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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20241203BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241203BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241203BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241203BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20241203BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60W20/10
B60L7/14 ZHV
B60L50/16
B60K6/48
B60W10/06 900
B60W10/08 900
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021003079
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108188
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 貴司
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-023888(JP,A)
【文献】特開2013-057252(JP,A)
【文献】特開2015-200201(JP,A)
【文献】特開2002-166754(JP,A)
【文献】特開2018-177077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00- 3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、回生が可能な回転電機と、を備える車両に搭載され、
アクセル操作が行われていない惰性走行時に、前記エンジンの燃料カットと前記回転電機の回生とを実施する制御部を備える車両の制御装置であって、
前記惰性走行時の前記回生の回生量は、所定の最大回生量に設定されており、
前記制御部は、
前記燃料カットと前記回生とを実施中に前記アクセル操作が行われ、前記アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量未満の場合は、前記燃料カットを維持し、かつ前記アクセル操作の操作量の増加に応じて前記回生を減少させ、
前記アクセル操作の操作量が前記所定アクセル操作量に到達した場合は、前記燃料カットを終了し、かつ前記回生量を前記最大回生量に増加させることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記所定アクセル操作量は、前記回生量が減少してゼロとなるときの操作量に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される車両の制御装置として、従来、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、エンジンおよびモータジェネレータを備えた車両において、惰性走行時にエンジンへの燃料供給を停止し、エンジンの電子制御スロットル弁の開度を大きくしてモータジェネレータに回生動作を行わせている。また、特許文献1に記載のものは、回生動作終了直前のエンジンの回転数と、電子制御スロットル弁の開度とに基づいて、燃料供給再開時に発生する一時的に過大なエンジントルクの大きさに釣り合う回生トルクを推定し、この推定した回生トルクを力行移行後モータジェネレータに発生させている。
【0003】
これにより、特許文献1に記載のものは、回生から力行に移行直後の燃料供給再開時に発生するエンジンの一時的な過大トルクにより車両に生じるショックを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-71585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の技術にあっては、惰性走行時の回生トルクが大きい場合は、車速の減速度が大きく、ドライバが頻繁にアクセルペダルを踏み込んで回生の終了と燃料供給の再開をさせる必要が生じるため、ドライバにとって車速の調整が容易でないという問題があった。