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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法および吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241203BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61F13/15 329
A61F13/15 320
A61F13/15 323
A61F13/15 330
A61F13/15 352
A61F13/15 353
A61F13/532 200
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021010548
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114301
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雄貴
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163004(JP,A)
【文献】特開2007-267763(JP,A)
【文献】特開2017-196278(JP,A)
【文献】特開2019-042387(JP,A)
【文献】特開2015-119786(JP,A)
【文献】特開2010-213910(JP,A)
【文献】特開2016-123628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0065973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者が排出した液体を吸収する吸収体を備える吸収性物品の製造方法であって、
前記吸収体の非肌面側に高吸収性重合体であるSAPの粒子群を配置するSAP配置工程と、
前記吸収体を前記非肌面側から圧搾することで、圧搾部を形成する圧搾工程と、
前記吸収体をプレスすることで、前記吸収体の肌面側の前記圧搾部と対応する位置に凹部を形成する凹部形成工程と、
を含む、吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記圧搾工程において、前記圧搾部を溝状に形成し、
前記凹部形成工程において、前記凹部を溝状に形成する、
請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記吸収体の前記非肌面側に非肌面側シートを貼着する非肌面側シート貼着工程であって、前記圧搾部の表面の少なくとも一部と前記非肌面側シートとを非接着にする非肌面側シート貼着工程
を含む、請求項1または2に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記吸収体は、吸収性コアを有し、
前記吸収性コアを前記肌面側から前記非肌面側に貫通する貫通孔を形成する孔形成工程
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記凹部形成工程の後に、前記吸収体の前記肌面側に肌面側シートを伸張した状態で貼着する肌面側シート貼着工程
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
前記圧搾工程において、前記圧搾部を格子状に形成し、
前記凹部形成工程において、前記凹部を格子状に形成し、
前記凹部の格子点は前記肌面側シートと非接着である、
請求項5に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
着用者が排出した液体を吸収する吸収体を備える吸収性物品であって、
前記吸収体の非肌面側に配置された高吸収性重合体であるSAPの粒子群と、
前記吸収体の非肌面側に形成された圧搾部と、
前記吸収体の肌面側の前記圧搾部と対応する位置に形成された凹部と、
を備える、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の製造方法および吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
尿や体液等の液体を吸収する吸収性物品において、吸収体を圧搾することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-103782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品においては、吸収体を圧搾して圧搾溝を設けることで、圧搾溝を介して液体を吸収体全体に拡散させることが知られている。しかしながら、吸収体の圧搾された部分が固くなり、この部分が肌に直接的または間接的に触れることによって吸収性物品の装着感が低下してしまう。
【0005】
本発明は、吸収性物品の装着感を向上可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、吸収体を非肌面側から圧搾することにした。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者が排出した液体を吸収する吸収体を備える吸収性物品の製造方法であって、前記吸収体の非肌面側に高吸収性重合体であるSAPの粒子群を配置するSAP配置工程と、前記吸収体を前記非肌面側から圧搾することで、圧搾部を形成する圧搾工程と、前記吸収体をプレスすることで、前記吸収体の肌面側の前記圧搾部と対応する位置に凹部を形成する凹部形成工程と、を含む。
