(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】燃料タンク、燃料タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
B62J35/00 A
(21)【出願番号】P 2021000165
(22)【出願日】2021-01-04
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】徳永 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】▲瀬▼崎 直幸
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-098886(JP,A)
【文献】特開平05-016856(JP,A)
【文献】特開昭59-026380(JP,A)
【文献】特開2019-064392(JP,A)
【文献】登録実用新案第3020853(JP,U)
【文献】特開2001-114168(JP,A)
【文献】特開2018-024310(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01466823(EP,A1)
【文献】中国実用新案第201890313(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク外殻を形成するアウターパネル
と、前記アウターパネルとは別体に形成されたインレットプレート
と、前記インレットプレートからタンク内に延びるアウターパイプと、を有するアウター部品と、
タンク内殻を形成するインナーパネル
と、前記インナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレート
と、前記インナー接続プレートを貫通するインナーパイプと、を有するインナー部品と、
前記アウターパネル及び前記インナーパネルの内側を通り、前記インレットプレート及び前記インナー接続プレートを接続する配管と、を備え、
前記アウターパネルに前記インレットプレートが接合され、前記インナーパネルに前記インナー接続プレートが接合され、前記アウターパネルに前記インナーパネルが接合され
、
前記アウターパイプ及び前記インナーパイプに前記配管が接続され、前記インレットプレートに前記アウターパイプが接合され、前記インナー接続プレートに前記インナーパイプが接合され、
前記アウター部品及び前記インナー部品が、無酸素環境下又は低酸素環境下での接合が必要なチタン製又はチタン合金製であることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記インナーパネルには前記インナー接続プレートの外周縁に沿った開口が形成され、前記インナー接続プレートの外周縁が前記開口からタンク外に突き出しており、
前記インナーパネルの開口縁がタンク外に張り出して、当該インナーパネルの開口縁に前記インナー接続プレートの外周縁が接合されていることを特徴とする
請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記インナー接続プレートに正対した状態で、前記インナーパイプからタンク外に突き出した端部が、前記インナー接続プレートの外周縁よりも内側に位置していることを特徴とする
請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項4】
タンク外殻を形成するアウターパネルに、前記アウターパネルとは別体に形成されたインレットプレートを接合してアウター部品を製造するステップと、
タンク内殻を形成するインナーパネルに、前記インナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレートを接合してインナー部品を製造するステップと、
タンク内を通る配管で前記インレットプレート及び前記インナー接続プレートを接続し、前記アウターパネル及び前記インナーパネルを接合して一体化するステップと、
前記インナーパネルに接合された前記アウターパネルの表面にショット処理を実施して、当該アウターパネルの表面を粗面化するステップと、を有し
、
前記アウター部品を製造するステップが、前記インレットプレートにアウターパイプを炉中ロウ付けするサブステップと、前記アウターパネルに前記インレットプレートをTIG溶接するサブステップと、を含み、
前記インナー部品を製造するステップが、前記インナー接続プレートにインナーパイプを炉中ロウ付けするサブステップと、前記インナーパネルに前記インナー接続プレートをTIG溶接するサブステップと、を含み、
前記一体化するステップが、前記アウターパイプ及び前記インナーパイプを前記配管で接続するサブステップと、前記アウターパネル及び前記インナーパネルをシーム溶接するサブステップと、を含み、
前記アウター部品及び前記インナー部品が、無酸素環境下又は低酸素環境下での接合が必要なチタン製又はチタン合金製であることを特徴とする燃料タンクの製造方法。
【請求項5】
タンク外殻を形成するアウターパネル及び前記アウターパネルとは別体に形成されたインレットプレートを有するアウター部品と、
タンク内殻を形成するインナーパネル及び前記インナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレートを有するインナー部品と、
