現し、繊維と樹脂の均質性が非常に高い繊維強化複合材料が得られる。
【0068】
本発明の繊維強化複合材料を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング(RTM)法、プリプレグのオートクレーブ成形法、さらには、プリプレグやトウプレグ、バルクモールディングコンパウンド(BMC)、シートモールディングコンパウンド(SMC)等の繊維強化複合材料用成形材料のプレス成形法が好適に用いられる。
【実施例
【0069】
以下、実施例により、本発明のエポキシ樹脂組成物、および繊維強化複合材料用成形材料、繊維強化複合材料についてさらに詳細に説明する。
【0070】
<樹脂原料>
各実施例、比較例のエポキシ樹脂組成物を得るために、以下の樹脂原料を用いた。なお、表中のエポキシ樹脂組成物の欄における各成分の数値は含有量を示し、その単位(「部」)は、特に断らない限り「質量部」である。
【0071】
1.成分(A):エポキシ樹脂
・“エポトート(登録商標)”YD128(新日鉄住金化学(株)製):液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水酸基当量:1250g/mol)
・“jER(登録商標)”154(三菱ケミカル(株)製):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(水酸基なし)
・“jER(登録商標)”1001(三菱ケミカル(株)製):固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(水酸基当量:313g/mol)
・SR-DGE(阪本薬品工業(株)製):ジグリセロール型エポキシ(水酸基当量:435g/mol)
・“デナコール(登録商標)”EX-614(ナガセケムテックス(株)製):ソルビトール型エポキシ樹脂(水酸基当量:229g/mol)。
【0072】
2.成分(B):硬化剤
・“jERキュア(登録商標)”DICY7(三菱ケミカル(株)製):ジシアンジアミド 。
【0073】
3.成分(C):連続する二重結合、脂環式構造または複素環構造を有するジイソシアネート化合物
・“デスモジュール(登録商標)”N3400(住化コベストロウレタン(株)製):HDIウレトジオン
・“デスモジュール(登録商標)”I(住化コベストロウレタン(株)製):イソホロンジイソシアネート
・“デスモジュール(登録商標)”W(住化コベストロウレタン(株)製):ジシクロヘキシルメタン-4,4’- ジイソシアネート
・“ルプラネート(登録商標)”MM-103(BASF INOAC ポリウレタン(株)製):カルボジイミド変性MDI。
【0074】
4.成分(D):成分(C)を除く、ポリイソシアネート化合物
・“スミジュール(登録商標)”N3300(住化コベストロウレタン(株)製):HDIイソシアネート
・“ルプラネート(登録商標)”M20S(BASF INOAC ポリウレタン(株)製):ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)
・“ルプラネート(登録商標)”MI(BASF INOAC ポリウレタン(株)製):モノメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)
・“ルプラネート(登録商標)”MP102(BASF INOAC ポリウレタン(株)製):ウレタン変性MDI
・“コロネート(登録商標)”T-100(東ソー(株)製):TDI。
【0075】
5. 成分(E):4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾール化合物、およびホスフィン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物
・テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業(株)製)
・テトラフェニルホスホニウムブロミド (東京化成工業(株)製)。
【0076】
<エポキシ樹脂組成物の調製>
表に記載した含有量(質量部)で各成分を混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0077】
<調製直後のエポキシ樹脂組成物の粘度の測定>
測定すべき検体を、JIS Z8803(1991)における「円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装着したE型粘度計を使用して、30℃に保持した状態で測定した。E型粘度計としては、(株)トキメック製TVE-30Hを用いた。なお、検体としては、調製直後のエポキシ樹脂組成物を用いた。
【0078】
<調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度の測定>
測定すべき検体を用い、TA社製示差式熱量計DSC25を使用し、20℃から130℃の温度領域において、10℃間隔で温度を変更し、各温度で一定に保持した際のエポキシ樹脂組成物の発熱量の変化を測定した。得られた発熱曲線において、発熱量が最大となる時間が5分以内となった温度のうち、最も低い温度を反応開始温度とした。
【0079】
<増粘後のエポキシ樹脂組成物の10℃での賦形性の測定>
測定すべき検体を、ハット形状の金型に手で賦形した後、5分間放置した。この際に、5分より長時間金型から剥離なく形態を維持した状態のものを「A」、1分以上5分以下金型から剥離なく形態を維持した状態のものを「B」、金型から剥離なく1分未満形態を保持したもの、あるいは検体が破断したもの、あるいは検体の形状が保持できなかったものを「C」とした。ここでハット形状は全長300mm、全高40mm、天面幅40mm、フランジ幅22mm、曲率部半径15mmのアルミ製金型を用いた。
【0080】
<増粘後のエポキシ樹脂組成物の粘度測定>
測定すべき検体を、DMA(TAインスツルメンツ社製ARES)を使用して、30℃に加熱したステージにサンプルを投入し、10℃/分で昇温し、粘度を測定した。なお、検体としては、各成分を混合したエポキシ樹脂組成物を40℃で24時間保持したものを用いた。例えば、30℃の粘度は検体が30℃に達した際の粘度であり、同様にして各温度における粘度を測定した。
【0081】
<樹脂硬化物の作製>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製>で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。140℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。
【0082】
<樹脂硬化物のガラス転移温度Tg測定>
樹脂硬化物から幅12.7mm、長さ40mmの試験片を切り出し、DMA(TAインスツルメンツ社製ARES)を用いてTg測定を行った。測定条件は、昇温速度5℃/分である。測定で得られた貯蔵弾性率G’の変曲点での温度をTgとした。
【0083】
<樹脂硬化物の曲げ強度測定>
前記のようにして得られた樹脂硬化物の曲げ強度を、JIS K7074:1988に従って測定した。幅15mm、長さ100mmとなるように切り出した試験片を、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、3点曲げ試験により測定した。クロスヘッド速度5mm/分、スパン80mm、厚子径5mm、支点径2mmで測定を行い、曲げ強度を測定した。曲げ強度は、5個の試料について測定した換算値を算出して、その平均を曲げ強度として求めた。
