(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】温度センサ用の超音波接合装置及び超音波接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20241203BHJP
G01K 7/22 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B23K20/10
G01K7/22 L
(21)【出願番号】P 2021006184
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昂平
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 悠
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-090704(JP,A)
【文献】特開2018-195393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
G01K 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性フィルムの上面に形成され前記感熱素子に接続された一対のパターン配線とを備えた温度センサ本体に対し、前記一対のパターン配線と一対のリードフレームとを超音波接合する装置であって、
前記絶縁性フィルムを下にして前記温度センサ本体が上面に載置されるアンビルと、
前記一対のパターン配線上に載置した一対の前記リードフレームに加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波ホーンとを備え、
前記アンビルの上面であって少なくとも前記超音波ホーンの直下が、平坦面とされ
、
前記感熱素子及び前記パターン配線を避けた位置で前記絶縁性フィルムを上から押さえ付ける押さえ付け部を備え、
前記押さえ付け部が、前記アンビルの上面に載置される前記温度センサ本体の前記感熱素子を囲んだコ字状に形成されていると共に前記絶縁性フィルムの外縁部を押さえ付けることを特徴とする温度センサ用の超音波接合装置。
【請求項2】
絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性フィルムの上面に形成され前記感熱素子に接続された一対のパターン配線とを備えた温度センサ本体に対し、前記一対のパターン配線と一対のリードフレームとを超音波接合する装置であって、
前記絶縁性フィルムを下にして前記温度センサ本体が上面に載置されるアンビルと、
前記一対のパターン配線上に載置した一対の前記リードフレームに加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波ホーンとを備え、
前記アンビルの上面であって少なくとも前記超音波ホーンの直下が、平坦面とされ、
前記アンビルの上面に載置される前記絶縁性フィルムを吸引可能な吸引口が前記アンビルの上面に開口して複数形成され、
前記複数の吸引口が、前記一対のパターン配線と前記一対のリードフレームとの接合部分を避けて配置されていることを特徴とする温度センサ用の超音波接合装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の温度センサ用の超音波接合装置において、
前記複数の吸引口のうち少なくとも1つが、前記アンビルの上面に載置される前記温度センサ本体の前記感熱素子の直下に配されていることを特徴とする温度センサ用の超音波接合装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の温度センサ用の超音波接合装置により前記温度センサ本体の前記一対のパターン配線と前記一対のリードフレームとを接合する温度センサ用の超音波接合方法であって、
前記アンビルの上面に前記温度センサ本体を載置する載置工程と、
前記一対のパターン配線上に載置した一対の前記リードフレームに前記超音波ホーンで加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波接合工程とを有し、
前記アンビルの上面であって前記超音波ホーンの直下が、平坦面とされ
、
前記載置工程前に、前記絶縁性フィルムの下面を予めブラスト処理して粗面化しておくフィルム粗面化工程を有していることを特徴とする温度センサ用の超音波接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性フィルムを用いた温度センサ本体にリードフレームを接合するための温度センサ用の超音波接合装置及び超音波接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタに使用されている加熱ローラ等の温度を測定するための温度センサとして、ポリイミド樹脂等の絶縁性フィルムを基板に用いた温度センサが知られている。例えば、特許文献1には、複写機やプリンタに使用されている加熱ローラ等の温度を測定するための温度センサとして、絶縁性フィルムと、絶縁性フィルム上に設けられた感熱素子と、絶縁性フィルム上の感熱素子に接続された一対のパターン配線と、一対のパターン配線に接続された一対のリードフレームを備えた温度センサが記載されている。
この温度センサでは、リードフレームを、主にはんだ接合によってパターン配線に接着している。
