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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】真贋判定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241203BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021002768
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022107999
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正彦
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209603(JP,A)
【文献】特開2013-101513(JP,A)
【文献】特開2009-193111(JP,A)
【文献】特開2020-042328(JP,A)
【文献】特開2016-151982(JP,A)
【文献】特開2016-057950(JP,A)
【文献】特開2015-099523(JP,A)
【文献】特開2018-046330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転免許証の真贋判定装置であって、
運転免許証のICチップから得られるICチップ情報と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報とが一致するか否か照合を行う照合手段と、
運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証の画像から得られる券面の別の文字情報の内容との間に矛盾が有るか否かを判別する判別手段と、
を有し、
前記判別手段は、前記券面の文字情報である有効期限の帯色を前記画像から抽出し、前記有効期限の年が、前記券面の別の文字情報である交付年月日と前記帯色とに基づく所定の範囲に無い場合、矛盾があるとすることを特徴とする真贋判定装置。
【請求項2】
前記判別手段は、複数種類の判別項目について判別を行うものであり、
前記判別手段は、さらに、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証における当該文字情報の属性との間に矛盾が有るか否かを判別し、その判別として、運転免許証において所定の桁数の数字として記載されるべき前記文字情報である免許番号が、所定の桁数の数字でない場合に、矛盾があるとすることを特徴とする請求項1記載の真贋判定装置。
【請求項3】
前記真贋判定装置は、運転免許証のICチップが読み取れなかった場合に前記照合手段による照合結果を照合不能とし、前記判別手段による判別結果から運転免許証の真贋判定を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載の真贋判定装置。
【請求項4】
前記真贋判定装置は、前記照合手段により前記ICチップ情報と前記文字情報が一致しないとされるか、または前記判別手段で矛盾が有るとされる場合に、運転免許証を真でないとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の真贋判定装置。
【請求項5】
前記ICチップ情報は、暗証番号の入力無しに読み取ることのできる情報であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の真贋判定装置。
【請求項6】
前記判別手段は、複数種類の判別項目について判別を行うものであり、
前記判別手段は、さらに、前記券面の文字情報である生年月日と、前記券面の別の文字情報である免種とを比較し、生年月日と免種の間に矛盾が有るか否かを判別することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の真贋判定装置。
【請求項7】
コンピュータを、
運転免許証の真贋判定装置であって、
運転免許証のICチップから得られるICチップ情報と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報とが一致するか否か照合を行う照合手段と、
運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証の画像から得られる券面の別の文字情報の内容との間に矛盾が有るか否かを判別する判別手段と、
を有し、
前記判別手段は、前記券面の文字情報である有効期限の帯色を前記画像から抽出し、前記有効期限の年が、前記券面の別の文字情報である交付年月日と前記帯色とに基づく所定の範囲に無い場合、矛盾があるとすることを特徴とする真贋判定装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定装置とそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関では口座開設時に運転免許証等による本人確認が必要であるが、特殊詐欺などの犯罪目的から別人になりすましての口座開設を行うために運転免許証等を偽造するケースが増えつつある。
【0003】
