(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/495 20060101AFI20241203BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20241203BHJP
A61F 13/512 20060101ALI20241203BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20241203BHJP
A61F 13/537 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61F13/495
A61F13/535 200
A61F13/512 300
A61F13/49 319
A61F13/537 310
(21)【出願番号】P 2021014478
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹津 嵩礼
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-291802(JP,A)
【文献】特開2009-045334(JP,A)
【文献】特開平11-253490(JP,A)
【文献】特開2019-037671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0038934(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着された状態で前記ユーザの肛門を被覆可能な肌当接シートと、
前記肌当接シートの前記ユーザの肛門と対向する部分を、前記ユーザの股下側と背側とを結ぶ方向である長手方向に伸縮可能に設けられる伸縮性部材と、を備
え、
前記肌当接シートは、吸収性物品の幅方向に延在し、前記ユーザの肛門と対向する部分を跨ぐように前記長手方向に並んで配置され、厚み方向に貫通する2つの孔を有し、
前記伸縮性部材は、前記長手方向における前記2つの孔に挟まれた前記肌当接シートの領域を前記長手方向において覆うように設けられる、
吸収性物品。
【請求項2】
前記伸縮性部材は、伸縮性フィルム、伸縮性不織布、または糸ゴムを有するシート状部材であり、
前記伸縮性部材は、前記長手方向に伸長された状態で前記吸収性物品に設けられる、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記伸縮性部材は、厚み方向に貫通する孔を有する、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記2つの孔のうち、前記背側の第1孔は、前記股下側の第2孔よりも前記吸収性物品の幅方向における寸法が長い、
請求項
1から3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記2つの孔のうち、前記股下側の第2孔は前記背側の第1孔よりも前記長手方向の寸法が長い、
請求項
1から4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ユーザから排泄された排泄物を吸収可能な吸収体を更に備え、
前記伸縮性部材は、前記吸収体よりも肌面側に設けられる、
請求項1から
5のうち何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体は、前記伸縮性部材と厚み方向において重なる部分の厚みが、前記伸縮性部材と厚み方向において重ならない部分の厚みよりも薄い肉薄部を有する、
請求項
6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記肉薄部は、厚み方向において前記ユーザの肛門と重なる部分に設けられる、
請求項
7に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品を装着したユーザが排便した場合、便がユーザの肛門を被覆するトップシート上を移動して吸収性物品から漏出することが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザから排泄された便が吸収性物品から漏出することを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、ユーザの肛門と対向するトップシートの部分を長手方向に伸縮可能にすることにした。
【0007】
詳細には、本開示の一側面に係る吸収性物品は、ユーザに装着された状態で前記ユーザの肛門を被覆可能な肌当接シートと、前記肌当接シートの前記ユーザの肛門と対向する部分を、前記ユーザの股下側と背側とを結ぶ方向である長手方向に伸縮可能に設けられる伸縮性部材と、を備える。
【0008】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記伸縮性部材は、伸縮性フィルム、伸縮性不織布、または糸ゴムを有するシート状部材であり、前記伸縮性部材は、前記長手方向に伸長された状態で前記吸収性物品に設けられてもよい。
【0009】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記伸縮性部材は、厚み方向に貫通する孔を有してもよい。
【0010】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記肌当接シートは、前記吸収性物品の幅方向に延在し、前記ユーザの肛門と対向する部分を跨ぐように前記長手方向に並んで配置され、厚み方向に貫通する2つの孔を有し、前記伸縮性部材は、前記長手方向における前記2つの孔に挟まれた前記肌当接シートの領域を前記長手方向において覆うように設けられてもよい。
【0011】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記2つの孔のうち、前記背側の第1孔は、前記股下側の第2孔よりも前記吸収性物品の幅方向における寸法が長くてもよい。
