IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-振動デバイス 図1
  • 特許-振動デバイス 図2
  • 特許-振動デバイス 図3
  • 特許-振動デバイス 図4
  • 特許-振動デバイス 図5
  • 特許-振動デバイス 図6
  • 特許-振動デバイス 図7
  • 特許-振動デバイス 図8
  • 特許-振動デバイス 図9
  • 特許-振動デバイス 図10
  • 特許-振動デバイス 図11
  • 特許-振動デバイス 図12
  • 特許-振動デバイス 図13
  • 特許-振動デバイス 図14
  • 特許-振動デバイス 図15
  • 特許-振動デバイス 図16
  • 特許-振動デバイス 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021011208
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114779
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】板坂 洋佑
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028095(JP,A)
【文献】特開2020-170885(JP,A)
【文献】特開2020-195116(JP,A)
【文献】特開2020-155921(JP,A)
【文献】特開2010-177852(JP,A)
【文献】特開2020-123926(JP,A)
【文献】特開2020-123882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30- 5/42
H03H 9/00- 9/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、
前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、
前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、
を含み、
前記集積回路は、抵抗素子を含み、
前記抵抗素子は、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記抵抗素子の少なくとも一部が前記接合部と重なるように配置されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
請求項に記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、前記振動素子を発振させて発振信号を出力する発振回路を含み、
前記抵抗素子は、前記発振回路に含まれる前記抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
請求項又はに記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、前記集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路を含み、
前記抵抗素子は、前記基準電圧生成回路に含まれる前記抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項4】
請求項乃至のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、前記集積回路に用いられるレギュレート電源電圧を生成するレギュレーター回路を含み、
前記抵抗素子は、前記レギュレーター回路に含まれる前記抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項5】
請求項乃至のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、温度を検出する温度センサーを含み、
前記抵抗素子は、前記温度センサーに含まれる前記抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、前記振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路を含み、
前記抵抗素子は、前記温度補償回路に含まれる前記抵抗素子であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、
前記集積回路は、前記平面視で前記接合部と重ならない領域に配置されている所定回路を含み、
前記所定回路は、制御回路又はメモリー回路のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする振動デバイス。
【請求項8】
第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、
前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、
前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、
を含み、
前記集積回路は、前記集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路又は前記集積回路に用いられるレギュレート電源電圧を生成するレギュレーター回路と、の少なくとも一つを含み、
前記基準電圧生成回路又は前記レギュレーター回路の少なくとも一つに含まれる抵抗素子又は能動素子の少なくとも一部が、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記接合部と重なるように配置されていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項9】
第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、
前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、
前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、
を含み、
前記集積回路は、温度を検出する温度センサー又は前記振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、の少なくとも一つを含み、
前記温度センサー又は前記温度補償回路の少なくとも一つに含まれる抵抗素子又は能動素子の少なくとも一部が、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記接合部と重なるように配置されていることを特徴とする振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動素子を用いたデバイスとして発振器等の振動デバイスが知られている。特許文献1には、集積回路の回路パターンが形成されたシリコン基板などの半導体基板上に、振動素子としての圧電振動片を実装し、当該半導体基板とリッドとで圧電振動片を封止することでパッケージ化されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-126052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デバイス及びパッケージを構成する各材料は熱膨張係数が互いに異なるため、パッケージ化することで、応力がかかる。また、パッケージを外部の回路基板に半田実装した際に、パッケージと回路基板の熱膨張係数が異なることによる応力や、パッケージと回路基板とをアンダーフィル剤で固定することによる応力などが生じ、これらの応力によって集積回路に反り等が変形すると、デバイスの特性に影響する。応力の発生の仕方は、パッケージ構造に依存するため、パッケージの構造によって生じる応力を考慮した上で、集積回路のレイアウト設計を行うことが求められる。特許文献1には、このような事情までは考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、を含み、前記集積回路は、受動素子を含み、前記受動素子は、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記受動素子の少なくとも一部が前記接合部と重なるように配置されている振動デバイスに関係する。
【0006】
また、本開示の一態様は、第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、を含み、前記集積回路は、前記集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路又は前記集積回路に用いられるレギュレート電圧を生成するレギュレーター回路と、の少なくとも一つを含み、前記基準電圧生成回路又は前記レギュレーター回路の少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記接合部と重なるように配置されている振動デバイスに関係する。
【0007】
また、本開示の一態様は、第1面と前記第1面と表裏関係にある第2面とを有する半導体基板と、前記第1面又は前記第2面に配置されている集積回路と、を含むベースと、前記集積回路に電気的に接続され、前記第1面側に配置されている振動素子と、前記振動素子を収容するように前記ベースの接合部において前記ベースに接合されているリッドと、を含み、前記集積回路は、温度を検出する温度センサー回路又は前記振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、の少なくとも一つを含み、前記温度センサー回路又は前記温度補償回路の少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、前記第1面に直交する方向からの平面視において、前記接合部と重なるように配置されている振動デバイスに関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の振動デバイスの構成例を示す断面図。
図2】本実施形態の振動デバイスの具体的な構成例を示す断面図。
図3】振動デバイスの振動素子の一例を示す平面図。
図4】集積回路の構成例を示すブロック図。
図5】本実施形態の振動デバイスの別の構成例を示す断面図。
図6】振動デバイスが受ける応力の影響を説明する図。
図7】抵抗の構成例を示す図。
図8】キャパシターの構成例を示す図。
図9】バイポーラートランジスターの構成例を示す断面図。
図10】貫通電極、外部接続端子、集積回路等の配置例を示す平面図。
図11】発振回路の構成例を示す図。
図12】基準電圧生成回路の構成例を示す断面図。
図13】レギュレーター回路の構成例を示す図。
図14】温度センサーの構成例を示す図。
図15】温度補償回路の構成例を示す図。
図16】高次補正回路の構成例を示す図。
図17】貫通電極、外部接続端子、集積回路等の別の配置例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。また以下の各図面において、説明の便宜上、一部の構成要素を省略することがある。また各図面において、分かり易くするために各構成要素の寸法比率は実際とは異なっている。
【0010】
図1は本実施形態の振動デバイス1の構成例を示す断面図である。図1に示すように本実施形態の振動デバイス1は、ベース2と振動素子5と外部接続端子91、92を含む。また振動デバイス1は、リッド7や再配置配線層8を含むことができる。ベース2は、半導体基板20と貫通電極40を含む。半導体基板20は、第1面21と、第1面21と表裏関係にある第2面22を有する。第1面21は半導体基板20の例えば上面であり、第2面22は半導体基板20の例えば下面である。貫通電極40は、半導体基板20の第1面21と第2面22を貫通する電極である。振動素子5は、半導体基板20の第1面21側に配置されている。例えば振動素子5は、半導体基板20の第1面21から所与の離間距離だけ離れた位置に配置されている。具体的には振動素子5は、半導体基板20の第1面21に対して、例えば導電性の接合部材60を介して固定される。外部接続端子91、92は、半導体基板20の第2面22側に絶縁層80等を介して設けられる。絶縁層80は例えば再配置配線層8を構成する絶縁層である。
