(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両用通信システム、通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 4/46 20180101AFI20241203BHJP
H04W 4/08 20090101ALI20241203BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20241203BHJP
【FI】
H04W4/46
H04W4/08
H04W84/18
(21)【出願番号】P 2021012875
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】熱田 隆
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-086940(JP,A)
【文献】特開2002-198886(JP,A)
【文献】特開2009-267963(JP,A)
【文献】特開2012-089088(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147953(WO,A1)
【文献】古山 卓宏 他,車車間・路車間共用通信システムにおけるPrioritized CSMAプロトコルの通信特性評価,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.111, No.219, ITS2011-15,日本,2011年09月21日,pp. 31-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車車間通信を実行可能に構成された複数の車両(M)のそれぞれが、路側機(3)から配信される配信データを受信するための車両用通信システムであって、
前記路側機又は無線基地局を介して車両と通信可能に構成された中央制御装置(4、5)を備え、
前記中央制御装置は、
複数の前記車両のそれぞれにおいて作成される制御計画を、複数の前記車両のそれぞれ
から前記路側機又は前記無線基地局を介して取得する個別情報取得部(J1)と、
複数の前記車両のそれぞれの前記制御計画に基づいて複数の前記車両のグループである車群を編成する車群編成部(J6)と、
前記車群を構成する前記車両の前記制御計画に基づいて、前記路側機の通信エリアにおける前記車群の移動速度を取得する車群速度取得部(J63)と、
前記車両ごとの前記制御計画に基づき、前記車群を構成する複数の前記車両のうち、前記路側機とデータ通信を実施する前記車両である接続車両を時間帯ごとに設定する接続車両設定部(J62)と、
前記車群編成部が設定した前記車群を構成する前記車両の組み合わせを示す車群設定データを、当該車群に関連する少なくとも1つの前記車両に配信する通知処理部(J8)と、
前記配信データのサイズを取得するデータサイズ取得部(J41)と、を備え、
前記接続車両は、前記路側機から前記配信データの一部又は全部を受信した場合には、当該受信データを車車間通信により、前記車群を構成する前記接続車両以外の前記車両である一般車両と共有するように構成されており、
前記車群編成部は、前記配信データのサイズと、前記車群の移動速度とに基づいて、前記車群の長さを調整する車両用通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用通信システムであって、
前記車群編成部は、
前記車群の長さと前記車群の移動速度とに基づいて、当該車群が前記路側機と無線通信で送受信可能なトラフィック量である車群通信容量を算出し、
前記車群通信容量が前記配信データのサイズよりも小さい場合には、前記車群の長さを増大させる車両用通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用通信システムであって、
前記車群編成部は、前記車群通信容量が前記配信データのサイズよりも小さいことに基づいて、前記車群の外側において前記車群の前方又は後方に存在する車両を前記車群に所属させることで、前記車群の長さを増大させる車両用通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用通信システムであって、
前記車群編成部は、前記車群の前後に前記車両が存在しない場合には、前記車群の末尾に位置する前記車両を所定量減速させることで、前記車群の長さを増大させる車両用通信システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の車両用通信システムであって、
前記車群編成部が前記車群の長さを調整しても前記車群通信容量が前記配信データのサイズ以上とならないことを条件として、前記配信データを間引く処理を実施するデータサイズ調整部(J42)を備える車両用通信システム。
【請求項6】
請求項2から4の何れか1項に記載の車両用通信システムであって、
前記車群通信容量が前記配信データのサイズよりも小さいことに基づいて、前記通信エリアにおける前記車群の移動速度が所定量低減するように各前記車両の前記制御計画を修正する計画修正部(J61)を備える車両用通信システム。
【請求項7】
請求項1から
6の何れか1項に記載の車両用通信システムであって、
前記個別情報取得部は、複数の前記車両のそれぞれにおける他車両との通信状況を示す情報を取得し、
前記他車両との通信状況を示す情報は、前記他車両からの信号の受信信号強度及び前記他車両からの信号の雑音に対する強度の比率である信号対雑音比の少なくとも何れか一方を含み、
前記車群編成部は、前記受信信号強度が所定の閾値以上である車両同士、又は、前記信号対雑音比が所定の閾値以上である車両同士を同一の車群に所属させる車両用通信システム。
【請求項8】
請求項
7に記載の車両用通信システムであって、
前記中央制御装置は、前記路側機と相互通信可能に構成され
ており、
前記中央制御装置は、前記車群毎の前記車群設定データを前記路側機にも送信し、
前記路側機は、前記中央制御装置から通知された前記車群設定データに基づいて、前記接続車両との通信を実施するように構成されている車両用通信システム。
【請求項9】
請求項
8に記載の車両用通信システムであって、
前記車群編成部は、前記車両ごとの前記他車両との通信状況に基づいて、前記車群内における前記一般車両から前記接続車両までの通信経路である共有経路を作成し、
前記通知処理部は、前記車群設定データとして前記共有経路についての情報を含むデータセットを前記車両に送信するように構成されている車両用通信システム。
【請求項10】
車車間通信を実行可能に構成された複数の車両(M)のそれぞれが、路側機(3)から配信される所定の配信データを受信するための通信制御方法であって、
前記路側機又は無線基地局を介して複数の前記車両と通信可能に構成された中央制御装置(4、5)が、複数の前記車両のそれぞれにおいて作成される制御計画を、複数の前記車両のそれぞれ
から前記路側機又は前記無線基地局を介して取得すること(S102a)と、
前記中央制御装置が、複数の前記車両のそれぞれの前記制御計画に基づいて複数の前記車両のグループである車群を編成すること(S106)と、
前記中央制御装置が、前記車群を構成する前記車両の前記制御計画に基づいて、前記路側機の通信エリアにおける前記車群の移動速度を取得すること(S404)と、
前記中央制御装置が、前記車両ごとの前記制御計画に基づき、前記車群を構成する複数の前記車両のうち、前記路側機とデータ通信を実施する前記車両である接続車両を時間帯ごとに設定すること(S109)と、
前記中央制御装置が、前記車群を構成する前記車両の組み合わせを示す車群設定データを、当該車群に関連する少なくとも1つの前記車両に配信すること(S106b)と、
前記中央制御装置が、前記配信データのサイズを取得すること(S401)と
、
前記接続車両が、前記路側機から前記配信データの一部又は全部を受信した場合には、当該受信データを車車間通信により、前記車群を構成する前記接続車両以外の前記車両である一般車両と共有すること(S111)と、
前記中央制御装置が、前記配信データのサイズと、前記車群の移動速度とに基づいて、前記車群の長さを調整すること(S408)と、を含む通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部装置から受信したデータを車車間通信で共有する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通情報の生成及び更新に係る技術として、センタが、複数の車両のそれぞれからアップロードされるプローブ情報に基づいて、複数の車両をグループ化した車群、及び、その代表車両を設定する構成が開示されている。特許文献1でのプローブ情報とは、車両位置、走行速度、燃費、及びワイパーの動作状態を指す。特許文献1に開示の構成では、代表車両からのプローブ情報を、当該車群全体のプローブ情報とみなすことで、通信量の低減を図っている。
【0003】
また、特許文献2には、車両がセンタから所定のコンテンツデータを取得する際の通信量を低減するための構成として、車車間通信を利用する技術が開示されている。すなわち、センタは、コンテンツデータを複数の部分データに分割して配信するとともに、各車両は未取得の部分データを車車間通信で他車両から取得することで補間及び統合する。なお、特許文献2に開示の構成では、車群の概念はなく、未取得のデータを持っている車両と車者間通信できるか否かは偶発性によるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-89088号公報
【文献】特開2010-220050号公報
【文献】特許2019-41179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動運転の実用化やより安全な交通社会の実現のためには、センタからダイナミックマップを、路側機や4G等の広域無線基地局を介して、各車両に無線配信することが好ましい。ここでのダイナミックマップとは、例えば道路の死角に存在する移動体の情報や信号機の点灯状態など、動的な地図要素についてのデータを指す。
【0006】
しかしながら、広域無線基地局から各車両に向けてデータ配信する構成では無線リソースの逼迫が懸念される。また、路側機から各車両に向けて個別にデータ配信する構成では、路側機と個々の車両の接続時間が短いため、路側機から車両へ送信できるデータ量が制限されうる。路側機の通信範囲は、数百m以内など、有限であるためである。また、車両の走行速度が大きいほど、路側機の通信範囲内に車両が滞在する時間が短くなる。故に、データ送信に必要な時間に対して通信可能時間が不足しうる。
【0007】
そのような事情に着眼し、本開示の開発者らは、車両の位置情報等に基づいて車群を形成し、車群を構成する各車両が分担して路側機からダイナミックマップを受信し、車群内で共有及び補間し合う技術を検討した。当該構成によれば、車群単位でデータ通信が行われるため、路側機との通信時間が不足する恐れや、無線リソースが逼迫する恐れを低減する効果が期待できる。
【0008】
一方、開発者らはさらに検討を進めたところ、ダイナミックマップのデータサイズによっては、車群を構成する各車両が分担して受信する構成でも、通信時間が不足するケースが生じうる事がわかった。
【0009】
本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、路側機からのデータを車両が受信できない恐れを低減可能な車両用通信システム、通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための車両用通信システムは、車車間通信を実行可能に構成された複数の車両(M)のそれぞれが、路側機(3)から配信される配信データを受信するための車両用通信システムであって、路側機又は無線基地局を介して車両と通信可能に構成された中央制御装置(4、5)を備え、中央制御装置は、複数の車両のそれぞれにおいて作成される制御計画を、複数の車両のそれぞれから路側機又は無線基地局を介して取得する個別情報取得部(J1)と、複数の車両のそれぞれの制御計画に基づいて複数の車両のグループである車群を編成する車群編成部(J6)と、車群を構成する車両の制御計画に基づいて、路側機の通信エリアにおける車群の移動速度を取得する車群速度取得部(J63)と、車両ごとの制御計画に基づき、車群を構成する複数の車両のうち、路側機とデータ通信を実施する車両である接続車両を時間帯ごとに設定する接続車両設定部(J62)と、車群編成部が設定した車群を構成する車両の組み合わせを示す車群設定データを、当該車群に関連する少なくとも1つの車両に配信する通知処理部(J8)と、配信データのサイズを取得するデータサイズ取得部(J41)と、を備え、接続車両は、路側機から配信データの一部又は全部を受信した場合には、当該受信データを車車間通信により、車群を構成する接続車両以外の車両である一般車両と共有するように構成されており、車群編成部は、配信データのサイズと、車群の移動速度とに基づいて、車群の長さを調整する。
【0011】
上記構成によれば、配信データのサイズと車群の移動速度に応じて車群の長さを調整する。そのため、車群単位で路側機とデータ通信を行う構成において、データの配信に係る時間に対して車群と路側機との通信時間が不足する恐れを低減できる。ひいては路側機からのデータを車両が受信できない恐れを低減可能となる。
【0012】
上記目的を達成するための通信制御方法は、車車間通信を実行可能に構成された複数の車両(M)のそれぞれが、路側機(3)から配信される所定の配信データを受信するための通信制御方法であって、路側機又は無線基地局を介して複数の車両と通信可能に構成された中央制御装置(4、5)が、複数の車両のそれぞれにおいて作成される制御計画を、複数の車両のそれぞれから路側機又は無線基地局を介して取得すること(S102a)と、中央制御装置が、複数の車両のそれぞれの制御計画に基づいて複数の車両のグループである車群を編成すること(S106)と、中央制御装置が、車群を構成する車両の制御計画に基づいて、路側機の通信エリアにおける車群の移動速度を取得すること(S404)と、中央制御装置が、車両ごとの制御計画に基づき、車群を構成する複数の車両のうち、路側機とデータ通信を実施する車両である接続車両を時間帯ごとに設定すること(S109)と、中央制御装置が、車群を構成する車両の組み合わせを示す車群設定データを、当該車群に関連する少なくとも1つの車両に配信すること(S106b)と、中央制御装置が、配信データのサイズを取得すること(S401)と、接続車両が、路側機から配信データの一部又は全部を受信した場合には、当該受信データを車車間通信により、車群を構成する接続車両以外の車両である一般車両と共有すること(S111)と、中央制御装置が、配信データのサイズと、車群の移動速度とに基づいて、車群の長さを調整すること(S408)と、を含む。
【0013】
上記の通信制御方法は、上述した車両用通信システムに対応する方法であって、上述した車両用通信システムと同様の作用により、同様の効果を奏する。
【0014】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】車両用通信システムSysの全体構成を示す図である。
【
図2】路側機3、ネットワーク装置4、及びサーバ5の関係を概念的に示す図である。
【
図4】車載器1の機能を説明するためのブロック図である。
【
図5】無線基地局2の構成及び機能を説明するためのブロック図である。
【
図6】路側機3の構成及び機能を説明するためのブロック図である。
【
図7】配信用データのセグメント化について説明するための概念図である。
【
図8】ネットワーク装置4の構成及び機能を説明するためのブロック図である。
【
図9】車群の設定方法について説明するための図である。
【
図10】本開示の車群の設定方法による効果を説明するための図である。
【
図11】計画修正部J61の作動を説明するための図である。
【
図12】サーバ5の構成及び機能を説明するためのブロック図である。
【
図13】車群の編成に係る各装置の作動を説明するためのシーケンス図である。
【
図15】静的地図データの配信に係る各装置の作動を説明するためのシーケンス図である。
【
図16】動的地図データの配信に係る各装置の作動を説明するためのシーケンス図である。
【
図18】
図17に示す車群を構成する各車両と路側機3との通信品質の推移を示す図である。
【
図19】車両A~Cが接続車両である場合に対応する共有経路の一例を示す図である。
【
図20】リソース割当関連処理に対応するフローチャートである。
【
図21】車群長調整処理に対応するフローチャートである。
【
図22】車群長調整処理の作動を説明するための概念図である。
【
図23】各タイムスロットにおける接続車両の組み合わせ例を示す図である。
【
図24】各車両への無線リソースの割当態様の一例を示す図である。
【
図25】路側機3と車群とのデータ通信の詳細な手順を示すシーケンス図である。
【
図26】接続車両の設定方法の一例を示す図である。
【
図27】接続車両の設定方法の一例を示す図である。
【
図29】右左折予定の車両の取り扱いについて説明するための図である。
【
図30】路側機3が複数の車群と並列的に狭域通信するシーンを示す図である。
【
図31】路側機3が複数の車群と並列的に狭域通信する場合の無線リソースの割当態様の一例を示す図である。
【
図32】車両側トラフィック量を考慮した通信スケジュールの設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本開示に係る車両用通信システムSysの概略的な構成の一例を示す図である。なお、各図における「NW」との記載はネットワークの略である。
【0017】
<全体構成>
図1に示すように車両用通信システムSysは、車載器1、無線基地局2、路側機3、ネットワーク装置4、及びサーバ5を含みうる。ネットワーク装置4は、広域的な通信網であるコアネットワークCNを構成する設備である。
【0018】
図1では、車載器1を備える車両である搭載車両Mを2台しか図示していないが、システム全体としては、実際には3台以上存在し得る。以降では或る車載器1にとって、当該車載器1が搭載されている車両を自車両とも記載するとともに、自車両以外の車両を他車両とも記載する。搭載車両Mは、道路上を走行する車両である。搭載車両Mは、四輪自動車のほか、二輪自動車、三輪自動車等であってもよい。二輪自動車には原動機付き自転車も含まれる。本実施形態では一例として自車両としての搭載車両Mは、四輪自動車とする。以降における車両との記載は、遮蔽車両NMを除き、基本的には搭載車両Mを指すものとする。
【0019】
無線基地局2や路側機3、ネットワーク装置4もまた、それぞれ複数存在しうる。例えば
図2に示すようにサーバ5には複数のネットワーク装置4が接続しているとともに、複数のネットワーク装置4のそれぞれにも複数の路側機3が接続されている。各車両及び各車載器1にとって、無線基地局2や路側機3、ネットワーク装置4、サーバ5が外部装置に相当する。
【0020】
車載器1は、他車両や路側機3、無線基地局2と無線通信を実施する機能を備えた自動運転装置である。車載器1は、無線基地局2とLTE(Long Term Evolution)などの規格に準拠した無線通信を実施可能に構成されている。車載器1は、無線基地局2及びコアネットワークCNにとってのユーザ装置(UE:User Equipment)に相当する。また、車載器1は、路側機3や他車両とも直接的に無線通信可能に構成されている。つまり、各搭載車両は、車載器1を介して互いに直接的に無線通信(いわゆる車車間通信)を実施可能に構成されている。車載器1は、路車間通信あるいは車車間通信で取得したデータを元に自車両を自律的に走行させるための制御計画を作成する。
【0021】
無線基地局2は、例えばLTE(Long Term Evolution)、4G、又は3Gの規格に準拠した移動体通信システムを提供する無線設備である。ここでは一例として無線基地局2と車載器1は、広域通信として、4G、LTEに準拠した無線通信を実施可能に構成されている。無線基地局2は、eNB(evolved NodeB)とも称される。
【0022】
ここでの広域通信とは、通信可能な距離が500m又は1km以上となりうる方式での無線通信を指す。実施形態で説明を省略している部分は、LTEや4Gの規格で定められている方法で行われるものとする。なお、無線基地局2は、3G規格に準拠した無線通信を提供するものであってもよい。また、無線基地局2は、通信範囲を相対的に広域に形成できる場合には5Gに準拠した無線通信を実施する設備(いわゆるgNB:next generation NodeB)であってもよい。以降ではLTE、3G、4G、5GなどをまとめてLTE等とも記載する。無線基地局2は、LTE等に準拠した無線信号を車載器1と送受信する。以下の実施形態は、3GPP(Third Generation Partnership Project)が規定する、3Gや4G、5Gなどの通信アーキテクチャに準拠するように適宜変更して実施可能である。
【0023】
無線基地局2は、所定のセル毎に配置されている。セルは、1つの無線基地局2がカバーする通信可能な範囲を指す。なお、無線基地局2そのものがセルと呼ばれる場合もある。サイズ別のセルの種別としては、例えばマクロセルや、マイクロセル、ナノセル、ピコセルなどがある。マクロセルは、セル半径が例えば500m~数kmほどのセルである。マクロセルとしてはセル半径が10kmを超えるものもある。マイクロセルは、セル半径が数100mほどのセルである。ナノセルやピコセルは、セル半径が数10m~100m程度のセルである。ナノセルなどはスモールセルとも称される。なお、サイズに応じたセルの呼称には明確な定義はなく、上記の各種セルの半径は一例に過ぎない。また、実体的なセルの大きさや形状は建築物などの電波環境によって異なりうる。
【0024】
ここでは一例として無線基地局2は、マクロセルとして構成されている。
図1中の一点鎖線は、マクロセルとしての無線基地局2の通信範囲を示している。無線基地局2は、IP(Internet Protocol)ネットワーク等のアクセス回線を介してコアネットワークCNと接続されている。無線基地局2は、車載器1とコアネットワークCNとの間でトラフィックを中継する。また、無線基地局2は、路側機3とも有線又は無線にて相互通信可能に接続されている。
【0025】
路側機3は、道路沿いに配置されている無線通信装置である。路側機3はRSU(Road Side Unit)とも称される。路側機3は、無線基地局2よりも相対的に狭域な通信範囲を形成するように設定されている。路側機3は、半径が50m~300m程度の通信エリアを形成する設備である。例えは路側機3の通信可能距離は250m程度に設定されている。
