(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】医療データ解析システム、医療データ解析方法、および医療データ解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20241203BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20241203BHJP
G16H 40/20 20180101ALI20241203BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q50/26
G16H40/20
(21)【出願番号】P 2021012634
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今井 美彩子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 環
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 篤哉
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018162(JP,A)
【文献】特開2006-091199(JP,A)
【文献】特開2015-172838(JP,A)
【文献】特開2020-080126(JP,A)
【文献】特開2009-140252(JP,A)
【文献】特開2020-009063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムであって、
前記制御部が、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の前記機能指標値を取得し、
前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に前記比較対象医療機関の前記相対指標値を
含むアイコンを対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させることを特徴とする医療データ解析システム。
【請求項2】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムであって、
前記制御部が、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の前記機能指標値を取得し、
前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に前記比較対象医療機関の前記相対指標値
の推移を示す推移指標を対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させることを特徴とする医療データ解析システム。
【請求項3】
前記制御部が、前記医療機関レイヤに、前記比較対象医療機関と他の前記医療機関との連携の存在を示す連携情報を配置する
請求項1
または2に記載の医療データ解析システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記連携情報として、前記比較対象医療機関同士を結ぶ線を配置する
請求項
3に記載の医療データ解析システム。
【請求項5】
前記制御部が、前記地図レイヤに、前記評価領域内での地理情報を配置する
請求項1から
4のいずれか一項に記載の医療データ解析システム。
【請求項6】
前記機能指標値は、DPC対象病院に対応づけられた機能評価係数IIを含み、
前記相対指標値は、前記機能評価係数IIの偏差値を含む
請求項1から
5のいずれか一項に記載の医療データ解析システム。
【請求項7】
前記機能指標値は、DPC対象病院に対応づけられた機能評価係数IIを含み、
前記相対指標値は、前記機能評価係数IIの順位を含む
請求項1から
6のいずれか一項に記載の医療データ解析システム。
【請求項8】
前記機能指標値は、DPC対象病院に対応づけられた機能評価係数IIを含み、
前記相対指標値は、前記機能評価係数IIの偏差値と順位とを含み
前記制御部が、前記医療機関レイヤにおいて、医療機関群毎に異なる環状アイコンを前記DPC対象病院の前記住所情報に対応づけて配置し、前記DPC対象病院の前記偏差値と前記順位とを前記環状アイコンに含める
請求項1から
7のいずれか一項に記載の医療データ解析システム。
【請求項9】
前記制御部が、前記地図レイヤに災害時の被害予測範囲を配置する
請求項1から8のいずれか一項に記載の医療データ解析システム。
【請求項10】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムを用いて医療データを解析する方法であって、
前記制御部が、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の機能指標値を取得し、前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に当該比較対象医療機関の前記相対指標値を
含むアイコンを対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させることを特徴とする医療データ解析方法。
【請求項11】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムを用いて医療データを解析する方法であって、
前記制御部が、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の機能指標値を取得し、前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に当該比較対象医療機関の前記相対指標値
の推移を示す推移指標を対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させることを特徴とする医療データ解析方法。
【請求項12】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムを用いて医療データを解析するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の機能指標値を取得し、前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に当該比較対象医療機関の前記相対指標値を
含むアイコンを対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させる手段として機能させることを特徴とする医療データ解析プログラム。
【請求項13】
各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムを用いて医療データを解析するためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、