【0011】
なお本実施形態で説明する各図には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。X軸に沿った方向を「X軸方向」、Y軸に沿った方向を「Y軸方向」、Z軸に沿った方向を「Z軸方向」と言う。また各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」、Z軸方向プラス側を「上」、Z軸方向マイナス側を「下」とも言う。例えばZ軸方向は鉛直方向に沿い、XY平面は水平面に沿っている。図1はY軸方向からの断面視での振動デバイス1の断面図である。また半導体基板20の第1面21及び第2面22は、XY平面に沿った面であり、Z軸に直交する面である。なお「直交」は、90°で交わっているものの他、90°から若干傾いた角度で交わっている場合も含むものとする。
【0012】
振動デバイス1は例えば発振器である。具体的には振動デバイス1は、シンプルパッケージ水晶発振器(SPXO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、恒温槽付き水晶発振器(OCXO)、SAW(Surface Acoustic Wave)発振器、電圧制御型SAW発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)発振器等の発振器である。MEMS発振器は、シリコン基板等の基板に圧電膜及び電極を配置したMEMSの振動素子により実現できる。但し振動デバイス1は、加速度センサー、角速度センサーのような慣性センサーや、傾斜センサーのような力センサー等であってもよい。
【0013】
ベース2は、半導体基板20により構成される。半導体基板20は、例えばシリコン基板である。なお、半導体基板20は、シリコン基板には限定されず、Ge、GaP、GaAs、InP等の半導体基板であってもよいが、後述するリッド7との関係を考慮できることが好ましい。
【0014】
またベース2は、集積回路10を含む。半導体回路である集積回路10は、半導体基板20の第2面22に形成されている。集積回路10は複数の回路素子により構成される。回路素子は、例えばトランジスターなどの能動素子や、或いはキャパシターや抵抗などの受動素子である。具体的には集積回路10は、各回路ブロックが複数の回路素子を含む複数の回路ブロックにより構成される。また集積回路10は、半導体基板20に対して不純物をドーピングすることで形成される不純物領域である拡散領域と、金属層と絶縁層が積層された配線層とにより形成される。拡散領域により、集積回路10の回路素子であるトランジスターのソース領域及びドレイン領域が形成され、配線領域により、回路素子間を接続する配線が形成される。
【0015】
またベース2は貫通電極40を含む。貫通電極40は、半導体基板20の第1面21と第2面22を貫通する導電性材料により構成される。例えば半導体基板20に対して貫通孔を形成し、この貫通孔を導電性材料で埋めることにより貫通電極40が形成される。導電性材料は、銅などの金属であってもよいし、導電性のポリシリコンなどであってもよい。導電性のポリシリコンとは、例えばリン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物をドープして導電性を付与したポリシリコンのことを言う。導電性材料としてポリシリコンを用いると、集積回路10の形成工程において加わる熱に対して十分な耐性を有する貫通電極40の実現が可能になる。
【0016】
貫通電極40の一端は、導電性の接合部材60を介して振動素子5に電気的に接続される。図1では、導電性の接合部材60は、一端が振動素子5に電気的に接続され、他端が貫通電極40に電気的に接続されるバンプ62などにより実現される。具体的にはバンプ62の他端は、端子64を介して貫通電極40に接続される。バンプ62は導電性のバンプであり、具体的には金属バンプである。なお導電性の接合部材60を、導電性の接着材などにより実現してもよい。
【0017】
貫通電極40の他端は集積回路10に電気的に接続される。具体的には貫通電極40の他端は、集積回路10に形成されるコンタクトパッド36を介して集積回路10の回路素子に接続される。このようにすることで、貫通電極40を介して振動素子5と集積回路10とを電気的に接続できるようになる。
【0018】
リッド7は接合部材71、72を介して、ベース2の接合部JAに接合される。そしてベース2と、蓋体であるリッド7とにより、気密性を有する収容空間SPが形成され、振動素子5は、この収容空間SP内に収容される。収容空間SPは気密封止されており、収容空間SP内は、例えば減圧状態である。これにより、振動素子5を衝撃、埃、熱又は湿気等から好適に保護し、安定して駆動させることができる。なお、収容空間SP内の状態は減圧状態に限定されず、例えば収容空間SP内がアルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0019】
リッド7は、ベース2と同様に、シリコン基板により実現できる。これによりベース2とリッド7との熱膨張係数が等しくなり、熱膨張に起因する熱応力の発生が抑えることができる。またベース2とリッド7の両方を半導体製造プロセスによって形成することができる。従って、振動デバイス1を精度良く製造することが可能になると共に、その小型化を図ることができる。なお、リッド7は、シリコン基板には限定されず、Ge、GaP、GaAs、InP等の半導体基板により実現されてもよいが、本実施形態では、リッド7とベース2の材質は、互いに同一であること、又は、熱膨張係数が互いに同一の材質であることが好ましい。同一は略同一を含む。
【0020】
再配置配線層8は、半導体基板20の第2面22側に設けられ、絶縁層80と、再配置配線用の配線82を含む。絶縁層80は例えばポリイミドやエポキシガラス等の樹脂により実現され、配線82は例えば銅箔などの金属配線により実現される。絶縁層80は、振動デバイス1の実装の際の半田付けに耐えられる耐熱性を有する必要があり、ポリイミドを用いることが好適である。また配線82の材料は、銅以外にもアルミニウムや銀等の金属材料を用いてもよい。また再配置配線層8での配線層や端子の厚みは例えば10~20μm程度である。再配置配線層8を設けることで、集積回路10に形成されるコンタクトパッド38、39と、外部接続端子91、92とを電気的に接続できるようになる。そして、振動デバイス1の外部接続端子91、92を、振動デバイス1が実装される回路基板等の端子や配線に接続する実装を行うことで、振動デバイス1を電子機器に組み込むことが可能になる。またこのような再配置配線層8を設けることで、集積回路10の部分の機械的な保護や、振動デバイス1の実装の際の半田付け工程における熱から集積回路10等を熱的に保護することが可能になる。
【0021】
図2は振動デバイス1の具体的な構成例を示す断面図であり、図3は、振動デバイス1の振動素子5の一例を示す平面図である。まず図3を用いて振動素子5の詳細について説明する。
【0022】
振動素子5は、電気的な信号により機械的な振動を発生する素子である。例えば図3に示すように、振動素子5は、振動基板50と、振動基板50の表面に配置された電極と、を有する。振動基板50は、厚みすべり振動モードを有し、本実施形態ではATカット水晶基板から形成されている。ATカット水晶基板は、三次の周波数温度特性を有しているため、優れた温度特性を有する振動素子5となる。また電極は、振動基板50の上面に配置された励振電極52と、励振電極52と対向して下面に配置された励振電極53と、を有する。上面はZ軸方向プラス側の面であり、下面はZ軸方向マイナス側の面である。また励振電極52、53の一方が第1励振電極であり、励振電極52、53の他方が第2励振電極である。また電極は、振動基板50の下面に配置された一対の端子56、57と、端子56と励振電極52とを電気的に接続する配線54と、端子57と励振電極53とを電気的に接続する配線55と、を有する。
【0023】
なお、振動素子5の構成は、上述の構成に限定されない。例えば、振動素子5は、励振電極52、53に挟まれた振動領域がその周囲から突出したメサ型となっていてもよいし、逆に、振動領域がその周囲から凹没した逆メサ型となっていてもよい。また、振動基板50の周囲を研削するベベル加工や、上面および下面を凸曲面とするコンベックス加工が施されていてもよい。また振動素子5は、厚みすべり振動モードで振動するものに限定されない。例えば振動素子5は、複数の振動腕が面内方向に屈曲振動する音叉型振動素子、複数の振動腕が面外方向に屈曲振動する音叉型振動素子、駆動振動する駆動腕及び検出振動する検出腕を備えて角速度を検出するジャイロセンサー素子、又は加速度を検出する検出部を備えた加速度センサー素子であってもよい。また振動基板50は、ATカット水晶基板から形成されたものに限定されず、ATカット水晶基板以外の水晶基板、例えば、Xカット水晶基板、Yカット水晶基板、Zカット水晶基板、BTカット水晶基板、SCカット水晶基板、STカット水晶基板等から形成されていてもよい。また、本実施形態では、振動基板50が水晶で構成されているが、これに限定されず、例えば、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、リン酸ガリウム等の圧電単結晶体により構成されていてもよいし、これら以外の圧電単結晶体で構成されていてもよい。また振動素子5は、圧電駆動型の振動素子に限らず、静電気力を用いた静電駆動型の振動素子であってもよい。
【0024】
そして図2図3に示すように、振動素子5は、導電性の接合部材60、61を介して、半導体基板20の上面である第1面21に固定される。なお図2では図示していないが、図3に示すように例えばY軸方向に沿って2つの接合部材60、61が設けられている。また後述の図10に示すように、半導体基板20には例えばY軸方向に沿って2つの貫通電極40、41が設けられており、これらの貫通電極40、41は、導電性の接合部材60、61を介して振動素子5に電気的に接続されている。貫通電極40、41の一方が第1貫通電極であり、貫通電極40、41の他方が第2貫通電極である。具体的には、貫通電極40の一端は、接合部材60と、振動素子5の端子56及び配線54を介して、振動素子5の励振電極52に電気的に接続されている。また貫通電極41の一端は、接合部材61、振動素子5の端子57及び配線55を介して、振動素子5の励振電極53に電気的に接続されている。そして貫通電極40、41の他端は集積回路10に電気的に接続されている。これにより振動素子5と集積回路10は貫通電極40、41を介して電気的に接続されるようになる。具体的には、貫通電極40、41の他端は図2図10に示すコンタクトパッド36、37を介して、集積回路10の発振回路11に電気的に接続されている。これにより振動素子5と発振回路11は貫通電極40、41を介して電気的に接続されるようになる。
【0025】
接合部材60、61は、導電性と接合性とを兼ね備えていれば、特に限定されず、例えば、金バンプ、銀バンプ、銅バンプ、はんだバンプ、樹脂コアバンプ等の各種の導電性のバンプ62により実現できる。或いは、接合部材60、61として、ポリイミド系、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系の各種接着剤に銀フィラー等の導電性フィラーを分散させた導電性接着剤等を用いてもよい。
【0026】