【0012】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記2つの孔のうち、前記股下側の第2孔は前記背側の第1孔よりも前記長手方向の寸法が長くてもよい。
【0013】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記ユーザから排泄された排泄物を吸収可能な吸収体を更に備え、前記伸縮性部材は、前記吸収体よりも肌面側に設けられてもよい。
【0014】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記吸収体は、前記伸縮性部材と厚み方向において重なる部分の厚みが、前記伸縮性部材と厚み方向において重ならない部分の厚みよりも薄い肉薄部を有してもよい。
【0015】
上記一側面に係る吸収性物品において、前記肉薄部は、厚み方向において前記ユーザの肛門と重なる部分に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザから排泄された便が吸収性物品から漏出することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの斜視図である。
【
図2】
図2は、トップシートの上面図の概要を例示する。
【
図3】
図3は、伸縮シートの上面拡大図の一例である。
【
図5】
図5は、組み立てられたおむつの概要図を例示する。
【
図6】
図6は、ユーザが排便した後のおむつの状態を例示する。
【
図7】
図7は、第1変形例に係るおむつの概要を例示する。
【
図8】
図8は、トップシートに設けられたスリットの変形パターンを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0019】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0020】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。
【0021】
なお、テープ2L,2Rの肌面側には微細なフックが設けられている。一方、フロントパッチ2Fの表面には、フックを引っかけるための微細なループが配列されている。つまり、フロントパッチ2Fは、テープ2L、2Rの貼り付けが可能な面ファスナーとして機
能を発揮する。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0022】
また、おむつ1では、肌面側から順にトップシート7(本開示の「肌当接シート」の一例)、吸収体、バックシート、およびカバーシート9が積層されている(
図1ではカバーシート9およびトップシート7のみを図示)。吸収体は、液体を吸収して保持することができ、主に股下領域1B付近を中心に配置されている(詳細は後述する)。
【0023】
トップシート7は、このような吸収体の吸水面を被覆するように配置される、シート状の部材である。また、トップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。
【0024】
また、おむつ1には、トップシート7と吸収体との間に伸縮シートが積層されている。そして、伸縮シートによりトップシート7および吸収体は長手方向に伸縮可能な状態である(詳細は後述する)。
【0025】
また、カバーシート9は、例えば排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート9は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0026】
バックシートは、カバーシート9と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシートは、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0027】
また、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。このような立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3Rは、着用者の陰部から排出される液体がおむつ1から漏出することを抑制する。
【0028】
図2は、トップシート7の上面図の概要を例示する。
図2に示されるようなトップシート7の上面は、ユーザがおむつ1を装着した場合にユーザの肌と当接する。また、ユーザ装着時に
図2でいう右側がユーザの背側に配置され、左側がユーザの股下側に配置される。
【0029】
図2に示されるように、トップシート7の背側領域には、厚み方向にトップシート7を貫通するスリット71が設けられている。スリット71は、トップシート7の幅方向に延在している。また、スリット71は、長手方向に並んで2つ配置される。そして、背側に位置するスリット71A(本開示の「第1孔」の一例)は、股下側に位置するスリット71B(本開示の「第2孔」の一例)よりも
図2でいう上下方向の長さが長くなっている。また、スリット71Bの
図2でいう左右方向の寸法は、スリット71Aの同寸法よりも長
くなっている。なお、2つのスリット71によって長手方向に挟まれた領域は、ユーザがおむつ1を装着した場合にユーザの肛門と対向することになる。
【0030】
図3は、おむつ1が備える伸縮シート4(本開示の「伸縮性部材」の一例)の上面拡大図の一例である。
図3に示されるような伸縮シート4は、例えば伸縮性のフィルムである。そして、伸縮シート4の伸縮力は立体ギャザー3BLあるいは立体ギャザー3BRの伸縮力よりも強い。また、伸縮シート4は、例えば液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0031】
また、伸縮シート4は、スリット41を有する。スリット41は、
図3でいう奥行き方向に延在し、また厚み方向に伸縮シート4を貫通する。また、スリット41は、
図3でいう左右方向に例えば2つ並んで配置される。また、スリット41の間隔は、