前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の機能指標値を取得し、前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、
前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に当該比較対象医療機関の前記相対指標値
の推移を示す推移指標を対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させる手段として機能させることを特徴とする医療データ解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療データを解析する医療データ解析システム、医療データ解析方法、および医療データ解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療データの解析結果を表示するシステムが提案されている。例えば、特許文献1に記載の医療データ解析システムは、任意に選択された評価領域内に位置する医療機関の医療データを取得し、着目する医療機関の医療データを主要診断群で分類し、着目する医療機関について主要診断群毎の評価領域内でのシェアを表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
着目する医療機関の評価領域内でのシェアの表示は、着目する医療機関の評価領域内での占有率を示す一方で、評価領域内に与えられる医療機関が担う機能の水準を示すものではない。評価領域内における医療機関の過不足に関わる推測や、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測は、評価領域内に求められる医療機関での機能の水準に応じて大きく変わり得る。そのため、着目する医療機関の評価領域内でのシェアの表示では、医療機関の過不足に関わる推測や、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測の精度が不足してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための医療データ解析システムは、各医療機関の住所情報及び機能指標値を含む医療データを記憶する記憶部に接続されて前記医療データを解析する制御部を備えた医療データ解析システムであって、前記制御部が、前記医療機関の比較を行なう評価領域を特定し、前記評価領域に前記住所情報が含まれる比較対象医療機関を含む複数の前記医療機関の機能指標値を取得し、前記各機能指標値を比較した前記比較対象医療機関の相対指標値に換算し、前記比較対象医療機関の前記住所情報が含まれる地図レイヤに、前記比較対象医療機関の前記住所情報に前記比較対象医療機関の相対指標値を対応づけた医療機関レイヤを重ねて、表示部に表示させる。
【0006】
上記構成によれば、比較対象医療機関が担う機能の水準が、複数の医療機関から見た相対指標値として地図上に表示される。複数の医療機関から見た相対指標値は、評価領域に与えられる医療機関の機能の水準を把握させ得る。これにより、評価領域における医療機関の過不足に関わる推測や、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測の精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】医療データ解析システムのシステム構成を示す構成図。
【
図2】医療データ解析システムが作成する地図レイヤの構成を示す図。
【
図3】医療データ解析システムが作成する医療機関アイコンの構成を示す図。
【
図4】医療データ解析システムが作成する解析マップの構成を示す図。
【
図5】医療データ解析システムの処理手順を示すフローチャート。
【
図6】変更例における解析マップの構成を示す構成図。
【
図7】変更例における医療機関アイコンの機能を示す図。
【
図8】変更例における医療機関アイコンの機能を示す図。
【
図9】変更例における医療機関アイコンの機能を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1~
図5を参照して、医療データ解析システム、医療データ解析方法、および医療データ解析プログラムの一実施形態を説明する。
医療データ解析システム20は、医療データ222を解析するコンピューターシステムである。医療データ解析システム20は、1以上の外部サーバー10に接続される。外部サーバー10は、医療機関に関わるデータを医療データ解析システムに提供するコンピューターシステムである。
【0009】
[ハードウェア構成]
医療データ解析システム20は、制御部21、記憶部22、入力部23、および表示部24を備える。制御部21は、データ取得部211、データ解析部212、およびマップ作成部213を備える。
【0010】
制御部21は、回路ユニットを備える。回路ユニットは、CPUやMPUなどのプロセッサと、RAMやROMなどのメモリとを含む。メモリは、プロセッサに処理を実行させるプログラムコードまたは指令を格納する。メモリは、コンピュータ可読媒体であり、汎用または専用のコンピュータでアクセスできる媒体を含む。プロセッサは、記憶部22に記憶されたプログラムを読み出し、メモリに記憶されたコードや指令を用いてプログラムを解読し、解読した処理を実行する。
【0011】
プロセッサは、自身が実行する全ての処理をソフトウェアで実行する回路に限らず、自身が実行する処理の一部をハードウェアで実行するASICなどの専用のハードウェア回路を備えてもよい。プロセッサは、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成される。
【0012】
データ取得部211は、通信インターフェースである。データ取得部211は、外部サーバー10と医療データ解析システム20との間で、データの送信および受信を実行する。データ取得部211は、例えばネットワークインターフェースや無線インターフェースなどである。データ取得部211は、地図データ221を生成するためデータ源を外部サーバー10から取得する。データ取得部211は、医療データ222を生成するためのデータ源を外部サーバー10から取得する。
【0013】
記憶部22は、ROM、RAM、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶部22は、医療データ222の解析を実行するためのデータ、およびプログラムを格納する。記憶部22は、解析結果を解析マップとして提供するためのデータ、およびプログラムを格納する。記憶部22は、地図データ221、および医療データ222を格納する。
【0014】