【0008】
上記吸収性物品の製造方法において、前記圧搾工程において、前記圧搾部を溝状に形成し、前記凹部形成工程において、前記凹部を溝状に形成してもよい。
【0009】
上記吸収性物品の製造方法は、前記吸収体の前記非肌面側に前記非肌面側シートを貼着する非肌面側シート貼着工程であって、前記圧搾部の表面の少なくとも一部と前記非肌面側シートとを非接着にする非肌面側シート貼着工程を含んでいてもよい。
【0010】
上記吸収性物品の製造方法において、前記吸収体は、吸収性コアを有し、前記吸収性コアを前記肌面側から前記非肌面側に貫通する貫通孔を形成する孔形成工程を含んでいてもよい。
【0011】
上記吸収性物品の製造方法は、前記凹部形成工程の後に、前記吸収体の前記肌面側に肌面側シートを伸張した状態で貼着する肌面側シート貼着工程を含んでいてもよい。
【0012】
上記吸収性物品の製造方法において、前記圧搾工程において、前記圧搾部を格子状に形成し、前記凹部形成工程において、前記凹部を格子状に形成し、前記凹部の格子点は前記肌面側シートと非接着であってもよい。
【0013】
また、本発明を吸収性物品の側面から捉えることができる。例えば、本発明は、着用者が排出した液体を吸収する吸収体を備える吸収性物品であって、前記吸収体の非肌面側に配置された高吸収性重合体であるSAPの粒子群と、前記吸収体の非肌面側に形成された圧搾部と、前記吸収体の肌面側の前記圧搾部と対応する位置に形成された凹部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吸収性物品の装着感を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態1に係るおむつの斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るおむつの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図4図4は、実施形態1に係るおむつを幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図5図5は、実施形態1に係るおむつの凹部近傍を拡大した断面図である。
図6図6は、実施形態1に係るおむつの製造方法に関するフローチャートである。
図7図7は、実施形態1に係るおむつの製造方法で用いる製造装置を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係るおむつの製造方法で用いる製造装置の圧搾部形成装置の斜視図である。
図9図9は、実施形態1の変形例1-1に係るおむつの製造方法に関するフローチャートである。
図10図10は、実施形態1の変形例1-1に係るおむつの製造方法で用いる製造装置を示す図である。
図11図11は、吸収体を肌面側から見た平面図である。
図12図12は、実施形態2に係る伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
図13図13は、実施形態2に係るおむつを幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図14図14は、実施形態2に係るおむつの製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0017】
<実施形態1>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れに
も直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0018】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非肌面側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0019】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BRおよびウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0020】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、熱可塑性樹脂からなる液不透過性の不織布をその材料として用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0021】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5(本願でいう「非肌面側シート」の一例)、吸収体6、トップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)を有する。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、装着状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたエアスルー不織布からなる。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。なお、おむつ1の長手方向と、吸収体6およびトップシート7の長手方向とは、同じである。