一方、惰性走行時の回生トルクが小さい場合は、適切な回生量(発電量)を確保できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、回生量を確保しつつ減速度の調整を行うことができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エンジンと、回生が可能な回転電機と、を備える車両に搭載され、アクセル操作が行われていない惰性走行時に、前記エンジンの燃料カットと前記回転電機の回生とを実施する制御部を備える車両の制御装置であって、前記惰性走行時の前記回生の回生量は、所定の最大回生量に設定されており、前記制御部は、前記燃料カットと前記回生とを実施中に前記アクセル操作が行われ、前記アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量未満の場合は、前記燃料カットを維持し、かつ前記アクセル操作の操作量の増加に応じて前記回生を減少させ、前記アクセル操作の操作量が前記所定アクセル操作量に到達した場合は、前記燃料カットを終了し、かつ前記回生量を前記最大回生量に増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、回生量を確保しつつ減速度の調整を行うことができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施例および第2実施例に係る制御装置を備える車両の構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
図4図4は、本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンと、回生が可能な回転電機と、を備える車両に搭載され、アクセル操作が行われていない惰性走行時に、エンジンの燃料カットと回転電機の回生とを実施する制御部を備える車両の制御装置であって、制御部は、燃料カットと回生とを実施中にアクセル操作が行われ、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量未満の場合は、燃料カットを維持し、かつアクセル操作の操作量の増加に応じて回生の回生量を減少させ、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量に到達した場合は、燃料カットを終了し、かつ回生量を増加させることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、回生量を確保しつつ減速度の調整を行うことができる。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。図1から図3は、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、車両10は、エンジン20と、モータとしてのISG(Integrated Starter Generator)40と、変速機30と、車輪12と、制御部としてのECM(Electronic Control Module)50と、モータコントローラ51とを含んで構成される。
【0013】
エンジン20には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン20は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。
【0014】
エンジン20にはエンジン回転速度検出部としてのクランク角センサ27が設けられており、このクランク角センサ27は、クランク軸20Aの回転位置に基づいてエンジン回転速度を検出し、検出信号をECM50に送信する。
【0015】
変速機30は、エンジン20から伝達された回転を変速して、ドライブシャフト11を介して車輪12を駆動するようになっている。
【0016】
車両10は、エンジン20と変速機30との間にクラッチ31を備えており、クラッチ31は乾式単板クラッチからなる。クラッチ31は、エンジン20のクランク軸20Aに連結されたフライホイール31Aと、変速機30の入力軸30Aに連結されたクラッチディスク31Bとを有している。
【0017】
クラッチ31は、クラッチディスク31Bがフライホイール31Aに摩擦係合されることで動力伝達状態に切り替わり、クラッチディスク31Bがフライホイール31Aから離間されることで非動力伝達状態に切り替わる。
【0018】
車両10は、変速機30とドライブシャフト11との間にディファレンシャル装置32を備えており、このディファレンシャル装置32は、変速機30から伝達された回転を左右のドライブシャフト11に差動回転可能に伝達する。
【0019】
車両10はスタータ26を備えており、このスタータ26は、ECM50の指令により、クランク軸20Aに連結されたフライホイール31Aを回転させることにより、エンジン20の初回の始動を行う。
【0020】
ISG40は、電力が供給されることで動力を発生する電動機の機能と、外部からの動力により発電する発電機の機能とを有する回転電機である。このように、ISG40は、回生と力行とが可能な回転電機である。ここで、ISG40が発生するトルク(以下、ISGトルクともいう)は、ISG40が電動機として機能して力行するときは正のトルクであり、ISG40が発電機として機能して回生するときは負のトルクである。