入力部23は、マウス、キーボード、タッチパネルなどのユーザーインターフェースである。入力部23は、医療データ222を生成するためのデータ、および医療データ222を解析するためのデータを受け付ける。
【0015】
表示部24は、医療データ解析システム20による解析マップを表示する。表示部24は、コンピュータ端末、タブレット端末、スマートフォンなどの各種端末が備えるディスプレイである。
【0016】
[データ構成]
地図データ221は、地図の様式に関わる様式情報と、人口規模に関わる地理情報とを含む。様式情報は、マップ空間における座標系に、地図上における基準点、海岸線、行政区分などの位置情報を対応づける。地理情報は、マップ空間における座標系に、人口規模の推測を補助する地理要素の位置情報を対応づける。マップ空間における座標系は、例えば、緯度や経度を含むグローバル座標系である。なお、人口規模の推測を補助する地域の大きさは、医療機関の利用範囲と見なされる大きさであり、例えば、地域単位として区分される医療圏、あるいは複数の医療圏のまとまりである。医療圏は、例えば、市町村単位などの一次医療圏、あるいは入院に係わる医療を提供する単位である二次医療圏である。
【0017】
地理情報は、地形図、運輸施設、教育施設、文化施設、体育施設、産業施設、行政施設、市町村名、人口、将来推計人口、人口の推移、世帯数、将来推計世帯数、世帯数の推移を含む。人口は、夜間人口、昼間人口、流動人口、これらを示す指標などである。人口は、人口密度が高い過密地、人口密度が低い過疎地などの人口水準を示す指標でもよい。世帯数は、一般世帯総数、家族類型別世帯数、これらの指標などである。
【0018】
地形図は、平地、盆地、台地、山地、川、湖、沼などである。平地や台地を示す地形図は、周辺よりも人口が多いことを推測させると共に、平地の中央や台地の中央で人口の流動が大きいことを推測させる。盆地、山地、川、湖などを示す地形図は、人口の流動する経路に制約が存在することを推測させる。人口規模に関わる運輸施設は、鉄道、駅、道路、歩道橋、橋梁などである。鉄道や駅などを示す地形図は、流動人口、昼間人口、および夜間人口などの大きさを推測させると共に、医療機関に対するアクセスの負荷を推測させる。医療機関の住所情報が含まれる地域での人口や、当該地域と周辺地域との間の移動に要する負荷などは、医療機関に求められる通常時の機能水準について、その推測を補助する。
【0019】
人口規模に関わる文化施設は、小学校、中学校、高等学校、大学などの各種学校、幼稚園などである。各種学校や幼稚園などの文化施設は、人口増減の安定性や、将来的な人口の増減を推測させる。人口増減の安定性や、将来的な人口の増減は、医療機関に求められる将来的な機能水準の推測を補助する。
【0020】
人口規模に関わる文化施設は、展示場、図書館、美術館、集会場、コンサートホールなどである。人口規模に関わる体育施設は、公園、体育館、スタジアムなどである。人口規模に関わる産業施設は、オフィスビルや金融機関などの事務施設、ホテルや保養所などの宿泊施設、ショッピングセンターやアミューズメント施設などである。展示場などの文化施設や、アミューズメント施設などの産業施設は、大きな人口の流動が定期的に生じることを推測させる。定期的な人口の流動は、医療機関に求められるピーク時や縮退時の機能水準について、その推測を補助する。
【0021】
地図データ221は、災害時の被害予測範囲(津波、洪水、浸水、土砂災害、揺れやすさ、液状化、防潮などの被害が想定される範囲)や、災害時の避難場所などを座標系に対応づけてもよい。地図データ221は、市街化区域、市街化調整区域、用途区域を含む都市計画図を座標系に対応づけてもよい。被害予測範囲や避難場所は、医療機関に求められる災害時の機能水準について、その推測を補助する。市街化され得る区域や用途を制限されている区域は、医療機関に求められる将来的な機能水準の推測を補助し、また医療機関が担う機能の拡張可否の推測を補助する。
【0022】
医療データ222は、医療機関マスターデータを備える。医療機関マスターデータは、医療機関の住所情報と、当該医療機関が担う機能の水準を示す機能指標値と、当該医療機関に関わる他の情報と、を対応づける。
【0023】
医療機関に関わる他の情報は、評価領域の特定に用いられる情報として、医療機関の名称、当該医療機関の一次医療圏、当該医療機関の二次医療圏を含んでもよい。医療機関に関わる他の情報は、機能指標値の算出に用いられた情報として、医療機関における各種の実績値を含んでもよい。医療機関に関わる他の情報は、医療機関と連携する他の医療機関に関わる情報でもよい。例えば、医療機関と連携する他の医療機関に関わる情報は、例えば、医療機関の名称や住所情報に、当該医療機関の関連医療機関の名称や住所情報を対応づける情報である。
【0024】
医療機関の住所情報は、医療機関の所在地を都道府県のコード番号と市町村のコード番号として示す番号である。なお、医療機関の住所情報は、医療機関の所在値でもよいし、医療機関の所在地を示すグローバル座標でもよい。医療機関の住所情報は、地図の座標系において医療機関の位置に対応づけられるように構成されている。
【0025】
医療機関は、医療を提供する施設である。医療機関は、20床以上の入院施設を有する医療機関である病院、入院施設が19床以下の有床診療所、および無床診療所を含む。なお、医療データ解析システム20が取り扱う医療機関は、医療を提供する施設の他に、介護サービスを提供する介護保険施設等(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、および介護医療院)を含む。
【0026】
病院は、機能で分類される特定機能病院、地域医療支援病院、一般病院、および精神科病院と、病期で分類される慢性期病院、回復期病院、および急性期病院を含む。特定機能病院は、高度医療の提供や高度医療技術の開発を担う。地域医療支援病院は、地域医療を担うかかりつけ医の支援や救急医療の提供を担う。精神科病院は、精神病床のみを有して精神障害者に対する集中的な治療を担う。慢性期病院は、慢性期における医療の提供を担う。回復期病院は、回復期における医療の提供を担う。急性期病院は、高度急性期や急性期における医療の提供を担う。急性期病院は、DPC対象病院を含む。DPC対象病院は、DPC/PDPSに参加した病院であり、かつ診療実績が認められた病院である。DPC/PDPSは、急性入院医療を対象とする診断群分類に基づく1日当たり包括払い制度である。DPC対象病院は、大学病院本院群、大学病院本院相当の高度医療を提供するDPC特定病院群、およびDPC標準病院群を含む。
【0027】
医療機関が担う機能は、高度・先進的な医療の提供機能、総合的な医療の提供機能、重症患者への対応機能、地域で広範囲・継続的に求められている機能、地域の医療確保に必要な機能などである。また、医療機関が担う機能は、病理診断機能、放射線治療機能、集中治療機能、救急医療機能、リハビリテーション機能、画像診断機能などである。
【0028】