【0022】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域
1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。
【0023】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で設けられる。
【0024】
また、おむつ1は、細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、おむつ1が装着状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0025】
なお、カバーシート4には、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ弾性部材4Cが弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて設けられる。
【0026】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0027】
吸収体6は、吸収性コアと吸収性コアの全体を包むコアラップシートとを有する(図4参照)。コアラップシートには、ティッシュペーパーや液透過性の不織布が用いられる。吸収性コアには、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維が用いられる。
【0028】
図3は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。図4は、図3のAA線で切断した場合のおむつ1の幅方向の断面図である。なお、図3および図4では、フロントパッチ2F,弾性部材4C,4SR,4SL,8EL,8ER,9ER,サイドシート8L,8Rの図示は省略する。
【0029】
本実施形態に係るおむつ1は、長方形状の吸収体6に対して斜め格子状に形成された圧搾部20および凹部21を備える。圧搾部20は、吸収体6を非肌面側から圧搾することで形成される。凹部21は、圧搾部20を形成した後に、吸収体6をプレスすることで、吸収体6の肌面側の圧搾部20と対応する位置に形成される。ここで対応する位置とは、おむつ1の厚み方向で重なる位置である。なお、圧搾部20および凹部21の形成工程に
ついては後述する。
【0030】
本実施形態では、圧搾部20および凹部21は、吸収体6に斜め方向に延在する溝状に形成されている。おむつ1は、吸収体6の肌面側に設けられた凹部21に沿って着用者が排出した尿を吸収体6の全体に拡散できる。また、おむつ1は、吸収体6の非肌面側に浸透してきた尿を圧搾部20に沿って吸収体6の全体に拡散できる。これにより、おむつ1は、着用者が排出した尿を吸収体6の全体で効率よく吸収することができる。また、おむつ1は、吸収体6に圧搾部20および凹部21を設けることによって吸収体6を折れ曲がり易くすることができるので、着用者に対するフィット感を向上させることができる。また、おむつ1は、吸収体6の肌面側に凹部21を設けることで、肌面側の通気性を確保でき、装着状態での蒸れを抑制できる。
【0031】
また、圧搾部20は吸収体6を圧搾することで形成される。圧搾された部分が固くなるため、仮に圧搾部20が着用者の肌にシートを介して間接的に触れると肌触りが悪く装着感が低下する。しかしながら、本実施形態では、圧搾部20は非肌面側に形成されているので、圧搾部20が着用者の肌にシートを介して間接的にも触れることがない。また、凹部21は、圧搾ではなく、プレスにより形成されているので圧搾部20よりも固くない。このため、おむつ1は、凹部21がトップシート7を介して着用者に触れても装着感が低下するのを抑制でき、以て、装着感を向上できる。
【0032】
図5は、図4の圧搾部20および凹部21付近を拡大した図である。トップシート7は、凹部21の表面全体と非接着であり、ホットメルト接着剤30によって凹部21の外側で吸収体6の表面と接着されている。本実施形態に係るおむつ1において、吸収体6は、吸収性コア6Aの非肌面側に配置された高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer)粒子群32を有する。SAPは、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーである。SAPは、粒状であり、SAP粒子群32は、SAPが多数集まって形成されている。吸収性コア6Aでは、液体を吸収する前後のSAPの体積変動は、基本的にはSAPを隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収性コア6A全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収性コア6Aの厚みの膨張率は、SAP自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0033】
また、本実施形態のSAPの粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0034】