図2に示されるトップシート7に設けられたスリット71の間隔と同等である。なお、伸縮シート4は、例えば伸縮性不織布や、糸ゴムが伸長状態で貼り付けられたシートであってもよい。
【0032】
図4は、おむつ1が備える吸収体5の上面図の一例である。
図4に示されるように、吸収体5は上面において厚み方向に凹む溝51(本開示の「肉薄部」の一例)を備える。溝51は、
図4でいう左右方向において中央よりも右側に配置される。また、溝51は
図4でいう上下方向に延在する。また、溝51は、
図4でいう左右方向に例えば2つ並んで配置される。なお、溝51が左右方向に並ぶ間隔は、
図2に示されるトップシート7に設けられたスリット71の間隔と同等である。また、吸収体5の
図4でいう左右方向の中央部には、該左右方向に延びるスリットが設けられている。
【0033】
なお、吸収体5は、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体5では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体5全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体5の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0034】
また、本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0035】
図5は、
図2から
図4に示される部材が組み立てられたおむつ1の概要図を例示する。
図5(A)は、おむつ1の上面図の一例である。
図5(B)は、幅方向に対して直交する平面でおむつ1を切った断面図の概要である。
【0036】
図5(A)および
図5(B)に示されるように、おむつ1においては、肌面側から順にトップシート7、伸縮シート4、および吸収体5が積層される。そして、トップシート7の2つのスリット71によって長手方向において挟まれる領域は、ユーザがおむつ1を装着した場合に厚み方向においてユーザの肛門6と重なる部分(以降、肛門対向部72という)となる。また、肛門対向部72の非肌面側には伸縮シート4が重なることになる。こ
のように伸縮シート4が設けられると、トップシート7のスリット71と伸縮シート4のスリット41とは重なることになる。また、伸縮シート4のスリット41と吸収体5の溝51とは厚み方向において重なることになる。なお、伸縮シート4は、トップシート7等のおむつ1の部材とは別に予め形成されている。そして、伸縮シート4は、おむつ1の長手方向に伸長された状態で吸収体5およびトップシート7と熱溶着等によって固定される。
【0037】
図6は、ユーザが排便した後のおむつ1の状態を例示する。なお、
図6は、幅方向に対して直交する平面でおむつ1を切った断面拡大図の一例である。
【0038】
図6に示されるように、ユーザが排泄した便8(本開示の「排泄物」の一例)は、肛門6と対向するトップシート7の肛門対向部72に付着する。そして、肛門対向部72には、便の自重により肌面側から非肌面側に力が作用する。よって、肛門対向部72は、
図5(B)と比較して肌面側から非肌面側に凹むことになる。
【0039】
また、このように肛門対向部72が凹むことで、肛門対向部72と積層される伸縮シート4は長手方向にさらに伸長された状態となる。よって、スリット71Aの背側の縁78Aおよびスリット71Bの股下側の縁78Bは、伸縮シート4の復元力により長手方向に狭まるような力が作用することになる。よって、便は肛門対向部72から離脱することは抑制され、肛門対向部72に安定的に保持される。
【0040】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1によれば、ユーザが排便した場合に、便8が付着した肛門対向部72が肌面側から非肌側に凹む(
図6参照)。また、肛門対向部72の長手方向における両端にはスリット71(71A、71B)が位置しているため、肛門対向部72が肌面側から非肌側に凹む度合いは大きくなる。よって、肛門対向部72から便が移動することは抑制される。よって、便がおむつ1から漏出することは抑制される。また、肛門対向部72が肌面側から非肌側に凹むことで、肛門対向部72に保持される便がユーザの肌に付着することは抑制される。
【0041】
また、上記のようなおむつ1によれば、伸縮シート4の伸縮力は立体ギャザー3BLあるいは立体ギャザー3BRの伸縮力よりも強い。よって、ユーザが排便して肛門対向部72に便が付着した場合、便がトップシート7上を移動して立体ギャザー3BL、3BRを超えるより先に、便の自重により肛門対向部72に積層される伸縮シート4が伸びる。よって、肛門対向部72に便が保持される。よって、便がおむつ1から漏出することは抑制される。
【0042】
また、上記のようなおむつ1によれば、伸縮シート4が吸収体5よりもトップシート7側に配置されている。また、伸縮シート4は、液不透過性のシートである。よって、吸収体5に尿が吸収されており、
図6に示されるように便8の自重により吸収体5が厚み方向に歪むことで吸収体5から尿が染み出た場合であっても、染み出た尿がトップシート7に到達することは抑制される。よって、ユーザの肌に尿が付着することは抑制される。よって、ユーザの肌に褥瘡が生じるなどのトラブルが発生することは抑制される。
【0043】
また、トップシート7の肛門対向部72は、ユーザが排便する前において伸縮シート4の復元力により長手方向に収縮され得る。このような場合、肛門対向部72は長手方向に起伏を有する。よって、肛門対向部72がユーザの肌と当接する度合いは低減される。よって、トップシート7に尿が付着している場合であっても、ユーザの肌に褥瘡が生じるなどのトラブルが発生することは抑制される。
【0044】