【0021】
ISG40は、プーリ41、クランクプーリ21およびベルト42とからなる巻掛け伝動機構を介してエンジン20に常時連結されており、エンジン20との間で相互に動力伝達を行う。より詳しくは、ISG40は回転軸40Aを備えており、この回転軸40Aにはプーリ41が固定されている。
【0022】
エンジン20のクランク軸20Aの他端部にはクランクプーリ21が固定されている。クランクプーリ21とプーリ41にはベルト42が掛け渡されている。なお、巻掛け伝動機構としては、スプロケットとチェーンを用いることもできる。
【0023】
ISG40が発生する動力は、エンジン20のクランク軸20A、変速機30及びドライブシャフト11を介して車輪12に伝達される。また、車輪12の回転は、ドライブシャフト11、変速機30及びエンジン20のクランク軸20Aを介してISG40に伝達され、ISG40における回生発電に用いられる。
【0024】
したがって、車両10は、エンジン20の動力による走行だけでなく、ISG40の動力によってエンジン20をアシストする走行を実現できる。さらに、車両10は、エンジン20の運転を停止した状態で、ISG40の動力で走行することができる。
【0025】
このように、車両10は、エンジン20の動力とISG40の動力との少なくとも一方の動力を用いて走行可能なパラレルハイブリッドシステムを構成している。
【0026】
ISG40のトルク及び回転速度は、モータコントローラ51によって制御される。モータコントローラ51は、ECM50に電気的に接続されており、ECM50からの指令に基づいてISG40の動作を制御する。
【0027】
車両10は、リチウムイオンバッテリ71(図中、LiBと記す)、鉛バッテリ72(図中、PbBと記す)、DCDCコンバータ73及び車両電装部品74を備えている。リチウムイオンバッテリ71及び鉛バッテリ72は充電可能な二次電池からなる。
【0028】
リチウムイオンバッテリ71は約48Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定されている。鉛バッテリ72は約12Vの出力電圧を発生するようにセルの個数等が設定されている。車両電装部品74は、約12Vで作動する各種の電装部品の総称であり、例えば、ワイパー、ヘッドライト、カーナビゲーションシステム等である。
【0029】
DCDCコンバータ73は、48V母線76を介してリチウムイオンバッテリ71及びISG40に電気的に接続されている。また、DCDCコンバータ73は、12V母線77を介して鉛バッテリ72及び車両電装部品74に電気的に接続されている。本実施例では、車両10は、48Vハイブリッドシステムを搭載しており、ISG40は48Vで作動する。DCDCコンバータ73は、48V母線76と12V母線77との間で相互に電圧を変換する。
【0030】
本実施例において、ISG40は、48Vの電圧で作動するため、12Vの電圧で作動させる場合よりも大きなトルクを発生することができる。また、DCDCコンバータ73が48Vを12Vに変換できるので、既存の電装部品を12Vの電圧で作動させることができる。また、48V母線76等における通電電流と発熱を抑制でき、48V母線76等の重量を低減できる。
【0031】
また、ISG40への電力供給をリチウムイオンバッテリ71に受け持たせ、車両電装部品74への電力供給を鉛バッテリ72に受け持たせることができるため、DCDCコンバータ73を小容量化できる。
【0032】
リチウムイオンバッテリ71にはバッテリコントローラ71Aが設けられており、このバッテリコントローラ71Aは、リチウムイオンバッテリ71の端子間電圧、周辺温度や入出力電流を検出し、検出信号をECM50に出力する。
【0033】
ECM50は、リチウムイオンバッテリ71の端子間電圧、周辺温度や入出力電流により充電状態(SOC)を検出する。リチウムイオンバッテリ71の充電状態は、ECM50によって所定の管理範囲(例えば、30%から70%の範囲)に管理される。
【0034】
ECM50は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0035】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECM50として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECM50として機能する。
【0036】
ECM50には、クランク角センサ27及びバッテリコントローラ71Aを含む各種センサ類が接続されている。また、ECM50には、エンジン20を含む各種制御対象類が接続されている。ECM50は、各種センサ類から得られる情報に基づいて各種制御対象類を制御する。