図1中の二点鎖線は路側機3の通信エリアを概念的に示している。便宜上、路側機3との通信のことを狭域通信とも称する。各車両は、路側機3の通信エリア内に車両が存在する場合に、路側機3との狭域通信を実施可能となる。
【0026】
路側機3が行う狭域通信の規格としては、IEEE1509にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)規格や、DSRC(Dedicated Short Range Communications)規格など、任意のものを採用可能である。狭域通信の方式は、Wi-Fi(登録商標)であってもよい。つまり、路側機3は、Wi-Fiのアクセスポイント/ルーターであってもよい。その他、路側機3は、5G規格に準拠した通信を実施するものであっても良い。例えば路側機3はgNBであってもよい。なお、路側機3をgNBとするシステム構成は、1つの局面においてネットワーク全体として、4G/LTEのコアネットワークCNと5Gの基地局を組み合わせた、ノンスタンドアローン型のシステム構成とみなすことができる。
【0027】
コアネットワークCNは、いわゆるEPC(Evolved Packet Core)である。コアネットワークCNでは、ユーザの認証、契約分析、データパケットの転送経路の設定、QoS(Quality of Service)の制御などの機能を提供する。コアネットワークCNは、例えばIPネットワークや携帯電話網等の、通信事業者によって提供される公衆通信ネットワークを含みうる。
【0028】
コアネットワークCNは、例えば、MMEや、S-GW、P-GW、PCRFなどを含む。MMEは、Mobility Management Entityの略であって、セル内のUEの管理や、無線基地局2の制御を担当する。S-GWはServing Gatewayの略であって、UEからのデータのゲートウェイに相当する構成である。P-GWは、Packet Data Network Gatewayの略であって、インターネットなどのPDN(Packet Data Network)に接続するためのゲートウェイに相当する。P-GWは、IPアドレスの割当などや、S-GWへのパケット転送を実施する。PCRFは、Policy and Charging Rules Functionの略であって、ユーザデータの転送のQoS及び課金のための制御を行う論理ノードである。QoSを構成する要素としては、データ転送の優先順位や、帯域保証の有無、必要な帯域、許容可能な遅延時間などが挙げられる。PCRFは、ネットワークポリシーや課金のルールをもつデータベースを含む。コアネットワークCNは、HLR(Home Location Register)/HSS(Home Subscriber Server)などを含んでいてもよい。コアネットワークCNを構成する装置の名称や組み合わせなどは、例えば3Gや5Gなど、車両用通信システムSysが採用する通信規格に対応するように適宜変更可能である。例えばEPCは、5GC(5th Generation Core network)に置き換えて実施できる。また、コアネットワークCNにおける機能配置は適宜変更可能である。例えばPCRFが提供する機能は別の装置が備えていても良い。
【0029】
ネットワーク装置4は、例えばMMEやS-GWなど、コアネットワークCNを構成する設備のうち、後述するV2Xエッジアプリケーションを実行する装置を指す。ネットワーク装置4は、例えば所定の管理エリアごとに配置されている。管理エリアは、地図の区画単位であるマップタイルに対応していてもよいし、都道府県といった行政区画単位であってもよいし、他の区画単位であってもよい。例えばネットワーク装置4は、コアネットワークCNを構成する拠点ノードごとに配置されうる。拠点ノードは、例えば広域通信網のデータセンタである。ネットワーク装置4は、1つの側面において路側機3で取得した情報を集約してサーバ5に送信する役割を担う。つまり、ネットワーク装置4は自身の管理下にある路側機3からの報告をまとめてサーバ5に報告する。管理エリアはネットワーク装置4が情報を収集可能なエリアに相当する。ネットワーク装置4の詳細については別途後述する。
【0030】
サーバ5は、ネットワーク装置4や車両とデータ通信を実行することで、車両向けのデータを生成する設備である。例えばサーバ5はネットワーク装置4と協働して、詳細な道路構造を高精度に示す静的地図データを各車両に配信するための処理を実行する。静的地図データは高精度地図データと呼ぶこともできる。また、静的地図データでは道路データと呼ぶこともできる。なお、以降では道路構造のように、例えば、数分から数時間程度では位置や存続状態が変化しない地図要素のことを静的な地図要素とも称する。これに対し、数分~数時間の時間変化に伴って位置や存続状態が変化する地図要素のことを、動的な地図要素と称する。動的な地図要素には、例えば、渋滞区間や、工事区間、故障車、落下物、事故地点、車線規制区間、交通量、天候、路面状態などが含まれる。また、複数の車両の走行軌跡を統合してなる、車線毎の平均軌跡なども動的な地図要素として採用することができる。なお、車線毎の平均軌跡は、自動運転時における目標軌道の設定などに使用されうる。
【0031】
サーバ5において静的地図データは、例えば複数のマップタイルに区分されて管理される。ここでの管理とは、保存だけでなくデータの更新や、車載器1や路側機3、ネットワーク装置4への配信などを含む。各マップタイルは現実世界においてそれぞれ異なる領域の地図データに相当する。換言すれば、マップタイルとは、地図を一定の規則に従って分割してなる複数の小領域を指す。マップタイルはメッシュと言い換えることができる。マップタイルの範囲は、データサイズで定義されても良い。例えば、各マップタイルは、データ量が所定値未満となるように設定されている。そのような態様によれば、1回の配信におけるデータサイズを一定値以下とすることができる。
【0032】
なお、サーバ5は別途後述するように車両からアップロードされてくるプローブデータに基づいて、静的地図データを更新するように構成されていても良い。ここでのプローブデータは、車両には例えば周辺監視センサ7が特定した地物の観測位置を示すデータセットである。プローブデータは、例えば、送信元情報や、走行軌道情報、走路情報、および地物情報を含んでもよい。走行軌道情報は、車両が走行した軌道を示す情報である。地物情報は、ランドマーク等の地物の観測座標を示す。ランドマークとは、たとえば標識や商業看板、一時停止線などの路面標示、ポール、電柱などである。また、プローブデータには、車速や、舵角、ヨーレート、ウインカー作動情報、ワイパー作動情報などといった、車両挙動情報が含まれていてもよい。
【0033】
また、サーバ5は後述するネットワーク装置4と協働して、車両の制御の参考となる動的、準動的、及び準静的な交通情報を示す動的地図データを生成及び配信する。動的地図データとは、例えば、道路の管理単位であるリンクごとの平均車速や、交通量などを含む。リンクは、道路セグメントと呼ぶこともできる。動的地図データは、一般道路における交差点や、高速道路における分岐/合流地点付近に存在する他の移動体ごとの現在位置や移動速度、進行方向などを示すデータとすることもできる。また、動的地図データは、車両の前方に存在する信号機の位置とその点灯状態を示す情報や、交差点内における進行方向に応じた走行軌道を示す情報であっても良い。点灯状態を示す情報は、現在の点灯状態と、その残り時間、次の点灯状態などを示す。
【0034】
その他、動的地図データは、例えば通行規制がなされている区間や、渋滞の末尾位置、路上落下物の位置などといった、路上障害物の位置や種別を示す準動的な地図要素についての情報であってもよい。また、動的地図データは、局所的な気象情報などを含んでも良い。以上で述べたように、動的地図データは、相対的にリアルタイムな(つまり動的な)交通状況を示すデータと解する事ができる。交通状況を示すデータは交通情報に相当する。
【0035】
サーバ5は、或るネットワーク装置4から取得した或るエリアについての交通状況等のデータを、隣接するエリアに対応するネットワーク装置4に転送する役割も担う。ネットワーク装置4とサーバ5との役割分担について付言すれば、ネットワーク装置4は相対的に狭域の動的/静的地図を管理する一方、サーバ5はより広域の動的/静的地図を管理する。サーバ5に集約された広域の交通情報は、それぞれ管轄が異なる各ネットワーク装置4に展開される。例えばサーバ5は、或るネットワーク装置4が管理するエリアに隣接するエリアから入ってくる車両とその予定時間などの情報を、各ネットワーク装置4に提供する。そのような隣接エリアの情報は、ネットワーク装置4が車群を事前に編成するなどの処理に使用されうる。
【0036】
<車載器1の構成について>
車載器1は、無線基地局2又は路側機3を介して、ネットワーク装置4やサーバ5から受信したデータをもとに、車両を自律的に走行するための制御計画を作成する装置である。すなわち、車載器1は自動運転機能を提供する、いわゆる自動運転装置に相当する。車載器1は1つの側面において、コアネットワークCNにとってのUEに相当する。車載器1が車両用通信装置に相当する。なお、車載器1は以下で例示する全ての機能を備えていなくとも良い。また、制御計画を作成する機能など、自動運転に係る機能は、別の装置が備えていても良い。
【0037】
車載器1は、
図3に示すように、車両内に構築された通信ネットワークである車両内ネットワークIvNを介して車両状態センサ6、周辺監視センサ7、ロケータ8、及び車両制御ECU9と接続されて使用される。部材名称中のECUはElectronic Control Unitの略であって、電子制御装置を指す。車載器1もECUの一種と解することができる。ここでは車載器1及び車載器1に接続するデバイスを含む構成のことを車載システムIvSとも記載する。
【0038】
車両状態センサ6は、自車両の走行制御に関わる状態量を検出するセンサである。車両状態センサ6には、シフトセンサや、車速センサ、操舵角センサ、加速度センサなどが含まれる。なお、車両状態センサ6として車載器1が接続するべきセンサの種類は適宜設計されればよく、上述した全てのセンサを備えている必要はない。
【0039】
周辺監視センサ7は、自車の周辺の環境状態を検出するセンサである。周辺監視センサ7は、例えば、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等のセンサである。一例として車載システムIvSは、周辺監視センサ7として、車両前方を撮像するようにフロントガラスの上端部やルーフの前端部に配置されている前方カメラを備える。前方カメラは、例えばディープラーニングを適用したCNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)技術などを用いて物体の識別を行う機能を有する。周辺監視センサ7は、歩行者、他車等の移動物体、及び路上の落下物等の静止物体といった自車周辺の物体を検出する。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示を検出する。周辺監視センサ7の検出結果は車載器1に逐次入力される。
【0040】
ロケータ8は、当該ロケータ8が用いられている車両(つまり自車両)の位置を逐次算出(換言すれば特定)する装置である。例えばロケータ8は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位衛星が送信する測位信号を受信するGNSS受信機を備え、GNSS受信機が受信した測位信号を用いて位置を算出する。なお、ロケータ8は、GNSS受信機の測位結果と、ジャイロセンサや車速センサなどの計測結果との組み合わせにより位置を決定するものであってもよい。さらに、ロケータ8は、決定した位置の軌跡を地図データが示す道路形状に重ね合わせる、いわゆるマップマッチング処理を実施することで位置の補正を行ってもよい。ロケータ8が逐次特定する現在位置を示す位置情報は、車載器1に提供される。
【0041】
車両制御ECU9は、車載器1から入力される指示信号又は運転席の乗員の操作に基づき、自車の加減速制御及び/又は操舵制御を行う電子制御装置である。車両制御ECU9としては、操舵ECU、パワーユニット制御ECU、及びブレーキECU等がある。操舵ECUは、操舵制御を行う。パワーユニット制御ECUは、加減速制御を行う。ブレーキECUは減速制御を行う。車両制御ECU9は、自車に搭載されたアクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、舵角センサ、車速センサ等の各センサから出力される検出信号を取得する。車両制御ECU9は、ドライバの運転操作に基づく操作指令又は車載器1の制御指令に基づき、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。
【0042】
なお、上述した種々のデバイスの一部又は全部は、車両内ネットワークIvNを介することなく車載器1と直接的に接続されていてもよい。また、車載器1と接続するデバイスは、以上で例示したものに限定されない。車載器1には多様なECUが接続されうる。車載システムIvSの構成は、適宜変更可能である。例えばロケータ8の機能は車載器1が備えていても良いし、周辺監視センサ7としての前方カメラが備えていても良い。
【0043】
車載器1は、制御部11、車両内通信部12、広域通信部13、及び狭域通信部14を備える。制御部11は、コンピュータを主体として構成されている。制御部11は、プロセッサ111、RAM112、及びストレージ113を備える。プロセッサ111は、RAM112と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ111は、CPU等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。プロセッサ111は、RAM112へのアクセスにより、種々の処理を実行する。ストレージ113は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ113には、プロセッサ111によって実行されるプログラムとして、車両用通信制御プログラムが格納されている。プロセッサ111が上記プログラムを実行することは、車両用通信制御プログラムに対応する方法である車両用通信制御方法を実行することに相当する。
【0044】
車両内通信部12は、車両内ネットワークIvNを介して他のデバイスと通信するための回路モジュールである。車両内通信部12は、アナログ回路素子やIC、車両内ネットワークIvNの通信規格に準拠したPHYチップなどを用いて実現されている。車両内通信部12には、例えば車速センサが検出した車速データなど、多様なデータが入力される。
【0045】
なお、車両内通信部12は、車両制御ECU9などの他の車載デバイスから入力された外部送信用のデータを無線基地局2又は路側機3に無線送信するまで一時的に保持する記憶領域であるバッファを含む。外部送信用のデータとは、例えばネットワーク装置4やサーバ5、他車両を宛先とするデータである。バッファは、RAM等の書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されればよい。車両内通信部12は、バッファに滞留しているデータの量やそれらのデータのヘッダに格納された情報を監視する機能も備える。バッファに入っているデータは、順次、データの入力元に応じた通信経路で宛先となるサーバ5に向けて送信される。ここでの通信経路の構成要素としては、周波数や、変調方式などを含みうる。
【0046】
広域通信部13は、無線基地局2に無線接続し、車載器1がコアネットワークCNを介して、他の通信装置である外部装置と通信するための通信モジュールである。広域通信部13は、より細かい要素として、広域通信用アンテナ及び広域通信用送受信部を備える。
【0047】
広域通信用アンテナは、無線基地局2との無線通信に用いられる所定の周波数帯の電波を送受信するためのアンテナである。広域通信用送受信部は、広域通信用アンテナで受信した信号を復調して制御部11に提供するとともに、制御部11から入力されたデータを変調して広域通信用アンテナに出力し、無線送信する。これら広域通信用アンテナ及び広域通信用送受信部の協働により、広域通信部13は、受信したデータを通信制御部F1に出力するとともに、通信制御部F1から入力されたデータを変調して外部装置に送信する通信モジュールとして機能する。
【0048】
狭域通信部14は、所定の周波数帯の電波を用いて他の車載器1や路側機3と直接的な無線通信(つまり狭域通信)を実施するための通信モジュールである。換言すれば狭域通信部14は、車車間通信及び路車間通信を実現する通信モジュールである。この狭域通信部14は、より細かい要素として、狭域通信用アンテナ及び狭域通信用送受信部を備える。狭域通信用アンテナは、狭域通信に用いられる周波数帯の電波を送受信するためのアンテナである。狭域通信用送受信部は、通信制御部F1から入力されたデータを変調して狭域通信用アンテナに出力し、無線送信する。また、狭域通信用送受信部は、狭域通信用アンテナで受信した信号を復調して通信制御部F1に提供する。
【0049】
狭域通信部14は、狭域通信用アンテナで受信した信号の信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を検出する受信強度検出部141を備える。RSSIが受信信号強度に相当する。受信強度検出部141が検出したRSSIは、受信データと対応付けられて通信制御部F1に出力される。なお、狭域通信部14は、受信信号の信号対雑音比や、符号誤り率(BER:Bit Error Rate)、パケットロス率などを算出し、受信データと対応付けて通信制御部F1に提供するように構成されていても良い。信号雑音比は、信号と雑音の比あるいは差分を示すパラメータである信号対雑音比はSNR(Signal-to-Noise Ratio)、SN比、S/Nなどとも表現されうる。信号対雑音比は数値が大きいほど品質がよい事を示す。パケットロス率は、一定時間当りのデータの受信失敗率に相当する。狭域通信部14は、それらの品質指標の一部又は全部算出するように構成されていても良い。また、上述した種々の品質指標を算出する機能は制御部11が備えていても良い。
【0050】
なお、本実施形態では一例として、路車間通信と車車間通信は同じ通信方式で実施されるものとするが、これに限らない。路車間通信と車車間通信は異なる通信方式で実施されてもよい。それに伴い、車車間通信用の通信モジュールとは別に路車間通信用の通信モジュールが設けられていても良い。例えば車車間通信はWAVE規格に沿って実施される一方、路車間通信は5Gで実施されても良い。
【0051】
<車載器1の機能について>
ここでは車載器1の機能及び作動について説明する。車載器1は、プロセッサ111が車両用通信制御プログラムを実行することによって発現される機能部として、
図4に示す種々の機能部を備える。すなわち、車載器1は、通信制御部F1、車両情報取得部F2、走行環境取得部F3、制御計画部F4、通信状況取得部F5、報告処理部F6、車群情報取得部F7、データ取得部F8、及び制御実行部F9を備える。なお、車載器1が備える機能の一部は、他のECUが備えていても良い。
【0052】
通信制御部F1は、広域通信部13や狭域通信部14の作動を制御する構成である。通信制御部F1は、例えば無線基地局2から送信される参照信号の受信強度等に基づいて、在圏セルの選択等の移動管理を実施する。また、通信制御部F1は路側機3から発せられる所定の制御信号を受信することで、路側機3の存在を検知するとともに路側機3との通信接続を行う。路側機3の検知に使用される信号は、所定の制御チャネルを用いて送信されるビーコンやアドバタイズ信号などを採用することができる。
【0053】
通信制御部F1は、後述する報告処理部F6等などの要求に基づき、他車両等に送信するためのデータを生成し、広域通信部13又は狭域通信部14から送信させる。また、広域通信部13又は狭域通信部14が受信したデータに対し、順序制御等の処理を実行して元のデータを復元し、データ取得部F8等に提供する。
【0054】
また、通信制御部F1は、狭域通信部14から所定のアドバタイズ信号を、定期的に送信させる。アドバタイズ信号は、自車両の存在を他車両及び路側機3に通知するための信号であって、少なくとも当該信号を送信した車両(つまり送信元車両)を示す送信元情報を含む。もちろん、アドバタイズ信号は、送信元情報以外の情報を含んでいても良い。
【0055】
送信元情報とは、送信元車両に対して予め割り当てられた、他の搭載車両と区別するための識別情報(いわゆる車両ID)である。送信元情報は、送信元としての車載器1に対して予め割り当てられた、他の車載器1と区別するための識別情報(つまり装置ID)であってもよい。なお、ここでは車載器1と車両とは1対1で対応するため、無線信号/データの送信元/宛先等としての車両との表現は、車載器1と読み替えることができる。送信元情報の付加的情報は、例えば通信パケットのヘッダ等に格納されてもよい。
【0056】
アドバタイズ信号は、送信元での送信時刻などの情報を含んでいても良い。さらに、アドバタイズ信号は、送信元車両の現在位置、進行方向、走行速度、加速度など、送信元車両の車両情報を含んでいてもよい。換言すれば、送信元車両の車両情報を含む通信パケットである車両情報パケットをアドバタイズ信号として定期送信するように構成されていても良い。アドバタイズ信号は、個々の宛先を指定しない、いわゆるブロードキャストの態様で定期的に送信されうる。
【0057】
また通信制御部F1は、狭域通信部14より、受信データのRSSIやSN比などといった通信品質を示す情報を、受信信号に対応するデータである受信データと対応付けて取得する。なお、受信データには送信元情報が含まれるため、上記構成は、送信元毎の通信品質情報を取得することに対応する。つまり、通信制御部F1は、他車両や路側機3といった通信相手毎の通信品質を示す指標を取得する。狭域通信相手毎の通信品質を示す情報は、通信状況取得部F5に出力される。
【0058】
車両情報取得部F2は、車両情報として、車両状態センサ6やロケータ8、車両制御ECU9などから、車両の状態を示す種々の情報を取得する。車両情報としては、例えば、車両電源の状態(オン/オフ)や、車速、加速度、操舵角、アクセルの踏み込み量、ブレーキの踏み込み量、ワイパーの作動状態、シフトポジション、方向指示器の作動状態などが挙げられる。
【0059】