前記アウターパネル及び前記インナーパネルの内側を通り、前記インレットプレート及び前記インナー接続プレートを接続する配管と、を備え、
前記アウターパネルに前記インレットプレートが接合され、前記インナーパネルに前記インナー接続プレートが接合され、前記アウターパネルに前記インナーパネルが接合され
、
前記インナーパネルには前記インナー接続プレートの外周縁に沿った開口が形成され、前記インナーパネルの開口縁に前記インナー接続プレートの外周縁が接合され、前記インナー接続プレートが前記タンクの外側に露出し、前記タンク内殻の一部を形成していることを特徴とする燃料タンク。
【請求項6】
前記インナー接続プレートの外周縁が前記開口からタンク外に突き出しており、前記インナーパネルの開口縁がタンク外に張り出していることを特徴とする請求項5に記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク及び燃料タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両の燃料タンクには、ブリーザパイプやドレインパイプ等の配管が設けられている。この種の燃料タンクとして、タンク内に配管を通したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の燃料タンクは、アウターパネルにタンクインレットが設けられ、タンクインレットからインナーパネルの底壁を貫通してタンク外まで配管が延びている。タンク内に配管が隠されることで、タンク外に配管が通される構造とは異なり、タンクカバーによって燃料タンクの外側を覆うことなく、燃料タンクの外観性が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の燃料タンクは多様な材料を用いて製造されている。特許文献1に記載の燃料タンクの製造時には、パネル類とパイプ類の接合にロウ付け等が用いられるが、材質やサイズによっては製造上の制約が生じて燃料タンクを製造し難い場合がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、材質やサイズによる製造上の制約を受ける場合であっても、タンク内に配管を通して外観性を維持することができる燃料タンク及び燃料タンクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の燃料タンクは、タンク外殻を形成するアウターパネルと、前記アウターパネルとは別体に形成されたインレットプレートと、前記インレットプレートからタンク内に延びるアウターパイプと、を有するアウター部品と、タンク内殻を形成するインナーパネルと、前記インナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレートと、前記インナー接続プレートを貫通するインナーパイプと、を有するインナー部品と、前記アウターパネル及び前記インナーパネルの内側を通り、前記インレットプレート及び前記インナー接続プレートを接続する配管と、を備え、前記アウターパネルに前記インレットプレートが接合され、前記インナーパネルに前記インナー接続プレートが接合され、前記アウターパネルに前記インナーパネルが接合され、前記アウターパイプ及び前記インナーパイプに前記配管が接続され、前記インレットプレートに前記アウターパイプが接合され、前記インナー接続プレートに前記インナーパイプが接合され、前記アウター部品及び前記インナー部品が、無酸素環境下又は低酸素環境下での接合が必要なチタン製又はチタン合金製であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の燃料タンクによれば、アウターパネルとインレットプレートが別体に形成され、インナーパネルとインナー接続プレートが別体に形成されている。このため、各部材の材質に適した作業ではあるが、当該作業にサイズの制約がある場合でも、インレットプレート及びインナー接続プレートに対して作業を実施することができる。このように、材質やサイズによる製造上の制約を満たした作業を柔軟に選定できる。また、アウター部品とインナー部品が一体化されることで、タンク内に配管を通した燃料タンクが製造される。外観を維持するためにタンク全体を覆う大型のタンクカバーが不要になり、二重構造にならずに燃料タンクの容量が減少することがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施例の燃料タンクを上方から見た斜視図である。
【
図3】本実施例の燃料タンクを下方から見た斜視図である。
【
図4】
図3をA-A線に沿って切断した燃料タンクの断面図である。
【
図5】本実施例のインナー接続プレートの正面図である。
【
図6】比較例の鋼板製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
【
図7】比較例の鋼板製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
【
図8】本実施例のチタン製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
【
図9】本実施例のチタン製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
【