【0037】
さらに、ECM50には、モータコントローラ51を介してISG40が接続されており、ECM50は、モータコントローラ51の上位コントローラとして機能することによりISG40を制御する。
【0038】
本実施例では、ECM50は、アクセル操作が行われていない惰性走行時に、エンジン20の燃料カットとISG40の回生とを実施する。燃料カットとは、エンジン20への燃料供給を停止することをいう。車両10の惰性走行時に燃料カットを行うことにより、燃費を向上させることができる。また、車両10の惰性走行時にISG40の回生を行うことにより、回生により発電した電力をリチウムイオンバッテリ71に蓄電できる。ISG40の回生トルクが大きいほど、発電される電力の量(回生量)は大きくなる。
【0039】
本実施例では、ISG40は、48Vの電圧によって力行時に大きなモータトルクを発生させることができる。一方、12Vハイブリッドシステムと比較して、ISG40の最大の回生トルクは大きい。このため、車両10の惰性走行時に最大の回生トルクで一定でISG40が回生動作を行った場合、12Vハイブリッドシステムと比較して車速の減速度が大きくなり過ぎることがある。これに対して、ドライバは、アクセルペダルを踏み込んでエンジントルクを発生させることで、車速の低下を抑制し、または車速を増加させるができる。しかし、アクセルペダルの踏み込みと開放を頻繁に繰り返す必要があり、車速調整がし難くなってしまい、ドライバビリティを損なってしまう。
【0040】
そこで、本実施例では、車両10の惰性走行時にアクセル操作が行われた場合、ECM50は、燃料カットを維持しつつ、アクセル操作の操作量(以下、アクセル操作量ともいう)の増加に応じて回生量を調整するようにしている。
【0041】
以上のように構成された車両10のECM50の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。図2の動作は所定周期で繰り返し実行される。
【0042】
図2において、ECM50は、車速の減速中に燃料カットと回生を行う(ステップS1)。ここでは、ECM50は、アクセル操作が行われておらず、車両10が惰性走行をしている場合に、エンジン20の燃料カットとISG40の回生とを実施する。このときの回生量は、所定の最大回生量である。
【0043】
次いで、ECM50は、アクセル操作の有無を繰り返し判断する(ステップS2)。そして、アクセル操作が行われた場合、ECM50は、アクセル操作量が所定アクセル操作量(図中、所定操作量と記す)以上であるか否かを判断する(ステップS3)。
【0044】
ECM50は、アクセル操作量が所定アクセル操作量未満の場合(ステップS3でNO)は、アクセル操作量の増加に応じて回生量を減少させる(ステップS4)。つまり、ECM50は、アクセル操作量が大きいほど回生量が減少するようにISG40を制御する。これにより、アクセル操作量が大きいほどISG40の回生トルク(負の走行トルク)が減少し、車両10の減速度が緩やかになる。ECM50は、ステップS4で回生量を減少させた後、ステップS3に戻る。しがって、惰性走行中にアクセル操作が行われた場合は、アクセル操作量が大きいほど車両10の減速度が緩やかになる。
【0045】
一方、ECM50は、アクセル操作量が所定アクセル操作量以上の場合(ステップS3でYES)は、燃料カットの終了と同時に回生量を増加する(ステップS5)。詳しくは、ECM50は、アクセル操作量が所定アクセル操作量に到達した場合、燃料カットを終了するとともに、回生量を所定の最大回生量に増加させる。なお、本実施例では、ECM50は、アクセル操作量が所定操作量に到達した後にさらに増加した場合は、所定操作量からのアクセル操作量の増加量に応じて回生量を所定の最大回生量から減少させる。
【0046】
次に、図2のフローチャートの動作が行われたときの車両状態の推移について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。図3は、アクセル操作量、エンジントルク、ISGトルク、合算トルク、燃料カットフラグ、車両10の加速度、車速の推移を示している。
【0047】
図3において、時刻t0の初期状態では、車両10は惰性走行をしている。この状態では、アクセル操作量がゼロであり、燃料カットフラグがONにされている。このため、燃料カットが実施され、エンジントルクはゼロとなっている。また、ISGトルクが回生側となるようにISG40が制御されている。したがって、いわゆるエンジンブレーキと回生トルクとによって、車両10の加速度は負の値となっており、車速が次第に減少している。
【0048】
その後、時刻t1で、アクセル操作が行われたことにより、燃料カットを維持したまま、アクセル操作量の増加に応じて回生トルクが減少される。これにより、車両10の負の加速度が0に向かって減少する。言い換えれば、車速の減速度が低下する。