そのため、このような偽造の判定技術が望まれており、例えば特許文献1には、運転免許証等の券面の文字情報に矛盾が有るか否かを判別することにより真贋判定を行う真贋判定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-209603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の真贋判定装置により、券面の偽造がされた運転免許証等の検出を行うことができるが、近年、本人確認の厳格化の観点からさらに確実に運転免許証の真贋判定を行い、その偽造を検出できる技術が望まれていた。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、運転免許証の真贋判定をより確実に行うことのできる真贋判定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための第1の発明は、運転免許証の真贋判定装置であって、運転免許証のICチップから得られるICチップ情報と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報とが一致するか否か照合を行う照合手段と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証の画像から得られる券面の別の文字情報の内容との間に矛盾が有るか否かを判別する判別手段と、を有し、前記判別手段は、前記券面の文字情報である有効期限の帯色を前記画像から抽出し、前記有効期限の年が、前記券面の別の文字情報である交付年月日と前記帯色とに基づく所定の範囲に無い場合、矛盾があるとすることを特徴とする真贋判定装置である。
前記判別手段は、例えば、複数種類の判別項目について判別を行うものであり、前記判別手段は、さらに、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証における当該文字情報の属性との間に矛盾が有るか否かを判別し、その判別として、運転免許証において所定の桁数の数字として記載されるべき前記文字情報である免許番号が、所定の桁数の数字でない場合に、矛盾があるとすることも望ましい。また、前記判別手段は、さらに、前記券面の文字情報である生年月日と、前記券面の別の文字情報である免種とを比較し、生年月日と免種の間に矛盾が有るか否かを判別することも望ましい。
【0008】
本発明では、運転免許証の真贋判定として、ICチップ情報と運転免許証の券面の文字情報との照合を行うとともに、運転免許証の券面の文字情報が矛盾を有するか否かの判別を行う。これらの結果をもとに真贋判定を行うことで、運転免許証の真贋判定をより確実に行うことができる。
【0009】
真贋判定に用いる文字情報は、例えば特定の年月日等を示すものであり、その内容がICチップ情報と一致するかや矛盾を有するか否かにより運転免許証の真贋を好適に判定することができる。文字情報の矛盾には、大きく分けて、文字情報の内容と別の文字情報の内容との間に矛盾が有るケースと、文字情報の内容と当該文字情報の属性との間に矛盾が有るケースがあるが、本発明ではどちらのケースも矛盾として判別できる。
【0010】
前記真贋判定装置は、運転免許証のICチップが読み取れなかった場合に前記照合手段による照合結果を照合不能とし、前記判別手段による判別結果から運転免許証の真贋判定を行うことができる。
ICチップが読み取れなかった場合は、ICチップが壊れているだけで運転免許証は真である可能性を考慮し、ICチップが読み取れないことのみでは運転免許証を真でないとせず、券面の文字情報が矛盾を有するか否かも踏まえて真贋判定を行うことができる。
【0011】
前記真贋判定装置は、前記照合手段により前記ICチップ情報と前記文字情報が一致しないとされるか、または前記判別手段で矛盾が有るとされる場合に、運転免許証を真でないとすることができる。
真贋判定装置は、照合手段と判別手段のいずれかで否定的な結果が得られる場合に運転免許証を真でないとすることで、より確実な判定ができる。
【0012】
前記ICチップ情報は、例えば暗証番号の入力無しに読み取ることのできる情報である。
これによりICチップ情報の読み取りに暗証番号(PIN)の入力を要せず、真贋判定の処理を簡易化できる。
【0013】
の発明は、コンピュータを、運転免許証の真贋判定装置であって、運転免許証のICチップから得られるICチップ情報と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報とが一致するか否か照合を行う照合手段と、運転免許証の画像から得られる券面の文字情報について、当該文字情報の内容と、運転免許証の画像から得られる券面の別の文字情報の内容との間に矛盾が有るか否かを判別する判別手段と、を有し、前記判別手段は、前記券面の文字情報である有効期限の帯色を前記画像から抽出し、前記有効期限の年が、前記券面の別の文字情報である交付年月日と前記帯色とに基づく所定の範囲に無い場合、矛盾があるとすることを特徴とする真贋判定装置として機能させるためのプログラムである
【発明の効果】
【0014】
本発明により、運転免許証の真贋判定をより確実に行うことのできる真贋判定装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】真贋判定システム1を示す図。
図2】真贋判定装置3のハードウェア構成を示す図。
図3】運転免許証10を示す図。
図4】真贋判定装置3の機能構成を示す図。