図10】本実施例のチタン製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の燃料タンクは、タンク外殻を形成するアウターパネルにインレットプレートが接合されたアウター部品と、タンク内殻を形成するインナーパネルにインナー接続プレートが接合されたインナー部品とを備えている。アウターパネルとインレットプレートが別体に形成され、インナーパネルとインナー接続プレートが別体に形成されている。このため、材質に適した作業ではあるが、当該作業にサイズの制約がある場合でも、インレットプレート及びインナー接続プレートに対して作業を実施することができる。このように、材質やサイズによる製造上の制約を満たした作業を柔軟に選定できる。また、アウター部品とインナー部品が一体化されることで、タンク内に配管を通した燃料タンクが製造される。外観を維持するためにタンク全体を覆う大型のタンクカバーが不要になり、二重構造にならずに燃料タンクの容量が減少することがない。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1は、アルミ鋳造によって形成されるツインスパー型の車体フレーム10に、エンジン14や電装系等の各種部品を搭載して構成されている。車体フレーム10はヘッドパイプ(不図示)から左右に分岐して後方に延びる一対のメインフレーム11と、ヘッドパイプから左右に分岐して下方に延びる一対のダウンフレーム(不図示)とを有している。一対のメインフレーム11によってエンジン14の後部が支持され、一対のダウンフレームによってエンジン14の前部が支持されている。エンジン14が車体フレーム10に支持されることで車両全体の剛性が確保されている。
【0012】
メインフレーム11の前側部分はエンジン14の上方に位置するタンクレール12になっており、タンクレール12によって燃料タンク30が支持されている。メインフレーム11の後側部分はエンジン14の後方に位置するボディフレーム13になっており、ボディフレーム13の上下方向の略中間位置にスイングアーム15が揺動可能に支持されている。ボディフレーム13の上部からはシートレール(不図示)とバックステー(不図示)が後方に向かって延びている。シートレール上には、燃料タンク30の後方においてライダーシート21及びピリオンシート22が支持されている。
【0013】
ヘッドパイプには、ステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク23が操舵可能に支持されている。フロントフォーク23の下部には前輪24が回転可能に支持されており、前輪24の上部はフロントフェンダ25に覆われている。スイングアーム15はボディフレーム13から後方に向かって延びている。スイングアーム15の後端には後輪26が回転可能に支持され、後輪26の上方はリアフェンダ27に覆われている。後輪26にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン14が連結されており、変速機構を介してエンジン14からの動力が後輪26に伝達されている。
【0014】
このような鞍乗型車両には、生産性やコスト等の理由から鋼板製の燃料タンクが搭載されることが多いが、比重で有利な非鉄金属製や樹脂製の燃料タンクが搭載される場合がある。非鉄金属製の燃料タンクとしてはアルミニウムを採用したものが殆どであり、樹脂製の燃料タンクとしてはポリエチレン(PE)やナイロン(PA)を採用したものが多く、いずれも鋼板製の燃料タンクとは製造方法が異なり、特別な製造設備や金型等が必要になっていた。最近では、非鉄金属として、アルミニウムと比べて鉄に特性が近いチタン製の燃料タンクの製造が検討されている。
【0015】
チタンの特性の一つに酸素に反応して劣化し易いという性質があり、鋼板製の燃料タンクの製造時に行われていた大気下での手ロウ付け(トーチロウ付け)ができなくなる。ロウ付けは、母材を溶かさずに毛細作用によって部材間の隙間を埋めるため、気密性を必要とする燃料タンクでは、パイプ類の接合のように作業範囲が狭い箇所の溶接方法に採用されている。炉中ロウ付けであれば、無酸素環境下でロウ付けすることができるが、燃料タンクのパネル部品のような大型部品を炉内に入れることができず、パネル部品にパイプ類を直に溶接することはできない。
【0016】
鋼板製の燃料タンクの場合には、大気下でロウ付け作業ができるため、アウターパネルのタンクインレットにパイプ類を手ロウ付けし、タンク内にパイプ類を通してインナーパネルに直にパイプ類を手ロウ付けすることができる。チタン製の燃料タンクの場合には、全ての溶接が無酸素環境下で行われる必要があるが、上記したように大型のインナーパネルにパイプ類を炉中ロウ付けできないためタンク内にパイプ類を通すことは難しい。このため、一般的なチタン製の燃料タンクは、タンクインレットからタンク外にゴムホースを延出させている。
【0017】
また、燃料タンクの外観性を維持するためには、タンク外のゴムホースを隠すようにタンクカバーで燃料タンクを覆う必要がある。燃料タンクにタンクカバーが取り付けられると、チタンによる軽量化のメリットが減少すると共に、燃料タンクが二重構造になって容量が減少する。そこで、本実施例の燃料タンク30では、炉中ロウ付け可能なサイズでインナーパネル61からパイプ類の接続プレートが分離されている(
図4参照)。これにより、材質やサイズによる製造上の制約を受けるチタン製の燃料タンク30であっても、タンク内にパイプ類を通して外観性を維持することが可能になっている。
【0018】
以下、
図2から
図5を参照して、燃料タンクについて説明する。
図2は本実施例の燃料タンクを上方から見た斜視図である。