また、上記のようなおむつ1によれば、トップシート7に幅方向に延在するスリット71が設けられており、さらに伸縮シート4のスリット41がスリット71と重なるように設けられている。よって、トップシート7において幅方向と直交する方向である長手方向に、排泄物に含まれる水分が流通することは抑制される。よって、例えばユーザが水様便を排泄した場合であっても、水様便に含まれる水分がおむつ1の背側から漏出することは抑制される。また、これらのスリットを介してトップシート7側から吸収体5側へ水分を通過させることができる。よって、水様便に含まれる水分を吸収体5に吸収させることができる。よって、水分がユーザの肌に付着することは抑制されるため、ユーザの肌に褥瘡が生じるなどのトラブルが発生することは抑制される。
【0045】
また、トップシート7に設けられたスリット71のうち、背側に位置するスリット71Aのおむつ1の幅方向における寸法は、股下側に位置するスリット71Bの同寸法よりもが長くとられている。よって、ユーザから排泄された排泄物に含まれる水分が股下側から背側に流通することを抑制する効果は高まる。また、股下側に位置するスリット71Bの長手方向における寸法は、背側のスリット71Aの同寸法よりも長くとられている。よって、ユーザの尿道口から排泄された尿が股下側から背側に向かってトップシート7上を流通する場合に、スリット71Bを介して尿を確実に吸収体5の方向へ誘導することができる。
【0046】
また、上記のようなおむつ1によれば、伸縮シート4と重なる吸収体5の部分には溝51が設けられている。よって、
図5(B)に示されるように、ユーザが排便する前であって、伸縮シート4の長手方向に収縮する収縮力が吸収体5に作用した場合であっても、溝51が長手方向に狭まることで吸収体5の変形は抑制される。よって、例えばユーザが尿道口から尿を排泄した場合や肛門6から水様便を排泄した場合であっても吸収体5の吸収効率の低下は抑制される。また、このような溝51が長手方向において複数並んで配置されることで、吸収体5の変形が抑制される効果は高まることになる。
【0047】
[第1変形例]
図7は、第1変形例に係るおむつ1Aの断面図の一例である。なお、
図7に示される断面図は、幅方向に対して直交する平面でおむつ1Aを切った図である。
【0048】
第1変形例に係るおむつ1Aは、
図4に示されるような吸収体5と同様の吸収体5Aを備える。しかしながら、吸収体5Aには溝51の代わりに厚み方向に貫通するスリット51Aが設けられている。
【0049】
また、おむつ1Aは、伸縮シート4Aを有する。そして、伸縮シート4Aは、カバーシート9の非肌面側に貼り付けられている。なお、伸縮シート4Aは、吸収体5Aとカバーシート9との間に積層されてもよい。また、伸縮シート4Aにはスリットは設けられていない。
【0050】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1Aによれば、ユーザが排便して肛門対向部72に便が付着した場合、便の自重によりカバーシート9の非肌面側に貼り付けられた伸縮シート4Aが長手方向に伸びる。よって、スリット71Aの背側の縁78Aおよびスリット71Bの股下側の縁78Bは、伸縮シート4Aの復元力により長手方向に狭まるような力が作用することになる。よって、便は肛門対向部72から離脱することは抑制され、肛門対向部72に安定的に保持される。よって、便がおむつ1Aから漏出することは抑制される。
【0051】
[スリット71の変形例]
図8は、トップシート7に設けられたスリット71の変形パターンを例示する。なお、
図8でいう左側は、おむつ1がユーザに装着された場合にユーザの股下側に相当し、右側は背側に相当する。
【0052】
図8(A)に示されるスリット76は、実施形態に係るスリット71と同様におむつ1の幅方向における背側のスリット76Aの寸法が、股下側のスリット76Bの寸法よりも長くとられている。また、変形例に係るスリット76では、おむつ1の長手方向における股下側のスリット76Bの寸法が背側のスリット76Aの同寸法と同等となっている。このようなスリット76によっても、実施形態に係るスリット71と同様の効果を奏することができる。
【0053】
また、
図8(B)に示されるスリット77は、実施形態に係るスリット71と同様におむつ1の長手方向における股下側のスリット77Bの寸法が、背側のスリット77Aの寸法よりも長くとられている。また、変形例に係るスリット77では、おむつ1の幅方向における股下側のスリット77Bの寸法が、背側のスリット77Aの寸法が同等にとられている。このようなスリット77によれば、ユーザの尿道口から排泄された尿が股下側から背側に向かってトップシート7上を流通する場合に、スリット77Bを介して尿を確実に吸収体5の方向へ誘導することができる。
【0054】
[その他変形例]
トップシート7にはスリット71が設けられていなくともよい。また、伸縮シート4はトップシート7の肛門対向部72が長手方向に伸縮可能に配置されていればよい。また、伸縮シート4は伸長されていない状態でトップシート7および吸収体5に溶着されてもよい。また、溝51は、非肌面側から肌面側に向かって凹んでいてもよい。また、溝51は設けられていなくともよい。また、おむつ1のトップシート7に敷いて使用する尿パッドが、上記のようなトップシート7、伸縮シート4、および吸収体5が積層された構造を有していてもよい。また、伸縮シート4の代替として、伸長された状態の糸ゴムがトップシート7または吸収体5に接着されていてもよい。
【0055】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0056】
1、1A :おむつ
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2F :フロントパッチ
2L,2R :テープ
3BL,3BR:・・立体ギャザー
3R :ウェストギャザー
4、4A :伸縮シート
5 :吸収体
6 :肛門
7 :トップシート
8 :便
9 :カバーシート
41 :スリット
51 :溝
51A :スリット
71、71A、71B:スリット
72 :肛門対向部
76、76A、76B:スリット
77、77A、77B:スリット
78A、78B:縁