走行環境取得部F3は、周辺監視センサ7やロケータ8から車両の周辺の環境、換言すれば走行環境を示す情報である走行環境情報を取得する。ここでの走行環境情報には、自車両の現在位置や、走行レーン、走行している道路の種別、制限速度、曲率、交差点/分岐地点/合流地点までの残り距離、信号機や一時停止線などの相対位置情報が含まれる。また、走行環境には、他の移動体の位置や移動速度、周辺物体の形状及びサイズ等なども含めることができる。例えば走行環境取得部F3は、自車両の前方に存在する他車両等との車間距離や衝突余裕時間などを取得する。ここでの取得には、所定の情報をもとに演算処理を実行することで、対象とする情報を生成することも含まれる。車両周辺とは例えば車両から100m以内となる範囲が想定される。
【0060】
なお、走行環境取得部F3は、複数の周辺監視センサ7のそれぞれから検出結果を取得し、それらを組み合わせることにより、自車周辺に存在する物体の位置及び種別を認識してもよい。つまり走行環境取得部F3は複数種類のセンサのセンシング情報を組み合わせるセンサフュージョン処理を実施することで走行環境を認識するように構成されていても良い。その他、走行環境取得部F3は狭域通信部14が他車両から受信した他車両情報や、路側機3や無線基地局2から受信した動的地図データ等を用いて走行環境を特定しても良い。路側機3又は無線基地局2から取得できる動的地図データには、道路工事情報や、交通規制情報、渋滞情報、気象情報、制限速度などが含まれうる。
【0061】
制御計画部F4は、走行環境取得部F3が取得した走行環境情報を元に、車両の制御計画を作成する。制御計画は走行計画とも呼ぶこともできる。制御計画は、計画内容の細かさや適用範囲に応じて、長期的な計画と、中期的な計画と、短期的な計画とに分類されうる。長期的な計画は例えば現在位置から目的地までの走行経路を大まかに示す情報に相当する。中期的な計画は、長期的な計画よりも詳細/具体的な制御計画であって、例えば5分~10分以内に通過予定の範囲における走行レーンや走行速度などを含む。短期的な計画は、中期的な計画よりもさらに詳細/具体的な制御計画であって、1分以内に通過予定の、あるいは500m以内となる道路区間における制御計画を示す。各制御計画は、時刻毎の走行地点や走行速度などを含みうる。以降では、長期的な制御計画のことを長期計画と簡略化して記載する。同様に、中期的、短期的な制御計画のことをそれぞれ中期計画、短期計画とも記載する。
【0062】
制御計画部F4は、例えば長期計画として、自車位置から目的地までの走行経路を生成する。長期計画として設定される走行経路は、どの道路を通り、どの交差点で曲がるかなどといった、道路レベルでの経路情報に相当する。長期計画として設定される走行経路は、車両の現在位置及び目的地を入力とする経路探索処理によって算出される。制御計画部F4は、通信制御部F1との協働により、生成した長期計画のデータを、ネットワーク装置4に報告する。ネットワーク装置4は、車両からアップロードされてきた長期計画と、当該長期計画に示される走行経路上の交通状況とに基づいて、アップロード元に相当する車両の中期計画を作成して返送する。前述の通り、交通状況には、道路の混雑度合いや、平均走行速度などが含まれる。なお、ここでは制御計画部F4が車両の長期計画を生成し、ネットワーク装置4に送信するものとするが、これに限らない。車両は現在位置と、目的地とをネットワーク装置4に送信し、ネットワーク装置4が長期的~中期的な制御計画を生成しても良い。
【0063】
また、制御計画部F4は、通信制御部F1との協働により、ネットワーク装置4から中期計画を示すデータを受信する。なお、ここでは一例として、ネットワーク装置4が車両から提供される長期計画等に基づいて当該車両の中期計画を生成及び配信するものとするがこれに限らない。サーバ5が車両から送信される長期計画に基づいて中期計画の作成に必要なデータを車両に提供し、制御計画部F4が中期計画を生成しても良い。
【0064】
加えて、制御計画部F4は、ネットワーク装置4から配信される中期計画をベースとしつつ、走行環境取得部F3が取得している自車両周辺に存在する地物や移動体との位置関係に基づいて短期計画を生成する。短期計画は、周辺監視センサ7等での検知結果などに基づいて中期計画に修正を加えた計画に相当する。
【0065】
例えば制御計画部F4は、周辺監視センサ7としての前方カメラの検出結果又は動的地図データに基づき、自車両の前方に障害物が存在することが確認された場合には、障害物の側方を通過する走行計画を生成しうる。その他、路上の落下物の回避や、歩行者の手前で停車する制御など、他の物体との衝突を避けるための緊急回避行動なども計画する。なお、中期的あるいは短期的な走行計画は、算出した経路における速度調整のための加減速のスケジュール情報や、操舵角の制御スケジュール情報、車線変更を行う地点の情報、ドライバに車両挙動を予告するタイミングなどの情報を含みうる。
【0066】
なお、ここでは一例として制御計画部F4が生成する制御計画は、車両を自律的に走行させるための計画としているが、これに限らない。制御計画部F4が生成する制御計画は、運転席乗員(いわゆるドライバ)の運転操作を支援するための制御計画であってもよい。つまり車載器1は、運転支援装置であってもよい。
【0067】
通信状況取得部F5は、他車両との狭域通信(いわゆる車車間通信)の実施状況、及び、路側機3との狭域通信(いわゆる路車間通信)の実施状況を管理する構成である。通信状況取得部F5は、他車両から送信されるアドバタイズ信号を受信すると、当該アドバタイズ信号に示される送信元情報と、当該アドバタイズ信号の受信強度などの通信品質情報とを対応付けてRAM112に保存する。つまり、車両毎に、通信品質情報を区別して保存する。或る他車両についての取得時点が異なる通信品質情報は、例えば、最新の通信品質情報が先頭となるように時系列順にソートされて保存されれば良い。また、保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていけば良い。1つの他車両に関する通信品質情報は、最新のデータのみ保持されても良い。なお、他車両の通信品質を評価するための信号は、ブロードキャストされるアドバタイズ信号に限らず、ユニキャストでやり取りされるデータ信号であってもよい。
【0068】
通信状況取得部F5は、路側機3から狭域通信で発せられる無線信号を受信している場合には、当該路側機3との通信品質を示す情報を、送信元を示すIDと対応付けて保存する。自車両が複数の路側機3と通信可能な状況にあるシーンにおいては、通信状況取得部F5は、路側機3ごとに通信品質情報を管理保存する。
【0069】
報告処理部F6は、自車両と他車両との通信状況を示す通信パケットである通信状態報告を、所定の周期で生成し、通信制御部F1と協働してネットワーク装置4に送信する。報告処理部F6は、例えば、路車間通信可能な状態である場合には、路側機3を通る経路で通信状態報告をネットワーク装置4に送信する。また、路車間通信不能な状態である場合には、報告処理部F6は、無線基地局2を介して(つまり広域通信で)ネットワーク装置4に通信状態報告を送信する。路車間通信可能な状態である場合とは、自車両が路側機3の通信エリア内にあって、路側機3との通信接続が確立している状態を指す。
【0070】
通信状態報告は、例えば車車間通信を実施している他車両ごとの通信品質を示すデータセットとすることができる。車両毎の情報は、車両IDによって識別可能に構成されている。通信状態報告は、送信元情報を含む。これにより、当該情報の受け取り手である路側機3又はネットワーク装置4は、車車間通信を実施可能な位置関係に有る車両同士の通信状況、例えば通信品質が良い/悪い車両の組み合わせや、通信困難/不安定な組み合わせなどを特定可能となる。
【0071】
また、通信状態報告は参考情報として、送信元車両の現在位置や走行速度、進行方向、走行レーンIDなどといった車両状態情報を含んでいても良い。走行レーンIDは、道路の左端又は右端から何番目のレーンを自車両が走行しているかを示す。さらに、通信状態報告には、自車両における方向指示器の点灯状態や、レーン境界線をまたいで走行しているか否かなどの情報が含まれていてもよい。自車両の走行状態を示す通信パケットは車両状態報告と呼ぶこともできる。通信状態報告と車両状態報告は別々の通信パケットとして送信されても良いし、統合されていても良い。
【0072】
車群情報取得部F7は、ネットワーク装置4から送信される車群設定データを取得する構成である。車群設定データは路側機3経由で取得しても良いし、無線基地局2から受信しても良い。ここでの車群とは、複数の車両をグループ化したものである。1つの車群に属する車両同士は、路側機3から複数に分割された状態で配信されるコンテンツデータを車車間通信によって共有し、補完し合う。ここでのコンテンツデータは例えば静的地図データや動的地図データを指す。
【0073】
車群設定データは、所定の期間内における各時点での接続車両と、車群内でのデータの共有経路を示す情報を含む。1つの車群において、接続車両以外の車両である一般車両は、接続車両を介して路側機3と通信を実施する。接続車両は、一般車両と路側機3との通信を中継する車両に相当する。接続車両は、1つの側面において車群を代表する車両であるため、代表車両と呼ぶこともできる。接続車両は、別途後述するように、同一の車群に属する車両の中で経時的に変更されうる。時点毎の接続車両の情報は、前述の車群設定データとしてネットワーク装置4から路側機3へ通知される。車群情報取得部F7は、取得した車群設定データを、RAM112に保存する。車群設定の詳細については別途後述する。
【0074】
データ取得部F8は、路側機3との路車間通信や、同一車群に属する他車両との車車間通信により、静的地図データや動的地図データを取得する構成である。データ取得部F8の作動の詳細は別途後述する。データ取得部F8が取得したデータは、制御計画部F4が短期的な制御計画を作成するために使用されうる。例えば交差点内を走行するための制御計画や、信号機の点灯状態に応じた停車などの制御計画、右左折後のパスプラン、分岐/合流する際のパスプランを作成するために使用されうる。
【0075】
制御実行部F9は、制御計画部F4で決定された制御計画に対応する指示信号を、車両制御ECU9に出力する。車両制御ECU9は、指示信号に基づき、制御対象とする走行制御デバイスを制御する。なお、車両制御ECU9の機能は制御実行部F9が備えていても良い。その場合、制御実行部F9が各種アクチュエータに制御信号を出力しうる。なお、制御計画部F4及び制御実行部F9の制御対象には、アクチュエータ類だけでなく、ディスプレイやスピーカなどの情報提示デバイスも含まれる。例えば、制御実行部F9は、制御計画に基づき、進路を示すターンバイターン画像をヘッドアップディスプレイに表示したり、減速や車線変更を画像又は音声で予告したりする。
【0076】
<無線基地局2の構成について>
次に
図5を用いて無線基地局2の構成について説明する。無線基地局2は
図5に示すように広域通信装置21、ネットワーク接続装置22、及び基地局制御部23を備える。広域通信装置21及びネットワーク接続装置22は基地局制御部23と相互通信可能に接続されている。
【0077】
広域通信装置21は、車両と広域通信を実施するための通信モジュールである。広域通信装置21の基本的な構成は広域通信部13と同様とすることができる。広域通信装置21は、受信データを基地局制御部23に出力する。また、広域通信装置21は基地局制御部23から入力されたデータを、基地局制御部23から指示された無線リソースを用いて送信する。
【0078】
広域通信の無線リソース(換言すればベアラ)は、リソースブロックの概念を用いて制御されうる。リソースブロックは、タイムスロットと周波数スロットとを用いて区分される、無線リソースの制御単位である。タイムスロットの長さは、スケジューリングの最小単位であるTTI(Transmission Time Interval)に対応させることができる。時間領域における無線リソースの制御単位は、サブフレームやフレームであっても良い。本開示におけるタイムスロットとの記載は、サブフレームやフレームと置き換えて実施することができる。また、タイムスロットとの記載は、LTE等で使用されるシンボルに置き換えて実施することもできる。周波数スロットを定義するキャリアの数は、例えば6~20とすることができる。勿論、キャリアの数は、周波数間隔に応じて適宜変更可能である。リソースブロックとの記載は、リソースエレメントに置き換えて実施することができる。なお、無線リソースの構成要素としては、その他、変調方式を採用可能である。例えば無線リソースは、タイムスロットと周波数スロットと変調方式の3つの項目を用いてリソースブロックに細分化されても良い。
【0079】
ネットワーク接続装置22は、ネットワーク装置4や路側機3と通信するための設備である。ネットワーク接続装置22は、例えば光ファイバなどを用いてネットワーク装置4及び路側機3のそれぞれと相互通信可能に構成されている。ネットワーク接続装置22は、ネットワーク装置4及び路側機3から入力されたデータを基地局制御部23に出力する。また、ネットワーク接続装置22は、基地局制御部23から入力されたデータを、当該データの宛先に応じて路側機3又はネットワーク装置4に出力する。
【0080】
基地局制御部23は、プロセッサ231、RAM232、及びストレージ233を備える、コンピュータを主体として構成されている。ストレージ233には、プロセッサ231によって実行されるプログラムとして、基地局制御プログラムが格納されている。プロセッサ231が上記プログラムを実行することは、基地局制御プログラムに対応する方法である基地局制御方法を実行することに相当する。
【0081】
基地局制御部23は、プロセッサ231が基地局制御プログラムを実行することによって発現される機能部として、
図5に示す種々の機能部を備える。すなわち、基地局制御部23は機能部として、接続制御部H1、通信制御部H2、及び転送処理部H3を備える。
【0082】
接続制御部H1は、無線基地局2に接続するUEとしての車両を管理及び制御する構成である。例えば接続制御部H1は、車両の移動に伴うハンドオーバーなどを実施する。
【0083】
通信制御部H2は、広域通信装置21の作動を制御する構成である。通信制御部H2は、例えばMMEなどからの制御信号に基づき、車載器1毎の無線リソースの割り当て状態を制御する。通信制御部H2が決定した無線リソースの割り当てに基づき、広域通信装置21は車載器1に向けたデータ送信、及び、車載器1からのデータ受信を実施する。データ通信に係る処理は、次に説明する転送処理部H3との協働によって実施される。
【0084】
転送処理部H3は、ネットワーク装置4及び車両から入力されたデータを、適宜指定された宛先に転送するための処理を行う構成である。配信の態様は、ユニキャスト及びマルチキャストのどちらでもよく、例えば送信先や、送信データの種別によって選択されうる。なお、ユニキャストは、単一の送信相手を指定してデータを送信する方式を指し、マルチキャストは、複数の送信相手を指定してデータを送信する方式を指す。ユニキャストは、マルチキャストやブロードキャストに比べて確認応答と再送が可能で信頼性が担保されやすいといった利点を有する。ブロードキャストは、不特定多数(全宛先)に対してデータを送信する方式を指す。なお、データ送信の態様としては、その他、ジオキャストなども採用可能である。ジオキャストは、位置情報で宛先を指定する、フラッディング方式の通信態様である。ジオキャストでは、ジオキャストエリアとして指定される範囲に存在する車両が、当該データを受信する。ジオキャストによれば、情報の配信対象とするエリアに存在する車両の識別情報を特定せずに送信可能となる。
【0085】
例えば転送処理部H3は、ネットワーク装置4が生成した車群設定データを、当該車群を構成する各車両に送信する。車群設定データの配信態様は、例えばジオキャスト又はブロードキャストなどを採用可能である。なお、車群設定データの配信先は、当該車群を構成する複数の車両のうちの1つであっても良い。その場合、車群設定データを受信した車両は、車車間通信により、関係車両に車群設定データを配信する。また、転送処理部H3は、ネットワーク装置4から入力された車両ごとの中期的な制御計画データを、各車両にユニキャスト配信してもよい。その他、転送処理部H3は、複数の車両のそれぞれから送信されてきた通信状態報告などの通信パケットをネットワーク装置4に転送する。
【0086】
<路側機3の構成について>
ここでは路側機3の構成について説明する。路側機3は、例えば、交差点付近や、高速道路の分岐/合流地点付近に配置されている。路側機3は、カーブの途中や、上り道の途中などに配置されていても良い。路側機3は、前方の交通状況が見えにくい位置に配置されていることが好ましい。もちろん、路側機3は交差点と交差点の中間付近に配置されていても良い。
【0087】
路側機3は、信号機や、照明設備、有料道路の料金所(ゲート)など、道路沿いに設置される構造物と一体的に形成されていてもよい。ここでの道路沿いには、道路の側方だけでなく、路面の上空も含まれる。また、路側機3は路面に埋没された、マーカーとして設置されていても良い。なお、1つの交差点に対して複数の路側機3が設けられる場合もある。例えば交差点の進入側と退出側など、交差点に接続する道路ごとに路側機3が設置されうる。
【0088】
路側機3は
図6に示すように狭域通信装置31、ネットワーク接続装置32、エリア監視装置33、及び路側制御部34を備える。狭域通信装置31、ネットワーク接続装置32、及びエリア監視装置33のそれぞれは路側制御部34と相互通信可能に接続されている。
【0089】
狭域通信装置31は、車両と狭域通信を実施するための通信モジュールである。狭域通信装置31の基本的な構成は狭域通信部14と同様とすることができる。狭域通信装置31もまた、受信信号のRSSIを検出する受信強度検出部311を備える。狭域通信装置31は、受信強度検出部311が検出したRSSIなどの通信品質を示す情報を、受信データと対応付けて路側制御部34に出力する。なお、前述の通り、通信品質を示す情報としては、RSSIの他、受信信号のSN比や、BER、パケットロス率なども採用可能である。
【0090】
ネットワーク接続装置32は、無線基地局2やネットワーク装置4と通信するための設備である。ネットワーク接続装置32は、例えば光ファイバなどを用いて無線基地局2及びネットワーク装置4のそれぞれと相互通信可能に構成されている。もちろん、路側機3と無線基地局2やネットワーク装置4との間には中継装置(いわゆるルータ)などが介在していても良い。ネットワーク接続装置32は、無線基地局2及びネットワーク装置4から入力されたデータを路側制御部34に出力する。また、路側制御部34から入力されたデータを、当該データの宛先に応じて無線基地局2又はネットワーク装置4に出力する。
【0091】
エリア監視装置33は、路側機3に対して予め設定されている監視対象エリアの交通状況を監視する装置である。例えばエリア監視装置33は、監視対象エリア内に存在する移動体や、障害物等の位置、大きさ及びその移動状況などを検出する。移動体には、車両や、自転車、歩行者、動物などを含めることができる。障害物は、主として落下物や、工事区間、駐停車車両を指す。障害物には、前述の移動体を含めることもできる。移動状況の構成要素としては、移動の有無、移動速度、移動方向などが挙げられる。
【0092】
監視対象エリアは、路側機3ごとに設定される。例えば交差点付近に設置されている路側機3の監視対象エリアは、交差点の内部やその付近などである。例えば交差点に設置されている路側機3は、信号待ちをしている歩行者や、道路横断中の歩行者、交差点に接近中の自転車及び歩行者、自動車、右折/左折予定の車両などを検知する。交差点に設定されている路側機3は、交差点の出入り口付近に停車している駐停車車両などの障害物も検出しうる。また、高速道路の分岐/合流地点付近に設置されている路側機3の監視対象エリアは、当該分岐/合流地点を含むように設定される。高速道路の分岐/合流地点に設置されている路側機3は道路の本線を走行している車両の位置及び速度情報と、分岐/合流用の道路である側道を走行している車両の位置及び速度を検出しうる。
【0093】
エリア監視装置33としては、カメラやLiDAR、ミリ波レーダなどを採用可能である。ここでは一例として、エリア監視装置33は、監視対象エリアを撮像範囲に含むように設置されているカメラである。エリア監視装置33としてのカメラである路側カメラは、例えば交差点に進入する車を撮影できるように、交差点付近の道路上方に設けられる。また、路側カメラは、交差点周囲の横断歩道を撮像できるように、交差点周囲の歩道上方にも設けられていてもよい。路側機3が備える、エリア監視装置33としてのカメラは1台であってもよいし、複数台であってもよい。路側カメラが撮像した画像は路側制御部34に出力される。なお、路側機3は、エリア監視装置33として、カメラとLiDARなど、複数種類のセンサを備えていても良い。
【0094】
路側制御部34は、プロセッサ341、RAM342、及びストレージ343を備える、コンピュータを主体として構成されている。ストレージ343には、プロセッサ341によって実行されるプログラムとして、路側機制御プログラムが格納されている。プロセッサ341が上記プログラムを実行することは、路側機制御プログラムに対応する方法である路側機制御方法を実行することに相当する。
【0095】
路側制御部34は、プロセッサ341が路側機制御プログラムを実行することによって発現される機能部として、
図6に示す種々の機能部を備える。すなわち、狭域通信制御部G1、交通状況取得部G2、通信状況取得部G3、及びネットワーク処理部G4を備える。
【0096】
狭域通信制御部G1は、狭域通信装置31の作動を制御する構成である。狭域通信制御部G1は、例えばアドバタイズ信号など、車両から発せられる所定の無線信号を受信することで、未接続の車両の存在を検知するとともに、当該車両との通信接続に係る処理を行う。通信接続に係る処理は、暗号通信に使用する鍵の交換などを含む。
【0097】
狭域通信制御部G1は、狭域通信装置31が受信したデータを取得し、交通状況取得部G2や通信状況取得部G3に出力する。また、狭域通信制御部G1は、ネットワーク装置4から提供される配信用データである元データを、複数のセグメントデータに分割して所定の車両に対してユニキャスト配信する。各車両に送信するセグメントは、一連のセグメントのうちの一部又は全部である。路側機3は、車群全体としてすべてのセグメントが揃うように、車群を構成する各車両にそれぞれ異なるセグメントをユニキャスト配信する。配信用の元データとは動的地図データや静的地図データである。
【0098】
セグメントデータは、