図3は本実施例の燃料タンクを下方から見た斜視図である。
図4は
図3をA-A線に沿って切断した燃料タンクの断面図である。
図5は本実施例のインナー接続プレートの正面図である。
【0019】
図2に示すように、燃料タンク30のタンク本体31は、タンク外殻を形成するアウターパネル41とタンク内殻を形成するインナーパネル61(
図3参照)の外縁を接合して形成されている。アウターパネル41とインナーパネル61によって燃料の貯留空間S(
図4参照)が形成されている。アウターパネル41は、左右対称のパネル部材42L、42Rが前後方向の中心線に沿って接合されて、パネル後部43からパネル前部44に向かって高くなるように略ドーム状に形成されている。アウターパネル41のパネル前部44の表面が全体的に一段低くなっており、パネル前部44にタンクカバー59(
図10(C)参照)が装着可能に形成されている。
【0020】
アウターパネル41のパネル前部44の中央には円形開口45が形成されており、円形開口45にはタンクインレット46が接合されている。タンクインレット46は、有底筒状のインレットプレート47と、インレットプレート47の底壁に取り付けられたインレットパイプ49とを有している。インレットプレート47にはタンクキャップ(不図示)が取り付けられ、タンクキャップによってインレットパイプ49の給油口が開閉される。タンクキャップが開かれた状態で、インレットパイプ49に給油ノズル(不図示)が挿し込まれることで、給油ノズルからタンク本体31の貯留空間Sに燃料が供給される。
【0021】
インレットプレート47の底壁には、アウターパイプとして上側ブリーザパイプ51と上側ドレインパイプ52が接合されている。上側ブリーザパイプ51及び上側ドレインパイプ52はインレットプレート47の底壁からタンク内に延びている(特に
図4参照)。上側ブリーザパイプ51によってブリーザパイプの上流側が形成され、上側ドレインパイプ52によってドレインパイプの上流側が形成されている。上側ドレインパイプ52の接合箇所の周囲でインレットプレート47が僅かに窪んでおり、インレットプレート47上の液滴が上側ドレインパイプ52の入口に集まり易くなっている。
【0022】
また、インレットプレート47の底壁からは3つのナット53(
図4参照)のネジ穴54が露出している。これらのネジ穴54にタンクキャップがネジ止めされることで、タンクインレット46にタンクキャップが装着される。アウターパネル41のパネル前部44の左右両側にはカバーブラケット(不図示)の座面55L、55Rが形成されている。座面55L、55Rにカバーブラケットが接合されることで、カバーブラケットを介してアウターパネル41のパネル前部44にタンクカバー59(
図10(C)参照)が取り付けられる。タンクカバー59によってタンクインレット46を隠すようにタンクキャップの周囲が覆われている。
【0023】
図3に示すように、インナーパネル61は、パネル後部63が平面状に形成され、パネル後部63の前側からパネル前部64に向かって高くなるように略ドーム状に形成されている。インナーパネル61のパネル後部63の底面中央には円形開口65が形成されており、この円形開口65からタンク内に燃料ポンプ(不図示)の上側が挿し込まれる。円形開口65の周囲には複数のネジ穴66が形成されており、これらのネジ穴66に燃料ポンプの下側のフランジ部がネジ止めされている。燃料ポンプによってタンク内の燃料が汲み出されて、エンジン14(
図1参照)の燃料インジェクタ(不図示)に送られる。
【0024】
円形開口65の隣(本実施例では左側)には長円形状の開口67が形成されており、この開口67にはインナー接続プレート71が接合されている。インナー接続プレート71はタンク内に膨出したドーム状に形成されており、インナー接続プレート71の上底壁にはインナーパイプとして下側ブリーザパイプ73と下側ドレインパイプ74が接合されている。下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74はインナー接続プレート71の上底壁を貫通している(特に
図4参照)。下側ブリーザパイプ73によってブリーザパイプの下流側が形成され、下側ドレインパイプ74によってドレインパイプの下流側が形成されている。
【0025】
図4に示すように、上側ブリーザパイプ51及び上側ドレインパイプ52は略L字状に形成され、下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74はストレートに形成されている。上側ブリーザパイプ51の下流端と下側ブリーザパイプ73の上流端が第1のブリーザホース(配管)81を介して接続され、上側ドレインパイプ52の下流端と下側ドレインパイプ74の上流端が第1のドレインホース(配管)82を介して接続されている。アウターパネル41及びインナーパネル61の内側を通る第1のブリーザホース81及び第1のドレインホース82によって、インレットプレート47及びインナー接続プレート71が接続されている。
【0026】
タンク外の下側ブリーザパイプ73の下流端には第2のブリーザホース83が接続され、タンク外の下側ドレインパイプ74の下流端には第2のドレインホース84が接続されている。このように、上側ブリーザパイプ51、第1のブリーザホース81、下側ブリーザパイプ73、第2のブリーザホース83によってタンクインレット46内の気体成分を燃料タンク30外に導くブリーザパイプが形成されている。上側ドレインパイプ52、第1のドレインホース82、下側ドレインパイプ74、第2のドレインホース84によってタンクインレット46内の液滴を排出するドレインパイプが形成されている。