また、リードフレームの接合方法としては、他に超音波接合装置(例えば特許文献2参照)を用いた超音波接合等の他の接合方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-145655号公報
【文献】特開2019-188405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、リードフレームとパターン配線とを、はんだ接合により接続する場合、ヒートサイクルによるはんだクラック(劣化)が生じるおそれがあると共に、はんだリフローによる熱がかかる(熱履歴)ことや、はんだ形状の管理が難しいという不都合があった。このため、上述したように他の接合方法、特に超音波接合によりリードフレームとパターン配線との接合を行うことが検討されている。しかしながら、従来の超音波接合では、
図5に示すように、アンビル107のワーク固定面に凹凸を設けてワークの樹脂フィルム2に食い込ませて固定しているため、絶縁性フィルム2に孔が開くなどのダメージが生じてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、絶縁性フィルムにダメージが入り難い温度センサ用の超音波接合装置及び超音波接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサ用の超音波接合装置は、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性フィルムの上面に形成され前記感熱素子に接続された一対のパターン配線とを備えた温度センサ本体に対し、前記一対のパターン配線と一対のリードフレームとを超音波接合する装置であって、前記絶縁性フィルムを下にして前記温度センサ本体が上面に載置されるアンビルと、前記一対のパターン配線上に載置した一対の前記リードフレームに加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波ホーンとを備え、前記アンビルの上面であって少なくとも前記超音波ホーンの直下が、平坦面とされていることを特徴とする。
【0007】
この温度センサ用の超音波接合装置では、アンビルの上面であって少なくとも超音波ホーンの直下が、平坦面とされているので、アンビルの絶縁性フィルムの固定面が平らであることで絶縁性フィルムにダメージが入り難く、良好な接着状態を得ることができる。
【0008】
第2の発明に係る温度センサ用の超音波接合装置は、第1の発明において、前記感熱素子及び前記パターン配線を避けた位置で前記絶縁性フィルムを上から押さえ付ける押さえ付け部を備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合装置では、感熱素子及びパターン配線を避けた位置で絶縁性フィルムを上から押さえ付ける押さえ付け部を備えているので、感熱素子及びパターン配線を傷付けることなく、安定して絶縁性フィルムを固定して、超音波接合時に位置ずれを抑制することができる。
【0009】
第3の発明に係る温度センサ用の超音波接合装置は、第2の発明において、前記押さえ付け部が、前記アンビルの上面に載置される前記温度センサ本体の前記感熱素子を囲んだコ字状に形成されていると共に前記絶縁性フィルムの外縁部を押さえ付けることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合装置では、押さえ付け部が、感熱素子を囲んだコ字状に形成されていると共に絶縁性フィルムの外縁部を押さえ付けるので、感熱素子の周囲で絶縁性フィルムの外縁部をより安定して固定することができ、より位置ずれを抑制することが可能になる。
【0010】
第4の発明に係る温度センサ用の超音波接合装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記アンビルの上面に載置される前記絶縁性フィルムを吸引可能な吸引口が前記アンビルの上面に開口して複数形成され、前記複数の吸引口が、前記一対のパターン配線と前記一対のリードフレームとの接合部分を避けて配置されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合装置では、複数の吸引口が、一対のパターン配線と一対のリードフレームとの接合部分を避けて配置されているので、接合部分に影響を与えることなく、吸引口で絶縁性フィルムを下から吸引して固定することができる。
【0011】
第5の発明に係る温度センサ用の超音波接合装置は、第4の発明において、前記複数の吸引口のうち少なくとも1つが、前記アンビルの上面に載置される前記温度センサ本体の前記感熱素子の直下に配されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合装置では、複数の吸引口のうち少なくとも1つが、アンビルの上面に載置される温度センサ本体の感熱素子の直下に配されているので、上から押さえ付けることができない感熱素子の直下で吸引することで、絶縁性フィルムの感熱素子直下の部分も安定して固定することができる。
【0012】
第6の発明に係る温度センサ用の超音波接合方法は、第1から第5の発明のいずれかの温度センサ用の超音波接合装置により前記温度センサ本体の前記一対のパターン配線と前記一対のリードフレームとを接合する温度センサ用の超音波接合方法であって、前記アンビルの上面に前記温度センサ本体を載置する載置工程と、前記一対のパターン配線上に載置した一対の前記リードフレームに前記超音波ホーンで加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波接合工程とを有し、前記アンビルの上面であって前記超音波ホーンの直下が、平坦面とされていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合方法では、アンビルの上面であって超音波ホーンの直下が、平坦面とされているので、絶縁性フィルムにダメージが入り難く、良好な接着状態を得ることができる。