図7に示すように、元データを例えば1つあたりのデータサイズが規定量となるように分割した部分データに相当する。セグメントデータは、セグメントデータあるいは部分データと呼ぶこともできる。個々のセグメントデータは、例えば、元データを識別するための元データIDと、この元データにおける各セグメントデータを識別するためのセグメントIDとを含む。セグメントIDは、セグメント同士の順番を示す識別子であって、セグメント番号と呼ぶこともできる。セグメントIDは各車載器1が未取得のセグメントを特定するために使用されうる。なお、各セグメントにおける、元データIDやセグメントIDは任意の要素であって省略されても良い。
【0099】
元データのセグメント化は実態的なものであってもよいし、仮想的なものであっても良い。例えばセグメントデータは、元データの本体部分(いわゆるペイロード)を分割した上でそれをパケット化したものであってもよい。セグメントデータはセグメントパケットと呼ぶこともできる。また、セグメントデータは、元データに対応する通信パケットの集合を、所定数ごとに区切ってなるものであっても良い。
図7に示す例では、元データを90個のセグメントデータに分割した態様を例示している。また、
図7では元データを構成する90個のセグメントパケットを、送信先に応じて3つの宛先グループに分けた態様を例示している。
【0100】
元データをセグメントデータへ分割する処理は、路側機3が担当しても良いし、ネットワーク装置4が実施しても良い。各セグメントのサイズは一定であっても良いし、車両毎の無線リソースの割当量に応じて異なる値に設定されてもよい。換言すれば、各セグメントのサイズは、接続車両が路側機3と狭域通信可能な容量に応じた値に設定されていても良い。車載器1と路側機3との狭域通信容量は、両者が狭域通信可能な時間の長さ、換言すれば、路側機3の通信エリア内に車載器1が滞在する時間の推定値に応じて定まる。車載器1と路側機3との通信可能時間ひいては通信容量は、車両の走行速度等によって定まる。故に、車載器1と路側機3との狭域通信容量は、車両の走行速度の予定値、つまり制御計画から算出されうる。ここでは一例として、路側機3が別途後述する車両ごとの無線リソースの割当量に応じてセグメント化を行う。もちろん、ネットワーク装置4が元データを複数のセグメントデータに分割した状態で、路側機3に提供するように構成されている。
【0101】
狭域通信の無線リソースもまた、広域通信と同様、タイムスロットと周波数スロットを用いて区分されるリソースブロックの概念を用いて制御されうる。つまり、狭域通信は、タイムスロットの概念を用いて制御される。例えばセグメントデータの配信対象は、タイムスロットの境目で切り替えられうる。1つのタイムスロットの長さは、例えば1ミリ秒や、10ミリ秒、50ミリ秒などとすることができる。タイムスロットの長さは0.25ミリ秒や、0.5ミリ秒など、1ミリ秒以下であってもよい。前述の通り、タイムスロットは、TTIに対応するように設定されうる。なお、タイムスロットは、時間領域における無線リソースの制御単位であって、具体的な長さは通信の仕様に応じて変更されうる。狭域通信におけるタイムスロットの長さは、広域通信におけるタイムスロットの長さと同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0102】
狭域通信の周波数スロットを定義するキャリアの数は、例えば6~12とすることができる。勿論、キャリアの数は、適宜変更可能である。狭域通信で使用される周波数は、広域通信で使用される周波数と相違しうる。なお、狭域通信の無線リソースもまた、タイムスロットや周波数スロットの他、さらに変調方式を用いてリソースブロックに区分されても良い。
【0103】
路側機3は、ネットワーク装置4からの指示に基づき、複数のセグメントデータを、車群を構成する接続車両に対して順次ユニキャスト送信する。各セグメントデータの配信対象は、車群の中からネットワーク装置4において適宜設定されうる。各接続車両は別途後述するように、受信したセグメントデータを、同一車群を構成する他の車両である一般車両に向けて、所定の共有経路で無線送信する。これにより、車群内で複数のセグメントデータが順に共有され、個々の車両において元データとしての動的地図データが復元される。つまり、車群内において各車載器1は、個々のセグメントデータを狭域通信で共有することによって、元データしてのコンテンツデータを再構築して利用可能である。
【0104】
なお、このようにデータをセグメントに分割して送受信する構成によれば、各車載器1における通信量を抑制することができる。また、送受信されるデータサイズが小さくなるため、1個のデータの送受信に要する時間が短縮される。その結果、相対的に短い時間でもデータの送受信が成功する可能性を高めることができる。加えて、車群内でデータが共有されるため、例えば、車群の先頭車両が路側機3の通信エリア外に出た状況においても、同一車群の後続車両が路側機3の通信エリア内に存在する限りは、先頭車両も路側機3と通信可能となる。
【0105】
交通状況取得部G2は、エリア監視装置33から入力されるデータに基づいて、所定の監視対象エリアの交通状況を取得する。ここでの交通状況には、例えば監視対象エリア内に存在する移動体や障害物等の位置、大きさ及び移動状況などが含まれる。また、路面が雨等で濡れているか、積雪しているかなどといった路面状態や、雨が降っているか否かといった天候状態もまた、交通状況に含めることができる。加えて、前述の通り交通状況には、交通量や平均車速、渋滞の有無などが含まれうる。なお、交通状況取得部G2は、路車通信によって車両から取得した位置情報等を用いて、交通状況を特定しても良い。交通状況取得部G2が取得した交通状況を示す情報である交通状況データは、ネットワーク処理部G4に出力される。
【0106】
通信状況取得部G3は、車両との路車間通信の実施状況を取得及び管理する構成である。通信状況取得部G3は、車両からの無線信号を受信している場合には、当該車両との通信品質を示す情報を、送信元を示す車両IDと対応付けて保存する。複数の車両と通信可能な状況にあるときは、車両ごとに通信品質情報を管理保存する。通信状況取得部G3が取得した車両ごとの通信品質を示す情報である通信状況情報は、ネットワーク処理部G4に出力される。通信状況取得部G3は、接続車両を介して、車両同士の車車間通信の品質を示す情報を各車両から受信するように構成されていても良い。その他、通信状況取得部G3は、通信負荷の度合いや、狭域通信に使用可能な無線リソースの使用率(いわゆる混雑度)を算出して、ネットワーク処理部G4に出力する。
【0107】
ネットワーク処理部G4は、ネットワーク装置4や無線基地局2との通信を制御する構成である。ネットワーク処理部G4は、ネットワーク装置4から入力されたデータを取得する。ネットワーク処理部G4は、交通状況取得部G2や通信状況取得部G3が取得した情報をまとめてネットワーク装置4に報告する集約報告部G41を備える。集約報告部G41は、直近一定時間以内に交通状況取得部G2が取得した交通状況を示す情報をネットワーク装置4に送信する。また、集約報告部G41は、直近一定時間以内に通信状況取得部G3が取得した交通状況を示す情報をネットワーク装置4に送信する。路側機3が集約して報告した交通状況データは、ネットワーク装置4で動的地図データを生成する際に使用されうる。
【0108】
<ネットワーク装置4の構成について>
次に
図8を用いてネットワーク装置4の構成について説明する。ネットワーク装置4は
図8に示すようにネットワーク接続装置41と、車両管理データベース42と、エッジ制御部43と、を備える。ネットワーク接続装置41及び車両管理データベース42は、それぞれエッジ制御部43と相互通信可能に接続されている。
【0109】
ネットワーク接続装置41は、無線基地局2や路側機3、サーバ5と通信するための設備である。ネットワーク接続装置41は、例えば光ファイバなどを用いて無線基地局2、路側機3、及びサーバ5のそれぞれと相互通信可能に構成されている。ネットワーク接続装置41は、無線基地局2、路側機3、及びサーバ5から入力されたデータをエッジ制御部43に出力する。例えばネットワーク接続装置41は無線基地局2や路側機3から、車両の長期的な制御計画や、他車両等との通信状況を取得してエッジ制御部43に出力する。また、サーバ5から別のネットワーク装置4が収集した交通状況データを取得してエッジ制御部43に出力する。
【0110】
また、ネットワーク接続装置41は、エッジ制御部43から入力されたデータを、当該データの宛先に応じて無線基地局2、路側機3、又はサーバ5に出力する。なお、本開示における無線基地局2及び路側機3は、1つの側面においてネットワーク装置4が車両とデータ通信を実施するための経路を構成する要素に相当する。ネットワーク装置4と車両との通信手段として、無線基地局2と路側機3のどちらを使用するかは、通信の効率や費用、秘匿性を鑑みて適宜変更可能である。
【0111】
車両管理データベース42は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されるデータベースである。車両管理データベース42は、エッジ制御部43によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。車両管理データベース42には、車載器1毎に、現在位置や、制御計画、他車両や路側機3との狭域通信の実施状況などを示すデータ(以降、個別状況データ)が、車両IDと対応付けられて保存されている。例えば車載器1毎の個別状況データは、リスト形式など、任意のデータ構造によって保持されていれば良い。個別状況データは、現在の移動速度や、走行レーン、進行方向、走行位置変更予定地点などの情報を含んでいてもよい。
【0112】
各車両における他車両との狭域通信の実施状況としては、例えば通信相手としての他車両からの信号のRSSIや、SN比、BER、パケットロス率などといった通信品質を示す種々の項目の少なくとも1つが登録される。通信相手毎の通信品質は、当該通信相手の識別情報と対応付けられて保存される。
【0113】
エッジ制御部43は、プロセッサ431、RAM432、及びストレージ433を備える、コンピュータを主体として構成されている。ストレージ433には、プロセッサ431によって実行されるプログラムとして、エッジ用プログラムが格納されている。プロセッサ431が上記プログラムを実行することは、エッジ用プログラムに対応する方法である車群制御方法を実行することに相当する。なお、エッジ用プログラムは、V2Xエッジアプリケーションと呼ぶことができる。V2Xエッジアプリケーションは、LTE等の3GPPが規定する通信アーキテクチャ内の装置が実施するV2Xアプリケーションに相当する。また、ストレージ433には、路側機3の設置位置や通信エリアにかかるデータが保存されている。
【0114】
エッジ制御部43は、プロセッサ431がエッジ用プログラムを実行することによって発現される機能部として、
図8に示す種々の機能部を備える。すなわち、エッジ制御部43は機能部として、個別情報取得部J1、交通状況取得部J2、交通状況予測部J3、配信データ生成部J4、中期計画部J5、車群編成部J6、リソース制御部J7、及び通知処理部J8を備える。配信データ生成部J4は、より細かい機能部としてデータサイズ取得部J41とデータサイズ調整部J42を備える。車群編成部J6はより細かい機能部として計画修正部J61、接続車両設定部J62、車群速度取得部J63、及び共有経路設定部J64を備える。
【0115】
個別情報取得部J1は、複数の路側機3及び無線基地局2から提供される通信状況データを取得する。すなわち、車両同士の車車間通信状況や、路車間通信状況、路側機3における通信負荷や混雑度などを取得する。また個別情報取得部J1は、各車両から報告される長期計画や、位置情報、走行速度などを取得する。つまり、個別情報取得部J1は、車両毎の通信状況や走行状態、走行計画を取得する。走行計画には現在位置や、現在の走行速度も含まれる。また個別情報取得部J1は、走行計画として長期計画だけでなく、後述する中期計画部J5が作成する中期計画も取得しうる。車両の個別の状況を示すデータには、車両や路側機3から送信されたものに限らず、ネットワーク装置4の内部で生成された情報も含みうる。
【0116】
さらに、個別情報取得部J1は、サーバ5から、他のネットワーク装置4が収集した、自エリアとの境界付近に存在する車両の通信状況データを取得する。ここでの自エリアとはネットワーク装置4にとって自分自身に対応付けられている管理エリアを指す。個別情報取得部J1が取得した車両ごとのデータは、車両ごとに区別されて車両管理データベース42に保存される。
【0117】
交通状況取得部J2は、複数の路側機3から送信される交通状況データを取得する。また交通状況取得部J2は、複数の路側機3から集めた交通状況データを、サーバ5に送信する。また、交通状況取得部J2は、サーバ5から、他のネットワーク装置4が収集した、管理対象エリアの境界付近の交通状況データを取得する。例えば交通状況取得部J2は、サーバ5から提供される他エリアから自エリアへ流入する車両の情報を取得する。ここでの他エリアとは、自エリアに隣接する、他のネットワーク装置4の管理エリアを指す。
【0118】
交通状況予測部J3は、交通状況取得部J2が取得した交通状況データに基づいて、時エリア内の各道路区間における、所定の予測時間後の交通状況を予測する。なお、交通状況の予測には、各車両から提供される長期的な制御計画や、後述する中期計画部J5が作成する車両毎の中期計画が使用されても良い。
【0119】
予測対象とする道路区間は、路側機3の監視対象エリアであってもよい。交通状況予測部J3は、所定の長さを有する道路区間ごとに交通状況を予測するように構成されていても良い。ここでは一例として道路区間ごとに、所定時間後の交通状況を予測するものとする。予測時間は、例えば1秒や、10秒、30秒などの動的データに相当する期間であってもよいし、5分後や10分後、30分後などの準動的データに対応する期間であっても良い。
【0120】
配信データ生成部J4は、交通状況予測部J3の予測結果に基づいて、例えば路側機3が各車群に配信するための動的地図データを生成する。路側機3が各車群に配信するための動的地図データとは、例えば路側機3から一定範囲内のエリアについての交通状況の予測結果を示すデータセットとする事ができる。すなわち、道路区間ごとの平均車速や、交通量などを含む。動的地図データには、前述の通り、地点毎の降雨量や、路面状態、霧の有無などの気象情報を含めることができる。動的地図データには、道路工事情報や、交通規制情報、路上障害物情報、渋滞情報、制限速度、信号機情報、目標走行軌道データなどを含めることができる。
【0121】
また、配信データ生成部J4は、路側機3が各車群に配信するための静的地図データを生成し、路側機3に分配する。路側機3向けの静的地図データとは、例えば路側機3から一定範囲内のエリアについてのデータセットとする事ができる。或いは、各車群が通過予定の道路区間についての情報のみを抽出したデータセットすることができる。
【0122】
データサイズ取得部J41は車群へ配信用のデータのサイズを評価/取得する構成である。データサイズ調整部J42は後述する車群長調整処理を実施しても車群通信容量を配信データのサイズよりも大きく設定できなかった場合に、配信データが車群通信容量に収まるように配信データを間引く処理を行う。データサイズ調整部J42の詳細は別途後述する。
【0123】
中期計画部J5は、各車両から提供される長期的な制御計画と、交通状況予測部J3が予測している地点ごとの交通状況に基づき、中期的な制御計画を作成する。中期的な制御計画とは前述の通り、例えば5分~10分など、所定時間以内に通過予定の道路区間における、走行レーンや走行速度などを含む。中期計画部J5は、車両からアップロードされてきた長期的な走行計画に関わる道路区間での交通状況に基づいて、中期的な制御計画を作成する。
【0124】
車群編成部J6は、個別情報取得部J1が取得し、車両管理データベース42に登録されている車両ごとの個別状況データに基づいて、車群を編成する構成である。例えば車群編成部J6は、
図9に示すように、RSSIが所定のグルーピング強度以上である車両同士を同一のグループ(換言すれば車群)に設定していく。なお、
図9中において実線の双方向矢印は、双方向における信号のRSSIがグルーピング強度以上となる組み合わせを表している。また、破線の双方向矢印は、少なくともの何れか一方向における無線信号のRSSIがグルーピング強度未満となる組み合わせを表している。
図9に示す態様においては、車両M1~M5が同一の車群Gr1を形成し、車両M6~M7が別の車群Gr2を形成する。
【0125】
グルーピング強度は、安定して車車間通信を実施できる程度の値に設定されていればよく、車車間通信の規格で規定される送信電力の標準値に応じて変更されうる。グルーピング強度は、例えばパケット到達率の期待値が95%以上となるような値に設定されれば良い。通信が安定している状態とは、例えばパケットロス率が5%未満となる状態とすることができる。要求される通信品質は、通信の用途等に応じて決定されうる。
【0126】
グルーピング強度は、車車間通信の規格で規定される送信電力の値にもよるが、例えば-60dBmや、-50dBm、-40dBm、-30dBmなどとすることができる。グルーピング強度は、例えば通信が安定する環境(以降、良環境)におけるRSSIのシミュレーション結果をもとに設定されうる。なお、良環境としては、車間距離が25mであってそれらの車両の間に障害物が存在しない状況が想定される。また、通信が不安定となる環境(以降、悪環境)としては、車間距離が50mであってそれらの間に、車車間通信機能を有さない大型トラックなどの障害物が存在する状況が想定される。仮に良環境において観測されるRSSIが-40dBm~-50dBmであり、悪環境において観測されるRSSIが-60dBm~-80dBmである場合には、それらの分布の境界に位置する-55dBmがグルーピング強度となりうる。
【0127】
なお、車群を構成するすべての車両の組み合わせにおいて、RSSIがグルーピング強度以上である必要はない。或る車両は、車群を構成する複数の車両の少なくとも何れか1つとの通信のRSSIがグルーピング強度以上であることに基づいて、当該車群に所属可能となる。例えば、車群の先頭車両M1と、車群の最後尾に位置する車両M5との通信のRSSIは、グルーピング強度未満でもよい。先頭車両M1及び最後尾車両M5は、例えば中間に位置する車両M3との通信のRSSIがグルーピング強度以上である場合、それらは同一の車群に所属しうる。
【0128】
車群の編成に使用するRSSIは、最新の観測値であってもよいし、直近所定時間以内における観測値の平均値、中央値、最大値、又は最小値であってもよい。なお、ここでは一例としてRSSIを用いて同一の車群に含める車両を選別するが、これに限らない。SN比が所定値以上であることや、直近所定時間以内におけるパケットロス率が所定値未満であることなどをグループ化の条件として採用しても良い。グループ化の条件を規定する各項目に対する閾値のことをグルーピング閾値とも称する。前述のグルーピング強度もグルーピング閾値の一例に相当する。
【0129】
車群の規模は、ネットワーク装置4又はサーバ5と車両とのデータ通信として、要求される通信品質が担保されるように調整されてもよい。車群を構成する車両の数が多すぎると、データ共有の完了までに要する時間が増大する。また、一般車両から接続車両までのホップ数が増大すると、通信遅延時間やパケットロス率が増大しうる。加えて、狭域通信で使用可能な無線リソースが有限であることを踏まえると、車群を構成する数が増えるほど、1台当たりが使用可能な通信帯域が減少し、通信速度が低下しうる。なお、通信遅延時間は、後述する葉ノードとしての一般車両が送信したデータが接続車両を介して路側機3に到達するまで、或いは、路側機3が送信したデータが接続車両を介して葉ノードに到達するまでにかかる時間(いわゆるレイテンシ)で評価されうる。その他、往復レイテンシ(RTT:Round-Trip Time)やスループットなども、車群の規模を調整するための指標として採用可能である。
【0130】
車群編成部J6は、通信遅延時間などが所望の通信条件/要求を充足するように、ホップ数や台数の観点で、車群の規模を調整しうる。例えば、接続車両から末端までのホップ数が4以上となる場合には、車群の規模を縮小し、最大ホップ数が3以下となるように調整する。車群の規模は主として車群を構成する車両の数、すなわち構成メンバの数によって表現されうる。なお、ここではより好適な例として最大ホップ数を3に制限するが、これに限らない。最大ホップ数は5まで許容されても良い。なお、交差点における右左折時の運転支援又は自動運転に要求される遅延時間が仮に10ミリ秒である場合には、遅延時間が10ミリ秒未満となるように、最大ホップ数が規定される。
【0131】
また、車群編成部J6は、接続車両を介した末端の車両とサーバ5との通信遅延時間が所定の閾値を超過する場合にも、車群の構成する車両の数を減らしてもよい。車群編成部J6は、接続車両を介した一般車両と路側機との通信速度が所定の許容閾値未満となる場合、車群の構成する車両の数を減らしてもよい。以降では、複数の車群の中で、処理の対象とする車群のことを対象車群とも記載する。
【0132】
上述したように車群編成部J6は、車車間の通信品質を考慮して車群を編成する。これにより、車間距離や位置情報だけで車群を編成する場合に比べて、車群内の通信品質を担保しやすくなる。例えば
図10に示すように、空間的な距離は小さい車両の間に遮蔽車両NMとして大型トラック/トレーラが存在する場合、距離だけで車群を編成する構成では、車車間通信の成功率が不安定となる車両M6も車群Gr1に含まれうる。これに対し、本開示の構成のように車群を編成する際、換言すれば、車群の切り目を設定する際に、RSSIなどの車車間通信品質を用いる構成によれば、遮蔽車両NMの影に位置する車両M6を、別の車群Gr2に設定する事ができる。なお、ここでの遮蔽車両NMとは、車車間通信機能を有さない車両を指す。
【0133】
もちろん、車群編成部J6は、車車間の通信品質を示す少なくとも1つのパラメータに加えて、車間距離を併用して、車群を設定するように構成されていても良い。例えば、同一の車群に所属させる条件は、RSSIがグルーピング強度以上であって、かつ、車間距離が所定のグルーピング距離未満であることとしても良い。グルーピング距離は例えば50mmや、100m、150mなどとすることができる。なお、グルーピング距離は、一般道路と高速道路とで変更してもよい。換言すれば走行速度の制限値や、道路種別に応じて変更されても良い。当然、制限速度が大きいほど、車間距離は広く設定されるべきであるため、それに伴いグルーピング距離も大きく設定されうる。例えば一般道路のグルーピング距離は50mとする一方、高速道路におけるグルーピング距離は200mや300mなどとすることができる。
【0134】