【0027】
インナーパネル61の長円形状の開口67はインナー接続プレート71の外周縁75に沿って形成されており、インナーパネル61の開口縁68が全周に亘ってタンク外に張り出している。インナー接続プレート71の外周縁75が開口67からタンク外に突き出しており、インナー接続プレート71の外周縁75の下端面がインナーパネル61の開口縁68の下端面に揃えられている。インナーパネル61の開口縁68及びインナー接続プレート71の外周縁75がタンク外に突き出ることで、タンク外からインナーパネル61の開口縁68にインナー接続プレート71の外周縁75が容易かつ確実に接合される。
【0028】
このとき、インナー接続プレート71の上底壁に下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74が略垂直に貫通している。インナー接続プレート71を正面から見た状態、すなわちインナー接続プレート71に正対した状態では、下側ブリーザパイプ73の下流端及び下側ドレインパイプ74の下流端が、インナー接続プレート71の外周縁75よりも内側に位置している(
図5参照)。このため、インナー接続プレート71とインナーパネル61を溶接によって接合する際に、タンク外に突き出した下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74が溶接トーチの邪魔になることがない。
【0029】
この燃料タンク30の製造時には、アウターパネル41及びアウター関連部品から成るアウター部品32と、インナーパネル61及びインナー関連品から成るインナー部品33とが個別に製造される。そして、第1のブリーザホース81及び第1のドレインホース82の接続後に、アウター部品32及びインナー部品33が一体化されて燃料タンク30が製造される。アウター部品32及びインナー部品33は、それぞれチタン製又はチタン合金製であり、無酸素環境下で部材同士が溶接されて、燃料タンク30の軽量化が図られると共に耐候性及び防錆性が向上されている。
【0030】
上記したようにパイプ類と各プレートとの接合は無酸素環境下で炉中ロウ付けする必要があるため、インレットプレート47及びインナー接続プレート71が炉内に収容可能なサイズに形成されている。このように、アウターパネル41とインレットプレート47が別体に形成されることで、インレットプレート47、上側ブリーザパイプ51、上側ドレインパイプ52の炉中ロウ付けが実現される。同様に、インナーパネル61とインナー接続プレート71が別体に形成されることで、インナー接続プレート71、下側ブリーザパイプ73、下側ドレインパイプ74の炉中ロウ付けが実現される。
【0031】
図6から
図10を参照して、燃料タンクの製造方法について説明する。
図6及び
図7は、比較例の鋼板製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。
図8から
図10は、本実施例のチタン製の燃料タンクの製造方法を示す遷移図である。なお、比較例の鋼板製の燃料タンクは、ブリーザパイプ及びドレインパイプが、それぞれ1本のパイプで形成されている点、インナー接続プレートが形成されていない点で、本実施例の燃料タンクと相違している。
【0032】
比較例に示す鋼板製の燃料タンクの製造方法では、燃料タンクの個々の構成部品が製造される。例えば、各種パネルがプレス機等の製造設備によってプレス成形される。次に、
図6(A)-(C)に示すように、アウター部品91の製造作業が実施される。先ず、
図6(A)に示すアウターパネル92の形成作業が実施される。この場合、パネル部材93L、93Rの合わせ面にシールドガスが吹き付けられて、無酸素環境下でパネル部材93L、93Rの合わせ面がプラズマ溶接される。また、アウターパネル92にカバーブラケット等のインレット関連部品がスポット溶接される。
【0033】
次に、
図6(B)に示すインレットプレート94に対するブリーザパイプ95及びドレインパイプ96の接合作業が実施される。この場合、インレットプレート94にブリーザパイプ95及びドレインパイプ96が挿し込まれた状態で、大気下でインレットプレート94にブリーザパイプ95及びドレインパイプ96が手ロウ付けされる。次に、
図6(C)に示すアウターパネル92に対するインレットプレート94の接合作業が実施される。この場合、シールドガスを吹き付けながら、アウターパネル92の開口縁にインレットプレート94の外周縁がMAG(Metal Active Gas)溶接される。
【0034】
図7(A)に示すように、インナー部品99の製造作業が実施される。この場合、インナーパネル97に燃料ポンプの取付部品や車体フレームに対するブラケット等のインナー関連部品がスポット溶接される。
図7(B)に示すように、アウター部品91とインナー部品99の一体化作業が実施される。この場合、アウターパネル92の外周縁とインナーパネル97の外周縁が合わされて、ブリーザパイプ95及びドレインパイプ96がインナーパネル97の貫通穴に挿し込まれる。そして、アウターパネル92の外周縁とインナーパネル97の外周縁がシーム溶接されて、アウター部品91とインナー部品99が一体化される。
【0035】