【0013】
第7の発明に係る温度センサ用の超音波接合方法は、第6の発明において、前記載置工程前に、前記絶縁性フィルムの下面を予めブラスト処理して粗面化しておくフィルム粗面化工程を有していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサ用の超音波接合方法では、載置工程前に、絶縁性フィルムの下面を予めブラスト処理して粗面化しておくフィルム粗面化工程を有しているので、絶縁性フィルムの下面の摩擦抵抗が上がって、接合時にずれ難くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る超音波接合装置及び超音波接合方法によれば、アンビルの上面であって少なくとも超音波ホーンの直下が、平坦面とされているので、アンビルの絶縁性フィルムの固定面が平らであることで絶縁性フィルムにダメージが入り難く、良好な接着状態を得ることができる。
したがって、本発明の超音波接合装置及び超音波接合方法では、はんだレスによる部材点数の削減及び信頼性の向上を図ることができると共に、絶縁性フィルムへのダメージが大幅に低減され、良好な接着状態による温度センサの高速応答と高信頼性とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る超音波接合装置及び超音波接合方法の一実施形態において、超音波接合装置を示す概略的な構成図である。
【
図2】本実施形態において、温度センサ本体にリードフレームを接合する際の押さえ付け部の位置を示す平面図(a)及びA-A線断面図(b)である。
【
図3】本実施形態において、リードフレームが接続された温度センサを示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る超音波接合装置及び超音波接合方法の従来例(a)及び実施例(b)によって接合した絶縁性フィルム上のパターン配線とリードフレームとの接合部分を示す裏面画像である。
【
図5】本発明に係る超音波接合装置及び超音波接合方法の従来例において、超音波接合装置を示す概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る超音波接合装置及び超音波接合方法における本実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している。
【0017】
本実施形態の超音波接合装置1は、
図1及び
図2に示すように、絶縁性フィルム2と、絶縁性フィルム2の上面に設けられた感熱素子3と、絶縁性フィルム2の上面に形成され感熱素子3に接続された一対のパターン配線4とを備えた温度センサ本体5に対し、一対のパターン配線4と一対のリードフレーム6とを超音波接合する装置である。
【0018】
本実施形態の超音波接合装置1は、絶縁性フィルム2を下にして温度センサ本体5が上面に載置されるアンビル7と、一対のパターン配線4上に載置した一対のリードフレーム6に加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波ホーン8とを備えている。
上記アンビル7の上面であって少なくとも超音波ホーン8の直下は、平坦面とされている。
【0019】
また、超音波接合装置1は、上記感熱素子3及びパターン配線4を避けた位置で絶縁性フィルム2を上から押さえ付ける押さえ付け部9を備えている。
上記押さえ付け部9は、
図2に示すように、アンビル7の上面に載置される温度センサ本体5の感熱素子3を囲んだコ字状に形成されていると共に絶縁性フィルム2の外縁部を押さえ付けるように設定されている。
なお、
図2の(a)において、押さえ付け部9により絶縁性フィルム2を押さえている領域9aにハッチングを施している。また、リードフレーム6とパターン配線4との接合部分4bにもハッチングを施している。さらに、
図2の(a)には、アンビル7上に載置した際の吸引口10aの位置も破線で図示している。
【0020】
上記アンビル7の上面に載置される絶縁性フィルム2を吸引可能な吸引口10aは、アンビル7の上面に開口して複数形成されている。
上記複数の吸引口10aは、一対のパターン配線4と一対のリードフレーム6との接合部分4bを避けて配置されている。
また、複数の吸引口10aのうち少なくとも1つは、アンビル7の上面に載置される温度センサ本体5の感熱素子3の直下に配されている。
なお、上記複数の吸引口10aには、真空ポンプ等の吸引源10が接続されている。
【0021】
上記絶縁性フィルム2は、例えば厚さ7.5~125μmのポリイミド樹脂シートで帯状に形成されている。なお、絶縁性フィルム2としては、他にPET:ポリエチレンテレフタレート,PEN:ポリエチレンナフタレート等でも作製できるが、加熱ローラの温度測定用としては、最高使用温度が230℃と高いためポリイミドフィルムが望ましい。
【0022】