【0049】
その後、時刻t2で、アクセル操作量が所定アクセル操作量(図中、THと記す)に到達したことにより、燃料カットフラグがOFFにされ、エンジントルクが発生する。また、ISGトルクは一時的に最大の回生トルクに設定される。この時刻t2では、燃料供給の再開によるエンジン20の始動に伴って急増したエンジントルクが、最大の回生トルクによって相殺される。また、時刻t2以降は、ISGトルクとエンジントルクの合算トルクが正の値となるため、車両の加速度が正の値となる。
【0050】
その後、アクセル操作量が増加するに連れてISGトルクが最大の回生トルクから減少する。そして、時刻t3で、回生トルクが再びゼロになる。
【0051】
以上のように、本実施例において、ECM50は、燃料カットと回生とを実施中にアクセル操作が行われ、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量未満の場合は、燃料カットを維持し、かつアクセル操作の操作量の増加に応じて回生の回生量を減少させる。そして、ECM50は、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量に到達した場合は、燃料カットを終了し、かつ回生量を増加させる。
【0052】
これにより、車両10の惰性走行時にアクセル操作が行われた場合、アクセル操作の操作量の増加に応じて回生量が減少するので、車両10の減速度を調整することができる。この結果、回生量を確保しつつ減速度の調整を行うことができる。また、アクセル操作量を一定に保つことよって所望の減速度に調整できるので、アクセルペダルを頻繁に踏み込んだり開放したりする必要がなくなり、ドライバビリティを向上させることができる。
【0053】
また、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量に到達した場合は、燃料カットを終了し、かつ回生量を増加させることにより、エンジントルクの急増によるショックを回生トルクにより打ち消すことができ、ドライバビリティを向上できる。
【0054】
また、本実施例において、所定アクセル操作量は、回生量が減少してゼロとなるときの操作量に設定されている。
【0055】
これにより、アクセル操作量が所定アクセル操作量に到達するまでの合算トルクの変化を滑らかにすることができ、ドライバビリティを向上できる。
【0056】
また、本実施例において、アクセル操作が行われていないときの回生量は、所定の最大回生量に設定されている。そして、ECM50は、アクセル操作の操作量が所定アクセル操作量に到達した場合は、燃料カットを終了し、かつ回生量を最大回生量に増加させる。
【0057】
これにより、エンジン20の始動に伴って急増するエンジントルクを最大回生量の回生トルクにより確実に相殺することができ、ドライバビリティを向上できる。
【実施例2】
【0058】
次に、本発明の第2実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。なお、本実施例に係る車両の制御装置は、図1に示す第1実施例と同様の構成において制御内容を異ならせたものであるため、制御内容について説明する。図4および図5は、本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートおよびタイミングチャートである。
【0059】
本実施例のECM50の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。図4の動作は所定周期で繰り返し実行される。
【0060】
図4において、ECM50は、車速の減速中に燃料カットと回生を行う(ステップS11)。ここでは、ECM50は、アクセル操作が行われておらず、車両10が惰性走行をしている場合に、エンジン20の燃料カットとISG40の回生とを実施する。このときの回生量は、所定の最大回生量である。
【0061】
次いで、ECM50は、アクセル操作の有無を繰り返し判断する(ステップS12)。そして、アクセル操作が行われた場合、ECM50は、アクセル操作量が第1アクセル操作量以上であるか否かを判断する(ステップS13)。
【0062】
ECM50は、アクセル操作量が第1アクセル操作量未満の場合(ステップS13でNO)は、アクセル操作量の増加に応じて回生量を減少させる(ステップS14)。つまり、ECM50は、燃料カットと回生の実施中にアクセル操作が行われた場合は、アクセル操作量が増加するほど回生量が減少するようにISG40を制御する。これにより、アクセル操作量が増加するほどISG40の回生トルク(負の走行トルク)が減少し、車両10の減速度が緩やかになる。アクセル操作量が第1アクセル操作量に到達したときに回生トルクがゼロとなるように、回生トルクの減少率が設定されている。
【0063】