図7(C)に示すように、インナーパネル97に対するブリーザパイプ95及びドレインパイプ96の接合作業が実施される。この場合、大気下でインナーパネル97にブリーザパイプ95及びドレインパイプ96が手ロウ付けされる。
図7(D)に示すように、アウターパネル92に対する表面処理作業が実施される。鋼板製の燃料タンク90ではアウターパネル92の表面処理として塗装処理が選定されている。アウターパネル92の表面が塗装されることで、アウターパネル92の外観性、耐候性、防錆性が向上される。そして、アウターパネル92にタンクカバー98が取り付けられて燃料タンク90が製造される。
【0036】
本実施例に示すチタン製の燃料タンクは、チタンの特性がアルミニウムよりも鉄に近いため、鋼板製の燃料タンクと一部の製造設備等が共用されている。先ず、燃料タンクの個々の構成部品が製造される。例えば、アウターパネル41、インナーパネル61がプレス成形される。このとき、最も高価なアウターパネル41、インナーパネル61のプレス成形では、鋼板製の燃料タンク90の金型やプレス機等の製造設備が利用できる。また、アウターパネル41、インナーパネル61の一部の周辺部品の製造についても、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。
【0037】
図8(A)-(C)に示すように、アウター部品32の製造作業(アウター部品を製造するステップ)が実施される。先ず、
図8(A)に示すアウターパネル41の形成作業が実施される。この場合、パネル部材42L、42Rの合わせ面にシールドガスが吹き付けられて、無酸素環境下でパネル部材42L、42Rの合わせ面がプラズマ溶接される。また、アウターパネル41にカバーブラケット等のインレット関連部品がスポット溶接される。これらの溶接では、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。なお、スポット溶接では部材同士の接合面が大気から遮断されるため、チタン製のアウターパネル41に対する酸素の影響が最小限に抑えられる。
【0038】
次に、
図8(B)に示すインレットプレート47に対する上側ブリーザパイプ51及び上側ドレインパイプ52の接合作業(炉中ロウ付けするサブステップ)が実施される。この場合、インレットプレート47に上側ブリーザパイプ51及び上側ドレインパイプ52が挿し込まれた状態で炉内に収容され、無酸素環境下でインレットプレート47に上側ブリーザパイプ51及び上側ドレインパイプ52が炉中ロウ付けされる。インレットプレート47が炉内に収まるサイズに形成されているため、サイズによる制約を受ける炉中ロウ付けを実施することができる。
【0039】
次に、
図8(C)に示すアウターパネル41に対するインレットプレート47の接合作業(TIG溶接するサブステップ)が実施される。この場合、シールドガスを吹き付けながら、アウターパネル41の開口縁にインレットプレート47の外周縁がTIG(Tungsten Inert Gas)溶接される。鋼板製の燃料タンク90の溶接設備を部分的に改造することで、MAG溶接だけでなくTIG溶接も実施することができる。このため、アウターパネル41とインレットプレート47の溶接についても、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。
【0040】
図9(A)-(C)に示すように、インナー部品33の製造作業(インナー部品33を製造するステップ)が実施される。先ず、
図9(A)に示すインナーパネル61の形成作業が実施される。この場合、インナーパネル61に燃料ポンプの取付部品や車体フレームに対するブラケット等のインナー関連部品がスポット溶接される。これらの溶接では、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。
【0041】
次に、
図9(B)に示すインナー接続プレート71に対する下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74の接合作業(炉中ロウ付けするサブステップ)が実施される。この場合、インナー接続プレート71に下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74が挿し込まれた状態で炉内に収容され、無酸素環境下でインナー接続プレート71に下側ブリーザパイプ73及び下側ドレインパイプ74が炉中ロウ付けされる。インナー接続プレート71が炉内に収まるサイズに形成されているため、サイズによる制約を受ける炉中ロウ付けを実施することができる。
【0042】
次に、
図9(C)に示すインナーパネル61に対するインナー接続プレート71の接合作業(TIG溶接するサブステップ)が実施される。この場合、シールドガスを吹き付けながら、インナーパネル61の開口縁にインナー接続プレート71の外周縁がTIG(Tungsten Inert Gas)溶接される。上記したように、鋼板製の燃料タンク90の溶接設備を部分的に改造することで、MAG溶接だけでなくTIG溶接も実施することができる。このため、インナーパネル61とインナー接続プレート71の溶接についても、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。
【0043】
図10(A)、(B)に示すように、アウター部品32とインナー部品33の一体化作業(一体化するステップ)が実施される。先ず、