本実施形態に係るおむつ1は、吸収性コア6Aの非肌面側にSAP粒子群32が配置されていることによって、吸収性コア6Aの非肌面側の繊維とSAPの粒子とが互いに絡み合ってアンカー効果を発揮する。吸収性コア6Aが圧搾や圧縮されると、これに対して復元力が発生するが、SAPによるアンカー効果によって、吸収性コア6Aの復元力を抑制する。おむつ1は、アンカー効果によって、吸収性コア6Aの復元力を抑制し、これによって圧搾部20の形状が保持され易くなる。なお、アンカー効果は、吸収性コア6A内でのSAPの密度が高まってSAPと吸収性コア6Aとの絡み合いが強まるほど大きく発揮される。
【0035】
また、吸収性コア6Aの非肌面側にSAP粒子群32を配置することで、吸収性コア6Aは非肌面側で尿を主に吸収、保持するため、吸収性コア6Aは尿吸収後では非肌面側が膨張する。このため、吸収性コア6Aは、尿吸収後でも肌面側では膨張しづらく、肌面側
に形成された凹部21の形状を維持し易くなる。これにより、おむつ1は、尿吸収後も凹部21の形状を維持することで通気性を確保し、装着感を向上できる。
【0036】
次に、本実施形態に係るおむつ1の製造方法について説明する。本実施形態に係るおむつ1の製造方法は、吸収体6に圧搾部20および凹部21を形成する工程に特徴を有しているため、以降では、これらの工程を主に説明する。図6は、本実施形態に係るおむつ1の製造方法の概要を示したフローチャートである。本実施形態に係るおむつの製造方法では、まず、吸収性コア6Aの非肌面側にSAPの粒子を散布する(ステップS101、本願でいう「SAP配置工程」の一例)。次いで、吸収体6を非肌面側から圧搾することで、圧搾部20を形成する(ステップS102、本願でいう「圧搾工程」の一例)。次いで、吸収体6をプレスすることで、吸収体6の肌面側の圧搾部20と対応する位置に凹部21を形成する(ステップS103、本願でいう「凹部形成工程」の一例)。吸収体6をプレスすることで、圧搾部20に対応する位置の吸収体6の肌面側が非肌面側に凹み、凹部21が形成される。次いで、吸収体6の肌面側にトップシート7を伸張した状態で貼着する(ステップS104、本願でいう「肌面側シート貼着工程」の一例)。本実施形態では、凹部形成工程の後にトップシート貼着工程が行われる。
【0037】
次に、図7及び図8に基づいて、本実施形態に係るおむつ1の製造方法についてより詳細に説明する。図7は、おむつ1の製造装置の一例を示した図である。おむつ1の製造方法に用いる製造装置Mは、搬送ラインM10、SAP散布装置M11、搬送ラインM20、圧搾部形成装置M2、プレス装置M3、塗布装置M4、トップシート供給体ローラM5を備える。搬送ラインM10は、吸収性コア6Aを一定方向(図中、矢印A1の方向)に搬送するコンベアである。搬送ラインM20は、吸収体6とトップシート7を一定方向(図中、矢印A1の方向)に搬送するコンベアである。製造工程において、吸収体6とトップシート7は連続体であり、それらを個々に分割することでおむつ一枚分の吸収体6とトップシート7とを得る。
【0038】
搬送ラインM10上では、吸収性コア6Aは非肌面側を上にして搬送される。SAP散布装置M11は、吸収性コア6Aの非肌面側にSAPの粒子を散布する(図6に示すステップS101)。吸収性コア6Aは、SAPの粒子が散布された後、コアラップシート6Bで包まれる(不図示)。これによって、吸収体6が作成される。吸収体6は、次の製造工程が行われる搬送ラインM20に運ばれる。
【0039】
搬送ラインM20では、吸収体6は肌面側を上にして搬送される。圧搾部形成装置M2は、アンビルローラM21と圧搾ローラM22を有する。図8は、圧搾部形成装置M2を拡大して示す斜視図である。アンビルローラM21は、吸収体6の肌面側となる側(図中、上側)に配置されており、圧搾ローラM22は、吸収体6の非肌面側となる側(図中、下側)に配置されている。アンビルローラM21と圧搾ローラM22は、所定のクリアランスを設けて対向配置されている。圧搾ローラM22は、吸収体6の非肌面側を圧搾する凸部M22Cを備える。凸部M22Cは、通過する吸収体6に対して斜め格子状に形成されている。図8中、吸収体6で隠れている部分の凸部M22Cも説明のために実線で図示している。なお、アンビルローラM21および圧搾ローラM22は、鉄などの金属製である。圧搾部形成装置M2は、搬送ラインM20の上流側から流れてきた吸収体6をアンビルローラM21と圧搾ローラM22の間を通過させることによって、凸部M22Cで非肌面側から圧搾する(図6に示すステップS102)。これにより、吸収体6に圧搾部20が形成される。
【0040】
搬送ラインM20の搬送経路における圧搾部形成装置M2の下流側にはプレス装置M3が設けられている。プレス装置M3は、プレスローラM31とアンビルローラM32を有する。プレスローラM31とアンビルローラM32は、所定のクリアランスを設けて対向
配置されている。なお、プレスローラM31およびアンビルローラM32は、鉄などの金属製である。プレス装置M2は、搬送ラインM20の上流側から流れてきた吸収体6をプレスローラM31とアンビルローラM32の間を通過させることによって、吸収体6をプレスする(図6に示すステップS103)。吸収体6をプレスすることで、圧搾部20に対応する位置の肌面側が非肌面側に凹み、凹部21が形成される。
【0041】
搬送ラインM20の搬送経路におけるプレス装置M3の下流側には塗布装置M4が設けられている。塗布装置M4はホットメルト接着剤を吸収体6の肌面側に塗布する。塗布装置M4は、複数のノズルを有しており、各ノズルからホットメルト接着剤を吐出することによって、吸収体6にストライプ状やドット状にホットメルト接着剤を塗布する。