一方、ECM50は、アクセル操作量が第1アクセル操作量以上の場合(ステップS13でYES)は、燃料カットを維持しつつ、ISG40(図中、モータと記す)を力行させる(ステップS15)。このときのISG40の力行トルクは、車両10の減速度を緩める程度の小さなトルクである。力行トルクを発生しながら惰性走行を行う態様をEVコーストという。
【0064】
次いで、ECM50は、アクセル操作量が第2アクセル操作量以上であるか否かを繰り返し判断する(ステップS16)。第2アクセル操作量は第1アクセル操作量よりも大きく設定されている。
【0065】
そして、ECM50は、アクセル操作量が第2アクセル操作量以上の場合(ステップS16でYES)は、エンジン20の燃料カットとISG40の力行を終了させる(ステップS17)。
【0066】
次に、図4のフローチャートの動作が行われたときの車両状態の推移について、図5のタイミングチャートを参照して説明する。図5は、アクセル操作量、エンジントルク、ISGトルク、合算トルク、燃料カットフラグ、車両10の加速度、車速の推移を示している。
【0067】
図5において、時刻t10の初期状態では、車両10は惰性走行をしている。この状態では、アクセル操作量がゼロであり、燃料カットフラグがONにされている。このため、燃料カットが実施され、エンジントルクはゼロとなっている。また、ISGトルクが回生側となるようにISG40が制御されている。したがって、いわゆるエンジンブレーキと回生トルクとによって、車両10の加速度は負の値となっており、車速が次第に減少している。
【0068】
その後、時刻t11で、アクセル操作が行われたことにより、燃料カットを維持したまま、アクセル操作量の増加に応じて回生トルクが減少される。これにより、車両10の負の加速度が0に向かって減少する。言い換えれば、車速の減速度が低下する。
【0069】
その後、時刻t12で、アクセル操作量が第1アクセル操作量(図中、TH1と記す)に到達したことにより、燃料カットを維持しつつ、ISGトルクが回生から力行に切り替えられる。
【0070】
その後、時刻t13で、アクセル操作量が第2アクセル操作量(図中、TH2と記す)に到達したことにより、燃料カットが終了し、かつ力行が終了する。この時刻t13では、エンジントルクが発生し、エンジントルクによる走行が開始される。また、エンジントルクの発生により合算トルクが正のトルクとなるため、車速が減少から増加に転じる。したがって、第2アクセル操作量は、合算トルクおよび加速度の値が負から正に切り替わる閾値である。
【0071】
その後、時刻t14では、アクセル操作量がさらに増加して一定となり、アクセル操作量に応じたエンジントルクによって車速が増加する。
【0072】
なお、第2実施例において、アクセル操作の操作量が第2アクセル操作量に到達した場合に、燃料カットの終了とともに一時的に回生量を所定の最大回生量に増加させてもよい。このようにすることで、第1実施例と同様に、エンジントルクの急増時のショックを回生トルクにより打ち消すことができ、ドライバビリティを向上できる。
【0073】
以上のように、本実施例において、ECM50は、燃料カットと回生とを実施中にアクセル操作が行われ、アクセル操作の操作量が第1アクセル操作量未満の場合は、燃料カットを維持し、かつアクセル操作の操作量の増加に応じて回生の回生量を減少させる。そして、ECM50は、アクセル操作の操作量が第1アクセル操作量以上の場合は、回生を終了して力行を行う。また、ECM50は、アクセル操作の操作量が第1アクセル操作量よりも大きい第2アクセル操作量以上の場合は、燃料カットを終了し、かつ力行を終了する。
【0074】
これにより、車両10の惰性走行時にアクセル操作が行われた場合、アクセル操作の操作量の増加に応じて回生量が減少するので、車両10の減速度を調整することができる。この結果、回生量を確保しつつ減速度の調整を行うことができる。
【0075】
また、アクセル操作量が第1アクセル操作量以上かつ第2アクセル操作量未満の場合は、燃料カットが維持されるので、燃料カットの終了による燃料消費を回避でき、燃料消費量を抑制できる。さらに、アクセル操作量が第1アクセル操作量以上かつ第2アクセル操作量未満の場合は、ISG40による力行が行われるので、車両10の減速度を緩めることができる。
【0076】
また、アクセル操作の操作量が第1アクセル操作量よりも大きい第2アクセル操作量以上の場合は、燃料カットを終了し、かつ力行を終了するので、力行により車両10の減速度が緩められた状態から、エンジントルクにより車両10が加速する状態に滑らかに移行することができる。
【0077】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0078】
10 車両
20 エンジン
40 ISG(回転電機)
50 ECM(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5