なお、グルーピング距離は、同一地点を通過するまでの秒数(いわゆる車間時間)で規定されてもよい。車間時間は、標識柱など道路上の目印となる所定の構造物であるランドマークを先行車が通過した時点からその後続車が当該ランドマークを通過するまでの時間に相当するものである。車間時間は、概略的には車間距離を後続車の走行速度で除算した値に相当する。勿論、車間時間は、後続車の加速度などを併用して算出されてもよい。
【0135】
計画修正部J61は、車車間通信の品質が確保されるように、車群を構成する車両の位置関係を調整する。すなわち、車車間通信に好適な車間距離が確保されるように各車両の相対的な走行位置を調整する。当該計画修正部J61は、車群内における車両同士の間隔が車車間通信に適した所定範囲内に収まるように車両ごとの中期計画を修正する構成に相当する。なお、車車間通信に適した距離範囲は、予めシミュレーション等に基づき設計されうる。車車間通信に適した距離範囲は、道路の曲率が大きい一般道と、相対的に道路の曲率が小さい高速道路とで異なる値に設定されていてもよい。例えば一般道における車車間通信に適した車間距離は50m以下に設定される一方、高速道路における車車間通信に適した車間距離は250m以下に設定されていても良い。車車間通信に適した車間距離は、車間時間の概念で定義されていても良い。
【0136】
さらに、計画修正部J61は、何れの車群にも属さない孤立車両Maが存在する場合には、当該孤立車両Maの中期的な走行計画を、当該孤立車両Maに近接する何れかの車群に属するように調整する。例えば計画修正部J61は、
図11に示すように、第1車群Gr1と第2車群Gr2の間に孤立車両Maが存在する場合、当該孤立車両Maの中期計画として、第1車群Gr1に属するように孤立車両Maを加速させる期間を設けた制御計画を作成する。もちろん、孤立車両Maが第2車群Gr2に合流可能なように、孤立車両Maを減速させる期間を設けた制御計画を作成しても良い。ただし、減速制御は孤立車両Maに乗車しているユーザの利便性を損なうおそれがある。故に、計画修正部J61は、制限速度及びその他の交通状況が許容する限りにおいては、加速期間の設定により、孤立車両Maを前方に位置する車群に編入させることが好ましい。なお、車群編成部J6は、加減速の他、車線変更などを用いて孤立車両Maを何れかの車群に所属するように、各車両の制御計画を調整しても良い。
【0137】
また、制限速度等の事情により孤立車両Maを前方に位置する車群へ編入が難しい場合には、減速期間の導入により孤立車両Maを後方に位置する車群に編入させる制御計画を作成してもよい。計画修正部J61が孤立車両Maの中期計画を補正した場合には、車群編成部J6は当該補正結果に基づいて、孤立車両Maを既存の車群に編入させるように、車群の設定情報を更新する。加えて、車群Gr1を減速させたり、車群Gr2を加速させたりすることにより、孤立車両Maを何れかに車群に編入させても良い。
【0138】
計画修正部J61は、車群単位で、走行速度を制御してもよい。例えば交差点や分岐/合流地点で車群が分裂しないように車群を構成する個々の車両の速度計画を調整する。また、計画修正部J61は、車群内の車車間通信品質が所望のレベルを担保されるように、車間距離を縮めたり、伸ばしたりする。加えて、計画修正部J61は、後述する路車群通信時間が受信必要時間以上となるように、車群全体の長さを調整したり、走行速度を抑制したりする。ここでの路車群通信時間は、車群全体としての路側機3との通信時間である。路車群通信時間は、例えば車群の先頭車両が路側機3の通信エリアに入ってから、車群の最後尾車両が路側機3の通信エリアを退出するまでの時間とすることができる。受信必要時間は、路側機3からセグメント化された一連のデータをすべて受信するために必要な時間に相当する。
【0139】
接続車両設定部J62は、車群のなかで路側機3と狭域通信を実施する車両(つまり接続車両)を、時間帯ごとに設定する構成である。接続車両設定部J62は、路側機3に対する車両ごとの相対位置に基づいて接続車両を経時的に変更する。接続車両設定部J62の詳細については別途後述する。
【0140】
車群速度取得部J63は、車群を構成する車両ごとの走行計画に基づいて、車群が次に通過する路側機3の通信エリアでの移動速度を取得する構成である。車群速度取得部J63が取得した、路側機3付近での車群の移動速度の予定値は、車群通信容量の算出などに使用されうる。
【0141】
共有経路設定部J64は、車群を構成する車両ごとの他車両との通信状況に基づいて、車群内における一般車両から接続車両までの通信経路である共有経路を作成する。なお、車群内における車両同士はユニキャストで双方向通信するため、共有経路としての通信経路は可逆性を有する。つまり、共有経路は、接続車両から各一般車両までの通信経路に相当するとともに、各一般車両から接続車両までの通信経路に相当する。共有経路は、1つの側面において転送経路と呼ぶこともできる。共有経路の設定方法の詳細は別途後述する。
【0142】
リソース制御部J7は、車群ごとに、路側機3と車群を構成する各車両との通信スケジュールを設定する。なお、リソース制御部J7は、複数の車群が路側機3と通信しうるシーンにおいては、車群間で干渉が生じないよう車群毎に路車間通信の無線リソースを割り当てる。当該構成によれば、干渉による通信断が発生するおそれを低減できる。また、リソース制御部J7は、無線基地局2における車両との広域通信の無線リソースの割り当て状態も制御する。
【0143】
通知処理部J8は、各車両の中期計画データや、車群編成部J6が生成した車群設定データや、リソース制御部J7が設定した車群ごとの通信スケジュールなどを、対応する路側機3及び各車両に通知する構成である。各種情報は、路側機3を介して配信しても良いし、無線基地局2を介して配信しても良い。車群設定データ等の宛先は、車群を構成するすべての車両であっても良いし、1台だけであってもよい。車群設定データ等の宛先を、対象車群を構成する車両のうちの1台だけとする場合には、車群設定データを受信した車両は、当該車群設定データに示される、車群を構成する他の車両に、車群設定データを転送すればよい。
【0144】
<サーバ5の構成について>
ここでは
図12を用いてサーバ5の構成について説明する。サーバ5は
図12に示すようにサーバ通信装置51、道路データ記憶部52、動的データ記憶部53、及びサーバ制御部54を備える。サーバ制御部54は、サーバ通信装置51、道路データ記憶部52、及び動的データ記憶部53のそれぞれと相互通信可能に接続されている。
【0145】
サーバ通信装置51は、ネットワーク装置4と通信するための設備である。なお、サーバ通信装置51は、ネットワーク装置4を介して無線基地局2や、路側機3、車載器1とデータ通信を実施するための装置と解することもできる。サーバ通信装置51は、例えば光ファイバなどを用いてネットワーク装置4と相互通信可能に構成されている。サーバ通信装置51は、ネットワーク装置4から入力されたデータをサーバ制御部54に出力する。例えばサーバ通信装置51は、ネットワーク装置4からプローブデータや交通状況データなどを出力する。
【0146】
また、サーバ通信装置51はサーバ制御部54から入力されたデータを、当該データの宛先に応じてネットワーク装置4に出力する。例えばサーバ通信装置51は、サーバ制御部54の制御に基づき、或るネットワーク装置4から提供された交通状況データを当該ネットワーク装置4に隣接する別のネットワーク装置4に送信する。また、サーバ通信装置51は、サーバ制御部54の制御に基づき、例えば他のサーバから取得した天気予報情報や、工事計画情報などの少なくとも一部を交通状況補足データとしてネットワーク装置4に出力する。外部サーバから取得して配信する交通状況補足データには、信号機の点灯スケジュール情報や、バスの運行情報、緊急車両の位置情報などを含めることもできる。
【0147】
道路データ記憶部52は、静的地図データとしての高精度地図データが格納されているデータベースである。道路データ記憶部52は、静的地図データベースと呼ぶこともできる。道路データ記憶部52は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されている。道路データ記憶部52は、サーバ制御部54によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。道路データ記憶部52に記憶されている地図データは、例えば複数の車両からアップロードされてくるプローブデータに基づいて更新されうる。
【0148】
動的データ記憶部53は、各地点の交通状況を示すデータである交通状況データが格納されているデータベースである。各地点の交通状況は、動的な地図要素に相当するため、動的データ記憶部53は、動的地図データベースと呼ぶこともできる。動的データ記憶部53は、地点ごとの気象情報や、道路工事情報、交通規制情報、路上障害物情報、渋滞情報、制限速度、信号機情報、目標走行軌道データも保存されうる。
【0149】
動的データ記憶部53もまた、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体を用いて実現されている。動的データ記憶部53は、サーバ制御部54によるデータの書き込み、読出、削除等が実施可能に構成されている。動的データ記憶部53に記憶されている地点ごとの交通状況データは、例えばネットワーク装置4から提供される交通状況データに基づいて更新されうる。
【0150】
サーバ制御部54は、プロセッサ541、RAM542、及びストレージ543を備える、コンピュータを主体として構成されている。プロセッサ541は、RAM542と結合された演算処理のためのハードウェアである。プロセッサ541は、CPU等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。プロセッサ541は、RAM542へのアクセスにより、種々の処理を実行する。ストレージ543は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。ストレージ543には、プロセッサ541によって実行されるプログラムとして、サーバ用プログラムが格納されている。プロセッサ541が上記プログラムを実行することは、サーバ用プログラムに対応する方法である配信データ更新方法を実行することに相当する。なお、サーバ用プログラムは、V2Xアプリケーションと呼ぶことができる。
【0151】
サーバ制御部54は、プロセッサ541がサーバ用プログラムを実行することによって発現される機能部として、
図12に示す種々の機能部を備える。すなわち、サーバ制御部54は機能部として、道路データ管理部K1、交通データ管理部K2、及びトラフィック制御部K3を備える。
【0152】
道路データ管理部K1は、道路データ記憶部52が記憶している地図データを管理する構成である。道路データ管理部K1は、例えば複数の車両からアップロードされてくるプローブデータを統合処理することで得られる統合地図データに基づき、道路データ記憶部52に保存している地図を更新する。なお、道路データ管理部K1は、所定の地図ベンダから提供される地図データに基づいて、道路データ記憶部52に保存している地図を更新してもよい。地図データの更新間隔は、例えば毎日としてもよいし、1週間毎、1ヶ月毎であってもよい。
【0153】
また、道路データ管理部K1は、複数のネットワーク装置4のそれぞれに対し、道路データ記憶部52に保存されている地図データのうち、各ネットワーク装置4に関連するエリアのデータをマップタイル単位で送信する。ネットワーク装置4は、複数の路側機3に対して、受信した地図データのうち、路側機3に対応する範囲のデータを送信する。路側機3は、配信用地図データを路車間通信で各車両に配信する。
【0154】
交通データ管理部K2は、動的データ記憶部53に保存している交通状況データを管理する構成である。交通データ管理部K2は、例えば、ネットワーク装置4から入力される、路側機3で観測された交通状況データをもとに、動的データ記憶部53に保存されているデータを逐次更新する。更新間隔は、例えば1秒や、5秒、30秒などであってもよいし、5分や10分、30分などであっても良い。その他、交通データ管理部K2は、外部サーバから取得した気象情報、例えば雨雲レーダの内容に基づいて、動的データ記憶部53に保存されている地点毎の気象情報を更新してもよい。交通データ管理部K2は、動的データ管理部と呼ぶことができる。
【0155】
トラフィック制御部K3は、車載器1と無線基地局2との通信や、車載器1と路側機3との通信の実施を制御する構成である。例えば、車載器1が広域通信を行った量が所定の閾値以上となった場合には、広域通信の実施を制限する指示信号を送信する。またプローブデータの収集が不要なエリア/期間にある車載器1に対しては、プローブデータの送信を停止させる指示信号を送信する。逆に、プローブデータの収集が必要なエリア/期間にある車載器1に対しては、プローブデータの送信を要求する指示信号を送信する。交通状況データの送信の実施/不実施についても同様にトラフィック制御部K3が、通信量の累積値や、データの収集状況等を鑑みて制御する。その他、トラフィック制御部K3は、路側機3の通信負荷状況を鑑みて、路側機3に送信させるデータ量を制限するなどの処理も実行しうる。
【0156】
<車群編成に係る各装置の相互作用について>
ここでは
図13に示すシーケンス図を用いて、車群の編成、及び、設定された車群情報を用いたデータ配信に係る各装置の作動について説明する。
【0157】
まず、ネットワーク装置4は、所定のタイミングで、路側機3やサーバ5から交通状況を示すデータを取得する(ステップS101)。また、車載器1は随時、長期計画を作成し(ステップS102)、現在位置や走行速度を含む長期計画データをネットワーク装置4に送信する(ステップS102a)。このようなステップS102aは、ネットワーク装置4にとっての車両情報取得ステップに相当する。
【0158】
また、車載器1は、他車両や路側機3との狭域通信の実施状況を示すデータを生成し(ステップS103)、路側機3及びネットワーク装置4に送信する(ステップS103a)。ステップS103aは、ネットワーク装置4にとっての通信状況取得ステップに相当する。なお、車載器1における観測データは、いったん路側機3が取得してネットワーク装置4に送信しても良いし、車載器1が広域通信でネットワーク装置4に送信してもよい。路側機3は、車載器1から報告される、他車両との通信状況や、路側機3自身が観測した車載器1との通信品質などを収集する(ステップS104)。そして、各種通信状況を示すデータセットをネットワーク装置4に随時送信する(ステップS104a)。
【0159】
ネットワーク装置4は随時、ステップS101で取得した交通状況データと、車両ごとの長期計画に基づいて、車両毎の中期計画を作成する(ステップS105)。作成された中期計画は、通知処理部J8によって随時、対応する車両に配信される。中期計画は、広域通信を用いて各車載器1にユニキャスト配信しても良い。ただし、その場合は無線基地局2の負荷が増大するとともに無線リソースが逼迫しうる。そのような事情を鑑みると、車両ごとの中期計画は、いったん路側機3に配信し、路側機3から各車両にユニキャスト配信するように構成されていても良い。なお、車載器1は、ネットワーク装置4が生成した中期計画のデータを受信すると、当該中期計画に基づき短期計画を作成する。
【0160】
このようにネットワーク装置4は、車群の編成処理に先立って、車群を決定するための多様なデータを収集したり、内部で生成したりする。ネットワーク装置4の内部で生成される車群を決定するためのデータとは、例えば、車両ごとの中期計画などである。中期計画には地点毎の目標速度も含まれる。
【0161】
本明細書においては車群を決定するための材料となる種々のデータのことをコンテキストデータとも称する。コンテキストデータには少なくとも車両同士の無線通信品質を示す情報を含む。車両同士の無線通信品質を示す情報とは前述の通り、RSSIやSNR、パケットロス率など、多様な指標の少なくとも一部を含む。また、本実施形態ではより好ましい態様として、コンテキストデータには、車両ごとの、現在位置や走行速度を含む長期的/中期的な制御計画の情報も含まれうる。
【0162】
そして、ネットワーク装置4は、車両ごとの中期的な制御計画と、車両ごとの他車両との通信状況とに基づいて、車群を編成する(ステップS106)。車群の編成処理は、孤立車両Maの数を抑制可能なように、あるいは路車群通信時間の不足が生じないように、ステップS105での中期計画処理と合わせて所定回数あるいは孤立車両Maの数が所定値以下となるまで繰り返し実施されうる。
【0163】
なお、孤立車両Maの存在や、受信必要時間に対する路車群通信時間の不足が許容できる場合には、ステップS105~S106を反復的に実施する必要はない。また、車群を編成してから、当該車群が維持できるように個々の車両の中期計画を作成してもよい。つまり、ステップS105とステップS106の実行順序は入れ替えても良い。
【0164】
また、ネットワーク装置4は、車群の編成に伴って、車群内を構成する各車両を始端(換言すれば根ノード)とする共有経路を設定するとともに、各車両と路側機3との通信スケジュールを作成する(ステップS106x)。ステップS106xは供給経路設定ステップに相当する。
【0165】
ネットワーク装置4は、車群の編成が完了すると、路側機3に対して、当該路側機3の通信エリアを通過予定の車群に関する設定情報を配信する(ステップS106a)。また、ネットワーク装置4は、各車両に対しても車群設定を示すデータセットである車群設定データを配信する(ステップS106b)。ステップS106bは車群設定配信ステップに相当する。
【0166】
車群設定データは、中期計画と同様に、広域通信で各車両にユニキャスト配信されても良いし、路側機3を経由して各車両に配信されても良い。ただし、車群の先頭車両が路側機3の通信エリアに入った時点から、車群単位での路側機3とのデータ通信を実施するためには、車群の先頭車両が路側機3の通信エリアに進入する前に各車両が車群情報を取得できていることが好ましい。故に、ここでは一例として、車群設定データは、広域通信で各車両にユニキャスト配信されるものとする。車載器1は車群設定データを受信すると、自身が保持する車群設定に係るデータを更新する(ステップS108)。
【0167】
車群設定データは、例えば
図14に示すように、車群IDと、構成メンバデータと、時間帯毎の共有経路の設定を示すデータと、を含む。車群IDは、車群を別の車群と区別するための識別子であって、ネットワーク装置4によって車群ごとに設定されうる。構成メンバデータは、同一車群に属する車両IDのリストデータである。なお、通信上のアドレス情報を車両IDの代わりに識別情報として使用しても良い。
【0168】
共有経路は、別途後述するように各時点での接続車両を始点(根)とするツリー型で形成されうる。共有経路データは、時間帯毎の入力元と転送先を示すテーブルデータなどで表現されうる。ここでの時間帯は、接続車両が入れ替わる時刻で定義される。時間帯ごとの共有経路データは、各タイムスロット(各時刻)での接続車両を示すデータを含む。つまり、車群設定データは、各時刻での接続車両の設定を示す。複数の車両が接続車両に設定される時間帯が設けられても良い。なお、
図14では車両A~Dを構成メンバとする車群についての、時刻t1~t6までの共有経路を示すデータを示している。
【0169】
車群設定データには、車群が有効な期間、換言すれば、車群の設定が維持される期間を示すデータが含まれていても良い。また、車車間通信の相手と、周辺監視センサ7(例えばカメラ)での認識結果との対応付けを容易とするために、構成メンバ毎の外観特徴や位置情報を示すデータを含んでいても良い。外観特徴とは、例えば車種や、色、大きさを指す。なお、無線基地局2等の処理負荷低減や、無線リソース使用率低減のために、車群設定データは、10~100キロバイト以下に設定されることが好ましい。例えば外観特徴を示す情報は、記号化されるなどして、データサイズが圧縮されていることが好ましい。
【0170】
その後、ネットワーク装置4は、車両ごとの制御計画に応じて定まる路側機3との通信状況の予測結果に基づいて通信スケジュールを作成する(ステップS109)。なお、別途後述するように、通信スケジュールの作成には各タイムスロットにおける接続車両を設定する工程が含まれる。故に、ステップS109は接続車両設定ステップと呼ぶことができる。そして、各車群が通過予定の路側機3及び各車両に送信する。
【0171】
路側機3は、ネットワーク装置4から受領した通信スケジュールデータに基づき、指示された狭域通信の無線リソースを用いて、順次、各接続車両にセグメントデータを配信する(ステップS110)。各車載器1は、路側機3から配信されたセグメントデータを、車群設定データに含まれる共有経路に従って転送及び共有する(ステップS111)。ステップS111は車群内共有ステップと呼ぶことができる。各車載器1は、一連のセグメントデータの共有が完了すると、それらを結合して元データを復元する。
【0172】
<静的地図データの配信に係る相互作用>
ここでは
図15を用いて、道路構造を示す高精度地図データ、換言すれば、静的地図データの配信処理にかかる各装置の作動について説明する。
【0173】
サーバ5は、任意のタイミングで地図ベンダから提供される情報や、道路管理会社から提供される情報、車両からアップロードされるプローブデータなどに基づいて、地図データを更新する(ステップS201)。例えばサーバ5は、毎日、AM1時など、所定のタイミングで道路データ記憶部52に保存されている静的地図データの更新処理を行う。サーバ5は静的地図データの更新を行うと、更新された地図データをネットワーク装置4に送信する。送信データは、全データでも良いし、差分データでもよい。
【0174】
ネットワーク装置4は、サーバ5から提供された地図データに基づいて、自身が保持する地図データを更新する(ステップS202)。また、ネットワーク装置4は、複数の路側機3のそれぞれに対して、更新された地図データを配信する。
【0175】
路側機3は、ネットワーク装置4から提供された地図データに基づいて、自身が保持する地図データを更新する(ステップS203)。路側機3は、例えば自身が配信すべきマップタイル毎の地図データをさらにセグメント化して、車両への配信に備える。なお、静的地図データのセグメント化自体は、ネットワーク装置4やサーバ5が実施しても良い。
【0176】
ネットワーク装置4は、ステップS109として述べたように、車群毎及び車両毎の通信スケジュールを作成し、路側機3に通知する(ステップS204)。なお、ここでは一例として、ネットワーク装置4が通信スケジュールを作成するものとするが、これに限らない。路側機3やサーバ5がネットワーク装置4から通知される車群設定データに基づいて、車両毎の通信スケジュールを作成しても良い。