医療機関が担う機能の水準を示す機能指標値は、医療機関ごとの絶対値である。医療機関が担う機能の水準を示す絶対値は、医療機関が担う機能に予め定められた基準と、医療機関が担う機能の水準との比較を通じ、水準が基準に該当する度合いに準じて算出される。
【0029】
医療機関マスターデータは、制御部21のマッチング処理を通じて生成される。マッチング処理は、照合元の1つの公開データと、当該公開データとは異なる他のデータとの照合である。医療機関マスターデータは、制御部21のマージ処理を通じて生成されてもよい。なお、医療機関マスターデータを生成する処理は、制御部21で実行されてもよいし、医療データ解析システム20に接続された他の装置で実行され、他の装置が医療データ解析システム20に医療マスターデータを提供してもよい。
【0030】
医療機関マスターデータを生成するための公開データは、医療機関に関わる各公的機関が外部サーバー10を通じて提供する。公開データは、マッチング処理、あるいはマージ処理に要するキーを含む。医療機関マスターデータを生成するためのキーは、医療機関の名称である。医療機関マスターデータを生成するためのキーは、や、医療機関の識別子である医療機関番号や、医療機関の住所情報でもよい。公開データの少なくとも1つは、医療機関の名称と、医療機関の住所情報とを対応づける。公開データは、DPC対象病院の施設概要表、実績データ、病床機能報告、コード内容別医療機関一覧表などである。
【0031】
DPC対象病院の施設概要表は、厚生労働省が公開するデータである。施設概要表は、医療機関の所在地を示すコード番号、医療機関の名称、急性期医療用の病床数、回復期医療用の病床数などを医療機関に対応づけたデータである。
【0032】
実績データは、厚生労働省が公開するデータである。実績データは、DPC/PDPS制度に参加が認められた病院の実績を示す。実績データは、DPC病院での診療報酬の算定に用いられるデータである。実績データは、DPC対象病院の名称、当該DPC病院の評価値である基礎係数、機能評価係数I、機能評価係数II、激変緩和係数を医療機関に対応づける。実績データは、機能評価係数IIの内訳などである。
【0033】
基礎係数は、提供する医療の水準ごとにまとめられたDPC対象病院の群に定められる値である。機能評価係数Iは、医療機関の人員配置や医療機関全体として有する機能など、医療機関単位での構造的因子を係数として示す。機能評価係数IIは、保険診療係数、効率性係数、複雑性係数、カバー率係数、救急医療係数、地域医療係数の合計として算出される絶対値である。機能評価係数IIを構成する各係数は、係数別に定められた医療機関が担う機能を要件とする絶対値である。機能評価係数II、あるいは機能評価係数IIを構成する各係数は、医療機関が担う機能の水準を示す機能指標値の一例である。
【0034】
病床機能報告は、厚生労働省が公開するデータである。病床機能報告は、病院および有床診療所を対象としたデータである。病床機能報告は、医療機関の名称、医療機関の所在地、病棟毎の医療機能、病棟毎の建築時期、病棟毎の建物の構造、職種毎の職員数、一般病床や療養病床の病床数などを医療機関に対応づけたデータである。
【0035】
コード内容別医療機関一覧表は、地方厚生局が公開するデータである。コード内容別医療機関一覧表は、医療機関の名称、医療機関の所在地、医療機関の病床数、医療機関の診療科目などを医療機関に対応づけたデータである。
【0036】
医療データ222は、医療機関マスターデータの他に、トピックデータなどの推測補助データを備えてもよい。推測補助データは、医療機関マスターデータ以外のデータであって、医療機関が担う機能について、その水準の推測を補助するデータである。トピックデータは、医療機関から発信された情報が専門誌等に掲載された件数や、医療機関における過去の施工情報などを医療機関に対応づける。トピックデータは、医療データ解析システム20の管理者による操作を通じて、入力部23から入力される。
【0037】
[システム構成]
制御部21は、地図データ221を生成するためのデータ源、および医療データ222を生成するためのデータ源を、外部サーバー10から取得するように構成されている。
【0038】
例えば、データ取得部211は、地図データ221を生成するための様式情報、および地図データ221を生成するための地理情報を外部サーバー10から取得する。制御部21は、データ取得部211の取得した様式情報、および地理情報を用い、様式情報と地理情報とを統括した地図データ221を生成する。
【0039】
例えば、データ取得部211は、医療データ222を作成するためのDPC対象病院の施設概要表、実績データ、病床機能報告、コード内容別医療機関一覧表などの公開データを外部サーバー10から取得する。入力部23は、医療データ222を生成するためのトピックデータを受け付ける。制御部21は、データ取得部211の取得した各種情報、および入力部23の受け付けた各種情報を用い、マッチング処理やマージ処理を通じ、医療データ222を生成する。
【0040】
制御部21は、入力部23が受け付けた着目対象を用い、評価領域を特定するように構成されている。評価領域は、医療機関が担う機能の水準が相対値として表示される当該医療機関の周辺地域である。制御部21は、特定した評価領域のなかに住所情報が含まれる医療機関を医療データ222から抽出し、抽出した医療機関を比較対象医療機関として特定するように構成されている。
【0041】
着目対象は、例えば、医療データ解析システム20の利用者が着目する地域である。制御部21は、地図データ221を参照し、着目対象として入力された地域を評価領域として特定する。制御部21は、医療データ222を参照し、評価領域のなかに住所情報が含まれる医療機関の全てを比較対象医療機関として特定する。
【0042】
着目対象は、例えば、医療データ解析システム20の利用者が着目する医療機関の名称である。制御部21は、医療データ222を参照し、着目対象の医療機関の住所情報に対応づけられた医療圏を、評価領域として特定する。制御部21は、特定された医療圏に対応づけられた他の医療機関と、着目する医療機関と、を比較対象医療機関として特定する。
【0043】
着目対象は、例えば、医療データ解析システム20の利用者が着目する地点である。制御部21は、医療データ222を参照し、着目対象の地点を含む医療圏を、評価領域として特定する。制御部21は、特定された医療圏に対応づけられた全ての医療機関を比較対象医療機関として特定する。
【0044】
なお、着目対象は、1つの地域に限らず、相互に連なる2つの地域、あるいは相互に離れた2つの地域でもよい。着目対象は、1つの医療機関に限らず、2つ以上の医療機関でもよい。着目対象が2つ以上の地域である場合、制御部21は、着目対象の全ての地域のなかに住所情報が含まれる医療機関を、比較対象医療機関として特定する。着目対象が2つ以上の医療機関である場合、制御部21は、着目対象の全ての医療機関に対応づけられた医療圏を評価領域として特定する。