【0042】
搬送ラインM20の搬送経路における塗布装置M4の下流側にはトップシート供給ローラM5が設けられている。トップシート供給ローラM5は、長尺の原反ロールから連続体であるトップシート7を搬送ラインM20に載っている吸収体6の上に載せる。この際、トップシート7を伸張した状態で吸収体6の上に載せる(図6に示すステップS104)。
【0043】
本実施形態に係るおむつ1の製造方法は、吸収体6を非肌面側から圧搾することで、圧搾部20を形成し、吸収体6をプレスすることで、吸収体6の肌面側の圧搾部20と対応する位置に凹部21を形成する。凹部21は、圧搾ではなく、プレスにより形成されているので圧搾部20よりも固くない。このため、本実施形態に係るおむつ1の製造方法によれば、凹部21がトップシート7を介して着用者に触れても装着感が低下するのを抑制でき、以て、装着感を向上できる。
【0044】
また、本実施形態では、凹部21を形成した後に、トップシート7を吸収体6の肌面側に伸張した状態で貼着している。これにより、トップシート7を凹部21に落ち込ませない、またはトップシート7を凹部21に僅かしか落ち込ませないようにし、凹部21がトップシート7を介して着用者の肌に触れないようにすることで、装着感を向上できる。
【0045】
また、吸収体6の肌面側にトップシート7を貼着した状態で肌面側から吸収体6を圧搾するとトップシート7に負荷がかかって破れてしまう虞もある。本実施形態では、吸収体6の肌面側にトップシート7を貼着する前に吸収体6を非肌面側から圧搾することで、トップシート7を含めて圧搾することがなく、また、吸収体6を非肌面側から圧搾することでコアラップシート6Bの肌面側が圧搾によって破れることを防止する。これにより、吸収性コア6Aに含まれるSAPが肌面側にこぼれてしまうことを防止できる。
【0046】
また、吸収性コア6Aの非肌面側にSAP粒子群32が配置されていることによってアンカー効果が発揮され、吸収性コア6Aの復元力が抑制されて圧搾部20の形状が保持され易くなる。
【0047】
<変形例1-1>
次に、本実施形態の変形例1-1に係るおむつ1の製造方法について説明する。図9は、本変形例に係るおむつ1の製造方法の概要を示したフローチャートである。本変形例に係るおむつの製造方法では、吸収体6の肌面側にトップシート7を伸張した状態で貼着した後(ステップS104の後)に、吸収体6の非肌面側にバックシート5を貼着する(ステップS105、本願でいう「非肌面側シート貼着工程」の一例)。ステップS105では、圧搾部20の表面の少なくとも一部とバックシート5とを非接着にする。これにより、圧搾部20とバックシート5の間に隙間が形成されるので、圧搾部20を尿を拡散させる流路として機能させることができる。これにより、おむつ1は、尿を吸収体6の非肌面側において拡散させ易くし、尿を吸収体6の非肌面側でより多く吸収、保持することがで
きる。このため、おむつ1は、尿吸収後であっても吸収体6の肌面側に形成された凹部21の形状を維持でき、凹部21によって通気性を確保できる。また、吸収体6の圧搾される側である非肌面側をバックシート5で覆うことで、仮にコアラップシート6Bの非肌面側が破れてしまっても、SAPがおむつ1の外部へこぼれ出てしまうことを抑止できる。
【0048】
次に、図10に基づいて、本変形例に係るおむつ1の製造方法についてより詳細に説明する。図10は、おむつ1の製造装置の一例を示した図である。おむつ1の製造方法に用いる製造装置Mは、搬送ラインM30、塗布装置M7、バックシート供給体ローラM8を備える。搬送ラインM30は、バックシート5、吸収体6、トップシート7を一定方向(図中、矢印A1の方向)に搬送するコンベアである。製造工程において、バックシート5、吸収体6、トップシート7は連続体であり、それらを個々に分割することでおむつ一つ分のバックシート5、吸収体6、トップシート7を得る。なお、トップシート7は吸収体6に既に貼着されており、吸収体6およびトップシート7は吸収体6を上側にして搬送されている。
【0049】
塗布装置M7は、ホットメルト接着剤を吐出するノズルを複数有し、吸収体6にホットメルト接着剤をストライプ状やドット状に塗布する。搬送ラインM30の搬送経路における塗布装置M7の下流側にはバックシート供給ローラM8が設けられている。バックシート供給ローラM8は、長尺の原反ロールから連続体であるバックシート5を搬送ラインM30に載っている吸収体6の上に載せる。この際、バックシート5を伸張した状態で吸収体6の上に載せる(図9に示すステップS105)。本変形例のように、圧搾部20の表面の少なくとも一部とバックシート5とを非接着にすることで、圧搾部20とバックシート5の間に隙間を形成できる。
【0050】
また、吸収体6の非肌面側に到達した尿は、圧搾部20を通じて吸収体6の全体に広がる。吸収性コア6Aの非肌面側にはSAPが配置されているため、吸収体6は、非肌面側で尿を保持し、これによって非肌面側が膨張する。このため、吸収性コア6Aは、尿吸収後でも肌面側では膨張しづらく、肌面側に形成された凹部21の形状を維持し易くなる。
【0051】
<変形例1-2>
次に、本実施形態の変形例1-2に係るおむつ1の製造方法について説明する。図11は、ホットメルト接着剤30が塗布された吸収体6を肌面側から見た平面図である。本変形例では、格子状に形成された凹部21同士が交差する格子点21Aはトップシート7と非接着にされる。