図5】真贋判定方法について示すフローチャート。
図6】文字情報の矛盾の有無の判別について説明する図。
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
(1.真贋判定システム1)
図1は、本発明の実施形態に係る真贋判定装置3を有する真贋判定システム1を示す図である。図1に示すように、真贋判定システム1は読取装置2と真贋判定装置3を有する。読取装置2と真贋判定装置3は無線または有線による通信手段により通信可能に接続される。
【0018】
読取装置2は運転免許証10の読取を行うものであり、スキャナ21とICチップ読取部22を有する。
【0019】
スキャナ21は運転免許証10の券面の画像を取得するものであり、例えば既知のスキャン装置を用いることができる。
【0020】
ICチップ読取部22は運転免許証10のICチップ(不図示)に格納されたデータを読み取るものであり、例えば既知のリーダライタを用いることができる。
【0021】
なお、本実施形態ではスキャナ21とICチップ読取部22を一体の装置として構成しているが、これらを別体の装置として構成してもよい。また運転免許証10の券面画像取得にカメラ等を用いることも可能である。
【0022】
真贋判定装置3は、運転免許証10の券面画像等から運転免許証10の真贋判定を行うものである。図2は真贋判定装置3のハードウェア構成を示す図であり、真贋判定装置3は制御部31、記憶部32、表示部33、入力部34、通信制御部35等をバス等により接続して構成されたコンピュータにより実現できる。ただしこれに限ることは無く、適宜様々な構成をとることができる。
【0023】
制御部31はCPU、ROM、RAMなどから構成される。CPUは、記憶部32、ROMなどの記憶媒体に格納された真贋判定装置3の処理に係るプログラムをRAM上のワークエリアに呼び出して実行する。ROMは不揮発性メモリであり、ブートプログラムやBIOSなどのプログラム、データなどを恒久的に保持している。RAMは揮発性メモリであり、記憶部32、ROMなどからロードしたプログラムやデータを一時的に保持するとともに、制御部31が各種処理を行うために使用するワークエリアを備える。
【0024】
記憶部32はハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ等であり、後述する処理に際し真贋判定装置3が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OSなどが格納される。これらのプログラムやデータは、制御部31により必要に応じて読み出され実行される。
【0025】
表示部33は液晶ディスプレイ等を備える。
入力部34は真贋判定装置3に各種の入力を行うものである。
通信制御部35は通信を媒介する通信インタフェースであり、読取装置2との間で通信を行う。
【0026】
(2.運転免許証10)
運転免許証10は、本実施形態において真贋判定の対象となる本人確認証であり、金融機関や携帯電話キャリアなどで本人確認に用いられる。
【0027】
図3に運転免許証10の券面の例を示す。運転免許証10の券面では、本人の氏名11と生年月日12および住所13、運転免許証の交付年月日14と有効期限15、本人が運転免許を取得した免種16とその取得年月日17、運転免許証10を交付した都道府県の公安委員会18、免許番号19等の文字情報がそれぞれ所定の位置に形成されている。
【0028】
また運転免許証10にはICチップ(不図示)が内蔵されており、ICチップには券面の文字情報の一部がデータとして格納されている。データの読取には暗証番号としてPINの入力が必要であるが、ICチップにはPINの入力無しに読み取ることのできるデータとして、運転免許証10の有効期限、交付年月日なども格納されている。
【0029】
(3.真贋判定装置3の機能)
図4は真贋判定装置3の機能構成を示す図である。真贋判定装置3は、照合手段301、判別手段302等を有する。
【0030】
照合手段301は、真贋判定装置3の制御部31が、運転免許証10のICチップから得られるICチップ情報と、運転免許証10の券面画像から得られる文字情報とが一致するか否か照合を行うものである。
【0031】
判別手段302は、真贋判定装置3の制御部31が、運転免許証10の券面画像から得られる文字情報について、当該文字情報が矛盾を有するか否かを判別するものである。その詳細については後述する。
【0032】
(4.真贋判定方法)
図5は、真贋判定装置3が実行する真贋判定方法について示すフローチャートである。図5のS1~S2、S5~S6、S9は読取装置2が実行する処理であり、その他の処理は真贋判定装置3の制御部31が真贋判定装置3の各部を制御して実行する。図5の処理は、例えば運転免許証10を読取装置2の指定の位置にセットし、真贋判定装置3から読取装置2に処理開始の指示を送信することで開始される。
【0033】
本実施形態では、まず読取装置2が運転免許証10の券面画像をスキャナ21によって取得し(S1)、運転免許証10の券面画像を真贋判定装置3に送信する(S2)。
【0034】
真贋判定装置3は、運転免許証10の券面画像を受信する(S3)と、券面画像のOCR(Optical Character Recognition)処理を行い(S4)、運転免許証10の券面の文字情報として、交付年月日14、有効期限15等の真贋判定に必要な文字情報を取得する。OCR処理は既知であるのでその説明を省略する。