図10(A)に示すパイプ類に対する第1のブリーザホース81及び第1のドレインホース82の接続作業(接続するサブステップ)が実施される。この場合、アウター部品32の上側ブリーザパイプ51とインナー部品33の下側ブリーザパイプ73が第1のブリーザホース81を介して接続される。また、アウター部品32の上側ドレインパイプ52とインナー部品33の下側ドレインパイプ74が第1のドレインホース82を介して接続される。なお、第1のブリーザホース81及び第1のドレインホース82には、可撓性及び耐油性を持ったゴムホースや樹脂ホースが使用される。
【0044】
次に、
図10(B)に示すアウターパネル41とインナーパネル61の接合作業(シーム溶接するサブステップ)が実施される。この場合、アウターパネル41の外周縁とインナーパネル61の外周縁が合わされて、アウターパネル41の外周縁とインナーパネル61の外周縁がシーム溶接される。シーム溶接についても、鋼板製の燃料タンク90の製造設備が利用できる。なお、シーム溶接ではアウターパネル41とインナーパネル61の接合面が大気から遮断されるため、チタン製のアウターパネル41及びインナーパネル61に対する酸素の影響が最小限に抑えられる。
【0045】
図10(C)に示すように、アウターパネル41に対する表面処理作業(粗面化するステップ)が実施される。チタン製の燃料タンク30ではアウターパネル41の表面処理としてショット処理が選定されている。チタンは耐候性及び防錆性に優れているため、塗装処理を行わなくても物性劣化が生じないが、アウターパネル41の表面にはプレス傷やビード等の加工痕が生じている。ショット処理によって加工痕が除去されて、外部に露出した金属面によって外観性が向上される。そして、アウターパネル41にタンクカバー59が取り付けられて燃料タンク30が製造される。なお、タンクカバー59は、鋼板製の燃料タンク90と同じカバーを用いることができる。
【0046】
以上、本実施例によれば、アウターパネル41とインレットプレート47が別体に形成され、インナーパネル61とインナー接続プレート71が別体に形成されている。このため、チタンに適しているが、サイズの制約がある炉中ロウ付けであっても、インレットプレート47及びインナー接続プレート71に対するパイプ類の接合に炉中ロウ付けを用いることができる。このように、材質やサイズによる製造上の制約を満たした作業を柔軟に選定できる。また、アウター部品32とインナー部品33が一体化されることで、タンク内に配管を通した燃料タンク30が製造される。外観を維持するためにタンク全体を覆う大型のタンクカバーが不要になり、二重構造にならずに燃料タンク30の容量が減少することがない。
【0047】
なお、本実施例の燃料タンクは、バギータイプの自動三輪車等の他の鞍乗型車両にも適宜適用することができる。ここで、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0048】
また、本実施例では、チタン製の燃料タンクの製造方法について説明したが、この製造方法は他の材質の燃料タンクの製造にも適用することができる。特に、無酸素環境下又は低酸素環境下での接合が必要な材料を用いた燃料タンクの製造に有効である。
【0049】
また、本実施例では、上側ブリーザパイプ、第1のブリーザホース、下側ブリーザパイプ、第2のブリーザホースの4部品によってブリーザパイプが形成されたが、ブリーザパイプは1部品で形成されていてもよい。同様に、本実施例では、上側ドレインパイプ、第1のドレインホース、下側ドレインパイプ、第2のドレインホースの4部品によってドレインパイプが形成されたが、ドレインパイプは1部品で形成されていてもよい。
【0050】
また、本実施例では、アウター部品及びインナー部品がチタン製であるが、アウター部品及びインナー部品の一部の部品が別の材料で形成されていてもよい。例えば、上側ブリーザパイプ、下側ブリーザパイプ、上側ドレインパイプ、下側ドレインパイプが鉄で形成されていてもよい。
【0051】
また、本実施例では、プラズマ溶接、スポット溶接、炉中ロウ付け、TIG溶接、シーム溶接等の接合方法が用いられているが、接合対象に対する酸素の影響が少ない他の接合方法を採用することができる。
【0052】
以上の通り、本実施例の燃料タンク(30)は、タンク外殻を形成するアウターパネル(41)及びアウターパネルとは別体に形成されたインレットプレート(47)を有するアウター部品(32)と、タンク内殻を形成するインナーパネル(61)及びインナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレート(71)を有するインナー部品(33)と、アウターパネル及びインナーパネルの内側を通り、インレットプレート及びインナー接続プレートを接続する配管(第1のブリーザホース81、第1のドレインホース82)と、を備え、アウターパネルにインレットプレートが接合され、インナーパネルにインナー接続プレートが接合され、アウターパネルにインナーパネルが接合されている。この構成によれば、アウターパネルとインレットプレートが別体に形成され、インナーパネルとインナー接続プレートが別体に形成されている。このため、各部材の材質に適した作業ではあるが、当該作業にサイズの制約がある場合でも、インレットプレート及びインナー接続プレートに対して作業を実施することができる。このように、材質やサイズによる製造上の制約を満たした作業を柔軟に選定できる。また、アウター部品とインナー部品が一体化されることで、タンク内に配管を通した燃料タンクが製造される。外観を維持するためにタンク全体を覆う大型のタンクカバーが不要になり、二重構造にならずに燃料タンクの容量が減少することがない。