【0052】
本変形例に係るおむつ1の製造方法では、図7に示す塗布装置M4により、図6に示すようにホットメルト接着剤30を格子点21Aを避けてストライプ状に塗布する。これにより、おむつ1の製造工程において、トップシート7が凹部21に落ち込んでしまっても、格子点21Aではトップシート7と非接着にできる。格子点21Aは凹部21中でも固い部位であり、格子点21Aをトップシート7と非接着にすることで、着用者への肌当たりを柔らかくし、装着感を向上できる。
【0053】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るおむつ1について説明する。なお、上記実施形態に係るおむつ1および製造装置Mの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明は省略する。図12は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。図13は、図12のBB線で切断した場合のおむつ1の幅方向の断面図である。なお、図12および図13では、フロントパッチ2F,弾性部材4C,4SR,4SL,8EL,8ER,9ER,サイドシート8L,8Rの図示は省略する。
【0054】
本実施形態に係るおむつ1は、吸収性コア6Aを肌面側から非肌面側に延在する貫通孔22を有する。貫通孔22は、吸収体6の幅方向中心部で股下領域1Bの前身頃領域1F側に形成されている。この位置は、おむつ1の装着状態で着用者の尿道口が配置される位置である。図13に示すように、貫通孔22は、吸収性コア6Aを肌面側から非肌面側に貫通することによって形成されている。本実施形態に係るおむつ1は、貫通孔22によって吸収体6の非肌面側に尿を移動させる。また、本実施形態に係るおむつ1は上記実施形態1の変形例1-1のように圧搾部20の表面とバックシート5の少なくとも一部を非接着にすることで、圧搾部20とバックシート5の間に隙間が形成されるいる場合には、尿を貫通孔22で吸収体6の非肌面側に移動させることにより、圧搾部20でより大量の尿を吸収体6の非肌面側に拡散させることができる。おむつ1は、尿を吸収体6の非肌面側において拡散させ易くし、尿を吸収体6の非肌面側でより多く吸収、保持することができる。このため、おむつ1は、尿吸収後であっても吸収体6の肌面側に形成された凹部21の形状を維持でき、凹部21によって通気性を確保できる。
【0055】
次に、本実施形態に係るおむつ1の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法は、吸収体6に貫通孔22を形成する孔形成工程を有する。図14は、本実施形態に係るおむつ1の製造方法の概要を示したフローチャートである。本実施形態に係る製造方法では、まず、吸収性コア6Aの非肌面側にSAPの粒子を散布する(ステップS201、本願でいう「SAP配置工程」の一例)。ステップ201の工程は、ステップS101の工程と同様である。次いで、吸収体6の吸収性コア6Aに穿孔装置によって貫通孔22を形成する(ステップS202、本願でいう「孔形成工程」の一例)。次いで、ステップS203~ステップS206は、上記実施形態1におけるステップS102~105と同様である。なお、ステップS201とステップS202の工程の順番は入れ替え可能である。また、コアラップシート6Bも貫通するように貫通孔22を形成してもよい。
【0056】
<その他の実施形態>
次に、その他の実施形態について説明する。上記実施形態に係るおむつ1は、テープ型のおむつであったが本発明による吸収性物品の製造方法および製造装置は、パンツ型のおむつの製造に適用可能である。また、上記実施形態では、圧搾部20および凹部21が格子状に形成されているがこれに限られず、ドット状やストライプ状に形成されていてもよい。おむつ1は、吸収体6の肌面側に凹部21を設けることによって、着用者の肌に触れる面積を小さくでき、装着感を向上できる。
【0057】
また、上記実施形態において、トップシート7は、2枚の不織布から構成されていてもよく、そのうちの下層のシートが、肌面側シートの一例であってもよい。また、吸収体6は、コアラップシート6Bを有さない構成であってもよい。また、吸収性コア6Aの肌面側にSAPの粒子群が配置されていてもよい。この場合、吸収性コア6Aの肌面側よりも非肌面側に多くのSAPの粒子が配置される。なお、上記の実施形態および変形例は相互に組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
4C,4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・弾性部材
5・・バックシート
6・・吸収体
6A・・吸収性コア
6B・・コアラップシート
7・・トップシート
8・・サイドシート
20・・圧搾部
21・・凹部
21A・・格子点
22・・貫通孔
30・・ホットメルト接着剤
32・・SAP粒子群
M・・製造装置
M2・・圧搾部形成装置
M3・・プレス装置
M4・・塗布装置
M5・・トップシート供給体ローラ
M6・・プレス装置
M7・・塗布装置
M8・・バックシート供給体ローラ
M10,M20,M30・・搬送ライン
M11・・SAP散布装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図13
図14