【0045】
制御部21は、全ての比較対象医療機関が含まれる複数の医療機関の機能指標値を取得する。制御部21は、全ての比較対象医療機関が含まれる医療機関の母集団のなかで各機能指標値を比較し、比較対象医療機関の機能指標値を相対指標値に換算するように構成されている。
【0046】
データ解析部212は、医療データ222を参照し、例えば、比較対象医療機関を含む医療機関の母集団から、各医療機関の機能指標値を取得する。医療機関の母集団は、機能指標値を相対指標値に換算するためのデータ源となる集合である。
【0047】
データ解析部212は、取得した全ての機能指標値を用い、各医療機関の機能指標値を相対指標値に換算する。相対指標値は、データ解析部212の取得した全ての機能評価値から見た、各機能指標値の相対値である。相対指標値は、各医療機関が担う機能の水準を、医療機関の母集団のなかで相対的に示す値である。
【0048】
相対指標値の一例は、各機能指標値の偏差値である。相対指標値の他の例は、データ取得部211の取得した医療機関の母集団のなかの各機能指標値の順位である。相対指標値は、データ取得部211の取得した機能指標値の全てにおける平均値と各機能指標値との差分値でもよい。相対指標値は、機能指標値の偏差値、および機能指標値の順位の両方でもよい。
【0049】
データ解析部212は、入力部23が受け付けたトピックデータを相対指標値の算出に付加してもよい。例えば、データ解析部212は、専門誌等に掲載された件数が多いほど機能指標置が高まるように、各医療機関の機能指標値を算出してもよい。
【0050】
医療機関の母集団は、例えば、住所情報が医療データ222に含まれる全ての医療機関である。住所情報が医療データ222に含まれる全ての医療機関が母集団である場合、データ解析部212は、比較対象医療機関の特定に先駆けて、各医療機関の機能指標値を当該医療機関の相対指標値に換算し、医療データ222に付加するように構成されてもよい。データ解析部212による換算は、医療データ222が更新される都度、実行されてもよい。
【0051】
医療機関の母集団は、例えば、DPC対象病院からなる病院群と、DPC対象病院以外の病院からなる病院群とに分けられてもよい。比較対象医療機関がDPC対象病院である場合、医療データ解析システム20は、全てのDPC対象病院を、医療機関の母集団として取り扱い、各DPC対象病院が担う機能の水準を、全てのDPC対象病院から見て測るように構成される。比較対象医療機関がDPC対象病院以外の病院である場合、医療データ解析システム20は、DPC対象病院以外の全ての病院を、医療機関の母集団として取り扱い、DPC対象病院以外の各病院が担う機能の水準を、DPC対象病院以外の全ての病院から見て測るように構成される。
【0052】
医療機関の母集団は、例えば、DPC対象病院に対応づけられた大学病院本院群(旧I群(以下Iとも表記する))、DPC特定病院群(旧II群(以下IIとも表記する))、DPC標準病院群(旧III群(以下IIIとも表記する))の病院群に分けられてもよい。比較対象医療機関がI群に属する場合、医療データ解析システム20は、大学病院本院群の全体を母集団として取り扱い、大学病院本院群に属する各医療機関が担う機能の水準を大学病院本院群の全体から見て測るように構成される。比較対象医療機関がDPC特定病院群に属する場合、医療データ解析システム20は、DPC特定病院群の全体を母集団として取り扱い、DPC特定病院群に属する各医療機関が担う機能の水準をDPC特定病院群の全体から見て測るように構成される。
【0053】
これら、病院群が母集団である場合もまた、データ解析部212は、比較対象医療機関の特定に先駆けて、各医療機関の機能指標値を当該医療機関の相対指標値に換算し、医療データ222に付加するように構成されてもよい。
【0054】
医療機関の母集団は、2以上の比較対象医療機関であり、かつ、住所情報が評価領域に含まれる全ての比較対象医療機関のみでもよい。医療データ解析システム20は、全ての比較対象医療機関から見て、各比較対象医療機関が担う機能の水準を測るように構成されてもよい。この場合、医療データ解析システム20は、評価領域という限られた地理的範囲のなかの医療機関の全体を基準として、各医療機関が担う機能の水準を測るように構成されてもよい。
【0055】
このように、医療データ解析システム20は、共通する機能を有した医療機関の母集団、あるいは共通する地域に位置する医療機関の母集団から見て、各医療機関が担う機能の水準を測るように構成されてもよい。医療機関の母集団は、入力部23が受け付ける着目機能に基づいて、制御部21が特定するように構成されてもよい。
【0056】
制御部21は、地図レイヤL1に医療機関レイヤL2を重ねて表示部24に表示させるように構成されている。地図レイヤL1は、地域を区切る線や海岸線などを示す画像のレイヤであり、比較対象医療機関の住所情報を含む。医療機関レイヤL2は、比較対象医療機関の住所情報に当該比較対象医療機関の相対指標値を対応づけた画像のレイヤである。
【0057】
マップ作成部213は、記憶部22に記憶された地図データ221、および制御部21の特定した評価領域などを用い、地図レイヤL1を作成する。すなわち、マップ作成部213は、評価領域のなかに位置情報が含まれる様式情報、および地理情報を地図データ221から抽出し、評価領域に相当する地図レイヤL1を作成する。地図レイヤL1には、抽出された様式情報に基づく海岸線や行政区分が配置され、また抽出された地理情報に基づく地形図や輸送施設が配置される。
【0058】
図2が示すように、地図レイヤL1の一例は、表示部24に表示される解析マップにおいて、下層として表示される地図を含む。地図レイヤL1は、各比較対象医療機関の住所情報を含む。比較対象医療機関は、医療機関が担う機能の水準について比較が行われる対象である。評価領域は、入力部23が受け付けた着目対象に基づいて制御部21が特定した地域である。地図レイヤL1は、評価領域における医療機関の需要に関わる推測を画像において補助する。
【0059】
例えば、地図レイヤL1には、人口規模を推測させる「A市B町」「C市D町」などの地名が配置される。地図レイヤL1には、人口の流動する経路に制約を生む山地L11や川L12などの地形図が配置される。
【0060】
例えば、地図レイヤL1には、地域間での人口の流動を促す鉄道L13、駅L13A、道路L14などの運輸施設が配置される。また、地図レイヤL1には、地域の人口増減を安定させる学校L15などの文化施設、および公園L16などの体育施設が配置される。
【0061】
例えば、地図レイヤL1には、大きな人口の流動を定期的に生じさせるショッピングセンターL17などのアミューズメント施設、およびオフィスL18などの事務施設が配置される。また、地図レイヤL1には、医療機関に求められる機能水準の推測を補助する災害時の避難場所L19や被害予測範囲L20が配置される。