上記感熱素子3は、例えばサーミスタ材料で形成され両端部に端子電極が形成されたチップサーミスタである。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、感熱素子3として、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn-Co-Cu系材料、Mn-Co-Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0023】
上記パターン配線4は、銅箔でパターン形成されている。
一対のパターン配線4の一端部は、感熱素子3の対応する端子電極にそれぞれ接続されている。また、パターン配線4の他端部には、リードフレーム6と接続するためのパッド部4aが設けられている。
【0024】
上記超音波ホーン(共振体)8は、その下面に複数の凸部が形成され接合部分4bの形状に対応して接触面が矩形とされている。
本実施形態の超音波接合装置1は、超音波ホーン8に接続され超音波ホーン8に超音波振動を与える超音波振動子(図示略)と、超音波ホーン8を上方からアンビル7上のワーク(温度センサ本体5及びリードフレーム6)に押し付けて加圧する加圧機構(図示略)とを備えている。
【0025】
上記アンビル7は、X-Yステージ(図示略)上に設置されて水平面上で移動可能となっている。
また、超音波接合装置1は、上記押さえ付け部9をアンビル7上の絶縁性フィルム2に一定の加重で押し付ける押し付け機構(図示略)も備えている。
【0026】
次に、本実施形態の超音波接合方法は、上記超音波接合装置1により温度センサ本体5の一対のパターン配線4と一対のリードフレーム6とを接合する温度センサ用の超音波接合方法であって、アンビル7の上面に温度センサ本体5を載置する載置工程と、超音波ホーン8で一対のパターン配線4上に載置した一対のリードフレーム6に加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる超音波接合工程とを有している。
【0027】
また、本実施形態の超音波接合方法は、上記載置工程前に、絶縁性フィルム2の下面を予めブラスト処理して粗面化してフィルム粗面化工程を有している。
上記載置工程では、さらに押さえ付け部9により感熱素子3及びパターン配線4を避けた位置で絶縁性フィルム2の外縁部を上から押さえ付ける。
この状態で超音波接合工程により、一対のパターン配線4上に載置した一対のリードフレーム6に超音波ホーン8で加重を加えると共に超音波振動を印加して接合させる。
これにより、
図3に示すように、温度センサ本体5に一対のリードフレーム6が接続されて温度センサが作製される。
【0028】
このように本実施形態の超音波接合装置1及び超音波接合方法では、アンビル7の上面であって少なくとも超音波ホーン8の直下が、平坦面とされているので、アンビル7の絶縁性フィルム2の固定面が平らであることで絶縁性フィルム2にダメージが入り難く、良好な接着状態を得ることができる。
【0029】
また、感熱素子3及びパターン配線4を避けた位置で絶縁性フィルム2を上から押さえ付ける押さえ付け部9を備えているので、感熱素子3及びパターン配線4を傷付けることなく、安定して絶縁性フィルム2を固定して、超音波接合時に位置ずれを抑制することができる。
特に、押さえ付け部9が、感熱素子3を囲んだコ字状に形成されていると共に絶縁性フィルム2の外縁部を押さえ付けるので、感熱素子3の周囲で絶縁性フィルム2の外縁部をより安定して固定することができ、より位置ずれを抑制することが可能になる。
【0030】
また、複数の吸引口10aが、一対のパターン配線4と一対のリードフレーム6との接合部分4bを避けて配置されているので、接合部分4bに影響を与えることなく、吸引口10aで絶縁性フィルム2を下から吸引して固定することができる。
さらに、複数の吸引口10aのうち少なくとも1つが、アンビル7の上面に載置される温度センサ本体5の感熱素子3の直下に配されているので、上から押さえ付けることができない感熱素子3の直下で吸引することで、絶縁性フィルム2の感熱素子3直下の部分も安定して固定することができる。
【0031】
また、本実施形態の温度センサ用の超音波接合方法では、載置工程前に、絶縁性フィルム2の下面を予めブラスト処理して粗面化しておくフィルム粗面化工程を有しているので、絶縁性フィルム2の下面の摩擦抵抗が上がって、接合時にずれ難くなる。
【実施例】
【0032】
本実施形態の温度センサ用の超音波接合装置を用いて絶縁性フィルム上のパターン配線とリードフレームとの超音波接合を実際に行った際の裏面側から撮った画像を、
図4の(b)に示す。また、比較のため、従来例の超音波接合装置を用いて絶縁性フィルム上のパターン配線とリードフレームとの超音波接合を行った場合の画像を、
図4の(a)に示す。
これらの画像からわかるように、従来の超音波接合装置では超音波接合ではアンビル上の凹凸によって接合状態で絶縁性フィルムに複数の孔が形成されてしまったのに対し、本実施例の超音波接合装置では、ワーク載置面が平坦なアンビルによって接合状態で絶縁性フィルムに孔が形成されておらず、接合部分全体が良好に接合されている。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、感熱素子としてチップサーミスタを採用しているが、薄膜サーミスタや焦電素子などを採用しても構わない。
【符号の説明】
【0034】
1…超音波接合装置、2…絶縁性フィルム、3…感熱素子、4…パターン配線、4b…パターン配線とリードフレームとの接合部分、5…温度センサ本体、6…リードフレーム、7…アンビル、8…超音波ホーン、9…押さえ付け部、10a…吸引口