また半導体基板20は、貫通孔が形成された後に熱酸化されることで、半導体基板20の第1面21や貫通孔の内面に、例えば酸化シリコン(SiO)からなる絶縁膜である絶縁層44が形成される。熱酸化により絶縁層44を形成することにより、半導体基板20の表面に緻密で均質な絶縁層44を形成することができる。また絶縁層44と半導体基板20との線膨張係数差を小さくすることもできる。そのため、熱応力が生じにくくなり、優れた発振特性を有する振動デバイス1を実現できる。絶縁層44の構成材料は、特に限定されず、例えば窒化シリコン(SiN)により構成されていてもよいし、樹脂で構成されていてもよい。また、絶縁層44の形成方法としては、熱酸化に限定されず、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成してもよい。
【0027】
そして貫通孔の絶縁層44の内側に、銅又は導電性ポリシリコン等の導電性材料を充填することにより、貫通電極40、41が形成される。即ち貫通孔内を導電性材料で埋めることで貫通電極40、41を形成する。そして貫通電極40、41の一端は振動素子5に電気的に接続される。具体的には貫通電極40、41の一端は振動素子5の励振電極52、53に電気的に接続される。一方、貫通電極40、41の他端は集積回路10に電気的に接続される。具体的には貫通電極40、41の他端はコンタクトパッド36、37を介して集積回路10の発振回路11に電気的に接続される。
【0028】
図2に示すように集積回路10は、例えばN型のトランジスター23やP型のトランジスター24により構成される。これらのトランジスター23、24は、半導体基板20に形成された拡散領域であるソース領域及びドレイン領域と、ゲート電極と、ゲート酸化膜とにより構成される。またトランジスター23、24は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)と呼ばれる素子分離膜25により素子分離される。また集積回路10は、トランジスター23、24等の複数の回路素子間の接続配線を実現する配線層30を含む。例えば図2の配線層30は、金属層31、32、絶縁層33、34、35を含む。金属層31、32は、各々、第1金属層、第2金属層であり、絶縁層33、34、35は、各々、第1絶縁層、第2絶縁層、第3絶縁層である。金属層31は、絶縁層33と絶縁層34の間に形成され、金属層32は、絶縁層34と絶縁層35の間に形成される。これらの金属層31、32は例えばアルミニウムや銅などの金属により実現される。また金属層31と金属層32は、ビアコンタクトと呼ばれるコンタクトにより電気的に接続され、金属層31とトランジスター23、24のソース領域やドレイン領域はコンタクトにより電気的に接続される。そして図2に示すように、貫通電極40、41の他端に電気的に接続されるコンタクトパッド36は、下層の金属層31により形成される。また外部接続端子91、92に電気的に接続されるコンタクトパッド38、39は、上層の金属層32により形成される。なお、配線層30では、集積回路10においてトランジスター23、24に近い側の層を下層とし、遠い側の層を上層としている。また図2では、配線層30が2層の金属層31、32を有する場合について示しているが、本実施形態はこれに限定されず、配線層30は3層以上の金属層を有してもよい。この場合には、複数の金属層のうちの最下層の金属層によりコンタクトパッド36、37が形成され、最上層の金属層によりコンタクトパッド38、39が形成される。また、ポリイミド等の絶縁樹脂からなる最上層の絶縁層35により、パシベーション膜が形成される。
【0029】
また再配置配線層8は、ポリイミドやエポキシガラス等の樹脂層により実現される絶縁層80と、銅箔等により実現される配線82を含む。そしてコンタクトパッド38は外部接続端子91に電気的に接続され、コンタクトパッド39は配線82を介して外部接続端子92に電気的に接続されている。
【0030】
また図2では外部接続端子91、92の各々は、第1金属層84と第2金属層86を有する2層構造になっている。絶縁層80側の第1金属層84としては、例えば絶縁層80との密着性を高めるためにチタンタングステン層が用いられる。第2金属層86としては、例えば外部の端子や配線との半田付け等が容易な銅又は金等の金属層が用いられる。
【0031】
図4に、本実施形態の集積回路10の構成例を示す。本実施形態の集積回路10は、端子TXAと、端子TXBと、端子TCKと、端子TVDDと端子TGNDと、端子TOEと、発振回路11と出力回路12と、制御回路13と、基準電圧生成回路14Aと、レギュレーター回路14Bと、温度補償回路15と、温度センサー16と、記憶部17を含むことができる。また本実施形態の振動デバイス1は、振動素子5と集積回路10を含む。発振回路11は振動素子5を発振させる回路である。例えば発振回路11は、端子TXA及び端子TXBに電気的に接続され、振動素子5を発振させることで発振信号OSCを生成する。例えば発振回路11は、端子TXA、端子TXBに接続される配線LA及び配線LBを介して振動素子5を駆動して、振動素子5発振させる。例えば発振回路11は、端子TXA、端子TXBとの間に設けられた発振用の駆動回路などを含む。詳細は図11で後述するが、発振回路11は、駆動回路132を実現するバイポーラートランジスターなどのトランジスターと、キャパシターや抵抗などの受動素子により実現できる。駆動回路132は、発振回路11のコア回路であり、駆動回路132が、振動素子5を電流駆動又は電圧駆動することで、振動素子5を発振させる。発振回路11としては、例えばピアース型、コルピッツ型、インバーター型又はハートレー型などの種々のタイプのものを用いることができる。また、詳細は図11で後述するが、発振回路11に、可変容量回路等を設け、この可変容量回路の容量の調整により、発振周波数を調整できるようにしてもよい。より具体的には、発振回路11は、端子TXAが接続される配線LAに電気的に接続される第1可変容量回路136と、端子TXBが接続される配線LBに電気的に接続される第2可変容量回路137を有していてもよい。なお本実施形態における接続は電気的な接続である。電気的な接続は、電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。電気的な接続は受動素子等を介した接続であってもよい。
【0032】
出力回路12は、発振回路11からの発振信号OSCに基づいてクロック信号CKを出力する。例えば出力回路12は、発振回路11からの発振信号OSCをバッファリングしてクロック信号CKを出力する。例えば出力回路12は、発振信号OSCの波形整形、電圧レベルのレベルシフトなども行うことができる。出力回路12が出力するクロック信号の信号形式は、例えばシングルエンドのCMOSやクリップドサイン波等の信号形式であるが、これに限られない。例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(High Speed Current Steering Logic)、又は差動のCMOS(Complementary MOS)などの信号形式でもよい。
【0033】
制御回路13は種々の制御処理を行う。例えば制御回路13は集積回路10の全体の制御を行う。例えば制御回路13は集積回路10の動作シーケンスを制御する。また制御回路13は発振回路11の制御のための各種の処理を行う。また制御回路13は出力回路12等の制御を行うこともできる。制御回路13は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)の回路により実現できる。
【0034】
温度センサー16は、温度を検出するセンサーである。具体的には温度センサー16は、環境の温度に応じて変化する温度依存電圧を、温度検出電圧VTとして出力する。例えば温度センサー16は、温度依存性を有する回路素子を利用して温度検出電圧VTを生成する。具体的には温度センサー16は、PN接合の順方向電圧が有する温度依存性を用いることで、温度に依存して電圧値が変化する温度検出電圧VTを出力する。PN接合の順方向電圧としては、例えばバイポーラートランジスターのベース・エミッター間電圧などを用いることができる。
【0035】
温度補償回路15は、発振回路11の発振周波数の温度補償を行う。例えば温度補償回路15は、温度センサー16からの温度検出電圧VTに基づいて温度補償電圧VCPを生成し、温度補償電圧VCPを発振回路11に出力することで、発振回路11の発振周波数の温度補償を行う。例えば温度補償回路15は、発振回路11が有する可変容量回路に対して、当該可変容量回路の容量制御電圧となる温度補償電圧VCPを出力することで、温度補償を行う。温度補償は、温度変動による発振周波数の変動を抑制して補償する処理である。
【0036】
例えば温度補償回路15は、多項式近似によるアナログ方式の温度補償を行う。例えば振動素子5の周波数温度特性を補償する温度補償電圧VCPが多項式により近似される場合に、温度補償回路15は、当該多項式の係数情報に基づいてアナログ方式の温度補償を行う。アナログ方式の温度補償は、例えばアナログ信号である電流信号や電圧信号の加算処理等により実現される温度補償である。例えば、高次の多項式により温度補償電圧VCPが近似される場合、多項式の0次係数、1次係数、高次係数が、それぞれ0次補正データ、1次補正データ、高次補正データとして記憶部17に記憶される。例えば不揮発性メモリーにより実現される記憶部17に記憶される。高次係数は例えば1次より大きい高次の次数の係数であり、高次補正データは、高次係数に対応する補正データである。例えば5次多項式により温度補償電圧VCPが近似される場合には、多項式の0次係数、1次係数、2次係数、3次係数、4次係数、5次係数が、0次補正データ、1次補正データ、2次補正データ、3次補正データ、4次補正データ、5次補正データとして記憶部17に記憶される。
【0037】
そして温度補償回路15は、0次補正データ~5次補正データに基づいて温度補償を行う。なお、2次補正データ又は4次補正データに基づく温度補償については省略してもよい。また多項式近似の次数は任意であり、例えば3次の多項式近似を行ったり、5次よりも大きい次数の多項式近似を行ったりしてもよい。また0次補正を温度センサー16が行うようにしてもよい。また温度センサー16を集積回路10に設けずに、温度補償回路15が、外部から入力された温度検出電圧などの温度検出信号に基づいて温度補償を行うようにしてもよい。
【0038】
なお温度補償回路15がデジタル方式の温度補償を行うようにしてもよい。この場合、温度補償回路15は例えばロジック回路により実現される。具体的には温度補償回路15は、温度センサー16の温度検出情報である温度検出データに基づいてデジタルの温度補償処理を行う。例えば温度補償回路15は、温度検出データに基づいて周波数調整データを求める。そして、求められた周波数調整データに基づいて、発振回路11の可変容量回路の容量値が調整されることで、発振回路11の発振周波数の温度補償処理が実現される。この場合には発振回路11の可変容量回路は、バイナリーに重み付けされた複数のキャパシターを有するキャパシターアレイと、スイッチアレイとにより実現される。また記憶部17は、温度検出データと周波数調整データの対応を表すルックアップテーブルを記憶しており、温度補償回路15は、制御回路13により記憶部17から読み出されたルックアップテーブルを用いて、温度データから周波数調整データを求める温度補償処理を行う。
【0039】
なおデジタル方式の温度補償処理を行う場合には、温度センサー16は、環境温度などの温度を測定し、その結果を温度検出データとして出力する。温度検出データは、温度に対して例えば単調増加又は単調減少するデータである。この場合の温度センサー16としては、リングオシレーターの発振周波数が温度依存性を有することを利用したものを用いることができる。具体的には温度センサー16は、リングオシレーターとカウンター回路を含む。カウンター回路は、発振回路11からの発振信号OSCに基づくクロック信号により規定されるカウント期間において、リングオシレーターの発振信号である出力パルス信号をカウントし、そのカウント値を温度検出データとして出力する。
【0040】