【0177】
路側機3は、ネットワーク装置4から受領した通信スケジュールデータに基づき、指示された狭域通信の無線リソースを用いて、順次、各接続車両にセグメント化された静的地図データを配信する(ステップS205)。各車載器1は、路側機3から配信されたセグメント化された地図データを、車群設定データに含まれる共有経路に従って転送及び共有する(ステップS206)。各車載器1は、一連のセグメントデータの共有が完了すると、それらを結合して元データとしての静的地図データを復元し、自身が保持する地図データを更新する(ステップS207)。
【0178】
<動的地図データの配信に係る相互作用>
ここでは
図16を用いて動的地図データの生成~配信にかかる各装置の作動について説明する。
【0179】
路側機3は、随時、交通状況の観測結果を示すデータをネットワーク装置4に送信し(ステップS301)する。ネットワーク装置4は、各路側機3から報告される交通状況データを集約してサーバ5に送信する(ステップS302)。サーバ5は、ネットワーク装置4から提供される交通状況データに基づいて動的データ記憶部53の登録内容を更新し、更新結果を示すデータをネットワーク装置4に送信する(ステップS303)。車載器1は、所定のタイミングで長期計画データをネットワーク装置4に送信する(ステップS304)。
【0180】
ネットワーク装置4は、各地点の交通状況の予測に先立って、交通状況を予測するための多様なデータを路側機3などの各デバイスから収集したり、内部で生成したりする。そして、各装置から提供されたデータをもとにネットワーク装置4は、各地点における所定時間後の交通状況を予測する(ステップS305)。例えば或る対象地点の交通状況は、当該地点よりも所定距離手前側の地点の交通量や、交差点の信号機の点灯状態に基づいて推定する。ここでの手前側とは進行方向逆側を指す。ネットワーク装置4は、交通状況の予測結果に基づいて、動的地図データを生成する(ステップS306)。動的地図データもまた、マップタイルのように所定の道路区間毎に分割した態様で生成されても良い。動的地図データには、有効期限などが設定されていても良い。また、ネットワーク装置4は、各車両の制御計画に基づいて、車群毎及び車両毎の通信スケジュールを作成し、路側機3に通知する(ステップS307)。
【0181】
路側機3は、ネットワーク装置4から受領した通信スケジュールデータに基づき、指示された狭域通信の無線リソースを用いて、順次、各接続車両にセグメント化された動的地図データを配信する(ステップS308)。各車載器1は、路側機3から配信されたセグメント化された動的地図データを、車群設定データに含まれる共有経路に従って転送及び共有する(ステップS309)。各車載器1は、一連のセグメントデータの共有が完了すると、それらを結合して元データとしての動的地図データを復元し、当該動的地図データに基づいて短期的な制御計画を適宜修正する(ステップS310)。
【0182】
<接続車両の選定方法及び車群内のデータ共有経路について>
ここでは
図17、
図18及び
図19を用いて、車群内のデータ共有経路の設定手順の一例について説明する。ここでは一例として車両A~Fを含む車群GrXのデータ共有経路を設定する場合について説明する。なお、
図17に示すように車両Aが車群GrXの先頭車両であり、車両Fが末尾車両に相当する。
図17では2車線道路を示しているが、もちろん、道路の車線数は1でもよいし、3以上でも良い。路側機3は第1レーン側に路肩等に配置されている。つまり、ここでは第1レーンが最も路側機3に近いレーンである、最寄りレーンに相当する。なお、路側機3は、道路の真上に配置されていても良い。ここでは一例としてシステムが右側通行の地域で使用される場合を想定して、進行方向右端のレーンを第1レーンと呼ぶが、これに限らない。他の態様として進行方向左端のレーンを第1レーンとしてもよい。
【0183】
図18は
図17に示す車群構成における路側機3と各車両とのRSSIの推移を概念的に示したものである。
図18におけるRa~Rfは順に、路側機3で観測される車両A~Fからの信号のRSSIの推移を表している。例えばRbは車両Bからの信号のRSSIの経時変化を示している。基本的に車両が路側機3に近づくにつれてRSSIは増加するとともに、路側機3から離れるにつれてRSSIは減少する。また、路側機3との距離が近い第1レーンを走行している車両のほうが、第2レーンを走行している車両よりも、RSSIのピークが高くなりやすい。加えて、路側機3との間に他のレーンが介在しない第1レーンを走行中の車両からの信号は、他車両で遮られたり、マルチパスの影響を受けたりする恐れが小さい。つまり、第2レーンを走行している車両よりも第1レーンを走行している車両のほうが路側機3との通信品質が良好となることが期待できる。
【0184】
そのような傾向に着眼し、本実施形態の接続車両設定部J62は一例として、第1レーンを走行している車両A~Cを順番に接続車両に設定する。例えば車群編成部J6は、第1レーンを走行しており、かつ、RSSIが所定の接続閾値Pth以上となる車両を接続車両に設定する。もちろん、RSSIが所定の接続閾値Pth以上となる状態は一時的なものであるため、車群内において接続車両は動的に切り替えられる。例えば車両Aを接続車両に設定する期間は、RSSIが所定の接続閾値Pth以上となる時刻t1~t3までとする。また、時刻t2~t5の間は車両Bを接続車両に設定する。さらに時刻t4~t6の間は車両Cを接続車両に設定する。このように接続車両設定部J62は、各車両の制御計画と路側機3の設置位置に基づいて、RSSIが接続閾値Pth以上となる時刻を推定し、当該推定結果に基づいて車群内における接続車両を切り替えるタイミングを決定しうる。
【0185】
接続閾値Pthは、安定して路車間通信が実施できる程度の値に設定されていればよく、路車間通信の規格で規定される送信電力の標準値に応じて変更されうる。接続閾値Pthは、例えばパケット到達率の期待値が95%以上となるような値に設定されれば良い。接続閾値Pthは、送信電力の既定値にもよるが、例えば-55dBm、-40dBm、-30dBmなどとすることができる。
【0186】
RSSIが接続閾値Pth以上となる時間の長さは、車両が安定して路側機3と狭域通信可能な時間である個別通信可能時間に相当する。RSSIが接続閾値Pth以上となる時間の長さ、すなわち個別通信可能時間は、路側機3が送信した信号がRSSI以上で受信可能な距離範囲と、車両の走行速度と基づいて定まる。路側機3が送信した信号がRSSI以上で受信可能な距離範囲は、路側機3の送信電力や車両での受信感度に応じて定まる。また、それに伴い、個別通信可能時間が開始する時刻及び終了時刻は、路側機3の通信エリアに対する車両の位置と走行速度の制御計画とから算出されうる。上記構成は、路側機3に対する車両ごとのRSSIの推移の予測値に基づいて各時点の接続車両を選定する構成に相当する。なお、RSSIは路側機3に対する車両の相対位置によって定まる。そのため、上記構成は別の観点によれば、車両毎の制御計画によって定まる、路側機3に対する車両ごとの相対位置の予測値に基づいて各時点の接続車両を選定する構成に相当する。なお、個別通信可能時間は、RSSIによらずに、単純に、車両が路側機3と狭域通信可能な時間、つまり、路側機3の通信エリア内に車両が滞在する時間であってもよい。
【0187】
図18に示す例においては、時刻t2~t3の間は車両Aと車両Bの2つが接続車両として並列的に存在しうる。また、時刻t4~t5の間は車両Bと車両Cの2つが接続車両として並列的に存在しうる。そのように複数の接続車両が存在する期間においては、路側機3は各車両に対してそれぞれとデータ通信を行う。また、一般車両は、2つの接続車両のうち、共有経路上、近い方の接続車両を介してサーバ5等とデータ通信を実施する。もちろん接続車両は常に1台となるように、接続車両の切り替えは計画されても良い。上記接続車両設定部J62は、1つの側面において接続車両の切替スケジュールを車両ごとの制御計画に基づき作成する構成に相当する。
【0188】
以上の接続車両の設定規則は一例であって適宜変更可能である。例えば、第2レーンを走行している車両D~Fの中から接続車両を設定しても良い。例えば車両Dや車両Eが接続車両となる時間帯が設定されても良い。接続車両は、RSSIだけでなく、SNRやパケットロス率、周囲に大型車両などの電波上の障害物の有無などを考慮して決定されても良い。
【0189】
図19は、車両A~Cのそれぞれを接続車両とする場合の共有経路の設定態様の一例を示すものである。車群編成部J6は、接続車両を根ノードとする通信経路を作成する。根ノードとしての接続車両が直接的にデータ通信する一般車両は、接続車両との通信品質が高いものから優先的に選択される。通信品質は前述の通り、例えばRSSIで評価されうる。例えば、根ノードとしての接続車両が直接的にデータ通信する一般車両は、一般車両のうち、接続車両が送信する信号のRSSIの大きさが1番大きい車両と、2番目に大きい車両(つまり上位2台)とする。根ノードとしての接続車両が直接的にデータ通信する一般車両は、深さが1のノードに相当する。
【0190】
深さが1の階層に位置する一般車両の転送先は、まだツリーの構成要素に選択されていない一般車両のうち、当該ノードとの通信品質が良好な上位2つが選定される。深さが2、3の位置にする一般車両の転送先も同様に選定される。
【0191】
具体的には、車両Aが接続車両である場合には、車両Aの通信相手としては、車両Aとの通信品質に基づき例えば車両BとDが設定される。そして、車両Bは車両Cと、車両Cは車両Fと、車両Dは車両Eと直接的にデータ通信を実施するように経路が設定される。これにより、車両Aが路側機3から受け取ったデータは、車両BとDに転送されるとともに、当該データは車両B→C→F及び車両D→Eの系統毎に順に転送及び共有される。なお、車両Aから車両B、Dへの転送は、例えば異なる周波数スロットを割り当てることにより、同じタイムスロットで(つまり同時に)に実施されうる。また、各ノードは単に転送するだけでなく、宛先が他車両に限定されていない場合には、自車両宛のデータとして受信する処理も合わせて実行する。車両同士及び路車間のデータ通信はユニキャストで実施される。受信側は、データを正常に受信できた場合には、送信側に対して正常に受信できたことを示す信号である受信成功応答(いわゆるAck)を返送する。また、受信失敗した場合には再送要求などの制御信号をやり取りする。
【0192】
なお、ここでは一例として各ノードから伸びる枝の数は2以下となるように設定されている。或るノードから伸びる枝の数は、受信データの転送先とする車両の台数に相当する。ところで、或る車両が他車両で囲まれている場合であっても、前後左右及び斜め方向に存在する8台の車両とは、直接的に通信できることが期待できる。つまり、見通し内に存在する他車両の最大値としては8台程度が想定される。見通し内に存在する車両とは通信品質が担保されることが期待できる。そのような事情を踏まえ、根ノードから伸びる枝の数は8つまで許容されていても良い。なお、共有経路として、各車両が受信データを転送する車両の数は走行路の車線数に応じた値に設定されても良い。車群編成部J6は、車群を構成する車両同士の通信品質に基づいて、ツリーの深さ(高さ)が5以下となるように、換言すれば5ホップ以内でデータが末端まで行き渡るように共有経路を作成する。共有経路はルーティングテーブルなどの形式で表現されている。
【0193】
ところで、車両Cは、車群内部の後方に位置するため、路側機3と車両Cとの間でセグメントデータの受信失敗が生じると、車群として狭域通信で当該欠損データを取得する術がなくなってしまう。当該事情を踏まえると、セグメントデータの配信スケジュールの策定に際し、複数の接続車両に対して均等にトラフィックを割り振るのではなく、車群内の位置に応じて、割り当てるトラフィックのサイズ(換言すれば重み)や種別を変更しても良い。例えば車群の前半に位置する接続車両には、車群の後半に位置する車両よりも多くのデータを配信するように通信スケジュールを作成しても良い。また、例えば車群の後半に位置する接続車両には、車群の前半に位置する車両よりも重要性の低いトラフィック、換言すれば、欠損が許容されるトラフィックを配信するように通信スケジュールを作成しても良い。
【0194】
より具体的には、
図17等に示す車群GrXに10個のセグメントデータを配信する場合には、車両Aには第1~第4セグメントを、車両Bには第5~第8セグメントを、車両Cには第9~第10セグメントを配信する計画を作成しても良い。そのように後半での配信データサイズを前半に比べて小さくすることで再送制御等を行う時間的余裕を確保しやすくなる。その結果として、データの取りこぼしが生じうる恐れを低減できる。
【0195】
なお、車群毎の共有経路は、車群の構成メンバが変わったタイミングで更新される。他の態様としては、路側機3ごとに共有経路を変更しても良い。ただし、路側機3ごとに共有経路を設定すると、共有経路の作成、配信及び受信に伴う処理が煩雑となりうる。故に、路側機3ごとに共有経路を変更するよりも、車群の構成メンバが変更した場合に修正されることが好ましい。
【0196】
なお、共有経路としては、車群を構成する複数の車両のそれぞれを根ノードとするパターンのツリーが準備される。具体的には、上記の例では車両Dや、車両E、車両Fのそれぞれを根ノードとする共有経路が作成されていても良い。路側機3の位置によっては、車両D、E、Fが優先的に接続車両に設定されるパターンもあり得るためである。車両ごとの共有経路は予め設定されている一方で、実際に接続車両として何れの車両を選定するかは、路側機3ごとに動的に変更されても良い。例えば接続車両として使用する車両の組み合わせは、路側機3が道路の左側に設定されているか右側に設置されているかに応じて適宜選択されても良い。
【0197】
なお、共有経路は路側機3からのデータを受信する時だけでなく、一般車両がサーバ5等とデータ通信を実施する場合にも適用されうる。例えば車両Aが接続車両である時間帯において車両Cがサーバ5とデータ通信を実施したい場合、車両Cはまずサーバ5宛の通信パケットをユニキャストで車両Bに送信する。車両Bは車両Cから受信した通信パケットがサーバ5宛である場合には、共有経路としてのルーティングテーブルに従い、車両Aに転送する。車両Aは、車両Bから受信した通信パケットがサーバ5宛である場合には、路側機3に転送し、路側機3がサーバ5に送信する。このように共有経路は、路側機3から車両への下り通信だけでなく、車両から路側機3、サーバ5、ネットワーク装置4への上り通信にも適用されうる。
【0198】
<車群内におけるリソース割り当て方法について>
ここではネットワーク装置4が接続車両と路側機3とのデータ通信に使用される無線リソースの割り当て態様の一例について説明する。ここでは一例として、前述の
図17に示す車群構成を前提として、車両A~Cに対して経時的に無線リソースを割り当てる場合を例にとって説明する。
【0199】
なお、ネットワーク装置4は
図20に示すように、無線リソースの割り当て(ステップS409)を行うための準備処理として、ステップS401~S408を実行する。
図20のフローチャートに示す一連の処理は、リソース割当関連処理と呼ぶことができる。リソース割当関連処理が備えるステップ数や処理順序は適宜変更可能である。例えば
図20に示すフローチャートは、利用可能な周波数の組み合わせを確認するステップや、要求されるQoSが異なるトラフィック別に割り当てを行うループ処理を含んでいても良い。
【0200】
ネットワーク装置4はステップS401として、処理の対象とする車群に送信すべきトラフィックの量を取得する。ステップS401はデータサイズ取得ステップに相当する。ステップS401は、リソース制御部J7とデータサイズ取得部J41との協働により実施される。なお、ここでは一例として路側機3から車両への下り通信のリソース割り当てを行う場合を例示するが、車両から路側機3への上り通信時も同様に実施可能である。上り通信のトラフィック量に相当する、各車両の送信用バッファに滞留しているトラフィックの量は、例えばバッファステータスレポート(BSR:Buffer Status Report)などを用いて取得可能である。なお、通常のLTEにおいてBSRは無線基地局2に送信される。各車両は、LTEのBSR相当の制御信号を、無線基地局2又は路側機3を介してネットワーク装置4に送信するように構成されていてもよい。
【0201】
路側機3が各車群に送信するトラフィックとは、例えば静的地図データのセグメントデータ群や、動的地図データのセグメントデータ群である。もちろん、トラフィックの種別はこれに限定されず、例えば路側カメラが取得している監視対象エリアの映像信号や、音声信号なども含みうる。トラフィックの種別としては、映像、音声、静止画、その他に大別されうる。トラフィックの種別に応じて要求されるQoSは異なりうる。トラフィック毎のQoSはアプリケーション等によって決定されうる。
【0202】
ステップS402では、トラフィックが複数種類存在する場合、QoSに応じて送信の優先順位を決定する。例えば許容遅延時間が短いものから優先的に送信されるように、トラフィックをソートする。なお、トラフィックが1種類しかない場合などは、ステップS402は省略されうる。ステップS402は任意の要素である。
【0203】
ステップS403では、車群速度取得部J63がストレージ433に保存されている路側機3の設置位置情報を参照し、対象車群が次に通過する路側機3の通信エリアを示すデータを取得する。ステップS404では車群速度取得部J63が、対象車群に属する車両毎の制御計画に基づき、次に通過予定の路側機3の通信エリアを通過する際の、車群としての移動速度を取得する。車群としての移動速度は、先頭車両の走行速度であっても良いし、車群を構成する全車両の速度の平均値であっても良い。また、先頭車両と末尾車両の走行速度の平均値であっても良い。ステップS404は車群速度取得部ステップと呼ぶことができる。ステップS404が完了するとステップS405に移る。
【0204】
ステップS405では接続車両毎の走行レーンと走行速度、路側機3の通信エリア、路車間通信品質などの情報をもとに、個別通信可能時間の開始時刻、終了時刻、及びその長さを算出する。
【0205】
ステップS406では、ステップS405での算出結果をもとに、路車群通信可能時間として、車両Aが路側機3と通信可能となってから車両Cが通信不能となるまでの時間を算出する。なお、ここでは一例として、車群を構成し、かつ、最寄りレーンを走行している車両のなかで先頭に位置する車両を実質的な先頭車両とし、車両Cを実質的な末尾車両として取り扱うものとする。換言すれば、路車群通信可能時間は、車群を構成する車両のうち、最寄りレーンの先頭に位置する車両が路側機3と通信可能となる時点から、最寄りレーンの末尾に位置する車両が路側機3と通信不能となる時点までの時間とする。
【0206】
なお、他の態様としては、路車群通信可能時間は、走行レーンに依らずに、車群の先頭車両が路側機3と通信可能となる時点から、車群の末尾車両が路側機3と通信不能となる時点までの時間であってもよい。具体的には、車群全体の真の末尾に位置する車両Fが路側機3の通信エリアを出る時刻が路車群通信可能時間の終了時刻と見なしても良い。当該構成によれば、相対的に路車群通信時間を長くすることができる。
【0207】
ステップS407では、上記ステップで推定した路車群通信可能時間が、ステップS401で取得したトラフィック量に対して充分であるか否かを判定する。路車群通信可能時間が送信するべきトラフィック量に対して充分であるか否かを判定することは、路車群通信可能時間で送信/受信可能なデータ量である車群通信容量が、送信/受信するべきトラフィック量を上回っているか否かを判定することに相当する。車群通信容量は、路車群通信可能時間が含むタイムスロットの数と、各タイムスロットにおいて使用可能な周波数リソースの数に応じて定まる。換言すれば、路車群通信可能時間で使用可能なリソースブロックの総数に応じて定まる。車群通信容量の算出方法については別途後述する。
【0208】
路車群通信可能時間が送信すべきトラフィック量に対して不十分である場合にはステップS407を否定判定してステップS408に移り、車群長調整処理を実行する。一方、路車群通信可能時間が送信すべきトラフィック量に対して充分である場合にはステップS407を肯定判定してステップS409に移る。
【0209】
ステップS408の車群長調整処理は、
図21に示すようにステップS501~S505を含む。ステップS501では対象車群の周辺に、対象車群に編入できそうな車両が存在するかどうかを判断する。対象車群に編入できそうな車両とは、例えば対象車群に属する車両のうちの少なくとも1つとの車車間通信の通信品質が所定の編入条件を充足している車両とすることができる。
【0210】
編入条件としては、例えば双方向又は片方向の通信のRSSIが、所定の編入閾値以上であることを採用できる。もちろん、編入条件は、車群から一定距離以内の車両であることを含めても良い。編入閾値は、グルーピング強度と同じか、それよりも所定量小さく設定されうる。ステップS501~S502の処理は、車群通信容量が不足する場合に行われる、車群の長さを伸ばすための臨時的な処理のため、編入閾値はグルーピング強度よりも、例えば5dBm程度小さい値に設定されている。当該設定によれば通常は別の車群に編入される車両を対象車群に含めることができる。編入条件は、車群の規模を拡張可能なように、グルーピング条件よりも、充足しやすく(つまり緩く)設定されている。
【0211】
処理対象の車群の周辺に編入条件を充足する車両が存在する場合には、当該車両を対象車群に編入させる。例えば
図22に示すように、対象車群GrXの後方に、対象車群GrXの末尾車両F、又は、準末尾に位置する車両Cからの信号のRSSIが編入閾値以上となっている車両Gが存在する場合、車群編成部J6は当該車両Gを対象車群GrXに追加する。なお、車両Gが別の車群GrZのメンバである場合、車両Gは車群GrZから離脱させても良いし、両方の車群に所属させても良い。つまり、もともと属していた車群GrZへの所属は維持してもいい。このように車群編成部J6は、1つの車両が一時的に複数の車群に属するように車群設定可能に構成されている。なお、ここでは車群の末尾に新たな車両を追加する態様を説明したが、新規車両を編入する位置は、車群の先頭でもよい。つまり、対象車群の前方に位置する車両を編入させても良い。ステップS502での車群の再編成処理が完了するとステップS404に戻る。
【0212】