【0062】
マップ作成部213は、記憶部22に記憶された医療データ222、および制御部21の特定した評価領域などを用い、医療機関レイヤL2を作成する。医療機関レイヤL2は、表示部24に表示される解析マップにおいて上層として表示される比較対象医療機関の情報を含む。すなわち、マップ作成部213は、評価領域のなかに住所情報が含まれる医療機関である比較対象医療機関の相対指標値などを取得し、評価領域に相当する医療機関レイヤL2を作成する。
【0063】
医療機関レイヤL2には、比較対象医療機関の位置情報に当該比較対象医療機関の相対指標置が配置されるように、相対指標置が配置される。また、比較対象医療機関の位置情報に当該比較対象医療機関の相対指標置以外の情報が配置されるように、相対指標置以外の他の情報も配置される。
【0064】
図3が示すように、医療機関レイヤL2の一例は、各比較対象医療機関の住所情報に当該比較対象医療機関の医療機関アイコン31を備える。医療機関アイコン31は、現況表示32と推移指標33とを備える。
【0065】
現況表示32は、環状アイコンのなかに、比較対象医療機関の相対指標値32A,32Bを含める。相対指標値32Aは、例えばDPC対象病院の病院群と、当該病院群のなかでの機能指標値の順位とを示す。
図3では、比較対象医療機関が「DPC標準病院群(旧III群)」に属する病院であり、DPC標準病院群に属する病院のなかで機能指標値が「46位」であることを示す。相対指標値32Bは、例えばDPC対象病院の病院群のなかでの機能指標値の偏差値を示す。
図3では、DPC標準病院群に属する病院のなかで比較対象医療機関の機能指標値の偏差値が「52.8」であることを示す。
【0066】
現況表示32は、現況表示32の外側に、当該現況表示32に対応づけられる比較対象医療機関の名称を有してもよい。現況表示32は、当該現況表示32に対応づけられる比較対象医療機関が担う機能の規模を絶対値として示してもよい。
【0067】
例えば、現況表示32は、DPC対象病院の病院群ごとに異なる色相や明度を呈してもよい。これによれば、相対比較値以外の他の情報として、比較対象医療機関がどの病院群に属するかを利用者に把握させること、また複数の比較対象医療機関のなかの病院群の地理的なまとまりを利用者に推測させることが容易となる。また、現況表示32は、相対指標値の水準ごとに異なる色相や明度を呈してもよい。これによれば、比較対象医療機関が担う機能の水準がどの程度であるかを色覚によって利用者に把握させることが可能ともなる。
【0068】
環状アイコンは、DPC対象病院と、DPC対象病院以外との間で、相互に異なる形状を有してもよい。例えば、DPC対象病院の環状アイコンは、円環状を有する一方で、DPC対象病院以外の環状アイコンは、矩形環状を有してもよい(
図4の医療機関アイコン35を参照)。これによれば、相対比較値以外の他の情報として、比較対象医療機関が担う機能の規模を利用者に把握させること、また複数の比較対象医療機関のなかにおける機能の地理的な分布を利用者に推測させることが容易となる。
【0069】
環状アイコンは、医療機関群の一例である救急指定病院の区分ごとに異なる線種を付されてもよい。例えば、高度救命救急センターに該当する比較対象医療機関の環状アイコンは、
図3が示すように、太い実線の外縁で囲まれる一方で、救命救急センターに該当する比較対象医療機関の環状アイコンは、太い破線の外縁で囲まれてもよい。また、二次救急医療機関に該当する比較対象医療機関の環状アイコンは、細い破線の外縁で囲まれてもよい。これによれば、相対比較値以外の他の情報として、比較対象医療機関が担う機能の一つに救命救急が含まれることを利用者に把握させること、また救命救急の対象となり得る地理的な範囲を利用者に推測させることが容易となる。医療機関群は、固有の環状アイコンを適用される医療機関の集合であり、救急指定病院の区分の他に、医療法が定める特定機能病院や地域医療支援病院などの医療施設の6区分でもよい。また、医療機関群は、私立学校法人や医療法人などの開設者に基づいて厚生労働省が定める26分類でもよい。
【0070】
現況表示32は、比較対象医療機関の有する病床数の水準ごとに異なる大きさを有してもよい。例えば、400床以上の許可病床を有する比較対象医療機関の現況表示32は、200床以上400床未満の許可病床を有する比較対象医療機関の現況表示32よりも大きくてもよい。また、200床以上400床未満の許可病床を有する比較対象医療機関の現況表示32は、200床未満の許可病床を有する比較対象医療機関の現況表示32よりも大きくてもよい。
【0071】
推移指標33は、現況表示32の外に付されている。推移指標33は、比較対象医療機関が担う機能の水準について、その推移を示す。推移指標33は、比較対象医療機関における相対指標値の推移を示してもよい。これによれば、比較対象医療機関が担う機能の水準が向上しているか、あるいは低下しているかを利用者に把握させることが可能となる。
【0072】
推移指標33は、例えば機能指標値の順位の増減である。
図3では、推移指標33の矢印が上向きであることによって、比較対象医療機関における機能指標値の順位が上昇したことを示す。また、推移指標33の矢印内の数値が「9」であることによって、順位が「9」つ変わったことを示す。すなわち、比較対象医療機関における機能指標値の順位が9つランクアップしたことを示す。
【0073】
推移指標33は、前年度の水準が登録されていない比較対象医療機関、すなわち今年度に新たに開業した比較対象医療機関を「新」と示してもよい。これによれば、複数の比較対象医療機関のなかで新たに開業した医療機関を利用者に把握させることが可能となる。
【0074】
医療機関アイコン31は、推移指標33に代えて、あるいは推移指標33の他に、比較対象医療機関が担う機能の水準に関わる実績値や推測値を示してもよい。比較対象医療機関が担う機能の水準に関わる実績値は、当該比較対象医療機関における病床稼働率、集中治療室などの特定の病棟における病床数、介護療養病床数である。また、比較対象医療機関が担う機能に関わる実績値は、比較対象医療機関における耐震性の有無、建物の築年数である。また、比較対象医療機関が担う機能の水準に関わる推測値は、医療計画に基づき不足が推測される病床数であり、予定として公表された再配分病床数を含む。
【0075】
医療機関レイヤL2は、入力部23の受け付けた着目対象が医療機関の名称である場合、当該医療機関に対応づけられた医療機関アイコン31を中心とする所定の直径を有した通院圏域C2(
図4を参照)を円として配置してもよい。
【0076】
マップ作成部213は、地図レイヤL1に医療機関レイヤL2を重ねて、2つのレイヤL1,L2を表示部24に表示させる。地図レイヤL1に医療機関レイヤL2を重ねた解析マップは、医療データ解析システム20の解析結果である。
【0077】