制御回路13は温度補償回路15を制御する。また制御回路13は、発振回路11、出力回路12、レギュレーター回路14B又は記憶部17の制御を行うともできる。例えば制御回路13はレジスターを有しており、振動素子5を発振させてクロック信号CKを出力する通常動作の開始時に、記憶部17に記憶された情報が読み出されて、制御回路13のレジスターに転送されて記憶される。そしてレジスターに記憶された情報に基づいて、種々の制御信号が生成され、集積回路10の各回路に出力されて、各回路が制御される。従って、通常動作時において制御回路13は高速な動作を行う必要がないため、制御回路13が発生するノイズは低くなる。なお集積回路10は、温度補償がオンになる第1モードと、温度補償がオフになる第2モードを有していてもよい。この場合に制御回路13は、第1モードと第2モードの切り替え制御を行うことができる。
【0041】
基準電圧生成回路14Aは、電源電圧VDDに基づいて基準電圧VREFを生成する。例えば電源電圧変動や温度変動があった場合にも定電圧となる基準電圧VREFを生成する。基準電圧生成回路14Aは、例えばバンドギャップ電圧に基づき基準電圧VREFを生成するバンドギャップリファレンス回路などにより実現できる。
【0042】
レギュレーター回路14Bは、電源電圧VDDに基づいてレギュレート電源電圧を生成する。例えばレギュレーター回路14Bは、端子TVDDからの電源電圧VDDと基準電圧生成回路14Aからの基準電圧VREFに基づいてレギュレート電源電圧を生成する。電源電圧変動や温度変動があった場合にも定電圧となる基準電圧VREFを用いることで、電源電圧VDDを降圧したレギュレート電源電圧であって、電源電圧変動や温度変動があった場合にも定電圧となるレギュレート電源電圧を生成できる。そしてレギュレーター回路14Bは、生成したレギュレート電源電圧を集積回路10の各回路ブロックに供給する。この場合に、レギュレーター回路14Bは、例えば温度補償回路15に供給するレギュレート電圧と制御回路13に供給するレギュレート電圧の電圧値を異ならせるなど、各回路ブロックに応じた適切なレギュレート電源電圧を供給する。
【0043】
端子TOEには出力イネーブル信号OEが入力される。端子TOEは振動デバイス1の外部端子TE7に電気的に接続される。制御回路13は、端子TOEから入力された出力イネーブル信号OEに基づいて、出力イネーブル制御の処理を行う。なおテストモードにおいて、振動素子5のテスト用の信号を、端子TOEを介して入力できるようにしてもよい。この場合には端子TOEと配線LAを接続するためのスイッチ回路を設け、端子TOEから入力されたテスト用信号を、スイッチ回路及び配線LAを介して振動素子5の一端に入力する。これにより振動素子5のオーバードライブ等のテスト、検査が可能になる。また記憶部17が不揮発性メモリーにより実現される場合に、不揮発性メモリーへの情報の書き込み時において、端子TOEを介してメモリー書き込み用の高電圧を入力して、記憶部17である不揮発性メモリーに供給するようにしてもよい。
【0044】
記憶部17は、各種の情報を記憶する回路であり、半導体メモリーなどにより実現できる。具体的には記憶部17は、不揮発性メモリーにより実現できる。不揮発性メモリーとしては、例えばデータの電気的な消去が可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)や、FAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)などを用いたOTP(One Time Programmable)のメモリーなどを用いることができる。或いは不揮発性メモリーは、ヒューズセルを用いたメモリーであってもよい。温度補償回路15が多項式近似による温度補償を行う場合に、不揮発性メモリーなどにより実現される記憶部17は、多項式近似の係数情報を記憶する。例えば記憶部17は、多項式近似の係数情報として、上述した0次補正データ、1次補正データ、高次補正データを記憶する。このような係数情報は、例えば集積回路10や振動デバイス1の製造時や出荷時において、不揮発性メモリーなどにより実現される記憶部17に書き込まれて記憶される。これにより、集積回路10や振動デバイス1の機種に応じて、温度補償の係数情報を設定できるようになる。
【0045】
次に本実施形態の振動デバイス1の製造方法について説明する。振動デバイス1は、フローの図示は省略するが、例えば以下の方法によって製造が実現できる。先ず、標準的な厚さを有する、ウエハー状の半導体基板20を用意する。標準的な厚さは、具体的には625~775μmである。これにより、集積回路10の製造工程において、半導体基板20を安定して取り扱うことができる。そして、下面である第2面22に集積回路10を形成する。集積回路10の厚さは5~20μmである。そして、第2面22に絶縁層80、配線82を有する再配置配線層8と外部接続端子91、92とを形成し、集積回路10のコンタクトパッド38、39等と外部接続端子91、92等とを電気的に接続する。再配置配線層8の厚さは10~20μmである。その後、半導体基板20の、振動素子5を搭載する側である第1面21の側を、バックグラインダー等で研削する。つまり、ベース2の厚さを、所定の厚さまで薄化する。所定の厚さとは、ドライエッチングによって、後述の貫通孔を形成可能な厚さであり、具体的には20μm~100μmである。その後、ドライエッチングで、第1面21の側からベース2の所望の領域を除去する。さらに、ウェットエッチングで、素子分離膜25の所望の領域を除去する。これにより、第1面21から配線層30の金属層31まで貫通した、貫通孔が形成される。その後、半導体基板20の表面、特に貫通孔の内面に絶縁膜である絶縁層44を形成し、さらに、貫通孔内を銅等の導電性材料で埋めることで、貫通電極40、41を形成する。その後、振動素子5を準備し、この振動素子5を、接合部材60、61を介して半導体基板20の第1面21に接合する。その後、リッド7が形成された、半導体基板20と同じ大きさのウエハーを準備する。そして、減圧環境下において、接合部材71、72を介して、ベース2を含むウエハーと、リッド7を含むウエハーを接合する。その後、ダイシングソー等によって、接合したウエハーをダイシングすることで、振動デバイス1が個片化される。これにより、振動素子5及び集積回路10を有する振動デバイス1を、ウェハーレベルのバッチ処理で一括製造することから、高スループット、且つ、低コストでの振動デバイス1の製造が可能になる。つまり、本実施形態の振動デバイス1は、WLP(Wafer Level Package)である。
【0046】
なお、以上の説明は、第2面22に集積回路10を形成する振動デバイス1の構成例であるが、本実施形態はこれに限られず、種々の変形実施が可能である。例えば、図5に示すように、第1面121に集積回路110を形成する振動デバイス101にしてもよい。振動デバイス101は、ベース102と振動素子105と外部接続端子191、192を含む。また振動デバイス101は、再配置配線層108を含むことができる。ベース102は、貫通電極140、141を含む。振動素子105は、第1面121側に配置されている。例えば振動素子105は、第1面121から所与の離間距離だけ離れた位置に配置されている。振動素子105は、第1面121に対して、例えば導電性の接合部材160を介して固定される。外部接続端子191、192は、第2面122側に絶縁層180や配線182等を介して設けられる。絶縁層180は再配置配線層108を構成する絶縁層である。これらは、前述した手法を適宜使用することで形成できる。
【0047】
また振動デバイス101は、リッド107を含むことができる。第1面121には、第3金属層171、172が設けられる。第3金属層171、172は、例えば厚さ100nmの金であるが、銅等の金属でもよい。リッド107の第3金属層171、172と当接する面には第4金属層173、174が設けられる。第4金属層173、174は、例えば厚さ20nmの金であるが、銅等の金属でもよい。第3金属層171、172と第4金属層173、174を活性化接合により接合することで、リッド107と第1面121は接合する。活性化接合は、中性アルゴンイオンビーム等を第3金属層171、172と第4金属層173、174に照射することで第3金属層171、172と第4金属層173、174の表面を活性化させた後に、第3金属層171、172と第4金属層173、174を接触させて接合を行う手法である。これにより、加圧を要することなく常温で第3金属層171、172と第4金属層173、174を接合することができる。また、リッド107の凹部の底面に第5金属層176をさらに形成してもよい。また、リッド107の凹部の側面に第6金属層177、178をさらに形成してもよい。第5金属層176及び第6金属層177、178は、例えば厚さ20nmの金であるが、銅等の金属でもよい。これにより、第5金属層176及び第6金属層177、178は、遮蔽層として、不要輻射等の外乱から集積回路110や振動素子105を保護することができる。また、第5金属層176及び第6金属層177、178の厚さを20nm程度にすることで、赤外線を透過させることができる。これにより、例えばリッド107の材質をシリコンにすることで、赤外線を用いて振動デバイス101の内部の振動素子105を検査することができる。なお、図示は省略するが、第3金属層171、172、第4金属層173、174、第5金属層176及び第6金属層177、178と、リッド107の間に、チタン等の密着層を形成してもよい。
【0048】
以上のことから、本実施形態の振動デバイス1は、半導体基板20と、ベース2と、振動素子5と、リッド7と、を含む。半導体基板20は、第1面21と第1面21と表裏関係にある第2面22とを有する。ベース2は、第1面21又は第2面22に配置されている集積回路10と、を含む。振動素子5は集積回路10に電気的に接続され、第1面21側に配置されている。リッド7は、振動素子5を収容するようにベース2の接合部JAにおいてベース2に接合されている。なお、集積回路10が第1面21又は第2面22に配置されていることは、集積回路10が第1面21と第2面22の両方に配置されていることを含むものとする。
【0049】
本実施形態の振動デバイス1のようなWLPには、以下に述べる特有の課題が生じる。図6に、本実施形態の振動デバイス1に生じる応力の影響を模式的に示す。なお図6では、便宜上、振動素子5や外部接続端子91、92等の図示は省略する。デバイスを構成する各材料は熱膨張係数が互いに異なるため、パッケージ化することで、応力がかかる。例えば、ベース2の材料であるシリコンの熱膨張係数は約3ppm/Kであるのに対し、配線材料である銅の熱膨張係数は約17ppm/Kである。そのため、製造工程においてベース2の熱収縮量よりも、集積回路10及び再配置配線層8の熱収縮量が大きいため、熱収縮量差に基づく応力が生じる。このとき、ベース2の厚さが前述の標準的な厚さであれば、集積回路10及び再配置配線層8の厚さよりも十分に厚いため、応力がかかっても、ベース2は変形せずに平坦性が維持される。しかし、前述のように、製造工程においてベース2は20μm~100μmまで薄化されているため、ベース2の剛性は失われ、応力の影響が無視できなくなる。具体的には、B3に示すように、ベース2、集積回路10及び再配置配線層8は平坦性が維持できず、反るようになる。これにより、集積回路10を構成する受動素子や能動素子に歪みが生じ、受動素子や能動素子の特性に影響を与えるが、詳細は図7図8図9で後述する。なお、このような課題は、パッケージを外部の回路基板に半田実装した場合や、パッケージと回路基板とをアンダーフィル剤で固定することによっても生じ得る。一方、図6のA1やA2で示した領域は、すなわちリッド7が接合している領域、すなわち接合部JAを含む領域である。ベース2とリッド7は共に材質がシリコンであるとすると、熱膨張係数が互いに同じであることから、A1やA2に示した領域においては、ベース2の厚さにリッド厚さTLを加えた厚さが、実質的にベース2の厚さとなっている。つまり、A1やA2で示した領域は、A3で示した領域と比較して、より剛性の高いベース2に集積回路10及び再配置配線層8が形成されているのと等価である。そのため、A1やA2で示した領域すなわち接合部JAを含む領域は、B1やB2に示すように、平坦あるいは反りが少ない状態となる。
【0050】