【0035】
読取装置2は、さらに、ICチップ読取部22によって運転免許証10のICチップのデータ(ICチップ情報)を読み取る。読取装置2は、ICチップのデータを読み取ることができる場合(S5;YES)、読み取ったデータを真贋判定装置3に送信する(S6)。本実施形態では、PINの入力無しに読み取ることができる運転免許証10の交付年月日と有効期限のデータをICチップから読み取り、真贋判定装置3に送信するものとする。
【0036】
真贋判定装置3は、読取装置2からICチップのデータを受信すると(S7)、ICチップのデータとS4で取得した券面の文字情報を比較する(S8)。
【0037】
真贋判定装置3は、S8において、ICチップのデータとして読み取られた運転免許証10の交付年月日と、運転免許証10の券面画像から券面の文字情報として取得された運転免許証10の交付年月日14を比較する。また、ICチップのデータとして読み取られた運転免許証10の有効期限と、運転免許証10の券面画像から券面の文字情報として取得された運転免許証10の有効期限15を比較する。
【0038】
なお、読取装置2は、ICチップのデータを読み取ることができない場合(S5;NO)、データの読取ができなかった旨を真贋判定装置3に送信し(S9)、真贋判定装置3はその旨を受信する(S10)。
【0039】
真贋判定装置3は、前記したS8の比較において運転免許証10の交付年月日と有効期限のいずれかが一致しない場合、照合結果を不一致(NO)とし(S11;NO)、運転免許証10が真でないとしてその旨を表示部33に表示する(S12)。
【0040】
また、真贋判定装置3は、前記したS8の比較において運転免許証10の交付年月日と有効期限の双方が一致する場合、照合結果を一致(YES)とし(S11;YES)、運転免許証10の券面の文字情報について、矛盾を有するか否かの判別を行う(S13)。
【0041】
なお、真贋判定装置3は、ICチップのデータの読取ができなかった場合、照合結果を照合不能とし(S11;照合不能)、この場合も、運転免許証10の券面の文字情報に矛盾が有るか否かの判別を行う(S13)。
【0042】
S13の詳細については後述する。真贋判定装置3は、S13において、券面の文字情報が矛盾を有すると判別した場合(S14;YES)、運転免許証10が真でないとし、その旨を表示部33に表示して処理を終了する(S12)。
【0043】
一方、真贋判定装置3は、S13において券面の文字情報に矛盾が無いと判別した場合(S14;NO)、運転免許証10を真とし、その旨を表示部33に表示して処理を終了する(S15)。
【0044】
本実施形態では、以上のようにして、S11の照合結果とS14の判別結果の双方から運転免許証10の真贋判定を行うことができる。担当者は、表示部33に表示された真贋判定結果を確認してその後の処理を決定することができる。
【0045】
(5.券面の文字情報が矛盾を有するか否かの判別)
前記のS13では、券面画像から得られる文字情報が矛盾を有するか否かを判別する。文字情報の矛盾には、大きく分けて、文字情報の内容と別の文字情報の内容との間に矛盾が有るケースと、文字情報の内容と運転免許証10における当該文字情報の属性との間に矛盾が有るケースがある。前者の場合は一方の文字情報の内容が他方の文字情報の内容に応じた所定の値または範囲内でない場合に、後者の場合は文字情報の内容が当該文字情報の属性に応じた所定の値または範囲内でない場合に、それぞれ矛盾を有すると判別できる。
【0046】
(5-1.文字情報の内容と別の文字情報の内容との間に矛盾が有るケース)
文字情報の内容と別の文字情報の内容との間に矛盾が有るケースとしては、例えば、交付年月日14と有効期限15の間に法律面等から定まる所定の関係が存在し、当該関係から見た時に、券面画像から得られた交付年月日14と有効期限15の間に矛盾が有るケースがある。
【0047】
例えば図6(a)に示すように、運転免許証10の有効期限15の年が、交付年月日14から2年経過後の年から6年経過後の年までの範囲になるという関係が有るとする。このケースでは、運転免許証10の交付年月日14や有効期限15について偽造を行った結果、有効期限15の年が上記範囲から外れると、交付年月日14と有効期限15の間に内容の矛盾が有ると判別される。なお上記の範囲は有効期限15の帯色(背景の色。例えばブルーやゴールド)により異なるので、真贋判定装置3は必要に応じて運転免許証10の券面画像から帯色の抽出を行う。
【0048】
また図6(b)に示すように、運転免許証10の有効期限15の月が、生年月日12の月の1ヶ月後の月になるという関係が有るとする。このケースでは、運転免許証10の生年月日12や有効期限15について偽造を行った結果、有効期限15の月が上記関係外の月になると、生年月日12と有効期限15の間に内容の矛盾があると判別される。
【0049】
以上は特定の年月日を示す文字情報同士を比較する例であるが、これに限らず、その他の文字情報を比較に用いてもよい。例えば券面画像から得られた生年月日12と免種16を比較し、これらの内容の間に矛盾が有るか否かを判別することもできる。この場合、真贋判定装置3は生年月日12から本人の現在の年齢を求め、その年齢が免種16の内容に応じて予め定められた範囲に無い場合、生年月日12と免種16の間に矛盾が有ると判別する。
【0050】