【0053】
本実施例の燃料タンクにおいて、アウター部品及びインナー部品がチタン製又はチタン合金製である。この構成によれば、チタン又はチタン合金に適した環境下で部材同士を接合して、燃料タンクの軽量化を図ると共に耐候性及び防錆性を向上することができる。
【0054】
本実施例の燃料タンクにおいて、インナーパネルにはインナー接続プレートの外周縁(75)に沿った開口(67)が形成され、インナー接続プレートの外周縁が開口からタンク外に突き出しており、インナーパネルの開口縁(68)がタンク外に張り出して、当該インナーパネルの開口縁にインナー接続プレートの外周縁が接合されている。この構成によれば、タンク外からインナーパネルの開口縁にインナー接続プレートの外周縁を容易かつ確実に溶接することができる。
【0055】
本実施例の燃料タンクにおいて、アウター部品はインレットプレートからタンク内に延びるアウターパイプ(上側ブリーザパイプ51、上側ドレインパイプ52)を有し、インナー部品はインナー接続プレートを貫通するインナーパイプ(下側ブリーザパイプ73、下側ドレインパイプ74)を有し、アウターパイプ及びインナーパイプに配管が接続され、インレットプレートにアウターパイプが接合され、インナー接続プレートにインナーパイプが接合されている。この構成によれば、インレットプレートとアウターパイプが別体に形成され、インナー接続プレートとインナーパイプが別体に形成されている。このため、インレットプレートとアウターパイプの材質やサイズに適した接合方法、インナー接続プレートとインナーパイプの材質やサイズに適した接合方法を用いることができる。
【0056】
本実施例の燃料タンクにおいて、インナー接続プレートに正対した状態で、インナーパイプからタンク外に突き出した端部が、インナー接続プレートの外周縁よりも内側に位置している。この構成によれば、インナーパネルにインナー接続プレートを接合する際に、インナーパイプからタンク外に突き出した端部が邪魔になることがない。
【0057】
また、本実施例の燃料タンクの製造方法は、タンク外殻を形成するアウターパネルに、アウターパネルとは別体に形成されたインレットプレートを接合してアウター部品を製造するステップと、タンク内殻を形成するインナーパネルに、インナーパネルとは別体に形成されたインナー接続プレートを接合してインナー部品を製造するステップと、タンク内を通る配管でインレットプレート及びインナー接続プレートを接続し、アウターパネル及びインナーパネルを接合して一体化するステップと、を有している。この構成によれば、アウターパネルとインレットプレートが別体に形成され、インナーパネルとインナー接続プレートが別体に形成されている。このため、各部材の材質に適した作業ではあるが、当該作業にサイズの制約がある場合でも、インレットプレート及びインナー接続プレートに対して作業を実施することができる。このように、材質やサイズによる製造上の制約を満たした作業を柔軟に選定できる。また、アウター部品とインナー部品が一体化されることで、タンク内に配管を通した燃料タンクが製造される。外観を維持するためにタンク全体を覆うタンクカバーが不要になり、二重構造にならずに燃料タンクの容量が減少することがない。
【0058】
本実施例の燃料タンクの製造方法において、アウター部品を製造するステップが、インレットプレートにアウターパイプを炉中ロウ付けするサブステップと、アウターパネルにインレットプレートをTIG溶接するサブステップと、を含み、インナー部品を製造するステップが、インナー接続プレートにインナーパイプを炉中ロウ付けするサブステップと、インナーパネルにインナー接続プレートをTIG溶接するサブステップと、を含み、一体化するステップが、アウターパイプ及びインナーパイプを配管で接続するサブステップと、アウターパネル及びインナーパネルをシーム溶接するサブステップと、を含んでいる。この構成によれば、各部品が大気下では溶接が困難な材質で形成されていても、燃料タンクを良好に製造することができる。
【0059】
本実施例の燃料タンクの製造方法において、アウター部品及びインナー部品がチタン製又はチタン合金製であり、インナーパネルに接合されたアウターパネルの表面にショット処理を実施して、当該アウターパネルの表面を粗面化するステップを有している。この構成によれば、アウターパネルの表面に付いた傷や溶接痕等の加工痕を無くすことができる。また、アウターパネルの表面を塗膜等で覆う必要がなく、チタンやチタン合金製の金属面を外部に露出して外観性を向上させることができる。また、燃料タンクの軽量化を図ると共に耐候性及び防錆性を向上することができる。
【0060】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0061】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0062】
30 :燃料タンク
32 :アウター部品
33 :インナー部品
41 :アウターパネル
47 :インレットプレート
51 :上側ブリーザパイプ(アウターパイプ)
52 :上側ドレインパイプ(アウターパイプ)
61 :インナーパネル
67 :開口
68 :開口縁
71 :インナー接続プレート
73 :下側ブリーザパイプ(インナーパイプ)
74 :下側ドレインパイプ(インナーパイプ)
75 :外周縁
81 :第1のブリーザホース(配管)
82 :第1のドレインホース(配管)