図7に、本実施形態の抵抗Rの構造を模式的に示す。抵抗Rは、長さRL、幅RW、厚さRTからなる直方体とすると、抵抗Rの抵抗値は(ρ×RL)/(RW×RT)となる。ここでのρは抵抗率である。そして、前述の応力の影響によって、抵抗Rは、長さ(RL+ΔRL)、幅(RW+ΔRW)、厚さ(RT+ΔRT)からなる直方体に変形することになるため、抵抗Rの抵抗値が変化する。抵抗Rの抵抗値の変化による、集積回路10への具体的な影響については、後述する。
【0051】
図8に、本実施形態のキャパシターCの構造例を模式的に示す。キャパシターCは、導体層210A、210Bと、導体層210A、210Bの間の絶縁層220を含む。導体層210A、210Bの長さをCL、幅をCWとし、絶縁層220の厚さをCDとすると、キャパシターCの静電容量は(ε×CL×CW)/CDとなる。εは誘電率である。そして、前述の応力の影響によって、導体層210A、210Bの長さは(CL+ΔCL)に変化し、幅は(CW+ΔCW)に変化する。また、絶縁層220の厚さは(CD+ΔCD)に変化する。このため、キャパシターCの静電容量が変化する。キャパシターCの静電容量の変化による、具体的な回路への影響については、後述する。
【0052】
図9に、本実施形態のバイポーラートランジスターBPの構造例を模式的に示す。バイポーラートランジスターBPに応力がかかると、バイポーラートランジスターBPのベース領域230に結晶欠陥232が発生する。これにより、リーク再結合電流が増大し、バイポーラートランジスターBPの特性が変化する。
【0053】
図10は、本実施形態の振動デバイス1での貫通電極40、41と、端子TCK、TGND、TOE、TVC、TVDD、TXA、TXBと、集積回路10の配置例を示す平面図である。図10では、集積回路10の各回路の配置位置と、貫通電極40、41と、端子TCK、TGND、TOE、TVC、TVDD、TXA、TXBの配置位置の関係が示されている。図10は、Z軸方向マイナス側からベース2を見た平面視での平面図であり、集積回路10が形成されるベース2に対してZ軸方向プラス側に位置する貫通電極40、41の外形は、点線で示されている。また、リッド7の内壁部9の位置を示すリッド内壁線9Lが、点線で示されている。つまり、リッド内壁線9Lとベース外周線2Lの間の領域が、前述の接合部JAに相当する。
【0054】
また、図10において、製品領域線3Lで囲われた領域が製品領域であり、製品領域線3Lと、ベース2の外周を示すベース外周線2Lとの間が、スクライブ領域である。スクライブ領域は、アクセサリーパターンを配置する領域であり、また、ウエハーから個々の振動デバイス1として個片化するための切削領域でもある。アクセサリーパターンは、素子の電気的特性を確認するための評価素子や、当該評価素子等に電力を供給するための電極パッド等からなるパターンである。
【0055】
製品領域のエッジ周辺には、集積回路10を囲うようにガードリング27が形成されている。ガードリング27は、例えば図2の配線層30を構成する金属層31、32や絶縁層33、34の各層にダミーの金属を形成及びコンタクトさせることにより形成され、外界からの水分等の侵入を防止する。これにより、集積回路10全体を保護することができる。なお、ガードリング27は図10のように2本に限られず、1本でもよく、3本以上でもよい。
【0056】
また本実施形態では図10に示すように、ベース2は、第1辺SD1と、第1辺SD1に対向する第2辺SD2を有する。つまり、集積回路10は、第1辺SD1と、第1辺SD1に対向する第2辺SD2を有する。またベース2は第3辺SD3と、第3辺SD3に対向する第4辺SD4を有する。例えばベース2は、平面視において、第1辺SD1、第2辺SD2、第3辺SD3、第4辺SD4を有する矩形形状になっている。なお矩形形状は、厳密な矩形形状である必要は無く、例えばコーナー部が面取りされているような形状であってもよい。
【0057】
本実施形態の振動デバイス1は、上述のように、半導体基板20と、半導体基板20の第1面21と第2面22との間を貫通する貫通電極40とを含むベース2と、半導体基板20の第1面21側に配置される振動素子5を含む。そして半導体基板20の第2面22には、図10に示すように、貫通電極40、41を介して振動素子5に電気的に接続され、振動素子5を発振させて発振信号OSCを生成する発振回路11と、発振信号OSCに基づくクロック信号CKを出力する出力回路12が配置されている。例えば発振回路11が振動素子5を発振させることで、発振信号OSCが生成され、この発振信号OSCが出力回路12によりバッファリングされて、クロック信号CKとして出力される。また外部接続端子91からは、出力回路12からのクロック信号CKが出力される。即ち図4の出力回路12からのクロック信号CKは、コンタクトパッド38により実現される端子TCKから出力される。
【0058】
本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、受動素子を含み、受動素子は、第1面21に直交する方向からの平面視において、受動素子の少なくとも一部が接合部JAと重なるように配置されている。詳細は図11図12図13図14図16等で後述するが、発振回路11、基準電圧生成回路14A、レギュレーター回路14B、温度補償回路15、温度センサー16は、受動素子である抵抗又はキャパシターを含んでいる。図6で前述の通り、接合部JAと重ならない領域は、応力の影響が大きい。つまり、接合部JAと重ならない領域に受動素子が存在すると、応力の影響によって受動素子が変形することから、受動素子の示す特性が、設計上の特性から外れることになる。それにより、接合部JAと重ならない領域に発振回路11、基準電圧生成回路14A、レギュレーター回路14B、温度補償回路15、温度センサー16を配置することは、受動素子を含む回路を配置することになるため、振動デバイス1の特性に影響する。その点、本実施形態の振動デバイス1は、発振回路11、基準電圧生成回路14A、レギュレーター回路14B、温度補償回路15、温度センサー16が接合部JAと重なるように配置されている。このようにすることで、接合部JAと重なる領域に受動素子を配置することによって、応力の影響が少ない領域に受動素子を配置させるため、受動素子の変形を最小限にすることができる。これにより、受動素子の特性を安定させることができる。これにより、パッケージ化した後の振動デバイス1の発振特性を安定させることができる。
【0059】
なお、本実施形態の受動素子は容量素子又は抵抗素子のうち少なくとも一つである。例えば後述する図12の基準電圧生成回路14Aは、抵抗素子である抵抗RD1~RD3を含む。また、例えば後述する図13のレギュレーター回路14Bは、抵抗素子である抵抗RD1~RD3と容量素子であるキャパシターCAを含む。このようにすることで、これらの抵抗やキャパシターの変形を抑制することができる。これにより、キャパシターの容量又は抵抗の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態の容量素子は、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシター、PIP(Polysilicon-Insulator-polysilicon)キャパシター又はMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)キャパシターのうち少なくとも一つである。振動デバイス1において、より大きな容量を得るために、MIMキャパシター又はPIPキャパシターが用いられる。また、発振周波数を温度補償するために、印加される電圧に応じて容量値が変化する可変容量素子としてMOSキャパシターが用いられる。つまり、これらのキャパシターは、振動デバイス1において通常よく用いられる。前述した本実施形態の手法を適用し、これらのキャパシターを応力の影響が少ない位置に配置することにより、これらのキャパシターの変形を抑制することができる。これにより、これらのキャパシターの容量の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では制御回路13や記憶部17は、平面視において、リッド内壁線9Lの内側に配置される。つまり、集積回路10は、平面視で接合部JAと重ならない領域に配置されている所定回路を含み、所定回路は、制御回路13又はメモリー回路である記憶部17のうち少なくとも一つを含む。例えば制御回路13のうち、信号のハイレベルとローレベルが決まっているところに対しては、応力による影響は十分小さいため、応力に起因して振動デバイスの発振周波数に影響を与える寄与が小さい。そのため、制御回路13等を接合部JAに重なる位置に配置することは、接合部JAと重なる位置に、応力による影響の大きい回路を配置させる余地を狭める。そこで、応力の影響による支障が少ない制御回路13や記憶部17を、応力の影響が大きい位置に配置することで、応力の影響が小さい位置に、応力の影響が大きい回路を配置する余地を大きくすることができる。
【0062】
また本実施形態では図10に示すように、発振回路11は、平面視において、第2辺SD2よりも第1辺SD1に近い位置に配置される。具体的には発振回路11は、平面視において、第1辺SD1と貫通電極40、41との間に配置される。即ち発振回路11は、第1辺SD1と、貫通電極40と貫通電極41を結ぶ線との間の領域に配置される。例えば発振回路11は、第1辺SD1に沿って配置されており、その長手方向が第1辺SD1に沿うように配置されている。そして発振回路11は、配線LA、LBやコンタクトパッド36、37により実現される端子TXA、TXBを介して、振動素子5に電気的に接続されて、振動素子5を発振させる。例えば発振回路11を構成するトランジスター、キャパシター、抵抗等の回路素子は、平面視で面積を有する金属層や拡散層などの導電層を有する。従って、発振回路11での導電層と外部接続端子91との容量結合により、外部接続端子91から出力されるクロック信号CKの信号成分がノイズとして発振回路11に伝達され、発振特性に悪影響が生じるおそれがある。この点、本実施形態では、発振回路11は、平面視において第1辺SD1に近い位置に配置されるため、平面視において第2辺SD2に近い位置に配置される外部接続端子91との間の距離を離すことが可能になる。従って、発振回路11と外部接続端子91との間の容量結合の容量を低減できるため、発振回路11の発振特性の劣化の発生等を抑制できるようになる。
【0063】
図11に、発振回路11の構成例を示す。発振回路11は、駆動回路132と、DCカット用のキャパシターC1、C2と、基準電圧供給回路134と、第1可変容量回路136を含む。また発振回路11は、DCカット用のキャパシターC4と、第2可変容量回路137を含むことができる。なお、キャパシターC4と第2可変容量回路137は必須の構成要素ではなく、これらを設けない変形実施も可能である。また、第1可変容量回路136及び第2可変容量回路137とGNDノードとの間にはキャパシターC31~C3nが設けられている。
【0064】
駆動回路132は、振動素子5を駆動して発振させる回路である。駆動回路132は、電流源ISAと、バイポーラートランジスターBP0と、抵抗RBを含む。電流源ISAは、レギュレート電源電圧VREGの電源ノードとバイポーラートランジスターBP0との間に設けられ、バイポーラートランジスターBP0に定電流を供給する。
【0065】
バイポーラートランジスターBP0は、振動素子5を駆動するトランジスターであり、ベースノードが、駆動回路132の入力ノードNIとなり、コレクターノードが、駆動回路132の出力ノードNQとなっている。抵抗RBはバイポーラートランジスターBP0のコレクターノードとベースノードの間に設けられる。
【0066】
DCカット用のキャパシターC1は、駆動回路132の入力ノードNIと配線LAとの間に設けられる。このようなキャパシターC1を設けることで、発振信号のDC成分がカットされ、AC成分だけが駆動回路132の入力ノードNIに伝達されるようになり、バイポーラートランジスターBP0を適正に動作させることが可能になる。なお、DCカット用のキャパシターC1は、駆動回路132の出力ノードNQと配線LAとの間に設けてもよい。