ステップS501において、処理対象の車群の周辺に編入条件を充足する車両が存在しない場合には、ステップS501を否定判定してステップS503に移る。ステップS503では、対象車群の車間距離を所定距離、増大可能であるか否かを車両同士の通信品質の観点から判断する。例えば車間距離を現状伸ばすとRSSIが所定の許容下限値を下回る組み合わせが車両の組み合わせが存在する場合には、車間距離は増大不能と判定する。一方、各車両の前後方向における車間距離を一定量増大させても構成メンバ間の通信品質が維持される場合には、ステップS503を肯定判定してステップS504に移る。
【0213】
ステップS504では計画修正部J61が、車間距離を所定量増大させるように、車群を構成する各車両の制御計画を修正する。なお、車群の長さを伸ばすといった観点においては、先頭車両の速度は変更する必要はない。ステップS504で制御計画の修正する車両は、車群の先頭から2番目以降の車両となる。
【0214】
個々の車間距離の調整量は、例えば1mや、3m、5mなどの一定値であってもよい。車群全体としての長さが伸びればよいため、車間距離の調整量は、車両ごとに異なっていても良い。また、車間距離の調整量は、車群通信容量の不足分に応じた長さに動的に設定されても良い。例えば車群通信容量の不足分が、タイムスロット2つ分である場合には、タイムスロット2つ分の通信時間が確保されるように車群の長さが伸びればよい。その場合、個々の車間距離の調整量としては、タイムスロット2つ分の時間に車群の走行速度を乗じて定まる長さである必要延長量を、構成メンバの数から1を引いた数で除算した値となりうる。なお、最寄りレーンを走行している車両のみを接続車両として用いる構成においては、必要延長量を、最寄りレーンを走行している車両の数から1を引いた数で除算した値が、最寄りレーンを走行している車両の車間距離の調整量となる。最寄りレーン以外を走行している車両もまた、最寄りレーンを走行している車両との位置関係を維持するため、先行車との車間距離を同程度増大させればよい。ステップS504での制御計画の修正処理が完了するとステップS404に戻る。ステップS501~S504を含むステップS408は車群長調整ステップと呼ぶことができる。
【0215】
ステップS505では車群全体の走行速度を所定量抑制するように対象車両を構成する全車両の速度制御計画を修正する。車速の抑制量は、例えば1km/hや2km/h、4km/hなどとすることができる。なお、車群編成処理は、
図20のステップS407で路車群通信時間が十分であると判定されるまで繰り返し実施されうる。故に、最終的な走行速度の抑制量は、6km/hや8km/h等となりうる。
【0216】
ただし、走行速度の抑制は、ユーザの利便性の低下に繋がりうるため、抑制量の累積値が所定の上限値以上となる場合には、当該車速の抑制量は当該上限値に設定し、データサイズ調整部J42がトラフィック量を削減する調整処理を実行しても良い。データサイズ調整部J42によるトラフィック量の削減は、予め設定された重要度に基づき、重要度が低いデータを削除することで実現しても良い。換言すれば、データサイズ調整部J42は、車群長調整処理を実施してもトラフィック量に対して車群通信容量が不足する場合には、配信データを走行制御上、重要な情報に絞っても良い。走行制御上重要な情報とは、車群を構成する車両と衝突の可能性が所定の閾値以上である物体や、一時停止線の位置、信号機の点灯状態などである。重要度が相対的に低い情報とは、車両との衝突の可能性が低い物体についての情報などである。
【0217】
車両と他の物体との衝突の可能性を評価する方法としては、例えばそれぞれの移動方向と移動速度、加速度をもとに衝突余裕時間を算出する方法など、多様な方法を採用可能であるため、ここでは詳細な説明は省略する。また、データサイズの削減は、映像/画像データの解像度を落とすことで実現されても良い。ステップS505での処理が完了するとステップS404に戻る。
【0218】
ステップS409では車群を構成する車両毎のリソースブロックの割り当てを計画する。
図23~
図24は、車両A~Cを時刻t1~t6まで順に/一時的に並列的に接続車両として採用する場合の割り当て態様を一例として示している。
図23は各時刻、換言すれば、各タイムスロットにおける接続車両を概念的に示したものであり、
図24は
図23に示す概略的な通信スケジュールに基づく、具体的なリソースブロックの割り当て態様の一例を示したものである。無線リソースは、
図24に示すように時間と周波数の概念で分割して制御される。つまり、リソースブロック単位で制御される。
図24に示す個々の枠がリソースブロックを示している。ここでは一例として周波数リソースとして、第1周波数f1~第6周波数f6までの6つの周波数を利用可能に構成されている。
【0219】
図24において斜め線パターンのハッチングを施しているリソースブロックは、車両Aとの通信用のリソースブロックを表しており、横破線パターンのハッチングを施しているリソースブロックは、車両Bとの通信用のリソースブロックを表している。ドットパターンのハッチングを施しているリソースブロックは、車両Cとの通信用のリソースブロックを表している。
図24に示すように接続車両が車両Aのみであるタイムスロット(図中#1~#3)においては車両Aに対して全周波数を割り当てる。一方、車両Aと車両Bとが接続車両として振る舞うタイムスロット(図中#4~5)においては、車両Aと車両Bとで周波数を分けて使用する。例えば第4タイムスロットにおいては車両Aには第1周波数f1と第2周波数f2とを割り当てる一方、車両Bには第3周波数f3~第6周波数f6を割り当てる。同様に、接続車両が車両Bのみである期間や車両Cのみである期間においては車両Bや車両Cに対して全周波数を割り当てる。一方、車両Bと車両Cとが接続車両として振る舞うタイムスロット(図中#8~9)においては、車両Bと車両Cとで周波数を分けて使用する。なお、ここでの全周波数とは、車群が利用可能な周波数であって、必ずしも狭域通信で使用される全周波数を指すわけではない。複数の車群が同一の路側機3にアクセスする場合、複数の車群のそれぞれで周波数は分け合う形となる。また、車車間通信と路車間通信とが同じ通信方式で実施される場合、路車間通信と車車間通信とでリソースブロックは分け合う形となる。
【0220】
図24に示すように、無線リソースの割当結果は、タイムスロット毎の車両毎の割当周波数を含む。なお、各車両に割り当てるリソースブロックの数は、各車両に送信予定のトラフィック量よりも大きく設定されることが好ましい。仮に車両Aには
図7に示す第1セグメントを配信予定である場合には、少なくとも第1セグメントを送信可能な数だけ、リソースブロックが割り当てられる。また、車両Bには
図7に示す第2セグメントを配信予定である場合には、少なくとも第2セグメントを送信可能な数だけ、リソースブロックが割り当てられる。車両Cにも同様に車両C向けの送信データを収容可能なようにリソースブロックが割り当てられる。
【0221】
なお、1つのリソースブロックが収容可能なデータ量は周波数に応じて異なりうる。また、タイムスロットが異なれば、路側機3と車両との距離も異なるため、同一周波数であってもタイムスロットによって1つのリソースブロックが収容可能なデータ量は異なりうる。加えて、車両ごとに受信処理速度などの通信性能が異なる場合には、車両ごとに1つのリソースブロックで伝送可能なデータサイズは異なりうる。
【0222】
無線リソースの割当は、そのような周波数ごと、タイムスロット毎、車両毎の特性に基づいて、個々のリソースブロックで伝送可能なデータ量を推定し、リソースブロックの割当態様を決定するものとする。なお、車両毎のリソース割当は、個々のリソースブロックの容量の概算値を用いて実施されても良い。個々のリソースブロックの容量の概算値は、周波数ごとに予め登録された値であってもよいし、路側機3からの距離に応じた過去の実績値から算出されても良い。通信容量の算出方法については別途後述する。
【0223】
ネットワーク装置4は、各車両への無線リソースの割当処理が完了すると、当該割当結果を含む通信スケジュールを路側機3に通知する(ステップS410)。また、車群長調整処理に伴って、車群の編成を変更している場合には、更新された車群設定データを関係車両に配信する。車群長調整処理に伴って各車両の制御計画を変更した場合には、更新された制御計画を関係車両に配信する。ここでの関係車両とは、更新された車群設定や制御計画に係るデータを使用する車両を指す。
【0224】
<個別通信容量及び車群通信容量の算出方法について>
ここでは各種パラメータを用いて、個別通信容量及び車群通信容量の算出方法の一例について説明する。なお、車群通信容量は、車群編成部J6が算出しても良いし、リソース制御部J7が算出しても良い。通信容量の算出にかかる機能配置は適宜変更可能である。以降で述べるα(M)は或る搭載車両Mに対して割り当てられるタイムスロットの集合を指す。β(M,τ)は或るタイムスロットτにおいて、或る搭載車両Mに対して割り当てられる周波数の集合を指す。また、r(M,τ,f)は、或るタイムスロットτにおいて搭載車両Mが或る周波数fを用いる場合の通信レート(bps)を指す。Δτはタイムスロット1つ当たりの時間の長さを示す。
【0225】
或る車両が路側機3と通信可能な容量である個別通信容量C(M)は、上記のパラメータを用いると、下記式(1)で表現される。
【0226】
【数1】
なお、
図24に示す例においては、第4タイムスロットにおける車両Aが利用可能な周波数の集合βは{f1、f2}であり、第5タイムスロットにおける車両Aが利用可能な周波数の集合βは{f1}である。また、第4タイムスロットにおける車両Bが利用可能な周波数の集合βは{f3、f4、f5、f6}であり、第5タイムスロットにおける車両Aが利用可能な周波数の集合βは{f2、f3、f4、f5、f6}となる。
【0227】
また、α(M)が備えるタイムスロットの数Nτは、路側機3の通信エリアの道路延設方向における距離をφ、当該通信エリア内の車両の平均的な走行速度をv(M)とすると、次の式(2)で表現されうる。φが一定であるため、式(2)で示すように車速が小さいほど集合α(M)の要素数、すなわちタイムスロットの数Nτは増える。そのため、他車両との周波数を分け合う場合を無視すれば、基本的に通信容量は増大しうる。
【0228】
【数2】
また、車群通信容量Cgrは、1つの側面において車群を構成する各車両での個別通信容量C(M)の合算値と解する事ができる。そのため、車群通信容量Cgrは、車群を構成する車両の集合である車群集合μを用いて次の式(3)で表現可能である。なお、車両M1~M6を構成メンバとして備える車群Grの車群集合μは{M1,M2,M3,M4,M5,M6}として表現される。
【0229】
【数3】
なお、車速を抑制すれば車群全体として使用可能なタイムスロットの数が伸びるため、車群通信容量を伸ばすことができる。また、車間距離を空けることで、複数の車両が並列的に通信する時間を短縮でき、それにより、各車両が使用可能な周波数リソースが増大しうる。その結果、車群通信容量を増大できる。
【0230】
なお、以上では周波数毎、タイムスロット毎、及び車両毎の具体的な通信レートのばらつきを考慮して、具体的な通信容量を算出する方法を開示したがこれに限らない。周波数や車両による変動量を無視/包含したタイムスロット毎の単位リソースブロックの通信レートr(τ)を用いて、個別通信容量C(M)は次の式(4)で表現可能である。なお、式中のNb(M,τ)は、各タイムスロットτで車両に割り当てているリソースブロックの数を指す。
【0231】
【数4】
さらに、タイムスロットによる通信レートの変動成分を無視/包含した単位リソースブロックの通信レートrを用いて個別通信容量C(M)は次の式(5)でも概算可能である。なお、Cuは、リソースブロック当りのデータ容量であって、Cu=r・Δτの関係を有する。Cuは、過去の通信実績に基づいて算出されても良いし、設計値であってもよい。Cuは、直近所定時間以内における複数の周波数での通信レートの平均値に、Δτを乗じた値に設定されうる。tRB(M)は、車両に割り当てているリソースブロックの総数を示す。例えば
図24に示す例では、車両Aに割り当てているリソースブロックの総数tRB(A)は、21となる。
【0232】
【数5】
さらに、路車群通信可能時間Tgrは、車群の先頭車両が路側機3の通信エリアに入ってから、末尾車両が路側機3の通信エリアを退出するための期間として算出することができる。車群の長さをLgrとし、車群の平均速度をVgrとすると、路車群通信可能時間Tgr=(φ+Lgr)/Vgrとなる。
【0233】
ここで、1つのタイムスロットで使用可能なリソースブロックの総数をNbとし、車群全体で使用可能なタイムスロットの数をNτとすると、車群通信容量Cgrは、次の式(6)で表現される。なお、Nbは、対象車群が使用可能な周波数の数に相当する。Nτは、Tgr/Δτの整数部分に相当し、例えばガウス記号を用いて[Tgr/Δτ]と記載されうる。Nτはガウス記号又はフロア関数を用いて表現されうる。tRB(gr)は車群全体で利用可能なリソースブロックの総数を示す。
【0234】
【数6】
例えば
図24に示す例では、車群GrXが使用可能なキャリア数が6であるためリソースブロックの総数Nb=6となる。また、タイムスロット数Nτが11であるため、tRB(gr)は、6×11=66となる。なお、ここでは説明を簡単にするために、対象車群が使用可能な周波数の数が通信期間中一定としている。
【0235】
なお、無線リソースが、時間、周波数、及び変調方式の3つのパラメータによってリソースブロックに分割されている場合には、周波数の数と変調方式の数を乗じた値が、1つのタイムスロットで使用可能なリソースブロックの総数に相当する。ただし、変調方式毎に通信レートは大きく異なることが予見される。故に、リソースブロックの構成要素として変調方式も用いる場合には、個別通信容量や車群通信容量は、変調方式毎の通信レートrを用いて算出されることが好ましい。
【0236】
その他、ネットワーク装置4は、過去の通信実績に基づいて、現在の走行速度と車群を構成する車両の数に応じて、個別通信容量や車群通信容量を概算してもよい。また、車群の走行速度と車群の長さに応じて車群通信容量を概算してもよい。
【0237】
<セグメントデータ受信時の作動>
ここでは
図25を用いて、路側機3が各車両へ元データをセグメント化して配信する場合の路側機3と接続車両の作動の一例について説明する。まず路側機3はネットワーク装置4から、例えば静的地図データや動的地図データなどの配信データを受領すると(ステップS601)、当該データを所定のサイズに分割してなる複数のセグメントデータを生成する(ステップS602)。なお、前述の通り、配信データのセグメント化はネットワーク装置4やサーバ5が実施しても良い。ここでは一例として配信データは第1~第3セグメントの3つに分割されている場合について例示する。また、通信相手とする車群は、
図17や、
図23、
図24等の説明で言及した、車両A~Fを含む車群GrXである場合について例示する。
【0238】
その後、路側機3は、車群の少なくとも一部が通信エリアに入ったことを検知すると、当該車群との狭域通信を開始する。具体的には先頭車両に相当する車両Aに対して第1セグメントをユニキャストで配信する(ステップS603)。
【0239】
車両Aの車載器1は、路側機3から自車両宛に送信された第1セグメントを受信すると、受信応答としてAckを路側機3に返送する(ステップS604)。これにより、路側機3は少なくとも車両Aは第1セグメントを正常に送信できたことを確認することができる。
【0240】
また、車両Aの車載器1は、予め設定されている共有経路で、車群内の他の車両に第1セグメントを配信する(ステップS605)。共有経路については
図19等を用いて説明した通りである。例えば車両Aは、車両B及び車両Dに第1セグメントをそれぞれユニキャストする。車両B及び車両Dはそれぞれ、車両AにAckを返送するとともに車両Cや車両Eに第1セグメントをユニキャストする。車両Cや車両Eは、送信元に対してAckを返送する。車両Cは、車両Fに第1セグメントをユニキャストする。
【0241】
接続車両としての車両Aは、車群内での第1セグメントの共有が完了すると、共有完了報告を路側機3に送信する(ステップS606)。車群内におけるデータの共有完了は、例えば、共有経路の末端ノード(換言すれば葉ノード)である車両E及び車両Fが根ノードとしての車両A向けに、第1セグメントを受信したことを示す完了メッセージを送信することで検出されうる。葉ノードからの完了メッセージは、車両BやCなどの内部ノードを介して根ノードに到達しても良い。
【0242】
なお、接続車両から路側機3に共有完了報告を送信することは任意の要素であって、省略可能である。つまり、上述したステップS606、及び、後述するステップS613、S623は省略可能である。ただし、接続車両が共有完了報告を送信する構成によれば、路側機3において、配信済みのセグメントが正常に共有完了したのか否かの進捗具合を把握可能となるといった利点を有する。
【0243】
次に、車両Bが接続車両となるタイミングとなると、路側機3は、接続車両としての車両Bに対して第2セグメントをユニキャストで配信する(ステップS610)。車両Bの車載器1は、路側機3から自車両宛に送信された第2セグメントを受信すると、受信応答としてAckを路側機3に返送する(ステップS611)。これにより、路側機3は少なくとも車両Bは第2セグメントを正常に送信できたことを確認することができる。また、車両Bの車載器1は、予め設定されている共有経路で、車群内の他の車両に第2セグメントを配信する(ステップS612)。接続車両としての車両Bは、車群内での第2セグメントの共有が完了すると、共有完了報告を路側機3に送信する(ステップS613)。
【0244】
さらに、車両Cが接続車両となるタイミングとなると、路側機3は、接続車両としての車両Cに対して第3セグメントをユニキャストで配信する(ステップS620)。車両Cの車載器1は、路側機3から自車両宛に送信された第3セグメントを受信すると、受信応答としてAckを路側機3に返送する(ステップS621)。これにより、路側機3は少なくとも車両Cは第3セグメントを正常に送信できたことを確認することができる。また、車両Cの車載器1は、予め設定されている共有経路で、車群内の他の車両に第3セグメントを配信する(ステップS622)。接続車両としての車両Cは、車群内での第3セグメントの共有が完了すると、共有完了報告を路側機3に送信する(ステップS623)。
【0245】
また、車両Cを含む車群内の各車両は、路側機3又は車群内の他車両から受信した複数のセグメントデータを結合することで元データを復元する(ステップS624)。元データの復元が成功すると、例えば当該時点での接続車両としての車両Cが路側機3に元データの復元が成功したことを示す制御信号である復元成功報告を路側機3に装置神する(ステップS625)。
【0246】
そのように復元成功報告を送信する構成によれば、路側機3は、対象車群が一連のセグメントデータを正常に受信及び共有できたことを認識可能となる。なお、復元成功報告の送信は任意の要素であって、省略されても良い。
【0247】
<上記構成の効果>
前置き:
自動運転や高度な運転支援を行う上では、道路の死角や車載センサの検知エリア外の交通状況や詳細な道路構造を示すダイナミックマップが必要となるケースが想定される。なお、ここでのダイナミックマップは、前述の静的地図データと動的地図データとを含む地図データと解することができる。上記想定において、車両がダイナミックマップを取得できていない場合、安全性を確保するために走行速度を所定値以下に抑制したり、手動運転に切り替えたりするなどの機能制限がかかった、いわゆるフォールバック制御が実行されうる。そして、走行速度の抑制等が行われると、ユーザの利便性が損なわれる。
【0248】
ダイナミックマップが小容量であれば、路側機3や無線基地局2から各車両が個別に取得する余地はあるが、より高度、高精度、或いは柔軟な自律走行を実現するためにはダイナミックマップは大容量化することが想定される。
【0249】
各車両が路側機3からユニキャスト通信でダイナミックマップを取得する構成では、路側機3と個々の車両の接続時間が短いため、送信できるデータ量が制限される。路側機3の通信範囲は、数百m以内など、有限であるためである。また、車両の走行速度が大きいほど、路側機3の通信範囲内に車両が滞在する時間が短くなる。故に、データ送信に必要な時間に対して、通信可能時間が不足する事態が生じうる。また、各車両が無線基地局2から個別にダイナミックマップを取得する構成では、無線基地局2の処理負荷の増大や、無線リソースの逼迫が懸念される。
【0250】
そのような事情に着眼し、本開示の開発者らは、車両の位置情報及び走行速度に基づいて車群を形成し、車群を構成する各車両が分担してダイナミックマップを受信し、車群内で共有及び補間し合う技術を検討した。当該構成によれば、車群単位でデータ通信が行われるため、通信時間が不足したり、無線リソースが逼迫したりする恐れを低減できる。
【0251】
また、開発者らはさらに検討を進めたところ、位置情報と走行速度を主要パラメータとして車群を設定した構成では、必ずしも車群を構成する車両同士が安定して通信できる関係になっているとは限らないといった知見を得た。例えば2つの車両の間に、車車間通信不能な大型トレーラ等といった電波的な遮蔽物が存在すると、両者は通信困難となりうるためである。当然、車群内での車両同士の通信が不安定であると、車群内でのデータ共有による補完及び復元処理が正常に行えなくなってしまう。
【0252】
以上で述べた課題に対し、上記開示によれば、まず、ネットワーク装置4が車車間通信状況を含むコンテキストデータを用いて車群を管理する。ネットワーク装置4は、車車間通信品質をもとに車群を形成するため、実際には通信しにくい車両を同一車群に含めてしまう恐れを低減できる。つまり、車群内での通信品質を担保しやすくなる。
【0253】
加えて上記提案構成では、各車両の走行計画をもとに、一定期間並走する可能性が高い車両を車群として束ねる。当該構成によれば車群の設定が維持されやすくなり、車群編成に係るネットワーク装置4での処理負荷を低減することができる。
【0254】
さらに、ネットワーク装置4が、車両間で干渉が生じないよう車両毎に路車間通信の無線リソースを割り当てる。当該構成によれば、干渉による通信の失敗が発生するおそれを低減できる。
【0255】
なお、他の構成としては、車群を形成する機能を車両に持たせる構成も想定されるが、そのような想定構成では、車両の入れ替わりの際に、車群形成のためのオーバーヘッドが生じうる。故に、想定構成では、このオーバーヘッドが原因となってデータ通信の遅延時間や、車群として機能するまでの制御遅延が生じうる。なお、ここでのオーバーヘッドとは、車群内での通信経路や接続車両を決定するための制御信号のやり取りを指す。
【0256】