地図レイヤL1に含まれる各種の地理要素や行政区分の相対位置は、実空間の相対位置と整合するように、マップ空間の座標系に基づいて定められる。医療機関レイヤL2に含まれる複数の医療機関アイコン31の相対位置は、実空間の相対位置と整合するように、マップ空間の座標系に基づいて定められる。そして、地図レイヤL1に含まれる各種の地理要素や行政区分と、医療機関レイヤL2に含まれる複数の医療機関アイコン31との相対位置もまた、実空間の相対位置と整合するように、マップ空間の座標系に基づいて定められる。
【0078】
図4が示すように、解析マップの一例は、比較対象医療機関のなかで、DPC対象病院の位置に、
図3で説明した医療機関アイコン31を配置し、DPC対象病院以外の位置に矩形の医療機関アイコン35を配置する。
【0079】
人口規模に関わる地理情報を配置した地図レイヤL1は、各地域における医療機関の需要を示す。比較対象医療機関が担う機能の水準を相対指標値として配置する医療機関レイヤL2は、各地域における医療機関の供給を示す。これら地図レイヤL1と医療機関レイヤL2とを重ねた解析マップは、評価領域における医療機関の需要および供給のバランスの推測を補助することが可能となる。結果として、評価領域内における医療機関の過不足に関わる推測の精度を高めることや、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測の精度を高めることが可能となる。
【0080】
[医療データ解析方法]
医療データ解析システム20が実行する医療データ解析方法では、まず、地図データ221を生成するためのデータ源、および医療データ222を生成するためのデータ源を、制御部21が外部サーバー10から取得する(ステップS21)。
【0081】
制御部21は、取得したデータ源を用いて地図データ221を生成する。また、制御部21は、取得したデータ源を用い、マッチング処理、あるいはマージ処理を実行して医療データ222を生成する。制御部21は、生成した地図データ221、および医療データ222を記憶部22に記憶させる。
【0082】
次に、制御部21は、入力部23の受け付けた着目対象を用いて評価領域を特定する(ステップ22)。着目対象が医療機関の名称である場合、制御部21は、当該医療機関が含まれる医療圏などの所定範囲を評価領域として特定する。また、着目対象が地域である場合、制御部21は、当該地域を評価領域として特定する。制御部21は、医療データ222を参照し、特定した評価領域に位置する医療機関を比較対象医療機関として特定する。
【0083】
次に、制御部21は、比較対象医療機関が含まれる医療機関の母集団を特定し、特定した母集団における各比較対象医療機関の相対指標値を特定する(ステップS23)。
なお、比較対象医療機関の特定に先駆けて相対指標値を換算可能である場合、例えば、医療データ222に含まれる全ての医療機関を母集団とする場合、あるいは病院群を母集団とする場合、制御部21は、各医療機関の機能指標値を母集団ごとの相対指標値に予め換算する。そして、制御部21は、比較対象医療機関の相対指標値を医療データ222から抽出する。また、入力部23が受け付けた着目機能に基づいて母集団が特定される場合、制御部21は、母集団を構成する全ての医療機関の機能指標値を医療データ222から抽出し、抽出した機能指標値を用い、比較対象医療機関の機能指標値を相対指標値に換算する。
【0084】
次に、制御部21は、特定した評価領域に基づいて地図レイヤL1を作成すると共に、特定した比較対象医療機関とその相対指標値とに基づいて医療機関レイヤL2を作成する。制御部21は、地図レイヤL1と医療機関レイヤL2とを重ねた解析マップを作成し(ステップS24)、作成した解析マップを表示部24に表示させる(ステップS25)。
【0085】
上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)比較対象医療機関が担う機能の水準が相対指標値として解析マップに表示されるため、評価領域内における医療機関の過不足に関わる推測の精度を高めることや、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測の精度を高めることが可能となる。
【0086】
(2)特に、相対指標値が病院群における偏差値として表示される場合、医療機関の母集団を構成する医療機関の数を把握させることなく、着目する医療機関が担う機能の水準を把握させることが可能ともなる。そして、着目する医療機関が担う機能の水準を、評価領域内の他の医療機関と比べることも、また評価領域内の全ての医療機関で担う機能の水準を、全ての地域の水準と比べることも可能となる。
【0087】
(3)人口規模に関わる地理情報を配置した地図レイヤL1に医療機関レイヤL2が重ねられるため、評価領域における医療機関の需要および供給のバランスの推測を補助することが可能ともなる。
【0088】
(4)特に、評価領域のなかに複数の比較対象医療機関が含まれる場合、各比較対象医療機関の周辺における人口規模と、当該比較対象医療機関が担う機能の水準とを詳細に把握することが可能ともなる。そのため、各比較対象医療機関が担う機能の水準について過不足を推測することが容易ともなる。
【0089】
(5)相対指標値が機能評価係数IIの偏差値や順位として表示される場合、上記(2)に準じた効果が得られると共に、高度・先進的な医療の提供機能、総合的な医療の提供機能などのように、偏差値に換算された機能の内容を利用者に把握させることが可能ともなる。
【0090】
(6)地図レイヤL1に避難場所L19や被害予測範囲L20が配置される場合、医療機関に求められる災害時の機能水準を利用者に推測させることが可能ともなる。結果として、評価領域内における医療機関の過不足に関わる推測の精度をさらに高めることも、着目する医療機関における拡張要否に関わる推測の精度をさらに高めることも可能となる。
【0091】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
[第1変更例]
・医療データ解析システム20は、比較対象医療機関と、当該比較対象医療機関と連携する他の比較対象医療機関との間に、連携が存在することを解析マップに表示してもよい。例えば、制御部21は、医療機関レイヤL2を作成する際に、医療データ222を参照し、比較対象医療機関と他の比較対象医療機関との間の連携の存否を各比較医療機関について確認してもよい。そして、相互に連携する比較対象医療機関が認められた場合、制御部21は、該当する比較対象医療機関の間に連携が存在することを示す連携情報L2Lを、医療機関レイヤL2に含めるように構成されてもよい。
【0092】
図6が示すように、連携情報L2Lは、例えば医療機関アイコン31,35を結ぶ直線である。
図6が示す例では、DPC対象病院と、当該DPC対象病院の周辺に位置するDPC対象病院以外の病院との間に、連携が存在することを利用者に把握させることが可能となる。
【0093】