【0067】
基準電圧供給回路134は、第1可変容量回路136及び第2可変容量回路137に基準電圧VR1~VRnを供給する。基準電圧供給回路134は、例えばレギュレート電源電圧VREGのノードとGNDのノードの間に直列に設けられた複数の抵抗を含み、VREGの電圧を分割した電圧を基準電圧VR1~VRnとして出力する。また基準電圧供給回路134は、配線LAにバイアス電圧設定用の基準電圧VRBを供給する。これにより配線LAでの発振信号の振幅中心電圧を基準電圧VRBに設定できるようになる。なお配線LBでの発振信号の振幅中心電圧は、例えばバイポーラートランジスターBP0のベース・エミッター間電圧と、抵抗RBに流れるベース電流に基づき設定される。
【0068】
DCカット用のキャパシターC2は、一端が配線LAに電気的に接続され、他端が温度補償電圧VCPの供給ノードNS1に電気的に接続される。温度補償電圧VCPは抵抗RC1を介して供給ノードNS1に供給される。第1可変容量回路136は、一端が供給ノードNS1に電気的に接続されて、温度補償電圧VCPが供給される。また、基準電圧供給回路134は、第1可変容量回路136の他端の供給ノードNR1~NRnに、基準電圧VR1~VRnを供給する。そして基準電圧VR1~VRnの供給ノードNR1~NRnと、GNDノードとの間にキャパシターC31~C3nが設けられる。DCカット用のキャパシターC4は、一端が配線LBに電気的に接続され、他端が温度補償電圧VCPの供給ノードNS2に電気的に接続される。温度補償電圧VCPは抵抗RC2を介して供給ノードNS2に供給される。また、配線LAとGNDノードとの間に、スイッチとキャパシターC7、C8が設けられ、配線LAの負荷容量が調整される。また、配線LBとGNDノードとの間に、スイッチとキャパシターC5、C6が設けられ、配線LBの負荷容量が調整される。第2可変容量回路137は、一端が供給ノードNS2に電気的に接続されて、温度補償電圧VCPが供給される。また、基準電圧供給回路134は、第2可変容量回路137の他端の供給ノードNR1~NRnに、基準電圧VR1~VRnを供給する。第1可変容量回路136はn個の可変容量素子を含む。nは2以上の整数である。n個の可変容量素子は、例えばMOS型の可変容量素子であり、n個のトランジスターにより構成される。そしてn個のトランジスターのゲートには基準電圧VR1~VRnが供給される。またn個のトランジスターの各トランジスターのソース及びドレインが短絡され、短絡されたソース及びドレインが接続される供給ノードNS1に対して、温度補償電圧VCPが供給される。そしてDCカット用のキャパシターC2の容量は、第1可変容量回路136の容量に比べて十分に大きな容量になっている。このような構成の第1可変容量回路136を用いることで、広い温度補償電圧VCPの電圧範囲において、第1可変容量回路136のトータルの容量の容量変化の直線性を確保できるようになる。なお、第2可変容量回路137の構成は第1可変容量回路136と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、振動素子5を発振させて発振信号を出力する発振回路11を含み、受動素子は、発振回路11に含まれる容量素子又は抵抗素子のうち少なくとも一つである。前述のように、基準電圧供給回路134に含まれる不図示の抵抗が応力により変形し、抵抗値が不安定になると、基準電圧供給回路134から供給される基準電圧VR1~VRnも不安定になる。それにより、第1可変容量回路136に印加される電圧も不安定になる。また、図8で前述したように、キャパシターC1、C2、C31~C3n、C4~C8の容量も、応力の影響で不安定になる。それにより、発振回路11の負荷容量が不安定になり、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用することで、発振回路11に含まれる容量素子又は抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、発振回路11に含まれる容量素子又は抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、発振回路11に含まれる容量素子の容量又は抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0070】
図12に、基準電圧生成回路14Aの構成例を示す。基準電圧生成回路14Aは、VDDノードとGNDノードの間に設けられるN型のトランジスターTD1、抵抗RD1、RD2、RD3、バイポーラートランジスターBP1、BP2を含む。また、基準電圧生成回路14Aは、バイアス電圧BSがゲートに入力されるP型のトランジスターTD1、TD2と、トランジスターTD2のドレインノードとGNDノードとの間に設けられるバイポーラートランジスターBP3を含む。基準電圧生成回路14Aは、バンドギャップリファレンス回路であり、バンドギャップ電圧による基準電圧VREFを生成して出力する。例えばPNP型のバイポーラートランジスターBP1、BP2のベース・エミッター間電圧をVBE1、VBE2とし、ΔVBE=VBE1-VBE2とする。基準電圧生成回路14Aは、例えばVREF=K×ΔVBE+VBE2となる基準電圧VREFを出力する。Kは抵抗RD1、RD2の抵抗値により設定される。例えばVBE2は負の温度特性を有し、ΔVBEは正の温度特性を有するため、抵抗RD1、RD2の抵抗値を調整することで、温度依存性のない定電圧の基準電圧VREFを生成できるようになる。そして生成される基準電圧VREFはグランド電圧を基準とした定電圧になる。なお基準電圧生成回路14Aは図12の構成に限定されず、例えばトランジスターの仕事関数差電圧を用いて基準電圧VREFを生成する回路などの種々の構成の回路を用いることができる。
【0071】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、集積回路10に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路14Aを含み、受動素子は、集積回路10に含まれる抵抗素子である。前述のように、基準電圧生成回路14Aに含まれる抵抗RD1、RD2、RD3が応力により変形し、抵抗値が不安定になると、基準電圧VREFも不安定になる。それにより、後述するレギュレーター回路14Bから出力されるレギュレート電源電圧VREGも不安定になり、発振回路11の負荷容量が変動する。それにより、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用することで、基準電圧生成回路14Aに含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、基準電圧生成回路14Aに含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、基準電圧生成回路14Aに含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができるので、基準電圧VREFやレギュレート電源電圧VREGを安定させることができる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0072】
図13に、レギュレーター回路14Bの構成例を示す。レギュレーター回路14Bは、VDDノードとGNDノードの間に直列に設けられた駆動用のN型のトランジスターTA1及び抵抗RA1、RA2と、演算増幅器OPAを含む。また、レギュレーター回路14Bは、演算増幅器OPAの出力端子側に設けられた抵抗RA3及びキャパシターCAを含むことができる。演算増幅器OPAの非反転入力端子には、基準電圧VREFが入力され、反転入力端子には、レギュレート電源電圧VREG1を抵抗RA1、RA2により電圧分割した電圧VDAが入力される。そして演算増幅器OPAの出力端子が、抵抗RA3を介してトランジスターTA1のゲートに入力され、トランジスターTA1のドレインノードからレギュレート電源電圧VREGが出力される。なお、レギュレーター回路14Bは、抵抗RA1、RA2を固定の抵抗値の抵抗とすることで、固定電圧のレギュレート電源電圧VREGを出力することになるが、抵抗RA1、RA2の抵抗値を可変に設定できるようにしてもよい。これにより、例えば製造や出荷時においてプロセス変動に対するレギュレート電源電圧VREGの変動を補償するための抵抗値の調整ができる。
【0073】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、レギュレート電源電圧VREGを生成するレギュレーター回路14Bを含み、受動素子は、レギュレーター回路14Bに含まれる抵抗素子である。前述のように、レギュレーター回路14Bに含まれる抵抗RA1、RA2が応力により変形し、抵抗値が変化すると、抵抗RA1と抵抗RA2の比が変動し、レギュレート電源電圧VREGが変動する。それにより、発振回路11の負荷容量が変動し、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用することで、レギュレーター回路14Bに含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、レギュレーター回路14Bに含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、レギュレーター回路14Bに含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができるので、レギュレート電源電圧VREGの変動を抑制できる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0074】
また、以上のように、本実施形態の振動デバイス1は、集積回路10に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路14A又は集積回路10に用いられるレギュレート電源電圧VREGを生成するレギュレーター回路14Bと、の少なくとも一つを含む。基準電圧生成回路14A又はレギュレーター回路14Bの少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、第1面21に直交する方向からの平面視において、接合部JAと重なるように配置されている。例えば基準電圧生成回路14Aは、前述のように受動素子の他、能動素子としてバイポーラートランジスターBP1~BP3を含む。図9で前述の通り、接合部JAと重ならない領域にバイポーラートランジスターBP1~BP3が存在すると、応力の影響によってバイポーラートランジスターBP1~BP3のベース電流が変化する。その結果、基準電圧VREFが不安定になり、前述と同様に、振動デバイス1の周波数が変化する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用し、例えば接合部JAと重なる領域に、受動素子である抵抗RD1~RD3又は能動素子であるバイポーラートランジスターBP1~BP3を配置することによって、これらの特性を安定させることができる。これにより、パッケージ化した後の振動デバイス1の発振特性を安定させることができる。
【0075】