【0084】
<SMCの作製>
炭素繊維として、“トレカ(登録商標)”T700S-12K(東レ(株)製)を使用した。前記連続炭素繊維ストランドを所望の角度で切断して炭素繊維の束状集合体を均一分散するように散布することにより、繊維配向が等方的である不連続炭素繊維不織布を得た。切断装置にはロータリー式カッターを用いた。刃の間隔は30mmとした。また、不連続炭素繊維不織布の目付は1kg/mであった。不連続炭素繊維不織布を、得られるSMCの炭素繊維重量含有率が50%となるように、上記エポキシ樹脂組成物が塗布されたポリエチレンフィルムで挟み込み、ローラーで押圧し、上記エポキシ樹脂組成物を含浸させることによりシート状のSMC前駆体を得た。このSMC前駆体を40℃で24時間保持し、樹脂を増粘させることで、SMCを得た。
【0085】
<SMCの10℃での賦形性の測定>
測定すべき検体を、ハット形状の金型に手で賦形した後、5分間放置した。この際に、5分より長時間金型から剥離なく形態を維持した状態のものを「A」、1分以上5分以下金型から剥離なく形態を維持した状態のものを「B」、金型から剥離なく1分未満形態を保持したもの、あるいは検体が破断したもの、あるいは検体の形状が保持できなかったものを「C」とした。ここでハット形状は全長300mm、全高40mm、天面幅40mm、フランジ幅22mm、曲率部半径15mmのアルミ製金型を用いた。
【0086】
(実施例1、2、参考例3、4、実施例5~18)
表1に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)で、上記した樹脂組成物の調製にしたがって樹脂組成物を作製し、反応開始温度および30℃における粘度を測定した。また、それぞれのエポキシ樹脂組成物を40℃で24時間保持し増粘させた後、30℃および130℃における粘度をそれぞれ測定し、10℃条件下にて賦形性を測定した。さらに増粘前のエポキシ樹脂組成物を用いて、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製した。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は80℃以下であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。また、増粘後の30℃における粘度は100Pa・s以上であり、130℃における粘度は1Pa・s以上100Pa・s以下であり、10℃条件下での賦形性はB以上であり、低温条件下での賦形性に優れるものであった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgは120℃以上、曲げ強度は110MPa以上であった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はB以上であった。
【0087】
(比較例1)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は100℃と不良であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。しかし、増粘後の30℃における粘度は120Pa・sと良好であったが、130℃における粘度は0.3Pa・sと不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが115℃と不良であり、曲げ強度は108MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0088】
(比較例2)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は90℃と不良であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。しかし、増粘後の30℃における粘度は1590Pa・sと良好であったが、130℃における粘度は0.7Pa・sと不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが110℃と不良であり、曲げ強度は107MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0089】
(比較例3)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は90℃と不良であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。しかし、増粘後の30℃における粘度は0.4Pa・s、130℃における粘度は0.02Pa・sとともに不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが106℃と不良であり、曲げ強度は80MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0090】
(比較例4)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は130℃と不良であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以上と不良であった。加えて、増粘後の30℃における粘度は2Pa・s、130℃における粘度は0.01Pa・sとともに不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが80℃と不良であり、曲げ強度は87MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0091】
(比較例5)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は80℃と良好であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。加えて、増粘後の30℃における粘度は140Pa・sと良好であったが、130℃における粘度は0.4Pa・sとともに不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが117℃と不良であり、曲げ強度は109MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0092】
(比較例6)
表2に記載した各成分の種類及び含有量(質量部)とする以外は、実施例1~18と同様にして樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物およびSMCを作製し、各種測定を行った。調製直後のエポキシ樹脂組成物の反応開始温度は100℃と不良であり、30℃における粘度は5.0Pa・s以下であった。加えて、増粘後の30℃における粘度は80Pa・s、130℃における粘度は0.1Pa・sとともに不良であり、10℃条件下での賦形性はCであり、低温条件下での賦形性が不良であった。さらに、かかるエポキシ樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物のTgが108℃と不良であり、曲げ強度は100MPaと力学特性に劣るものであった。また、かかるエポキシ樹脂組成物を用いたSMCの10℃条件下での賦形性はCであった。
【0093】
【表1-1】
【0094】
【表1-2】
【0095】
【表1-3】
【0096】
【表2】