例えば免種16の内容に準中型免許が含まれている場合、生年月日12から求められる年齢は18歳以上である必要があり(法律上、準中型免許は18歳以上でないと取得できないため)、生年月日12から求められる年齢がその範囲に無い場合、矛盾を有することになる。
【0051】
(3-2.文字情報の内容と運転免許証10における当該文字情報の属性との間に矛盾が有るケース)
文字情報の内容と運転免許証10における当該文字情報の属性との間に矛盾が有るケースとしては、例えば、券面画像から得られた生年月日12の内容が、その属性(運転免許証10の所持者の生年月日を示すものであること)に対して矛盾するケースがある。
【0052】
一例として、生年月日12が有り得ない年月日、例えば「昭和70年」や「13月」、「4月31日」などであると、その内容に矛盾が有ると判別される。これは運転免許証10の交付年月日14、有効期限15、取得年月日17などについても同様であり、予め年月日として適切な値の範囲(例えば昭和は1~64年まで、月は1~12月まで、4月は1~30日まで等)を真贋判定装置3の記憶部32に記録しておき、当該範囲を参照して矛盾の有無を判別できる。さらに、生年月日12から求められる現在の年齢が若すぎるなどして、その運転免許証10の所持者とは通常いえない場合なども矛盾が有ると判別することができる。
【0053】
また、交付年月日14が運転免許証10の交付を実際には行っていない年月日、例えば年末年始の一定期間や土曜日であると、交付年月日14の内容と、その属性(運転免許証10の交付を行った日であること)との間に矛盾が有ると判別される。真贋判定装置3は、予め運転免許証10の交付を行っていない年月日を記憶部32に記録しておき、これを参照して矛盾の有無を判別できる。
【0054】
その他、免許番号19の桁数が所定の値(例えば12桁)でない場合なども、免許番号19の内容とその属性(所定の桁数の数字であること)との間に矛盾を有すると判別できる。
【0055】
上記3-2.で説明した矛盾の有無の判別は、前記の3-1.で説明した矛盾の有無の判別と併用してもよい。例えば券面画像から得られる生年月日12の内容について、その属性に対する矛盾の有無の判別と、有効期限15等の他の文字情報の内容に対する矛盾の有無の判別の双方を行うことができる。
【0056】
前記のS13では、以上に述べたような判別方法を、1または複数種類の判別項目に関して実行し、その結果から文字情報の矛盾の有無を判別することができる。複数種類の判別項目に関して判別を行う場合は、例えば全ての判別項目について矛盾が無いと判別された場合に、運転免許証10を真とすることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、運転免許証10の真贋判定として、ICチップ情報と運転免許証10の券面の文字情報との照合を行うとともに、運転免許証10の券面の文字情報が矛盾を有するか否かの判別を行う。これらの結果をもとに真贋判定を行うことで、運転免許証10の真贋判定をより確実に行うことができる。
【0058】
真贋判定に用いる文字情報は、例えば特定の年月日等を示すものであり、その内容がICチップ情報と一致するかや矛盾を有するか否かにより運転免許証10の真贋を好適に判定することができる。文字情報の矛盾には、大きく分けて、文字情報の内容と別の文字情報の内容との間に矛盾が有るケースと、文字情報の内容と当該文字情報の属性との間に矛盾が有るケースがあるが、本実施形態ではどちらのケースも矛盾として判別できる。
【0059】
また本実施形態では、運転免許証10のICチップが読み取れなかった場合、ICチップが壊れているだけで運転免許証10は真である可能性を考慮し、ICチップが読み取れないことのみでは運転免許証10を真でないとせず、券面の文字情報が矛盾を有するか否かも踏まえて真贋判定を行うことができる。
【0060】
さらに、真贋判定装置3は、券面の文字情報とICチップ情報との照合と、券面の文字情報の矛盾の有無の判別のいずれかで否定的な結果が得られる場合に運転免許証10を真でないとすることで、より確実な判定ができる。
【0061】
また本実施形態では、照合に用いるICチップ情報を暗証番号(PIN)の入力無しに読み取ることのできる情報とすることで、ICチップ情報の読み取りにPINの入力を要せず、真贋判定の処理を簡易化できる。
【0062】
しかしながら、本発明は以上の実施形態で説明したものに限らない。例えば矛盾の有無の判別に用いる文字情報は前記したものに限らず、住所13と公安委員会18のように、特定の場所を示す文字情報同士を比較し、これらの内容の間に矛盾が有るか否かを判別することもできる。この場合、例えば住所13を偽造した結果、券面画像から得られる住所13と公安委員会18の都道府県が一致しなくなると、矛盾が有ると判別される。
【0063】
また、照合に用いるICチップ情報を、PINの入力によって読み取ることができる情報とすることも可能である。ただしこの場合、真贋判定処理の中でPINの入力を行う必要があり、手間がかかる。
【0064】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1:真贋判定システム
2:読取装置
3:真贋判定装置
10:運転免許証
301:照合手段
302:判別手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6