図14に、温度センサー16の構成例を示す。温度センサー16は、バイポーラートランジスターBP4と抵抗RE1と可変抵抗回路REAと電流源ISBとを含む。電流源ISBは、電源ノードNVDと第1ノードN1との間に設けられ、第1ノードN1に定電流IAを出力する。例えば、電流源ISBは、電源ノードNVDとGNDノードとの間に設けられる抵抗と、その抵抗に流れる電流をミラーすることで定電流IAを出力するカレントミラー回路と、により構成される。第1ノードN1は、バイポーラートランジスターBP4のベースノードに接続される。抵抗RE1は、第1ノードN1と、バイポーラートランジスターBP4のコレクターノードとの間に設けられる。即ち、抵抗RE1の一端は第1ノードN1に接続され、抵抗RE1の他端はバイポーラートランジスターBP4のコレクターノードに接続される。可変抵抗回路REAは、バイポーラートランジスターBP4のエミッターノードと、GNDノードとの間に設けられる。即ち、可変抵抗回路REAの一端はバイポーラートランジスターBP4のエミッターノードに接続され、可変抵抗回路REAの他端はGNDノードに接続される。可変抵抗回路REAには、記憶部17から0次補正データが入力され、その0次補正データにより可変抵抗回路REAの抵抗値が設定される。これにより、バイポーラートランジスターBP4のコレクターノードから、温度依存性を有する温度検出電圧VTが出力される。
【0076】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、温度を検出する温度センサー16を含み、受動素子は、温度センサー16に含まれる抵抗素子である。前述のように、温度センサー16に含まれる抵抗RE1等が応力により変形し、抵抗値が変化すると、温度検出電圧VTが変動する。それにより、発振回路11の負荷容量が変動し、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用することで、温度センサー16に含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、温度センサー16に含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、温度センサー16に含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができるので、温度検出電圧VTを安定させることができる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0077】
図15に、温度補償回路15の構成例を示す。温度補償回路15は、0次補正回路152と、1次補正回路154と、高次補正回路156と、電流電圧変換回路158を含む。なお例えば3次補正、4次補正、5次補正などを行う場合には、高次補正回路156として、3次補正回路、4次補正回路、5次補正回路などの複数の補正回路が設けられることになる。高次補正回路156は関数発生回路とも呼ばれ、温度補償電圧VCPの特性を近似する多項式に対応する関数電流を発生する。例えば多項式は温度を変数とする関数である。
【0078】
温度補償回路15は、多項式近似によるアナログ方式の温度補償を行う。具体的には温度補償回路15は、温度を変数とする関数である多項式の近似によって温度補償電圧VCPを生成して出力する。このために記憶部17は、温度補償電圧VCPの特性を近似する多項式の0次係数、1次係数、高次係数を、0次補正データ、1次補正データ、高次補正データとして記憶する。そして0次補正回路152と1次補正回路154と高次補正回路156は、記憶部17に記憶された0次補正データ、1次補正データ、高次補正データに基づいて、0次補正電流信号、1次補正電流信号、高次補正電流信号を出力する。0次補正電流信号、1次補正電流信号、高次補正電流信号は、関数電流の0次成分信号、1次成分信号、高次成分信号と言うことができる。そして1次補正回路154、高次補正回路156には、温度に対してリニアに変化する温度検出電圧VTに基づいて、1次補正電流信号、高次補正電流信号を生成して出力する。電流電圧変換回路158は、0次補正電流信号、1次補正電流信号、高次補正電流信号の加算処理を行うと共に電流電圧変換を行って、温度補償電圧VCPを出力する。これにより多項式近似によるアナログ方式の温度補償が実現される。なお上述のように温度センサー16を用いて温度補償の0次補正を行う場合には、0次補正回路152の構成は省略できる。この場合に温度検出電圧VTのオフセット電圧の変動に起因する温度検出電圧特性のズレを補正するために、例えば5次の多項式近似の温度補償を行う温度補償回路15に、2次補正回路や4次補正回路を設けるようにしてもよい。
【0079】
図16に、高次補正回路156の構成例を示す。高次補正回路156は、バイポーラートランジスターBP51~BP5(2N+1)、バイポーラートランジスターBP61~BP6(2N+1)、抵抗RF1~RF(2N+1)、抵抗RG1~RG(2N+1)、電流源ISC1~ISC(2N+1)を含む。Nは自然数である。なお、後述する基準電圧VS1~VS(N+1)と基準電圧VGは、不図示の電圧発生回路から出力される。
【0080】
バイポーラートランジスターBP51とバイポーラートランジスターBP61とで差動対が構成されている。バイポーラートランジスターBP51は、ベース端子に基準電圧VS1が入力され、コレクター端子が基準電圧VGを供給する基準電圧供給線159と接続され、エミッター端子が抵抗RF1を介して電流源ISC1と電気的に接続されている。バイポーラートランジスターBP61は、ベース端子に温度検出電圧VTが入力され、コレクター端子が電流電圧変換回路158と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗RG1を介して電流源ISC1と電気的に接続されている。電流源ISC1は、抵抗RF1、抵抗RG1を介して、バイポーラートランジスターBP51とバイポーラートランジスターBP61で構成される差動対に定電流IB1を流す。バイポーラートランジスターBP5(2N+1)とバイポーラートランジスターBP6(2N+1)とで構成される差動対についても同様である。
【0081】
また、バイポーラートランジスターBP52とバイポーラートランジスターBP62とで差動対が構成されている。バイポーラートランジスターBP52は、ベース端子に基準電圧VS2が入力され、コレクター端子が電流電圧変換回路158と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗RG1を介して電流源ISC2と電気的に接続されている。バイポーラートランジスターBP62は、ベース端子に温度検出電圧VTが入力され、コレクター端子が基準電圧供給線159と電気的に接続され、エミッター端子が抵抗RG2を介して電流源ISC2と電気的に接続されている。電流源ISC2は、抵抗RF2、抵抗RG2を介して、バイポーラートランジスターBP52とバイポーラートランジスターBP62で構成される差動対に定電流IB(2N)を流す。バイポーラートランジスターBP5(2N)とバイポーラートランジスターBP6(2N)とで構成される差動対についても同様である。
【0082】
温度検出電圧VTの値は、温度Tに対してほぼ線形に減少し、温度TがT1、T2、…、T(2N)、T(2N+1)のときに、それぞれ基準電圧VS1、VR2、…、VSN、VS(2N+1)と一致するものとする。なお、T1<T2<…<T(2N)<T(2N+1)であるものとする。公知の手法につき詳細な説明は省略するが、このような構成の差動対を含むことで、電流電圧変換回路158からの電流値は、例えば温度TがT1の付近では単調に減少し、温度TがT2の付近では単調に増加し、以降差動対の数に応じて単調減少と単調増加が交互に繰り返される。これにより、電流電圧変換回路158からの電流値の温度依存性は、図示は省略するが、うねりを繰り返すパターンを示すようになる。
【0083】
以上のように、本実施形態の振動デバイス1において、集積回路10は、振動素子5の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路15を含み、受動素子は、温度補償回路15に含まれる抵抗素子である。前述のように、温度補償回路15の高次補正回路156は、各差動対を構成する抵抗RF1~RF(2N+1)、抵抗RG1~RG(2N+1)を含む。これらの抵抗が応力により変形し、抵抗値が変化すると、電流電圧変換回路158と繋がる配線上の電流値が変動する。それにより、温度補償電圧VCPが変動するため、発振回路11の負荷容量が変動し、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。この点、本実施形態の手法を適用することで、温度補償回路15に含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、温度補償回路15に含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、温度補償回路15に含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができるので、温度補償電圧VCPを安定させることができる。これにより、振動デバイス1の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態の振動デバイス1は、温度を検出する温度センサー16又は振動素子5の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路15と、の少なくとも一つを含む。温度センサー16又は温度補償回路15の少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、第1面21に直交する方向からの平面視において、接合部73と重なるように配置されている。図14図16で前述の通り、温度センサー16又は温度補償回路15は、前述の受動素子の他、能動素子であるバイポーラートランジスターBP4、BP51~BP5(2N+1)、BP61~BP6(2N+1)を含む。図9で前述の通り、接合部JAと重ならない領域にBP4、BP51~BP5(2N+1)、BP61~BP6(2N+1)が存在すると、応力の影響によってバイポーラートランジスターBP4、BP51~BP5(2N+1)、BP61~BP6(2N+1)のベース電流が変化する。温度補償電圧VCPが変動するため、発振回路11の負荷容量が変動し、振動デバイス1の周波数が変動する問題が生じる。その点、本実施形態の振動デバイス1は、温度センサー16、温度補償回路15が接合部JAと重なるように配置されている。このようにすることで、接合部JAと重なる領域に受動素子を又は能動素子が配置されることによって、受動素子又は能動素子の特性を安定させることができる。これにより、パッケージ化した後の振動デバイス1の発振特性を安定させることができる。
【0085】
本実施形態は、上述に限らず、種々の変形実施が可能である。図17は、本実施形態の変形例を示す平面図である。振動デバイス1は、さらにPLL回路18を含んでもよい。例えばフラクショナル-N型のPLL回路18を設けることで、発振回路11の発振信号の周波数を逓倍した任意の周波数のクロック信号CKを出力できるようになる。また、PLL回路18は制御回路13等と同様に、平面視においてリッド内壁線9Lの内側に配置される。すなわち、平面視においてPLL回路18は接合部JAと重ならない位置に配置される。PLL回路18は、フィードバックループ内で補正されるため、応力による影響は小さいと考えられるためである。このように、PLL回路18を応力の影響が大きい位置に配置することにより、応力の影響が小さい位置に、応力の影響が大きい回路を配置する余地を大きくすることができる。
【0086】
以上のように本実施形態の振動デバイスは、半導体基板と、ベースと、振動素子と、リッドと、を含む。半導体基板は、第1面と第1面と表裏関係にある第2面とを有する。ベースは、第1面又は第2面に配置されている集積回路と、を含む。振動素子は集積回路に電気的に接続され、第1面側に配置されている。リッドは、振動素子を収容するようにベースの接合部においてベースに接合されている。集積回路は、受動素子を含み、受動素子は、第1面に直交する方向からの平面視において、受動素子の少なくとも一部が接合部と重なるように配置されている。
【0087】