(7)急性期病院と、回復期病院や慢性期病院との連携は、総合的な医療の提供機能の水準を高める連携ともいえる。こうした連携の存在を利用者に把握させることによって、各比較対象医療機関の相対指標値を比較対象医療機関のまとまりの指標値として推測させることが可能ともなる。すなわち、着目する比較対象医療機関が担う機能の水準としてその相対指標値から仮に過不足が推測されるとしても、当該比較対象医療機関と連携する他の比較対象医療機関が担う機能、およびその水準を把握することによって、推測された過不足を見直すことが可能ともなる。
【0094】
[第2変更例]
・医療データ解析システム20は、入力部23の受け付けた表示要求に応じて、相対指標値の換算に用いたデータ源、およびその推移を表示してもよい。また、医療データ解析システム20は、入力部23の受け付けた表示要求に応じて、医療機関が担う機能の水準に関わるデータ、およびその推移を表示してもよい。
【0095】
例えば、制御部21は、入力部23の受け付けた表示要求に応じて、医療データ222を参照し、相対指標値の換算に用いた機能指標値、およびその内訳を抽出するように構成されてもよい。そして、制御部21は、抽出した機能指標値を、数値やグラフとして医療機関レイヤL2に含め、解析マップを更新するように構成されてもよい。さらに、制御部21は、相対指標値の換算に用いた機能指標値の内訳を用い、項目別の偏差値や順位を換算して医療機関レイヤL2に含め、解析マップを更新するように構成されてもよい。
【0096】
なお、項目別の偏差値や順位などの項目別相対値もまた、全ての比較対象医療機関が含まれる医療機関の母集団のなかで、項目別の実績値から換算されるように構成される。この際、項目別相対値の換算に用いられる医療機関の母集団は、相対指標値の換算に用いられた母集団と同一である。また、項目別相対値の換算が実行される工程順もまた、相対指標値の換算が実行される工程順と同一である。
【0097】
例えば、
図7が示すように、入力部23は、医療機関アイコン31のクリックを表示要求として受け付けてもよい。この場合、医療機関アイコン31に対応づけられた医療機関の相対指標値の換算に用いたデータ源の表示要求として受け付けてもよい。
【0098】
また、制御部21は、当該医療機関の相対指標値の換算に用いたデータ源を抽出し、機能評価係数IIを構成する各係数を偏差値に換算し、各係数の偏差値をレーダーチャート36として医療機関レイヤL2に配置してもよい。
【0099】
例えば、
図8が示すように、制御部21は、医療機関が担う機能の水準に関わるデータを医療データ222から抽出し、抽出したデータをグラフ37として医療機関レイヤL2に配置してもよい。制御部21は、医療機関が担う機能の水準に関わるデータとして、病床種別の病床数、平均在院日数、トピックデータなどを表示させてもよい。この際、制御部21は、「届出病床数」、「年次推移」、「4機能と6年後」のように、医療機関が担う機能の水準に関わる推移の表示を選択可能にするウインドウ38を、医療機関レイヤL2に配置してもよい。
【0100】
なお、医療機関が担う機能の水準に関わるデータは、機能指標値における項目別の実績値でもよいし、相対指標値の換算に用いられていない実績値でもよい。
(8)項目相対値は、比較対象医療機関が担う機能を相対指標値よりもさらに細分化して得られる相対値である。そのため、比較対象医療機関が担う機能の詳細について、その過不足の推測を補助することが可能ともなる。
【0101】
[他の変更例]
・医療データ解析システム20は、地図レイヤL1に各地域の人口、あるいは、人口に応じたヒートマップを配置してもよい。これによれば、解析マップにおける人口規模の把握をさらに補助できる。
【0102】
・医療機関アイコン31は、相対指標値として、母集団における機能指標値の偏差値のみを表示してもよいし、母集団における機能指標値の順位のみを表示してもよい。
・制御部21は、医療データ222を参照し、医療機関が担う機能の検索キーとして、当該機能を担う医療機関のリストを表示させるように構成されてもよい。例えば、制御部21は、入力部23の受け付けた検索要求に基づいて、検索キーとなる医療機関の対象機能を特定する。制御部21は、医療データ222を参照し、対象機能を担う各医療機関の名称、住所情報、病院群などを当該医療機関に対応づけたリストを表示させる。これにより、医療データ解析システム20の利用者は、評価対象として、医療機関の名称や住所情報を設定することが容易ともなる。
【0103】
・医療データ解析システム20は、医療機関アイコン31に含まれる相対指標値を、入力部23が受け付ける指標選択値に基づいて変更されるように構成されてもよい。例えば、制御部21は、入力部23の受け付けた指標選択値が偏差値である場合、医療機関レイヤL2を作成する際に、医療データ222を参照し、比較対象医療機関の偏差値を抽出、あるいは換算し、医療機関アイコン31に含める相対指標値を偏差値とするように構成されてもよい。また、制御部21は、入力部23の受け付けた指標選択値が順位である場合、医療機関レイヤL2を作成する際に、医療データ222を参照し、比較対象医療機関の順位を抽出、あるいは換算し、医療機関アイコン31に含める相対指標値を順位とするように構成されてもよい。
【0104】
・制御部21は、医療機関の移転先となる住所情報を医療データ222に含めてもよい。制御部21は、比較対象医療機関に対応づけられた医療機関アイコン31,35を、当該比較対象医療機関の現在の住所情報と移転先の住所情報とに配置してもよい。この際、
図9が示すように、制御部21は、現在の住所情報から移転先の住所情報に向けて伸びる矢印39などを医療機関レイヤL2に配置し、移転先の住所情報に配置される医療機関アイコン31,35の明度を下げてもよい。
【0105】
これによれば、比較対象医療機関の移転情報が解析マップに表示されるため、比較対象医療機関における移転後の周辺環境も見据えて、当該比較対象医療機関が担う機能の水準を推測することが可能ともなる。
【0106】
・制御部21は、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患からなる5疾病、および、救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療からなる5事業に対応しているか否かのデータを医療データ222に含めてもよい。制御部21は、5疾病に対応していること、および5事業に対応していることを、医療機関アイコン31,35に付してもよい。
【符号の説明】
【0107】
L1…地図レイヤ、L2…医療機関レイヤ、L20…被害予測範囲、L2L…連携情報、10…外部サーバー、20…医療データ解析システム、21…制御部、22…記憶部、23…入力部、24…表示部、211…データ取得部、212…データ解析部、213…マップ作成部、221…地図データ、222…医療データ、31,35…医療機関アイコン、32…現況表示、32A,32B…相対指標値、33…推移指標。