そのような想定構成に対して、上記の提案構成によれば、ネットワーク装置4が集中制御により車群を設定し、各車両に事前に通知するため、上記オーバーヘッドによる通信遅延及び制御遅延を抑制できる。つまり、車群構成の変化や、別の車群への遷移をシームレスに実現することが可能となる。また、各車両が車群内での通信経路を設定するための制御信号である経路制御メッセージをやりとりする必要がないため、車載器1の処理負荷も低減できる。よって、相対的に処理能力の低いプロセッサ又は通信モジュールを用いて車載器1を実現可能となる。その結果、車両への車載器1の導入コストを抑制可能となる。
【0257】
また、上記構成では、大容量なデータはセグメント化して車群に対して配信される。具体的には、路側機3が車群の複数の車両に対してそれぞれ異なるセグメントをユニキャスト通信で送信し、複数の車両で断片的に受信されたデータを車群内で共有及び結合する。このような構成によれば、車群の概念を用いて面的に路側機3との通信接続を確保することで、各車両が個別に路側機3と通信する場合よりも、路側機3との通信時間を延長することができる。また、その結果として、個々の車両単独では受信しきれないほど大容量なデータも車両が狭域通信で取得可能となる。例えば交差点やインターチェンジ、ジャンクションにおける大容量なダイナミックマップをリアルタイムに配信可能となる。
【0258】
すなわち、本開示によれば、ダイナミックマップが個別通信可能時間で受信しきれないほど大容量化した場合にも、個々の車群による面的な接続を確保することで、データを送受信可能となる。また、路側機3と車両とはユニキャスト通信を行うため、路側機3は各セグメントが正常に車群に到達したことを確認することができる。
【0259】
なお、ダイナミックマップの配信に係る他の構成である第1比較構成としては、マクロセルとしての無線基地局2がユニキャストで各車両にダイナミックマップを配信する構成が想定できる。しかしながら、マクロセルに含まれる車両の数は膨大となりうるため、各車両に対してユニキャストでダイナミックマップを配信することは、無線基地局2の処理負荷及び無線リソースが有限であることを踏まえると、現実的には困難である。
【0260】
また、第2の比較構成としては、無線基地局2がエリア内の車両に対してダイナミックマップをマルチキャスト又はブロードキャストする構成も考えられる。しかしながら、マルチキャスト及びブロードキャストでは、受信側の端末である車両は、受信完了報告としてAckを返送しないため、配信側の装置は、配信先(つまり車両)がデータを正常に配信できたのかどうかが不明となってしまう。それに伴い、受信失敗した車両に対してダイナミックマップを再送できず、システム全体としての品質を担保することが難しい。
【0261】
上記第1、第2比較構成に対して、本提案構成によれば、配信側の装置が車両で正常に受信できたことを確認可能であって、かつ、処理/無線リソース上の問題を抑制することができる。つまり、本提案構成によれば、車群の概念を用いて、車群の接続車両とのユニキャスト通信と、車群内でのデータ共有を組み合わせることで、到達確認可能なマルチキャスト通信を間接的に実現することができる。
【0262】
なお、特許文献2には、車車間通信によってセグメントデータを共有及び結合することで元データを復元する構成が示唆されている。しかしながら、特許文献2に開示の構成では、自車両が持っていないデータを保持する他車両と遭遇できるか否かは偶然によるため、全てのデータが揃うまでの期間は相対的に長くなりうる。これに対し、本提案構成によれば、車群の中で予め設定された共有経路に基づき速やかにセグメントデータの共有が実行される。故に、データの配信から数秒以内にはデータの共有が完了することが期待できる。
【0263】
その他、上記構成では、車群の前半を走行する車両に対してできるだけ多くのデータ/セグメントを配信し、車群の末尾に近づくにつれて配信データ量を小さくする計画を作成する。そのように車群内における車両の位置に応じて配信データサイズを重み付けすることにより、車群全体としての路側機3との通信の確実性を高めることができる。
【0264】
また、上記構成によれば、最寄りレーンを走行する車両を優先的に接続車両として採用する。そのような構成によれば、他車両によるシャドウイングや、マルチパスフェージングの影響を低減でき、通信品質を高めることができる。
【0265】
上記の共有経路設定部J64は、車群内での共有経路として、接続車両を根ノードとする、深さが5以下のツリー型の通信経路を設定する。当該構成によれば、車群内での情報共有を迅速に行うことができる。例えば1ホップ当たりの通信所要時間の最大値が200ミリ秒であったとしても、5ホップで葉ノードまでデータが展開されるまでに要する時間は1秒以下に抑制できる。故に、上記の構成によれば、動的地図データに含まれる情報が秒単位で変化する動的データであったとしても、当該データの有効性が失われる前にデータの共有が完了できることが期待できる。もちろん、共有経路の深さは4以下や3以下に設定されてもよい。共有経路の深さ、換言すれば車群内での最大ホップ数は、1ホップあたりの所要時間と、配信データの有効性の持続時間とに基づいて設定されうる。
【0266】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
【0267】
<走行速度の制御例について>
上記の式(1)~(6)等によれば、送信すべきトラフィックを収容可能な路車群通信可能時間、換言すれば必要なタイムスロット数を導出可能である。ネットワーク装置4は、当該関係式を用いて、路側機3の通信エリアを通過する際の車群の走行速度を決定し、制御計画に反映するように構成されていても良い。その目標速度は、送受信予定のトラフィック量と、路側機3の通信エリアの直径φと、車群長Lgrと、通信レートrの想定値と、に基づいて概算可能である。車間距離を一定とする場合、車群長Lgrは、車群を構成する車両の数によって表現されうる。つまり、目標速度は、車群を構成する車両の数とトラフィック量とに基づいて算出されうる。なお、通信のQoSがトラフィック量の代わりに/並列的に使用されても良い。
【0268】
上記の構成は、車群の移動速度に基づいて車群と路側機3との通信容量を推定し、当該推定値が通信予定のトラフィック量を所定量上回るように車群の移動速度、換言すれば当該車群を構成する各車両の走行速度を設定する構成に相当する。上記の構成によれば車群の編成、すなわち構成メンバを変更することなく、交差点や分岐/合流地点を通過可能となる。なお、車群編成を変更不要ということは、車群内の共有経路を更新する必要も生じないことを意味する。上記構成によれば共有経路の更新に伴う処理負荷も低減可能となる。
【0269】
<接続車両の設定方法についての補足>
なお、上記の実施形態では、最寄りレーンを走行する車両だけを接続車両とする構成を開示したがこれに限らない。その他のレーンを走行する車両も接続車両として採用可能である。例えばすべての車両を接続車両として採用しても良い。また、
図26に示すように、先頭車両と末尾車両と最寄りレーンを走行している車両を接続車両として採用しても良い。
図27に示すように、最寄りレーンを走行している車両の間隔Dmが所定の閾値DTh以上である区間が存在する場合は、路側機3から2番目又は3番目に近いレーンを走行している車両を接続車両として採用してもよい。
図26及び
図27において斜めハッチングを施している車両が、接続車両に設定される車両を表している。その他、全車両が接続車両となるように、経時的に接続車両を切り替えても良い。なお、
図26及び
図27において斜線パターンのハッチングが付与されている車両が、接続車両の候補を示している。接続車両の候補とは、時間の変化に伴い、或る時点において接続車両に設定される車両を指す。
【0270】
また、上り通信用の接続車両と、下り通信用の接続車両を別々に設定しても良い。通信モジュールとしては、一般的に、受信専用及び送受信兼用のアンテナを備える一方、送信専用のアンテナを備えているケースは少ない。そのような事情を鑑みると接続車両が1第だけでは路側機3へのデータ送信と路側機3からのデータ受信を並列的に行うことが難しい。車群から路側機3への送信データが相対的に多い場合には通信時間/通信容量の不足が懸念される。そのような懸念に対し、路側機3からのデータを受信する下り通信用の接続車両とは別に、路側機3へのデータ送信を担当する接続車両を別に用意することにより、送信と受信と並列的に実行することが可能となる。上り通信用の接続車両が送信担当者料に相当し、下り通信用の接続車両が受信担当車両に相当する。
【0271】
なお、下り通信で送受信されるデータは、前述の通り、静的/動的地図データなどを指す。上り通信で送受信されるデータは、例えばプローブデータや、自己診断結果を示すデータ、自動運転時の運行記録データなどである。アップロードされるべき運行記録データとしては、例えば、所定の記録イベントが発生した時点から前後所定時間以内におけるシステム作動状態やカメラ映像などが挙げられる。車両/車群から路側機3への送信データには、路側機3を介してネットワーク装置4やサーバ5に送信するためのデータも含まれる。つまり、車両/車群から路側機3への送信データには、ネットワーク装置4やサーバ5を最終的な宛先とする通信パケットも含まれる。
【0272】
<車群の設定方法についての補足>
車群編成部J6は、進行方向毎に車群を分けても良い。例えば
図28に示すように右折を計画している車両と、左折を計画している車両と、交差点を直進することを計画している車両とで車群を分けても良い。
図28に示す車群Gr1は、交差点を直進することを計画している車両、具体的には、直進レーンを走行している車両の群である。車群Gr2は、交差点を右折することを計画している車両、具体的には右折レーンを走行している車両の群である。車群Gr3は、交差点を左折することを計画している車両、具体的には左折レーンを走行している車両の群である。交差点を右折するか左折するか直進するかによって車両が必要となる情報は異なりうる。
【0273】
上記のようにレーンレベルでの進行方向に応じて車群を設定する構成によれば、進行方向に応じた必要なデータを優先的に配信可能となる。また、不要なデータの配信を抑制することができる。なお、右折車両にとって不要なデータとは、例えば交差点から直進方向及び左折方向に伸びる道路の交通状況データである。その他、車群編成部J6は、レーン別に車群を分けてもよい。高速道路においてはレーンごとに平均速度が異なることが予見されるためである。
【0274】
<複数の車群への所属について>
右折車両は
図29に示すように、一時的に複数の車群へ所属することを許可してもよい。右折時には、後続車両との位置関係が大きく変化するため、道なりに沿って走行するシーンに比べて同一車群内の他車両との通信途絶が起こりやすい。故に、右折を計画している車両は、メインの車群の他に別の車群として所属させることで、当該車両が瞬間的に孤立車両Maとなる恐れを抑制することができる。左折車両に対しても同様の処置が実施されても良い。なお、
図29に示す例では車両Jは車群Gr4と車群Gr5の両方に属している場合を例示している。また、車両K、Lは車群Gr5と車群Gr6の両方に所属している。
【0275】
<2系統での配信について>
上述した実施形態では、個々のセグメントは1つの車群の中の1台に配信する態様を開示したが、これに限らない。個々のセグメントを2台ずつ配信してもよい。例えば、第1セグメントは、車両Aと車両Dに配信してもよい。そのように2つの系統で共有させる構成によれば、車群内での共有経路に冗長性をもたせることが可能となる。たとえば車両Aが路側機3との通信に失敗した場合であっても、車両Dを根ノードとする共有経路により、車両Aを含む他の構成メンバが第1セグメントを取得可能となる。
【0276】
<リソース制御部の作動について>
図30に示すように1つの路側機3が複数の車群Gr7~9と同時に通信するシーンにおいては、ネットワーク装置4は、
図31に示すように、車群毎に路車間通信の無線リソースを割り当てる。当該構成によれば、干渉によって通信が失敗してしまうおそれを低減できる。なお、
図31では、周波数f1~f2を車群Gr7に、周波数f3~f4を車群Gr8に、周波数f5~f6を車群Gr9に、それぞれ割り当てる態様を開示している。
図30において斜め線のハッチングを付与しているリソースブロックは車群Gr7用の無線リソースを表しており、縦破線のハッチングを付与しているリソースブロックは車群Gr8用の無線リソースを表している。ドットパターンのハッチングを付与しているリソースブロックは車群Gr9用の無線リソースを表している。
【0277】
また、リソース制御部J7は、車群が路側機3の通信エリアを通過する際、車群内の車車間通信や車両から路側機3へのデータ送信で使用される無線リソース量の推定値である車両側トラフィック量を考慮して、狭域通信の通信スケジュールを作成しても良い。
【0278】
車両側トラフィック量には、路側機3からの受信データの転送(共有)にかかるトラフィックが含まれる。また、車車間トラフィックには、シースルーアプリケーションによるカメラ映像などが含まれうる。シースルーアプリケーションは、先行車のカメラ映像を後続車に無線伝送するアプリケーションである。シースルーアプリケーションによれば、例えば、後続車は先行車により遮られる領域の交通状況を認識可能となる。ここでの先行車とは、相対的に前方を走行している車両を指し、後続車は相対的に後方に位置する車両に相当する。シースルーアプリケーションは、視覚共有或いはカメラ映像共有アプリケーションと呼ぶこともできる。また、車両側トラフィック量には、アップロード用のプローブデータなどを含めることができる。
【0279】
データ共有にかかる各時刻の車間トラフィック量は、配信データのサイズと共有経路に基づいて概算することができる。また、シースルーアプリケーションのトラフィック量は、所定の想定値を採用することができる。アップロードデータのトラフィック量は、車両からBSRなどを用いて取得可能である。
【0280】
リソース制御部J7は、例えば
図32に示すように、リソースマップを用い、路車間通信と車車間通信の通信スケジュールを作成してもよい。なお、
図32において波括弧を付与したリソースブロックは路車間通信を指し、例えば{R,A}で指し示すリソースブロックは路側機3から車両Aへのデータ配信用のリソースブロックを指す。また、
図32において丸括弧を付与したリソースブロックは、車々間通信用のリソースブロックを示し、例えば(A,B)は車両Aと車両Bとの通信に使用するリソースブロックを示す。なお、(A,X)はAによるブロードキャスト又はジオキャストに使用されるリソースブロックを示す。
【0282】
<車群変更時の事前確認処理>
各車両は、実際に車群の構成メンバが変化する時刻の所定時間前に、新規の車群に関する車群設定データを受信するように構成されていても良い。その場合、各車両は、実際に車群の構成が変化する前に、新規車群設定データに示される共有経路上において自車両の前後に位置する他車両と車車間通信が実施できているか否かを検証するように構成されていてもよい。そして、実際に車群の構成が変化する時刻である車群変更時刻から所定の最終確認時間前となっても、対象車両と車車間通信ができていない場合には、そのことを示すエラーメッセージをネットワーク装置4に送信してもよい。最終確認時間は、例えば500ミリ秒や1秒などとすることができる。ネットワーク装置4はエラーメッセージを受信した場合には、最新の通信状況データに基づいて共有経路の再計算を行う。
【0283】
上記のように車群設定を実際に切り替える前に事前に正常に車車間通信可能かどうかを確認する構成によれば、車群設定変更後に通信ができないことが発覚する恐れを低減できる。換言すれば、ネットワーク装置4が把握している車両毎の通信環境と、実際の通信環境との相違に基づいて、現実的には実施困難な共有経路がネットワーク装置4によって設定されている場合には、実際に運用される前に修正する事が可能となる。
【0284】
なお、ネットワーク装置4は、エラーメッセージの受信頻度に基づいて、グルーピング閾値などのパラメータを変更するように構成されていても良い。当該構成によれば実際の通信環境に応じた閾値で車群が形成されるため、車群内の通信の安定性を高めることができる。
【0285】
<機能配置について>
車群編成部J6など、ネットワーク装置4が備える機能の一部又は全部は、無線基地局2、路側機3、又はサーバ5が備えていても良い。ネットワーク装置4が備える機能は、無線基地局2、路側機3、及びサーバ5が分散して備えていても良い。例えばネットワーク装置4が備える車群を編成する機能は、サーバ5が備えていても良い。ネットワーク装置4又はサーバ5が中央制御装置に相当する。サーバ5が備える機能についても同様である。つまり、機能配置は適宜変更して実施することができる。車載器1にとっては、無線基地局2、路側機3、ネットワーク装置4及びサーバ5が外部装置に相当する。
【0286】
<配信データについて>
上記動的地図データや静的地図データは、複数の車両で共用されるべき共通データに相当する。もちろん、複数の車両で共用されるべき外部装置からの配信データは、動的地図データや静的地図データに限定されない。配信データは、ソフトウェアの更新データなどであってもよい。本開示は多様なデータの配信に適用可能である。ただし、本開示は、ダイナミックマップなどの相対的にリアルタイム性が要求される、大容量なデータの送受信に特に好適であると言える。
【0287】
<路側機3から車両へ送信するデータの構成について>
路側機3から車両に送信するデータは、車群全体で共有されるべきデータと、特定の車両のみを宛先とするデータとに区分されうる。そのため、路側機3から車両に狭域通信で送信するデータのヘッダ等には、車群で共有するべきデータであるか否かを示す共有フラグが含まれていることが好ましい。共有フラグは1ビット又は数ビットで表現されれば良い。各車両は共有フラグがオンに設定されているデータを受信した場合には、自車両もデータの内容を取得するとともに、共有経路に従って転送処理を行う。一方、各車両は共有フラグがオフに設定されているデータを受信した場合には、ペイロードの参照は行わずに、共有経路に従った転送処理のみを行えばよい。当該構成によれば、車群全体で共有されるべきデータと、特定の車両のみを宛先とするデータとに応じた処理を実行可能となる。
【0288】
<付言(1)>
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。さらに、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。つまり、ネットワーク装置4等が提供する手段および/又は機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供できる。例えばネットワーク装置4が備える機能の一部又は全部はハードウェアとして実現されても良い。或る機能をハードウェアとして実現する態様には、1つ又は複数のICなどを用いて実現する態様が含まれる。ネットワーク装置4は、CPUの代わりに、MPUやGPU、DFP(Data Flow Processor)を用いて実現されていてもよい。ネットワーク装置4は、CPUや、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合せて実現されていてもよい。ネットワーク装置4は、システムオンチップ(SoC:System-on-Chip)として実現されていても良い。さらに、各種処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いて実現されていても良い。各種プログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。プログラムの保存媒体としては、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、SD(Secure Digital)カード等、多様な記憶媒体を採用可能である。非遷移的実体的記録媒体には、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などのROMも含まれる。
【0289】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能は、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。加えて、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0290】
上述したネットワーク装置4の他、当該ネットワーク装置4を構成要素とするシステムなど、種々の形態も本開示の範囲に含まれる。例えば、コンピュータをネットワーク装置4として機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体等の形態も本開示の範囲に含まれる。
【0291】
<付言(2)>
本開示には以下の構成も含まれる。なお、以下の装置に対応する方法、及び、以下の装置を構成要素として備えるシステムもまた本開示の範囲に含まれる。
・送受信予定のトラフィック量と、路側機の通信エリアの直径φと、車群長Lgrと、通信レートrの想定値と、に基づいて、路側機の通信エリアを通過する際の車群の目標速度を設定する装置。
・上記設定された目標速度で路側機の通信エリアを走行するための車両ごとの制御計画を作成して配信する装置。
・配信データのサイズと、路側機の通信エリアを通行する車両の平均移動速度とに基づいて、車群を構成する車両の台数を調整する装置。
・葉ノードとしての一般車両と路側機との接続車両を介した間接的なデータ通信のレイテンシ及び通信速度の少なくとも何れか一方に基づいて車群の規模を調整する装置。
・接続車両は、車群を構成する接続車両以外の車両である一般車両と路側機との通信を中継するように構成されている装置。
・車車間通信でやり取りされる信号のRSSI及びSNRの少なくとも何れか一方に基づいて車群を編成する装置。
【符号の説明】
【0292】
1 車載器、2 無線基地局、3 路側機、4 ネットワーク装置(中央制御装置)、5 サーバ(中央制御装置)、F1 通信制御部、F6 報告処理部、F7 車群情報取得部、J1 個別情報取得部、J41 データサイズ取得部、J42 データサイズ調整部、J6 車群編成部、J61 計画修正部、J62 接続車両設定部、J63 車群速度取得部、J64 共有経路設定部、J7 リソース制御部、J8 通知処理部、S102a 車両情報取得ステップ、S103a 通信状況取得ステップ、S106 車群編成ステップ、S106b 車群設定配信ステップ、S106x 共有経路設定ステップ、S109 接続車両設定ステップ、S111 車群内共有ステップ、S401 データサイズ取得ステップ、S404 車群速度取得ステップ、S408 車群長調整ステップ。