このように本実施形態の振動デバイスは、半導体基板の第1面又は第2面に配置されている集積回路を含む。また、集積回路は、受動素子を含み、受動素子は、第1面に直交する方向からの平面視において、受動素子の少なくとも一部が、リッドと接合する接合部と重なるように配置されている。このように配置することで、平面視において受動素子が接合部と重ならないように配置される場合に比べて、受動素子を応力の影響が少なくすることができる。これにより、応力の影響による受動素子の変形を抑制することができる。これにより、受動素子の特性の変化を抑制することができるので、振動デバイスの周波数の特性の変化を効果的に抑制することができる。
【0088】
また、受動素子は、容量素子又は抵抗素子のうち少なくとも一つでよい。
【0089】
このようにすれば、容量素子又は抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、容量素子又は抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、容量素子の容量又は抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0090】
また、容量素子は、MIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシター、PIP(polysilicon-Insulator-polysilicon)キャパシター又はMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)キャパシターのうち少なくとも一つでよい。
【0091】
このようにすれば、振動デバイスで通常用いられるキャパシターを応力の影響が少ない位置に配置することにより、これらのキャパシターの変形を抑制することができる。これにより、これらのキャパシターの容量の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0092】
また、集積回路は、振動素子を発振させて発振信号を出力する発振回路を含み、受動素子は、発振回路に含まれる容量素子又は抵抗素子のうち少なくとも一つでよい。
【0093】
このようにすれば、発振回路に含まれる容量素子又は抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、発振回路に含まれる容量素子又は抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、発振回路に含まれる容量素子の容量又は抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0094】
また、ベースは、貫通電極を含み、集積回路は、第1辺及び第1辺と対向する第2辺を有し、第1面に直交する方向からの平面視において、第1辺と貫通電極の間に、発振回路が配置されていてもよい。
【0095】
このようにすれば、発振回路を第1辺に近い位置に配置することで、第2辺に近い位置に配置される外部接続端子との発振回路との間の距離を離すことが可能になり、発振回路と外部接続端子との間の容量結合の容量を低減できるようになる。
【0096】
また、集積回路は、集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路を含み、受動素子は、基準電圧生成回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0097】
このようにすれば、基準電圧生成回路に含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、基準電圧生成回路に含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、基準電圧生成回路に含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0098】
また、集積回路は、集積回路に用いられるレギュレート電源電圧を生成するレギュレーター回路を含み、受動素子は、レギュレーター回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0099】
このようにすれば、レギュレーター回路に含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、レギュレーター回路に含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、レギュレーター回路に含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0100】
また、集積回路は、温度を検出する温度センサーを含み、受動素子は、温度センサーに含まれる抵抗素子であってもよい。
【0101】
このようにすれば、温度センサーに含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、温度センサーに含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、温度センサーに含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0102】
また、集積回路は、振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路を含み、受動素子は、温度補償回路に含まれる抵抗素子であってもよい。
【0103】
このようにすれば、温度補償回路に含まれる抵抗素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、温度補償回路に含まれる抵抗素子の変形を抑制することができる。これにより、温度補償回路に含まれる抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0104】
また集積回路は、平面視で接合部と重ならない領域に配置されている所定回路を含み、所定回路は、制御回路又はメモリー回路のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0105】
このようにすれば、応力の影響による支障が少ない制御回路やメモリー回路を、応力の影響が大きい位置に配置することにより、応力の影響が小さい位置に、応力の影響が大きい回路を配置する余地を大きくすることができる。
【0106】
また、本実施形態の振動デバイスは、半導体基板と、ベースと、振動素子と、リッドと、を含む。半導体基板は、第1面と第1面と表裏関係にある第2面とを有する。ベースは、第1面又は第2面に配置されている集積回路と、を含む。振動素子は集積回路に電気的に接続され、第1面側に配置されている。リッドは、振動素子を収容するようにベースの接合部においてベースに接合されている。集積回路は、集積回路に用いられる基準電圧を生成する基準電圧生成回路又は集積回路に用いられるレギュレート電源電圧を生成するレギュレーター回路と、の少なくとも一つを含む。基準電圧生成回路又はレギュレーター回路の少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、第1面に直交する方向からの平面視において、接合部と重なるように配置されている。
【0107】
このようにすれば、基準電圧生成回路又はレギュレーター回路に含まれる受動素子又は能動素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、基準電圧生成回路又はレギュレーター回路に含まれる受動素子又は能動素子の変形を抑制することができる。これにより、基準電圧生成回路又はレギュレーター回路に含まれる受動素子又は能動素子の特性の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態の振動デバイスは、半導体基板と、ベースと、振動素子と、リッドと、を含む。半導体基板は、第1面と第1面と表裏関係にある第2面とを有する。ベースは、第1面又は第2面に配置されている集積回路と、を含む。振動素子は集積回路に電気的に接続され、第1面側に配置されている。リッドは、振動素子を収容するようにベースの接合部においてベースに接合されている。集積回路は、温度を検出する温度センサー又は振動素子の発振周波数の温度補償を行う温度補償回路と、の少なくとも一つを含む。温度センサー又は温度補償回路の少なくとも一つに含まれる受動素子又は能動素子の少なくとも一部が、第1面に直交する方向からの平面視において、接合部と重なるように配置されている。
【0109】
このようにすれば、温度センサー又は温度補償回路に含まれる受動素子又は能動素子を応力の影響が少ない位置に配置することにより、温度センサー又は温度補償回路に含まれる受動素子又は能動素子の変形を抑制することができる。これにより、温度センサー又は温度補償回路に含まれる受動素子又は能動素子の特性の変化を抑制することができる。これにより、振動デバイスの発振周波数の変化を抑制することができる。
【0110】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また振動デバイスの構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1,101…振動デバイス、2,102…ベース、5,105…振動素子、7,107…リッド、8,108…再配置配線層、10,110…集積回路、11…発振回路、12…出力回路、13…制御回路、14A…電源回路、14B…レギュレーター回路、15…温度補償回路、16…温度センサー、17…記憶部、18…PLL回路、20…半導体基板、21,121…第1面、22,122…第2面、23,24…トランジスター、25…素子分離膜、27…ガードリング、30…配線層、31,32…金属層、33,34,35…絶縁層、36,37,38,39…コンタクトパッド、40,41,140,141…貫通電極、44…絶縁層、50…振動基板、52,53…励振電極、54…配線、56…端子、60,61,160,161…接合部材、62,162…バンプ、64…端子、68,69…コンタクトパッド、71,72…接合部材、80,180…絶縁層、82,182…配線、84…第1金属層、86…第2金属層、91,92,191,192…外部接続端子、132…駆動回路、134…基準電圧供給回路、136…第1可変容量回路、137…第2可変容量回路、152…0次補正回路、154…1次補正回路、156…高次補正回路、158…電流電圧変換回路、159…基準電圧供給線、171,172…第3金属層、173,174…第4金属層、176…第5金属層、177,178…第6金属層、210A,210B…導体層、220…絶縁層、230…ベース領域、232…結晶欠陥、
【0112】
BP,BP0,BP1,BP2,BP3,BP4,BP51,BP52,BP5(2N),BP5(2N+1),BP61,BP62,BP6(2N),BP6(2N+1)…バイポーラートランジスター、C,C1,C2,C31,C3n,C4,C5,C6,C7,C8,CA…キャパシター、CK…クロック信号、IA,IB1,IB2,IB(2N),IB(2N+1)…定電流、ISA,ISB,ISC1,ISC2,ISC(2N),ISC(2N+1)…電流源、JA…接合部、LA,LB,…配線、N1…第1ノード、NR1,NR2,NRn,NS1,NS2…供給ノード、OE…出力イネーブル信号、OPA…演算増幅器、OSC…発振信号、R,RA1,RA2,RA3,RB,RC1,RC2,RD1,RD2,RD3,RE1,RF1,RF2,RF(2N),RF(2N+1),RG1,RG2,RG(2N),RG(2N+1),RQ…抵抗、REA…可変抵抗回路、SD1…第1辺、SD2…第2辺、SD3…第3辺、SD4…第4辺、SDA…データ信号、SP…収容空間、TA1,TD1,TD2,TD3…トランジスター、TE3,TE4,TE5,TE7…外部端子、TL…リッド厚さ、TCK,TGND,TOE,TVC,TVDD,TXA,TXB…端子、VDD…電源電圧、VG,VR1,VRB,VREF,VRn,VS1,VS2,VS(2N),VS(2N+1)…基準電圧、VCP…温度補償電圧、VREG…レギュレート電源電圧、VT…温度検出電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17